説明

インクジェット式記録装置

【目的】 複数のインクカートリッジを使用する場合に、インクカートリッジの交換ミスを防止すること。
【構成】 複数のインクジェット式記録ヘッドと、カートリッジ検出器124、125、及びインクカートリッジを挿脱するレバーを有するカートリッジ装着機構と、印刷領域外に配置されて各インクジェット式記録ヘッドを封止するキャップ部材と、キャップ内に負圧を作用させるポンプ手段とを備えたインクジェット式記録装置において、インクカートリッジ検出器124、125からの信号によりインクカートリッジの装着状態を検出するインクカートリッジ交換履歴判定手段130と、手段130によりインクカートリッジの装着が検知された場合に、インクカートリッジが交換された記録ヘッドのキャップ部材に所定時間負圧を供給するようにポンプ手段を制御する吸引制御手段135を備える。インクカートリッジの交換が行われた記録ヘッドにのみインクを充填する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、記録用紙の幅方向に移動するキャリッジに複数のインクジェット式記録ヘッドとこれらにインクを供給するインクカートリッジを搭載し、印刷デ−タに一致して複数色のインクを記録用紙に噴射して画像や文字を印刷するインクジェット式プリンタ、より詳細にはインクカートリッジの管理技術に関する。
【0002】
【従来の技術】インクジェット記録ヘッドを搭載した記録装置は、印刷時の騒音が比較的小さく、しかも小さなドットを高い密度で形成できるため、カラー印刷を含めた多くの印刷に使用され、特に記録密度の一層の向上や、またカラー印刷を可能にするため、キャリッジに複数の記録ヘッドを搭載したものが実用化されている。このような記録装置は、装置全体の小型化とインク補給の簡素化を図るために、各記録ヘッドにインクを供給するそれぞれ独立のインクカートリッジをキャリッジに搭載するように構成されている。
【0003】そして、通常、インクカートリッジ交換後には、インクカートリッジと記録ヘッドとの接続部から記録ヘッドの流路内に気泡が取り込まれるため、インクカートリッジが交換された記録ヘッドを外部スイッチにより指示して、この記録ヘッドに負圧を作用させてインクを強制的に充填する必要がある。このため、誤った指示を行った場合には、インクの充填が行われず印刷が不可能であるばかりでなく、不必要なインクの消費を招くという問題がある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、複数のインクカートリッジを搭載する記録装置のインクカートリッジの交換に伴う操作を簡素化することができる新規なインクジェット式記録装置を提供することである。
【0005】
【課題を解決するための手段】このような問題を解消するために本発明においては、キャリッジの移動方向に一定の距離をおいて配設された複数のインクジェット式記録ヘッドと、下部に前記記録ヘッドに連通するインク供給針とインクカートリッジの有無を検出するカートリッジ検出手段が設けられ、また上部にインクカートリッジを挿脱するレバーを備え、前記各インクジェット式記録ヘッドにインクを供給するインクカートリッジを収容するカートリッジ収容室を備えたカートリッジ装着機構と、印刷領域外に配置されて各インクジェット式記録ヘッドを封止するキャップ部材と、前記キャップ内に負圧を作用させるポンプ手段とを備えたインクジェット式記録装置において、前記インクカートリッジ検出手段からの信号によりインクカートリッジの装着状態を検出するインクカートリッジ交換履歴判定手段と、前記手段によりインクカートリッジの装着が検知された場合に、インクカートリッジが交換された記録ヘッドの前記キャップ部材に所定時間負圧を供給するように前記ポンプ手段を制御する吸引制御手段を備える。インクカートリッジが交換された記録ヘッドを自動的に判定し、これに負圧を作用させてインクの充填を行う。
【0006】
【実施例】そこで以下に本発明の詳細を図示した実施例に基づいて説明する。図1は、本発明のインクジェット式記録装置の印刷機構周辺の概要を示すものであって、図中符号1はキャリッジで、ガイド部材2に支持され、タイミングベルト3を介してパルスモータ23に接続されていて、プラテン5に平行に往復動可能に構成されている。
【0007】キャリッジ1にはインクを吐出するノズル開口列を備えた記録ヘッド、この実施例では黒色インクを吐出する第1インクジェット式記録ヘッド7と、カラーインクを吐出する第2インクジェット式記録ヘッド8(図4)とが、キャリッジ1の移動方向に一定の間隔で設けられ、これら各記録ヘッド7、8の上部には黒色インクカートリッジ9と、カラーインクカートリッジ10を着脱自在に搭載できる後述のインクカートリッジ装着機構14が設けられている。また、印刷領域外には各記録ヘッド7、8を封止するキャッピング装置12が設けられている。
【0008】このような構成によりフレキシブルケーブル11を介して図示しないヘッド駆動回路からの駆動信号を受けると、インクカートリッジ9、10からインクの供給を受けながら記録ヘッド7、8が記録用紙6に黒色、及び有色のドットを形成する。
【0009】図2は、前述のキャッピング装置近傍の上面を示す図であって、図中符号20は、紙送りローラで、回転軸21の一端に固定された歯車22を介して紙送りとポンプ駆動を兼ねたパルスモータ24に接続されていて、記録用紙6を印刷工程に合わせて搬送するように構成されている。
【0010】図中符号12は、前述のキャッピング装置で、キャリッジ1の移動に連動して2つの記録ヘッド7、8のノズル開口面を覆うキャッピング位置と、ノズル開口面から離れる非キャッピング位置との2位置を占めるスライダ30に、弾性材料からなる第1キャップ部材31、第2キャップ部材32が設けられている。これらキャップ部材31、32は、それぞれ対応する第1記録ヘッド7と第2記録ヘッド8を密封可能で、しかも離間した状態で各記録ヘッド7、8から吐出されるインク滴を確実に受け止めることができる開口面積を備えている。
【0011】第1、第2キャップ部材31、32は、その吸引口31a、32a(図3)をそれぞれ第1チューブポンプ37と第2チューブポンプ38の一部を構成するチューブ33、34の一端に接続されていて、各ポンプの吸引力を受けるようになっている。
【0012】第1、第2チューブポンプ37、38は、輪列40を介してパルスモータ24に選択的に接続されて、モータ24の逆転時には第1チューブポンプ37だけが吸引動作を、また正転時には第2チューブポンプ38だけが吸引動作を行うようになっている。
【0013】図3、及び図4は、それぞれ上述したキャッピング装置12の一実施例を示すものであって、図中符号30はスライダで、キャリッジ1に搭載された2つの記録ヘッド7、8の間隔に一致させて第1、第2のキャップ部材31、32が、軸31c、32cにより揺動可能に設けられている。
【0014】図中符号41、42は、第1、第2ガイド片で、キャリッジ1の第1、第2記録ヘッド7、8の幅に合わせて両側に配置され、またキャリッジ1が所定位置にセットされた時、各記録ヘッド7、8に対向できる間隔を離して設けられている。またスライダ30の先端、図中では右端には、キャリッジ1が第1、第2キャップ部材31、32と第1、第2の記録ヘッド7、8とが対向する位置に移動したとき、キャリッジ1の下端の突起44に当接するフラッグ片45が形成されている。フラッグ片45よりもさらに先端には係合片46が設けられていて、基台53に取り付けられたガイド部材47に当接、離間するようになっている。
【0015】ガイド部材47には、スライダ30の抜けを防止する凸部47aと、スライダ30を記録ヘッド7、8の下端に対して空吐出に適した一定の間隔を確保するための平面47bと、キャップ部材31、32を記録ヘッド7、8に弾接する位置を確保する平面47cと、これら平面を結ぶ斜面47dとが形成されている。
【0016】一方、スライダ30は、その下部の中央にキャリッジ1の移動方向に直交する軸50が設けられていて、この軸50の両側を、下端が長溝52aを介して基台53の軸54に揺動可能に取り付けられたレバー52に遊嵌され、さらにその下端が基台53に固定されて印刷領域側に傾斜して非印刷領域側に座屈ぎみにセットされたコイルバネ56の上端に取り付けられている。
【0017】これにより非キャッピング時には、スライダ30は、一端をガイド部材47の斜面47bの最下端に、また中央部をレバー52に規制されながらコイルバネ56により印字領域側に付勢されて、各キャップ部材31、32を記録ヘッド7、8に接しさせることなく、空吐出に適した間隔gを形成できる位置を確保することになる。
【0018】また、スライダ30は、そのケース61側に各キャップ部材31、32に設けられている大気開放口31b、32bと接続するバルブユニット60が設けられていて、バルブユニット60からは作動杆62が突出している。これによりスライダ30をキャッピング位置まで移動させることにより、作動杆62をケース61に弾接させて、常時開放状態にあるバルブユニット60を閉弁させて大気開放口31b、32bを閉塞できる。
【0019】図5、6、7は、前述のポンプユニット13の一実施例を示すものであって、一方のポンプ37の駆動輪72が輪列70を介してパルスモータ24に接続しており、各キャップ部材31、32と図示しない廃インクタンクとを接続している。ポンプチュ−ブ33、34は、その外側をほぼ円形状となるようにカバーケ−ス73、74により覆われ、内側をロ−ラ85、85、86、86により弾圧されるようになっている。2つのロ−ラ85、85、86、86は、それぞれ接続部材76を介して連結されている回転軸77、78の両端に固定された駆動輪列72、81、82、83の後述する長溝に移動自在に遊嵌されている。
【0020】図8(イ)、(ロ)は、それぞれこれらロ−ラ85、85、86、86を支持している駆動輪に形成された前述の案内溝90、90の一実施例を示すもので、この中心からの距離が徐々に変化する長溝として形成されており、紙送り兼ポンプモータ24が逆転(符号A)したときにはローラ85の軸85aが長溝90、90に沿って外周側に移動する。
【0021】第1チューブポンプ37は、これによりロ−ラ85、85がチュ−ブ33を圧接しながら回動して吸引力を発生することになり、またモータ24が正転(符号B)したときには軸85aが中心方向に移動してローラ85、85がチューブ33から離れてポンプ作用を失うことになる。
【0022】第2チューブポンプ38は、第1チューブポンプ37とは逆に動作するように構成されている。すなわちモータ24が逆転したときにはローラ86が中心方向に移動してポンプ作用を失い、またモータ24が正転するとローラ86、86が外周側に移動してチューブ34を弾圧しながら回動して吸引力を発生するようになっている。
【0023】これによりモータ24の回転方向を切換えるだけで、吸引力を発生させるポンプを選択することができる。なお図中符号92は、ゴム等の弾性部材で構成されたローラ押圧片で、駆動輪72が回転した場合に、ローラ85に弾圧して、ローラ85を長溝90に沿って、モータの回転方向に対応する位置に強制的に移動させるためのものである。
【0024】図9は、前述のキャリッジ1に設けられているインクカートリッジ装着機構14の一実施例を示すものであって、黒インクのカートリッジ9、および色インクのカートリッジ10の収容が可能な収容室107、108が形成されており、その底部には記録ヘッド7、8を固定する基板114、115が取り付けられ、またその裏面には先端を上に向けたインク供給針100、101、102、103が設けられている。また基板114、115にはインクカートリッジが装着されたときに信号を出力するインクカートリッジ検出器124、125が設けられている。
【0025】105、106は、前述のレバーで、インクカートリッジ収容室107、108の上端にヒンジ109、110により回動可能に設けられ、中央部にインクカートリッジ9、10を押圧する突起111、112を設けて構成されている。
【0026】図中符号120は、図示しない筐体に一体的に取り付けられたレバー規制部材で、キャリッジがホームポジション(HP)に位置している状態では、各レバー105、106に接触して、レバー105の回動を不可能とする高さに設定されており、またキャリッジ1が所定位置、この実施例では前述の空吐出位置を兼ねるカートリッジ交換位置に移動した状態では、一方のレバー105が対向する位置にレバー105が突出できるサイズの窓121が形成され、またその端部120aの位置が他方のレバー106に接触しない位置となるようになっている。
【0027】すなわち、図10(イ)に示したようにL3>L1>L2となるように窓121の端部や規制部材の端部と、各レバー105、106の側端部とのサイズが選択されている。
【0028】このような構造を採ることにより、図10(イ)に示したようにキャリッジ1をホームポジションから印刷領域側に距離L1だけ移動させて同図(ロ)に示すカートリッジ交換位置にセットすると、レバー105が窓121に対向し、またレバー106がレバー規制部材120の端部120aよりも外側に位置するから、各レバー105、106がヒンジ109、110を中心に回動可能となる。
【0029】各レバー105、106を引き上げると、突起111、112による押圧が解除されるから、収容室107、108からインクを消費してしまったインクカートリッジ9、10の取出しが可能となる。インクカートリッジ収容室107、108からインクカートリッジ9、10を取り出すと、インクカートリッジ検出器124、125から出力されていたインクカートリッジ有りの信号が断たれる。これによりインクカートリッジ9、10が外されたことが検知できる。
【0030】ついで新しいインクカートリッジ9、10を各収容室107、108に落し込んでレバー105、106を押し下げることにより、レバー105、106の突起111、112によりインクカートリッジ7、8が押し下げられて、インク供給針100、101、102、103がインクカートリッジ7、8の図示しないインク供給穴に挿入される。同時に各インク収容室107、108の底部に設けられているカートリッジ検出手段124、125からカートリッジ有りの信号が出力する。
【0031】図11は、制御装置の一実施例を示すものであって、図中符号130は、、カートリッジ交換履歴判定手段で、検出スイッチ124、125からの信号の信号を一定周期で検知し、この信号に基づいて各インク収容室107、108にインクカートリッジが正確に装着されているか否かを判定し、各インクカートリッジ9、10の交換履歴を記憶手段131に記憶させるものである。
【0032】132は、キャリッジ制御手段で、プリンタ本体の筐体に設けられているインクカートリッジ交換司令スイッチ133からの信号によりキャリッジ1をインクカートリッジ交換位置(図10(ロ)に位置)に移動させや、またインクカートリッジ交換履歴判定手段130からの信号によりキャリッジ1をホームポジションに復帰させるようにキャリッジ駆動モータ23を制御するものである。
【0033】134はタイマーで、インクカートリッジ交換履歴判定手段130からの信号によりインクカートリッジが正確に装着された時点、つまりインクカートリッジ無しからインクカートリッジ有りに切り替わった時点で計時動作を開始し、所定時間が経過した時点で吸引制御手段135や、キャリッジ制御手段132に信号を出力するものである。
【0034】135は、前述の吸引制御手段で、インクカートリッジの初期装填時や、及びインクカートリッジを交換した場合における記録ヘッドへのインクの充填動作を制御するもので、記憶手段131の変数Yの値とタイマー134から信号に基づいて必要なポンプ37、38を制御するように構成されている。
【0035】136は強制印字手段で、強制印字司令スイッチ137が押圧された場合に、記憶手段131に格納されている変数Yの値に基づいてインクカートリッジが装着されている記録ヘッド7、8を検出し、両方に装着されている場合には2つの記録ヘッド7、8に印刷データを出力し、また一方の記録ヘッドにだけしかインクカートリッジが装着されていない場合には、インクカートリッジが装着されている方の記録ヘッドにだけ印字データを出力し、インクカートリッジが装着されていない記録ヘッドへの印字データを出力を阻止するものである。
【0036】次にこのように構成した装置の動作を図12R>2、13、14、15に示したフローチャートに基づいて説明する。工場から出荷された状態ではインクカートリッジが装着されていないので、使用に先立ってインクカートリッジを装着する必要がある。
【0037】プリンタ本体の電源が投入されて、インクカートリッジ交換司令スイッチ133が押圧されると、このスイッチ133の押圧回数を示す変数Eに値「1」がセットされる(図12 ステップ イ)。なお、引き続いてインクカートリッジ交換司令スイッチ133が押圧された場合は、変数Eには値「0」がセットされた後、インクカートリッジ交換モードを脱出する。
【0038】ついで、記憶手段131のインクカートリッジの交換履歴を示す変数Yを値「0」にセットして、この変数Yを初期化する(図12 ステップ ロ)。
【0039】タイマ134は、計数内容をクリアして(図12 ステップ ハ)計時動作を開始する(図12 ステップ ニ)。タイマ134の起動に連動してキャリッジ制御手段132は、モータ23を作動させてキャリッジ1をホームポジションから距離L1だけ印刷領域側にキャリッジ1を移動させ、キャリッジ1をインクカートリッジ交換位置にセットする(図12 ステップ ホ)。
【0040】インクカートリッジ交換履歴判定手段130は、インクカートリッジ検出器124からの信号に基づいて記録ヘッド7にインクカートリッジ9が装着されているか、否かを判定する(図12 ステップ ヘ)。今の場合はインクカートリッジ9が装着されていないので、このカートリッジ9の有無を示す変数Sに値「0」を割り当てる(図12 ステップ ト)。
【0041】また同様にインクカートリッジ検出器125からの信号に基づいて記録ヘッド8にインクカートリッジ10が装着されているか、否かを判定する(図12 ステップ チ)。今の場合はインクカートリッジ10が装着されていないので、このカートリッジ10の有無を示す変数Tに値「0」をセットする(図12 ステップ リ)。
【0042】キャリッジ1がインクカートリッジ交換位置にセットされている状態では、前述したように図10(ロ)に示すごとく、インクカートリッジの挿脱が可能であるため、それぞれの収容室107、108に対応するインクカートリッジ9、10を挿入し、図10(イ)に示す位置にレバー105、106をセットする。
【0043】このようにして記録ヘッド7、8にインクカートリッジ9、10の装着が終了すると、各インクカートリッジ検出器124、125からインクカートリッジ有りの信号が出力し、インクカートリッジ交換履歴判定手段130は記憶手段131に変数S、Tにそれぞれ値「1」をセットする(図12 ステップ レ、ソ)。これにより、インクカートリッジ交換履歴判定手段130は、交換履歴を示す変数Yに値「1」をセットし(図1212 ステップ タ)、再びステップ(ヘ)に移る。
【0044】ところで、このカートリッジ装着の過程においてはキャップ部材31、32は、記録ヘッド7、8のノズル面に対して一定の間隙gをもって対向しているため(図10(ロ))、インクカートリッジ9、10の装着時に記録ヘッドから漏れ出したインクや液はキャップ31、32に収容されて記録装置の筐体内を汚染することはない。
【0045】なお、タイマ134が起動してから時間t1が経過しても(図12 ステップル)、インクカートリッジが装着されることなく、両変数S、Tがともに値「1」にならない場合には、キャリッジ制御手段132は、キャリッジ1をホームポジションに移動させて(図1212 ステップ マ)、記録ヘッドの無用な乾燥を防止する。
【0046】インクカートリッジ9、10の装着が終了した段階で速やかにスイッチ133を押圧すると、変数Eの値が「1」から「0」に切り替わり、インクカートリッジ装着終了の司令を受けたことが記憶手段131に格納される。
【0047】インクカートリッジ交換履歴判定手段130は、時間t2、通常60秒の経過を待つことなく(図1212 ステップ ネ)再び変数Yの値、つまりインクカートリッジの装着状況を調査する。
【0048】この場合には2つとも交換、つまり新しいものに交換、装着されたから、交換履歴を表す変数Yの値が「1」となっている(図12 ステップ ラ)。したがって、処理1に進む(図12 ステップ ム)。
【0049】ところで、インクカートリッジの装着が終了した状態で、ユーザがスイッチ133の押圧を忘却していた場合には変数Eが値「0」に切り替わる以前に時間t2を計時することになる(図12 ステップ ネ)。この場合にはインクカートリッジ交換司令スイッチ133の再度の押圧を待つことなく、つまり変数Eの値が「0」に切り替わるのを待つことなく、変数Yの値の判定工程(図12 ステップ ナ、ラ、ノ)に移行する。これにより、インクカートリッジを装着できる程度の不慣れなユザーでも、後述する充填工程に自動的に移行することが可能となる。
【0050】キャリッジ制御手段132は、キャリッジ1をホームポジッションに移動させる(図13 ステップ イ)。これにより、各記録ヘッド7、8はキャップ部材31、32により押圧されることになる。
【0051】すなわち、 図16に示したようにキャリッジ1がインクカートリッジ交換位置に存在する状態から、キャリッジ1が外側(図中、右側)に移動すると、スライダ30は、これのフラッグ片45がキャリッジ1の突起44を介してキャリッジ1からの力を受け、また上部がキャリッジ1の移動方向に座屈ぎみのコイルバネ56の付勢力を受けているレバー52の抵抗力を受けるため、図17に示したように前のめりとなり図中矢印Dの方向にスライダ30の後端を上部に持ち上げようとする力が作用する。
【0052】この結果、スライダ30は、軸50を回動支点として後部が持ち上がり、軸50より後部(印刷領域側)に位置する第2キャップ部材32が第2記録ヘッド8に最初に当接する。このとき、キャップ部材32がスライダ30に対してある程度揺動可能に取り付けられており、またスライダ30もレバー52を介して基台53に揺動可能であるため、図18に示したように第2記録ヘッド8にガイドされながら上昇して第2記録ヘッド8を封止できる位置でこれに当接する。
【0053】さらにキャリッジ1がケース61側に移動すると、コイルバネ56はキャリッジ1からの力に抗し切れなくなって座屈し始め、スライダ30を上部に持ち上げることになる。これにより図19に示したようにスライダ30は、そのケース側を第2キャップ部材32を第2記録ヘッド8に嵌装した状態でそのまま持ち上げられ、第1キャップ部材31を第1記録ヘッド7に嵌装することになる。
【0054】いうまでもなく、スライダ30が基台53に対して揺動するとともに、第1、及び第2のキャップ部材31、32は、スライダ30に対してある程度揺動でき、しかも自身が弾性部材で構成されているため、各記録ヘッド7、8の縁に案内されるようにして記録ヘッド7、8に填まり込む。
【0055】このようにしてさらにキャリッジ1が移動すると、スライダ30は、その上面を記録ヘッド7、8に規制されながら水平にケース61に移動する。そしてスライダ30の先端から突出している作動杆62がケース61に当接して押し込まれると、弁が閉弁して各キャップ部材31、32の大気開放口31b、32bを遮断する。
【0056】ついで、吸引制御手段135は、変数Yの値が「1」であるから、まずモータ24を正転させ(図1313 ステップ ロ)て第1チューブポンプ37を作動させて記録ヘッド7に負圧を作用させ(図13 ステップ ハ)、記録ヘッド7にインクの充填を行う。
【0057】設定されている吸引時間が経過した段階で、吸引制御手段135は、モータ24を停止させ(図1313 ステップ ニ)、ついでモータ24を逆転させ(図13ステップ ホ)て第2チューブポンプ38を作動させて記録ヘッド8に負圧を作用させ(図13 ステップ ヘ)、インクカートリッジ10から記録ヘッド8にインクを充填する。
【0058】設定されている吸引時間が経過した段階で吸引制御手段135は、モータ24を停止させ(図13 ステップ ト)、表示器138に印刷が可能である旨の表示をさせる(図13 ステップ チ)。
【0059】一方、長期間の使用によりインクカートリッジのインクが消費されてしまった場合には、インクカートリッジ交換司令スイッチ133を押圧する。これにより、インク交換司令スイッチの押圧回数を示す変数Eに値「1」がセットされる(図12 ステップ イ)。
【0060】ついで、記憶手段131のインクカートリッジの着脱状態を示す変数Yに値「0」をセットして、この変数Yを初期化する(図12 ステップ ロ)。
【0061】タイマ134は、その内容をクリアして(図12 ステップ ハ)計時動作を開始する(図12 ステップ ニ)。タイマ134の起動に連動してキャリッジ制御手段132は、モータ23を作動させてキャリッジ1をインクカートリッジ交換位置にセットする(図12 ステップ ホ)。
【0062】この状態で交換したいインクカートリッジ、この場合にはインクカートリッジ9を抜く。
【0063】これにより、インクカートリッジ交換履歴判定手段130は、インクカートリッジ検出器124からの信号に基づいて引き抜かれたインクカートリッジ、この場合にはインクカートリッジ9が装着されていないので(図12 ステップ ヘ)。このカートリッジ9の有無を示す変数Sに値「0」を割り当てる(図12ステップ ト)。
【0064】また同様にインクカートリッジ検出器125からの信号に基づいて記録ヘッド8のインクカートリッジ10について判定する(図12 ステップ チ)。この記録ヘッド8にはインクカートリッジ10が装着されたままであるから、このカートリッジ10の有無を示す変数Tに値「1」をセットする(図12 ステップソ)。
【0065】インクカートリッジ交換履歴判定手段130は、各変数の値を調査して変数S=0、変数T=1であるから(図12 ステップ オ)、交換履歴変数Yに値「2」をセットする(図12 ステップ ワ)。
【0066】ついで、今抜いたカートリッジに代えて新しいものを装着すると、インクカートリッジ検出器124からインクカートリッジ有りの信号が出力する。これにより、インクカートリッジ交換履歴判定手段130は記憶手段131に変数Sの値を「0」から「1」に変更し(図12 ステップ レ)、また変数Tを値「1」に維持する(図12 ステップ ソ)。
【0067】このようにして、2つのインクカートリッジ9、10が装着されて変数S、Tがともに値「1」になると(図12 ステップ ヌ)、インクカートリッジ交換司令スイッチ133の再度の押圧を待ち、変数Eの値が「1」から「0」に切り替わった段階で(図12 ステップ ツ)。インクカートリッジ交換履歴判定手段130は、時間t2の計時を待つことなく(図12 ステップ ネ)再び変数Yの値、つまりインクカートリッジの装着状況を調査する。
【0068】この場合にはインクカートリッジ9だけの交換であるから、装着状況を表す変数Yの値が「2」となっている(図12 ステップ ノ)。したがって、処理2に進む(図12 ステップ ク)。
【0069】キャリッジ制御手段132は、キャリッジ1をホームポジッションに移動させ(図14 ステップ イ)、ついで吸引制御手段は、変数Yの値が「2」であるから、モータ24を正転させ(図14 ステップ ロ)て第1チューブポンプ37を作動させ(図14 ステップ ハ)、記録ヘッド7にインクの充填を行う。
【0070】所定時間が経過した段階で、吸引制御手段135は、モータ24を停止さ(図14 ステップ ニ)、表示器138に印刷が可能である旨の表示をさせる(図14 ステップ チ)。
【0071】また他方のインクカートリッジ10を交換する場合にも同様の動作が実行される。すなわち、インクカートリッジ交換位置において、インクカートリッジ10を抜くと、変数Sの値は「1」を維持するものの(図12 ステップ レ)、変数Tの値が「0」に変化するから(図12 ステップ リ)、インクカートリッジの交換履歴を表す変数Yとして値「3」がセットされる。
【0072】新しいインクカートリッジ10の装着により次の履歴判定段階で変数S、Tがともに値「1」となっているから(図12 ステップ ヌ)、再度、インクカートリッジ交換司令スイッチ133が押圧されたり(図12 ステップ ツ)、また時間t2が経過した段階で(図12 ステップ ネ)、変数Yの値「3」に対応する図15に示す処理2が実行される(図12 ステップ ノ、ヤ)。すなわち、キャリッジ制御手段132は、キャリッジ1をホームポジッションに移動させ(図1515 ステップ イ)、ついで吸引制御手段は、変数Yの値が「3」であるから、モータ24を逆転させて(図1515 ステップ ロ)第2チューブポンプ38を作動させ(図14 ステップ ハ)、記録ヘッド8にインクの充填を行う。
【0073】所定時間が経過した段階で、吸引制御手段135は、モータ24を停止さ(図15 ステップ ニ)、表示器138に印刷が可能である旨の表示をさせる(図15 ステップ チ)。
【0074】希なことではあるが、2つのインクカートリッジ9、10が同時に交換された場合には、初期装着時と同様に変数Yの値が「3」にセットされるから(図1212ステップ ヨ)、図13に示す工程により2つの記録ヘッド7、8に順番にインクの充填が実行される。
【0075】なお、交換司令スイッチ133が押圧されたものの、インクカートリッジの引き抜きが行なわれず、変数Yが当初設定された値「0」をそのまま維持している場合には(図12 ステップ ナ)、キャリッジ制御手段132は、キャリッジ1をホームポジションに移動させ(図12 ステップ マ)。記録ヘッド7、8にキャップ部材31、32を圧接して記録ヘッド内のインクの無用な増粘を防止する。
【0076】この状態で吸引制御手段135は、モータ24を正転させて第1チューブポンプ37により吸引動作を行わせる(図13 ステップ ハ)。第1チューブポンプ37の吸引動作が終了した段階で、吸引制御手段135は、モータ24を逆転させて第2チューブポンプ38を作動させ(図13 ステップ ヘ)、インクカートリッジ10のインクを記録ヘッド8に充填させ、インクの充填が終了した段階で表示器138に印刷が可能である旨の表示を行う(図13 ステップ チ)。
【0077】なお、一方のインクカートリッジにインクが消費されて、交換すべくインクカートリッジを引き抜いた状態で、予備が無い場合にはインクカートリッジの装着が不可能となるから、印刷動作が禁止される。インクカートリッジにインクが消費されて、交換すべくインクカートリッジを引き抜いた状態で、予備が無い場合にはインクカートリッジの装着が不可能となるから、印刷動作が禁止される。
【0078】しかしながらこの状態で強制印刷司令スイッチ137を押圧すると、強制印刷制御手段136は、記憶手段131に格納されている変数Yの値に基づいてインクカートリッジが装着されている側の記録ヘッド7、8に印刷データを出力して印刷を可能ならしめる。これにより、少なくとも1つのインクカートリッジが装着されていれさえすれば、臨時的な印刷を行うことができる。
【0079】さらに上述の実施例においては、各記録ヘッドにそれぞれ独立したキャップ部材を割り当てているが、2つ記録ヘッドを封止できるサイズの単一のキャップ部材を用いても同様の作用を奏することは明らかである。
【0080】
【発明の効果】以上説明したように本発明おいては、複数のインクジェット式記録ヘッドと、カートリッジ検出手段、及びインクカートリッジを挿脱するレバーを有するカートリッジ装着機構と、印刷領域外に配置されて各インクジェット式記録ヘッドを封止するキャップ部材と、キャップ内に負圧を作用させるポンプ手段とを備えたインクジェット式記録装置において、インクカートリッジ検出手段からの信号によりインクカートリッジの装着状態を検出するインクカートリッジ交換履歴判定手段と、この手段によりインクカートリッジの装着が検知された場合に、インクカートリッジが交換されたキャップ部材にのみ所定時間負圧を供給するようにポンプ手段を制御する吸引制御手段を備えたので、インクカートリッジが交換された記録ヘッドにのみ、ポンプ手段の負圧を作用させてインクを充填することができ、無駄なインクの消費を防止しつつ、確実に気泡を排除することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のインクジェット式記録装置の印刷機構周辺の構造を示す斜視図である。
【図2】キャッピング装置を中心にして示す上面図である。
【図3】キャッピング装置の一実施例を示す上面図である。
【図4】キャッピング装置の一実施例を記録ヘッドに当接した状態で示す正面図である。
【図5】紙送り兼ポンプモータがチューブポンプに接続された状態を示す図である。構造を示す図である。
【図6】チューブポンプの縦断面の構造を示す図である。
【図7】チューブポンプの横断面の構造を示す図である。
【図8】図(イ)、(ロ)は、それぞれチューブポンプを構成している駆動輪に形成された長溝の形状を第1のチューブポンプでもって示す図である。
【図9】図(イ)、(ロ)は、それぞれインクカートリッジ装着機構の一実施例を、インクカートリッジ非交換位置に移動した状態で示す断面図である。
【図10】図(イ)、(ロ)は、それぞれインクカートリッジ非交換位置と交換位置におけるレバーの状態を示す図である。
【図11】インクカートリッジ交換制御装置の一実施例を示すブロック図である。
【図12】同上装置の動作を示すフローチャートである。
【図13】2つのインクカートリッジを交換した場合の吸引動作を示すフローチャートである。
【図14】第1インクカートリッジだけが交換された場合に吸引動作を示すフローチャートである。
【図15】第2インクカートリッジだけが交換された場合の吸引動作を示すフローチャートである。
【図16】インクカートリッジ交換位置におけるキャッピング装置と記録ヘッドとの関係を示す図である。
【図17】インクカートリッジ交換位置からキャリッジが若干、非印刷側に移動したときのキャッピング装置と記録ヘッドとの関係を示す図である。
【図18】キャッピング装置が記録ヘッドを封止した状態を示す図である。
【図19】キャピング装置が大気との連通を断たれた状態を示す図である。
【符号の説明】
1 キャリッジ
7、8 インクジェット式記録ヘッド
9、10 インクカートリッジ
12 キャッピング装置
14 インクカートリッジ装着機構
23 キャリッジ駆動用モータ
24 紙送り兼ポンプ駆動用モータ
30 スライダ
31、32 キャップ部材
37、38 チューブポンプ
100〜103 インク供給針
105、106 レバー
107、108 カートリッジ収容室
120 レバー規制部材
124 カートリッジ検出手段
133 インクカートリッジ交換司令スイッチ
137 強制印刷司令スイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】 キャリッジの移動方向に一定の距離をおいて配設された複数のインクジェット式記録ヘッドと、下部に前記記録ヘッドに連通するインク供給針とインクカートリッジの有無を検出するカートリッジ検出手段が設けられ、また上部にインクカートリッジを挿脱するレバーを備え、前記各インクジェット式記録ヘッドにインクを供給するインクカートリッジを収容するカートリッジ収容室を備えたカートリッジ装着機構と、印刷領域外に配置されて各インクジェット式記録ヘッドを封止するキャップ部材と、前記キャップ内に負圧を作用させるポンプ手段とを備えたインクジェット式記録装置において、前記インクカートリッジ検出手段からの信号によりインクカートリッジの装着状態を検出するインクカートリッジ交換履歴判定手段と、前記手段によりインクカートリッジの装着が検知された場合に、インクカートリッジが交換された前記キャップ部材に所定時間負圧を供給するように前記ポンプ手段を制御する吸引制御手段を備えてなるインクジェット式記録装置。
【請求項2】 前記キャリッジがインクカートリッジ交換位置にセットされたときに前記レバーの操作を可能にするレバー規制部材を備えてなる請求項1のインクジェット式記録装置。
【請求項3】 前記インクカートリッジ交換位置まで前記キャップ部材が前記キャリッジの移動に追従するとともに、前記交換位置において前記記録ヘッドと一定の間隙を保って対向する請求項1のインクジェット式記録装置。
【請求項4】 前記インクカートリッジ交換履歴判定手段の判定結果を記憶する記憶手段を備えた請求項1のインクジェット式記録装置。
【請求項5】 前記インクカートリッジ交換履歴判定手段は、所定時間の期間、すべてのインクカートリッジが交換されるまで前記カートリッジ検出手段の信号を監視する請求項1のインクジェット式記録装置。
【請求項6】前記キャリッジをインクカートリッジ交換位置に移動させるためのインクカートリッジ交換司令スイッチと、前記スイッチからの信号により前記キャリッジをインクカートリッジ交換位置に移動させ、またインクカートリッジの交換が終了して前記スイッチから再度信号が出力した場合に前記キャリッジをホームポジションに移動させるキャリッジ制御手段と、インクカートリッジが交換された記録ヘッドへのインクの充填を実行する吸引制御手段とを備えた請求項1のインクジェット式記録装置。
【請求項7】 前記所定時間内に前記所定時間内にインクカートリッジのすべてが装着されない場合には、前記キャリッジをホームポジションに移動させる請求項6のインクジェット式記録装置。
【請求項8】 前記キャリッジ制御手段が、インクカートリッジの交換が終了してから一定時間前記インクカートリッジ交換司令スイッチが再度押圧されない場合に前記キャリッジをホームポジションに移動させ、また吸引制御手段が吸引動作を行わせる請求項6のインクジェット式記録装置。
【請求項9】 前記インクカートリッジ交換履歴判定手段によりインクカートリッジがすべて装着されている場合にのみ印刷を可能ならしめる一方、外部からの信号によりインクカートリッジが装着されている記録ヘッドでのみ印刷を可能ならしめる強制印刷手段を備えてなる請求項1のインクジェット式記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図14】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図8】
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【図17】
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【図6】
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【図7】
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【図9】
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【図13】
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【図10】
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【図11】
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【図15】
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【図16】
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【図12】
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【図18】
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【図19】
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