インクジェット式記録装置
【課題】 記録ヘッドに損傷を招くこと無く、インクカートリッジのインク量を見積もること。
【解決手段】 記録ヘッド7、8から排出されたインク量を積算してインクカートリッジ9、10のインク量を管理するインク残量判定手段35に、少なくと印刷状態におけるインクエンド判定レベルと、吸引処理直前におけるインクエンド判定レベルとの2種類のレベルを設定し、メンテナンスのために大量のインクを消費する場合には、インクエンドと判定するレベルを高目とし、これを下回っている場合には吸引動作を阻止する。
【解決手段】 記録ヘッド7、8から排出されたインク量を積算してインクカートリッジ9、10のインク量を管理するインク残量判定手段35に、少なくと印刷状態におけるインクエンド判定レベルと、吸引処理直前におけるインクエンド判定レベルとの2種類のレベルを設定し、メンテナンスのために大量のインクを消費する場合には、インクエンドと判定するレベルを高目とし、これを下回っている場合には吸引動作を阻止する。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明が属する技術の分野】本発明は、記録用紙の幅方向に移動する記録ヘッドを有し、印刷デ−タに一致してインク滴を記録用紙に噴射して画像を形成するインクジェット式記録装置、より詳細にはインクカートリッジのインクの管理技術に関する。
【0002】
【従来の技術】インクジェット式プリンタは、インク貯蔵手段からのインクの供給を受けるインクジェット式記録ヘッドと、記録用紙を記録ヘッドに対して相対的に移動させる紙送り手段を備え、印字信号に対応して記録ヘッドを移動させながら記録用紙にインク滴を吐出させて記録を行う装置である。
【0003】このようにインクという液体を扱う関係上、記録ヘッドへのインクの充填や、またインク溶媒の揮散による目詰まりを防止するために記録ヘッドからインクを強制的に吸引排出する処理、さらにはインク貯蔵手段に残留しているインク量の管理等、他の記録ヘッドにはみられない種々な副次的な操作を必要とする。
【0004】インク量の管理に関しては、インク貯蔵手段を構成するインクカートリッジに電極などの液面レベル検出手段を付属させて、ハード的に検出する方法も実用化されているが、カートリッジの構造が複雑化してコスト上昇を招くという不都合がある。このため例えば特公平5-19467号公報、特公平8-2649号公報、特開平5-88552号公報、特開平7-205419号公報等に見られるように、印刷時のドット数と一滴当たりのインク滴の積、及びノズル開口の目詰まり防止のための強制的な吸引時の1回の吸引量と吸引回数との積との和に基づいて消費量をカウンタにより積算し、これを記憶手段に格納させてインク残量を表示させたり、また外部操作によりリセットできるように構成するなど、記録装置に搭載されているマイクロコンピュータを使用してソフトウエアにより行うものも提案されている。
【0005】このようにソフトウエアによりインク残量を管理する場合のものにあっては、インクエンドの検出の精度はともかくとして少なくとも消費量形態を正確に把握することができるため、これを表示させることにより、インク消費量状態をユーザに知らせることができるというメリットがある。
【0006】しかしながら、インクジェット式記録ヘッドによるカラー印刷の容易性に着目して、インクジェット式カラープリンタが実用化され、高い印刷品質を求めて濃淡インクを使用したり、また1ドットを構成するインク滴のインク量を印刷データに基づいて調整したり、さらには印刷の解像度を画像やテキストに応じて変更する等、多彩な技術が盛り込まれている。
【0007】さらには、記録ヘッドの目詰まり防止等のメンテナンスにおいても、記録ヘッドの動作状況に応じて強制吐出やフラッシングの際のインク量がきめ細かく設定されていている。このため、インクの消費量が複雑化し、従来の技術では大きな誤差が生じて、実用に耐えないという問題を抱えている。このようなインク残量を正確に把握できないことに起因して、メンテナンスのためのインク吸引により記録ヘッド内のインクを排出仕切ってしまって、記録ヘッドに致命的な損傷を与える等の問題を抱えている。
【0008】またインクカートリッジを交換が終了した段階で、ユーザがリセット釦を操作することによりカウンタがリセットされてインク残量をクリアするため、リセット釦の操作を忘却すると、インクが存在するに拘らず印字が不可能であるという不都合がある。
【0009】本発明はこのような問題に鑑みてなされたものであって、把握されたインク残量に基づいて記録ヘッドのメンテナンスのためのインク吸引量を調整して、記録ヘッドの破損を防止することができるインクジェット式記録装置を提供することである。
【0010】また、インクカートリッジのインク残量が極めて少なくなった段階で交換された場合にはインク消費量を自動的にリセットして、新しいインクカートリッジに対応してインク残量を判定することができるインクジェット式記録ヘッドを提供することである。
【0011】
【課題を解決するための手段】このような問題を解消するために本発明においては、印刷データに対応してインク滴を吐出するインクジェット式記録ヘッドと、該記録ヘッドにインクを供給するインクカートリッジと、前記記録ヘッドを封止するとともに、吸引ポンプからの負圧を受けるキャッピング手段と、前記吸引ポンプにより前記記録ヘッドの吸引によりインクを排出させる吸引処理を制御する吸引制御手段と、前記記録ヘッドから排出されたインク量を積算して前記インクカートリッジのインク量を管理するインク残量判定手段とを備え、前記インク残量判定手段が、少なくと印刷状態におけるインクエンド判定レベルと、前記吸引処理直前におけるインクエンド判定レベルとの2種類を有するようにした。
【0012】
【作用】メンテナンスのために大量のインクが消費される場合には、インクエンドと判定するレベルを高目とし、このレベルを下回った場合にはインク吸引動作を阻止させることにより、記録ヘッドからのインク抜けを未然に防止する。
【0013】
【発明の実施の形態】そこで以下に本発明の詳細を図示した実施例に基づいて説明する。図1は、本発明の一実施例を示すものであって、図中符号1は、キャリッジで、タイミングベルト2によりモータ3に接続されいて、ガイド部材4に案内されてプラテン5に平行に移動するように構成されている。キャリッジ1の記録用紙6と対向する面には、印刷領域(図中、左側)に黒インクを吐出する記録ヘッド7が、また非印刷領域側に着脱可能に構成されたカラー印刷用の記録ヘッド8が搭載され、各記録ヘッド7、8は、それぞれ黒インクカートリッジ9、カラーインクカートリッジ10からインクの供給を受けて記録用紙6にインク滴を吐出して印刷するようになっている。また、キャリッジ1にはインクカートリッジ9、10の着脱によりオンオフするスイッチ11、12が配置されている。
【0014】13は、キャッピング装置で、黒インク用記録ヘッド7を封止するキャップ部材14と、カラーインク用記録ヘッド8を封止するキャップ部材15を同一のスライダに搭載し、それぞれが単独で駆動可能な2台のポンプ16、17からなるポンプユニット18にチューブを介して接続されていて、記録ヘッド7、8のノズル開口面を1つの空間で封止できるサイズを備え、非印字時にはノズル開口を封止し、また吐出能力回復操作時にはポンプユニット18から負圧の供給を受けて記録ヘッド7、8からインクを強制的に排出させることができるように構成されている。また、キャッピング装置13の近傍には、クリーナユニット19が配置されている。
【0015】図2は、同上記録装置の動作を制御する制御装置の一実施例を示すものであって、図中符号20は、印刷制御手段で、ホストからの印刷データに基づいてビットマップデータを生成し、このデータに基づいてヘッド駆動手段21により駆動信号を発生させて、記録ヘッド7、8からインク滴を吐出させるものである。
【0016】22は、インクカートリッジ着脱検出手段で、キャリッジ1に配置されている各スイッチ11、12の信号変化によりインクカートリッジ9、10の着脱を検出するものである。23は、装着タイマで、インクカートリッジ着脱検出手段22からの信号によりインクカートリッジ9、10が装着された時点で、リセットしてから計時動作を開始し、またインクカートリッジ9、10が取り外された時点で計時動作を停止するものである。
【0017】24は、ポンプ駆動手段で、後述する吸引制御手段により規定された吸引強度、吸引時間、吸引インターバルにより吸引動作を実行するものである。25は、電源検知手段で、装置への電力の供給の有無を検出し、電源のオンオフにより信号を出力するものである。26は、休止タイマ26で電源がオフとなった時点で計時を開始し、また電源がオンとなった時点で計時動作を停止して、記録ヘッド7、8がキャップ装置13により連続して封止されていた時間を検出するものである。
【0018】27は、フラッシング制御手段で、印刷タイマ28により印刷動作が一定時間継続した時点で、印刷制御手段20によりキャリッジ1がフラッシング位置、通常はキャッピング位置に待避された後、目詰まりの防止や、目詰まり解消のために各記録ヘッド7、8の全てのノズル開口から所定数のインク滴を吐出させるものである。
【0019】29は、吸引制御手段で、外部から操作可能なクリーニングスイッチ30からの信号が入力した場合や、インクカートリッジ9、10が新しく装着された場合や、電源投入時に休止タイマ26が所定時間を計時した場合に、後述する吸引モード設定手段31からの信号に基づいて、記録ヘッド7、8をキャッピング手段により封止した状態で、ポンプ駆動手段24に信号を出力して各ポンプ17、18を所定のモードで作動させるものである。31は、前述の吸引モード設定手段で、インクカートリッジ9、10のインク残量に応じて大吸引処理、小吸引処理及び吸引抑制の何れかを設定するものである。
【0020】32は、インク消費量演算手段で、電源投入検知手段25により電源が投入されたことが検知された時点で、後述する消費量記憶手段33に格納されているインク消費量を呼出し、印字動作やフラッシング動作が行われた場合にはインク滴の数をカウントし、これに後述する係数設定手段37に格納されている1滴当たりのインク量を乗算してインク量を算出し、また吸引制御手段29によりポンプ駆動手段24に吸引指令が出力された段階で、吸引量を予め加算して消費されたインク量を算出する動作を行う。
【0021】係数設定手段37は、表1に示すように高品位印刷、通常印刷、及びドラフト印刷等の印刷モードに対応させて、カラーインク、及びブラックインクの1滴当たりのインク量、この実施例ではインク重量のデータと、また表2に示すように印刷前のフラッシング処理、印刷中に行う定期フラッシング、及び印刷終了後に行うフラッシングなどのフラッシング、及び定期フラッシングに対してはさらにその印刷モードに対応させて、カラーインク、及びブラックインクの1滴当たりのインク量のデータを格納して構成されている。
【0022】
【表1】
【0023】
【表2】
【0024】好ましくは、温度検出手段40からの温度データに基づいて温度を加味して1滴当たりのインク量を算出する。すなわち、室温を基準として温度30°Cでは1.03倍に、また40°Cでは1.05程度に1滴当たりのインク量を増加させることにより、温度上昇による粘度低下に起因して排出量が増加するインク量を確実に消費量として加算でき、特に印刷中のインク切れを防止することができる。
【0025】一方、電源検知手段25により電源のオフが検出された場合には、演算したインク消費量を消費量記憶手段33に格納させ、またインクカートリッジ着脱検出手段22によりインクカートリッジ9、10の交換が検出されてリセット手段34から信号が出力された場合には、演算結果をクリアする。
【0026】35はインク残量判定手段で、各カートリッジ9、10に収容されているインク量とインク消費量演算手段32により算出されたインク消費量との差分を算出し、この差分が段階的に定められた複数の水準を下回る毎に、吸引モード設定手段31、後述するデューテイ設定手段36、及び表示手段38に信号を出力するものである。
【0027】すなわち、表3に示したようにインクエンドレベルとしてカートリッジのインクが無くなった場合と、インク吸引により少なくともカートリッジにインクが残留する程度のインクが残留する程度の2種類を、またニアエンドレベルとしてインク残量が2乃至20%が残留する程度を、大吸引禁止レベルとしてはインク残量が2乃至25%となった程度を、吸引禁止レベルとしてはインク残量が2乃至30%となった程度を設定して構成されている。
【0028】
【表3】
【0029】そして、上述の構成の内、特に高い計算処理能力を要求されるインク消費量演算手段32は、ホスト装置に組み込まれるプリンタドライバソフトにより、ホスト装置のCPUの機能の一部として組み込まれるのが望ましい。
【0030】次に、このように構成した装置の動作を図3R>3乃至図9に示したフローチャートに基づいて説明する。
(全体の動作)電源スイッチSWが投入されると(図3 ステップ イ)、後述する初期化処理(図4)を実行し(図3 ステップ ロ)、電源の投入状態が継続しているか否かを検出する(図3 ステップ ハ)。この段階で電源がオフとなっている場合に、消費量演算手段32のインク量を消費量記憶手段33に格納するという電源オフ処理を実行(図3 ステップ ヌ)してから全体の動作を終了する。
【0031】一方、電源投入状態が維持されている場合には、インクカートリッジ装着検出手段22からの信号に基づいてインクカートリッジ9、10の交換が行われたか、否かを検出し(図3 ステップ ニ)、交換された場合には後述するインクカートリッジ交換処理(図6R>6)を実行する(図3 ステップ ホ)。
【0032】インクカートリッジ9、10の交換が行われなかったり、またインクカートリッジ9、10の交換が完了した状態で、クリーニングスイッチ30が押圧された場合には(図3 ステップ へ)、後述するクリーニング処理(図7)(図3ステップ ト)を実行する。
【0033】クリーニング処理が必要でなくなった状態で印刷データの入力を待ち(図3ステップ チ)、印刷データが入力するまでは上記ステップ(ハ)乃至ステップ(チ)の工程を繰り返し、また印刷データ入力した段階で、後述する印刷処理(図8)に入る(図3 ステップ リ)。
【0034】最後に業務が終了して電源スイッチsWがオフにされると、インク消費量演算手段32が演算したインク消費量を消費量記憶手段33に格納させ(図3 ステップ ヌ)、また必要に応じて休止タイマ26を作動させて動作を停止する。
【0035】(初期化処理)電源検知手段25により電源の投入が検出されると、消費量演算手段32は消費量記憶手段33に格納されているインク消費量のデータを読出し(図4 ステップ イ)、また印刷準備のためのキャリッジ1の位置や紙送りのための初期化を実行する(図4 ステップ ロ)。
【0036】印刷準備が整った段階でインクカートリッジ検出手段22からの信号に基づいてインクカートリッジ9、10の有無を検出し(図4 ステップ ハ)、装着されていない場合には表示手段38によりエラー表示を行なって(図4 ステップニ)インクカートリッジ9、10が装着されるのを待つ。
【0037】インクカートリッジ9、10が正常に装着されていることが確認できた段階で、後述するインク消費量のチェック処理を実行する(図4 ステップ ホ)。
【0038】(インクカートリッジの初期装着)インクジェット式記録装置は、インクを圧力発生室で加圧してノズル開口から吐出させる関係上、流通過程においても使用時と同様の条件に維持するため、送品液を充填して乾燥や塵埃の侵入を防止する処置が採られている。このため、使用開始に先立って記録ヘッド7、8に充填されている送品液を完全に排除する操作、いわゆる初期充填操作を必要とする。
【0039】このように送品液を確実に排除するため、第1吸引で排出すべき第1吸引量を予め消費量演算手段32に加算し(図5 ステップ イ)、加算が終了した段階で第1吸引に定められている吸引速度で吸引を実行する(図5 ステップ ロ)。
【0040】続いて、第2吸引で排出すべき第2吸引量を予め消費量演算手段32に加算し(図5 ステップ ハ)、加算が終了した段階で第2吸引に定められている吸引速度で吸引を実行する(図5 ステップ ニ)。
【0041】最後に第3吸引で排出すべき第3吸引量を予め消費量演算手段32に加算し(図5 ステップ ホ)、加算が終了した段階で第3吸引に定められている吸引速度で吸引を実行する(図5 ステップ ヘ)。
【0042】このようにインクカートリッジから大量のインクを吸引する動作を実行する以前にそれぞれの吸引量を予め加算しているため、吸引動作の途中でたとえ電源がオフとされた場合にも、インクカートリッジのインク残量を少なく目に見積もることができて、印字途中でのインク切れ等といった不都合や、また記録ヘッド7、8からのインク抜けといった重大な事態を回避することができる。
【0043】(インクカートリッジの交換処理)インクカートリッジ着脱検出手段22によりキャリッジ1に装着されている古いインクカートリッジ9、10が取り外されて、新しインクカートリッジが装着されたことが検出され、しかもインク残量判定手段35によるインク残量がインクニアエンドレベルまたはインクエンドレベルである場合には、リセット手段34により黒インクカートリッジ9かカラーインクカートリッジ10かを判定し(図6 ステップ イ)、黒インクカートリッジの場合には黒インクカートリッジのインク消費量をリセットし(図6 ステップ ロ)、またカラーインクカートリッジ10の場合には同様にインク消費量をリセットする(図6 ステップ ロ)。
【0044】これにより、インクカートリッジの交換作業だけでインク消費量を自動的にリセットして、インクカートリッジ交換後におけるユーザのインク消費量のリセット操作を不要とし、またユーザの誤操作によるリセットを防止することができる。
【0045】一方、インク残量判定手段35によるインク残量の判定がインクニアエンドより多い場合には、ユーザが誤ってカートリッジを抜き差ししたものと判断して、インク消費量演算手段32のインク量のリセットは行わない。この場合、新しいインクカートリッジに交換されているにもかかわらず、元のインクカートリッジを抜き差しされたと誤って判定しても、クリーニング処理等のために大量のインクが吸引された場合にも記録ヘッド7、8が空になるのを確実に防止することができる。
【0046】インク消費量がリセットされたことによりインク残量判定手段35は、インク残量が多いと判定する。吸引モード設定手段31は、インクカートリッジ交換に伴って必要となる大量の吸引量を吸引制御手段29に出力する。これにより吸引制御手段29は後述する大吸引モードでの吸引処理を実行し、吸引タイマ39を作動させる(図6 ステップ ニ)。このようにして吸引時間が大吸引量に相当する時間T1に到達すると(図6 ステップ ホ)、吸引を停止して吸引タイマ39をリセットする(図6 ステップ ヘ)。
【0047】インクの充填が終了した段階でのインク残量を相対表示、つまりインク残量100%として表示するとともに、この値を基準にして次のインクカートリッジ交換までインク残量の管理を実行する。このように、インクカートリッジ交換に伴う吸引量を差し引いたインク量をフル状態として表示することにより、ユーザは可及的に正確なインク残量を知ることができる。
【0048】また、記録装置使用開始に先立ってインクが充填されていない記録ヘッド7、8にインクを充填する操作、いわゆる初期充填でも初期充填量の吸引量を差し引いたインク量をフル表示する。これにより、使用開始後におけるインクカートリッジの交換と、使用開始時の最初のインクカートリッジの装着とにおけるインク充填操作のためのインク消費量に差が存在しても、充填操作後の実インク残量を表示することができ、インク残量が把握しやすくなり、またフル表示がインク充填操作終了の目印となり、特別な表示器を使用することなく、インク充填操作の終了をユーザに認識させることができる。
【0049】(クリーニング処理)クリーニングスイッチ30が押圧されてクリーニング処理が指令されると、後述するインク消費量チェック処理(図9)によりインク残量を確認した段階で(図7 ステップ イ)、前回のクリーニング処理後に印字が行われたか否かを判定し(図7 ステップ ロ)、印字が行われていない場合には、微量吸引で吸引すべきインク量を予め消費量演算手段32に加算し(図7 ステップ ル)、加算が終了した段階で微小吸引を実行する(図7 ステップ オ)。
【0050】一方、前回のクリーニング処理から以後に印刷が実行されている場合にはその印字量を判定し(図7R>7 ステップ ハ)、印字量が多い場合には大吸引禁止の解除を行なってから(図7 ステップ ニ)、小吸引量を予め消費量演算手段32に加算し(図7 ステップ ホ)、加算が終了した段階で小吸引を実行する(図7 ステップ ヘ)。
【0051】クリーニング以後の印字量が少ない場合には(図7 ステップ ハ)、大吸引禁止が設定されているか否かを判定し(図7 ステップ ト)、大吸引禁止が設定されている場合には大吸引禁止を解除して(図7 ステップ ニ)、前述の小吸引処理を実行する(図7 ステップ ホ、ヘ)。
【0052】一方、大吸引禁止が設定されておらずインクカートリッジ9、10に十分にインクが存在する場合には、前回のクリーニングスイッチ30が操作された回数をクリーニングカウンタ等で検知して、クリーニング回数が所定回数、例えば3回になっている場合にはリセットして1を設定し、3未満である場合にはそれぞれインクリメントしてから(図7 ステップ チ)、大吸引により消費されるインク量を消費量演算手段32に予め加算し(図7 ステップ リ)、このセットされた大吸引量で吸引を実行する(図7 ステップ ヌ)。
【0053】このように、微小吸引処理、小吸引処理、及び大吸引処理を実行する前に予め吸引するインク量を消費量演算手段32に加算してから吸引処理を実行するので、吸引後にインク量を加算する場合に比較して、処理の途中で電源等が遮断された場合でもインクカートリッジのインク残量を安全側、つまり少なめに見積もることができ、吸引により記録ヘッド7、8に気泡等を引き込む事故を防止することができる。
【0054】(印字処理)印刷に使用する記録ヘッド7、8の種類、及びインクの種類を判定するとともに、印字モードを確認し(図8 ステップ イ)、印刷に使用する記録ヘッド7、8が印字の際、及びフラッシング処理時に吐出する1滴当たりのインク量を係数設定手段37に格納されているデータに基づいてセットする(図8R>8 ステップロ)。
【0055】印字に先立って実行する印刷前のフラッシング処理により消費されるインク量を予めインク消費量演算手段32に加算してから(図8 ステップ ハ)、印刷前のフラッシング処理を実行する(図8 ステップ ニ)。
【0056】このようにして印刷の準備が終了して印刷が可能となった段階で、1パス分の印刷で消費される平均量、例えば最大印刷量の1/2に相当するインク量を予め加算する(図8 ステップ ホ)。そして印刷が開始されると(図8 ステップヘ)、1パス分の総ドット数をカウントし(図8 ステップ ト)、これに1滴当たりのインク量を乗算して1パス分の印字により消費されたインク量を算出して加算する(図8 ステップ チ)。
【0057】なお、印字処理において、インク消費量チェックによりニアエンドレベルと判定された場合には(図9 ステップ ホ)、1行のデータを複数パスで印刷するモードに切り替える等して印字速度を低下させることにより、特にインクカートリッジがインク吸収体にインクを含浸させるものとして構成されている場合には、インク吸収体がインクの消費により負圧側に傾くのを防止して記録ヘッド7、8から離れた位置に存在するインクを確実に記録ヘッド7、8に流動させ、もって残り少ないインクを全て有効に使用することが可能となる。
【0058】また吸引抑制レベルと判定されて印字デューティが抑制されている場合には(図9 ステップ リ、ヌ)、グラフィック印刷のように印刷デューティが極めて高いデータに対しては、印刷速度を落としたり、また1行のデータを複数パスで印刷するモードに切り替えることにより、カートリッジ9、10の残り少ないインクを確実に記録ヘッド7、8に供給することができる。
【0059】印刷動作が所定時間継続して印刷タイマ28がタイムアップして定期フラッシングが必要となった時点で(図8 ステップ リ)、印字動作を中断してキャリッジ1をフラッシング位置に移動させ、定期フラッシングにより吐出すべきインク量をインク消費演算手段32に予め加算し(図8 ステップ ル)、加算が終了した段階でフラッシング処理を実行する(図8 ステップ オ)。
【0060】フラッシング処理後、印刷データが存在する場合には(図8 ステップ ヌ)、前述のステップ(ト)乃至(オ)を繰返して印刷を実行する。
【0061】全ての印刷データの印刷が終了すると(図8R>8 ステップ ヌ)、ステップ(ホ)において予め加算したインク量を減算し(図8 ステップ ワ)、またフラッシングにより吐出すべきインク量をインク消費演算手段32に予め加算して(図8 ステップ カ)、印字終了処理としてのフラッシング処理を行なって(図8ステップ ヨ)次の印刷まで待機する。
【0062】このように、印刷開始に先立って1パスの印刷により消費される平均的なインク量を予め加算してから印刷を実行し、1パスの印刷が終了した段階で予め見込み量で加算したインク量を減算することにより、たとえ積算印刷途中で電源がオフとなり、1パスの印刷が終了した段階でしか加算できない実インク消費量の加算が不可能となった場合にでも、相当量を消費量として減算することができて、インクカートリッジのインク残量を可及的に実量に見積って以後の印刷途中でのインク切れを防止することができる。
【0063】(インク消費量チェック処理)装着タイマ23に計時されているインクカートリッジ9、10がキャリッジに装着されてからの経過時間と、カートリッジ9、10やインクチューブ等からのインク溶媒の時間当たりの蒸発率との積を加味して、装着されているインクカートリッジ9、10のインク残量を算出する(図9 ステップ イ)。
【0064】判定前にクリーニング操作が指令されていない場合には(図9 ステップ ロ)、インク残量と予め定められているインクエンド判定基準レベルと比較し(図9 ステップ ハ)、インクエンドである場合には表示手段38にインクエンドを表示して(図9 ステップ ニ)、インクカートリッジの交換を促す。
【0065】比較の結果、インクエンド以上、ニアエンドレベル以下の場合には(図9 ステップ ホ)、表示手段38にニアエンドであることを表示する(図9 ステップ ヘ)。
【0066】インク残量がニアエンド以上で、大吸引禁止レベルの場合には(図9 ステップ ト)、大吸引禁止の設定を行い(図9 ステップ チ)、クリーニングにより大量のインクが不用意に消費されるのを未然に防止する。
【0067】さらにクリーニングのためにインクの吸引は可能であるものの、カートリッジのインク残量が幾分少なめで通常のインク吸引速度ではインク含浸部材内でインク流路に途切れが生じる虞のある量であると判定した場合には(図9 ステップリ)、吸引量と印刷時の単位時間当たりの印字ドット数、いわゆるデューティを抑制するための処理を行う(図9 ステップ ヌ)。
【0068】そして、上記以外はインクカートリッジ9、10には通常動作に必要な十分なインクが残存しているものと判定する(図9 ステップ ル)。
【0069】インク消費量チェック処理の以前にクリーニングスイッチ30が既に押圧されれている場合には(図9 ステップ ロ)、クリーニングによるインク消費に備えてクリーニング前のインクエンド判定基準と比較して、インクエンドであるか否かを判定する(図9 ステップ オ)。この判定基準でインクエンドと判定すべき量以下である場合には、たとえ印字が可能であってもインクエンドと判定して表示手段38にインクエンドを表示し(図9 ステップ ニ)、クリーニング前にインクカートリッジ9、10の交換を促す。これにより、クリーニングによりインクカートリッジ9、10が消費され尽くして、記録ヘッド7、8が空になるのを未然に防止することができる。そしてインク残量がインクエンドと判定すべき量よりも多い場合には、前述のステップ(ホ)乃至(ル)の処理を実行する。
【0070】なお、上述の実施例においては、大吸引処理、及び小吸引処理を1種類の吸引モードで行なっているが、インク残量に応じて吸引の形態を変更するようにすることもできる。
【0071】すなわち、図10、図11に示したようそれぞれ吸引処理により吸引すべきインク量を予め消費演算手段32にセットして(図10、図11 ステップ イ)、吸引抑制モードが設定されているか、否かを判定し(図10、図11 ステップ ロ)、抑制モードが設定されていない場合には通常の吸引動作により、設定された量のインクを吸引する第1大吸引(図10 ステップ ハ)、もしくは第1小吸引(図11 ステップ ハ)を実行する。
【0072】一方、インクカートリッジ9、10のインクが減少してインク消費量チェック処理(図9)により吸引抑制レベルと判定されて抑制モードが設定されている場合には(図10、図11 ステップ ロ)、吸引抑制モードを解除した後(図10、図11 ステップ ニ)、ポンプ16、17の回転数を低下させたり、またはポンプ16、17を間欠駆動するなど方法により流量を抑えつつ、上記加算された量のインクを吸引する第2大吸引(図10 ステップ ホ)、もしくは第2小吸引(図11 ステップ ホ)を実行してもよい。
【0073】このように大吸引、小吸引に必要なインク量は変えることなく、吸引のインク流量を抑えることにより、特に多孔質弾性体からなるインク吸収体にインクを含浸させたインクカートリッジでは、インク吸収体内でのインクの途切れを防止しつつ、クリーニング処理に必要な量のインクを排出できて、インク量の少ない場合にもクリーニングが可能となる。またインク量が少なくなった場合には、印刷速度を下げることにより、インク吸収体内でのインクの途切れを招くこと無く印刷に必要な量のインクを記録ヘッド7、8に供給することができ、インクが少なくなったカートリッジ9、10を無駄なく使用することができる。
【0074】なお、上述の実施例においてはブラックインクとカラーインクの2種類のインクカートリッジを搭載してモノクロ、及びカラー印刷が可能なた記録装置に例を採って説明したが、モノクロ印刷用の記録装置に適用しても同様の作用を奏することは明らかである。
【0075】また、上述の実施例においてはインクカートリッジをキャリッジに搭載する記録装置に例を採って説明したが、インクカートリッジを函体に収容し、チューブ等の流路構成手段により記録ヘッドにインクを供給する記録装置に適用しても同様の作用を奏することは明らかである。
【0076】
【発明の効果】以上、説明したように本発明においては、記録ヘッドから排出されたインク量を積算してインクカートリッジのインク量を管理するインク残量判定手段が、少なくと印刷状態におけるインクエンド判定レベルと、吸引処理直前におけるインクエンド判定レベルとの2種類を備えるので、メンテナンスのために大量のインクを消費する場合には、インクエンドと判定するレベルを高目として記録ヘッドからのインク抜けを未然に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明が適用されるインクジェット式記録装置の一実施例を示す斜視図である。
【図2】本発明の一実施例を示すブロック図である。
【図3】同上装置の全体の動作を示すフローチャートである。
【図4】同上装置の動作の内、初期化処理のための動作を示すフローチャートである。
【図5】同上装置の動作の内、初期充填処理のための動作を示すフローチャートである。
【図6】同上装置の動作の内、インクカートリッジ交換処理のための動作を示すフローチャートである。
【図7】同上装置の動作の内、クリーニング処理のための動作を示すフローチャートである。
【図8】同上装置の動作の内、印字処理のための動作を示すフローチャートである。
【図9】同上装置の動作の内、インク消費量チェック処理のための動作を示すフローチャートである。
【図10】大吸引処理の他の実施例を示すフローチャートである。
【図11】小吸引処理の他の実施例を示すフローチャートである。
【符号の説明】
1 キャリッジ
7、8 インクジェット式記録ヘッド
9、10 インクカートリッジ
11、12 カートリッジ検出器
14、15 キャップ部材
16、17 吸引ポンプ
18 ポンプユニット
30 クリーニング指令スイッチ
SW 電源スイッチ
【0001】
【発明が属する技術の分野】本発明は、記録用紙の幅方向に移動する記録ヘッドを有し、印刷デ−タに一致してインク滴を記録用紙に噴射して画像を形成するインクジェット式記録装置、より詳細にはインクカートリッジのインクの管理技術に関する。
【0002】
【従来の技術】インクジェット式プリンタは、インク貯蔵手段からのインクの供給を受けるインクジェット式記録ヘッドと、記録用紙を記録ヘッドに対して相対的に移動させる紙送り手段を備え、印字信号に対応して記録ヘッドを移動させながら記録用紙にインク滴を吐出させて記録を行う装置である。
【0003】このようにインクという液体を扱う関係上、記録ヘッドへのインクの充填や、またインク溶媒の揮散による目詰まりを防止するために記録ヘッドからインクを強制的に吸引排出する処理、さらにはインク貯蔵手段に残留しているインク量の管理等、他の記録ヘッドにはみられない種々な副次的な操作を必要とする。
【0004】インク量の管理に関しては、インク貯蔵手段を構成するインクカートリッジに電極などの液面レベル検出手段を付属させて、ハード的に検出する方法も実用化されているが、カートリッジの構造が複雑化してコスト上昇を招くという不都合がある。このため例えば特公平5-19467号公報、特公平8-2649号公報、特開平5-88552号公報、特開平7-205419号公報等に見られるように、印刷時のドット数と一滴当たりのインク滴の積、及びノズル開口の目詰まり防止のための強制的な吸引時の1回の吸引量と吸引回数との積との和に基づいて消費量をカウンタにより積算し、これを記憶手段に格納させてインク残量を表示させたり、また外部操作によりリセットできるように構成するなど、記録装置に搭載されているマイクロコンピュータを使用してソフトウエアにより行うものも提案されている。
【0005】このようにソフトウエアによりインク残量を管理する場合のものにあっては、インクエンドの検出の精度はともかくとして少なくとも消費量形態を正確に把握することができるため、これを表示させることにより、インク消費量状態をユーザに知らせることができるというメリットがある。
【0006】しかしながら、インクジェット式記録ヘッドによるカラー印刷の容易性に着目して、インクジェット式カラープリンタが実用化され、高い印刷品質を求めて濃淡インクを使用したり、また1ドットを構成するインク滴のインク量を印刷データに基づいて調整したり、さらには印刷の解像度を画像やテキストに応じて変更する等、多彩な技術が盛り込まれている。
【0007】さらには、記録ヘッドの目詰まり防止等のメンテナンスにおいても、記録ヘッドの動作状況に応じて強制吐出やフラッシングの際のインク量がきめ細かく設定されていている。このため、インクの消費量が複雑化し、従来の技術では大きな誤差が生じて、実用に耐えないという問題を抱えている。このようなインク残量を正確に把握できないことに起因して、メンテナンスのためのインク吸引により記録ヘッド内のインクを排出仕切ってしまって、記録ヘッドに致命的な損傷を与える等の問題を抱えている。
【0008】またインクカートリッジを交換が終了した段階で、ユーザがリセット釦を操作することによりカウンタがリセットされてインク残量をクリアするため、リセット釦の操作を忘却すると、インクが存在するに拘らず印字が不可能であるという不都合がある。
【0009】本発明はこのような問題に鑑みてなされたものであって、把握されたインク残量に基づいて記録ヘッドのメンテナンスのためのインク吸引量を調整して、記録ヘッドの破損を防止することができるインクジェット式記録装置を提供することである。
【0010】また、インクカートリッジのインク残量が極めて少なくなった段階で交換された場合にはインク消費量を自動的にリセットして、新しいインクカートリッジに対応してインク残量を判定することができるインクジェット式記録ヘッドを提供することである。
【0011】
【課題を解決するための手段】このような問題を解消するために本発明においては、印刷データに対応してインク滴を吐出するインクジェット式記録ヘッドと、該記録ヘッドにインクを供給するインクカートリッジと、前記記録ヘッドを封止するとともに、吸引ポンプからの負圧を受けるキャッピング手段と、前記吸引ポンプにより前記記録ヘッドの吸引によりインクを排出させる吸引処理を制御する吸引制御手段と、前記記録ヘッドから排出されたインク量を積算して前記インクカートリッジのインク量を管理するインク残量判定手段とを備え、前記インク残量判定手段が、少なくと印刷状態におけるインクエンド判定レベルと、前記吸引処理直前におけるインクエンド判定レベルとの2種類を有するようにした。
【0012】
【作用】メンテナンスのために大量のインクが消費される場合には、インクエンドと判定するレベルを高目とし、このレベルを下回った場合にはインク吸引動作を阻止させることにより、記録ヘッドからのインク抜けを未然に防止する。
【0013】
【発明の実施の形態】そこで以下に本発明の詳細を図示した実施例に基づいて説明する。図1は、本発明の一実施例を示すものであって、図中符号1は、キャリッジで、タイミングベルト2によりモータ3に接続されいて、ガイド部材4に案内されてプラテン5に平行に移動するように構成されている。キャリッジ1の記録用紙6と対向する面には、印刷領域(図中、左側)に黒インクを吐出する記録ヘッド7が、また非印刷領域側に着脱可能に構成されたカラー印刷用の記録ヘッド8が搭載され、各記録ヘッド7、8は、それぞれ黒インクカートリッジ9、カラーインクカートリッジ10からインクの供給を受けて記録用紙6にインク滴を吐出して印刷するようになっている。また、キャリッジ1にはインクカートリッジ9、10の着脱によりオンオフするスイッチ11、12が配置されている。
【0014】13は、キャッピング装置で、黒インク用記録ヘッド7を封止するキャップ部材14と、カラーインク用記録ヘッド8を封止するキャップ部材15を同一のスライダに搭載し、それぞれが単独で駆動可能な2台のポンプ16、17からなるポンプユニット18にチューブを介して接続されていて、記録ヘッド7、8のノズル開口面を1つの空間で封止できるサイズを備え、非印字時にはノズル開口を封止し、また吐出能力回復操作時にはポンプユニット18から負圧の供給を受けて記録ヘッド7、8からインクを強制的に排出させることができるように構成されている。また、キャッピング装置13の近傍には、クリーナユニット19が配置されている。
【0015】図2は、同上記録装置の動作を制御する制御装置の一実施例を示すものであって、図中符号20は、印刷制御手段で、ホストからの印刷データに基づいてビットマップデータを生成し、このデータに基づいてヘッド駆動手段21により駆動信号を発生させて、記録ヘッド7、8からインク滴を吐出させるものである。
【0016】22は、インクカートリッジ着脱検出手段で、キャリッジ1に配置されている各スイッチ11、12の信号変化によりインクカートリッジ9、10の着脱を検出するものである。23は、装着タイマで、インクカートリッジ着脱検出手段22からの信号によりインクカートリッジ9、10が装着された時点で、リセットしてから計時動作を開始し、またインクカートリッジ9、10が取り外された時点で計時動作を停止するものである。
【0017】24は、ポンプ駆動手段で、後述する吸引制御手段により規定された吸引強度、吸引時間、吸引インターバルにより吸引動作を実行するものである。25は、電源検知手段で、装置への電力の供給の有無を検出し、電源のオンオフにより信号を出力するものである。26は、休止タイマ26で電源がオフとなった時点で計時を開始し、また電源がオンとなった時点で計時動作を停止して、記録ヘッド7、8がキャップ装置13により連続して封止されていた時間を検出するものである。
【0018】27は、フラッシング制御手段で、印刷タイマ28により印刷動作が一定時間継続した時点で、印刷制御手段20によりキャリッジ1がフラッシング位置、通常はキャッピング位置に待避された後、目詰まりの防止や、目詰まり解消のために各記録ヘッド7、8の全てのノズル開口から所定数のインク滴を吐出させるものである。
【0019】29は、吸引制御手段で、外部から操作可能なクリーニングスイッチ30からの信号が入力した場合や、インクカートリッジ9、10が新しく装着された場合や、電源投入時に休止タイマ26が所定時間を計時した場合に、後述する吸引モード設定手段31からの信号に基づいて、記録ヘッド7、8をキャッピング手段により封止した状態で、ポンプ駆動手段24に信号を出力して各ポンプ17、18を所定のモードで作動させるものである。31は、前述の吸引モード設定手段で、インクカートリッジ9、10のインク残量に応じて大吸引処理、小吸引処理及び吸引抑制の何れかを設定するものである。
【0020】32は、インク消費量演算手段で、電源投入検知手段25により電源が投入されたことが検知された時点で、後述する消費量記憶手段33に格納されているインク消費量を呼出し、印字動作やフラッシング動作が行われた場合にはインク滴の数をカウントし、これに後述する係数設定手段37に格納されている1滴当たりのインク量を乗算してインク量を算出し、また吸引制御手段29によりポンプ駆動手段24に吸引指令が出力された段階で、吸引量を予め加算して消費されたインク量を算出する動作を行う。
【0021】係数設定手段37は、表1に示すように高品位印刷、通常印刷、及びドラフト印刷等の印刷モードに対応させて、カラーインク、及びブラックインクの1滴当たりのインク量、この実施例ではインク重量のデータと、また表2に示すように印刷前のフラッシング処理、印刷中に行う定期フラッシング、及び印刷終了後に行うフラッシングなどのフラッシング、及び定期フラッシングに対してはさらにその印刷モードに対応させて、カラーインク、及びブラックインクの1滴当たりのインク量のデータを格納して構成されている。
【0022】
【表1】
【0023】
【表2】
【0024】好ましくは、温度検出手段40からの温度データに基づいて温度を加味して1滴当たりのインク量を算出する。すなわち、室温を基準として温度30°Cでは1.03倍に、また40°Cでは1.05程度に1滴当たりのインク量を増加させることにより、温度上昇による粘度低下に起因して排出量が増加するインク量を確実に消費量として加算でき、特に印刷中のインク切れを防止することができる。
【0025】一方、電源検知手段25により電源のオフが検出された場合には、演算したインク消費量を消費量記憶手段33に格納させ、またインクカートリッジ着脱検出手段22によりインクカートリッジ9、10の交換が検出されてリセット手段34から信号が出力された場合には、演算結果をクリアする。
【0026】35はインク残量判定手段で、各カートリッジ9、10に収容されているインク量とインク消費量演算手段32により算出されたインク消費量との差分を算出し、この差分が段階的に定められた複数の水準を下回る毎に、吸引モード設定手段31、後述するデューテイ設定手段36、及び表示手段38に信号を出力するものである。
【0027】すなわち、表3に示したようにインクエンドレベルとしてカートリッジのインクが無くなった場合と、インク吸引により少なくともカートリッジにインクが残留する程度のインクが残留する程度の2種類を、またニアエンドレベルとしてインク残量が2乃至20%が残留する程度を、大吸引禁止レベルとしてはインク残量が2乃至25%となった程度を、吸引禁止レベルとしてはインク残量が2乃至30%となった程度を設定して構成されている。
【0028】
【表3】
【0029】そして、上述の構成の内、特に高い計算処理能力を要求されるインク消費量演算手段32は、ホスト装置に組み込まれるプリンタドライバソフトにより、ホスト装置のCPUの機能の一部として組み込まれるのが望ましい。
【0030】次に、このように構成した装置の動作を図3R>3乃至図9に示したフローチャートに基づいて説明する。
(全体の動作)電源スイッチSWが投入されると(図3 ステップ イ)、後述する初期化処理(図4)を実行し(図3 ステップ ロ)、電源の投入状態が継続しているか否かを検出する(図3 ステップ ハ)。この段階で電源がオフとなっている場合に、消費量演算手段32のインク量を消費量記憶手段33に格納するという電源オフ処理を実行(図3 ステップ ヌ)してから全体の動作を終了する。
【0031】一方、電源投入状態が維持されている場合には、インクカートリッジ装着検出手段22からの信号に基づいてインクカートリッジ9、10の交換が行われたか、否かを検出し(図3 ステップ ニ)、交換された場合には後述するインクカートリッジ交換処理(図6R>6)を実行する(図3 ステップ ホ)。
【0032】インクカートリッジ9、10の交換が行われなかったり、またインクカートリッジ9、10の交換が完了した状態で、クリーニングスイッチ30が押圧された場合には(図3 ステップ へ)、後述するクリーニング処理(図7)(図3ステップ ト)を実行する。
【0033】クリーニング処理が必要でなくなった状態で印刷データの入力を待ち(図3ステップ チ)、印刷データが入力するまでは上記ステップ(ハ)乃至ステップ(チ)の工程を繰り返し、また印刷データ入力した段階で、後述する印刷処理(図8)に入る(図3 ステップ リ)。
【0034】最後に業務が終了して電源スイッチsWがオフにされると、インク消費量演算手段32が演算したインク消費量を消費量記憶手段33に格納させ(図3 ステップ ヌ)、また必要に応じて休止タイマ26を作動させて動作を停止する。
【0035】(初期化処理)電源検知手段25により電源の投入が検出されると、消費量演算手段32は消費量記憶手段33に格納されているインク消費量のデータを読出し(図4 ステップ イ)、また印刷準備のためのキャリッジ1の位置や紙送りのための初期化を実行する(図4 ステップ ロ)。
【0036】印刷準備が整った段階でインクカートリッジ検出手段22からの信号に基づいてインクカートリッジ9、10の有無を検出し(図4 ステップ ハ)、装着されていない場合には表示手段38によりエラー表示を行なって(図4 ステップニ)インクカートリッジ9、10が装着されるのを待つ。
【0037】インクカートリッジ9、10が正常に装着されていることが確認できた段階で、後述するインク消費量のチェック処理を実行する(図4 ステップ ホ)。
【0038】(インクカートリッジの初期装着)インクジェット式記録装置は、インクを圧力発生室で加圧してノズル開口から吐出させる関係上、流通過程においても使用時と同様の条件に維持するため、送品液を充填して乾燥や塵埃の侵入を防止する処置が採られている。このため、使用開始に先立って記録ヘッド7、8に充填されている送品液を完全に排除する操作、いわゆる初期充填操作を必要とする。
【0039】このように送品液を確実に排除するため、第1吸引で排出すべき第1吸引量を予め消費量演算手段32に加算し(図5 ステップ イ)、加算が終了した段階で第1吸引に定められている吸引速度で吸引を実行する(図5 ステップ ロ)。
【0040】続いて、第2吸引で排出すべき第2吸引量を予め消費量演算手段32に加算し(図5 ステップ ハ)、加算が終了した段階で第2吸引に定められている吸引速度で吸引を実行する(図5 ステップ ニ)。
【0041】最後に第3吸引で排出すべき第3吸引量を予め消費量演算手段32に加算し(図5 ステップ ホ)、加算が終了した段階で第3吸引に定められている吸引速度で吸引を実行する(図5 ステップ ヘ)。
【0042】このようにインクカートリッジから大量のインクを吸引する動作を実行する以前にそれぞれの吸引量を予め加算しているため、吸引動作の途中でたとえ電源がオフとされた場合にも、インクカートリッジのインク残量を少なく目に見積もることができて、印字途中でのインク切れ等といった不都合や、また記録ヘッド7、8からのインク抜けといった重大な事態を回避することができる。
【0043】(インクカートリッジの交換処理)インクカートリッジ着脱検出手段22によりキャリッジ1に装着されている古いインクカートリッジ9、10が取り外されて、新しインクカートリッジが装着されたことが検出され、しかもインク残量判定手段35によるインク残量がインクニアエンドレベルまたはインクエンドレベルである場合には、リセット手段34により黒インクカートリッジ9かカラーインクカートリッジ10かを判定し(図6 ステップ イ)、黒インクカートリッジの場合には黒インクカートリッジのインク消費量をリセットし(図6 ステップ ロ)、またカラーインクカートリッジ10の場合には同様にインク消費量をリセットする(図6 ステップ ロ)。
【0044】これにより、インクカートリッジの交換作業だけでインク消費量を自動的にリセットして、インクカートリッジ交換後におけるユーザのインク消費量のリセット操作を不要とし、またユーザの誤操作によるリセットを防止することができる。
【0045】一方、インク残量判定手段35によるインク残量の判定がインクニアエンドより多い場合には、ユーザが誤ってカートリッジを抜き差ししたものと判断して、インク消費量演算手段32のインク量のリセットは行わない。この場合、新しいインクカートリッジに交換されているにもかかわらず、元のインクカートリッジを抜き差しされたと誤って判定しても、クリーニング処理等のために大量のインクが吸引された場合にも記録ヘッド7、8が空になるのを確実に防止することができる。
【0046】インク消費量がリセットされたことによりインク残量判定手段35は、インク残量が多いと判定する。吸引モード設定手段31は、インクカートリッジ交換に伴って必要となる大量の吸引量を吸引制御手段29に出力する。これにより吸引制御手段29は後述する大吸引モードでの吸引処理を実行し、吸引タイマ39を作動させる(図6 ステップ ニ)。このようにして吸引時間が大吸引量に相当する時間T1に到達すると(図6 ステップ ホ)、吸引を停止して吸引タイマ39をリセットする(図6 ステップ ヘ)。
【0047】インクの充填が終了した段階でのインク残量を相対表示、つまりインク残量100%として表示するとともに、この値を基準にして次のインクカートリッジ交換までインク残量の管理を実行する。このように、インクカートリッジ交換に伴う吸引量を差し引いたインク量をフル状態として表示することにより、ユーザは可及的に正確なインク残量を知ることができる。
【0048】また、記録装置使用開始に先立ってインクが充填されていない記録ヘッド7、8にインクを充填する操作、いわゆる初期充填でも初期充填量の吸引量を差し引いたインク量をフル表示する。これにより、使用開始後におけるインクカートリッジの交換と、使用開始時の最初のインクカートリッジの装着とにおけるインク充填操作のためのインク消費量に差が存在しても、充填操作後の実インク残量を表示することができ、インク残量が把握しやすくなり、またフル表示がインク充填操作終了の目印となり、特別な表示器を使用することなく、インク充填操作の終了をユーザに認識させることができる。
【0049】(クリーニング処理)クリーニングスイッチ30が押圧されてクリーニング処理が指令されると、後述するインク消費量チェック処理(図9)によりインク残量を確認した段階で(図7 ステップ イ)、前回のクリーニング処理後に印字が行われたか否かを判定し(図7 ステップ ロ)、印字が行われていない場合には、微量吸引で吸引すべきインク量を予め消費量演算手段32に加算し(図7 ステップ ル)、加算が終了した段階で微小吸引を実行する(図7 ステップ オ)。
【0050】一方、前回のクリーニング処理から以後に印刷が実行されている場合にはその印字量を判定し(図7R>7 ステップ ハ)、印字量が多い場合には大吸引禁止の解除を行なってから(図7 ステップ ニ)、小吸引量を予め消費量演算手段32に加算し(図7 ステップ ホ)、加算が終了した段階で小吸引を実行する(図7 ステップ ヘ)。
【0051】クリーニング以後の印字量が少ない場合には(図7 ステップ ハ)、大吸引禁止が設定されているか否かを判定し(図7 ステップ ト)、大吸引禁止が設定されている場合には大吸引禁止を解除して(図7 ステップ ニ)、前述の小吸引処理を実行する(図7 ステップ ホ、ヘ)。
【0052】一方、大吸引禁止が設定されておらずインクカートリッジ9、10に十分にインクが存在する場合には、前回のクリーニングスイッチ30が操作された回数をクリーニングカウンタ等で検知して、クリーニング回数が所定回数、例えば3回になっている場合にはリセットして1を設定し、3未満である場合にはそれぞれインクリメントしてから(図7 ステップ チ)、大吸引により消費されるインク量を消費量演算手段32に予め加算し(図7 ステップ リ)、このセットされた大吸引量で吸引を実行する(図7 ステップ ヌ)。
【0053】このように、微小吸引処理、小吸引処理、及び大吸引処理を実行する前に予め吸引するインク量を消費量演算手段32に加算してから吸引処理を実行するので、吸引後にインク量を加算する場合に比較して、処理の途中で電源等が遮断された場合でもインクカートリッジのインク残量を安全側、つまり少なめに見積もることができ、吸引により記録ヘッド7、8に気泡等を引き込む事故を防止することができる。
【0054】(印字処理)印刷に使用する記録ヘッド7、8の種類、及びインクの種類を判定するとともに、印字モードを確認し(図8 ステップ イ)、印刷に使用する記録ヘッド7、8が印字の際、及びフラッシング処理時に吐出する1滴当たりのインク量を係数設定手段37に格納されているデータに基づいてセットする(図8R>8 ステップロ)。
【0055】印字に先立って実行する印刷前のフラッシング処理により消費されるインク量を予めインク消費量演算手段32に加算してから(図8 ステップ ハ)、印刷前のフラッシング処理を実行する(図8 ステップ ニ)。
【0056】このようにして印刷の準備が終了して印刷が可能となった段階で、1パス分の印刷で消費される平均量、例えば最大印刷量の1/2に相当するインク量を予め加算する(図8 ステップ ホ)。そして印刷が開始されると(図8 ステップヘ)、1パス分の総ドット数をカウントし(図8 ステップ ト)、これに1滴当たりのインク量を乗算して1パス分の印字により消費されたインク量を算出して加算する(図8 ステップ チ)。
【0057】なお、印字処理において、インク消費量チェックによりニアエンドレベルと判定された場合には(図9 ステップ ホ)、1行のデータを複数パスで印刷するモードに切り替える等して印字速度を低下させることにより、特にインクカートリッジがインク吸収体にインクを含浸させるものとして構成されている場合には、インク吸収体がインクの消費により負圧側に傾くのを防止して記録ヘッド7、8から離れた位置に存在するインクを確実に記録ヘッド7、8に流動させ、もって残り少ないインクを全て有効に使用することが可能となる。
【0058】また吸引抑制レベルと判定されて印字デューティが抑制されている場合には(図9 ステップ リ、ヌ)、グラフィック印刷のように印刷デューティが極めて高いデータに対しては、印刷速度を落としたり、また1行のデータを複数パスで印刷するモードに切り替えることにより、カートリッジ9、10の残り少ないインクを確実に記録ヘッド7、8に供給することができる。
【0059】印刷動作が所定時間継続して印刷タイマ28がタイムアップして定期フラッシングが必要となった時点で(図8 ステップ リ)、印字動作を中断してキャリッジ1をフラッシング位置に移動させ、定期フラッシングにより吐出すべきインク量をインク消費演算手段32に予め加算し(図8 ステップ ル)、加算が終了した段階でフラッシング処理を実行する(図8 ステップ オ)。
【0060】フラッシング処理後、印刷データが存在する場合には(図8 ステップ ヌ)、前述のステップ(ト)乃至(オ)を繰返して印刷を実行する。
【0061】全ての印刷データの印刷が終了すると(図8R>8 ステップ ヌ)、ステップ(ホ)において予め加算したインク量を減算し(図8 ステップ ワ)、またフラッシングにより吐出すべきインク量をインク消費演算手段32に予め加算して(図8 ステップ カ)、印字終了処理としてのフラッシング処理を行なって(図8ステップ ヨ)次の印刷まで待機する。
【0062】このように、印刷開始に先立って1パスの印刷により消費される平均的なインク量を予め加算してから印刷を実行し、1パスの印刷が終了した段階で予め見込み量で加算したインク量を減算することにより、たとえ積算印刷途中で電源がオフとなり、1パスの印刷が終了した段階でしか加算できない実インク消費量の加算が不可能となった場合にでも、相当量を消費量として減算することができて、インクカートリッジのインク残量を可及的に実量に見積って以後の印刷途中でのインク切れを防止することができる。
【0063】(インク消費量チェック処理)装着タイマ23に計時されているインクカートリッジ9、10がキャリッジに装着されてからの経過時間と、カートリッジ9、10やインクチューブ等からのインク溶媒の時間当たりの蒸発率との積を加味して、装着されているインクカートリッジ9、10のインク残量を算出する(図9 ステップ イ)。
【0064】判定前にクリーニング操作が指令されていない場合には(図9 ステップ ロ)、インク残量と予め定められているインクエンド判定基準レベルと比較し(図9 ステップ ハ)、インクエンドである場合には表示手段38にインクエンドを表示して(図9 ステップ ニ)、インクカートリッジの交換を促す。
【0065】比較の結果、インクエンド以上、ニアエンドレベル以下の場合には(図9 ステップ ホ)、表示手段38にニアエンドであることを表示する(図9 ステップ ヘ)。
【0066】インク残量がニアエンド以上で、大吸引禁止レベルの場合には(図9 ステップ ト)、大吸引禁止の設定を行い(図9 ステップ チ)、クリーニングにより大量のインクが不用意に消費されるのを未然に防止する。
【0067】さらにクリーニングのためにインクの吸引は可能であるものの、カートリッジのインク残量が幾分少なめで通常のインク吸引速度ではインク含浸部材内でインク流路に途切れが生じる虞のある量であると判定した場合には(図9 ステップリ)、吸引量と印刷時の単位時間当たりの印字ドット数、いわゆるデューティを抑制するための処理を行う(図9 ステップ ヌ)。
【0068】そして、上記以外はインクカートリッジ9、10には通常動作に必要な十分なインクが残存しているものと判定する(図9 ステップ ル)。
【0069】インク消費量チェック処理の以前にクリーニングスイッチ30が既に押圧されれている場合には(図9 ステップ ロ)、クリーニングによるインク消費に備えてクリーニング前のインクエンド判定基準と比較して、インクエンドであるか否かを判定する(図9 ステップ オ)。この判定基準でインクエンドと判定すべき量以下である場合には、たとえ印字が可能であってもインクエンドと判定して表示手段38にインクエンドを表示し(図9 ステップ ニ)、クリーニング前にインクカートリッジ9、10の交換を促す。これにより、クリーニングによりインクカートリッジ9、10が消費され尽くして、記録ヘッド7、8が空になるのを未然に防止することができる。そしてインク残量がインクエンドと判定すべき量よりも多い場合には、前述のステップ(ホ)乃至(ル)の処理を実行する。
【0070】なお、上述の実施例においては、大吸引処理、及び小吸引処理を1種類の吸引モードで行なっているが、インク残量に応じて吸引の形態を変更するようにすることもできる。
【0071】すなわち、図10、図11に示したようそれぞれ吸引処理により吸引すべきインク量を予め消費演算手段32にセットして(図10、図11 ステップ イ)、吸引抑制モードが設定されているか、否かを判定し(図10、図11 ステップ ロ)、抑制モードが設定されていない場合には通常の吸引動作により、設定された量のインクを吸引する第1大吸引(図10 ステップ ハ)、もしくは第1小吸引(図11 ステップ ハ)を実行する。
【0072】一方、インクカートリッジ9、10のインクが減少してインク消費量チェック処理(図9)により吸引抑制レベルと判定されて抑制モードが設定されている場合には(図10、図11 ステップ ロ)、吸引抑制モードを解除した後(図10、図11 ステップ ニ)、ポンプ16、17の回転数を低下させたり、またはポンプ16、17を間欠駆動するなど方法により流量を抑えつつ、上記加算された量のインクを吸引する第2大吸引(図10 ステップ ホ)、もしくは第2小吸引(図11 ステップ ホ)を実行してもよい。
【0073】このように大吸引、小吸引に必要なインク量は変えることなく、吸引のインク流量を抑えることにより、特に多孔質弾性体からなるインク吸収体にインクを含浸させたインクカートリッジでは、インク吸収体内でのインクの途切れを防止しつつ、クリーニング処理に必要な量のインクを排出できて、インク量の少ない場合にもクリーニングが可能となる。またインク量が少なくなった場合には、印刷速度を下げることにより、インク吸収体内でのインクの途切れを招くこと無く印刷に必要な量のインクを記録ヘッド7、8に供給することができ、インクが少なくなったカートリッジ9、10を無駄なく使用することができる。
【0074】なお、上述の実施例においてはブラックインクとカラーインクの2種類のインクカートリッジを搭載してモノクロ、及びカラー印刷が可能なた記録装置に例を採って説明したが、モノクロ印刷用の記録装置に適用しても同様の作用を奏することは明らかである。
【0075】また、上述の実施例においてはインクカートリッジをキャリッジに搭載する記録装置に例を採って説明したが、インクカートリッジを函体に収容し、チューブ等の流路構成手段により記録ヘッドにインクを供給する記録装置に適用しても同様の作用を奏することは明らかである。
【0076】
【発明の効果】以上、説明したように本発明においては、記録ヘッドから排出されたインク量を積算してインクカートリッジのインク量を管理するインク残量判定手段が、少なくと印刷状態におけるインクエンド判定レベルと、吸引処理直前におけるインクエンド判定レベルとの2種類を備えるので、メンテナンスのために大量のインクを消費する場合には、インクエンドと判定するレベルを高目として記録ヘッドからのインク抜けを未然に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明が適用されるインクジェット式記録装置の一実施例を示す斜視図である。
【図2】本発明の一実施例を示すブロック図である。
【図3】同上装置の全体の動作を示すフローチャートである。
【図4】同上装置の動作の内、初期化処理のための動作を示すフローチャートである。
【図5】同上装置の動作の内、初期充填処理のための動作を示すフローチャートである。
【図6】同上装置の動作の内、インクカートリッジ交換処理のための動作を示すフローチャートである。
【図7】同上装置の動作の内、クリーニング処理のための動作を示すフローチャートである。
【図8】同上装置の動作の内、印字処理のための動作を示すフローチャートである。
【図9】同上装置の動作の内、インク消費量チェック処理のための動作を示すフローチャートである。
【図10】大吸引処理の他の実施例を示すフローチャートである。
【図11】小吸引処理の他の実施例を示すフローチャートである。
【符号の説明】
1 キャリッジ
7、8 インクジェット式記録ヘッド
9、10 インクカートリッジ
11、12 カートリッジ検出器
14、15 キャップ部材
16、17 吸引ポンプ
18 ポンプユニット
30 クリーニング指令スイッチ
SW 電源スイッチ
【特許請求の範囲】
【請求項1】 印刷データに対応してインク滴を吐出するインクジェット式記録ヘッドと、該記録ヘッドにインクを供給するインクカートリッジと、前記記録ヘッドを封止するとともに、吸引ポンプからの負圧を受けるキャッピング手段と、前記吸引ポンプにより前記記録ヘッドの吸引によりインクを排出させる吸引処理を制御する吸引制御手段と、前記記録ヘッドから排出されたインク量を積算して前記インクカートリッジのインク量を管理するインク残量判定手段とを備え、前記インク残量判定手段が、少なくと印刷状態におけるインクエンド判定レベルと、前記吸引処理直前におけるインクエンド判定レベルとの2種類を有するインクジェット式記録装置。
【請求項2】 前記インク残量判定手段が、前記吸引処理直前のインクエンド判定レベルとほぼ同一のレベルを印刷状態におけるインクニアエンド判定レベルとして有する請求項1に記載のインクジェット式記録装置。
【請求項3】 印刷データに対応してインク滴を吐出するインクジェット式記録ヘッドと、該記録ヘッドにインクを供給するインクカートリッジと、前記記録ヘッドの所定印刷動作毎に印刷データに基づく前記記録ヘッドからのインク吐出量を加算するインク残量判定手段と、前記インクカートリッジの交換を検出するインクカートリッジ交換検出手段とを備え、インクエンド判定レベルより残量が若干多い第2のインクエンドレベルを下回った時点で、前記インクカートリッジ交換検出手段からの信号により前記インク残量判定手段をリセットするインクジェット式記録装置。
【請求項4】印刷データに対応してインク滴を吐出するインクジェット式記録ヘッドと、該記録ヘッドにインクを供給するインクカートリッジと、前記記録ヘッドを封止するとともに、吸引ポンプからの負圧を受けるキャッピング手段と、前記吸引ポンプにより前記記録ヘッドの吸引によりインクを排出させる吸引処理を制御する吸引制御手段と、前記記録ヘッドから排出されたインク量を積算して前記インクカートリッジのインク量を管理し、また前記記録ヘッドの所定印刷動作毎に印刷データに基づく前記記録ヘッドからのインク吐出量を加算するするインク残量判定手段と、前記インクカートリッジの交換を検出するインクカートリッジ交換検出手段とを備え、前記インク残量判定手段が、少なくと印刷状態におけるインクエンド判定レベルと、前記吸引処理直前におけるインクエンド判定レベルと、前記インクエンド判定レベルより残量が若干多い第2のインクエンドレベルの3つの判定レベルを有し、第2のインクエンド判定レベルを下回った時点で、前記インクカートリッジ交換検出手段からの信号により前記インク残量判定手段をリセットするインクジェット式記録装置。
【請求項1】 印刷データに対応してインク滴を吐出するインクジェット式記録ヘッドと、該記録ヘッドにインクを供給するインクカートリッジと、前記記録ヘッドを封止するとともに、吸引ポンプからの負圧を受けるキャッピング手段と、前記吸引ポンプにより前記記録ヘッドの吸引によりインクを排出させる吸引処理を制御する吸引制御手段と、前記記録ヘッドから排出されたインク量を積算して前記インクカートリッジのインク量を管理するインク残量判定手段とを備え、前記インク残量判定手段が、少なくと印刷状態におけるインクエンド判定レベルと、前記吸引処理直前におけるインクエンド判定レベルとの2種類を有するインクジェット式記録装置。
【請求項2】 前記インク残量判定手段が、前記吸引処理直前のインクエンド判定レベルとほぼ同一のレベルを印刷状態におけるインクニアエンド判定レベルとして有する請求項1に記載のインクジェット式記録装置。
【請求項3】 印刷データに対応してインク滴を吐出するインクジェット式記録ヘッドと、該記録ヘッドにインクを供給するインクカートリッジと、前記記録ヘッドの所定印刷動作毎に印刷データに基づく前記記録ヘッドからのインク吐出量を加算するインク残量判定手段と、前記インクカートリッジの交換を検出するインクカートリッジ交換検出手段とを備え、インクエンド判定レベルより残量が若干多い第2のインクエンドレベルを下回った時点で、前記インクカートリッジ交換検出手段からの信号により前記インク残量判定手段をリセットするインクジェット式記録装置。
【請求項4】印刷データに対応してインク滴を吐出するインクジェット式記録ヘッドと、該記録ヘッドにインクを供給するインクカートリッジと、前記記録ヘッドを封止するとともに、吸引ポンプからの負圧を受けるキャッピング手段と、前記吸引ポンプにより前記記録ヘッドの吸引によりインクを排出させる吸引処理を制御する吸引制御手段と、前記記録ヘッドから排出されたインク量を積算して前記インクカートリッジのインク量を管理し、また前記記録ヘッドの所定印刷動作毎に印刷データに基づく前記記録ヘッドからのインク吐出量を加算するするインク残量判定手段と、前記インクカートリッジの交換を検出するインクカートリッジ交換検出手段とを備え、前記インク残量判定手段が、少なくと印刷状態におけるインクエンド判定レベルと、前記吸引処理直前におけるインクエンド判定レベルと、前記インクエンド判定レベルより残量が若干多い第2のインクエンドレベルの3つの判定レベルを有し、第2のインクエンド判定レベルを下回った時点で、前記インクカートリッジ交換検出手段からの信号により前記インク残量判定手段をリセットするインクジェット式記録装置。
【図1】
【図3】
【図5】
【図6】
【図2】
【図4】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図3】
【図5】
【図6】
【図2】
【図4】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開平10−181045
【公開日】平成10年(1998)7月7日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平9−215989
【出願日】平成9年(1997)7月25日
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【公開日】平成10年(1998)7月7日
【国際特許分類】
【出願日】平成9年(1997)7月25日
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
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