説明

インクジェット式記録装置

【課題】 必要に応じてクリーニング処理を実行するに止めて、迅速に印刷しうる装置の提供。
【解決手段】 電源投入時に前回のクリーニング又は電源遮断時からの経過時間により所定のクリーニング動作を行った後印刷可能状態とする第1のモードと、前記経過時間によらず印刷可能状態とする第2のモードとを任意に選択可能なインクジェット式記録装置。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、インクジェット式記録装置の技術分野に属するものである。
【0002】
【従来の技術】一般に、この種のインクジェット式記録装置にあっては、長時間利用しないことにより発生するノズルの目詰まりを防止するために、前回のクリーニング終了時点又は電源遮断時からの時間を計時して、この時間が目詰まりを発生する可能性のある時間の場合は、電源投入時に所定量のインクをノズル開口から吸引するクリーニング動作が行われていた。
【0003】その一例としては、特開平10−211719号公報(公知例)の発明が挙げられる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】ところで、前記した公知例のものにあっては、ヘッドをタイムリにクリーニング処理し、良質の印刷処理を実行しうるものであるが、構造上複雑化し、電源投入時のクリーニング動作は基本的に時間がかかるものであり、印刷をすぐ行いたい場合にも、必ず電源投入から所定時間待機させられる点で改善を望まれるところであった。
【0005】この発明が解決しようとする第1の課題点は、迅速に印刷処理しうるものを提供することである。
【0006】この発明が解決しようとする第2の課題点は、操作性の良好なものを提供することである。
【0007】この発明が解決しようとする第3の課題点は、比較的安価な用紙の印刷に好適なものを提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】前記の各課題を解決するための具体的な手段は次の如くである。
【0009】(1) 電源投入時に前回のクリーニング又は電源遮断時からの経過時間により所定のクリーニング動作を行った後印刷可能状態とする第1のモードと、前記経過時間によらず印刷可能状態とする第2のモードとを任意に選択可能なインクジェット式記録装置。
【0010】従って、すぐに印刷したい場合は、印字品質が落ちる可能性はあるものの、特に印字品質が必要でないものの印刷の場合には、必ずしもクリーニングにより待たされることなくすぐに印刷が出来る。
【0011】(2) 前記第2のモードは、電源スイッチと他のスイッチを同時又は所定の時間間隔でオンされることにより選択されることを特徴とする前記(1) 記載のインクジェット式記録装置。
【0012】従って、第1のモードと第2のモードの選択を意識して行うことが出来、第2のモードで誤って高級な印刷用紙等に印刷するような不具合を防ぐことが出来る。
【0013】(3) 前記第2のモードは、電源スイッチが所定の時間内に押された回数により選択されることを特徴とする前記(1) 記載のインクジェット式記録装置。
【0014】従って、第1のモードと第2のモードを1つのスイッチにより選択することが出来る。
【0015】(4) 前記第2のモードが選択された場合、所定のパターンを記録することを特徴とする前記(1) 記載のインクジェット式記録装置。
【0016】従って、第2のモードでは目詰まりが生じる可能性があるので、その目詰まり状況を事前に使用者に知らせることが出来る。
【0017】(5) 前記第2のモードが選択された場合、印刷状況を確認するための問い合わせをホスト側に送ることを特徴とする前記(1) 記載のインクジェット式記録装置。
【0018】従って、印刷状況に応じて行うべき動作を選択することが出来る。
【0019】(6) 前記問い合わせ結果に応じてクリーニング動作を行うことを特徴とする前記(5) 記載のインクジェット式記録装置。
【0020】従って、この選択肢の中にはクリーニング動作があり、あまりにひどすぎる場合にはクリーニング動作を行うことが出来る。
【0021】(7) 前記問い合わせ結果に応じて第2のモードを解除することを特徴とする前記(5) 記載のインクジェット式記録装置。
【0022】従って、目詰まりが生じていない場合には、第2のモードを解除して、それ以降の動作は第1のモードが選択された場合と同じ動作に戻すことにより、通常の印刷動作にすることが出来る。
【0023】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0024】1.手段(1) 全体構成図1に示すインクジェット式記録装置であるプリンタ1000は、モータ11によって駆動されるタイミングベルト12に固定されると共に、ガイド13にガイドされて移動するキャリッジ14を備え、このキャリッジ14は、プラテン15に対向するように記録ヘッド16、17が設けられており、またヘッド16、17にインクを供給する第1のタンクT1、第2のタンクT2を搭載可能に構成されている。プリンタ1000には、非印刷領域(記録シートSと対向しない領域)に記録ヘッド16、17をクリーニング処理するクリーニング手段20を備えている。
【0025】プリンタ1000の各手段の関係構成については、図2の機能ブロック図で示す如くであって、ホストHから送られてくる印刷データを制御手段100を介してヘッド駆動制御部50によりヘッドを駆動して印刷を実行したり、操作パネル40の各スイッチからの信号により制御手段100を介してクリーニング制御部21によりクリーニングを実行するように構成されている。
【0026】以下、各構成手段を説明する。
【0027】(2) 各手段の構成■ 制御手段100制御手段100は、ホストコンピュータHに外部インターフェース90を介して接続され、印刷信号及びクリーニングの指令等を受けたり、ホスト側の問い合わせに対して情報を送る等の動作を行う。又、制御手段100には、ヘッド駆動制御部50、クリーニング制御部21、記憶手段80、モード設定部60、外部信号検出部30等が接続され、各手段からの情報の授受及び各種制御を行う。
【0028】■ 外部信号検出部30電源スイッチ31、操作パネル40に設けられた給紙排紙指令スイッチ71、ブラックヘッドクリーニング指令スイッチ72、カラーヘッドクリーニング指令スイッチ73等の各種スイッチからの信号を検知して信号の種類により制御部100又はモード設定手段60に選択して伝達するよう構成されている。
【0029】■ モード設定部60上述の外部信号検出部30からの信号により印刷モードを選択して設定するものであり、制御手段100と接続されると共に、第2のタイマー61と接続されている。
【0030】■ クリーニング手段20制御手段100によって制御されるクリーニング制御部21と、ポンプ駆動部22とを具備しており、例えばブラックヘッド用クリーニング指令スイッチ72が選択された場合には、キャップ23によりブラックヘッド16のノズル開口部を封止し、その後キャップと接続されたポンプを駆動させてキャップ23内部に負圧を発生させ、その圧力によりヘッドのノズル開口からインクの吸引を行う。この動作は、指令スイッチが選択された場合のみならず、タイマーにより一定時間が経過した場合や、ホスト側からのクリーニング指令等により実行される。又、カラーヘッドのクリーニング動作も同様であり、ブラックヘッド及びカラーヘッドを単一のキャップにより封止してクリーニングを行うことも可能である。
【0031】■ ヘッド作動手段50後述する制御手段100により指示されて、ヘッド16、17を駆動して印刷処理を実行したり、目詰まり解消や吐出安定性確保のために定期的にキャップ等にインク滴を吐出するフラッシング動作を実行する。
【0032】2.使用手順図3に示すフローチャートを参照して、プリンタ1000の動作について説明する。
【0033】電源スイッチ31が操作されて電源が投入されると(S1)、外部信号検出部30により電源の投入が検知され、外部信号検出部30から制御手段100及びモード設定部60に信号が伝達される。モード設定部60では、その信号が電源スイッチのみが押された信号なのか、電源スイッチと他のスイッチとが同時に押された信号なのかを判断し(S2)、その結果に応じて電源スイッチのみの場合は、第1のモードを選択し(S3)、電源スイッチと他のスイッチとが同時に押された場合には、第2のモードを選択する(S4)。
【0034】第1のモードが選択された場合、前回のクリーニング動作、又は電源遮断時からの経過時間を測定している第1のタイマー70の計時時間と予め設定された時間とを比較し(S5)、設定時間よりも計時時間が大きい場合には、クリーニング処理を実行し(S6)、その後第1のモードとして印刷スタンバイ状態で待機する(S7)。
【0035】一方、第2のモードが選択された場合(S4)、記憶手段80に記憶されている所定テスト印字パターンを読み出し(S9)、ヘッド駆動制御部により記録ヘッドを制御して印刷を実行する(S10)。この所定パターンの印刷は、印字不良を予め使用者に知らしめるためのものであり、所定パターン印刷後クリーニングの要否を問い合わせ(S11)、必要と判断された場合にはクリーニング処理を行い(S6)、第1のモードとして印刷スタンバイ状態(S8)とする。クリーニング実行をしない場合には、第2のモードの印刷スタンバイ状態として待機する(S13)。上記ステップS9〜S12を省略して直接第2のモードの印刷スタンバイにすることも可能である。
【0036】次に第4図(a)、(b)のフローチャートを用いて以降の動作を説明する。第1のモードの印刷スタンバイ状態で、印刷指令がきた場合(S14)には、印刷を実行する(S15)と共に電源が遮断されない間第1のモードの印刷スタンバイ状態を維持する。第1のモードにおいて電源が遮断する信号が入力された場合(S16)、第1のタイマー70をリセットすると共に再スタートさせて(S18)電源を遮断する。
【0037】又、第2のモードの印刷スタンバイ状態において印刷指令がきた場合(S19)、印刷指令に対応するデータを印刷し(S20)、その後使用者に印字品質の可否を問い合わせる(S21)。この問い合わせに対して、印字品質が良好であれば、第2のモードを解除して第1のモードに設定変更する。印字品質が良好でない場合、クリーニングを行うか再度問い合わせを行い(S23)、クリーニング処理を実行するか選択し(S24)、クリーニング処理が選択された場合は、クリーニング処理を実行し(S25)、第1のモードに設定変更する。クリーニング処理が選択されなかった場合は第2のモードの状態を維持する。
【0038】第2のモードにおいて電源を遮断する信号が入力された場合(S26)、前回の電源遮断からの経過時間を計時している第1のタイマーの値と設定時間とを比較して(S28)、設定時間よりも大きい場合には、クリーニングを実行し(S29)、その後第1のタイマーをリセットし、再スタートさせて(S30)電源を遮断する。
【0039】図5は他の実施の形態に関するものであり、モード選択の選択方法において図3の実施例と異なっている。
【0040】この実施例において、電源スイッチ31が操作されて電源が投入されると(S31)、外部信号検出部30により電源の投入が検知され、外部信号検出部30から制御手段100及びモード設定部60に信号が伝達される。モード設定部60は、その信号により第2のタイマー61をスタートさせて、電源が投入されてからの時間を計時する(S32)。電源投入からの時間を予め定められた時間と比較し(S33)、所定の時間以上経過した場合には第2のタイマーをリセットして停止した後、第1のモードが選択される(S36)。その後は、前述のS3以降のステップと同じである。又、所定時間内に電源スイッチが2回以上押された場合(S34)、第2のタイマーをリセットして停止した後、第2のモードが選択される。その後は前述のS9以降のステップと同じである。
【0041】以上の如く、このプリンタ1000によれば、ヘッド16、17の状況に応じて効率的に所要の高品質の印刷処理をなし得るものである。
【0042】
【発明の効果】以上説明したこの発明による特有の効果は次の如くである。
【0043】■ 必ずしもクリーニング処理を行うことなく迅速に印刷処理をなしうるものである。
【0044】■ 常時印刷状況を把握し、クリーニング処理をなしうるものである。
【0045】■ 高級でない記録シートの印刷に好適なものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施の形態のインクジェット式記録装置のカバーを除去した斜視図。
【図2】図1の機能ブロック図。
【図3】図1のフローチャート。
【図4】図3に続くフローチャート。
【図5】図1の他のフローチャート。
【符号の説明】
1000 インクジェット式記録装置
100 制御手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】 電源投入時に前回のクリーニング又は電源遮断時からの経過時間により所定のクリーニング動作を行った後印刷可能状態とする第1のモードと、前記経過時間によらず印刷可能状態とする第2のモードとを任意に選択可能なインクジェット式記録装置。
【請求項2】 前記第2のモードは、電源スイッチと他のスイッチを同時又は所定の時間間隔でオンされることにより選択されることを特徴とする請求項1記載のインクジェット式記録装置。
【請求項3】 前記第2のモードは、電源スイッチが所定の時間内に押された回数により選択されることを特徴とする請求項1記載のインクジェット式記録装置。
【請求項4】 前記第2のモードが選択された場合、所定のパターンを記録することを特徴とする請求項1記載のインクジェット式記録装置。
【請求項5】 前記第2のモードが選択された場合、印刷状況を確認するための問い合わせをホスト側に送ることを特徴とする請求項1記載のインクジェット式記録装置。
【請求項6】 前記問い合わせ結果に応じてクリーニング動作を行うことを特徴とする請求項5記載のインクジェット式記録装置。
【請求項7】 前記問い合わせ結果に応じて第2のモードを解除することを特徴とする請求項5記載のインクジェット式記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2000−289216(P2000−289216A)
【公開日】平成12年10月17日(2000.10.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平11−104793
【出願日】平成11年4月13日(1999.4.13)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】