インクジェット式プリントヘッドおよびその製造方法
【課題】製造時に封止樹脂内に空気が入り込むことを防止可能なインクジェット式プリントヘッドを提供する。
【解決手段】インクジェット式プリントヘッドH1000は、記録素子基板H1100,H1101の周囲に形成され、電気配線基板H1300と記録素子基板H1100,H1101とを隔てる凹部H7001,H7002を有する。また、プリントヘッドH1000は、凹部H7001,H7002に架かり、電気配線基板H1300と記録素子基板H1100,H1101とを接続する電極端子H1302を有する。また、プリントヘッドH1000は、凹部H7001,H7002の底面の、電極端子H1302に対向する位置の近傍に形成された溝部H6003,H6004を有する。凹部H7001,H7002および溝部H6003,H6004には第1の封止樹脂H1307が充填されている。
【解決手段】インクジェット式プリントヘッドH1000は、記録素子基板H1100,H1101の周囲に形成され、電気配線基板H1300と記録素子基板H1100,H1101とを隔てる凹部H7001,H7002を有する。また、プリントヘッドH1000は、凹部H7001,H7002に架かり、電気配線基板H1300と記録素子基板H1100,H1101とを接続する電極端子H1302を有する。また、プリントヘッドH1000は、凹部H7001,H7002の底面の、電極端子H1302に対向する位置の近傍に形成された溝部H6003,H6004を有する。凹部H7001,H7002および溝部H6003,H6004には第1の封止樹脂H1307が充填されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット式プリントヘッドおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に一般的なインクジェット式プリントヘッドが開示されている。図11は特許文献1に開示された一般的なインクジェット式プリントヘッド100の概略構成図である。図11(a)は斜視図であり、図11(b)は図11(a)のA−A線に沿った断面の拡大図であり、図11(c)は図11(a)のB−B線に沿った断面の拡大図である。
【0003】
インクジェット式プリントヘッド(以下、「プリントヘッド」ともいう。)100は、用紙等の記録媒体に記録を行う記録装置本体(不図示)に搭載可能である。図11(a)に示すように、プリントヘッド100には、矩形状の2つの記録素子基板1a,1b、および該記録素子基板1a,1bを保持する支持基板8が設けられている。
【0004】
プリントヘッド100には、記録装置本体に搭載されたときに、記録装置本体からの電気パルス信号を記録素子基板1a,1bに伝達するための、電気コンタクト基板16および電気配線基板11が設けられている。電気配線基板11は、支持基板8に支持されている。
【0005】
図11(b)および図11(c)に示すように、記録素子基板1aには、基板2と、該基板2上を覆うように形成された吐出口プレート5と、が設けられている。基板2上には、電気熱変換素子である吐出エネルギー発生素子4が設けられている。吐出口プレート5の、吐出エネルギー発生素子4に対向する位置に、吐出口6が形成されている。
【0006】
記録素子基板1aの4つの側面と支持板9との間には凹部17が形成されている。また、支持板9の、凹部17に対応する部分には、凹部より幅の狭い溝部28が形成されている。したがって、記録素子基板1aの周囲は全周にわたって凹部17および溝部28に囲まれている。
【0007】
図11(c)に示すように、記録素子基板1aと電気配線基板11とを電気的に接続する電極端子13が凹部17上に架かっている。記録素子基板1aは、電気配線基板11から伝達された電気パルス信号に応じて、吐出エネルギー発生素子4を駆動し、吐出口6からインクを吐出する。
【0008】
プリントヘッド100の製造時に、第1の封止樹脂18は、未硬化の状態で凹部17にディスペンス方式で注入される。凹部17に注入された未硬化の状態の第1の封止樹脂18は、毛細管現象により溝部28に沿って流動し、凹部17の全体に充填される。凹部17に充填された第1の封止樹脂18は加熱されることにより硬化させられる。
【0009】
プリントヘッド100では、第1の封止樹脂18により、インクによる支持基板8の腐食や、インクによる記録素子基板1aと電気配線基板11とのショートなどを防止可能である。
【0010】
また、図11(c)に示すように、電極端子13上を覆うように第2の封止樹脂19が形成される。プリントヘッド100の製造時に、第2の封止樹脂19は、未硬化の状態で電極端子13上に塗布され、第1の封止樹脂18と同様に加熱されることにより硬化させられる。
【0011】
プリントヘッド100では、第2の封止樹脂19によって、電極端子13を保護し、インクによる電極端子13の腐食などを防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2002−019120号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
図11に示すプリントヘッド100を製造する場合、上述したように、未硬化の第1の封止樹脂18を凹部17の溝部28上に注入する。その際、溝部28の幅が狭いため、未硬化の第1の封止樹脂18の表面張力等により、未硬化の第1の封止樹脂18が凹部17から溝部28に入り込まない部分が生じる場合がある。
【0014】
このような場合、未硬化の第1の封止樹脂18を凹部17に充填させた後に、未硬化の第1の封止樹脂18内に空気が残存してしまう。未硬化の第1の封止樹脂18内の空気は気泡となり、径が1mm以上に成長することもある。
【0015】
未硬化の第1の封止樹脂18内で気泡が破裂すると、未硬化の第1の封止樹脂18が周囲に散乱し、記録素子基板1a等に付着することがある。これにより、記録素子基板1aは適切なインクの吐出を行えなくなることがある。
【0016】
また、第1の封止樹脂18および第2の封止樹脂19を硬化させるために加熱するときに、第1の封止樹脂18内の気泡が第2の封止樹脂19内に移動することがある。この場合、電極端子13と、これを覆う第2の封止樹脂19との間に隙間ができ、電極端子13の封止欠陥となることがある。このような課題が特許文献1の記載のプリントヘッドにはあった。
【0017】
そこで、本発明は、製造時に封止樹脂内に空気が入り込むことを防止可能なインクジェット式プリントヘッドおよびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記目的を達成するため、電気配線基板から伝達された信号に応じて記録素子基板に形成された吐出口からインクを吐出して記録媒体に記録を行うインクジェット式プリントヘッドであって、前記記録素子基板の周囲に形成され、該記録素子基板と前記電気配線基板とを隔てる凹部と、前記凹部に架かり、前記記録素子基板と前記電気配線基板とを接続する電極端子と、前記電極端子が接続された前記記録素子基板の端部に対応し、該端部の近傍における前記凹部の底面に形成された溝部と、前記凹部および前記溝部に充填された封止樹脂と、を有する。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、製造時に封止樹脂内に空気が入り込むことを防止可能なインクジェット式プリントヘッドおよびその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施形態に係るプリントヘッドの分解斜視図である。
【図2】図1に示した記録素子基板の斜視図である。
【図3】図1に示した記録素子基板の斜視図である。
【図4】図1に示した支持基板の概略構成図である。
【図5】図1に示したプリントヘッドの製造時の状態を示した図である。
【図6】図1に示したプリントヘッドの製造時の状態を示した図である。
【図7】封止樹脂塗布装置の概略構成図である。
【図8】図6のA1−A1線に沿った断面図である。
【図9】図1に示したプリントヘッドの製造時の状態を示した図である。
【図10】図1に示したプリントヘッドの分解斜視図である。
【図11】一般的なプリントヘッドの概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
次に、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0022】
図1は本発明の一実施形態に係るインクジェット式プリントヘッド(以下、「プリントヘッド」ともいう。)H1000の分解斜視図である。プリントヘッドH1000は、用紙等の記録媒体に記録を行う記録装置本体(不図示)に搭載可能である。プリントヘッドH1000は、記録素子ユニットH1002およびインク供給ユニットH1003の2つのユニットから構成されている。
【0023】
インク供給ユニットH1003には、記録素子ユニットH1002に供給するインクを貯留するインクタンク(不図示)を保持するタンクホルダーH2000が着脱可能である。インク供給ユニットH1003は、タンクホルダーH2000に取り付けられたインクタンク内のインクを記録素子ユニットH1002に供給可能な構成を有している。
【0024】
具体的には、インク供給ユニットH1003には、インク供給部材H1500、流路形成部材H1600、ジョイントゴムH2300、フィルターH1700、シールゴムH1800などが設けられている。
【0025】
記録素子ユニットH1002には、矩形状の2つの記録素子基板H1100,H1101と、支持基板H1201および支持板H1202からなる支持部材H1200と、が設けられている。記録素子基板H1100,H1101は支持基板H1201に保持されている。支持部材H1200には、インク供給ユニットH1003から供給されたインクを各記録素子基板H1100,H1101に送るためのインク供給路が形成されている。
【0026】
記録素子ユニットH1002には、プリントヘッドH1000が搭載された記録装置本体からの電気パルス信号を記録素子基板H1100,H1101に伝達するための、電気コンタクト基板H2200および電気配線基板H1300が設けられている。
【0027】
図2および図3は、記録素子基板H1100および記録素子基板H1101の一部を破断して示した斜視図である。記録素子基板H1100,H1101には、厚さが約0.5mm〜1mmであるSi基板H1110に、Siの結晶方位を利用した異方性エッチングによって裏側の面から表側の面に貫通させられたインク供給口H1102が形成されている。
【0028】
プリントヘッドH1000はバブルジェット方式のサイドシューター型であり、各記録素子基板H1100,H1101には複数の電気熱変換素子H1103が配列されている。電気熱変換素子H1103は、Si基板H1110の表面にインク供給口H1102に沿って千鳥状に配列されている。
【0029】
Si基板H1110の表面上には、吐出口プレートH1111が設けられている。吐出口プレートH1111には、電気熱変換素子H1103に対向する位置に形成された吐出口H1107と、インク供給口H1102に供給されたインクを吐出口H1107に導くためのインク流路を形成するインク流路壁H1106と、が設けられている。
【0030】
各電気熱変換素子H1103は、Si基板H1110の両端の2辺に配列された電極H1104に接続されている。電気熱変換素子H1103、および該電気熱変換素子H1103と電極H1104とを接続する配線(不図示)は、成膜技術により形成されている。各電極H1104上にはAuによりバンプH1005が形成されている。
【0031】
電気熱変換素子H1103は、記録装置本体からの電気パルス信号に応じて熱エネルギーを発生させ、インクに膜沸騰を生じさせる。これにより、インクが吐出口H1107から吐出される。
【0032】
図4は、図1に示した記録素子ユニットH1002の支持基板H1201を拡大して示した図であり、図4(a)は平面図であり、図4(b)は図4(a)の6A−6A線に沿った断面図である。
【0033】
支持基板H1201は、アルミナ(Al2O3)の粉末を圧縮成形した後に焼成して形成される。支持基板H1201の厚さは0.5mm〜10mm程度であることが望ましい。なお、支持基板H1201を形成する材料はアルミナに限らない。支持基板H1201を形成する材料は、記録素子基板H1100,H1101を形成する材料と線膨張率が同等であり、かつ、当該材料と熱伝導率が同等以上である材料であることが望ましい。支持基板H1201を形成する材料としては、たとえば、窒化アルミニウム(AlN)、窒化珪素(Si3N4)、炭化珪素(SiC)が挙げられる。
【0034】
支持基板H1201には、インク供給ユニットH1003(図1参照)から供給されたインクを、記録素子基板H1100,H1101に設けられたインク供給口H1102に導くためのインク供給口H6001,H6002が設けられている。
【0035】
また、支持基板H1201には、各インク供給口H6001,H6002の長手方向の両端部の近傍にそれぞれ溝部H6003,H6004が設けられている。換言すると、溝部H6003,H6004は、支持基板H1201の記録素子基板H1100,H1101が設けられた面の外周の、長手方向に対向する2辺の近傍に設けられている。各溝部H6003,H6004は、それぞれ第1の部分H6003a,H6004aおよび第2の部分H6003b,H6004bにより構成されている。
【0036】
溝部H6003,H6004の各第1の部分H6003a,H6004aは、インク供給口H6001,H6002の長手方向の端部に対向配置されている。溝部H6003,H6004の第2の部分H6003b,H6004bは、第1の部分H6003a,H6004aの両端部からインク供給口H6001,H6002の長手方向で、かつ、互いに近接する方向に、所定の長さだけ延びている。
【0037】
溝部H6003,H6004の第2の部分H6003b,H6004bの幅W2は、溝部H6003,H6004の各第1の部分H6003a,H6004aの幅W1より広い。
【0038】
図5に支持基板H1201上に記録素子基板H1100,H1101および支持板H1202を接着した状態を示している。図5(a)は平面図であり、図5(b)は図5(a)の7A−7A線に沿った断面図であり、図5(c)は図5(a)の7B−7B線に沿った断面図である。
【0039】
支持板H1202は、支持基板H1201に第1の接着剤を介して接着されている。第1の接着剤は、耐インク性のあるものが望ましい。記録素子基板H1100,H1101は、支持基板H1201に第2の接着剤を介して接着されている。第1の接着剤の層も第2の接着剤の層も、その厚さが50μm以下であることが望ましい。
【0040】
支持板H1202は、記録素子基板H1100,H1101と電気配線基板H1300との支持基板H1201からの高さが同程度になるように、記録素子基板H1100,H1101と同等の厚さに形成される。したがって、支持板H1202の厚さも0.5mm〜1.0mm程度である。また、支持板H1202は、アルミナで形成されているが、支持基板H1201を形成する材料と同等の線膨張率を有する材料(セラミック材料や金属材料など)で形成されていればよい。
【0041】
支持板H1202には開口部H1204,H1205が形成されており、該開口部H1204,H1205の中央部に記録素子基板H1100,H1101が配置されている。したがって、記録素子基板H1100,H1101の周囲には、支持板H1202との間に、支持基板H1201の表面を底面とする凹部H7001,H7002が形成される。凹部H7001,H7002には、溝部H6003,H6004の第2の部分H6003b,H6004bの先端部が露出している。
【0042】
図5に示した状態では、図4に示した支持基板H1201のインク供給口H6002が、図2および図3に示した記録素子基板H1100のインク供給口H1102に連通している。
【0043】
図6は、図5に示した支持板H1202上に電気配線基板H1300を取り付けた状態を示した平面図である。電気配線基板H1300にも支持板H1202の開口部H1204,H1205と同様の開口部が形成されている。電気配線基板H1300は、当該開口部の位置と、支持板H1202の開口部H1204,H1205の位置とが一致するように位置決めされ、支持板H1202上に第3の接着剤を介して接着されている。
【0044】
記録素子基板H1100,H1101と電気配線基板H1300とは、凹部H7001,H7002を挟んで離間しているが、記録素子基板H1100,H1101の電極H1104と電気配線基板H1300とは、電極端子H1302を介して接続されている。電極H1104と電極端子H1302とは、たとえば、熱超音波接合法により接続される。
【0045】
電極端子H1302は、凹部H7001,H7002上に架かり、記録装置本体からの電気パルス信号を電気配線基板H1300から記録素子基板H1100,H1101の電極H1104に伝達する。
【0046】
次に、本実施形態に係る封止樹脂の形成方法について説明する。封止樹脂の形成は、図6に示した状態で行う。
【0047】
図7は、本実施形態で用いる封止樹脂塗布装置1700の概略構成を示した斜視図である。封止樹脂塗布装置1700では、ステージ1701に封止樹脂の塗布対象物である図6に示した組立体がセットされる。ステージ1701は、矢印で示すようにX軸方向、Y軸方向、およびZ軸方向に移動可能である。
【0048】
また、封止樹脂塗布装置1700は吐出装置1702を備え、該吐出装置1702には、未硬化の第1の封止樹脂H1307が充填されたシリンジ1703と、未硬化の第2の封止樹脂が充填されたシリンジ1704と、が接続されている。
【0049】
シリンジ1703,1704の先端には、未硬化の封止樹脂を吐出可能なニードル1703a,1704aが取り付けられている。ニードル1703aには、外径が凹部H7001,H7002の幅よりも小さいものを用いる。具体的には、ニードル1703aの外径は、凹部H7001,H7002の幅よりも0.2mm〜0.6mm程度小さいことが望ましい。
【0050】
図6を用いて、未硬化の第1の封止樹脂H1307の凹部H7001,H7002への充填方法について説明する。
【0051】
まず、シリンジ1703のニードル1703aが凹部H7001のH6003bのない部分Aの上部に移動する。ニードル1703aの先端部と、電気配線基板H1300の表面と、の距離は−0.2mm〜0.3mm程度であることが望ましい。この状態で、ニードル1703aの先端部から未硬化の第1の封止樹脂H1307が連続的に吐出されるとともに、ニードル1703aが部分A’まで移動させられる。
【0052】
このように、部分Aから部分A’の間に未硬化の第1の封止樹脂H1307が注入される。同様に、部分Bから部分B’の間、部分Cから部分C’の間、および部分Dから部分D’の間にも、未硬化の第1の封止樹脂H1307が注入される。部分Aから部分A’、部分Bから部分B’、部分Cから部分C’、および部分Dから部分D’における凹部H7001,H7002の底面は平坦であるため、未硬化の第1の封止樹脂内に空気が混入することを抑制できる。
【0053】
これにより、封止樹脂内への空気が混入し、その気泡の破裂による封止樹脂の記録素子基板への付着による印刷品質の低下を抑制でき、製造歩留まりの向上によるコストダウン効果がある。
【0054】
凹部H7001,H7002に注入された未硬化の第1の封止樹脂H1307は、第2の部分H6003b,H6004bの先端部から、溝部H6003,H6004内に入り、溝部6003,H6004内が未硬化の第1の封止樹脂H1307で満たされる。
【0055】
溝部H6003,H6004の第2の部分H6003b,H6004bは第1の部分H6003a,H6004aより幅が広いため、未硬化の第1の封止樹脂H1307が進入しやすい。第1の封止樹脂としては、未硬化の状態で粘性の低く、流動性に富むものを用いることが望ましい。
【0056】
また、溝部H6003,H6004の第1の部分H6003a,H6004aの幅は狭いため、毛細管現象により、未硬化の第1の封止樹脂H1307が溝部H6003,H6004の全体に広がりやすい。
【0057】
以上のように凹部H7001,H7002に注入された第1の封止樹脂は、溝部6003,H6004内を満たすとともに、凹部H7001,H7002の全体を満たす。
【0058】
図8は図6において凹部H7001,H7002内が未硬化の第1の封止樹脂H1307で充填された後のA1−A1線に沿った断面図である。本図に示すように、未硬化の第1の封止樹脂H1307が、凹部H7001,H7002上に架かる電極端子H1302まで達している。
【0059】
このように、図6に示す状態において第2の部分H6003b,H6004bの先端部が凹部H7001,H7002に露出されているため、未硬化の第1の封止樹脂H1307を迅速に電極端子H1302まで到達させることができる。
【0060】
以上のように、凹部H7001,H7002内への未硬化の第1の封止樹脂H1307の充填が終了したら、シリンジ1704によって、図9に示すように、未硬化の第2の封止樹脂H1308の塗布を行う。
【0061】
シリンジ1704のニードル1704aの先端部は、部分Eの、図8に示す電極端子H1302よりやや上方に配置される。この状態で、ニードル1704aの先端部から未硬化の第2の封止樹脂H1308が連続的に吐出されるとともに、ニードル1704aが部分E’まで移動させられる。
【0062】
このように、部分Eから部分E’の間に未硬化の第2の封止樹脂H1308が塗布される。同様に、部分Fから部分F’の間、部分Gから部分G’の間、および部分Hから部分H’の間にも、未硬化の第2の封止樹脂H1308が塗布される。
【0063】
その後、第1の封止樹脂H1307および第2の封止樹脂H1308は、加熱することにより硬化させられる。
【0064】
本実施形態では第1の封止樹脂H1307および第2の封止樹脂H1308に熱硬化型エポキシ樹脂を用いた。また、封止樹脂の加熱には、加熱恒温槽を用いた。封止樹脂H1307,H1308には、硬化する温度条件が同様であるものを用いることが望ましい。
【0065】
記録素子ユニットH1002およびインク供給ユニットH1003を組み立てた状態を図10に示す。記録素子ユニットH1002、インク供給ユニットH1003およびタンクホルダーH2000が組み合わされて、プリントヘッドH1000となる。
【符号の説明】
【0066】
H1000 インクジェット式プリントヘッド
H1100,H1101 記録素子基板
H1300 電気配線基板
H1302 電極端子
H6003,H6004 溝部
H7001,H7002 凹部
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット式プリントヘッドおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に一般的なインクジェット式プリントヘッドが開示されている。図11は特許文献1に開示された一般的なインクジェット式プリントヘッド100の概略構成図である。図11(a)は斜視図であり、図11(b)は図11(a)のA−A線に沿った断面の拡大図であり、図11(c)は図11(a)のB−B線に沿った断面の拡大図である。
【0003】
インクジェット式プリントヘッド(以下、「プリントヘッド」ともいう。)100は、用紙等の記録媒体に記録を行う記録装置本体(不図示)に搭載可能である。図11(a)に示すように、プリントヘッド100には、矩形状の2つの記録素子基板1a,1b、および該記録素子基板1a,1bを保持する支持基板8が設けられている。
【0004】
プリントヘッド100には、記録装置本体に搭載されたときに、記録装置本体からの電気パルス信号を記録素子基板1a,1bに伝達するための、電気コンタクト基板16および電気配線基板11が設けられている。電気配線基板11は、支持基板8に支持されている。
【0005】
図11(b)および図11(c)に示すように、記録素子基板1aには、基板2と、該基板2上を覆うように形成された吐出口プレート5と、が設けられている。基板2上には、電気熱変換素子である吐出エネルギー発生素子4が設けられている。吐出口プレート5の、吐出エネルギー発生素子4に対向する位置に、吐出口6が形成されている。
【0006】
記録素子基板1aの4つの側面と支持板9との間には凹部17が形成されている。また、支持板9の、凹部17に対応する部分には、凹部より幅の狭い溝部28が形成されている。したがって、記録素子基板1aの周囲は全周にわたって凹部17および溝部28に囲まれている。
【0007】
図11(c)に示すように、記録素子基板1aと電気配線基板11とを電気的に接続する電極端子13が凹部17上に架かっている。記録素子基板1aは、電気配線基板11から伝達された電気パルス信号に応じて、吐出エネルギー発生素子4を駆動し、吐出口6からインクを吐出する。
【0008】
プリントヘッド100の製造時に、第1の封止樹脂18は、未硬化の状態で凹部17にディスペンス方式で注入される。凹部17に注入された未硬化の状態の第1の封止樹脂18は、毛細管現象により溝部28に沿って流動し、凹部17の全体に充填される。凹部17に充填された第1の封止樹脂18は加熱されることにより硬化させられる。
【0009】
プリントヘッド100では、第1の封止樹脂18により、インクによる支持基板8の腐食や、インクによる記録素子基板1aと電気配線基板11とのショートなどを防止可能である。
【0010】
また、図11(c)に示すように、電極端子13上を覆うように第2の封止樹脂19が形成される。プリントヘッド100の製造時に、第2の封止樹脂19は、未硬化の状態で電極端子13上に塗布され、第1の封止樹脂18と同様に加熱されることにより硬化させられる。
【0011】
プリントヘッド100では、第2の封止樹脂19によって、電極端子13を保護し、インクによる電極端子13の腐食などを防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2002−019120号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
図11に示すプリントヘッド100を製造する場合、上述したように、未硬化の第1の封止樹脂18を凹部17の溝部28上に注入する。その際、溝部28の幅が狭いため、未硬化の第1の封止樹脂18の表面張力等により、未硬化の第1の封止樹脂18が凹部17から溝部28に入り込まない部分が生じる場合がある。
【0014】
このような場合、未硬化の第1の封止樹脂18を凹部17に充填させた後に、未硬化の第1の封止樹脂18内に空気が残存してしまう。未硬化の第1の封止樹脂18内の空気は気泡となり、径が1mm以上に成長することもある。
【0015】
未硬化の第1の封止樹脂18内で気泡が破裂すると、未硬化の第1の封止樹脂18が周囲に散乱し、記録素子基板1a等に付着することがある。これにより、記録素子基板1aは適切なインクの吐出を行えなくなることがある。
【0016】
また、第1の封止樹脂18および第2の封止樹脂19を硬化させるために加熱するときに、第1の封止樹脂18内の気泡が第2の封止樹脂19内に移動することがある。この場合、電極端子13と、これを覆う第2の封止樹脂19との間に隙間ができ、電極端子13の封止欠陥となることがある。このような課題が特許文献1の記載のプリントヘッドにはあった。
【0017】
そこで、本発明は、製造時に封止樹脂内に空気が入り込むことを防止可能なインクジェット式プリントヘッドおよびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記目的を達成するため、電気配線基板から伝達された信号に応じて記録素子基板に形成された吐出口からインクを吐出して記録媒体に記録を行うインクジェット式プリントヘッドであって、前記記録素子基板の周囲に形成され、該記録素子基板と前記電気配線基板とを隔てる凹部と、前記凹部に架かり、前記記録素子基板と前記電気配線基板とを接続する電極端子と、前記電極端子が接続された前記記録素子基板の端部に対応し、該端部の近傍における前記凹部の底面に形成された溝部と、前記凹部および前記溝部に充填された封止樹脂と、を有する。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、製造時に封止樹脂内に空気が入り込むことを防止可能なインクジェット式プリントヘッドおよびその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施形態に係るプリントヘッドの分解斜視図である。
【図2】図1に示した記録素子基板の斜視図である。
【図3】図1に示した記録素子基板の斜視図である。
【図4】図1に示した支持基板の概略構成図である。
【図5】図1に示したプリントヘッドの製造時の状態を示した図である。
【図6】図1に示したプリントヘッドの製造時の状態を示した図である。
【図7】封止樹脂塗布装置の概略構成図である。
【図8】図6のA1−A1線に沿った断面図である。
【図9】図1に示したプリントヘッドの製造時の状態を示した図である。
【図10】図1に示したプリントヘッドの分解斜視図である。
【図11】一般的なプリントヘッドの概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
次に、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0022】
図1は本発明の一実施形態に係るインクジェット式プリントヘッド(以下、「プリントヘッド」ともいう。)H1000の分解斜視図である。プリントヘッドH1000は、用紙等の記録媒体に記録を行う記録装置本体(不図示)に搭載可能である。プリントヘッドH1000は、記録素子ユニットH1002およびインク供給ユニットH1003の2つのユニットから構成されている。
【0023】
インク供給ユニットH1003には、記録素子ユニットH1002に供給するインクを貯留するインクタンク(不図示)を保持するタンクホルダーH2000が着脱可能である。インク供給ユニットH1003は、タンクホルダーH2000に取り付けられたインクタンク内のインクを記録素子ユニットH1002に供給可能な構成を有している。
【0024】
具体的には、インク供給ユニットH1003には、インク供給部材H1500、流路形成部材H1600、ジョイントゴムH2300、フィルターH1700、シールゴムH1800などが設けられている。
【0025】
記録素子ユニットH1002には、矩形状の2つの記録素子基板H1100,H1101と、支持基板H1201および支持板H1202からなる支持部材H1200と、が設けられている。記録素子基板H1100,H1101は支持基板H1201に保持されている。支持部材H1200には、インク供給ユニットH1003から供給されたインクを各記録素子基板H1100,H1101に送るためのインク供給路が形成されている。
【0026】
記録素子ユニットH1002には、プリントヘッドH1000が搭載された記録装置本体からの電気パルス信号を記録素子基板H1100,H1101に伝達するための、電気コンタクト基板H2200および電気配線基板H1300が設けられている。
【0027】
図2および図3は、記録素子基板H1100および記録素子基板H1101の一部を破断して示した斜視図である。記録素子基板H1100,H1101には、厚さが約0.5mm〜1mmであるSi基板H1110に、Siの結晶方位を利用した異方性エッチングによって裏側の面から表側の面に貫通させられたインク供給口H1102が形成されている。
【0028】
プリントヘッドH1000はバブルジェット方式のサイドシューター型であり、各記録素子基板H1100,H1101には複数の電気熱変換素子H1103が配列されている。電気熱変換素子H1103は、Si基板H1110の表面にインク供給口H1102に沿って千鳥状に配列されている。
【0029】
Si基板H1110の表面上には、吐出口プレートH1111が設けられている。吐出口プレートH1111には、電気熱変換素子H1103に対向する位置に形成された吐出口H1107と、インク供給口H1102に供給されたインクを吐出口H1107に導くためのインク流路を形成するインク流路壁H1106と、が設けられている。
【0030】
各電気熱変換素子H1103は、Si基板H1110の両端の2辺に配列された電極H1104に接続されている。電気熱変換素子H1103、および該電気熱変換素子H1103と電極H1104とを接続する配線(不図示)は、成膜技術により形成されている。各電極H1104上にはAuによりバンプH1005が形成されている。
【0031】
電気熱変換素子H1103は、記録装置本体からの電気パルス信号に応じて熱エネルギーを発生させ、インクに膜沸騰を生じさせる。これにより、インクが吐出口H1107から吐出される。
【0032】
図4は、図1に示した記録素子ユニットH1002の支持基板H1201を拡大して示した図であり、図4(a)は平面図であり、図4(b)は図4(a)の6A−6A線に沿った断面図である。
【0033】
支持基板H1201は、アルミナ(Al2O3)の粉末を圧縮成形した後に焼成して形成される。支持基板H1201の厚さは0.5mm〜10mm程度であることが望ましい。なお、支持基板H1201を形成する材料はアルミナに限らない。支持基板H1201を形成する材料は、記録素子基板H1100,H1101を形成する材料と線膨張率が同等であり、かつ、当該材料と熱伝導率が同等以上である材料であることが望ましい。支持基板H1201を形成する材料としては、たとえば、窒化アルミニウム(AlN)、窒化珪素(Si3N4)、炭化珪素(SiC)が挙げられる。
【0034】
支持基板H1201には、インク供給ユニットH1003(図1参照)から供給されたインクを、記録素子基板H1100,H1101に設けられたインク供給口H1102に導くためのインク供給口H6001,H6002が設けられている。
【0035】
また、支持基板H1201には、各インク供給口H6001,H6002の長手方向の両端部の近傍にそれぞれ溝部H6003,H6004が設けられている。換言すると、溝部H6003,H6004は、支持基板H1201の記録素子基板H1100,H1101が設けられた面の外周の、長手方向に対向する2辺の近傍に設けられている。各溝部H6003,H6004は、それぞれ第1の部分H6003a,H6004aおよび第2の部分H6003b,H6004bにより構成されている。
【0036】
溝部H6003,H6004の各第1の部分H6003a,H6004aは、インク供給口H6001,H6002の長手方向の端部に対向配置されている。溝部H6003,H6004の第2の部分H6003b,H6004bは、第1の部分H6003a,H6004aの両端部からインク供給口H6001,H6002の長手方向で、かつ、互いに近接する方向に、所定の長さだけ延びている。
【0037】
溝部H6003,H6004の第2の部分H6003b,H6004bの幅W2は、溝部H6003,H6004の各第1の部分H6003a,H6004aの幅W1より広い。
【0038】
図5に支持基板H1201上に記録素子基板H1100,H1101および支持板H1202を接着した状態を示している。図5(a)は平面図であり、図5(b)は図5(a)の7A−7A線に沿った断面図であり、図5(c)は図5(a)の7B−7B線に沿った断面図である。
【0039】
支持板H1202は、支持基板H1201に第1の接着剤を介して接着されている。第1の接着剤は、耐インク性のあるものが望ましい。記録素子基板H1100,H1101は、支持基板H1201に第2の接着剤を介して接着されている。第1の接着剤の層も第2の接着剤の層も、その厚さが50μm以下であることが望ましい。
【0040】
支持板H1202は、記録素子基板H1100,H1101と電気配線基板H1300との支持基板H1201からの高さが同程度になるように、記録素子基板H1100,H1101と同等の厚さに形成される。したがって、支持板H1202の厚さも0.5mm〜1.0mm程度である。また、支持板H1202は、アルミナで形成されているが、支持基板H1201を形成する材料と同等の線膨張率を有する材料(セラミック材料や金属材料など)で形成されていればよい。
【0041】
支持板H1202には開口部H1204,H1205が形成されており、該開口部H1204,H1205の中央部に記録素子基板H1100,H1101が配置されている。したがって、記録素子基板H1100,H1101の周囲には、支持板H1202との間に、支持基板H1201の表面を底面とする凹部H7001,H7002が形成される。凹部H7001,H7002には、溝部H6003,H6004の第2の部分H6003b,H6004bの先端部が露出している。
【0042】
図5に示した状態では、図4に示した支持基板H1201のインク供給口H6002が、図2および図3に示した記録素子基板H1100のインク供給口H1102に連通している。
【0043】
図6は、図5に示した支持板H1202上に電気配線基板H1300を取り付けた状態を示した平面図である。電気配線基板H1300にも支持板H1202の開口部H1204,H1205と同様の開口部が形成されている。電気配線基板H1300は、当該開口部の位置と、支持板H1202の開口部H1204,H1205の位置とが一致するように位置決めされ、支持板H1202上に第3の接着剤を介して接着されている。
【0044】
記録素子基板H1100,H1101と電気配線基板H1300とは、凹部H7001,H7002を挟んで離間しているが、記録素子基板H1100,H1101の電極H1104と電気配線基板H1300とは、電極端子H1302を介して接続されている。電極H1104と電極端子H1302とは、たとえば、熱超音波接合法により接続される。
【0045】
電極端子H1302は、凹部H7001,H7002上に架かり、記録装置本体からの電気パルス信号を電気配線基板H1300から記録素子基板H1100,H1101の電極H1104に伝達する。
【0046】
次に、本実施形態に係る封止樹脂の形成方法について説明する。封止樹脂の形成は、図6に示した状態で行う。
【0047】
図7は、本実施形態で用いる封止樹脂塗布装置1700の概略構成を示した斜視図である。封止樹脂塗布装置1700では、ステージ1701に封止樹脂の塗布対象物である図6に示した組立体がセットされる。ステージ1701は、矢印で示すようにX軸方向、Y軸方向、およびZ軸方向に移動可能である。
【0048】
また、封止樹脂塗布装置1700は吐出装置1702を備え、該吐出装置1702には、未硬化の第1の封止樹脂H1307が充填されたシリンジ1703と、未硬化の第2の封止樹脂が充填されたシリンジ1704と、が接続されている。
【0049】
シリンジ1703,1704の先端には、未硬化の封止樹脂を吐出可能なニードル1703a,1704aが取り付けられている。ニードル1703aには、外径が凹部H7001,H7002の幅よりも小さいものを用いる。具体的には、ニードル1703aの外径は、凹部H7001,H7002の幅よりも0.2mm〜0.6mm程度小さいことが望ましい。
【0050】
図6を用いて、未硬化の第1の封止樹脂H1307の凹部H7001,H7002への充填方法について説明する。
【0051】
まず、シリンジ1703のニードル1703aが凹部H7001のH6003bのない部分Aの上部に移動する。ニードル1703aの先端部と、電気配線基板H1300の表面と、の距離は−0.2mm〜0.3mm程度であることが望ましい。この状態で、ニードル1703aの先端部から未硬化の第1の封止樹脂H1307が連続的に吐出されるとともに、ニードル1703aが部分A’まで移動させられる。
【0052】
このように、部分Aから部分A’の間に未硬化の第1の封止樹脂H1307が注入される。同様に、部分Bから部分B’の間、部分Cから部分C’の間、および部分Dから部分D’の間にも、未硬化の第1の封止樹脂H1307が注入される。部分Aから部分A’、部分Bから部分B’、部分Cから部分C’、および部分Dから部分D’における凹部H7001,H7002の底面は平坦であるため、未硬化の第1の封止樹脂内に空気が混入することを抑制できる。
【0053】
これにより、封止樹脂内への空気が混入し、その気泡の破裂による封止樹脂の記録素子基板への付着による印刷品質の低下を抑制でき、製造歩留まりの向上によるコストダウン効果がある。
【0054】
凹部H7001,H7002に注入された未硬化の第1の封止樹脂H1307は、第2の部分H6003b,H6004bの先端部から、溝部H6003,H6004内に入り、溝部6003,H6004内が未硬化の第1の封止樹脂H1307で満たされる。
【0055】
溝部H6003,H6004の第2の部分H6003b,H6004bは第1の部分H6003a,H6004aより幅が広いため、未硬化の第1の封止樹脂H1307が進入しやすい。第1の封止樹脂としては、未硬化の状態で粘性の低く、流動性に富むものを用いることが望ましい。
【0056】
また、溝部H6003,H6004の第1の部分H6003a,H6004aの幅は狭いため、毛細管現象により、未硬化の第1の封止樹脂H1307が溝部H6003,H6004の全体に広がりやすい。
【0057】
以上のように凹部H7001,H7002に注入された第1の封止樹脂は、溝部6003,H6004内を満たすとともに、凹部H7001,H7002の全体を満たす。
【0058】
図8は図6において凹部H7001,H7002内が未硬化の第1の封止樹脂H1307で充填された後のA1−A1線に沿った断面図である。本図に示すように、未硬化の第1の封止樹脂H1307が、凹部H7001,H7002上に架かる電極端子H1302まで達している。
【0059】
このように、図6に示す状態において第2の部分H6003b,H6004bの先端部が凹部H7001,H7002に露出されているため、未硬化の第1の封止樹脂H1307を迅速に電極端子H1302まで到達させることができる。
【0060】
以上のように、凹部H7001,H7002内への未硬化の第1の封止樹脂H1307の充填が終了したら、シリンジ1704によって、図9に示すように、未硬化の第2の封止樹脂H1308の塗布を行う。
【0061】
シリンジ1704のニードル1704aの先端部は、部分Eの、図8に示す電極端子H1302よりやや上方に配置される。この状態で、ニードル1704aの先端部から未硬化の第2の封止樹脂H1308が連続的に吐出されるとともに、ニードル1704aが部分E’まで移動させられる。
【0062】
このように、部分Eから部分E’の間に未硬化の第2の封止樹脂H1308が塗布される。同様に、部分Fから部分F’の間、部分Gから部分G’の間、および部分Hから部分H’の間にも、未硬化の第2の封止樹脂H1308が塗布される。
【0063】
その後、第1の封止樹脂H1307および第2の封止樹脂H1308は、加熱することにより硬化させられる。
【0064】
本実施形態では第1の封止樹脂H1307および第2の封止樹脂H1308に熱硬化型エポキシ樹脂を用いた。また、封止樹脂の加熱には、加熱恒温槽を用いた。封止樹脂H1307,H1308には、硬化する温度条件が同様であるものを用いることが望ましい。
【0065】
記録素子ユニットH1002およびインク供給ユニットH1003を組み立てた状態を図10に示す。記録素子ユニットH1002、インク供給ユニットH1003およびタンクホルダーH2000が組み合わされて、プリントヘッドH1000となる。
【符号の説明】
【0066】
H1000 インクジェット式プリントヘッド
H1100,H1101 記録素子基板
H1300 電気配線基板
H1302 電極端子
H6003,H6004 溝部
H7001,H7002 凹部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気配線基板から伝達された信号に応じて記録素子基板に形成された吐出口からインクを吐出して記録媒体に記録を行うインクジェット式プリントヘッドであって、
前記記録素子基板の周囲に形成され、該記録素子基板と前記電気配線基板とを隔てる凹部と、
前記凹部に架かり、前記記録素子基板と前記電気配線基板とを接続する電極端子と、
前記電極端子が接続された前記記録素子基板の端部に対応し、該端部の近傍における前記凹部の底面に形成された溝部と、
前記凹部および前記溝部に充填された封止樹脂と、
を有するインクジェット式プリントヘッド。
【請求項2】
前記記録素子基板は前記吐出口が形成された矩形状の面を備え、該面の外周の対向する2辺に前記電極端子の端部が接続され、
前記溝部は、前記2辺に沿って形成された第1の部分と、該第1の部分の端部から、前記2辺に隣接する他の2辺に沿って所定の長さだけ延びた第2の部分と、を有する、請求項1に記載のインクジェット式プリントヘッド。
【請求項3】
前記第2の部分の幅は、前記第1の部分の幅よりも広い、請求項2に記載のインクジェット式プリントヘッド。
【請求項4】
請求項1から3に記載のインクジェット式プリントヘッドの製造方法であって、
前記凹部の、前記溝部が形成されていない部分から、前記凹部に未硬化の前記封止樹脂を注入する工程と、前記封止樹脂を硬化する工程と、を含むインクジェット式プリントヘッドの製造方法。
【請求項1】
電気配線基板から伝達された信号に応じて記録素子基板に形成された吐出口からインクを吐出して記録媒体に記録を行うインクジェット式プリントヘッドであって、
前記記録素子基板の周囲に形成され、該記録素子基板と前記電気配線基板とを隔てる凹部と、
前記凹部に架かり、前記記録素子基板と前記電気配線基板とを接続する電極端子と、
前記電極端子が接続された前記記録素子基板の端部に対応し、該端部の近傍における前記凹部の底面に形成された溝部と、
前記凹部および前記溝部に充填された封止樹脂と、
を有するインクジェット式プリントヘッド。
【請求項2】
前記記録素子基板は前記吐出口が形成された矩形状の面を備え、該面の外周の対向する2辺に前記電極端子の端部が接続され、
前記溝部は、前記2辺に沿って形成された第1の部分と、該第1の部分の端部から、前記2辺に隣接する他の2辺に沿って所定の長さだけ延びた第2の部分と、を有する、請求項1に記載のインクジェット式プリントヘッド。
【請求項3】
前記第2の部分の幅は、前記第1の部分の幅よりも広い、請求項2に記載のインクジェット式プリントヘッド。
【請求項4】
請求項1から3に記載のインクジェット式プリントヘッドの製造方法であって、
前記凹部の、前記溝部が形成されていない部分から、前記凹部に未硬化の前記封止樹脂を注入する工程と、前記封止樹脂を硬化する工程と、を含むインクジェット式プリントヘッドの製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2013−49227(P2013−49227A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−189346(P2011−189346)
【出願日】平成23年8月31日(2011.8.31)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年8月31日(2011.8.31)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
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