説明

インクジェット捺染用インクセットおよびインクジェット捺染方法

【課題】
地染めされたセルロース系繊維布帛にインクジェット捺染を適用するに際し、柄部における鮮明性、濃色性、抜色性の全てに優れた抜染調捺染物を得ることが可能なインクジェット捺染用インクセットおよびインクジェット捺染方法を提供する。
【解決手段】
付加型反応性染料で地染めされたセルロース系繊維布帛に対し、インクジェット方式による直接捺染と着色抜染および/または白色抜染を同時に適用する際に用いられるインクジェット捺染用インクセットであって、置換型反応性染料を含有する着色用インクと、飽和水溶液におけるpHが11以上であるアルカリ剤および付加型反応性染料用防染剤を含有する抜色用インクと、飽和水溶液におけるpHが7〜10であるアルカリ剤を含有する補助用インクを備えることを特徴とするインクジェット捺染用インクセット、およびそれを用いたインクジェット捺染方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット捺染用インクセット、およびそれを用いたインクジェット捺染方法に関する。さらに詳しくは、柄部における鮮明性、濃色性、抜色性の全てに優れた抜染調捺染物を得ることが可能なインクジェット捺染用インクセットおよびインクジェット捺染方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、布帛に捺染する方法として、フルカラーやグラデーションなどを駆使し、多彩な表現が可能なインクジェット方式が注目され、著しい発展を遂げている。インクジェット方式によれば、短納期、小ロット生産、廃水量削減などを実現することができ、時代に沿った加工方法として既に実用化されている。特に、セルロース系繊維布帛においては、ファッション衣料分野での用途が多いことや、インクの吸収が迅速であるため、インクが滲んだり流れたりすることがなく、精細な図柄を表現できること、セルロース系繊維の着色に適した反応性染料は、水への溶解度が高く、粘度や表面張力などのコントロールが容易で、吐出安定性に優れたインクを製造できること、などの利点から古くから開発が進み、ポリエステル系繊維やポリアミド系繊維など他の繊維布帛と比較し、インクジェット捺染が広く普及している。なお、セルロース系繊維を着色可能な色材としては、反応性染料の他、直接染料、バット染料、硫化染料、顔料などを挙げることができるが、堅牢性や鮮明性、抜色性などの点から、反応性染料が多用されている。
【0003】
ここで捺染とは、布帛などを多色の図柄に染める方法の総称であり、その技法により直接捺染(オーバープリント)、抜染、防染、防抜染などに分類されるが、いずれも、吸尽染色、連続染色などの浸染が無地染めであるのとは対照的である。上記分類のうち抜染は、布帛を可抜性の染料で地染め(無地染め)した後、抜染剤を含む捺染糊(インクジェット捺染においてはインクに相当する)を印捺し、印捺部(すなわち柄部)の地染め染料を分解、無色化するものである。抜染剤のみを印捺して柄部を白地にするものを白色抜染、抜染剤と耐抜染性色材を印捺して柄部を異なる色に着色するものを着色抜染といい、いずれも付加価値の高い高級品とされている。なお、着色抜染において、柄部を着色するために用いられる耐抜染性の色材を差し色色材(さしいろしきざい)、差し色色材によって着色された柄部の色を差し色という。
【0004】
セルロース系繊維布帛に対してインクジェット抜染を行う方法として、例えば特許文献1には、還元脱色性の反応性染料で染色したセルロース系生地に対し、還元剤(抜染剤として使用される)を含有するインク、または還元剤と難還元性色材を併有するインクをインクジェット方式により付与して、白色抜染または着色抜染する方法が記載されている。また、特許文献2には、着色された布帛に還元剤を含有するインクと還元剤に分解しない染料を含有するインクを別々のノズルから同じ場所に付与して、着色抜染する方法が記載されている。しかしながらこれらの方法(所謂、還元抜染法)は、還元剤を含有するインクが保存安定性に欠ける、還元性ガスにより地色が変退色し易い、などの問題があった。また、難還元性色材としてはバット染料、硫化染料、顔料などが用いられるが、バット染料や硫化染料では鮮明性に欠ける、発色再現性が劣る、などの問題があり、顔料では堅牢性が劣る、風合いが硬化する、などの問題があった。なお、還元抜染法におけるこれらの問題は、インクジェット抜染に限られたものでなく、従来の抜染方式(例えばスクリーン抜染、ローラ抜染など)においても同様に起こり得る問題である。
【0005】
このような問題に対し、アルカリ抜染法をインクジェット抜染に適用することが考えられる。アルカリ抜染法とは、反応性染料の反応性の差を利用して、地染め染料、差し色色材ともに鮮明で堅牢な反応性染料を用いる方法であり、例えば特許文献3には、セルロース系繊維を付加型反応性染料(反応性大)を用いて染色し、次いでアルカリ剤(付加型反応性染料用抜染剤、および置換型反応性染料用固着剤として使用される)と必要に応じて前記付加型反応性染料用の防染剤、必要に応じて置換型反応性染料(反応性小)を含有する捺染糊を印捺して、白色抜染または着色抜染する方法が記載されている。しかしながら、アルカリ抜染法では、柄部において濃色が得難いという問題があった。アルカリ抜染では直接捺染に必要なアルカリ剤と比べ強アルカリ剤を使用するため、一部の置換型反応性染料は加水分解を起こし、染着が阻害されるのである。特定のアルカリ剤を選択使用することにより、置換型反応性染料の加水分解を完全に抑制することも可能であるが、そうすると、付加型反応性染料の抜色性が極端に低下してしまう。抜色性の低下は、白色抜染において特に深刻な問題である。
【0006】
さらに、インクジェット捺染(インクジェット抜染を含む)に固有の問題が、表面濃度不足を助長させる。インクジェット捺染において濃色を得ようとすれば、インク付与量を増大するか、インク濃度を増大するかのどちらかである。ところが、インク付与量を増大すると滲み易くなり、インク濃度を増大させると吐出安定性が低下する。したがって、インクジェット捺染では自ずと濃度限界があり、従来の捺染方式に比べて濃色が得難いのである。
【0007】
【特許文献1】特開昭63−21990号公報
【特許文献2】特開昭61−6365号公報
【特許文献3】特開昭62−53490号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明はこのような現状に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、地染めされたセルロース系繊維布帛にインクジェット捺染を適用するに際し、柄部における鮮明性、濃色性、抜色性の全てに優れた抜染調捺染物を得ることが可能なインクジェット捺染用インクセットおよびインクジェット捺染方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、地染めされたセルロース系繊維布帛に対し、インクジェット直接捺染とインクジェット着色抜染および/またはインクジェット白色抜染を同時に適用し、柄部の色相や濃度に応じてこれらを使い分けることにより、鮮明性、濃色性、抜色性の全てに優れた抜染調捺染物が得られることを見出した。そして、それを実現するためのインクジェット捺染用インクセットおよびインクジェット捺染方法を完成させた。
【0010】
すなわち、本発明は第1に、付加型反応性染料で地染めされたセルロース系繊維布帛に対し、インクジェット方式による直接捺染と着色抜染および/または白色抜染を同時に適用する際に用いられるインクジェット捺染用インクセットであって、置換型反応性染料を含有する着色用インクと、飽和水溶液におけるpHが11以上であるアルカリ剤および付加型反応性染料用防染剤を含有する抜色用インクと、飽和水溶液におけるpHが7〜10であるアルカリ剤を含有する補助用インクを備えることを特徴とするインクジェット捺染用インクセットである。
第2に、置換型反応性染料がモノクロロトリアジン基を有する反応性染料、およびトリクロロピリミジン基を有する反応性染料から選択される少なくとも1種であることを特徴とするインクジェット捺染用インクセットである。
第3に、飽和水溶液におけるpHが11以上であるアルカリ剤がアルカリ金属の水酸化物、炭酸塩、リン酸塩、およびケイ酸塩から選択される少なくとも1種であることを特徴とするインクジェット捺染用インクセットである。
第4に、第1〜第3に記載のインクジェット捺染用インクセットを用い、付加型反応性染料で地染めされたセルロース系繊維布帛に対し、インクジェット方式による直接捺染と着色抜染および/または白色抜染を同時に適用するインクジェット捺染方法であって、着色用インクと補助用インクを同一箇所に印捺することにより直接捺染を行い、抜色用インクと着色用インクを同一箇所に印捺することにより着色抜染を行い、抜色用インクを印捺することにより白色抜染を行うことを特徴とするインクジェット捺染方法である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、インクジェット方式によるアルカリ抜染において従来問題となっていた柄部における表面濃度不足を見かけ上解消し、鮮明性、濃色性、抜色性の全てに優れた抜染調捺染物を得ることができる。また、直接捺染部においては、目ムキと呼ばれる欠点(布帛を両手で引っ張ったとき、地色の染まっていない部分が白っぽく見える欠点)を緩和することもできる。さらに、地染め染料を有効に利用することができるため、環境適合性に優れている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明は、付加型反応性染料で地染めされたセルロース系繊維布帛に対し、インクジェット捺染を適用して抜染調捺染物を得るに際し、置換型反応性染料を含有する着色用インクと、飽和水溶液におけるpHが11以上であるアルカリ剤および付加型反応性染料用防染剤を含有する抜色用インクと、飽和水溶液におけるpHが7〜10であるアルカリ剤を含有する補助用インクを備えるインクジェット捺染用インクセットを準備し、柄部の色相や濃度に応じて、印捺するインクを適宜選択することにより、同一布帛上で直接捺染と着色抜染および/または白色抜染を同時に行うことを基本の構成とする。
【0013】
より詳しくは、柄部を地色を活かした濃色にする場合は、着色用インクと補助用インクを選択して同一箇所に印捺することにより直接捺染を行い、柄部を地色より彩度の高い色にする場合は、抜色用インクと着色用インクを選択して同一箇所に印捺することにより着色抜染を行い、柄部を白色にする場合は、抜色用インクを選択して印捺することにより白色抜染を行う。なお、抜色用インクを用いて、柄部を地色の色相のまま濃度のみを低下させる場合も、白色抜染に含めるものとする。
【0014】
本発明において特徴的であるのは、地色が柄部に悪影響を及ぼさない場合、例えば、地色と同系の濃色である場合や、異なる色相であっても地色を色味成分の1つとすることが可能である程度の濃色である場合に、地色を活かした直接捺染を、通常の着色抜染および/または白色抜染に組み合わせたことである。このような構成とすることにより、アルカリ抜染法において従来問題となっていた柄部における表面濃度不足を見かけ上解消することができるのである。
【0015】
本発明においてセルロース系繊維布帛とは、セルロース系繊維より構成される織物、編物または不織布を意味する。セルロース系繊維として具体的には、木綿、麻などの天然繊維、レーヨン、キュプラなどの再生繊維、リヨセルなどの精製繊維、などを挙げることができ、これらが2種類以上組み合わされていてもよい。組み合わせる方法は、混紡、混繊、交撚、交織、交編など特に限定されない。
【0016】
さらに、物性や風合いの改良、視覚的効果、機能性付与効果を狙って、セルロース系繊維以外の繊維を組み合わせることも可能である。このような繊維としては、合成繊維、半合成繊維、再生繊維(セルロース系繊維を除く)、天然繊維(セルロース系繊維を除く)などを挙げることができ、これらが2種類以上組み合わされていてもよい。本発明では、強アルカリ剤を用いるため、耐アルカリ性の繊維を選択する必要がある。なお、セルロース系繊維以外の繊維を組み合わせる場合、セルロース系繊維に対する捺染(具体的には、直接捺染と着色抜染および/または白色抜染を意味する。また、着色抜染と白色抜染はアルカリ抜染法による)と、セルロース系繊維以外の繊維に対する捺染を同時行うことは技術的に困難である場合が多い。このため、本発明では、セルロース系繊維に対してのみ捺染を行うものとする。セルロース系繊維以外の繊維に対する地染めは、その視覚的効果に応じて、行っても行わなくてもどちらでもよい。
【0017】
混率は特に限定されるものではないが、セルロース系繊維以外の繊維に対する捺染が行われないことを考慮すると、セルロース系繊維以外の繊維の混率は、0〜50%であることが好ましい。混率が50%を越えると柄によっては白けた感じの表現となってしまい製品価値が低下する虞がある。
【0018】
上記セルロース系繊維布帛の地染め染料としては、付加型反応性染料が用いられる。付加型反応性染料とは、反応基としてスルファートエチルスルホン基を少なくとも1つ有する反応性染料(以下、スルファートエチルスルホン型反応性染料という場合がある)であり、スルファートエチルスルホン基はアルカリ存在下で反応性の大きなビニルスルホン基に変化し、セルロース系繊維と付加反応するものである。しかしながら、付加型反応性染料とセルロース系繊維の結合は、アルカリに弱く開裂し易い。一方、差し色色材として用いられる置換型反応性染料は、反応性が小さく、またセルロース系繊維との結合もアルカリに比較的安定である。アルカリ抜染法は、このような性質の違いを利用するものである。本発明では、地染め染料としてスルファートエチルスルホン基のみを有する反応性染料を用いる。それ以外の反応基を有する反応性染料を用いると、抜色性が著しく低下し、白色抜染部において十分な白色度が得られなかったり、着色抜染部において鮮明性が得られなかったりなどの問題が生じる。
【0019】
付加型反応性染料は、例えば、Sumifix(住友化学工業(株)製)、Remazol(DyStar社製)、KP ZOL(紀和化学工業(株)製)などの冠称名で市販されている。
【0020】
地染め方法は特に限定されるものでないが、代表的には吸尽染色、連続染色などの浸染を挙げることができる。また、布帛とした後に染色する所謂後染めであっても、布帛とする前の糸条の段階で染色する所謂先染めであっても構わない。
また、セルロース系繊維以外の繊維を組み合わせる場合、必要に応じて、該繊維を着色可能な色材で地染めすることは、上述の通りである。
【0021】
本発明において用いられる付加型反応性染料で地染めされたセルロース系繊維布帛(以下、単に「地染め布帛」という場合がある)は、インク受理層が形成されていることが好ましい。インク受理層は、布帛にインクを付与するとき、ノズルから吐出されたインクを瞬時に受け止め、適度に保持して、滲ませないようにするためのもので、通常、水溶性高分子を主成分として形成される。このような目的で用いられる水溶性高分子としては、反応性染料と反応しないことが要求され、例えば、アルギン酸ナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、でんぷん、グアガム、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸などを挙げることができる。これらは2種類以上組み合わせて用いてもよい。なかでも、耐アルカリ性で、低価格、流動性に優れ、地染め染料への影響が少ない、高エーテル化カルボキシメチルセルロースが好ましい。高エーテル化カルボキシメチルセルロースのエーテル化度は、1.0〜2.5であることが好ましく、より好ましくは1.4〜2.5である。エーテル化度が1.0未満であると、着色用インクに用いる反応性染料とセルロース系繊維の結合が阻害され、染着率が低下して濃色が得難いという問題がある。エーテル化度が2.5を越えても性能的には問題ないが、その製造が困難で高価格となるため不経済である。
インク受理層には、必要に応じて、還元防止剤、界面活性剤、防腐剤などを含有させてもよい。
【0022】
上記地染め布帛、あるいはインク受理層が形成された地染め布帛に対して用いられる、本発明のインクジェット捺染用インクセットは、置換型反応性染料を含有する着色用インクと、飽和水溶液におけるpHが11以上であるアルカリ剤および付加型反応性染料用防染剤を含有する抜色用インクと、飽和水溶液におけるpHが7〜10であるアルカリ剤を含有する補助用インクを備えるものである。
【0023】
着色用インクは置換型反応性染料を水に溶解させたインクであり、直接捺染および着色抜染を行う箇所に印捺される。
置換型反応性染料とは、反応基としてモノクロロトリアジン基、モノフロロトリアジン基、ジフロロモノクロロピリミジン基、トリクロロピリミジン基などから選択される1種を少なくとも1つ有する反応性染料(以下、モノクロロトリアジン型反応性染料、モノフロロトリアジン型反応性染料、ジフロロモノクロロピリミジン型反応性染料、トリクロロピリミジン型反応性染料という場合がある)であり、セルロース系繊維に置換反応するものである。上述のように、置換型反応性染料はアルカリ存在下でも反応性が小さく、したがって反応基の加水分解が起こり難い。なかでも、耐アルカリ性に優れたモノクロロトリアジン基またはトリクロロピリミジン基を有する反応性染料が好ましく用いられる。反応性の大きな反応性染料、すなわちスルファートエチルスルホン基を有する反応性染料を用いると、直接捺染または着色抜染を行う箇所においてアルカリ剤を含有するインクと混ぜ合わされた場合に、反応基が加水分解し、目的とする表面濃度が得られない。また、反応基の大きな反応性染料は、インク化した場合、アルカリが存在しない状態であっても経時的に加水分解が進行し易く、保存安定性が劣ったものとなる。ただし、スルファートエチルスルホン基と、上記置換型反応基の1種を一分子中に有する反応性染料(異種多官能型反応性染料)は、耐アルカリ性が比較的良好であるため、本発明において使用可能である。
【0024】
本発明では、異なる反応基を有する置換型反応性染料同士(例えばモノクロロトリアジン型反応性染料とモノフロロトリアジン型反応性染料)を、2種類以上組み合わせて用いてもよい。
【0025】
置換型反応性染料は、例えば、Kayacion(日本化薬(株)製、モノクロロトリアジン型反応性染料)、CIBACRON(Ciba Specialty Chemicals社製、モノクロロトリアジン型反応性染料)、Drimarene P(Clariant社製、モノクロロトリアジン型反応性染料)、Procion(DyStar社製、モノクロロトリアジン型反応性染料)、KP CION(紀和化学工業(株)製、モノクロロトリアジン型反応性染料)、Sumifix Supra(住友化学工業(株)製、モノクロロトリアジン/スルファートエチルスルホン型反応性染料)、CIBACRON F(Ciba Speciality Chemical社製、モノフロロトリアジン型反応性染料)、Levafix E−A(DyStar社製、ジフロロモノクロロピリミジン型反応性染料)、Drimarene X(Clariant社製、トリクロロピリミジン型反応性染料)などの冠称名で市販されている。
【0026】
着色用インクは、さまざまな色の置換型反応性染料をさまざまな濃度水準で水に溶解させたインクのセットであり、柄部の色相や濃度に応じて適宜選択使用されるものである。したがって置換型反応性染料の色は特に限定されない。イエロー、マゼンタ、シアンの三原色に、ブラックを加えた少なくとも四色を備えるものが汎用的であるが、これに限定されるものではない。同様に置換型反応性染料の含有量も特に限定されないが、実用性や保存安定性、吐出安定性を考慮すると、着色用インクに対して1〜25重量%であることが好ましい。含有量が1重量%未満であると、地色の濃度によっては、着色用インクの濃度が低すぎて、意味をなさないものとなってしまう。含有量が25重量%を越えるとインクが高粘度となり、吐出安定性が劣るものとなってしまう。
【0027】
抜色用インクは飽和水溶液におけるpHが11以上であるアルカリ剤および付加型反応性染料用防染剤を水に溶解させたインクであり、着色抜染および白色抜染を行う箇所に印捺される。
付加型反応性染料で地染めされたセルロース系繊維布帛に抜色用インクが印捺され、湿熱処理(後述する)されたとき、まず、アルカリ剤によって付加型反応性染料とセルロース系繊維の結合が切断される。次いで、切断により生成した反応基が加水分解したり、付加型反応性染料用防染剤と反応して不活性化したりすることによって、付加型反応性染料がセルロース系繊維と再度反応するのを阻止することができる。また、親水性の高い付加型反応性染料用防染剤と反応することで、付加型反応性染料の親水性が高まり、セルロース系繊維との直接性が低下する結果、セルロース系繊維からの脱落が容易となる。
【0028】
また、アルカリ剤は、着色抜染において、置換型反応性染料の固着剤としても作用する。周知の通り、セルロース系繊維を反応性染料を用いて染色するには、セルロース系繊維のイオン化、および反応性染料の活性化のためにアルカリ剤が必要である。
【0029】
抜色用インクに用いられるアルカリ剤は、その飽和水溶液のpHが11以上であることが要求される。飽和水溶液のpHが11未満であると、付加型反応性染料とセルロース系繊維の結合を切断できない虞がある。飽和水溶液のpHが11以上であるアルカリ剤として具体的には、アルカリ金属の水酸化物、炭酸塩、リン酸塩、ケイ酸塩などを挙げることができる。これらは2種類以上組み合わせて用いてもよい。なかでも、危険性が少なく、少量で上述の効果を得ることができることから、炭酸塩が好ましく、炭酸カリウムがより好ましい。
【0030】
アルカリ剤の含有量は、抜色用インクに対して1〜20重量%であることが好ましく、より好ましくは2〜10重量%である。含有量が1重量%未満であると、アルカリ剤としての効果が低く、付加型反応性染料とセルロース系繊維との結合を十分に切断することができず、抜色性が低下する虞がある。含有量が20重量%を越えても、それを上回る効果は得られず不経済であるばかりか、析出し易くなってインクの保存安定性、吐出安定性が低下するなどの虞がある。
【0031】
抜色用インクのpHは11以上であることが好ましい。その理由は、飽和水溶液のpHが11以上であるアルカリ剤を選択する理由と、略同様である。アルカリ剤の含有量を上記範囲内で適宜調整することにより、抜色用インクのpHを11以上に調整することが可能である。
【0032】
抜色用インクに用いられる付加型反応性染料用防染剤は、付加型反応性染料と反応して付加型反応性染料を不活性化させることにより、付加型反応性染料が繊維と反応するのを阻害するものであればいずれも使用可能であり、具体的には、多価フェノール誘導体、ポリオキシエチレン誘導体などの界面活性剤、ヒドロキシメタンスルホン酸ナトリウムなどの亜硫酸系化合物、コロイダルシリカ、アルミナなどの無機物分散体、などを挙げることができる。これらは2種類以上組み合わせて用いてもよい。なかでも、親水性が高く、水に溶解しても低粘度、高表面張力、低気泡性で、吐出安定性に優れたインクを得ることができることから、亜硫酸系化合物が好ましく、ヒドロキシメタンスルホン酸ナトリウムがより好ましい。
【0033】
付加型反応性染料用防染剤の含有量は、抜色用インクに対して1〜20重量%であることが好ましく、より好ましくは2〜15重量%である。含有量が1重量%未満であると、十分な防染効果が得られず、アルカリ剤による切断にて生成した反応基がセルロース系繊維と再度反応して、抜色性が低下する虞がある。含有量が20重量%を越えると、付加型反応性染料用防染剤が滲み易くなってシャープ性が低下したり、また、析出し易くなってインクの保存安定性、吐出安定性が低下したりするなどの虞がある。
【0034】
補助用インクは飽和水溶液におけるpHが7〜10であるアルカリ剤を水に溶解させたインクであり、直接捺染を行う箇所に印捺される。
セルロース系繊維を反応性染料を用いて染色する場合にアルカリ剤が必要であることは、上述の通りである。
補助用インクに用いられるアルカリ剤は、その飽和水溶液のpHが7〜10であることが要求される。飽和水溶液のpHが7未満であると、上述の効果が十分に発揮されず、目的とする表面濃度が得られない虞がある。飽和水溶液のpHが10を越えると、地染め染料である付加型反応性染料とセルロース系繊維との結合が切断され、直接捺染部の色安定性が極端に低下してしまう。飽和水溶液のpHが7〜10であるアルカリ剤として具体的には、炭酸水素ナトリウム(重曹)、セスキ炭酸ナトリウムなどを挙げることができる。これらは2種類以上組み合わせて用いてもよい。
【0035】
アルカリ剤の含有量は、補助用インクに対して1〜20重量%であることが好ましく、より好ましくは5〜10重量%である。含有量が1重量%未満であると、固着剤としての効果が低く、染着率が低下して濃色が得難い。含有量が20重量%を越えると、析出し易くなってインクの保存安定性、吐出安定性が低下する虞がある。
【0036】
補助用インクのpHは7〜10であることが好ましい。その理由は、飽和水溶液のpHが7〜10であるアルカリ剤を選択する理由と、略同様である。アルカリ剤の含有量を上記範囲内で適宜調整することにより、補助用インクのpHを7〜10に調整することが可能である。
【0037】
本発明のインクジェット捺染用インクを構成する着色用インク、抜色用インク、補助用インクはいずれも、任意成分として、尿素を含有することが好ましい。インクが尿素を含有することにより、溶解安定性を高めたり、インクの乾燥を防止したり、染色性を向上したりするのに有効である。
尿素のインクへの配合量は、1〜10重量%であることが好ましい。配合量が1重量%未満であると、上述の効果が十分に発揮されない。配合量が10重量%を越えても、それを上回る効果は得られず不経済である。
【0038】
さらに、本発明のインクジェット捺染用インクを構成する各インクはいずれも、必要に応じて、乾燥防止剤、防腐剤、粘度調整剤、紫外線吸収剤などを含有することができる。
【0039】
本発明のインクジェット捺染方法は、以上に説明した着色用インク、抜色用インク、補助用インクを備えるインクジェット捺染用インクセットを用い、付加型反応性染料で地染めされたセルロース系繊維布帛に対し、インクジェット方式による直接捺染と着色抜染および/または白色抜染を同時に適用するものである。
【0040】
本発明で用いられるインクジェット印捺装置は、インクを加熱しない方式であれば特に限定されるものでなく、荷電変調方式、帯電噴射方式、マイクロドット方式、インクミスト方式などの連続方式、ピエゾ変換方式、静電吸引方式などのオンデマンド方式など、いずれも採用可能である。なかでも、インク吐出量の安定性、連続吐出性に優れ、比較的安価で製造できるという理由により、ピエゾ方式が好ましく用いられる。一般的にあらゆる反応性染料の反応基は、加熱により加水分解し易いため、インクを加熱する方式のインクジェット印捺装置を用いることはできない。
【0041】
次いで、インクが印捺されたセルロース系繊維布帛を湿熱処理する。湿熱処理は、抜色性や再現性を左右する極めて重要な工程である。本発明では、HTスチーマーを用いて、160〜185℃で5〜20分間処理することが好ましい。LTスチーマーを用いても(この場合、通常、100〜120℃で10〜30分間処理される)抜色効果を得ることは可能であるが、蒸気状態のわずかなばらつきが抜色性に大きく影響し、再現性が不良となる場合がある。一方、HTスチーマーを用いた高温処理では、付加型反応性染料とセルロース系繊維の結合の切断に寄与するエネルギーが増大するため、抜色性が著しく向上する。このため、蒸気状態が多少ばらついても、抜色性に大きく影響することがないのである。さらに、処理時間を短縮することが可能であり、量産に適した方法といえる。
【0042】
処理温度が160℃未満であると、あるいは処理時間が5分間未満であると、付加型反応性染料とセルロース系繊維の結合の切断が不十分となり、抜色性や再現性が不良となる虞がある。処理時間が185℃を越えると、あるいは処理時間が20分間を越えると、布帛が黄変する虞がある。
【0043】
次いで、洗浄を行う。洗浄は、従来公知の方法で行えばよく、界面活性剤を用いたソーピングを中心に、湯洗、水洗を適宜組み合わせて行われる。ソーピングは通常、アニオンまたはノニオン界面活性剤を1〜5g/L含むソーピング浴中、50〜85℃で、5〜20分間処理することにより行われる。また、必要に応じて中和(酸洗い)を組み合わせてもよい。
【0044】
かくして、柄部における鮮明性、濃色性、抜色性の全てに優れ、高品位の抜染調捺染物を得ることができる。
本発明では、濃色柄部において地染め染料を抜色することなく直接捺染を行っているため、目ムキと呼ばれる欠点、すなわち、布帛を両手で引っ張ったとき、地色の染まっていない部分が白っぽく見える欠点、を緩和することもできる。目ムキは、柄部が濃色である場合に特に問題となることから、品位向上に極めて有効である。
さらに、地染め染料を有効に利用することができるため、環境適合性に優れた捺染方法である。
【実施例】
【0045】
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものでない。なお、実施例中の「%」は重量基準であるものとする。
【0046】
[参考例1、2]インク受理層が形成された地染め布帛の調製
下記組成の染色液に、常法にて糊抜き、精練、漂白、シルケット加工した綿100%編物を浸漬し、60℃で60分間処理した後、水洗し、さらに常法にてソーピングを行い、地染め布帛A、Bを得た。なお、下記組成中、%owfとは、繊維重量に対する染料濃度を表す。
染色液A
KP ZOL Black B 2%owf
(紀和化学工業(株)製、C.I.Reactive Black 5、スルファートエチルスルホン型反応性染料)
炭酸ナトリウム 20g/L
(固着剤)
無水芒硝 50g/L
(中性電解質)
水 残(浴比1:20)
【0047】
染色液B
Sumifix Supra Blue BRF 2%owf
(住友化学工業(株)製、C.I.Reactive Blue 221、モノクロロトリアジン/スルファートエチルスルホン型反応性染料)
炭酸ナトリウム 15g/L
(固着剤)
無水芒硝 30g/L
(中性電解質)
水 残(浴比1:20)
【0048】
次に、下記組成を混合し、ホモジナイザーを用いて1時間攪拌して得られた処理液を、上記地染め布帛A、Bに、固形分換算で2g/mになるようにディップニップ法で付与し、130℃で2分間乾燥して、インク受理層が形成された地染め布帛A’、B’を得た。
処理液
DKSファインガムHEL−1 2%
(第一工業製薬(株)製、エーテル化カルボキシメチルセルロース(エーテル化度約1.6)、水溶性高分子、有効成分99%以上)
MSリキッド 5%
(明成化学工業(株)製、ニトロベンゼンスルホン酸塩、還元防止剤、有効成分30%)
水 93%
【0049】
[参考例3〜6]着色用インクの調製
下記組成を混合し、スターラーを用いて1時間攪拌後、ADVANTEC高純度濾紙No.5A(東洋濾紙(株)製)にて減圧濾過後、真空脱気処理し、着色用インクC〜Fを得た。
着色用インクC
Drimarene Yellow X−SA 15%
(Clariant社製、トリクロロピリミジン型反応性染料)
尿素 5%
(溶解安定剤)
水 80%
【0050】
着色用インクD
KP ZOL Brilliant Yellow GL 15%
(紀和化学工業(株)製、C.I.Reactive Yellow 37、スルファートエチルスルホン型反応性染料)
尿素 5%
(溶解安定剤)
水 80%
【0051】
着色用インクE
KP CION Black P−GN 15%
(紀和化学工業(株)製、モノクロロトリアジン型反応性染料)
尿素 5%
(溶解安定剤)
水 80%
【0052】
着色用インクF
KP ZOL Black B 15%
(紀和化学工業(株)製、C.I.Reactive Black 5、スルファートエチルスルホン型反応性染料)
尿素 5%
(溶解安定剤)
水 80%
【0053】
[参考例7〜9]抜色用インクの調製
下記組成を混合し、スターラーを用いて1時間攪拌後、ADVANTEC高純度濾紙No.5A(東洋濾紙(株)製)にて減圧濾過後、真空脱気処理し、抜色用インクG〜Iを得た。
抜色用インクG
炭酸カリウム 10%
(アルカリ剤、飽和水溶液におけるpH12)
ヒドロキシメタスルホン酸ナトリウム 10%
(付加型反応性染料用防染剤)
尿素 5%
(溶解安定剤)
水 75%
得られた抜色用インクGの常温でのpHは12.5であった。
【0054】
抜色用インクH
炭酸ナトリウム 10%
(アルカリ剤、飽和水溶液におけるpH11.5)
ヒドロキシメタスルホン酸ナトリウム 10%
(付加型反応性染料用防染剤)
尿素 5%
(溶解安定剤)
水 75%
得られた抜色用インクHの常温でのpHは11.8であった。
【0055】
抜色用インクI
炭酸カリウム 10%
(アルカリ剤、飽和水溶液におけるpH12)
尿素 5%
(溶解安定剤)
水 85%
得られた抜色用インクIの常温でのpHは12.1であった。
【0056】
[参考例10、11]補助用インクの調製
下記組成を混合し、スターラーを用いて1時間攪拌後、ADVANTEC高純度濾紙No.5A(東洋濾紙(株)製)にて減圧濾過後、真空脱気処理し、補助用インクJ、Kを得た。
補助用インクJ
重曹 10%
(アルカリ剤、飽和水溶液におけるpH8.8)
尿素 5%
(溶解安定剤)
水 85%
得られた補助用インクJの常温でのpHは9.0であった。
【0057】
補助用インクK
炭酸カリウム 10%
(アルカリ剤、飽和水溶液におけるpH12)
尿素 5%
(溶解安定剤)
水 85%
得られた補助用インクKの常温でのpHは12.1であった。
【0058】
[参考例12〜17]インクセットの調製
参考例3〜11で得られたインクC〜Kを、表1のように組み合わせてインクセットL〜Qを得た。
【0059】
【表1】

【0060】
[実施例1、2、比較例1〜6]
参考例12〜17で得られたインクセットL〜Qを用い、参考例1、2で得られたインク受理層が形成された地染め布帛A’(ネビー色)、B’(青色)に対し、インクジェット方式により表2のようにインクを印捺した。印捺部では、印捺したインクの組合せに応じて、直接捺染、着色抜染、または白色抜染が行われ、黒色、黄色、または白色に着色あるいは抜色された柄部が形成されることになる。このときのインクジェット印捺条件は以下の通りである。
【0061】
インクジェット印捺条件
印捺装置:オンデマンド方式シリアル走査型インクジェット印捺装置
ノズル径:50μm
駆動電圧:100V
周波数:5kHz
解像度:360dpi
印捺量:直接捺染部 捺染用インクと補助用インクをそれぞれ40g/m
着色抜染部 抜染用インクと捺染用インクをそれぞれ40g/m
白色抜染部 抜染用インクを40g/m
【0062】
【表2】

【0063】
布帛を乾燥後、HTスチーマーを用いて175℃で10分間湿熱処理した。さらに、メイサノールKH−1(明成化学工業(株)製、ノニオン/アニオン界面活性剤)を2g/L含むソーピング浴中、80℃で10分間処理して洗浄した後、水洗し、乾燥して捺染物を得た。
【0064】
上記実施例および比較例で得られた捺染物の柄部について、以下の項目を評価した。結果を表3に示す。
(1)黒色柄部の表面濃度
黒色柄部および地色部の反射濃度をマクベスRD918(GretagMacbeth社製)を用いて測定し、地色部の反射濃度を基準に、黒色柄部の反射濃度の相対値を求め、以下の基準に従って判定した。
○ 120%〜
△ 110〜120%
× 100〜110%
×× 100%以下
(2)黄色柄部の鮮明性
下記の基準に従って目視判定した。
○ 鮮明な黄色に染色されている
△ やや地色が残り、やや不鮮明な黄色に染色されている
× かなり地色が残り、不鮮明な黄色に染色されている。もしくは、黄色に染色されていない。
(3)白色柄部の抜色性
白色柄部および地色部の反射濃度をマクベスRD918(GretagMacbeth社製)を用いて測定し、地色部の反射濃度を基準に、白色柄部の反射濃度の相対値を求め、以下の基準に従って判定した。
○ 0〜20%
△ 20〜40%
× 60〜100%
【0065】
【表3】

【0066】
表3より明らかなように、本発明のインクジェット捺染用インクセットを用い、本発明のインクジェット捺染方法にて製造された実施例1および実施例2の抜染調捺染物は、柄部における濃色性、鮮明性、抜色性の全てに優れたものであった。
一方、モノクロロトリアジン/スルファートエチルスルホン型反応性染料で地染めされたセルロース系繊維布帛を用いた比較例1は、抜色性が不良であり、そのため着色抜染部(黄色柄部)の鮮明性も不良であった。白色抜染部(白色柄部)および着色抜染部(黄色柄部)に付加型反応性染料用防染剤を含有しない抜色用インクを用いた比較例2は、抜色性がやや不良であり、そのため着色抜染部(黄色柄部)の鮮明性もやや不良であった。着色抜染部(黄色柄部)にスルファートエチルスルホン型反応性染料を含有する着色用インクを用いた比較例3は、着色することが出来なかった。直接捺染部(黒色柄部)にスルファートエチルスルホン型反応性染料を含有する着色用インクを用いた比較例4は、地色と比較し表面濃度が変化せず、濃色性が不良であった。直接捺染部(黒色柄部)に飽和水溶液におけるpHが10を越えるアルカリ剤を含有する補助用インクを用いた比較例5は、地色よりも表面濃度が低く、濃色性が極めて不良であった。黒色柄部に着色抜染を適用した比較例6は、地色よりも表面濃度が著しく低く、濃色性が極めて不良であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
付加型反応性染料で地染めされたセルロース系繊維布帛に対し、インクジェット方式による直接捺染と着色抜染および/または白色抜染を同時に適用する際に用いられるインクジェット捺染用インクセットであって、置換型反応性染料を含有する着色用インクと、飽和水溶液におけるpHが11以上であるアルカリ剤および付加型反応性染料用防染剤を含有する抜色用インクと、飽和水溶液におけるpHが7〜10であるアルカリ剤を含有する補助用インクを備えることを特徴とするインクジェット捺染用インクセット。
【請求項2】
置換型反応性染料がモノクロロトリアジン基を有する反応性染料、およびトリクロロピリミジン基を有する反応性染料から選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項1記載のインクジェット捺染用インクセット。
【請求項3】
飽和水溶液におけるpHが11以上であるアルカリ剤がアルカリ金属の水酸化物、炭酸塩、リン酸塩、およびケイ酸塩から選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項1または2記載のインクジェット捺染用インクセット。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載のインクジェット捺染用インクセットを用い、付加型反応性染料で地染めされたセルロース系繊維布帛に対し、インクジェット方式による直接捺染と着色抜染および/または白色抜染を同時に適用するインクジェット捺染方法であって、着色用インクと補助用インクを同一箇所に印捺することにより直接捺染を行い、抜色用インクと着色用インクを同一箇所に印捺することにより着色抜染を行い、抜色用インクを印捺することにより白色抜染を行うことを特徴とするインクジェット捺染方法。

【公開番号】特開2006−28247(P2006−28247A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−205893(P2004−205893)
【出願日】平成16年7月13日(2004.7.13)
【出願人】(000107907)セーレン株式会社 (462)
【Fターム(参考)】