説明

インクジェット捺染装置

【課題】被捺染材の種類に応じてフレキシブルなセッティングを行い、被捺染材の皺を適切に低減或いは除去することのできるインクジェット捺染装置を提供する。
【解決手段】インクジェット捺染装置1は、被捺染材Pを載置する載置台17と、その両側に設けられた吸引部19とを備えている。載置台17の載置面17aと、被捺染材Pの垂下部分Ptを載置台17に対し両側で保持する保持手段としての吸引部19と、の相対的な高さ位置が調整可能に構成されている。従って被捺染材Pに付与するテンションを、被捺染材Pの種類に応じて調整でき、皺を適切に低減或いは除去することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送される被捺染材の捺染側の面に向けてインクを吐出して所望の捺染を実行する捺染ヘッドを備えたインクジェット捺染装置に関する。
【背景技術】
【0002】
アパレル(衣服)メーカーやテキスタイル(布地)メーカーでは、従来から生地本体表面に図柄等をプリントする「捺染」が広く行われている。
そして、捺染を行う捺染装置として、捺染ヘッドから吐出されたインクを被捺染材に付着させて捺染を実行するインクジェット捺染装置も開発されている。
【0003】
この様なインクジェット捺染装置に特有の技術的課題として、被捺染材(例えば、布帛)のセッティング時の課題がある。例えば、布帛は印刷用紙とは異なり皺が生じ易く、これが捺染結果に悪影響を及ぼす虞がある。
【0004】
布帛のセッティングに関する技術として、特許文献1には、プラテンの周囲に挿嵌してプラテンに載置された被印刷体に張力を与える枠を備えたプラテン装置が開示されている。このプラテン装置によれば、被印刷体をプラテンにセットすることが容易になると同時に、セット不良が起こりにくいといった作用効果が得られる。
【0005】
また特許文献2には、柔軟な素材に対しても正確かつ確実に印刷を施すことを目的として、多数の細孔を備えた支持面と、細孔を通して被印刷物を吸引する吸引手段と、を備えた印刷補助ガイドが示されている。この印刷補助ガイドによれば、多数の細孔を通して被印刷物を吸引することによって被印刷物を支持面に沿った姿勢に吸着保持できるので、この様な印刷補助ガイドに被印刷部をセットし、その印刷補助ガイドを搬送して印刷を行うことで、適切な印刷結果を得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−312069号公報
【特許文献2】特開2004−224496号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、布帛には素材や厚みの違いなどが存在する為、布帛のセッティングが布帛の種類に因らず一様であると、或る布帛は皺を除去できるが他の布帛は皺を除去できなかったり、また或る布帛は皺を除去できるものの張力をかけ過ぎとなり、後の捺染品質に悪影響を及ぼしたりする虞がある。また、特許文献1に記載のプラテン装置にあっては、被印刷体が載置されたプラテンに枠を嵌める構成であるので、厚手の被印刷体に対応できない場合がある。
【0008】
そこで本発明はこの様な状況に鑑みなされたものであり、その目的は、被捺染材の種類に応じてフレキシブルなセッティングを行うことができ、そして被捺染材の皺を適切に低減或いは除去することのできるインクジェット捺染装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決する為の、本発明の第1の態様に係るインクジェット捺染装置は、被捺染材を載置する載置面を有する載置台と、前記載置台に載置された被捺染材において前記載置面よりも外側に位置する部分を前記載置台に対し両側で保持する保持手段と、前記保持手段が被捺染材を保持する保持部分と前記載置面との相対的な位置を調整する調整手段と、を備えたことを特徴とする。
【0010】
本態様によれば、インクジェット捺染装置は被捺染材を載置する載置面と、被捺染材において載置面よりも外側に位置する部分を載置台に対し両側で保持する保持手段が被捺染材を保持する保持部分と、の相対的な位置を調整可能であるので、前記位置を調整することで被捺染材は載置台の載置面上においてテンションが付与され、皺が除去されることとなる。そして前記位置が調整可能であることから、前記テンションを被捺染材に応じて調整することが可能となり、これにより被捺染材の種類に応じたフレキシブルなセッティングを行うことができ、皺を適切に低減或いは除去することができる。
【0011】
尚、「載置台の両側」とは、例えば載置台が所定方向に移動可能である場合にはその移動方向に対して両側と言う様に限定されるものではなく、載置台の形状や移動方向などには関係無く、載置台の一方の側方と、その反対側の他方の側方と、の両方という意味であり、つまり前記位置の調整によって被捺染材にテンションを付与できる様に保持できる位置関係であれば良い。
【0012】
本発明の第2の態様は、第1の態様において、前記調整手段は、前記載置面と交差する方向における前記位置を調整することを特徴とする。
本態様によれば、前記調整手段は、前記載置面と交差する方向における前記位置を調整するので、前記載置面上からの被捺染材の浮き上がりを抑えつつ、被捺染材に適切にテンションを付与することができる。
【0013】
本発明の第3の態様は、第1の又は第2の態様において、前記保持手段は、吸引によって被捺染材を保持することを特徴とする。
本態様によれば、保持手段は吸引によって被捺染材を保持するので、被捺染材に仮に過剰なテンションが加わった場合には被捺染材において保持手段により保持された部分が或る程度動くことができ、被捺染材に過剰な伸びが生じることを防止でき、良好な捺染結果を得ることができる。
【0014】
本発明の第4の態様は、第3の態様において、前記保持手段は、被捺染材を吸引する際の吸引力を調整可能であり、被捺染材の種類に応じて前記吸引力を調整することを特徴とする。
本態様によれば、被捺染材の種類に応じて前記吸引力を調整するので、被捺染材の種類に応じて、上述した第2の態様の作用効果をより適切に得ることができる。
【0015】
本発明の第5の態様は、第1から第4の態様のいずれかにおいて、前記載置台に載置された被捺染材に向けてインクを吐出する捺染ヘッドを備え、前記調整手段が、前記載置台を移動させることにより前記位置を調整するとともに、前記位置を調整した後の前記捺染ヘッドと前記載置面との間のギャップが一定となる様に前記位置を調整することを特徴とする。
【0016】
本態様によれば、前記調整手段が、前記載置台を移動させることにより前記位置を調整するとともに、前記位置を調整した後の前記捺染ヘッドと前記載置面との間のギャップが一定となる様に前記位置を調整するので、前記載置台の位置に応じて前記捺染ヘッドの位置を調整する構成が不要となり、或いは前記捺染ヘッドの位置調整が僅かで済むことから、前記ギャップの適正値からのズレやばらつきを抑えることができ、また装置構成の簡易化によって低コスト化を図ることができる。
【0017】
本発明の第6の態様は、第1から第4の態様のいずれかにおいて、前記保持手段が、前記載置台の周囲と対向配置された保持部により被捺染材を保持する構成を有し、前記調整手段が、前記保持部を移動させることにより前記位置を調整することを特徴とする。
【0018】
本態様によれば、前記保持手段が、前記載置台の周囲と対向配置された保持部により構成された上で、当該保持部が移動する構成であることから、前記載置台を移動させる構成が不要となり、即ち捺染ヘッドと載置台との間のギャップを変化させることなく載置台と保持手段との相対的な位置を調整できる。従って前記ギャップの適正値からのズレやばらつきを抑えることができ、また装置構成の簡易化によって低コスト化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係るインクジェット捺染装置の外観斜視図。
【図2】本発明に係るインクジェット捺染装置の側面図。
【図3】被捺染材及び載置台に載置された被捺染材の状態を示す図。
【図4】載置台の正面図。
【図5】(A)〜(C)は被捺染材セット時の状態推移を示す図。
【図6】(A)〜(C)は被捺染材セット時の状態推移を示す図。
【図7】(A)〜(C)は被捺染材セット時の状態推移を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明するが、本発明は、以下説明する実施形態に限定されることなく、特許請求の範囲に記載した発明の範囲内で種々の変形が可能であり、それらも本発明の範囲内に含まれるものであることを前提として、以下本発明の一実施形態を説明するものとする。
【0021】
図1は本発明の一実施形態に係るインクジェット捺染装置1の外観斜視図、図2は同側面図、図3は被捺染材P及び載置台17に載置された被捺染材Pの状態を示す図、図4は載置台17の正面図である。また、図5(A)〜(C)、図6(A)〜(C)、図7(A)〜(C)は、被捺染材Pセット時の状態推移を示す図であり、それぞれ異なる実施例を示している。
【0022】
尚、図中においてx−y−z座標系は説明の便宜上方向を示したものであり、z方向は鉛直(重力)方向、y方向が被捺染材Pの搬送方向(載置台17の移動方向)、x方向がy方向及びz方向と直交する方向である。
【0023】
図1、図2に示す様にインクジェット捺染装置1は、装置本体2の底部にガイドテーブル10を備え、このガイドテーブル10上を載置台17が移動するよう構成されている。より詳しくは、ガイドテーブル10にはy方向に平行なガイド軸11がx方向に所定間隔を空けて配置されており、このガイド軸11、11によって、ベース15がy方向にガイドされる様になっている。
【0024】
2本のガイド軸11、11の間には、無端ベルト12が、y方向に沿って駆動プーリー13と従動プーリー14との間に係回されており、この無端ベルト12の一部にベース15が固定されている。駆動プーリー13は駆動モーター9によって回転駆動され、これにより無端ベルト12が稼働すると、ベース15がy方向に移動する様になっている。
【0025】
このベース15上には、載置台17と、その両側に吸引部19とが設けられている。載置台17は、その上面が被捺染材Pを載置する載置面17aとなっており、載置面17a上に被捺染材Pを図3に示す様に載置し(図3の被捺染材Pは一例としてTシャツを示している)、被捺染材Pが載置された載置台17がy方向に移動することで、被捺染材Pは捺染ヘッドとしてのインクジェットヘッド23の下を通過できる様になっている。
尚、載置面17aは、載置台17においてインクジェットヘッド23と対向可能な面である。
【0026】
載置台17の両側に設けられた吸引部19は、ベース37を介してベース15に設けられており、その内側には空洞部19bが形成されている。そして、ベース15上に配置された吸引ファン装置25と空洞部19bとがチューブ26によって接続されている。
【0027】
吸引部19において載置台17の周囲(x方向側面)と対向する側面19cには、空洞部19bと連通する多数の吸引孔19a(図4の拡大図A)が形成されており、吸引ファン装置25の稼働により、吸引孔19aを介した被捺染材Pの吸引が行える様になっている(詳細は後述)。尚、図4の拡大図Aは、吸引部19の側面19cを正面視した図である。
【0028】
次いで、インクジェット捺染装置1の装置前面右側には各種操作を行う為の操作パネル6が配置されており、装置前面において載置台17を挟んで操作パネル6の反対側(装置左側)にはインクカートリッジを収容するインクカートリッジ収容部8が設けられている。
【0029】
インクカートリッジ収容部8に収容されたインクカートリッジからインクが供給される、捺染実行部を構成するインクジェットヘッド23は、インクを吐出するためのノズル孔(不図示)が複数並んだノズル列(不図示)を複数有する、公知の構造のインクジェットヘッドである。そしてこのインクジェットヘッド23は搬送方向yと交差するx方向(図2において紙面面裏方向)に往復駆動されるキャリッジ22に搭載されている。
【0030】
尚、インクジェット捺染装置1は、インクジェットヘッド23が搬送方向yと交差するx方向に移動しながらインクを吐出する所謂シリアル式として説明したが、インクジェットヘッド23はラインヘッドであってもよいし、またこのラインヘッドが固定的に設けられていても、或いは搬送方向yに移動可能に設けられていても、いずれであっても良いのは勿論である。
【0031】
そして載置台17が図2の仮想線及び符号17’で示す位置にまで搬送され(捺染開始位置)、載置台17の装置前方側(図2において左側)への移動と、インクジェットヘッド23からのインク吐出と、が交互に行われ、捺染が実行される。被捺染材Pへのインクの吐出が終了すると、載置台17は図2の実線で示す位置(被捺染材Pのセット位置)にまで戻り、インクが吐出された被捺染材Pを取り出すことができる様になっている。
【0032】
尚、制御部3は上述した駆動モーター9、キャリッジ22(キャリッジ22を駆動する図示しないモーター)、インクジェットヘッド23、吸引ファン装置25、モーター31(後述)を制御する制御手段である。
【0033】
続いて、載置台17に載置された被捺染材Pを載置台17の両側で保持する保持手段を構成する吸引部19及び当該吸引部19と載置台17との相対的な位置(本実施形態では相対的な高さ位置)を調整する調整手段30について説明する。
【0034】
図4において、ベース15上に設けられたベース部35には、孔35a、35aが形成されている。孔35a、35aには載置台17に設けられた軸34、34が遊挿され、これにより載置台17が上下方向(インクジェットヘッド22と載置面17aとの間のギャップが変化する方向)に変位可能となっている。
【0035】
載置台17にはナット33が設けられており、このナット33にはねじ軸32が螺合している。ねじ軸32はベース部35に設けられたモーター31により駆動され、モーター31によってねじ軸32が回転することにより、ねじ軸32とナット33との螺合を介して載置台17が上下方向(ギャップ調整方向)に変位する様になっている。
【0036】
この様に構成された被捺染材Pのセット構造において、被捺染材Pをセットする際には、図5(A)に示す様に載置台17をやや下方に下げた状態とする(段差d)。尚、破線Lは吸引部19の上面位置を示しており、載置台17の載置面17aは、本実施例ではこの位置Lを上限位置とする。尚、図5〜図7では、図4に示した調整手段30の構成や吸引孔19a等は図面の簡略化の為に図示を省略している。
【0037】
図5(A)に示す状態では、吸引孔19aを介した吸引は行われておらず、作業者は載置面17aの上に被捺染材Pを載置し、そして被捺染材Pにおいて載置面17aから外側にはみ出た部分を吸引部19と載置台17との間(符号qで示す)に落とし込む。
【0038】
次いで、作業者がセット完了ボタン(不図示)を押下すると、制御部3は吸引ファン装置25をオンにし、これにより載置台17に載置された被捺染材Pにおいて載置台17から両側に垂下した部分(符号Ptで示す)が吸引部19に吸引され、吸引部19側に吸着する(図5(B))。
【0039】
次いで、制御部3は載置台17を載置面17aが上限位置Lに到達するまで上昇させる(図5(C))。このとき、被捺染材Pの垂下部分Ptは載置台17の両側で吸引部19に吸着されているので、被捺染材Pにはテンションが加わり、載置面17a上に載置された部分の皺が除去される。
【0040】
上記テンションは、被捺染材Pの垂下部分Ptの吸引を開始するときの載置台17の高さ位置を変更することにより、調整することができる為、制御部3は被捺染材Pの種類に応じて被捺染材Pの垂下部分Ptの吸引を開始するときの載置台17の高さ位置、即ち図5(B)の段差dを設定する。これにより、被捺染材Pに種類に応じた適切な皺除去効果を得ることができる。
【0041】
以上の通り、上記実施形態によれば、載置台17の載置面17aと、被捺染材Pの垂下部分Ptを載置台17に対し両側で保持する保持手段としての吸引部19と、の相対的な高さ位置を調整可能であるので、前記高さ位置を調整することで被捺染材Pは載置面17a上においてテンションが付与され、皺が除去される。そして前記高さ位置が調整可能であることから、前記テンションを被捺染材Pの種類に応じて調整することが可能となり、これにより被捺染材Pの種類に応じたフレキシブルなセッティングを行うことができ、皺を適切に低減或いは除去することができる。
【0042】
特に、本実施形態では、載置面17aと吸引部19との位置調整方向は、載置面17aと交差する方向であるので、載置面17a上からの被捺染材Pの浮き上がりを抑えつつ、被捺染材Pに適切にテンションを付与することができる。
【0043】
また、被捺染材Pの垂下部分Ptは吸引によって保持されるので、被捺染材Pに仮に過剰なテンションが加わった場合には、垂下部分Ptが吸引部19の側面19cで或る程度動く(滑る)ことができ、従って被捺染材Pに過剰な伸びが生じることを防止でき、良好な捺染結果を得ることができる。
【0044】
従って、被捺染材Pの垂下部分Ptを吸引する際の吸引力を、被捺染材Pの種類に応じて調整する様にすれば、より一層適切に垂下部分Ptを保持することができ、被捺染材Pに過剰なテンションが加わることをより確実に防止することができる。
【0045】
また、上記実施例では、載置面17aと吸引部19との相対的な高さ位置を調整した後の、インクジェットヘッド23と載置面17aとの間のギャップが一定となる様に、前記高さ位置を調整するので、載置台17の高さ位置に応じてインクジェットヘッド23の高さ位置を調整する構成が不要となり、或いはインクジェットヘッド23の高さ位置調整が僅かで済むことから、前記ギャップの適正値からのズレやばらつきを抑えることができ、また装置構成の簡易化によって低コスト化を図ることができる。
【0046】
尚、上記実施例では載置面17aが上限位置Lに到達するまで載置台17を上昇させるが、被捺染材Pはその種類により厚みが異なる為、制御部8は、ドライバ情報に含まれる被捺染材Pの種類(厚み)に応じて、被捺染材Pの上面(捺染面)が上限位置Lと同一レベルとなる様に、載置台17aの高さ位置を調整しても良い。これは、後に説明する図7の実施例についても同様である。
【0047】
次いで、図6に示す他の実施例は、図5に示す実施例とは異なり、初期状態において載置面17aと吸引部19の上面とが同一レベルにある(図6(A))。この状態で、被捺染材Pを載置面17aに載置し、吸引部19によって垂下部分Ptを吸引し(図6(B))、そして載置台17を上昇させて被捺染材Pにテンションを付与し、皺を除去する(図6(C))。
【0048】
図6に示す実施例においても、載置台17の載置面17aと、被捺染材Pの垂下部分Ptを載置台17に対し両側で保持する保持手段としての吸引部19と、の相対的な高さ位置が調整可能であることから、前記テンションを被捺染材Pの種類に応じて調整することが可能となり、これにより被捺染材Pの種類に応じたフレキシブルなセッティングを行うことができ、皺を適切に低減或いは除去することができる。
【0049】
次いで、図7に示す他の実施例は、図5及び図6に示した実施例とは異なり、載置台(符号17’)は上下動せずに吸引部(符号19’)が上下動することで、載置面17aと吸引部19’との相対的な高さ位置を調整する。
【0050】
より具体的には、初期状態において載置面17aと吸引部19’の上面とが同一レベルにある(図7(A))。この状態で、被捺染材Pを載置面17aに載置し、吸引部19’によって垂下部分Ptを吸引し(図7(B))、そして吸引部19’を下降させて被捺染材Pにテンションを付与し、皺を除去する(図7(C))。
【0051】
この様に本実施例によれば、被捺染材Pの垂下部分Ptを保持する保持部としての吸引部19’が上下動する構成であることから、載置台17’を上下動させる構成が不要となり、即ちインクジェットヘッドと載置台17’との間のギャップを変化させることなく載置台17’と吸引部19’との相対的な高さ位置を調整できる。従って前記ギャップのばらつきを抑えることができ、また装置構成の簡易化によって低コスト化を図ることができる。尚、吸引部19’を上下動させるための機構は、例えば図4に示した調整手段30と同様な機構を設けることで実現できる。
【0052】
以上説明した各実施形態は一例であり、本発明がこれら各実施形態に限られないことは言うまでもない。例えば、上記実施形態では載置台17においてx方向の2辺で被捺染材Pの垂下部分Ptを保持するが、これに代えて、y方向の2辺で被捺染材Pの垂下部分Ptを保持しても良いし、x方向及びy方向のそれぞれ、即ち4辺で被捺染材Pの垂下部分Ptを保持しても良い。
【0053】
また、被捺染材Pの垂下部分Ptを保持する保持手段は、上記実施例では吸引を利用するが、クリップ等の物理的保持手段によって垂下部分Ptを保持しても良く、即ち載置台と保持手段との相対的な高さ位置を調整した際に被捺染材Pにテンションが加わる様に保持すればどの様に保持しても良い。
【0054】
また、上記各実施例は載置台17がy方向に移動する構成であるが、載置台17が固定的に設けられた上で、インクジェットヘッド23がx方向及びy方向に移動する構成であっても良い。即ち、載置台17及びインクジェットヘッド23については、それぞれ、固定的に設けられる場合、x方向にのみ移動する場合、y方向にのみ移動する場合、x方向及びy方向のそれぞれに移動する場合、のこれら種々の形態と組み合わせをとり得る。また、インクジェットヘッド23は、捺染領域をx方向或いはy方向にカバーする長さである所謂ラインヘッドであっても良い。
【0055】
更に、上記各実施例は、載置面17aが水平となる様に載置台17が設けられているが、必ずしも載置面17aが水平となる様に載置台17を設ける必要はなく、載置面17aが水平面に対して所定の傾斜角を成す様に、或いは垂直面を成す様に載置台17が設けられ、その際の載置面17aが成す方向に沿って載置台17(或いはインクジェットヘッド23)が移動可能に構成されていても良い。この場合、特に載置面17aが垂直面を成す構成においては、載置台17(或いはインクジェットヘッド23)はz方向(鉛直方向)に移動することとなる。
【0056】
そして同様に、載置台17の載置面17aと、保持手段(上記各実施例において吸引部19)と、の相対的な位置調整も、上記各実施例の様に上下方向(鉛直方向)に限られるものではなく、載置台17の設置状況(載置面17aが水平面に対してなす角度)等に応じて、上下方向以外の方向をとり得る。例えば、載置面17aが垂直面を成し、載置台17がz方向(鉛直方向)に移動する構成であれば、上記位置調整方向は、水平方向が考えられる。また、上記位置調整方向は、必ずしも載置面17aと直交する方向に限られず、載置面17aと交差する方向であれば良い。即ち、載置面17aからの被捺染材Pの浮き上がりを抑えつつ、被捺染材Pにテンションを加えられる様な方向であれば良い。
【0057】
また加えて、本発明は布帛等の被捺染材にインクを吐出するインクジェット捺染装置に対して適用したが、記録用紙等の被記録媒体に記録を行うインクジェット記録装置に適用することも可能である。
【符号の説明】
【0058】
1 インクジェット捺染装置、2 装置本体、6 操作部、8 インクカートリッジ収容部、9 駆動モーター、10 ガイドテーブル、11 ガイド軸、12 無端ベルト、13 駆動プーリー、14 従動プーリー、15 ベース、17 載置台、17a 載置面、17b 空洞部、19 吸引部、19a 吸引孔、19b 空洞部、22 キャリッジ、23 インクジェットヘッド、25 吸引ファン装置、26 チューブ、30 調整手段、31 モーター、32 ねじ軸、33 ナット、34 軸、35 ベース部、35a ガイド孔、37 ベース、50 制御部、P 被捺染材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被捺染材を載置する載置面を有する載置台と、
前記載置台に載置された被捺染材において前記載置面よりも外側に位置する部分を前記載置台に対し両側で保持する保持手段と、
前記保持手段が被捺染材を保持する保持部分と前記載置面との相対的な位置を調整する調整手段と、
を備えたインクジェット捺染装置。
【請求項2】
請求項1に記載のインクジェット捺染装置において、前記調整手段は、前記載置面と交差する方向における前記位置を調整する、
ことを特徴とするインクジェット捺染装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のインクジェット捺染装置において、前記保持手段は、吸引によって被捺染材を保持する、
ことを特徴とするインクジェット捺染装置。
【請求項4】
請求項3に記載のインクジェット捺染装置において、前記保持手段は、被捺染材を吸引する際の吸引力を調整可能であり、被捺染材の種類に応じて前記吸引力を調整する、
ことを特徴とするインクジェット捺染装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載のインクジェット捺染装置において、前記載置台に載置された被捺染材に向けてインクを吐出する捺染ヘッドを備え、
前記調整手段が、前記載置台を移動させることにより前記位置を調整するとともに、前記位置を調整した後の前記捺染ヘッドと前記載置面との間のギャップが一定となる様に前記位置を調整する、
ことを特徴とするインクジェット捺染装置。
【請求項6】
請求項1から4のいずれか1項に記載のインクジェット捺染装置において、前記保持手段が、前記載置台の周囲と対向配置された保持部により被捺染材を保持する構成を有し、
前記調整手段が、前記保持部を移動させることにより前記位置を調整する、
ことを特徴とするインクジェット捺染装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−96036(P2013−96036A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−241139(P2011−241139)
【出願日】平成23年11月2日(2011.11.2)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】