説明

インクジェット印刷装置

【課題】速やかにかつ効率よくノズルのクリーニング処理を実行する。
【解決手段】印刷媒体に対してインクをノズルから排出するインクジェットヘッドと、インクジェットヘッドに脱着自在に設けられ、装着された状態においてノズルを外気から密閉された状態で覆うヘッドキャップ143aと、ヘッドキャップ143aに設けられ、超音波を発生する超音波発生素子155と、ヘッドキャップ143aをインクジェットヘッドに装着させ、ノズルを浸すようにヘッドキャップ143a内にインクを貯留させた後に、超音波発生素子155に超音波を発生させる制御部70を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェットヘッドによりインクを吐出して印刷用紙に印刷を行うインクジェット印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、インクジェット方式が適用されたインクジェット印刷装置は、画像情報や文字情報等の印刷データに基づいて、インクジェットヘッドのノズルからインクを印刷用紙に向けて吐出して画像や文字などを印刷することができ、しかも、多色のインクを使用して印刷用紙上に印刷データをカラーで印刷できるので、家庭用や業務用として普及している。
【0003】
このようなインクジェット印刷装置には、インクジェットヘッド表面の乾燥インク等の不要物を除去してノズルの目詰まり防止や解消する目的として、ポンプ駆動によりインクジェットヘッドから強制的にインクの排出又は吸引する処理(以下、パージ動作と記す)が定期的に行われている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、特許文献2には、メンテナンス機構に、ノズルから間隔を空けて配置された少なくとも1個の始動可能な超音波トランスデューサと、流体媒体を介して超音波エネルギーを伝達するために超音波トランスデューサとオリフィスプレートの間でそれらに接触するように形成された粘性流体の薄層と、超音波トランスデューサを始動させて超音波トランスデューサに超音波を生成させるクリーニング処理を実行する手段とを備えたインクジェット印刷装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−106304号公報
【特許文献2】特開2000−94702号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1記載のインクジェット印刷装置では、不要物の除去を目的としてパージ動作を実行するが、パージ動作のみでは、不要物を十分に除去できない場合があった。
【0007】
また、特許文献2記載のインクジェット印刷装置では、インクジェットヘッドが備えられたキャリッジをメンテナンス機構に移動した後、超音波トランスデューサに超音波を生成させる必要があるので、クリーニング処理を実行するまでに相当の時間を要し、これにより印刷開始が遅れるという課題があった。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、速やかにかつ効率よくノズルのクリーニング処理を実行するインクジェット印刷装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明に係るインクジェット印刷装置の第1の特徴は、印刷媒体に対してインクをノズルから排出するインクジェットヘッドと、前記インクジェットヘッドに脱着自在に設けられ、装着された状態において前記ノズルを外気から密閉された状態で覆うヘッドキャップと、前記ヘッドキャップに設けられ、超音波を発生する超音波発生手段と、前記ヘッドキャップを前記インクジェットヘッドに装着させ、前記ノズルを浸すように前記ヘッドキャップ内にインクを貯留させた後に、前記超音波発生手段に超音波を発生させる制御手段と、を備えたことにある。
【0010】
本発明に係るインクジェット印刷装置の第2の特徴は、前記制御手段は、前記ノズルから最後にインクが排出された時点からの経過時間が予め設定された待機移動設定時間を超えた場合に、前記ヘッドキャップを前記インクジェットヘッドに装着させることにある。
【0011】
本発明に係るインクジェット印刷装置の第3の特徴は、前記制御手段は、前記インクジェットヘッドにノズルからインクを排出させながら、前記超音波発生手段に超音波を発生させることにある。
【0012】
本発明に係るインクジェット印刷装置の第4の特徴は、前記インクを貯留する廃インクタンクと、前記廃インクタンクと前記ヘッドキャップとを接続し、前記ヘッドキャップに貯留されたインクを前記廃インクタンクへ排出するインク排出経路と、をさらに備えたことにある。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係るインクジェット印刷装置の第1の特徴によれば、印刷媒体に対してインクをノズルから排出するインクジェットヘッドと、インクジェットヘッドに脱着自在に設けられ、装着された状態においてノズルを外気から密閉された状態で覆うヘッドキャップと、ヘッドキャップに設けられ、超音波を発生する超音波発生手段と、ヘッドキャップをインクジェットヘッドに装着させ、ノズルを浸すようにヘッドキャップ内にインクを貯留させた後に、超音波発生手段に超音波を発生させる制御手段とを備えるので、長時間インクを排出しない場合、ヘッドキャップがインクジェットヘッドに装着された状態で待機させることができる。これにより、クリーニング処理を実行する際、待機させた状態から超音波を発生させることができるので、速やかにかつ効率よくクリーニング処理を実行することができる。
【0014】
本発明に係るインクジェット印刷装置の第2の特徴によれば、ノズルから最後にインクが排出された時点からの経過時間が予め設定された待機移動設定時間を超えた場合に、ヘッドキャップをインクジェットヘッドに装着させるので、速やかにかつ効率よくクリーニング処理を実行することができる。
【0015】
本発明に係るインクジェット印刷装置の第3の特徴によれば、インクジェットヘッドにノズルからインクを排出させながら、超音波発生手段に超音波を発生させるので、より効率よくクリーニング処理を実行することができる。
【0016】
本発明に係るインクジェット印刷装置の第4の特徴によれば、インクを貯留する廃インクタンクと、廃インクタンクとヘッドキャップとを接続し、ヘッドキャップに貯留されたインクを廃インクタンクへ排出するインク排出経路と、をさらに備えるので、超音波発生手段により発生された超音波が伝搬し、インク排出経路内も超音波洗浄される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施形態であるインクジェット印刷装置の構成を示す構成図である。
【図2】本発明の一実施形態であるインクジェット印刷装置が備えるメンテナンスユニットを模式的に示した図である。
【図3】本発明の一実施形態であるインクジェット印刷装置が備えるメンテナンスユニットのヘッドキャップの斜視図である。
【図4】本発明の実施例1であるインクジェット印刷装置の機能構成を示した図である。
【図5】本発明の一実施形態であるインクジェット印刷装置における処理手順を示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0019】
本発明の一実施形態では、多数のノズルが形成されたインクジェットヘッドを複数本備え、それぞれのインクジェットヘッドから黒またはカラーのインクを吐出してライン単位で印刷用紙に印刷を行うライン型の画像形成装置を例に挙げて説明する。
【0020】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0021】
<インクジェット印刷装置の全体構成>
本発明の一実施形態であるインクジェット印刷装置1の構成について詳細に説明する。
【0022】
図1は、本発明の一実施形態であるインクジェット印刷装置1の構成を示す構成図である。
【0023】
図1に示すように、インクジェット印刷装置1は、サイド給紙部10と、内部給紙部20と、印刷部30と、排紙部40と、反転部50とを備えている。
【0024】
サイド給紙部10は、印刷用紙Wが積層される給紙台11と、この給紙台11から最上位置の印刷用紙Wのみを給紙搬送路FR上へ搬送させる1次給紙部12と、この1次給紙部12によって搬送された印刷用紙Wを循環搬送路CR上へ搬送する2次給紙部14とを備えている。
【0025】
内部給紙部20は、印刷用紙Wが積層される給紙台21aと、この給紙台21aから最上位置の印刷用紙Wのみを給紙搬送路FR上へ搬送させる1次給紙部22aと、印刷用紙Wが積層される給紙台21bと、この給紙台21bから最上位置の印刷用紙Wのみを給紙搬送路FR上へ搬送させる1次給紙部22bと、印刷用紙Wが積層される給紙台21cと、この給紙台21cから最上位置の印刷用紙Wのみを給紙搬送路FR上へ搬送させる1次給紙部22cと、印刷用紙Wが積層される給紙台21dと、この給紙台21dから最上位置の印刷用紙Wのみを給紙搬送路FR上へ搬送させる1次給紙部22dとを備えている。
【0026】
このように、2次給紙部14には、サイド給紙部10及び内部給紙部20から印刷用紙Wが搬送され、さらに、後述する反転部50からも印刷用紙Wが搬送される。
【0027】
そのため、搬送方向における2次給紙部14の手前には、給紙された印刷用紙Wの搬送経路と、一方の面が印刷された用紙が循環して搬送されてくる経路とが合流する合流地点が存在する。この合流地点を基準に、給紙機構側の経路を給紙搬送路FRと称し、それ以外の経路を循環搬送路CRと称している。
【0028】
印刷部30は、循環搬送路CR上で印刷用紙Wを搬送する用紙搬送ユニット133と、この用紙搬送ユニット133の上部に設けられ、C(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)、K(ブラック)のインク色毎に千鳥状にインクジェットヘッドが複数配置されたインクジェットヘッドユニット31と、インクジェットヘッドユニット31のクリーニング処理を実行するメンテナンスユニット135とを備える。
【0029】
用紙搬送ユニット133は、環状のプラテンベルト132を備えており、2次給紙部14により給紙された印刷用紙Wは、プラテンベルト132内に設置された後述するサクションファン131によってプラテンベルト132上に吸引され、搬送路上を所定の搬送速度で搬送されながら、インクジェットヘッドユニット31から吐出されたインクによりライン単位で印刷される。
【0030】
印刷部30により印刷された印刷用紙Wは、循環搬送路CR上に配置された搬送ローラ等によって筐体内を循環搬送路CR上を搬送される。循環搬送路CR上には、循環搬送路CR上を搬送された印刷用紙Wを排紙部40へ誘導するか、又は循環搬送路CR上を再循環させるかを切り替える切り替え機構43が備えられている。
【0031】
切り替え機構43は、印刷用紙Wを、後述する排紙部40又は反転部50のいずれか1方へ誘導するために、切り替える。
【0032】
印刷用紙Wの印刷後であって所定時間が経過した場合、インクジェットヘッド表面の乾燥インク等の不要物を除去する必要がある。そこで、不要物の除去を目的として、用紙搬送ユニット133の下方に、インクジェットヘッドユニット31のクリーニング処理を実行するメンテナンスユニット135が配置されている。クリーニング処理の際には、用紙搬送ユニット133がX1方向に移動し、メンテナンスユニット135がY1方向に移動することにより、メンテナンスユニット135がインクジェットヘッドユニット31に装着され、クリーニング処理が実行される。
【0033】
排紙部40は、インクジェット印刷装置1の筐体から突出したトレイ形状をした排紙台41と、排紙台41に印刷用紙Wを誘導する一対の排紙ローラ42とを有している。そして、切り替え機構43により排紙部40に誘導された印刷用紙Wは、排紙ローラ42により排紙台41に搬送され、排紙台41に印刷面を下にして積載される。
【0034】
反転部50は、印刷用紙Wを反転させる反転台51と、循環搬送路CRから反転台51へ印刷用紙Wを搬送し、又は反転台51から循環搬送路CR上へ印刷用紙Wを搬送する反転ローラ52とを備えている。
【0035】
切り替え機構43により反転部50に誘導された印刷用紙Wは、反転ローラ52により循環搬送路CRから反転台51に搬送され、所定時間経過後、反転台51から循環搬送路CRへ搬送されることにより、循環搬送路CRに対して表裏が反転する。そして、表裏が反転された印刷用紙Wは、循環搬送路CR上に設けられた搬送ローラ53等の複数のローラにより循環搬送路CR上を印刷部30へ向かって搬送される。
【0036】
図2は、本発明の一実施形態であるインクジェット印刷装置1が備えるメンテナンスユニット135を模式的に示した図である。
【0037】
図2に示すように、メンテナンスユニット135は、漏洩したインクの受皿となるパン141と、パン141内に設けられた基台142と、基台142上に設けられたヘッドキャップ143a〜143dと、ヘッドキャップ143a〜143dからインクを廃液タンクへ排出する廃液ライン145と、各ヘッドキャップ143a〜143dに対応して設けられ、廃液ライン145へインクを排出する廃液バルブ144a〜144dとを備えている。なお、ヘッドキャップは、インクジェットヘッドにそれぞれ対応して設けられるが、図2では、その一部であるヘッドキャップ143a〜143dのみを示している。
【0038】
そして、図示しないユニット駆動部により、メンテナンスユニット135全体がY1方向に移動されることにより、ヘッドキャップ143a〜143dが、それぞれインクジェットヘッドに装着される。
【0039】
図3は、本発明の一実施形態であるインクジェット印刷装置1が備えるメンテナンスユニット135のヘッドキャップ143aの斜視図である。なお、ヘッドキャップ143b〜143dは、ヘッドキャップ143aと同一の構成を有するので、説明を省略する。
【0040】
図3に示すように、ヘッドキャップ143aは、フレーム151にノズルキャップ部152が上下に移動自在に設けられている。ヘッドキャップ143aは、メンテナンスユニット135に固定されているので、メンテナンスユニット135が図1に示したY1方向へ上昇すると、それに伴ってヘッドキャップ143aもY1方向へ上昇する。
【0041】
ノズルキャップ部152の上部には、ゴム等の弾性体で成型されたパッキン154が設けられており、ヘッドキャップ143aがY1方向へ上昇することにより、パッキン154とインクジェットヘッドユニット31のインクジェットヘッドとが接触する。これにより、ヘッドキャップ143aがインクジェットヘッドに装着される。
【0042】
また、ノズルキャップ部152を支持するように、フレーム151上にバネ153が設けられている。そして、バネ153の復元力により、パッキン154とインクジェットヘッドユニット31のインクジェットヘッドとが密着することによって、ノズルが外気から密閉された状態でヘッドキャップ143aに覆われる。
【0043】
さらに、インクジェットヘッド内を加圧してノズルからインクを排出するために、インクジェットヘッド内に空気を供給するパージポンプ136が備えられている。このパージポンプ136の圧力によりインクジェットヘッドからインクを排出することをパージ動作という。
【0044】
そして、このパージ動作により、インクジェットヘッドからインクが排出されると、ヘッドキャップ143a内部にインクが貯留され、貯留されたインクにノズルが浸される。
【0045】
また、ノズルキャップ部152の内部には、超音波を発生する超音波発生素子155が設けられており、ノズルキャップ部152内部にインクが貯留された状態で、超音波発生素子155が超音波を発生することにより、インクジェットヘッドが超音波洗浄される。
【0046】
ノズルキャップ部152の下部には、ノズルキャップ部152からインクを排出するための廃液ライン145が接続されており、廃液バルブ144aが“開”されることにより、ノズルキャップ部152内部に貯留されたインクが廃液ライン145を介して廃液タンクへ排出される。
【0047】
<インクジェット印刷装置1の機能構成>
次に、本発明の実施例1であるインクジェット印刷装置1の機能構成について説明する。
【0048】
図4は、本発明の実施例1であるインクジェット印刷装置1の機能構成を示した図である。
【0049】
図4に示すように、インクジェット印刷装置1は、外部インタフェース部71と、ユニット駆動部139と、用紙搬送ユニット133と、メンテナンスユニット135と、印刷部30と、操作部60と、制御部70とを備えている。これらの構成のうち、用紙搬送ユニット133と、メンテナンスユニット135と、印刷部30とについては、上述したので、説明を省略する。
【0050】
ユニット駆動部139は、制御部70からの指示に基づいて、用紙搬送ユニット133及びメンテナンスユニット135を駆動する。
【0051】
外部インタフェース部71は、ネットワーク9を介して端末100と接続するためのインタフェース機器であり、例えば、端末100から送信された印刷データを制御部70に供給する。
【0052】
操作部60は、表示/入力パネル(図示しない)と、読み取りや印刷等を開始させるためのスタートキー、読み取りや印刷等を停止させるためのストップキー、印刷枚数等を入力するためのテンキー(いずれも図示せず)等の各種操作キーとを備え、利用者操作に基づく操作信号を制御部70に供給する。
【0053】
操作部60の表示/入力パネルは、前面に配置された感圧式あるいは静電式の透明なタッチパネルと、このタッチパネルの裏面に配置され、各種表示画面を表示する液晶表示パネル(いずれも図示せず)とを有している。利用者は、液晶表示パネルの表示画面を見ながら、タッチパネルの表面を指などで直接触れることで、クリーニング処理を実行するためのボタンや、クリーニング処理を自動的に開始するための待機設定時間や、インクジェットヘッドの乾燥を防止するため、自動的に用紙搬送ユニット133を待機位置へ移動し、さらにメンテナンスユニット135をメンテナンス位置に移動するための待機位置移動設定時間や、クリーニング処理を実行する洗浄設定時間を設定する設定ボタン等の各種ボタンの押下操作を行うことができる。
【0054】
制御部70は、インクジェット印刷装置1は中枢的な制御を行い、サイド給紙部10と、内部給紙部20と、印刷部30と、排紙部40と、反転部50とを制御する。また、制御部70は、その機能上、駆動制御部70aと、洗浄制御部70bとを備える。
【0055】
駆動制御部70aは、クリーニング処理を実行する際、メンテナンス準備が完了していない場合、用紙搬送ユニット133を待機位置へ移動させると共に、メンテナンスユニット135をメンテナンス位置へ移動させる。また、駆動制御部70aは、クリーニング処理が終了すると、メンテナンスユニット135を待機位置へ移動させると共に、用紙搬送ユニット133を印字位置へ移動させる。
【0056】
また、駆動制御部70aは、最後にインクジェットヘッドからインクが排出された時点からの経過時間が待機位置移動設定時間を越えた場合、用紙搬送ユニット133を待機位置へ移動すると共に、メンテナンスユニット135をメンテナンス位置に移動する。ここで、インクの排出とは、インクジェットヘッドに備えられた圧電素子に所定の電圧が印加されることによる吐出と、パージポンプ136のパージ動作によるインクの排出とを含んでいる。
【0057】
洗浄制御部70bは、パージポンプ136によるパージ動作によりインクジェットヘッドにノズルからインクを排出させながら、超音波発生素子155に超音波を発生させる。
【0058】
<インクジェット印刷装置1の作用>
次に、本発明の一実施形態であるインクジェット印刷装置1の作用について説明する。
【0059】
図5は、本発明の一実施形態であるインクジェット印刷装置1におけるクリーニング処理の処理手順を示したフローチャートである。
【0060】
図5に示すように、制御部70は、クリーニング処理が要求されたか否かを判定する(ステップS101)。具体的には、操作部60からクリーニング処理の実行を要求する操作信号が供給されたか否かを判定する。
【0061】
ステップS101において、クリーニング処理が要求されていないと判定された場合(NOの場合)、制御部70は、最後のインク排出時から所定の時間が経過したか否かを判定する(ステップS103)。具体的には、制御部70は、最後にインクジェットヘッドからインクが排出された時点からの経過時間が、利用者により操作部60から予め設定された待機設定時間を越えたか否かを判定する。
【0062】
ここで、待機設定時間は、インクジェットヘッドのノズルが外気に触れることにより、インクが乾燥して固化しないように、例えば、“2h”というように適切な値が予め設定されている。
【0063】
ステップS101において、クリーニング処理が要求されたと判定された場合(YESの場合)、又はステップS103において、最後のインク排出時から所定の時間が経過したと判定された場合(YESの場合)、制御部70の駆動制御部70aは、メンテナンス準備が完了しているか否かを判定する(ステップS104)。具体的には、駆動制御部70aは、用紙搬送ユニット133が待機位置であり、かつメンテナンスユニット135がメンテナンス位置にあるか否かを判定する。
【0064】
ステップS104において、メンテナンス準備が完了していないと判定された場合(NOの場合)、制御部70の駆動制御部70aは、用紙搬送ユニット133を待機位置へ移動させる(ステップS105)。具体的には、駆動制御部70aは、用紙搬送ユニット133を、図1に示したX1方向に移動させるようにユニット駆動部139を制御する。
【0065】
次に、制御部70の駆動制御部70aは、メンテナンスユニット135をメンテナンス位置へ移動させる(ステップS107)。具体的には、駆動制御部70aは、メンテナンスユニット135を、図1に示したY1方向に移動するようにユニット駆動部139を制御する。これにより、ヘッドキャップ143aがインクジェットヘッドユニット31のインクジェットヘッドに装着される。
【0066】
そして、制御部70の洗浄制御部70bは、パージ動作を実行する(ステップS109)。具体的には、洗浄制御部70bは、パージポンプ136を起動し、インクジェットヘッド内に空気を供給させる。これにより、インクジェットヘッド内が加圧され、インクジェットヘッドのノズルからインクが排出される。そして、このパージ動作により、インクジェットヘッドからインクが排出されると、ヘッドキャップ143a内部にインクが貯留し、貯留されたインクにノズルが浸される。
【0067】
次に、洗浄制御部70bは、超音波発生素子155に超音波を発生させる(ステップS111)。具体的には、洗浄制御部70bは、図示しない電力供給系から所定の電圧を超音波発生素子155に印加することにより、超音波発生素子155に超音波を発生させる。これにより、インクジェットヘッドのノズルが超音波洗浄されると共に、超音波がヘッドキャップ143aから廃液バルブ144aまでの廃液ライン145までを伝搬し、廃液ライン145内が洗浄される。
【0068】
そして、洗浄制御部70bは、洗浄設定時間に達したか否かを判定する(ステップS113)。ここで、洗浄設定時間は、インクジェットヘッドのノズルを洗浄するのに十分な時間として設定される時間であり、例えば10(秒)というように固定値として設定されてもよいし、インクジェットヘッドから最後にインクが排出された時点からの経過時間に応じて設定されるようにしてもよい。
【0069】
ステップS113において、洗浄設定時間に達したと判定された場合(YESの場合)、洗浄制御部70bは、超音波発生素子155による超音波の発生を停止すると共に(ステップS115)、パージ動作を停止する(ステップS117)。
【0070】
次に、制御部70の駆動制御部70aは、廃液バルブ144aを“開”することにより、ノズルキャップ部152内部に貯留されたインクを廃液タンクへ排出する(ステップS119)。
【0071】
次に、制御部70の駆動制御部70aは、メンテナンスユニット135を待機位置へ移動させる(ステップS121)。具体的には、駆動制御部70aは、メンテナンスユニット135を、図1に示したY2方向に移動するようにユニット駆動部139を制御する。
【0072】
そして、制御部70の駆動制御部70aは、用紙搬送ユニット133を印字位置へ移動させる(ステップS123)。具体的には、駆動制御部70aは、用紙搬送ユニット133を、図1に示したX2方向に移動させるようにユニット駆動部139を制御する。
【0073】
以上のように、本発明の一実施形態であるインクジェット印刷装置1によれば、インクジェットヘッドユニット31のインクジェットヘッドのノズルを外気から密閉された状態で覆い、ノズルを浸すようにインクを貯留するヘッドキャップ143aと、ヘッドキャップ143aに設けられた超音波を発生する超音波発生素子155とを備えるので、長時間インクを排出しない場合、ヘッドキャップ143aがインクジェットヘッドに装着された状態で待機させることができる。これにより、クリーニング処理を実行する際、メンテナンスユニット135を移動する必要がないので、速やかにかつ効率よくクリーニング処理を実行することができる。
【0074】
また、例えば、特許文献2記載のインクジェット印刷装置では、超音波トランスデューサとオリフィスプレートの間でそれらに接触するように粘性流体の薄層を形成し、超音波トランスデューサに超音波を生成させるので、パージ処理と並行してクリーニング処理を実行することができなかった。一方、本発明の一実施形態であるインクジェット印刷装置1によれば、ヘッドキャップ143aが、インクジェットヘッドのノズルを外気から密閉された状態で覆い、ノズルを浸すようにインクを貯留するので、インクジェットヘッドにノズルからインクを排出させながら、超音波発生素子155に超音波を発生させることができる。これにより、更に効率よくノズルのクリーニング処理を実行することができる。
【0075】
なお、本発明の一実施形態では、パージ動作を実行しながら、超音波発生素子155に超音波を発生させたが、これに限らず、超音波発生素子155による超音波洗浄のみを行うようにしてもよいし、インクジェットヘッドに備えられた圧電素子に電圧を印加することによりノズルからインクを吐出させるフラッシング動作を実行しながら、パージ動作と、超音波発生素子155による超音波洗浄を並行して実行するようにしてもよい。
【0076】
また、本発明の一実施形態では、ノズルキャップ部152の内側に、超音波を発生する超音波発生素子155が設ける構成としたが、これに限らず、ノズルキャップ部152の外側に超音波発生素子155が設ける構成としてもよい。即ち、超音波発生素子155は、ノズルキャップ部152内部に貯留されたインクに超音波が伝搬するような箇所に設けられていればよい。
【符号の説明】
【0077】
1…インクジェット印刷装置
10…サイド給紙部
20…内部給紙部
30…印刷部
31…インクジェットヘッドユニット
40…排紙部
50…反転部
60…操作部
70…制御部
70a…駆動制御部
70b…洗浄制御部
133…用紙搬送ユニット
135…メンテナンスユニット
136…パージポンプ
139…ユニット駆動部
143a〜143d…ヘッドキャップ
144a〜144d…廃液バルブ
145…廃液ライン(インク排出経路)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷媒体に対してインクをノズルから排出するインクジェットヘッドと、
前記インクジェットヘッドに脱着自在に設けられ、装着された状態において前記ノズルを外気から密閉された状態で覆うヘッドキャップと、
前記ヘッドキャップに設けられ、超音波を発生する超音波発生手段と、
前記ヘッドキャップを前記インクジェットヘッドに装着させ、前記ノズルを浸すように前記ヘッドキャップ内にインクを貯留させた後に、前記超音波発生手段に超音波を発生させる制御手段と、
を備えたことを特徴とするインクジェット印刷装置。
【請求項2】
前記制御手段は、
前記ノズルから最後にインクが排出された時点からの経過時間が予め設定された待機移動設定時間を超えた場合に、前記ヘッドキャップを前記インクジェットヘッドに装着させる
ことを特徴とする請求項1記載のインクジェット印刷装置。
【請求項3】
前記制御手段は、
前記インクジェットヘッドにノズルからインクを排出させながら、前記超音波発生手段に超音波を発生させる
ことを特徴とする請求項1又は2記載のインクジェット印刷装置。
【請求項4】
前記インクを貯留する廃インクタンクと、
前記廃インクタンクと前記ヘッドキャップとを接続し、前記ヘッドキャップに貯留されたインクを前記廃インクタンクへ排出するインク排出経路と、
をさらに備えたことを特徴とする請求項1〜3のうちいずれか1項記載のインクジェット印刷装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−76261(P2012−76261A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−221035(P2010−221035)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(000250502)理想科学工業株式会社 (1,191)
【Fターム(参考)】