説明

インクジェット式画像形成装置および画像形成用コンピュータプログラム

【課題】装置構成の小型化および簡易化、または同装置構成の自由度を向上させることができるインクジェット式画像形成装置および同画像形成装置に実行される画像形成用コンピュータプログラムを提供する。
【解決手段】画像形成装置100は、記録メディアWKを副走査方向に搬送するX軸方向フィードモータと、画像形成キャリッジ106を主走査方向に変位させるY軸方向スキャンモータと、これらの作動を制御するコントローラ120とを備えている。画像形成装置106は、プリントヘッド106aとカッティングヘッド106bとを一体的に備えている。コントローラ120は、フラッシング処理実行プログラムを実行することにより、画像形成装置100による画像の切断形成処理の実行過程において、所定の時間間隔ごとに切断加工を中断してプリントヘッド106aのフラッシング処理を実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート状の記録メディアに印刷または切断加工を行うことによって所望の画像を形成する画像形成装置および同画像形成装置に実行される画像形成用コンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、紙などの記録メディアにインクの液滴を噴射した印刷による画像と、同記録メディアを刃物で切断した画像とを形成することができるインクジェット式画像形成装置がある。一般に、この種のインクジェット式画像形成装置は、プラテン上に保持した記録メディアを所定の搬送方向に変位させながら、インクの液滴を噴射するプリントヘッドおよび刃物を保持したカッティングヘッドからなる画像形成キャリッジを記録メディアの搬送方向に直交する方向に往復変位させて画像の印刷または切断を行う。
【0003】
この場合、インクジェット式画像形成装置は、例えば、下記特許文献1に示すように、
プリントヘッドとカッティングヘッドとを連結状態および非連結の分離状態で画像形成を行うように構成されている。すなわち、このインクジェット式画像形成装置においては、プリントヘッドとカッティングヘッドとを連結した状態で印刷による画像形成を行うとともに、カッティングヘッドからプリントヘッドを分離したカッティングヘッド単体で切断による画像形成を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−6531号公報
【0005】
このように、切断による画像形成時にカッティングヘッドからプリントヘッドを分離する理由は、切断による画像形成時にプリントヘッドを所定の待機位置にて待機させてインク噴射ノズルに蓋をするキャッピングにより、同インク噴射ノズル内外に存在するインクの増粘や凝固を防止してインクの噴射性能を良好に維持するためである。
【0006】
しかしながら、画像形成キャリッジをプリントヘッドとカッティングヘッドとが連結および分離可能な構成とすると、インクジェット式画像形成装置の構成を大型化および複雑化させるという問題がある。また、画像形成キャリッジをプリントヘッドとカッティングヘッドとを連結および分離可能な構成とする場合においても、画像形成キャリッジの構成が画像形成時において常に変位するカッティングヘッドに対してプリントヘッドを連結および分離する構成に限定されるため、インクジェット式画像形成装置の構成の自由度が低いという問題もあった。
【0007】
本発明は上記問題に対処するためなされたもので、その目的は、装置構成の小型化および簡易化、または同装置構成の自由度を向上させることができるインクジェット式画像形成装置および同画像形成装置に実行される画像形成用コンピュータプログラムを提供することにある。
【発明の概要】
【0008】
上記目的を達成するため、請求項1に係る本発明の特徴は、記録メディアにインクの液滴を噴射することにより画像を印刷形成するプリントヘッドおよび記録メディアを刃物で切断することにより画像を切断形成するカッティングヘッドを有する画像形成手段と、画像形成手段と記録メディアとを同一平面内における互いに直交する2方向に相対変位させるキャリッジ相対変位手段と、画像形成手段およびキャリッジ相対変位手段の作動を制御する制御手段とを備え、カッティングヘッドは、プリントヘッドとともに一体的に変位することにより記録メディアに画像を切断形成するインクジェット式画像形成装置であって、制御手段は、カッティングヘッドによる画像の切断形成処理の実行過程においてプリントヘッドのフラッシング処理を実行することにある。この場合、記録メディアの切断には、記録メディアを厚さ方向に貫通する切断ことおよび厚さ方向に部分的に切断ことを含むとともに、記録メディアを分離する切断および記録メディアを切り抜く切断を含むものである。
【0009】
このように構成した請求項1に係る本発明の特徴によれば、インクジェット式画像形成装置は、記録メディアに切断による画像を形成するカッティングヘッドがプリントヘッドとともに変位して画像形成を行なう際、プリントヘッドのフラッシング処理を実行する。この場合、プリントヘッドのフラッシング処理とは、プリントヘッドのインク噴射ノズルから所定量のインクを噴射させることにより、このインク噴射ノズルの内外に存在するインクの増粘や凝固を防止してインクの噴射性能を維持向上させるための動作である。これにより、インクジェット式画像形成装置は、プリントヘッドとカッティングヘッドとを一体化して画像形成手段を構成することができるほか、画像形成手段を常に変位するプリントヘッドに対してカッティングヘッドを連結および非連結させる構成とすることもできる。すなわち、本発明に係るインクジェット式画像形成装置によれば、装置構成を小型化および簡易化することができるとともに同装置構成の自由度を向上させることができる。
【0010】
また、請求項2に係る本発明の他の特徴は、前記インクジェット式画像形成装置において、制御装置は、所定時間間隔ごとに前記フラッシング処理を実行することにある。
【0011】
このように構成した請求項2に係る本発明の他の特徴によれば、インクジェット式画像形成装置は、所定時間間隔ごとにプリントヘッドのフラッシング処理を実行する。この場合、所定の時間間隔は、インクの種類に応じて数分〜数十分程度に設定するとよい。これにより、インクジェット式画像形成装置は、所定時間間隔ごとに定期的にフラッシング処理を実行するため、プリントヘッドにおけるインクの増粘や凝固を効果的に防止することができる。なお、プリントヘッドのフラッシングのタイミングとしては、所定時間間隔ごとのほかに、カッティングヘッドにおける刃物の昇降回数のカウント値や切断により画像を形成するための画像データの処理量などをトリガとして実行することができる。
【0012】
また、請求項3に係る本発明の他の特徴は、前記インクジェット式画像形成装置において、制御装置は、前記刃物が記録メディアから離隔しているとき、フラッシング処理を実行することにある。
【0013】
このように構成した請求項3に係る本発明の他の特徴によれば、インクジェット式画像形成装置は、カッティングヘッドにおける刃物が記録メディアから離隔しているとき、フラッシング処理を実行する。すなわち、インクジェット式画像形成装置は、カッティングヘッドにおける刃物が記録メディアを切断している状態においてはプリントヘッドのフラッシング処理は実行しない。これにより、インクジェット式画像形成装置は、記録メディアの切断処理を中断することがないため、切断による画像を精度良く形成することができる。
【0014】
また、請求項4に係る本発明の他の特徴は、前記インクジェット式画像形成装置において、画像形成キャリッジは、プリントヘッドおよびカッティングヘッドを一体的に備えていることにある。
【0015】
このように構成した請求項4に係る本発明の他の特徴によれば、インクジェット式画像形成装置は、画像形成キャリッジがプリントヘッドとカッティングヘッドとを一体的に備えている。これにより、インクジェット式画像形成装置は、プリントヘッドとカッティングヘッドとを連結および分離する機械的構成および制御的構成が不要となるため、簡単でコンパクトな構成にすることができる。
【0016】
さらに、本発明は、インクジェット式画像形成装置の発明として実施できるばかりでなく、インクジェット式画像形成装置に実行される画像形成用コンピュータプログラムの発明としても実施できるものである。これによっても、上記インクジェット式画像形成装置と同様の作用効果を期待できる。
【0017】
具体的には、請求項5に示すように、記録メディアにインクの液滴を噴射することにより画像を印刷形成するプリントヘッドおよび記録メディアを刃物で切断することにより画像を切断形成するカッティングヘッドを有する画像形成手段と、画像形成手段と記録メディアとを同一平面内における互いに直交する2方向に相対変位させるキャリッジ相対変位手段と、画像形成手段およびキャリッジ相対変位手段の作動を制御する制御手段とを備え、カッティングヘッドがプリントヘッドとともに一体的に変位することにより記録メディアに画像を切断形成するインクジェット式画像形成装置における制御装置に実行される画像形成用コンピュータプログラムであって、制御手段に、カッティングヘッドによる画像の切断形成処理の実行過程においてプリントヘッドのフラッシング処理を実行させるフラッシング処理実行ステップを含むようにするとよい。
【0018】
また、この場合、請求項6に示すように、前記画像形成用コンピュータプログラムにおいて、さらに、タイムカウントを開始するタイムカウント開始ステップと、タイムカウントの値が所定時間に達したか否かを判定する所定時間経過判定ステップとを含み、フラッシング処理実行ステップは、前記所定時間の経過ごとに実行されるようにするとよい。
【0019】
また、この場合、請求項7に示すように、前記画像形成用コンピュータプログラムにおいて、さらに、カッティングヘッドにおける刃物と記録メディアとの位置関係を判定する刃物状態判定ステップと、フラッシング処理実行ステップは、前記刃物が記録メディアから離隔しているときに実行されるようにするとよい。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施形態に係る画像形成装置の外観構成を概略的に示す斜視図である。
【図2】図1に示す画像形成装置の作動を制御するための制御システムのブロック図である。
【図3】図2に示す画像形成装置におけるコントローラが実行するフラッシング処理プログラムのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係る画像形成装置の一実施形態について図面を参照しながら説明する。図1は、本発明に係るインクジェット式画像形成装置100(以下、単に「画像形成装置100」という)の外観構成を概略的に示す斜視図である。また、図2は、同画像形成装置100の作動を制御するための制御システムのブロック図である。なお、本明細書において参照する各図は、本発明の理解を容易にするために一部の構成要素を誇張して表わすなど模式的に表している。このため、各構成要素間の寸法や比率などは異なっていることがある。この画像形成装置100は、画像の形成対象であるシート状の記録メディアWK(図において二点鎖線で示す)に対してインクを付着させるまたは刃物を用いて切断することにより所望する文字、記号または図形などの画像を印刷形成および切断形成する所謂プリント&カッティング装置である。
【0022】
(画像形成装置100の構成)
画像形成装置100は、平面部を有するとともに同平面部における画像形成装置100の前方側および後方側が図示下方に向かってそれぞれ湾曲したプラテン101を備えている。プラテン101は、前記平面部上に記録メディアWKが載置されて支持する載置台であり、図示左右(Y軸)方向に延びて形成されている。このプラテン101における平面部には、図示左右方向に沿って円筒状のグリッドローラ102がその上面部を露出させた状態で設けられている。グリッドローラ102は、後述するコントローラ120によって駆動が制御されるX軸方向フィードモータ103によって回転駆動される。なお、図1において、プラテン101が延びる長手方向(図示Y軸方向)を主走査方向、同主走査方向に直交する図示前後方向(図示X軸方向)を記録メディアWKが搬送される副走査方向とする。
【0023】
プラテン101の上方には、図示Y軸方向に延びるプラテン101に沿って長尺丸棒状のガイドロッド104が設けられている。ガイドロッド104は、図示しない案内スリーブを介して画像形成キャリッジ106を支持するとともに同画像形成キャリッジ106を図示Y軸方向に案内する鋼製の部品である。案内スリーブは、画像形成キャリッジ106の背面に固定された筒状の部品であり、ガイドロッド104が摺動可能な状態で貫通している。また、ガイドロッド104の後方には、図示しない駆動ベルトが図示Y軸方向に沿って架設されている。駆動ベルトは、Y軸方向スキャンモータ105によって回転駆動される環状の無端ベルトであり、画像形成キャリッジ106の背面に連結されている。すなわち、画像形成キャリッジ106は、駆動ベルトを介してY軸方向スキャンモータ105によりガイドロッド104上を摺動して図示Y軸方向に変位する。
【0024】
画像形成キャリッジ106は、画像の形成対象である記録メディアWKに対してインクを付着させるまたは刃物を用いて切断することにより所望する文字、記号または図形などの画像を形成する機械装置であり、プリントヘッド106aおよびカッティングヘッド106bを備えている。なお、図1においては、プリントヘッド106aおよびカッティングヘッド106bは、樹脂製カバー内に収められているためそれぞれ破線で示している。
【0025】
プリントヘッド106aは、前記コントローラ120によって作動が制御される複数のインクヘッドを備えて構成されている。各インクヘッドは、インクを貯留するインクカートリッジ107から供給される互いに異なる複数(例えば、4つ)の色のインクの液滴を図示しないインク噴射ノズルから記録メディアWKの表面に向けてそれぞれ吐出する。すなわち、プリントヘッド106aは、互いに異なる複数(例えば、4つ)の色のインクの組み合わせによって記録メディアWKの表面にカラー画像を印刷する。
【0026】
一方、カッティングヘッド106bは、記録メディアWKを切断するための図示しないカッターおよび同カッターを図示上下方向に変位させるためのカッター変位機構を備えている。この場合、カッター変位機構は、図示しないステッピングモータなどで構成されており、前記コントローラ120によって駆動が制御されることによりカッターを図示上下方向に変位させて同カッターの刃先を記録メディアWKの表面に接触および離脱させながら記録メディアWKを切断する。これらのプリントヘッド106aおよびカッティングヘッド106bを備えた画像形成キャリッジ106が、本発明に係る画像形成手段に相当する。
【0027】
また、プラテン101から露出するグリッドローラ102の両端側上方には、同グリッドローラ102に対向した状態でピンチローラ108がそれぞれ設けられている。なお、図1においては、一方(図示左側)のピンチローラ108のみ示している。ピンチローラ108は、グリッドローラ102と協働して記録メディアWKを挟持することにより同記録メディアWKを図示前後方向(図示X軸方向)に搬送するための部品であり、図示しない回転支持軸に支持されている。
【0028】
回転支持軸は、ユーザによる手動操作によって軸線回りに揺動回転する軸部品であり、ガイドロッド104の後方にて図示Y軸方向に沿って架設されている。この回転支持軸に支持された2つのピンチローラ108は、一方(図示左側)のピンチローラ108が回転支持軸の軸線方向に沿って摺動変位可能な状態で支持されており、他方(図示右側)のピンチローラ108が回転支持軸に固定的に支持されている。
【0029】
また、これら左右2つのピンチローラ108には、浮き規制体109がそれぞれ設けられている。浮き規制体109は、プラテン101上に載置された記録メディアWKの浮きを防止するための板状の部品であり、比較的弾性変形し易い素材、例えば、ステンレス材で構成されている。これら左右2つのピンチローラ108に取り付けられる左右2つの浮き規制体109は、互いに左右対称の形状に成形されている。
【0030】
画像形成キャリッジ106の待機位置におけるプラテン101内には、プリントヘッドクリーナ110(図1において図示せず)が設けられている。この場合、画像形成キャリッジ106の待機位置とは、画像形成キャリッジ106が図示Y軸方向に変位可能な範囲における一方(図示右側)の変位可能限界位置(図示最右端位置)であり、画像形成キャリッジ106の図示Y軸方向の変位の基準となる原点位置である。したがって、画像形成キャリッジ106は、画像形成装置100の起動時や記録メディアWKに対する印刷が行われない場合には、この待機位置にて待機する。
【0031】
プリントヘッドクリーナ110は、プリントヘッド106aのフラッシング処理によって噴射されたインクやプリントヘッド106のインク噴射ノズル面(図示せず)に付着したインクを吸引して除去する清掃装置であり、前記コントローラ120によって作動が制御される。この場合、プリントヘッド106aのフラッシング処理とは、プリントヘッド106aのインク噴射ノズルから所定量のインクを噴射させることにより同インク噴射ノズルの内外に存在するインクの増粘や凝固を防止する動作である。このプリントヘッドクリーナ110は、画像形成キャリッジ106の待機位置に対して図示左側に隣接した位置(図1参照)に同画像形成キャリッジ106に対向して設けられているとともに、図示しないチューブを介して図示しない廃液タンクが接続されている。廃液タンクは、プリントヘッドクリーナ110が吸引して回収したインクを貯留する容器である。
【0032】
一方、画像形成キャリッジ106の上方には、画像形成装置100の上側の筐体を構成する長尺状の上カバー111が設けられている。また、プラテン101および上カバー111の両側には、画像形成装置100の両側の筐体を構成するサイドカバー112R,112Lがそれぞれ設けられている。これらのうち、サイドカバー112Rの前面には、画像形成装置100の電源スイッチ113が設けられている。
【0033】
コントローラ120は、CPU、ROM、RAMなどからなるマイクロコンピュータによって構成されており、ユーザからの指示、またはインターフェース121を介して接続される外部コンピュータ装置130からの指示に従って、ROMなどの記憶装置に予め記憶された制御プログラムを実行することにより、画像形成装置100の各種作動を制御する。具体的には、このコントローラ120は、X軸方向フィードモータ103、Y軸方向スキャンモータ105、プリントヘッド106a、カッティングヘッド106bおよびプリントヘッドクリーナ110の各作動をそれぞれ制御する。すなわち、コントローラ120が、本発明に係る制御手段に相当する。また、外部コンピュータ装置130は、キーボードおよびマウスからなる入力装置131および液晶ディスプレイからなる表示装置132を備えるパーソナルコンピュータ(所謂パソコン)である。
【0034】
(画像形成装置100の作動)
次に、上記のように構成した画像形成装置100の作動について説明する。まず、ユーザは、外部コンピュータ装置130と画像形成装置100とをインターフェース121を介して接続し、外部コンピュータ装置130および画像形成装置100の電源をそれぞれONにする。これにより、外部コンピュータ装置130は、図示しない所定の制御プログラムを実行することによりユーザからの指令の入力を待つ待機状態となる。また、画像形成装置100は、コントローラ120内のROMに予め記憶されている図示しない所定の制御プログラムを実行することにより、画像形成キャリッジ106を原点復帰させた後、外部コンピュータ装置130からの指示を待つ待機状態となる。なお、この場合、画像形成キャリッジ106の原点とは、前記したように、画像形成キャリッジ106の主走査方向における移動可能範囲内の一方の移動可能限界位置(図示最右端)である。
【0035】
次に、ユーザは、画像形成の対象となるシート状の記録メディアWKをプラテン101上にセットする。具体的には、ユーザは、記録メディアWKをプラテン101上に配置した後、同記録メディアWKの幅方向両端部にそれぞれピンチローラ108を配置して下降させる。これにより、記録メディアWKは、ピンチローラ108とグリッドローラ102とで挟持されるとともに、記録メディアWKの表面に配置された浮き規制体109によって浮きが規制された状態となる。
【0036】
次に、ユーザは、外部コンピュータ装置130の入力装置131を操作して、画像形成装置100に画像の形成を指示する。この場合、ユーザは、記録メディアWKに形成する形成対象画像データを外部コンピュータ130上にて予め作成しておく。外部コンピュータ装置130は、前記指示に応答して、外部コンピュータ装置130内に記憶されている形成対象となる画像データに対応する加工用画像データを生成して画像形成装置100(コントローラ120)に出力する。この場合、加工用画像データには、インクの液滴の集合により画像を形成するための印刷加工用画像データと、カッターによる切断によって画像を形成するための切断加工用画像データとがある。
【0037】
これにより、画像形成装置100、具体的には、画像形成装置100に内蔵されるコントローラ120は、外部コンピュータ装置130から出力される各加工用画像データに基づいて画像形成キャリッジ106と記録メディアWKとの相対的な位置関係を変化させながら、プリントヘッド106aまたはカッティングヘッド106bの作動を制御して同記録メディアWKに画像の印刷加工または切断加工からなる画像形成処理を実行する。
【0038】
具体的には、コントローラ120は、X軸方向フィードモータ103の作動を制御してグリッドローラ102を回転駆動することによりプラテン101上に保持した記録メディアWKを図示X軸方向の副走査方向に変位させる。また、コントローラ120は、Y軸方向スキャンモータ105の作動を制御して図示しない駆動ベルトを回転駆動することにより画像形成キャリッジ106を図示Y軸方向の主走査方向に変位させる。すなわち、画像形成キャリッジ106と記録メディアWKとの相対変位させるためのX軸方向フィードモータ103およびY軸方向スキャンモータ105が、本発明に係るキャリッジ相対変位手段に装置する。また、コントローラ120は、プリントヘッド106aまたはカッティングヘッド106b(カッター変位機構)の作動を制御して記録メディアWKに向けてインクの液滴を噴射またはカッターを昇降させてそれぞれ画像の形成を行なう。
【0039】
この記録メディアWKに対する画像形成処理のうち、カッティングヘッド106による画像の切り抜き形成、すなわち、カッターによる画像の切断形成処理の実行過程においては、コントローラ120は、図3に示すフラッシング処理プログラムを実行する。このフラッシング処理プログラムは、画像の切断形成処理の実行過程においてプリントヘッド106aのフラッシング処理を実行するためのプログラムである。
【0040】
具体的には、コントローラ120は、外部コンピュータ装置130から出力される切断加工用画像データを検出することによりフラッシング処理プログラムの実行をステップS100にて開始して、ステップS102にて、タイムカウントを開始する。このステップS102におけるタイムカウントの開始処理は、プリントヘッド106aのフラッシング処理を実行する時間間隔を計測するためのものである。このステップS102によるタイムカウントの開始処理が、本発明に係るタイムカウント開始ステップに相当する。
【0041】
次に、コントローラ120は、ステップS104にて、画像の切断形成処理が終了したか否かを判定する。具体的には、コントローラ120は、外部コンピュータ装置130から出力された切断加工用画像データのすべてについて切断加工を実行したか否かを判定する。そして、コントローラ120は、切断加工用画像データに未処理データが存在する場合には、このステップS104における判定処理において「No」と判定してステップS106に進む。一方、コントローラ120は、切断加工用画像データに未処理データが存在しない場合、すなわち、切断加工が終了している場合には、このステップS104における判定処理において「Yes」と判定してステップS118に進む。
【0042】
次に、コントローラ120は、ステップS106にて、所定時間が経過したか否かを判定する。ここで所定時間とは、プリントヘッド106aのフラッシング処理を行う時間間隔であり、インクの種類に応じてコントローラ120のROM内に予め設定されている時間間隔である。この所定時間は、数分〜数十分程度が適当である。したがって、コントローラ120は、前記ステップS102にて開始したタイムカウント値が前記所定時間に達するまでの間、このステップS106における判定処理にて「No」と判定し続けてステップS104に戻る。そして、コントローラ120は、ステップS104にて再び、画像形成処理の終了判定を実行する。すなわち、コントローラ120は、タイムカウント値が所定時間に達するまでの間、画像形成処理の終了判定を実行する。一方、コントローラ120は、前記タイムカウント値が所定時間に達した場合には、この判定処理にて「Yes」と判定して、ステップS108に進む。このステップS106による経過時間の判定処理が、本発明に係る所定時間経過判定ステップに相当する。
【0043】
次に、コントローラ120は、ステップS108にて、カッティングヘッド106bにおけるカッター(図示せず)が記録メディアWKの表面から離隔した上昇状態であるか否かを判定する。具体的には、コントローラ120は、カッティングヘッド106bにおけるカッター変位機構を構成するステッピングモータ(図示せず)の回転位置を検出して同回転位置によりカッターの昇降状態を判定する。そして、コントローラ120は、カッターが上昇状態でない、すなわち、カッターが記録メディアWKを切断中であると判定した場合には、このステップS108における判定処理において「No」と判定してステップS104に戻る。
【0044】
一方、コントローラ120は、カッターが上昇状態である、すなわち、カッターが記録メディアWKから離隔した状態であると判定した場合には、このステップS108における判定処理において「Yes」と判定してステップS110に進む。すなわち、コントローラ120は、このステップS108の判定処理によって、カッターが上昇状態となることを待つ。このステップS108によるカッティングヘッド106bにおけるカッターの上昇状態の判定処理が、本発明に係る刃物状態判定ステップに相当する。
【0045】
次に、コントローラ120は、ステップS110にて、切断加工の中断処理を実行する。このステップS110における切断加工の中断処理は、カッターが上昇状態において切断加工を一時的に中断するための処理であり、具体的には、切断加工のためのカッティングヘッド106bの変位の中断などの切断加工の中断および同中断後の切断加工の復帰に必要な情報(例えば、位置情報)の記憶である。
【0046】
次に、コントローラ120は、ステップS112にて、フラッシング処理を実行する。具体的には、コントローラ120は、Y軸方向スキャンモータ105を駆動して画像形成キャリッジ106のプリントヘッド106aをプリントヘッドクリーナ110上に配置した後、同プリントヘッド106aを駆動して各インクヘッドから各色のインクを所定量だけ噴射させる。また、コントローラ120は、プリントヘッド106aの駆動とともにプリントヘッドクリーナ110の作動を制御してプリントヘッド106aから噴射された各インクを吸引により回収する。これにより、画像の切断形成処理の実行中におけるインクヘッド106aのインク噴射ノズルの内外に存在するインクの増粘や凝固を防止してインクの噴射性能を維持向上させることができる。すなわち、このステップS112によるフラッシング処理が、本発明に係るフラッシング処理実行ステップに相当する。
【0047】
次に、コントローラ120は、ステップS114にて、切断加工の再開処理を実行する。具体的には、コントローラ120は、Y軸方向スキャンモータ105を駆動して画像形成キャリッジ106を切断加工の中断位置に復帰させた後、前記フラッシング処理実行直前まで実行した切断加工を再開する。次いで、コントローラ120は、ステップS116にて、タイムカウント値をリセットした後ステップS102に戻り、再び、ステップS102にて新たにタイムカウントを開始する。
【0048】
したがって、コントローラ120は、ステップS104における画像形成処理の終了判定処理において、画像の切断形成処理が終了したと判定するまでの間、所定時間間隔ごとに前記フラッシング処理を繰り返し実行する。そして、コントローラ120は、ステップS104における画像の切断形成処理の終了判定処理において、切断加工が終了したと判定した場合には、ステップS118にて、このフラッシング処理プログラムの実行を終了する。
【0049】
また、記録メディアWKに対する画像形成が終了した場合には、ユーザは、プラテン101上に保持された記録メディアWKを取り外す。具体的には、ユーザは、ピンチローラ108を上昇させることにより記録メディアWKからピンチローラ108および浮き規制体109をそれぞれ離隔させた後、プラテン101上から記録メディアWKを取り除く。そして、ユーザは、他の記録メディアWKに画像を形成する場合には、前記と同様の手順にて新たな記録メディアWKをプラテン101上にセットする。また、ユーザは、記録メディアWKへの画像形成を終了する場合には、外部コンピュータ装置130および画像形成装置100の電源をそれぞれOFFにする。これにより、記録メディアWKに対する画像形成作業が終了する。
【0050】
上記作動説明からも理解できるように、上記実施形態によれば、画像形成装置100は、
記録メディアWKに切断による画像を形成するカッティングヘッド106bがプリントヘッド106aとともに変位して画像形成を行なう際、プリントヘッド106aのフラッシング処理を実行する。これにより、画像形成装置100は、プリントヘッド106aとカッティングヘッド106bとを一体化して画像形成キャリッジ106を構成することができるため、装置構成を小型化および簡易化することができるとともに同装置構成の自由度を向上させることができる。
【0051】
さらに、本発明の実施にあたっては、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
【0052】
例えば、上記実施形態においては、画像形成キャリッジ106は、プリントヘッド106aとカッティングヘッド106bとを一体的に備えて構成されている。しかし、画像形成キャリッジ106は、カッティングヘッド106bにより切断加工を行う際、カッティングヘッド106bとともにプリントヘッド106aが変位する構成であればよい。すなわち、従来の画像形成装置においては、画像形成キャリッジを画像形成時において常に主走査方向に変位するカッティングヘッドに対してプリントヘッドを連結および分離可能に構成した。しかし、本発明に係る画像形成装置100においては、画像形成キャリッジ106を画像形成時において常に主走査方向に変位するプリントヘッド106aに対してカッティングヘッド106bを連結および分離可能に構成することができる。これにより、画像形成装置100の構成の自由度を向上させることができる。
【0053】
また、上記実施形態においては、フラッシング処理プログラムにおいて、プリントヘッド106aのフラッシング処理の実行を所定の時間間隔ごとに行なうように構成した。しかし、プリントヘッド106aのフラッシング処理は、カッティングヘッド106bによる画像の切断形成処理の実行過程において何らかの状態変化をトリガとして少なくとも1回以上実行されれば、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、プリントヘッド106aのフラッシング処理は、カッティングヘッド106bのカッターの昇降回数が所定数に達したことをトリガとして同所定数に達したときにのみ1回だけまたは同所定数に達するごとに毎回実行するようにしてもよいし、切断工用画像データの処理量が所定量に達したことをトリガとして同所定量に達したときにのみ1回だけまたは同所定量に達するごとに毎回実行するようにしてもよい。
【0054】
また、上記実施形態においては、フラッシング処理プログラムにおいて、プリントヘッド106aのフラッシング処理をカッティングヘッド106bのカッターが上昇状態にある場合に実行するように構成した。これは、記録メディアWKの切断中においてプリントヘッド106aのフラッシング処理が行われると、記録メディアWKにおける切断線の途中でカッターの抜き差しが行なわれるため同切断線の連続性が確保し難くなるためである。しかし、記録メディアWKにおける切断線の連続性の精度を高くする必要がない場合や、同連続性が保たれるようにカッターの刃先の向きを制御するようにすれば、必ずしも上記実施形態に限定されるものではない。すなわち、フラッシング処理プログラムにおいて、プリントヘッド106aのフラッシング処理をカッティングヘッド106bのカッターの昇降状態に関わらず実行するように構成することもできる。
【符号の説明】
【0055】
WK…記録メディア、
100…画像形成装置、101…プラテン、102…グリッドローラ、103…X軸方向フィードモータ、104…ガイドロッド、105…Y軸方向スキャンモータ、106…画像形成キャリッジ、106a…プリントヘッド、106b…カッティングヘッド、107…インクカートリッジ、108…ピンチローラ、109…浮き規制体、110…プリントヘッドクリーナ、111…上カバー、112R,112L…サイドカバー、113…電源スイッチ、
120…コントローラ、121…インターフェース、
130…外部コンピュータ装置、131…入力装置、132…表示装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録メディアにインクの液滴を噴射することにより画像を印刷形成するプリントヘッドおよび前記記録メディアを刃物で切断することにより画像を切断形成するカッティングヘッドを有する画像形成手段と、
前記画像形成手段と前記記録メディアとを同一平面内における互いに直交する2方向に相対変位させるキャリッジ相対変位手段と、
前記画像形成手段および前記キャリッジ相対変位手段の作動を制御する制御手段とを備え、
前記カッティングヘッドは、前記プリントヘッドとともに一体的に変位することにより前記記録メディアに画像を切断形成するインクジェット式画像形成装置であって、
前記制御手段は、
前記カッティングヘッドによる画像の切断形成処理の実行過程において前記プリントヘッドのフラッシング処理を実行することを特徴とするインクジェット式画像形成装置。
【請求項2】
請求項1に記載したインクジェット式画像形成装置において、
前記制御装置は、所定時間間隔ごとに前記フラッシング処理を実行することを特徴とするインクジェット式画像形成装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載したインクジェット式画像形成装置において、
前記制御装置は、前記刃物が前記記録メディアから離隔しているとき、前記フラッシング処理を実行することを特徴とするインクジェット式画像形成装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のうちのいずれか1つに記載したインクジェット式画像形成装置において、
前記画像形成キャリッジは、前記プリントヘッドおよび前記カッティングヘッドを一体的に備えていることを特徴とするインクジェット式画像形成装置。
【請求項5】
記録メディアにインクの液滴を噴射することにより画像を印刷形成するプリントヘッドおよび前記記録メディアを刃物で切断することにより画像を切断形成するカッティングヘッドを有する画像形成手段と、
前記画像形成手段と前記記録メディアとを同一平面内における互いに直交する2方向に相対変位させるキャリッジ相対変位手段と、
前記画像形成手段および前記キャリッジ相対変位手段の作動を制御する制御手段とを備え、
前記カッティングヘッドが前記プリントヘッドとともに一体的に変位することにより前記記録メディアに画像を切断形成するインクジェット式画像形成装置における前記制御装置に実行される画像形成用コンピュータプログラムであって、
前記制御手段に、
前記カッティングヘッドによる画像の切断形成処理の実行過程において前記プリントヘッドのフラッシング処理を実行させるフラッシング処理実行ステップを含むことを特徴とする画像形成用コンピュータプログラム。
【請求項6】
請求項5に記載した画像形成用コンピュータプログラムにおいて、さらに、
タイムカウントを開始するタイムカウント開始ステップと、
前記タイムカウントの値が所定時間に達したか否かを判定する所定時間経過判定ステップとを含み、
前記フラッシング処理実行ステップは、前記所定時間の経過ごとに実行されることを特徴とする画像形成用コンピュータプログラム。
【請求項7】
請求項5または請求項6に記載した画像形成用コンピュータプログラムにおいて、さらに、
前記カッティングヘッドにおける前記刃物と前記記録メディアとの位置関係を判定する刃物状態判定ステップと、
前記フラッシング処理実行ステップは、前記刃物が前記記録メディアから離隔しているときに実行されることを特徴とする画像形成用コンピュータプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−223951(P2012−223951A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−92510(P2011−92510)
【出願日】平成23年4月18日(2011.4.18)
【出願人】(000116057)ローランドディー.ジー.株式会社 (163)
【Fターム(参考)】