説明

インクジェット塗装方法

【課題】曲面を有する各種成形品、立体物をインクジェット塗装により、優れた画質レベルの塗装物が得られる塗装方法を提供する。
【解決手段】活性エネルギー線硬化型インクジェットインクをピエゾ素子により、オリフィス径10μm以上100μm以下、駆動周波数2000Hz以上50000Hz以下、駆動電圧10V以上200V以下、インク吐出温度20℃以上90℃以下、インク液滴速度5m/sec以上15m/sec以下の条件で塗装対象物に吐出する工程を含み、インク吐出時はインクジェットヘッドと被塗装部との距離が0.5mm以上15mm以下であることを特徴とする塗装方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット塗装方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット塗装方法として、特許文献1には立体物印刷装置および立体物印刷方法が提案されている。この方法を用いれば、曲面をもつ立体物にインクで印刷することが可能である。この方法は、例示された印刷装置における、インキ吐出部、印刷対象物、それぞれの動作を規定しており、インクジェット印刷における立体物印刷を可能とするものである。特許文献1に記載された塗装方法は、例示された塗装装置により、被塗装物の凸凹がある一面を塗装するものであり、また、被塗装物斜面に斜めにインクを吐出しているため画像再現に難があり、画質の確保が難しかった。
【0003】
特許文献2には、筒状体の外面に多色印刷を施す方法が開示されている。また、特許文献3には建築板へのインクジェット塗装においてランダム感のある複雑な柄模様を有する高意匠塗装を実現することのできる建築板塗装方法、さらに、特許文献4にはインクジェットノズルに吐出不良が発生しても、印刷模様の画質レベルの低下を抑制する方法がそれぞれ開示されている。これら特許文献2〜4に提案の方法は、いずれもほぼ平面を塗装する方法である。
【0004】
塗装は、主にはけ、ローラーブラシ、エアスプレーを使う場合の3種類があり、それぞれの方法にそれぞれの特徴をもち、用途に応じて使い分けられている。
【0005】
インクジェットによる塗装は、前述の3種類の方法に比べ、塗装作業の速度が遅く、また、新規設備が必要であることより、一部の用途例えば外壁材、ネール、シャッター、筒等に利用されている。
これらは、ほぼ平面を塗装しているのであり、実質的に立体物対応の塗装とは言えなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−260329号公報
【特許文献2】特開2010−143200号公報
【特許文献3】特開2003−211047号公報
【特許文献4】特開2009−233554号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、曲面を有する各種成形品、立体物をインクジェット塗装により、優れた画質レベルの塗装物が得られる塗装方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、曲面を有する各種成形品および立体成形物(以下、被塗装成形物と記すことがある)のインクジェットによる塗装方法に関し、被塗装成形物を適宜三次元に移動させて、インクを特定の位置から固定されたインクジェットノズルより吐出させることを主な特徴とする。
【0009】
すなわち、本発明は、
(1)曲面を有する塗装対象物に対してインクジェット方式により塗装を行なう塗装方法であって、
活性エネルギー線硬化型インクジェットインクをピエゾ素子により、オリフィス径10μm以上100μm以下、駆動周波数2000Hz以上50000Hz以下、駆動電圧10V以上200V以下、インク吐出温度20℃以上90℃以下、インク液滴速度5m/sec以上15m/sec以下の条件で塗装対象物に吐出する工程と、
を含み、
インク吐出時はインクジェットヘッドと被塗装部との距離が0.5mm以上15mm以下であることを特徴とする塗装方法、
(2)前記インク吐出時は、前記インクジェットノズルを固定し、前記塗装対象物を三次元に移動させることによりインクジェットノズルと被塗装部との距離を制御することを特徴とする(1)の塗装方法、
(3)さらに、前記吐出する工程により被塗装部に着弾したインクに活性エネルギー線を照射する工程を、含む、(1)または(2)の塗装方法、
(4)前記活性エネルギー線を照射する工程の活性エネルギー線の波長が、250nm以上450nm以下を有することを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載の塗装方法、
(5)前記活性エネルギー線硬化型インクジェットインクは、少なくとも活性エネルギー線硬化性化合物及び活性エネルギー線硬化性化合物に溶解する重合性官能基を有しない化合物を含有するインクであることを特徴とする(1)〜(4)のいずれかに記載の塗装方法
に関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明のインクジェット塗装方法によれば、曲面を有する各種成形品および立体成形物を優れた画質レベルで塗装することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
はじめに、本発明に使用される活性エネルギー線硬化型インクジェットインクについて説明する。
本発明で使用されるインクジェットインクは、曲面や段差などを有する成形物に塗装する際に良好に適応する必要がある。
一般的に使用されている水系インクジェットインクや溶剤系インクジェットインクは、乾燥定着するまでに時間を要するため、インク膜厚のコントロールが難しく、例えば成形品の立ち上がり面や窪みなどで、インクだれやインクだまりなどの塗装欠陥を生じやすい。特にインク膜厚が、10μmを超えると顕著になる傾向がある。
【0012】
この欠点を解消するため、本発明で使用される活性エネルギー線硬化型インクジェットインクは、インク膜厚のコントロールを容易に出来る程度の硬化速度を有していれば、特に制約はなく使用できる。
特に、瞬時に乾燥定着させる事ができ、インク膜厚のコントロールが容易な、活性エネルギー線硬化型インクジェットインクを使用することが好ましい。
【0013】
硬化させるために大きなエネルギーを必要とし、定着硬化の時間が比較的長い活性エネルギー線硬化型インクジェットインクであっても、被塗装物上では、少ないエネルギーで仮定着(完全硬化まで至らないが、インクの粘度が急激に上昇し、流動しなくなる)状態に塗装を施し、後で大きなエネルギーを付加し、硬化させても良い。
【0014】
本発明に使用できる活性エネルギー線硬化型インクジェットインクとしては、特開2009−102644、特開2002−188025などに開示されているインクを選択することができる。
【0015】
本発明に使用される活性エネルギー線硬化型インクは、顔料、活性エネルギー線硬化性化合物、安定剤、分散剤、重合開始剤、促進剤、その他添加剤により構成される。
【0016】
本発明に使用するインクジェットインクには、インクの被塗装物への密着性を向上させるため、あるいは被塗装物でのインクのドットの広がりの調整等を目的として、上記活性エネルギー線硬化性化合物に溶解する重合性官能基を有しない樹脂を含有させることができ、熱硬化性または熱可塑性樹脂をインクの一部に用いることもできる。これらは、活性エネルギー線硬化性化合物との相溶性に優れた樹脂が好ましく使用できる。
【0017】
活性エネルギー線硬化性化合物に溶解する重合性官能基を有しない化合物としては、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリ(メタ)アクリル酸エステル、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、セルロース誘導体(例えば、エチルセルロース、酢酸セルロース、ニトロセルロース)、塩ビ−酢ビ共重合体、ポリアマイド樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ブタジエンーアクリルニトリル共重合体、アクリル系樹脂、スチレン−アクリル系樹脂、スチレン−マレイン酸系樹脂、ロジン系樹脂、ロジンエステル系樹脂、エチレン−酢ビ系樹脂、石油樹脂、クマロンインデン系樹脂、テルペンフェノール系樹脂、フェノール樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、エポキシ系樹脂、セルロース系樹脂、塩酢ビ系樹脂、キシレン樹脂、アルキッド樹脂、脂肪族炭化水素樹脂、ブチラール樹脂、シリコン樹脂、マレイン酸樹脂、フマル酸樹脂等が挙げられる。
【0018】
本発明に使用されるインクジェットインクは、活性エネルギー線硬化性化合物、必要に応じ樹脂、有機溶剤、顔料分散剤と共に、顔料をサンドミル等の通常の分散機を用いてよく分散することにより製造される。予め顔料高濃度の濃縮液を作成しておいて活性エネルギー線硬化性化合物で希釈することが好ましい。通常の分散機による分散においても充分な分散が可能であり、このため、過剰な分散エネルギーがかからず、多大な分散時間を必要としないため、インク成分の分散時の変質を招きにくく、安定性に優れたインクが調製される。インクは、孔径3μm以下さらには、1μ以下のフィルターにて濾過することが好ましい。
【0019】
本発明に使用されるインクジェットインクは、25℃での粘度が5〜70mPa・sに調整することが好ましい。25℃での粘度が5〜70mPa・sのインクは、特に通常の4〜10KHzの周波数を有するヘッドから、10〜50KHzの高周波数のヘッドにおいても安定した吐出特性を示す。粘度が5mPa・s未満の場合は、高周波数のヘッドにおいて、吐出の追随性の低下が認められ、70mPa・sを越える場合は、加熱による粘度の低下機構をヘッドに組み込んだとしても吐出そのものの低下を生じ、吐出の安定性が不良となり、全く吐出できなくなる。
【0020】
本発明で使用できる被塗装対象物は、本願発明で使用のインクジェットインクがインクジェット吐出後、被塗装物表面で適度にぬれ、活性エネルギー線により硬化し塗装皮膜を形成するものであれば、特に限定されるものではない。したがって、被塗装対象物はインク非浸透性であることが好ましい。本発明を特に効果的に利用する場合、被塗装物は曲面、凸凹面を有する各種成形品および立体造形物であり、被塗装対象物表面の材質は熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、金属、非金属、木、紙、織布等が挙げられる。被塗装物の表面は、インクが適度にぬれるように、必要に応じて表面処理することが好ましい。表面処理は、化学的でも物理的でもよく、公知の方法により行なえる。
【0021】
本発明は、インクが吐出するインクジェットヘッドの位置に対応するように被塗装対象物を移動ロボットにより移動しながら塗装を行う。インク吐出時はインクジェットヘッドと被塗装部との距離が0.5mm〜15mmとなるように、移動ロボットを操作する。
0.5mm未満では、ヘッドと塗装対象物が接触し易く、15mmを超えると良好な画質の塗装が得られない。
【0022】
本発明で使用する移動ロボットは、公知の垂直多関節形産業用ロボットが使用でき、好ましくは4軸以上、さらに自由度が大きくなる6軸、7軸等多軸の産業用ロボットが更に好ましい。
【0023】
本発明では、ピエゾ素子を用いた、インクジェット方式により塗装を行う。
本発明では、インクジェットのオリフィス径は10μm以上100μm以下が好ましい。10μm未満では、塗装速度が実用に堪えられず、またインク詰りが発生し易いため好ましくない。オリフィス径が100μmを超えると吐出したインク液滴が安定した形状にならない、飛散し易い、またオリフィスから液垂れを起こし易い等により、安定したインク吐出が得られず良好な画質の塗装ができないため好ましくない。
【0024】
駆動周波数は、2kHz以上50kHz以下が好ましい。駆動周波数により、インク吐出量を制御でき、2kHzより小さいと吐出量が少なく塗装に適さず、50kHzを超えると大きな駆動電圧が必要となり、設備上好ましくない。
【0025】
駆動電圧は、10V以上200V以下が好ましい。10Vより小さいとインクの吐出量も少なく、塗装速度が実用的でなく、また、200Vを超えても適度なインク吐出量を発生させる印加電圧は得られない。
【0026】
インク吐出温度は、20℃以上90℃以下が好ましい。温度は、使用するインクの性状により、吐出時流動特性が優れるように最適の温度が決定される。吐出装置の良好な状態を維持する観点では、使用時と駆動時との温度変化ができるだけ小さい、すなわち20℃に近いほうが好ましい。しかし、高性能インクを広範囲から選択できることから90℃に近いほうを選択することもできる。インク吐出温度が90℃を超えると吐出装置の維持管理が困難になり安定した吐出ができにくい。インク吐出温度が20℃より小さくなると、インクの変質、粘度変化等により吐出が安定しない。
【0027】
インク液滴速度は、5m/sec以上15m/sec以下が好ましい。5m/sec未満では塗装速度が上がらず、実用性がない。また、15m/secを超えると着弾したインクの飛散により、良好な画質の塗装が得難くなる。
【0028】
インク液滴ボリュームは、目的物の模様、塗装速度に応じて適宜選択され、6〜90plであり、前述の諸条件により、制御される。細かな絵柄のある塗装においては、インク液滴ボリュームが大き過ぎないことが好ましい。
【0029】
インク粘度は、吐出時の粘度が5〜20mPa・sである。ヘッドへヒーターを取り付け前述の吐出温度までヘッドを加熱することにより調節される。
【0030】
インクジェットヘッドは、インクジェットノズルを必要に応じた数だけ束ねて構成される。本発明では、目的となる被塗装物の形状に応じて、ノズルの数、ヘッド形状を自在に設計することができる。
ノズル数が小さく、全ノズルを円または円周状に束ねた細身のインクジェットヘッドであれば、被塗装物表面の起伏が大きくても、凹部の隅まで良好な画質の塗装が可能となる。
また、ノズル数が大きいインクジェットヘッドであれば、塗装速度を上げることができる。
【実施例】
【0031】
以下の実施例により本発明を詳しく説明する。但し、実施例により本発明を限定するものではない。なお、実施例、比較例中の部数や%は、断り書きがない限り、質量部、質量%を表す。実施例、比較例に使用した原材料の名称、商品名、製造会社等を表−1に示した。
【0032】
(分散液の調整)
(Y分散液)
アゾ顔料 Fanchon Fast Yellow Y−5688(BAYER社製)33部、分散剤SOLSPERSE20000(ルーブリゾール社製)9.9部、THFFA(Sartomer社製)57.1部、および0.3mmジルコニアビーズ333部を遮光ポリプロピレン容器に入れ、ペイントシェーカーにて2時間練肉を行い、Yellow分散液を得た。
【0033】
(M分散液)
キナクリドン顔料 CINQUASIA Magenta RT343−D(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)33部、分散剤SOLSPERSE32000(ルーブリゾール社製)11.55部、THFFA(Sartomer社製)55.45部、および0.3mmジルコニアビーズ333部を遮光ポリプロピレン容器に入れ、ペイントシェーカーにて2時間練肉を行い、Magenta分散液を得た。
【0034】
(C分散液)
シアン顔料 SUNFAST 249−1284(サン・ケミカル社製)22.9部、分散剤SOLSPERSE5000(ルーブリゾール社製)10.2部、THFFA(Sartomer社製)41.5部、および0.3mmジルコニアビーズ333部を遮光ポリプロピレン容器に入れ、ペイントシェーカーにて2時間練肉を行い、Cyan分散液を得た。
【0035】
(K分散液)
Lampblack LB−1011(ファイザー社製)25部、分散剤SOLSPERSE32000(ルーブリゾール社製)5部、THFFA(Sartomer社製)70部、および0.3mmジルコニアビーズ333部を遮光ポリプロピレン容器に入れ、ペイントシェーカーにて2時間練肉を行い、Black分散液を得た。
【0036】
(オリゴマー)
カプロラクトンアクリレートモノマー M−100(ユニオンカーバイド社製)281.3gに、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール(BHT)を0.05gおよびジブチル錫ジラウレートを1滴添加し、これを乾燥空気雰囲気下で撹拌しながら90℃に加熱する。さらに2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(CREANOVA社製)84.2gをゆっくりと添加し、水浴で発熱を100℃未満に制御しながら反応を90℃で8時間維持し、ウレタンアクリレートオリゴマーを得た。
【0037】
(インクの調製)
表−2に示した組成に従い分散液、オリゴマー、モノマー、光重合開始剤、増感剤、酸化防止剤、安定剤、樹脂などを配合し、遮光下、乾燥空気雰囲気中においてホモミキサーで30分間混合撹拌後、孔径2μmのガラスフィルターを用いて加圧ろ過を行い、各々のインク組成物を得た。
【0038】
得られたインク組成物の25℃における粘度は、コーンプレート型粘度計TV−22(東機産業社製)を用い、せん断速度192s−1、回転速度50rpmで測定した。測定結果は表−2に示した。
(実施例1)
【0039】
インクジェット装置としてインクジェットヘッド(コニカミノルタ社製KM512MH、オリフィス径27μm)を使用し、インキ吐出口を下向きに固定した。移動ロボットとして塗装用ロボット(アネスト岩田社製MRP−2100)を使用し、インクジェット装置と連動させておく。ロボットのアーム先端に、被塗装物であるABS製成形品を固定した。インクジェットヘッドに先に作製した活性エネルギー線硬化型インクジェットインク(Yインク)を充填し、ヘッドを55℃に温調しておき、続いて駆動周波数8000Hz、駆動電圧14Vの条件にて、インク吐出の準備をした。移動ロボットを起動し、インクジェットヘッド下部に成形品を移動させ、成形品の形状に合わせて、インクジェットヘッドノズル部と成形品の距離が一定(2mm)になるよう駆動させ、成形品表面を塗装した。このときのインク吐出液滴速度は、6m/secであり、塗膜解像度を720×720dpiとし、成形品表面がノズル下を通過する移動速度は、280mm/secであった。
次に、塗装済み塗膜未硬化の成形品を移動ロボットに装着したまま、254nmと365nmを輝線に持つ高圧水銀ランプ下部に移動させ、成形品とランプの距離を10cmに設定して駆動し、紫外線積算光量が1000mJ/cmとなる条件で紫外線を照射して、塗装済み成形品を得た。
得られた塗装成形品には、ピンホールや色むらなど、塗装欠陥が無く、良好な塗装状態であった。
(実施例2)
【0040】
積算光量を500mJ/cmとする以外は実施例1と同様にして塗装済み成形品を得た。さらに活性エネルギー線硬化型インクジェットインク(クリヤー1)を黄色の塗装面上へ同方法で重ね塗りした。続いて、実施例1と同様に積算光量が1000mJ/cmになるように紫外線照射し、塗装済み成形品を得た。
得られた塗装成形品には、ピンホールや色むらなどの、塗装欠陥が無く、良好な塗装状態であった。しかもクリヤートップ層が設けてあるため、光沢が優れている。
(実施例3)
【0041】
活性エネルギー線硬化型インクジェットインク(クリヤー1)をクリヤー2に変える以外は、実施例2と同様にして塗装済み成形品を得た。
得られた塗装成形品は、ピンホールや色むらなどの、塗装欠陥が無く、光沢も良好な塗装状態であった。また、未硬化塗装時にインクの垂れがまったくないため塗装作業の自由度が向上して生産効率を上げることが可能となった。
(実施例4)
【0042】
実施例1で得た塗装済み成形品を、さらに溶剤系塗料(ロックペイント社製、商品名:2液型ウレタンスプレークリヤー)で硬化塗膜として25μmとなるエアースプレー塗装を行い、塗装後、室温にて30分間放置した後に、熱風循環型オーブン中で、60℃、30分乾燥硬化処理し塗装成形品を得た。
得られた塗装成形品は、塗装欠陥が無く、良好な状態で、かつ、光沢が優れている。
(実施例5)
【0043】
インクジェット装置として、実施例1で使用したインクジェットヘッドを4個用意し、4個のヘッドにYインク,Mインク,Cインク,Kインクをそれぞれ充填し、実施例1と同一条件でインク吐出し、木目柄を塗装した。さらに実施例1と同様に紫外線照射して塗装済み成形品を得た。
得られた塗装成形品は、ピンホールや色むらなど、塗装欠陥が無く、良好な状態である。木目柄模様は、成形品の曲面に沿って連続し、良好な画質を保った状態で優れた美観を有して塗装されている。
(比較例1)
【0044】
被塗装成形品を固定し、インクジェットヘッドは移動ロボットのアーム先端に固定する以外、実施例5と同様にして塗装を行った。
得られた塗装成形品は、色むらの塗装欠陥が多く、絵柄はぼけた状態となり良好な画質が得られなかった。
(比較例2)
【0045】
インクジェットヘッドノズル部と成形品との距離を20mmにする以外は実施例1と同様にして、塗装した。塗装品は濃淡の色むらがあり、良好な塗装が得られなかった。
【0046】
比較例1で示された良好な画質が得られない要因としては、1)インクジェットヘッドを三次元に移動しながらインクを吐出するため、ノズルからインクが飛翔する際に重力加速度以外に曲面に沿った移動の力が加わり、インク吐出の直進性が低下した、2)インク吐出の直進性が低下したことにより、被塗装面へのインク着弾精度が低下し絵柄模様の再現性が低下した、と考えられる。本発明では、インクジェットヘッドを固定してインク吐出の直進性を維持し、被塗装物を移動してヘッドノズルと被塗装部との距離を一定(0.5〜15mm)に保つことで、良好な画質の塗装を得ている。
比較例2で示された良好な画質が得られない要因としては、インク液滴の飛翔距離が長く、空気抵抗の影響を大きく受けたためインク液滴が飛散しインクの着弾精度が低下した、と考えられる。
【0047】
【表1】

【0048】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明は、曲面を有する各種成形品や立体物の塗装において、優れた画質レベルの塗装物が得られるインクジェット塗装方法として利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
曲面を有する塗装対象物に対してインクジェット方式により塗装を行なう塗装方法であって、
活性エネルギー線硬化型インクジェットインクをピエゾ素子により、オリフィス径10μm以上100μm以下、駆動周波数2000Hz以上50000Hz以下、駆動電圧10V以上200V以下、インク吐出温度20℃以上90℃以下、インク液滴速度5m/sec以上15m/sec以下の条件で塗装対象物に吐出する工程と、
を含み、
インク吐出時はインクジェットヘッドと被塗装部との距離が0.5mm以上15mm以下であることを特徴とする塗装方法。
【請求項2】
前記インク吐出時は、前記インクジェットノズルを固定し、前記塗装対象物を三次元に移動させることによりインクジェットノズルと被塗装部との距離を制御することを特徴とする請求項1記載の塗装方法。
【請求項3】
さらに、前記吐出する工程により被塗装部に着弾したインクに活性エネルギー線を照射する工程を、
含む、請求項1または請求項2に記載の塗装方法。
【請求項4】
前記活性エネルギー線を照射する工程の活性エネルギー線の波長が、250nm以上450nm以下を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の塗装方法。
【請求項5】
前記活性エネルギー線硬化型インクジェットインクは、少なくとも活性エネルギー線硬化性化合物及び活性エネルギー線硬化性化合物に溶解する重合性官能基を有しない化合物を含有するインクであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の塗装方法。

【公開番号】特開2012−86131(P2012−86131A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−233980(P2010−233980)
【出願日】平成22年10月18日(2010.10.18)
【出願人】(000219912)東京インキ株式会社 (120)
【出願人】(000138244)株式会社モルテン (105)
【Fターム(参考)】