インクジェット式記録装置
【課題】 記録ヘッドをキャリッジに装着するインクジェット式記録装置において、記録ヘッドを取り外した状態で印刷する場合に、キャリッジに生じる空間によって発生する問題を解消することの出来るインクジェット式記録装置を提供する。
【解決手段】 記録ヘッドを取り外すことによってキャリッジに生じた空間に、記録ヘッドを持たない保守用カートリッジを装着することを特徴とする。
【解決手段】 記録ヘッドを取り外すことによってキャリッジに生じた空間に、記録ヘッドを持たない保守用カートリッジを装着することを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【０００１】
本発明は、複数の記録ヘッドカートリッジが装着可能な、キャリッジ走査軸に沿って駆動するキャリッジと、キャリッジに支持されて、インク滴をノズルから噴射する記録ヘッドと、インクを記録ヘッドに供給するインクカートリッジにより、印刷媒体に印刷を行うインクジェット式記録装置に関する。
【背景技術】
【０００２】
記録ヘッドをキャリッジに装着するインクジェット式記録装置は、印刷媒体を横断して記録ヘッド搭載のキャリッジを１回だけ走査することにより複数のドット列を印刷できる記録装置である。前記記録装置の記録ヘッド搭載のキャリッジは、複数のドット列を印刷できるよう互いに媒体の移動方向に設置される複数の印刷要素（例えば、インクジェットノズル）を備えていることが普通であり、印刷は一方向または双方向とすることができる。
【０００３】
前記記録装置のキャリッジに、複数の記録ヘッドを装着できる記録ヘッド装着部が備えられている場合、一つの記録ヘッドのみをキャリッジに装着した状態でも印刷が可能である。例えば、カラーインクのみで印刷を実行する場合においては、ブラックの記録ヘッドを取り外した状態で印刷をすることも可能である。
【０００４】
また、インクジェット式記録装置は、非印刷時に記録ヘッドのノズル形成面を封止するためのキャッピング手段が備えられている。このキャッピング手段は、ノズル口のインクの乾燥を防止するためにキャップをノズル形成面に押し当て、キャップ内を密閉させる機能を持つだけでなく、ノズル口に目詰まりなどが生じた場合には、キャッピング手段によりノズル形成面を封止し、吸引ポンプからの負圧により、ノズル口からインクを吸引排出させてノズル口の目詰まりを解消するメンテナンス機能を持つ。
【０００５】
これら、記録ヘッドの目詰まりを解消するためにインクの強制的な吸引排出処理が行われ、記録ヘッドからインクを排出させた後には、例えばゴム素材を短冊状に形成したワイピング部材により、記録ヘッドのノズル形成面を払拭するワイピングが伴われる。
【０００６】
ワイピングには、主走査方向にワイピングをする方法と、副走査方向にワイピングをする方法とがある。
【特許文献１】特開平５−２２０９５１号公報
【特許文献２】特開２０００−１３５７９４号公報（段落［００２３］、図４）
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【０００７】
前記記録装置において、ひとつの記録ヘッドを取り外した状態で印刷する場合、取り外された記録ヘッド側のキャリッジでは、記録ヘッドと本体との電気的接続を行うコンタクトが剥き出しの状態となり、印刷時に発生するインクミストが付着し、コンタクト不良を起こす懸念がある。
【０００８】
また、ワイピング方向が主走査方向の場合、記録ヘッドのノズル形成面と同時にキャリッジも払拭される構成がある。この場合に、記録ヘッドが取り外された状態でワイピングが行われると、記録ヘッドがないためにキャリッジのみがワイピングされてしまい、ワイピング部材が跳ね返り、ワイピング部材に付着していたインクが飛び散る可能性がある。これにより、飛び散ったインクがコンタクトに付着し、コンタクト不良を起こす懸念がある。
【０００９】
その他に、印刷媒体の端が反っていた場合、記録ヘッド自体が存在しないことにより、印刷時に印刷媒体の端が記録ヘッドのノズル形成面で抑えられずに、記録ヘッドを装着する空間に進入してしまい、紙ジャムエラーを起こす懸念がある。これらのように記録ヘッドが装着されていない印刷時には、印刷障害を発生させてしまう可能性がある。
【００１０】
本発明は、上述の問題点に着目してなされたものであって、記録ヘッドをキャリッジに装着するインクジェット式記録装置において、記録ヘッドを取り外した状態で印刷する場合に、キャリッジに生じる空間によって発生する問題を解消することの出来るインクジェット式記録装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【００１１】
本発明は、以上の課題を解決するために、記録ヘッドが取り外されたキャリッジに記録ヘッドを持たない保守用カートリッジを装着する構成を備えるインクジェット式記録装置である。
【００１２】
保守用カートリッジを装着したときに、保守用カートリッジが、コンタクトへのインクミストの付着と、ワイピング時のインク飛び散りによるコンタクト不良を防止できる構成を備える。
【００１３】
さらに、印刷媒体の端が反っていたときの印刷時に、印刷媒体の端が保守用カートリッジの、記録ヘッドのノズル形成面に対応する面で抑えられ、記録ヘッドを装着する空間に進入することなく印刷を行うことができる構成を備える。
【００１４】
また、キャッピング時に保守用カートリッジの、記録ヘッドのノズル形成面に対応する面とキャップとが当接し、回復動作時に大きな負荷が発生してしまう懸念があるため、キャッピング時において、保守用カートリッジの、記録ヘッドのノズル形成面とキャップとの関係で大きな負荷が発生しない構成とする。なおかつ、印刷媒体の端が反っていたときの印刷時に、印刷媒体の端を抑えることができる構成とする。
【００１５】
すなわち、本発明は、複数の記録ヘッドカートリッジが装着可能な、キャリッジ走査軸に沿って駆動するキャリッジと、前記キャリッジに支持されて、インク滴をノズルから噴射する記録ヘッドと、インクを前記記録ヘッドに供給するインクカートリッジにより、印刷媒体に印刷を行うことのできるインクジェット式記録装置において、前記キャリッジが持つ複数の記録ヘッド装着部のどれかに前記記録ヘッドが装着されぬまま前記キャリッジが駆動した時に、前記記録ヘッドが一つでも装着されていれば動作可能であり、記録ヘッドが装着されていないキャリッジの記録ヘッド装着部には、記録ヘッドを持たない保守用カートリッジを装着することを特徴とするインクジェット式記録装置である。
【発明の効果】
【００１６】
記録ヘッドをキャリッジに装着するインクジェット式記録装置において、ひとつの記録ヘッドを取り外した状態で印刷する場合に、キャリッジに大きな空間が生じてしまうことは自明である。本発明のインクジェット式記録装置は、この空間が生じることで発生する問題を解消するため、キャリッジに記録ヘッドを持たない保守用カートリッジを装着する構成を備えたことが特徴である。
【発明を実施するための最良の形態】
【００１７】
以下、この発明におけるインクジェット式記録装置について、図に示す実施の形態に基づいて説明する。
【実施例】
【００１８】
図１はこの発明が適用されたインクジェット式記録装置の主要部の構成を斜視図によって示したものである。図中のキャリッジ１はキャリッジベルト３を介し、キャリッジモータ２の駆動によって、シャーシレイル４に案内されて主走査方向に往復運動するように構成されている。
【００１９】
前記キャリッジ１には、記録ヘッドとインクカートリッジを一体にしたインクジェット式記録ヘッドカートリッジが着脱可能となるように装填されている。インクジェット式記録ヘッドカートリッジにはブラックインク記録ヘッドカートリッジ６とカラーインク記録ヘッドカートリッジ７がある。
【００２０】
また、印刷領域外である待機位置にはキャッピング手段として、キャップ８ａ、８ｂを備えたキャップスライダ９が配置されており、キャッピング時にキャリッジ１の移動とともにキャップスライダ９が待機位置まで移動し、インクジェット式記録ヘッドカートリッジ６、７のノズル形成面をキャップ８ａ、８ｂがそれぞれ封止する機構を備えている（図２）。キャリッジ１の待機位置に近接して、キャッピング時のキャップ８ａ、８ｂの内部空間に負圧を与えることができる吸引ポンプ１０が配置されている。
【００２１】
キャップ８ａ、８ｂはキャッピング時に、記録装置の休止期間中においてインクジェット式記録ヘッドカートリッジのノズル形成面を封止してノズル口の乾燥を防止する蓋として機能するほか、前記吸引ポンプ１０からの負圧をインクジェット式記録ヘッドカートリッジのノズル形成面に作用させて、インクジェット式記録ヘッドカートリッジからインクを吸引排出させるクリーニング手段としての機能も兼ね備えている。また、キャップスライダ９の印字領域側の近傍には、ゴムなどの弾性素材を短冊状に成形したワイピング部材１１が配置されている。このワイピング部材１１は、図３のように、インクジェット式記録ヘッドカートリッジのノズル形成面に摺接して、ノズル形成面に付着した紙粉などの塵や、インクなどを除去することができるように構成されている。
【００２２】
次に、図４は前記したインクジェット式記録装置において、キャリッジ１に着脱可能に装着されるインクジェット式記録ヘッドカートリッジの外観構成を示している。このインクジェット式記録ヘッドカートリッジは、前記したブラックインク記録ヘッドカートリッジ６の例を示している。そして図５には、インクジェット式記録ヘッドカートリッジと外観構成が同様な保守用カートリッジ１２が示されている。保守用カートリッジをキャリッジに装着する構成は、インクジェット式記録ヘッドカートリッジをキャリッジに装着する構成と同様とする。また、保守用カートリッジとインクジェット式記録ヘッドカートリッジを見分けやすくするために図のような形状の保守用カートリッジ１２１も考えられる。
【００２３】
図７は、カラーインク記録ヘッドカートリッジ７のみがキャリッジ１に装着されたときの構成を示したものであり、図８は、カラーインク記録ヘッドカートリッジ７および保守用カートリッジ１２がキャリッジ１に装着されたときの構成を示したものである。
【００２４】
インクジェット式記録装置においては、印刷時にインクミストが発生する。前記保守用カートリッジ１２は、発生したインクミストがキャリッジ１のコンタクト部１３に付着しないようにコンタクト部１３を覆うように構成されている（図９）。
【００２５】
また、図１０に示した保守用カートリッジ１２には、インクジェット式記録ヘッドカートリッジのノズル形成面に対応した位置に、キャッピング時にキャップと当接することがないように構成がなされている。これは、キャッピング時においてキャップ８ａが保守用カートリッジ１２の、記録ヘッドのノズル形成面に対応した面１２ａに張り付くことにより、キャリッジ１が印字領域側へ移動する際の駆動負荷が大きくなる懸念を解消するための構成である。
【００２６】
しかし、保守用カートリッジの面１２ａをキャップ８ａに単純に接することがないような構成にしてしまった場合、端が反った状態の印刷媒体を印刷する時に、印刷媒体の端が抑えられずにインクジェット式記録ヘッドカートリッジを装着する空間に進入してしまい、紙ジャムエラーを起こす懸念がある。そこで、保守用カートリッジ面１２ａとキャップ８ａがキャッピング時に当接することがない構成に付け加えて、図１０に示すように、保守用カートリッジの面１２ａの端に、テーパ面１２ｂとフラット面１２ｃを設ける構成がなされている。フラット面１２ｃは紙を抑える役割を、テーパ面１２ｂは紙の引っ掛かりを防止する役割を持っている。
【００２７】
保守用カートリッジの面１２ａ、１２ｂおよび１２ｃには、ワイピング時にワイピング部材１１へのダメージを無くすために、エッジを無くし、ワイピング部材がワイピングされる面を滑らかに払拭する構成がなされている。
【００２８】
さらに、ワイピングによって、ワイピング部材１１に付着したインクがコンタクト部１３へ飛び散ることを、保守用カートリッジの面１２ａ、１２ｂおよび１２ｃがあることにより防ぐ構成も兼ね備えている。
【００２９】
本発明では、回復動作において、キャップをスライドさせて主走査方向にワイピングを行う方法について説明したが、キャップを上下に移動させて副走査方向にワイピングを行う方法についても、同様の構成を備えることが可能である。
【００３０】
さらに、記録ヘッドとインクカートリッジが一体になった記録ヘッドカートリッジをキャリッジに装着させたインクジェット式記録装置について説明したが、記録ヘッドとインクカートリッジがキャリッジに別々に装着されるインクジェット式記録装置についても、同様の構成を備えることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【００３１】
【図１】本発明が適用されたインクジェット式記録装置の基本構成を示した斜視図である。
【図２】キャッピング時のインクジェット式記録ヘッドカートリッジとキャップ、ならびにワイピング部材の位置を示した正面図である。
【図３】ワイピング部材がインクジェット式記録ヘッドカートリッジのノズル形成面をワイピングしているときの構成図である。
【図４】図１に示す記録装置のキャリッジに着脱可能に装着されるブラックインク記録ヘッドカートリッジの外観構成を示した斜視図である。
【図５】図１に示す記録装置のキャリッジに着脱可能に装着される保守用カートリッジの外観構成を示した斜視図である。
【図６】インクジェット式記録ヘッドカートリッジと記録ヘッドを持たない保守用カートリッジを見分けるための保守用カートリッジ外観構成の提案例を示す図である。
【図７】図４に示したブラックインク記録ヘッドカートリッジのみがキャリッジに装着された状態を示した斜視図である。
【図８】図４に示したブラックインク記録ヘッドカートリッジおよび図５に示した保守用カートリッジがキャリッジに装着された状態を示した斜視図である。
【図９】キャリッジのコンタクト部を覆う構成を備えた保守用カートリッジの側面図である。
【図１０】キャッピング時のキャップと保守用カートリッジの面１２ａが接しない構成と、印刷媒体の端の反りを抑える構成を備えた保守用カートリッジの断面図である。
【符号の説明】
【００３２】
１ キャリッジ
２ キャリッジモータ
３ キャリッジベルト
４ シャーシレイル
６ ブラックインク記録ヘッドカートリッジ
７ カラーインク記録ヘッドカートリッジ
８ａ ブラック側キャップ
８ｂ カラー側キャップ
９ キャップスライダ
１０ 吸引ポンプ
１１ ワイピング部材
１２ 保守用カートリッジ
１２１ 保守用カートリッジ（形状変更型）
１２ａ 保守用カートリッジの、ノズル形成面に対応する面
１２ｂ 保守用カートリッジの、ノズル形成面に対応する面に設けたテーパ面
１２ｃ 保守用カートリッジの、紙を抑えるために設けた面
１３ コンタクト部
【技術分野】
【０００１】
本発明は、複数の記録ヘッドカートリッジが装着可能な、キャリッジ走査軸に沿って駆動するキャリッジと、キャリッジに支持されて、インク滴をノズルから噴射する記録ヘッドと、インクを記録ヘッドに供給するインクカートリッジにより、印刷媒体に印刷を行うインクジェット式記録装置に関する。
【背景技術】
【０００２】
記録ヘッドをキャリッジに装着するインクジェット式記録装置は、印刷媒体を横断して記録ヘッド搭載のキャリッジを１回だけ走査することにより複数のドット列を印刷できる記録装置である。前記記録装置の記録ヘッド搭載のキャリッジは、複数のドット列を印刷できるよう互いに媒体の移動方向に設置される複数の印刷要素（例えば、インクジェットノズル）を備えていることが普通であり、印刷は一方向または双方向とすることができる。
【０００３】
前記記録装置のキャリッジに、複数の記録ヘッドを装着できる記録ヘッド装着部が備えられている場合、一つの記録ヘッドのみをキャリッジに装着した状態でも印刷が可能である。例えば、カラーインクのみで印刷を実行する場合においては、ブラックの記録ヘッドを取り外した状態で印刷をすることも可能である。
【０００４】
また、インクジェット式記録装置は、非印刷時に記録ヘッドのノズル形成面を封止するためのキャッピング手段が備えられている。このキャッピング手段は、ノズル口のインクの乾燥を防止するためにキャップをノズル形成面に押し当て、キャップ内を密閉させる機能を持つだけでなく、ノズル口に目詰まりなどが生じた場合には、キャッピング手段によりノズル形成面を封止し、吸引ポンプからの負圧により、ノズル口からインクを吸引排出させてノズル口の目詰まりを解消するメンテナンス機能を持つ。
【０００５】
これら、記録ヘッドの目詰まりを解消するためにインクの強制的な吸引排出処理が行われ、記録ヘッドからインクを排出させた後には、例えばゴム素材を短冊状に形成したワイピング部材により、記録ヘッドのノズル形成面を払拭するワイピングが伴われる。
【０００６】
ワイピングには、主走査方向にワイピングをする方法と、副走査方向にワイピングをする方法とがある。
【特許文献１】特開平５−２２０９５１号公報
【特許文献２】特開２０００−１３５７９４号公報（段落［００２３］、図４）
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【０００７】
前記記録装置において、ひとつの記録ヘッドを取り外した状態で印刷する場合、取り外された記録ヘッド側のキャリッジでは、記録ヘッドと本体との電気的接続を行うコンタクトが剥き出しの状態となり、印刷時に発生するインクミストが付着し、コンタクト不良を起こす懸念がある。
【０００８】
また、ワイピング方向が主走査方向の場合、記録ヘッドのノズル形成面と同時にキャリッジも払拭される構成がある。この場合に、記録ヘッドが取り外された状態でワイピングが行われると、記録ヘッドがないためにキャリッジのみがワイピングされてしまい、ワイピング部材が跳ね返り、ワイピング部材に付着していたインクが飛び散る可能性がある。これにより、飛び散ったインクがコンタクトに付着し、コンタクト不良を起こす懸念がある。
【０００９】
その他に、印刷媒体の端が反っていた場合、記録ヘッド自体が存在しないことにより、印刷時に印刷媒体の端が記録ヘッドのノズル形成面で抑えられずに、記録ヘッドを装着する空間に進入してしまい、紙ジャムエラーを起こす懸念がある。これらのように記録ヘッドが装着されていない印刷時には、印刷障害を発生させてしまう可能性がある。
【００１０】
本発明は、上述の問題点に着目してなされたものであって、記録ヘッドをキャリッジに装着するインクジェット式記録装置において、記録ヘッドを取り外した状態で印刷する場合に、キャリッジに生じる空間によって発生する問題を解消することの出来るインクジェット式記録装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【００１１】
本発明は、以上の課題を解決するために、記録ヘッドが取り外されたキャリッジに記録ヘッドを持たない保守用カートリッジを装着する構成を備えるインクジェット式記録装置である。
【００１２】
保守用カートリッジを装着したときに、保守用カートリッジが、コンタクトへのインクミストの付着と、ワイピング時のインク飛び散りによるコンタクト不良を防止できる構成を備える。
【００１３】
さらに、印刷媒体の端が反っていたときの印刷時に、印刷媒体の端が保守用カートリッジの、記録ヘッドのノズル形成面に対応する面で抑えられ、記録ヘッドを装着する空間に進入することなく印刷を行うことができる構成を備える。
【００１４】
また、キャッピング時に保守用カートリッジの、記録ヘッドのノズル形成面に対応する面とキャップとが当接し、回復動作時に大きな負荷が発生してしまう懸念があるため、キャッピング時において、保守用カートリッジの、記録ヘッドのノズル形成面とキャップとの関係で大きな負荷が発生しない構成とする。なおかつ、印刷媒体の端が反っていたときの印刷時に、印刷媒体の端を抑えることができる構成とする。
【００１５】
すなわち、本発明は、複数の記録ヘッドカートリッジが装着可能な、キャリッジ走査軸に沿って駆動するキャリッジと、前記キャリッジに支持されて、インク滴をノズルから噴射する記録ヘッドと、インクを前記記録ヘッドに供給するインクカートリッジにより、印刷媒体に印刷を行うことのできるインクジェット式記録装置において、前記キャリッジが持つ複数の記録ヘッド装着部のどれかに前記記録ヘッドが装着されぬまま前記キャリッジが駆動した時に、前記記録ヘッドが一つでも装着されていれば動作可能であり、記録ヘッドが装着されていないキャリッジの記録ヘッド装着部には、記録ヘッドを持たない保守用カートリッジを装着することを特徴とするインクジェット式記録装置である。
【発明の効果】
【００１６】
記録ヘッドをキャリッジに装着するインクジェット式記録装置において、ひとつの記録ヘッドを取り外した状態で印刷する場合に、キャリッジに大きな空間が生じてしまうことは自明である。本発明のインクジェット式記録装置は、この空間が生じることで発生する問題を解消するため、キャリッジに記録ヘッドを持たない保守用カートリッジを装着する構成を備えたことが特徴である。
【発明を実施するための最良の形態】
【００１７】
以下、この発明におけるインクジェット式記録装置について、図に示す実施の形態に基づいて説明する。
【実施例】
【００１８】
図１はこの発明が適用されたインクジェット式記録装置の主要部の構成を斜視図によって示したものである。図中のキャリッジ１はキャリッジベルト３を介し、キャリッジモータ２の駆動によって、シャーシレイル４に案内されて主走査方向に往復運動するように構成されている。
【００１９】
前記キャリッジ１には、記録ヘッドとインクカートリッジを一体にしたインクジェット式記録ヘッドカートリッジが着脱可能となるように装填されている。インクジェット式記録ヘッドカートリッジにはブラックインク記録ヘッドカートリッジ６とカラーインク記録ヘッドカートリッジ７がある。
【００２０】
また、印刷領域外である待機位置にはキャッピング手段として、キャップ８ａ、８ｂを備えたキャップスライダ９が配置されており、キャッピング時にキャリッジ１の移動とともにキャップスライダ９が待機位置まで移動し、インクジェット式記録ヘッドカートリッジ６、７のノズル形成面をキャップ８ａ、８ｂがそれぞれ封止する機構を備えている（図２）。キャリッジ１の待機位置に近接して、キャッピング時のキャップ８ａ、８ｂの内部空間に負圧を与えることができる吸引ポンプ１０が配置されている。
【００２１】
キャップ８ａ、８ｂはキャッピング時に、記録装置の休止期間中においてインクジェット式記録ヘッドカートリッジのノズル形成面を封止してノズル口の乾燥を防止する蓋として機能するほか、前記吸引ポンプ１０からの負圧をインクジェット式記録ヘッドカートリッジのノズル形成面に作用させて、インクジェット式記録ヘッドカートリッジからインクを吸引排出させるクリーニング手段としての機能も兼ね備えている。また、キャップスライダ９の印字領域側の近傍には、ゴムなどの弾性素材を短冊状に成形したワイピング部材１１が配置されている。このワイピング部材１１は、図３のように、インクジェット式記録ヘッドカートリッジのノズル形成面に摺接して、ノズル形成面に付着した紙粉などの塵や、インクなどを除去することができるように構成されている。
【００２２】
次に、図４は前記したインクジェット式記録装置において、キャリッジ１に着脱可能に装着されるインクジェット式記録ヘッドカートリッジの外観構成を示している。このインクジェット式記録ヘッドカートリッジは、前記したブラックインク記録ヘッドカートリッジ６の例を示している。そして図５には、インクジェット式記録ヘッドカートリッジと外観構成が同様な保守用カートリッジ１２が示されている。保守用カートリッジをキャリッジに装着する構成は、インクジェット式記録ヘッドカートリッジをキャリッジに装着する構成と同様とする。また、保守用カートリッジとインクジェット式記録ヘッドカートリッジを見分けやすくするために図のような形状の保守用カートリッジ１２１も考えられる。
【００２３】
図７は、カラーインク記録ヘッドカートリッジ７のみがキャリッジ１に装着されたときの構成を示したものであり、図８は、カラーインク記録ヘッドカートリッジ７および保守用カートリッジ１２がキャリッジ１に装着されたときの構成を示したものである。
【００２４】
インクジェット式記録装置においては、印刷時にインクミストが発生する。前記保守用カートリッジ１２は、発生したインクミストがキャリッジ１のコンタクト部１３に付着しないようにコンタクト部１３を覆うように構成されている（図９）。
【００２５】
また、図１０に示した保守用カートリッジ１２には、インクジェット式記録ヘッドカートリッジのノズル形成面に対応した位置に、キャッピング時にキャップと当接することがないように構成がなされている。これは、キャッピング時においてキャップ８ａが保守用カートリッジ１２の、記録ヘッドのノズル形成面に対応した面１２ａに張り付くことにより、キャリッジ１が印字領域側へ移動する際の駆動負荷が大きくなる懸念を解消するための構成である。
【００２６】
しかし、保守用カートリッジの面１２ａをキャップ８ａに単純に接することがないような構成にしてしまった場合、端が反った状態の印刷媒体を印刷する時に、印刷媒体の端が抑えられずにインクジェット式記録ヘッドカートリッジを装着する空間に進入してしまい、紙ジャムエラーを起こす懸念がある。そこで、保守用カートリッジ面１２ａとキャップ８ａがキャッピング時に当接することがない構成に付け加えて、図１０に示すように、保守用カートリッジの面１２ａの端に、テーパ面１２ｂとフラット面１２ｃを設ける構成がなされている。フラット面１２ｃは紙を抑える役割を、テーパ面１２ｂは紙の引っ掛かりを防止する役割を持っている。
【００２７】
保守用カートリッジの面１２ａ、１２ｂおよび１２ｃには、ワイピング時にワイピング部材１１へのダメージを無くすために、エッジを無くし、ワイピング部材がワイピングされる面を滑らかに払拭する構成がなされている。
【００２８】
さらに、ワイピングによって、ワイピング部材１１に付着したインクがコンタクト部１３へ飛び散ることを、保守用カートリッジの面１２ａ、１２ｂおよび１２ｃがあることにより防ぐ構成も兼ね備えている。
【００２９】
本発明では、回復動作において、キャップをスライドさせて主走査方向にワイピングを行う方法について説明したが、キャップを上下に移動させて副走査方向にワイピングを行う方法についても、同様の構成を備えることが可能である。
【００３０】
さらに、記録ヘッドとインクカートリッジが一体になった記録ヘッドカートリッジをキャリッジに装着させたインクジェット式記録装置について説明したが、記録ヘッドとインクカートリッジがキャリッジに別々に装着されるインクジェット式記録装置についても、同様の構成を備えることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【００３１】
【図１】本発明が適用されたインクジェット式記録装置の基本構成を示した斜視図である。
【図２】キャッピング時のインクジェット式記録ヘッドカートリッジとキャップ、ならびにワイピング部材の位置を示した正面図である。
【図３】ワイピング部材がインクジェット式記録ヘッドカートリッジのノズル形成面をワイピングしているときの構成図である。
【図４】図１に示す記録装置のキャリッジに着脱可能に装着されるブラックインク記録ヘッドカートリッジの外観構成を示した斜視図である。
【図５】図１に示す記録装置のキャリッジに着脱可能に装着される保守用カートリッジの外観構成を示した斜視図である。
【図６】インクジェット式記録ヘッドカートリッジと記録ヘッドを持たない保守用カートリッジを見分けるための保守用カートリッジ外観構成の提案例を示す図である。
【図７】図４に示したブラックインク記録ヘッドカートリッジのみがキャリッジに装着された状態を示した斜視図である。
【図８】図４に示したブラックインク記録ヘッドカートリッジおよび図５に示した保守用カートリッジがキャリッジに装着された状態を示した斜視図である。
【図９】キャリッジのコンタクト部を覆う構成を備えた保守用カートリッジの側面図である。
【図１０】キャッピング時のキャップと保守用カートリッジの面１２ａが接しない構成と、印刷媒体の端の反りを抑える構成を備えた保守用カートリッジの断面図である。
【符号の説明】
【００３２】
１ キャリッジ
２ キャリッジモータ
３ キャリッジベルト
４ シャーシレイル
６ ブラックインク記録ヘッドカートリッジ
７ カラーインク記録ヘッドカートリッジ
８ａ ブラック側キャップ
８ｂ カラー側キャップ
９ キャップスライダ
１０ 吸引ポンプ
１１ ワイピング部材
１２ 保守用カートリッジ
１２１ 保守用カートリッジ（形状変更型）
１２ａ 保守用カートリッジの、ノズル形成面に対応する面
１２ｂ 保守用カートリッジの、ノズル形成面に対応する面に設けたテーパ面
１２ｃ 保守用カートリッジの、紙を抑えるために設けた面
１３ コンタクト部
【特許請求の範囲】
【請求項１】
複数の記録ヘッドカートリッジが装着可能な、キャリッジ走査軸に沿って駆動するキャリッジと、前記キャリッジに支持されて、インク滴をノズルから噴射する記録ヘッドと、インクを前記記録ヘッドに供給するインクカートリッジにより、印刷媒体に印刷を行うことのできるインクジェット式記録装置において、
前記キャリッジが持つ複数の記録ヘッド装着部のどれかに前記記録ヘッドが装着されぬまま前記キャリッジが駆動した時に、前記記録ヘッドが一つでも装着されていれば動作可能であり、記録ヘッドが装着されていないキャリッジの記録ヘッド装着部には、記録ヘッドを持たない保守用カートリッジを装着することを特徴とするインクジェット式記録装置。
【請求項２】
記録ヘッドが装着されていない前記キャリッジの記録ヘッド装着部の、記録ヘッドと本体との電気的接続を行うコンタクトを、前記保守用カートリッジを前記キャリッジに取り付けることで覆う手段を有することを特徴とする請求項１に記載のインクジェット式記録装置。
【請求項３】
印刷時に印刷媒体の端が記録ヘッドを装着する空間に進入することを、前記保守用カートリッジに記録ヘッドのノズル形成面に対応する面を設けることで抑える手段を有することを特徴とする請求項１または請求項２に記載のインクジェット式記録装置。
【請求項４】
印刷媒体を印刷するときに印刷媒体の端を、前記保守用カートリッジの、記録ヘッドのノズル形成面に対応した面にて抑える手段を有することを特徴とする請求項１から３のいずれかに記載のインクジェット式記録装置。
【請求項５】
非印刷時に印刷領域外で記録ヘッドのノズル形成面をキャップにより封止するキャッピング手段と、キャッピング時にノズル口からインクを吸引排出させる吸引ポンプと、弾性素材を短冊状に形成したワイピング部材により記録ヘッドのノズル形成面を払拭するワイピングを備え、
キャッピング時の前記キャップと、前記保守用カートリッジの、記録ヘッドのノズル形成面に対応した面とが当接しないための手段を有することを特徴とする請求項１から４のいずれかに記載のインクジェット式記録装置。
【請求項６】
前記保守用カートリッジの、記録ヘッドのノズル形成面に対応した面において、印刷媒体を印刷するときに、印刷媒体の端をテーパ面にて抑える手段を有することを特徴とする請求項５に記載のインクジェット式記録装置。
【請求項７】
前記保守用カートリッジの、記録ヘッドのノズル形成面に対応した面において、ワイピング時にワイピング部材と当接する箇所を滑らかな形状にし、ワイピング部材へのダメージを無くす手段を有することを特徴とする請求項５または請求項６に記載のインクジェット式記録装置。
【請求項１】
複数の記録ヘッドカートリッジが装着可能な、キャリッジ走査軸に沿って駆動するキャリッジと、前記キャリッジに支持されて、インク滴をノズルから噴射する記録ヘッドと、インクを前記記録ヘッドに供給するインクカートリッジにより、印刷媒体に印刷を行うことのできるインクジェット式記録装置において、
前記キャリッジが持つ複数の記録ヘッド装着部のどれかに前記記録ヘッドが装着されぬまま前記キャリッジが駆動した時に、前記記録ヘッドが一つでも装着されていれば動作可能であり、記録ヘッドが装着されていないキャリッジの記録ヘッド装着部には、記録ヘッドを持たない保守用カートリッジを装着することを特徴とするインクジェット式記録装置。
【請求項２】
記録ヘッドが装着されていない前記キャリッジの記録ヘッド装着部の、記録ヘッドと本体との電気的接続を行うコンタクトを、前記保守用カートリッジを前記キャリッジに取り付けることで覆う手段を有することを特徴とする請求項１に記載のインクジェット式記録装置。
【請求項３】
印刷時に印刷媒体の端が記録ヘッドを装着する空間に進入することを、前記保守用カートリッジに記録ヘッドのノズル形成面に対応する面を設けることで抑える手段を有することを特徴とする請求項１または請求項２に記載のインクジェット式記録装置。
【請求項４】
印刷媒体を印刷するときに印刷媒体の端を、前記保守用カートリッジの、記録ヘッドのノズル形成面に対応した面にて抑える手段を有することを特徴とする請求項１から３のいずれかに記載のインクジェット式記録装置。
【請求項５】
非印刷時に印刷領域外で記録ヘッドのノズル形成面をキャップにより封止するキャッピング手段と、キャッピング時にノズル口からインクを吸引排出させる吸引ポンプと、弾性素材を短冊状に形成したワイピング部材により記録ヘッドのノズル形成面を払拭するワイピングを備え、
キャッピング時の前記キャップと、前記保守用カートリッジの、記録ヘッドのノズル形成面に対応した面とが当接しないための手段を有することを特徴とする請求項１から４のいずれかに記載のインクジェット式記録装置。
【請求項６】
前記保守用カートリッジの、記録ヘッドのノズル形成面に対応した面において、印刷媒体を印刷するときに、印刷媒体の端をテーパ面にて抑える手段を有することを特徴とする請求項５に記載のインクジェット式記録装置。
【請求項７】
前記保守用カートリッジの、記録ヘッドのノズル形成面に対応した面において、ワイピング時にワイピング部材と当接する箇所を滑らかな形状にし、ワイピング部材へのダメージを無くす手段を有することを特徴とする請求項５または請求項６に記載のインクジェット式記録装置。
【図１】
【図２】
【図３】
【図４】
【図５】
【図６】
【図７】
【図８】
【図９】
【図１０】
【図２】
【図３】
【図４】
【図５】
【図６】
【図７】
【図８】
【図９】
【図１０】
【公開番号】特開２００６−３２６９１２（Ｐ２００６−３２６９１２Ａ）
【公開日】平成１８年１２月７日（２００６．１２．７）
【国際特許分類】
【出願番号】特願２００５−１５０８７９（Ｐ２００５−１５０８７９）
【出願日】平成１７年５月２４日（２００５．５．２４）
【出願人】（０００００１００７）キヤノン株式会社 (59,756)
【Ｆターム（参考）】
【公開日】平成１８年１２月７日（２００６．１２．７）
【国際特許分類】
【出願日】平成１７年５月２４日（２００５．５．２４）
【出願人】（０００００１００７）キヤノン株式会社 (59,756)
【Ｆターム（参考）】
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