説明

インクジェット法によるプリント方法とインクジェットプリンタにおける織布の搬送装置

【課題】捺染処理する織布に対して搬送のための媒体を一切使用することなく布織布を均一な状態に維持して搬送し、高品質なプリント地を得る。
【解決手段】織布(布帛)をインクジェットプリンタ1によってプリントする方法において、被処理布帛の原反ロールFを支持する原反支持軸14と捺染済み布帛の巻取り軸34とをそれぞれ独立して駆動し、被処理布帛Fを緊張させながら搬送して、作画位置Pへの被処理布帛Fの供給側と捺染済み布帛F′の巻取り側とでそれぞれ上下動自在なテンションロール15,35によって前記布帛(F,F′)の移動に応じ緊張力が自動的に調整されるようにし、かつ巻取り側でプリンタの搬送速度よりやや早くなるように巻取り軸35を駆動する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット法による織布への印刷に際し、織布を適度な緊張状態に保って搬送し、その織布に対して噴射着色剤を均質に定着させて高品質の染色を可能にする、インクジェット法によるプリント方法とインクジェットプリンタにおける織布の搬送装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
インクジェット法による織布(以下、説明の都合上「布帛」という)へのプリントは、一般の紙に対する印刷とほぼ同様にして行えることから既に実用に供されている。この布帛へのインクジェット法によるプリント(従来のスクリーン捺染とは異なるが、説明の都合上、以下「捺染」という。)は、前処理された布帛の原反を繊維用のインクジェットプリンタの作画位置に供給して布帛に対し染料もしくは顔料インクのインク滴をコンピュータによる印字信号により噴射し、布帛の表面に文字や図柄を描写して、捺染するようにされている。
【0003】
ここで取扱われる布帛は、一般の紙やフィルムとは異なり、織物であるために、いわゆる腰がなく、伸縮性や柔軟性が大きいので連続して搬送するにあたり、しわやよじれあるいは伸びが発生してインクの噴射による図柄などの描写が不正確に仕上がる、あるいは変形するという不具合が生じる。したがって、このような不具合の発生がないように、布帛を適度な緊張状態に保って搬送する必要がある。このようなことから、布帛を搬送容易にするために、捺染する布帛の幅と同じ幅かそれよりも広い幅の媒体上に布帛を微粘性の粘着剤などを使用して貼り合わせ、搬送する方式が採用されている。このような搬送方式において、媒体としては紙を用いる方式が一般的である。また、紙製の媒体上に布帛を重ね合わせて搬送ローラと押えロールとで挟み付けながらインクジェットプリンタによる印字部分へ搬送するようにするものが特許文献1によって開示されている。
【0004】
また、このほかに、前述のような問題点を解消する手段としてインクジェットプリンタの作画位置を走行する記録媒体(布帛)の搬送手段として、表面に突起物を備えた無端ベルトを用い、この無端ベルトによって記録媒体(布帛)を搬送させて、その記録媒体上に画像を記録(描画)するものが特許文献2によって開示されている。
【0005】
【特許文献1】特開2002−266224号公報
【特許文献2】特開2002−370416号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、インクジェット法による捺染では、前記特許文献1などによって知られるように、捺染される布帛を伸縮性や柔軟性の小さい紙などの媒体で、いわゆる裏打ちして、搬送に際して取扱いのよい状態のもとでインクジェットプリンタの作画位置に搬送する方式が採用されているので、搬送のための媒体として捺染する布帛に相当する長さの紙を必要とする。また、その媒体と布帛とを貼り合わせるための貼着剤が必要になる。そのために、コストアップになることが避けられないという問題点がある。とりわけ、媒体の紙は布帛を裏打ちするので、プリントによって布帛に噴射されたインク滴が裏面まで浸透するとその媒体に付着することになり、再使用することが困難となる。
【0007】
また、前記特許文献2によって知られるように、無端ベルトによって捺染する布帛を作画位置に搬送する方式では、その搬送用の無端ベルトに突起物を設けた特殊なベルトが必要になり、搬送される布帛と無端ベルト上の突起物とを係合させる手段が当然必要である。しかしながら、理論的には布帛と無端ベルトの上面(突起物)とが平均的に係合することになるが、打込み(織目の密度)が高い織布など取扱われる布帛の種類によっては簡単に係合させることが難しく、この時点で布目を均等に保たせる、言い換えるとしわの発生やよじれが生じない状態で無端ベルト上に布帛を均一に載せて突起物と係合させることは容易でない。また、突起物による布帛との係合と言う固定的な手段により、無端ベルトとの接触位置までに正しい姿勢で送らないと、返って布帛を均一な状態に整えることが困難になると言う問題点がある。しかも、この無端ベルトはインクの付着による汚染を取り除くために洗浄手段や洗浄液の乾燥手段を必要とし、それら処理手段による表面の清掃を短時間で行わねばならないので、多くの困難が伴うと言う問題点がある。とりわけ、捺染(プリント)後の布帛に水分が付着することは、プリント面を汚染するので製品不良となる虞がある。
【0008】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであって、捺染処理する織布に対して搬送のための媒体を一切使用することなく織布を均一な状態に維持して搬送し、高品質なプリント地を得ることができるインクジェット法によるプリント方法と織布の搬送装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するために、第1発明によるインクジェット法によるプリント方法は、
織布をインクジェットプリンタによってプリントする方法において、被処理織布の原反ロールを支持する原反ロール軸とプリント済み織布の巻取り軸とをそれぞれ独立して駆動し、被処理織布を緊張させながら搬送して、作画位置への被処理織布供給側とプリント後の巻取り側とでそれぞれ上下動自在なテンションロールによって前記織布の移動に応じ緊張力が自動的に調整されるようにし、かつ巻取り側でプリンタの送り速度よりやや早くなるように巻取り軸を駆動することを特徴とする。
【0010】
また、前記発明において、被処理織布の種類に応じて質量の異なるテンションロールを用いるようにするのがよい(第2発明)。
【0011】
第3発明によるインクジェットプリンタにおける織布の搬送装置は、
繊維生地用のインクジェットプリンタにおける織布の搬送装置であって、被処理織布を水平に送ってプリントする作画位置に対し、被処理織布供給側には、原反巻付けロールの駆動手段と原反巻付けロール位置から前記作画位置までの間で上下動自在に支持されて被処理織布に張力を付勢するテンションロールとが配置され、プリント済み織布巻取り側には、水平移動部と巻取り軸の駆動手段および前記作画位置から前記巻取り軸位置までの間で上下動自在に支持されてプリント済み織布に張力を付勢するテンションロールとが配置され、前記両駆動手段は各々単独で駆動するように構成されていることを特徴とするものである。
【0012】
前記第3発明において、前記テンションロールは、その両端軸部が支持フレームに設けられる垂直軸受ガイド部で上下動自在に支持されており、かつその垂直軸受ガイド部に対し着脱自在に配されているのがよい(第4発明)。また、巻取り側の前記テンションロールはプリント済み織布の裏面側に接して張力を付勢するように配置されているのが好ましい(第5発明)。
【0013】
前記原反巻付けロールの支持軸および前記巻取り軸は、それぞれ駆動軸と継ぎ手によって着脱可能に直結されているのがよい(第6発明)。
【発明の効果】
【0014】
第1発明によれば、作画位置への被処理織布の供給側とプリント後の織布の巻取り側とで、それぞれ織布の移動速度を調整自在にして、その織布の移動区間においてフリーに上下作動するテンションロールにより織布の緊張が自動的に調整され、かつプリント直後水平状態を保たせてプリンタの送り速度よりやや早くなるように織布を駆動させることにより、噴射されたインク滴(着色液滴)がだれるのを防止でき、そのまま緊張力を与えながら所要区間移動させて巻取ることにより、裏打ちする媒体を用いることなしに、高品質なプリントを施すことができるのである。したがって、コストダウンを図ることができるという効果を奏する。
【0015】
また、第2発明によれば、処理される織布の種類などに応じて緊張状態を適正にするのに、質量の異なるテンションロールを複数準備しておいて、対応する前記テンションロールを用いるようにすることで、複雑な制御手段を用いることなく合理的に目的を達成することができ、操作も容易であるという利点がある
【0016】
前記第3発明によれば、簡単な構成で前記第1発明による媒体を用いないインクジェット法による織布へのプリントを、実施できるという効果を奏する。しかも、被処理織布に対する緊張力の付与は、上下動自在なテンションロールを用いて行わせるとともに、そのテンションロールについて、被処理織布の種類などに応じて質量の異なるものを用いることで簡単に調整でき、そのテンションロールの交換についても垂直軸受ガイド部で取替え自在にして操作性を容易にされて取扱いが簡便である。さらに、プリント後の織布に対する張力付加は、織布の裏面側で前記テンションロールを接するようにして、プリント面を汚染しないで効果的に作用させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
次に、第1発明によるインクジェット法によるプリント方法を第3発明による織布の搬送装置の具体的な実施形態に基づき、図面を参照しつつ説明する。
【0018】
図1には本実施形態のインクジェット法によるプリント被処理織布の搬送装置の概要図が示されている。図2には搬送装置駆動要部を表わす図(a)とその図(a)におけるB視図(b)が、図3には図2のA−A視図が、図4にはテンションロールの支持部を表わす正面図(a)および軸受部を表わす図(b)が、それぞれ示されている。
【0019】
この実施形態におけるインクジェットプリンタ1は、繊維生地用のプリンタであって、ノズルからインクを吐出するインクジェットヘッド2(以下、単に「インクヘッド2」という。)を備え、このインクヘッド2を走査しながらその下側の作画テーブル3(プラテン)上を移動する布帛Fに対してインクを噴射して捺染を行うようにされている。前記インクヘッド2は、キャリッジ4に設けられ、このキャリッジ4が図示されない走査手段によって布帛Fの搬送方向に直交して走査される。前記作画テーブル3は、水平面で表面が平滑にされており、前記インクヘッド2の走査する位置の直下には布帛Fに対するインクヘッド2から噴射されたインクが布目を通過して裏面側に抜け落ちる分を受止めるインク受溝5が全長にわたって設けられ、透過したインク廃液を外部に漏らさず回収できるようにされている。また、インクヘッド2の操作位置から布帛Fの搬送方向の上流側となる作画テーブル3の一部には、透かし孔を幅方向に形成して、この透かし孔部分に周面の一部を覗かせて布帛Fをインクヘッド2による作画位置Pに送る搬送ローラ6と押えローラ7とが設けられ、その搬送ローラ6を図示されないプリンタの駆動手段によって作画に適した速度で布帛Fを搬送させるように構成されている。
【0020】
このように構成されるインクジェットプリンタ1に対する布帛の搬送装置10は、前記インクヘッド2による作画位置P(プリント部)へ被処理布帛Fを供給する布帛供給装置11と、作画位置Pでインクヘッド2により作画された布帛を後処理工程に移行させる手段として巻取る布帛巻取り装置31とで構成されている。これら布帛供給装置11と布帛巻取り装置31とは、前記インクジェットプリンタ1を基準にしてその前後に配置され、布帛Fが一連に搬送されて捺染処理される。
【0021】
前記布帛供給装置11は、インクジェットプリンタ1の最大捺染幅に対応して被処理布帛を取扱うことができる幅寸法で前記インクジェットプリンタ1の作画テーブル3位置よりも低い高さに枠組形成されるフレーム13と、このフレーム13の頂部で両端部を回転自在に支持されて原反ロールFを駆動する原反支持軸14と、前記フレーム13に付設される垂直軸受ガイド16にて両端部を回転/上下動自在に支持されるテンションロール15と、中間ガイドロール17および前記原反支持軸14を駆動する駆動手段20ならびにその制御機構18とで構成されている。
【0022】
前記フレーム13は、幅方向の両端部に直立するフレーム主体部13a,13bが配されて、下部および配置時プリンタ側に位置する中間部において、両フレーム主体部13a,13bを相互に連結して一体に形成するステー部材13c,13dが付設されている。また、フレーム主体部13a,13bの下面にはそれぞれ複数のキャスタ13fが取付けられて移動容易なようにされている。
【0023】
一方のフレーム主体部13aには、駆動手段20の減速機付きモータ21および制御機構40が付設される。また、前記駆動手段20を備える側のフレーム主体部13aには、頂面およびそれに連なって内側に突き出すブラケット18に軸受ブロック23,23が平行して取付けられ、この軸受ブロック23,23にて駆動軸22が水平に支持されるようにされている。また、他方のフレーム主体部13b頂部には、前記原反支持軸14を着脱可能に支持する受け軸受27が付設されている。
【0024】
前記駆動手段20は、一方のフレーム主体部13aの中間部に付設されるブラケット19にて支持されて取付く減速機付きモータ21と、フレーム主体部13a頂面部とブラケット18とに配設された軸受ブロック23,23にて軸支される駆動軸22とを、前記減速機付きモータ21の出力軸と駆動軸22の軸端とにそれぞれ取付くスプロケット26,26′に無端状の伝動チェーン26″を巻掛けて所要速度で回転駆動されるように構成されている。その減速機付きモータ21は制御機構40によって起動・停止操作されるように関連付けられている。
【0025】
前記原反支持軸14は、一端を前記駆動軸22と同軸上で継ぎ手25を介して着脱可能に連結されるようにして、その駆動軸22を支持する位置でフレーム主体部13aから内側に所要長さで突き出すブラケット18の端部上に配設された受け軸受27にて支持され、他端部を他方のフレーム主体部13bの頂面に配設される受け軸受27′にて支持されて軸心を水平に保たれ、駆動軸22とともに回転自在にされている。なお、前記受け軸受27(27′)は、二個の回転体27a,27aが軸線を平行にして回転自在に支持部材27bに軸ピン27c,27cで配設され、それら二個の回転体27a,27aに接して原反支持軸14(本発明の原反ロール軸に相当)が受支されると、その軸心が前記駆動軸22の軸心に合致するように構成されている。そして、前記継ぎ手25で駆動軸22との連結を解くと原反支持軸14が両受け軸受27,27′上からそのまま持上げて外せるようにされている。したがって、原反支持軸14(原反ロールF)の脱着が簡単に行えるようにされている。このような原反支持軸14に対してロール巻された被処理布帛Fの原反は、その芯管を原反支持軸14に嵌め合わせて支持されるようになっている。
【0026】
前記テンションロール15は、直径が小さい金属ロール15aの外周にゴム質材15bを巻付けて形成されたゴムローラにてなり、その両軸端部15′を前記左右両フレーム主体部13a,13bの内側で設置時プリンタから離れる位置にそれぞれ付設された垂直軸受ガイド部16にて、軸線が前記原反支持軸14と平行するようにして上下摺動自在な軸受部片16aを介して上下方向移動自在で回転自在に支持されている。そして、このテンションロール15は質量の異なるものを複数本用意され、取扱う被処理布帛Fの種類に応じて適応する質量のものを選択使用するようにされている。
【0027】
また、中間ガイドロール17は、金属製ロールで、両端部を左右両フレーム主体部13a,13bの上側にて前記垂直軸受ガイド部16位置よりも外側に位置するようにして設けられたブラケット17a上で、前記原反支持軸14およびテンションロール15と軸線が平行するようにして回転自在に支持されている。
【0028】
一方、布帛巻取り装置31は、前述の布帛供給装置11と構成がほぼ同様で、フレーム33の構成、駆動手段、プリント済み布帛の巻取り軸34、テンションロール35および中間ガイドロール37の各配置が前記布帛供給装置11とプリンタ1を挟んで線対称の配置になるように構成され、前記布帛供給装置11における原反支持軸14に変わり捺染済み布帛F′の巻取り軸34が位置するようにされている。したがって、符号が異なるが、それぞれの詳細な構造については、その説明を省略することとし、前記布帛供給装置11の説明における各部の符号12から19を32から39に置き換えて記載する。なお、駆動手段とそれに関連する部分は、これまた構成が同様であるので符号については、前記布帛供給装置11の説明のままとする。ただし、布帛巻取り装置31の駆動手段は「駆動手段20A」と記載する。
【0029】
このように構成される織布(布帛)の搬送装置10によって被処理布帛Fをインクジェットプリンタ1に供給して捺染(プリント)する手順は、次のとおりである。
【0030】
まず、被処理布帛Fは原反ロールFの状態で、前処理された布帛Fを準備して原反支持軸14上に支持させる。この際、その原反ロールFの芯管は前記原反支持軸14上に装着できる寸法のものとされる。この被処理布帛Fは、図1に示されるように、原反ロールFからテンションロール15を介して中間ガイドロール17を巡り、インクジェットプリンタ1の作画位置Pで作画テーブル3上を通り、巻取り側の中間ガイドロール37,テンションロール35を経て巻取り軸34上の芯管に巻き取られるように巡らせる。
【0031】
ここで捺染される被処理布帛Fの種類(繊維糸の材質,打込みなどの物性)に応じてテンションロール15,35の選択をする。例えば薄手の布帛であると、質量の小さいテンションロールを選択使用する。また厚手の布帛であれば質量の大きいテンションロールを選択する。このテンションロール15,35の選択によって搬送される布帛Fに対しての緊張力が適正であるように設定できる。
【0032】
インクジェットプリンタ1(以下、動作の説明上、単に「プリンタ1」という。)では、プリンタ1を起動して捺染しようとする図柄のデータを外部のコンピュータの操作でキャリッジ4の駆動部とインクヘッド2にデータを送信する。これに連動するようにして搬送装置10の両駆動手段20,20の減速機付きモータ21,21を同時に起動させる。被処理布帛Fは、この搬送装置10の駆動開始により、原反ロールFから所定の速度で繰り出される。搬送される被処理布帛Fは、作画テーブル3上でプリンタ1の搬送ローラ6と押えロール7とによって所定の速度で搬送される。原反支持軸14は、その搬送ローラ6による被処理布帛Fの搬送に同調して駆動される。そして、プリンタ1の搬送ローラ6による供給側での搬送力に対して原反支持軸14は同調して定常的に被処理布帛Fを繰り出すが、原反ロールF位置からプリンタ1の搬送ローラ6位置までの区間が長くなるので、この間での被処理布帛Fの緊張が保たれ難い。これを供給側での被処理布帛Fの移動経路中に設けられたテンションロール15によって、被処理布帛Fの緊張が維持されるようにするのであり、このテンションロール15は両垂直軸受ガイド16によって両軸端部15′をそれぞれ支持されてフリーの状態にあるので、垂直方向の姿勢を保って自身の質量を被処理布帛Fの全幅に付加して上下動しながら回転し、搬送供給される被処理布帛Fの緊張力が常時維持できる。したがって、原反ロールF(原反支持軸14)側での繰り出し量が多くなると自動的にテンションロール15が下降して張力を維持し、逆に繰り出し量が少ないと持上げられて自動調整される。
【0033】
こうして被処理布帛Fは、プリンタ1の搬送ローラ6による作画位置Pへの供給に際し、前述のようにして供給側での一定の緊張が保たれるので、作画位置Pへは被処理布帛Fを定常状態にして供給することができるのである。こうして供給される被処理布帛Fには、コンピュータの制御によるキャリッジ4の走査で、インクヘッド2からのインクの噴射によって順次作画されて作画テーブル3上を巻取り側に移行する。なお、インクヘッド2から噴射されたインク滴が布目を通過して裏面側に抜ける分は、作画テーブル3に設けられた受け溝5によって受止められて他を汚染することなく処理される。
【0034】
一方、プリント後の布帛(捺染済み布帛F′)は、巻取り側における巻取り軸34の同調駆動により中間ガイドロール37およびテンションロール35によって緊張力を維持されて巻取り軸34上の芯管に巻き取られる。ここで、その巻取り軸34は、巻取り側の駆動手段20Aにおいて、前記原反支持軸14の駆動速度より僅かに早くなるように駆動されるようにしている。そのために、作画された(プリントされた)布帛が作画位置Pから作画テーブル3上の下流側所要区間を水平移動区間Q(この区間を許容される範囲で長くする)として水平状態を保って巻取り側に移動させ、この水平移動するとき、プリンタ1の搬送ローラ6による搬送速度よりも僅かであるが早く移動させるようにすることで、作画位置P(インクヘッド2によるインク噴射位置)では緊張力がより強く作用することになり、作画後、作画テーブル3上を水平状態に保たれて移動する間に噴射されたインク滴がだれを起こさない状態を確保してその後に方向変換してもなお緊張力が維持され、後続する布帛の作画部分に緩みが発生しないようにされている。
【0035】
この巻取り側の布帛巻取り装置31においては、前記布帛供給装置11と同様に設けられているテンションロール35と中間ガイドロール37とによって巻取り軸34上に巻き取られる捺染済み布帛F′に所定の緊張力を付勢しながら巻き取られるようにされる。供給側に較べて捺染済み布帛F′では、インクの付着に伴う織布の収縮や水分の付加で布帛に外観的な変化が生じることがあるが、捺染済み布帛F′がその搬送中でねじれやしわを発生すると不良に成るのを予防して、正常に巻き取られるようにすることができるのである。
【0036】
この巻取り側でのテンションロール35は、搬送される捺染済み布帛F′の裏面側に当接させて前述の供給側におけるテンションロール15と同様に機能するので、捺染面を汚染することがなく、捺染済み布帛F′の緊張維持を忠実に行わせることができるのである。
【0037】
こうして巻取り軸34上に配した芯管に巻き取られた捺染済み布帛F′は、後処理工程に送られて、染着されているインク(染料または顔料)の定着処理が行われる。
【0038】
上述したように、本実施形態によれば、ごく簡単な構成の搬送装置を採用することにより、インクジェット法による布帛の捺染操作が確実に実施することができ、高品質の捺染加工された織布を得ることができ、取扱いも容易であるから生産性も高められ、布帛の搬送に伴う副資材や洗浄などの付随処理を必要としないのでコストダウンを図ることができるのである。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本実施形態のインクジェット法によるプリント被処理織布の搬送装置の概要図
【図2】搬送装置駆動要部を表わす図(a)とその図(a)におけるB視図(b)
【図3】図2のA−A視図
【図4】テンションロールの支持部を表わす正面図(a)および軸受部を表わす図(b)
【符号の説明】
【0040】
1 インクジェットプリンタ(プリンタ)
2 インクヘッド
3 作画テーブル
5 噴射済みインクの受け溝
6 搬送ローラ
10 布帛の搬送装置
11 布帛供給装置
13 フレーム
13a,13b,33a,33b フレーム主体部
14 原反支持軸
15,35 テンションロール
16,36 垂直軸受ガイド部
17,37 中間ガイドロール
20 供給側の駆動手段
20A 捺染済み布帛巻取り側の駆動手段
21 減速機付きモータ
22 駆動軸
25 継ぎ手
27,27′ 受け軸受
P 作画位置
Q 水平移動区間
F 被処理布帛
F′ 捺染済み布帛

【特許請求の範囲】
【請求項1】
織布をインクジェットプリンタによってプリントする方法において、被処理織布の原反ロールを支持する原反ロール軸とプリント済み織布の巻取り軸とをそれぞれ独立して駆動し、被処理織布を緊張させながら搬送して、作画位置への被処理織布供給側とプリント後の巻取り側とでそれぞれ上下動自在なテンションロールによって前記織布の移動に応じ緊張力が自動的に調整されるようにし、かつ巻取り側でプリンタの送り速度よりやや早くなるように巻取り軸を駆動することを特徴とするインクジェット法によるプリント方法。
【請求項2】
被処理織布の種類に応じて質量の異なるテンションロールを用いるようにする請求項1に記載のインクジェット法によるプリント方法。
【請求項3】
繊維生地用のインクジェットプリンタにおける織布の搬送装置であって、被処理織布を水平に送ってプリントする作画位置に対し、被処理織布供給側には、原反巻付けロールの駆動手段と原反巻付けロール位置から前記作画位置までの間で上下動自在に支持されて被処理織布に張力を付勢するテンションロールとが配置され、プリント済み織布巻取り側には、水平移動部と巻取り軸の駆動手段および前記作画位置から前記巻取り軸位置までの間で上下動自在に支持されてプリント済み織布に張力を付勢するテンションロールとが配置され、前記両駆動手段は各々単独で駆動するように構成されていることを特徴とするインクジェットプリンタにおける織布の搬送装置。
【請求項4】
前記テンションロールは、その両端軸部が支持フレームに設けられる垂直軸受ガイド部で上下動自在に支持されており、かつその垂直軸受ガイド部に対し着脱自在に配されている請求項3に記載のインクジェットプリンタにおける織布の搬送装置。
【請求項5】
巻取り側の前記テンションロールは、プリント済み織布の裏面側に接して張力を付勢するように配置されている請求項3または4に記載のインクジェットプリンタにおける織布の搬送装置。
【請求項6】
前記原反巻付けロールの支持軸および前記巻取り軸は、それぞれ駆動軸と継ぎ手によって着脱可能に直結されている請求項3に記載のインクジェットプリンタにおける織布の搬送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−46209(P2007−46209A)
【公開日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−233851(P2005−233851)
【出願日】平成17年8月12日(2005.8.12)
【出願人】(592253851)精和工業株式会社 (2)
【Fターム(参考)】