説明

インクジェット用インク、インクジェット記録方法及び記録装置

【課題】耐摩擦性に優れるとともに、高いグロスを有する画像を形成することが可能なインクジェット用インク、および、このようなインクジェット用インクを用いた記録方法、記録装置を提供すること。
【解決手段】インクジェット用インクは、自己分散型顔料と、第1樹脂を含む分散質bが分散した樹脂分散液Bと、第2樹脂を含む分散質dが分散した樹脂分散液Dと、水と、を含み、前記樹脂分散液Bは、前記分散質bの比重が1よりも小さく、かつ、前記分散質bの平均粒径が前記自己分散型顔料の平均粒径よりも大きく、前記樹脂分散液Dは、前記分散質dの比重が1よりも大きく、前記分散質dの平均粒径が前記自己分散型顔料の平均粒径よりも小さく、かつ、前記第2樹脂のガラス転移点が23℃以下であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット用インクインクジェット記録方法及び記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、インクの液滴を吐出させ、紙等の記録媒体に付着させて印刷を行う印刷方法、いわゆる、インクジェット記録方法が知られている。
このような記録方法で使用されるインクとしては、一般に各種の水溶性染料を水または水と水溶性有機溶剤とに溶解させたもの、顔料を水性媒体に分散させて得られたものが使用されている。水溶性染料を含むインクにより形成された画像は耐水性や耐光性に劣ることが一般に指摘されている。これに対して、顔料を水性媒体に分散させて得られたインク(顔料インク)は、耐水性や耐光性に優れるといった利点を有している。
【0003】
顔料インクとしては、カーボンブラックを界面活性剤や高分子分散剤で分散した水性顔料インクが提案されているが、これらのインクでは、記録物の印字濃度を上げる為に着色剤のインク含有量を増やすと、それに伴いインク粘度も急激に増加してしまう場合があった。またカーボンブラックをインク中に安定に分散させるためには過剰の界面活性剤または高分子分散剤が必要であり、起泡発生や消泡性低下を原因とする印字安定性の悪化を引き起こす場合があった。
【0004】
このような問題を解決するために、カーボンブラック表面に一定量以上の表面活性水素あるいはその塩を導入して、界面活性剤や高分子分散剤等の分散剤がなくてもカーボンブラック単独で水系溶媒に分散させることができる、自己分散型カーボンブラック分散液が開示されている(例えば、特許文献1、2参照)。また、カーボンブラック表面にスルホン酸基を導入する方法が開示されている(例えば、特許文献3参照)。さらに、上述の表面改質カーボンブラックとグリコールエーテル類を含むインクジェットインクが提案されている(例えば、特許文献4参照)。
【0005】
このような分散剤を必要としない、いわゆる自己分散型顔料は、着色剤としてインクに用いた場合、画像のOD値(Optical Density;光学濃度)が高くなる、またインク中の粘度を適正な範囲に合わせやすいため取扱いが容易である、分散剤と種々の添加溶媒との相溶性を考慮する必要がない、等の特徴により種々開発されている。その表面にはカルボニル基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、スルホン基、アンモニウム基等の親水性官能基が、直接あるいはアルキル基、アリール基等を介して間接に結合してなるアニオン型の表面改質された物が一般的である。
【0006】
しかしながら、このような自己分散型顔料を使用したインクジェット用インクでは、OD値が高いが、記録媒体へのインクの定着性(特に、インク中の顔料の定着性)が不十分で、耐摩擦性に劣るという問題があった。また、近年、インクジェット用インクによって専用紙等の記録媒体に形成される画像においては、光沢性(グロス)も要求されてきているが、従来のインクジェット用インクでは、十分な光沢性(グロス)を得ることができなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平8−3498号公報
【特許文献2】特開平10−120958号公報
【特許文献3】特開平10−110127号公報
【特許文献4】特開平10−95941号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、耐摩擦性に優れるとともに、高いグロスを有する画像を形成することが可能なインクジェット用インク、および、このようなインクジェット記録方法、記録装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このような目的は、下記の本発明により達成される。
本発明のインクジェット用インクは、自己分散型顔料と、
第1樹脂を含む分散質bが分散した樹脂分散液Bと、
第2樹脂を含む分散質dが分散した樹脂分散液Dと、
水と、を含み、
前記樹脂分散液Bは、分散質bの比重が1よりも小さく、かつ、前記分散質bの平均粒径が前記自己分散型顔料の平均粒径よりも大きく、
前記樹脂分散液Dは、分散質dの比重が1よりも大きく、分散質dの平均粒径が前記自己分散型顔料の平均粒径よりも小さく、かつ、
前記第2樹脂のガラス転移点が23℃以下であることを特徴とする。
これにより、耐摩擦性に優れるとともに、高いグロスを有する画像を形成することが可能なインクジェット用インクを提供することができる。
【0010】
本発明のインクジェット用インクでは、前記第1樹脂は、非晶性ポリオレフィンであることが好ましい。
これにより、形成する画像表面をより平滑にすることができ、より高いグロスを有する画像を形成することができる。
本発明のインクジェット用インクでは、前記非晶性ポリオレフィンは、マレイン酸変性ポリオレフィンオリゴマーおよびポリエチレングリコールアルキルエーテルを少なくとも含むことが好ましい。
これにより、形成する画像表面をより平滑にすることができ、より高いグロスを有する画像を形成することができる。
本発明のインクジェット用インクでは、前記第2樹脂は、アクリル樹脂であることが好ましい。
これにより、記録媒体内部へ第2樹脂をより効果的に浸透させることができ、アンカー効果がさらに顕著なものとなり、耐摩擦性に特に優れたものとなる。
【0011】
本発明のインクジェット用インクでは、両性イオン化合物を含むことが好ましい。
これにより、形成する画像表面をより平滑にすることができ、より高いグロスを有する画像を形成することができる。
本発明のインクジェット用インクでは、前記両性イオン化合物は、分子量100以上250以下のベタイン系化合物であることが好ましい。
これにより、形成する画像表面をより平滑にすることができ、より高いグロスを有する画像を形成することができる。
【0012】
本発明のインクジェット記録装置は、主面と前記主面とは反対側の面である裏面とを有する被記録媒体の前記主面に、本発明のインクジェット用インクを用いて記録を行う記録部と、
前記主面を下方に向けて前記被記録媒体を排出する排出部と、
前記排出部から排出中の前記被記録媒体の前記裏面を下方に向けて押圧し、当該被記録媒体を矯正する矯正ガイドと、
前記排出部から排出された前記被記録媒体の湾曲量を取得する湾曲量取得部と、
前記湾曲量取得部が取得した前記湾曲量に応じて、前記矯正ガイドの押圧力を制御する押圧制御部と、を備えてなることを特徴とする。
これにより、耐摩擦性に優れるとともに、高いグロスを有する画像を形成することが可能なインクジェット用インクを容易に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態に係るインクジェット記録装置の一部を概略的に示す斜視図である。
【図2】図1に示すインクジェット記録装置の側面図である。
【図3】本発明の実施形態に係るインクジェット記録装置を模式的に示す概略図である。
【図4】図2に示すインクジェット記録装置の一部を拡大して示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
《インクジェット用インク》
本発明のインクジェット用インクは、自己分散型顔料と、後述するような第1樹脂を含む分散質bが分散した樹脂分散液Bと、後述するような第2樹脂を含む分散質dが分散した樹脂分散液Dと、水と、を含むものであり、樹脂分散液Bは、分散質bの比重が1よりも小さく、かつ、前記分散質bの平均粒径が前記自己分散型顔料の平均粒径よりも大きく、樹脂分散液Dは、分散質dの比重が1よりも大きく、分散質dの平均粒径が前記自己分散型顔料の平均粒径よりも小さく、かつ、第2樹脂のガラス転移点が23℃以下であることを特徴とする。
このような特徴を有することにより、耐摩擦性に優れるとともに、高いグロスを有する画像を形成することが可能なインクジェット用インクを提供することができる。
【0015】
以下、各成分について詳細に説明する
[自己分散型顔料]
自己分散型顔料は、顔料の表面に−COOH、−CHO、−OH、−SOHおよびこれらの塩からなる群より選ばれる1種または2種以上等の官能基(分散性付与基)を有するように処理された顔料である。
このような自己分散型顔料は、分散剤を別途配合せずとも、水系インク組成物中で均一に分散し得るものである。なお、ここでいう「分散」とは、自己分散型顔料が分散剤なしに水中に安定に存在している状態をいい、分散している状態のもののみならず、溶解している状態のものも含むものとする。
【0016】
自己分散型顔料が配合されたインクジェット用インクは、自己分散型顔料以外の自己分散型ではない顔料および分散剤の配合された通常のインクと比べて、分散安定性が高く、また、インクの粘度が適度なものとなるので、顔料をより多く含有させることが可能となり、特に普通紙に対して発色性に優れた文字や図形等の画像を形成することができる。さらに、自己分散型顔料が配合されたインクは、印字品質の向上に有効な浸透剤(後述する)を配合しても流動性の低下を生じることがないので、該浸透剤を併用することにより印字品質も高められる。
【0017】
しかしながら、このような自己分散型顔料を使用したインクジェット用インクで形成された画像は、インク中に含まれる樹脂の量が従来のインクと比較して少ないため、耐擦過性、グロスに劣るという問題があった。これに対して、本発明を適用することにより、このような問題を解決することができる。
自己分散型顔料を形成し得る顔料としては、公知の無機顔料および有機顔料のいずれをも用いることができる。そのような顔料としては、例えば、カラーインデックスに記載されているピグメントイエロー、ピグメントレッド、ピグメントバイオレット、ピグメントブルー、ピグメントブラック等の顔料の他、フタロシアニン系、アゾ系、アントラキノン系、アゾメチン系、縮合環系等の顔料が例示できる。また、黄色4号、5号、205号、401号;橙色228号、405号;青色1号、404号等の有機顔料や、カーボンブラック、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化鉄、群青、紺青、酸化クローム等の無機顔料が挙げられる。
【0018】
顔料のカラーインデックスとしては、例えば、C.I.ピグメントイエロー1、2、3、4、5、6、7、10、11、12、13、14、16、17、24、34、35、37、53、55、65、73、74、75、81、83、93、94、95、97、98、99、108、109、110、113、114、117、120、124、128、129、133、138、139、147、151、153、154、167、172、180等、C.I.ピグメントレッド1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、14、15、16、17、18、19、21、22、23、30、31、32、37、38、40、41、42、48(Ca)、48(Mn)、57(Ca)、57:1、88、112、114、122、123、144、146、149、150、166、168、170、171、175、176、177、178、179、184、185、187、202、209、219、224、245、またはC.I.ピグメントバイオレット19、23、32、33、36、38、43、50等、C.I.ピグメントブルー1、2、3、15、15:1、15:2、15:3、15:4、15:6、15:34、16、18、22、25、60、65、66、C.I.バットブルー4、60等、C.I.ピグメントグリーン7、10、C.I.ピグメントブラウン3、5、25、26、C.I.ピグメントオレンジ2、5、7、13、14、15、16、24、34、36、38、40、43、63等、C.I.ピグメントブラック1,7等が挙げられる。
【0019】
このような自己分散型顔料を調製するには、真空プラズマ等の物理的処理や化学的処理により、官能基または官能基を含んだ分子を顔料の表面に配位、グラフト等の化学的結合をさせること等によって得ることができる。例えば、特開平8−3498号公報に記載の方法によって得ることができる。また、自己分散型顔料は、市販品を利用することも可能であり、好ましい例としては、オリエント化学工業(株)製の「マイクロジェットCW1」、「マイクロジェットCW2」、キャボット社製の「CAB−O−JET 200」、「CAB−O−JET 300」等が挙げられる。
【0020】
自己分散型顔料は、例えば、次のようにして調製される。
(自己分散型顔料の一調製方法例(顔料の表面酸化処理−スルホン化処理))
溶剤に顔料を添加し、これをハイスピードミキサー等で高速剪断分散するか、またはビーズミルやジェットミル等で衝撃分散してスラリー状の顔料分散液を得る。該顔料分散液をゆっくり攪拌しながら、硫黄を含む処理剤(スルファミン酸、発煙硫酸、硫酸、クロロ硫酸、フルオロ硫酸、アミド硫酸等)を添加し、該顔料分散液を60〜200℃に加熱処理して、前記顔料表面に前記分散性付与基を導入する。該顔料分散液から溶剤を除去した後、水洗、限外濾過、逆浸透、遠心分離、濾過等を繰り返して前記硫黄を含む処理剤を取り除いて、自己分散型顔料を得る。
【0021】
また、自己分散型顔料は、インクの保存安定性の向上や、ノズルの目詰まり防止の観点から、その平均粒径が10nm以上300nm以下であることが好ましく、40nm以上150nm以下であることがより好ましい。
自己分散型顔料の含有量は、十分なOD値が得られる点およびインク組成物の液安定性の点で、本実施形態Aのインク組成物中、2質量%以上15質量%以下であるのが好ましく、4質量%以上10質量%以下であるのがより好ましい。
【0022】
[樹脂分散液B]
樹脂分散液Bは、第1樹脂を含む分散質bが分散した分散液である。
なお、本発明において分散液としては、例えば、懸濁液(サスペンション)や乳化液(エマルション、乳濁液、乳状液)等が挙げられる。また、本明細書中において、「懸濁液」とは、液状の分散媒中に、固体(固形)の分散質(懸濁粒子)が分散した分散液(懸濁コロイドを含む)のことを指し、「乳化液(エマルション、乳濁液、乳状液)」とは、液状の分散媒中に、液状の分散質(分散粒子)が分散した分散液のことを指す。また、分散液中には、固体状の分散質と、液状の分散質とが併存していてもよい。このような場合、分散液中における分散質のうち、固体状の分散質の占める割合が液状の分散質の占める割合よりも大きいものを懸濁液といい、液状の分散質の占める割合が固体状の分散質の占める割合よりも大きいものを乳化液という。
【0023】
本発明で用いる樹脂分散液Bは、分散質bの比重が1よりも小さく、かつ、分散質bの平均粒径が上述した自己分散型顔料の平均粒径よりも大きいものである。これにより、分散質bを構成する第1樹脂を記録媒体表面付近に残存させることができる。このように表面に第1樹脂を存在させることにより、画像表面の凹凸を埋めることができ、画像表面の平滑性を優れたものとすることができる。その結果、形成した画像のグロスを特に優れたものとすることができる。
【0024】
なお、本発明において、分散質bの比重は、1より小さいものであるが、具体的には、0.9以上1未満であるのが好ましい。これにより、第1樹脂を記録媒体表面付近により効果的に残存させることができ、グロスをより高いものとすることができる。これに対して、樹脂分散液Bの比重が1以上であると、記録媒体表面に第1樹脂を十分に存在させることができず、グロスを十分に高いものとすることができない。
【0025】
また、本発明において、分散質bの平均粒径は、自己分散型顔料の平均粒径よりも大きいものであるが、具体的には、100nm以上500nm以下であるのが好ましい。これにより、第1樹脂を記録媒体表面付近により効果的に残存させることができ、グロスをより高いものとすることができる。これに対して、分散質bの平均粒径が、自己分散型顔料の平均粒径以下であると、記録媒体表面に第1樹脂を十分に存在させることができず、グロスを十分に高いものとすることができない。
【0026】
本発明で用いる第1樹脂としては、上記特性を有するものであれば、特に限定されないが、非晶性ポリオレフィンであるのが好ましい。これにより、形成する画像表面の平滑性をより高いものとすることができ、画像のグロスをさらに高いものとすることができる。特に、非晶性の樹脂を用いることにより、画像表面の平滑性を特に高いものとすることができる。
【0027】
非晶性ポリオレフィンの数平均分子量(Mn)は通常、600以上10,000以下であるのが好ましい。なお、数平均分子量(Mn)はゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定することで求めることができる。
また、非晶性オレフィンとしては、マレイン酸変性ポリオレフィンオリゴマーおよびポリエチレングリコールアルキルエーテルを少なくとも含むものを用いるのが好ましい。これにより、形成する画像表面の平滑性をさらに向上させることができ、特に優れたグロスを備えた画像を形成することができる。
【0028】
マレイン酸変性ポリオレフィンオリゴマーとは、ポリオレフィンオリゴマーにマレイン酸またはその誘導体をグラフト共重合したポリマーであり、具体的には、三井ハイワックス1105A、2203A、NPO555A(三井化学社製)やユーメックス1010(三洋化成社製)などが挙げられる。
マレイン酸変性ポリオレフィンオリゴマーの製造方法としては、例えば、ポリオレフィンオリゴマーを溶融またはヘキサンなどの溶媒にて溶解し、過酸化物をはじめとしたラジカル開始剤およびマレイン酸またはその誘導体を徐々に滴下することで得られる。
【0029】
使用するラジカル開始剤としては、特に限定されるものではないが、例えばジ−tert−ブチルパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ベンゾイルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシベンゾエイト、クメンハイドロパーオキサイド等の有機過酸化物、アゾビスイソブチロニトリル、4,4’−アゾビス(4−シアノペンタ酸)、2,2’−アゾビス(2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオアミド)等のアゾ化合物が挙げられる。これらは、単独或いは2種以上併用して用いることができる。
また、さらに、ラジカルを発生させて反応を行う場合のラジカル発生方法は、例えば、光重合開始剤の存在下に光を照射する方法、または有機過酸化物を添加する方法等、公知の方法を使用することができる。
【0030】
光重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン、ジアセチル、ベンジル、ベンゾイン、2−メチルベンゾイン、ω−ブロモアセトフェノン、クロロアセトン、アセトフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、2−クロロベンゾフェノン、p−ジメチルアミノプロピオフェノン、p−ジメチルアミノアセトフェノン、p,p’−ビスジエチルアミノベンゾフェノン、3,3’−4,4’−テトラ−ベンゾフェノン、ミヒラーケトン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾイン−n−ブチルエーテル、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキシド、ベンジルジメチルケタール、メチルベンゾイルホルメート等のカルボニル類、ジフェニルジスルフィド、ジベンジルジスルフィド、テトラメチルチウラムモノスルフィド等のスルフィド類、ベンゾキノン、アントラキノン、クロロアントラキノン、エチルアントラキノン、ブチルアントラキノン等のキノン類、チオキサントン、2−メチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン等のチオキサントン類等が挙げられるが、これらは単独或いは2種以上併用して用いても良い。又、これらの光重合開始剤には、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール、ピリジン、キノリン、トリメチルベンジルアンモニウムクロライド等のアミン類、トリフェニルホスフェイン等のアルキルホスフィン類、β−チオジグリコール等のチオールエーテル類等を併用して用いてもよい。
【0031】
上記光重合開始剤の使用量は、付加マレイン酸に対して10質量%以上50質量%以下であるのが好ましく、20質量%以上40質量%以下であるのがより好ましい。
また、これらの反応開始剤およびマレイン酸またはその誘導体はなるべく時間をかけ、これを少量ずつ添加することが好ましい。これらの使用する量にもよるが、一般に有機過酸化物を一括で添加するような場合は反応液が比較的ゲル化を起こしやすくなるため、少量ずつ時間をかけて、または多回数に分けて少量ずつ添加していくようにすることが好ましい。
マレイン酸変性ポリオレフィンオリゴマーにおけるマレイン酸含有量としては好ましくは0.5〜5質量%である。
【0032】
ポリエチレングリコールアルキルエーテルとは、炭素原子数12〜22のアルキル基を有し、オキシエチレン基の繰り返し単位数が4〜50,000の化合物であり、オキシプロピレン基などのオキシアルキレン基との共重合物も含まれる。このような化合物としては、例えば、ポリオキシエチレンドデシルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、オクタエチレングリコールモノ−n−ドデシルエーテルなどが挙げられる。
【0033】
本発明におけるHLBとは、界面活性剤の効果を表す親水親油バランスのことをいい、例えばグリフィンの式:HLB=20×(親水基の基数)またはデイビスの式:HLB=7+Σ(親水基の基数)−Σ(疎水基の基数)から求められる。
ポリオキシエチレンアルキルエーテルの好ましいHLBとしては、8以上であり、より好ましくは12以上18以下である。具体的には、エマルゲン120P、エマルゲン320P、エマルゲン420、エマルゲン1108、エマルゲン2020G−HA、エマルゲンLS110(花王社製)、ノイゲンXL−80(第一工業製薬社製)等が挙げられる。
【0034】
樹脂分散液Bの製造方法は、例えば、上記マレイン酸変性ポリオレフィンオリゴマーおよびポリエチレングリコールアルキルエーテルを溶融混合する溶融工程および乳化分散させて水分散粒子を製造する乳化工程からなる。
上記溶融工程は、マレイン酸変性ポリオレフィンオリゴマーおよびポリエチレングリコールアルキルエーテルの混合物を混合物の融点より高い温度にて溶融して均一混合するする工程であり、より具体的には80℃以上200℃以下にて10分以上攪拌することが好ましい。また、上記混合物の融点以下で溶融混合する際には、有機溶剤を使用してもよい。
【0035】
有機溶剤の具体例としては、キシレン、トルエン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン等の脂肪族炭化水素、シクロヘキサン、シクロヘキセン、メチルシクロヘキサン等の脂環式炭化水素、酢酸エチル、n−酢酸ブチル、セロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、3−メトキシブチルアセテート等のエステル系、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒等が挙げられる。
【0036】
また、上記乳化工程は、機械せん断力により物理的に乳化分散する方法のことであり、具体的には、マレイン酸変性ポリオレフィンオリゴマーおよびポリエチレングリコールアルキルエーテルの混合物を溶剤に溶解後高圧ホモジナイザー、高圧ホモミキサー等により乳化後溶剤を除去する方法、マレイン酸変性ポリオレフィンオリゴマーおよびポリエチレングリコールアルキルエーテルの混合物を溶融状態にして高圧ホモジナイザー、高圧ホモミキサー、押出混練機により乳化する方法、α−オレフィンおよび(メタ)アクリル酸の共重合体およびカリウム、ナトリウム、アンモニウムなどのアルカリ物質をオートクレーブ中で乳化する方法、その他機械的に粉砕する方法、高圧で噴射粉砕する方法、細孔より噴霧させる方法などが挙げられる。
【0037】
[樹脂分散液D]
樹脂分散液Dは、第2樹脂を含む分散質bが分散した分散液である。
本発明で用いる樹脂分散液Dは、分散質dの比重が1よりも大きく、かつ、分散質dの平均粒径が上述した自己分散型顔料の平均粒径よりも小さいものである。これにより、分散質dは、インクの着弾後に記録媒体内へ顔料よりも深く浸透する。このため、分散質dを構成する第2樹脂が記録媒体内部に存在することとなり、この第2樹脂のアンカー効果により、形成される画像の耐摩擦性を優れたものとすることができる。
【0038】
また、本発明において、分散質dを構成する第2樹脂として、そのガラス転移点が23℃以下のものを用いる。このような第2樹脂を用いることにより、記録媒体内部へ浸透させやすくなり、形成された画像は、耐摩擦性が特に高いものとなる。
なお、本発明において、分散質dの比重は、1より大きいものであるが、具体的には、1よりも大きく1.3以下であるのが好ましい。これにより、分散質d(第2樹脂)を記録媒体内部により効果的に浸透させることができ、これによるアンカー効果をより顕著なものとすることができる。この結果、耐摩擦性を特に優れたものとすることができる。これに対して、分散質dの比重が1以下であると、記録媒体内部に第2樹脂を十分に親等させることができず、耐摩擦性を十分に高いものとすることができない。
【0039】
また、本発明において、分散質dの平均粒径は、自己分散型顔料の平均粒径よりも小さいものであるが、具体的には、20nm以上120nm以下であるのが好ましい。これにより、第2樹脂を記録媒体内部により効果的に浸透させることができ、耐摩擦性をより高いものとすることができる。これに対して、分散質dの平均粒径が、自己分散型顔料の平均粒径以上であると、記録媒体な内部に第2樹脂を十分に浸透させることができず、耐摩擦性を十分に高いものとすることができない。
【0040】
また、本発明において、分散質dを構成する第2樹脂のガラス転移点は、23℃以下であるが、−80℃以上15℃以下であるのがより好ましい。これにより、本発明の効果をより顕著なものとすることができる。これに対して、分散質dを構成する第2樹脂のガラス転移点が前記下限値未満であると、優れた耐摩擦性を得ることができない。
なお、ガラス転移点は、通常の方法、例えば、示差走査熱量計(DSC)等の熱分析装置を用いて測定できる。熱分析装置としては、例えば、セイコー電子社製SSC5000が挙げられる。また、ガラス転移点は、樹脂が共重合体の場合、ガラス転移点計算値として評価することができる。共重合体のガラス転移点およびその評価の方法論は以下の通りである。特定の単量体組成を有する共重合体のガラス転移点は、フォックス(Fox)の式により計算より求めることができる。ここで、フォックスの式とは、共重合体を形成する個々の単量体について、その単量体の単独重合体のTgに基づいて、共重合体のTgを算出するためのものであり、その詳細は、ブルテン・オブ・ザ・アメリカン・フィジカル・ソサエティー,シリーズ2(Bulletin of the American Physical Society,Series 2)1巻・3号・123頁(1956年)に記載されている。本発明の明細書において用いる「ガラス転移点計算値」なる語の概念には、フォックス(Fox)の式により計算したガラス転移点をも包含する。フォックス(Fox)の式による共重合体のTgを計算するための基礎となる各種モノマーについての単独重合体のTgは、例えば、高分子データ・ハンドブック基礎編(高分子学会編)525〜546頁に記載されている数値または通常の方法で測定した実測値を採用することができる。
【0041】
第2樹脂としては、上記特性を有するものであれば、特に限定されず、例えば、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリオレフィン樹脂等が挙げられ、1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。上述した中でも特に、アクリル樹脂を用いるのが好ましい。これにより、画像の発色性を向上させることができるとともに、記録媒体内部へ第2樹脂をより効果的に浸透させることができ、アンカー効果がさらに顕著なものとなり、耐摩擦性に特に優れたものとなる。
【0042】
樹脂分散液Dは、公知の乳化重合法により得ることができる。例えば、不飽和単量体(不飽和ビニルモノマー等)を重合開始剤、および面活性剤を存在させた水中において乳化重合することによって得ることができる。
不飽和単量体としては、一般に乳化重合で使用されるアクリル酸エステル単量体類、メタクリル酸エステル単量体類、芳香族ビニル単量体類、ビニルエステル単量体類、ビニルシアン化合物単量体類、ハロゲン化単量体類、オレフィン単量体類、ジエン単量体類等が挙げられる。さらに、具体例としては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、n−アミルアクリレート、イソアミルアクリレート、n−ヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、オクチルアクリレート、デシルアクリレート、ドデシルアクリレート、オクタデシルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、フェニルアクリレート、ベンジルアクリレート、グリシジルアクリレート等のアクリル酸エステル類、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、n−アミルメタクリレート、イソアミルメタクリレート、n−ヘキシルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、オクチルメタクリレート、デシルメタクリレート、ドデシルメタクリレート、オクタデシルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、フェニルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、グリシジルメタクリレート等のメタクリル酸エステル類、および酢酸ビニル等のビニルエステル類;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のビニルシアン化合物類;塩化ビニリデン、塩化ビニル等のハロゲン化単量体類;スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、4−t−ブチルスチレン、クロルスチレン、ビニルアニソール、ビニルナフタレン等の芳香族ビニル単量体類;エチレン、プロピレン等のオレフィン類;ブタジエン、クロロプレン等のジエン類;ビニルエーテル、ビニルケトン、ビニルピロリドン等のビニル単量体類;アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、フマール酸、マレイン酸等の不飽和カルボン酸類;アクリルアミド、メタクリルアミド、N,N’−ジメチルアクリルアミド等のアクリルアミド類;2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート等の水酸基含有単量体類等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上混合して使用することができる。
【0043】
また、重合可能な二重結合を二つ以上有する架橋性単量体も使用することができる。重合可能な二重結合を二つ以上有する架橋性単量体の例としては、ポリエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、1,3−ブチレングリコールジアクリレート、1,4−ブチレングリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、1,9−ノナンジオールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、2,2’−ビス(4−アクリロキシプロピロキシフェニル)プロパン、2,2’−ビス(4−アクリロキシジエトキシフェニル)プロパン等のジアクリレート化合物、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、テトラメチロールメタントリアクリレート等のトリアクリレート化合物、ジトリメチロールテトラアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート等のテトラアクリレート化合物、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等のヘキサアクリレート化合物、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブチレングリコールジメタクリレート、1,4−ブチレングリコールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ジプロピレングリコールジメタクリレート、ポリプロピレングリコールジメタクリレート、ポリブチレングリコールジメタクリレート、2,2’−ビス(4−メタクリロキシジエトキシフェニル)プロパン等のジメタクリレート化合物、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールエタントリメタクリレート等のトリメタクリレート化合物、メチレンビスアクリルアミド、ジビニルベンゼン等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上混合して使用することができる。
また、乳化重合の際に使用される重合開始剤およぎ界面活性剤の他に、連鎖移動剤、さらには中和剤等も常法に準じて使用してよい。特に中和剤としては、アンモニア、無機アルカリの水酸化物、例えば、水酸化ナトリウムや水酸化カリウム等が好ましい。
【0044】
樹脂分散液Dは、例えば、以下のようにして製造することができる。
滴下装置、温度計、水冷式還流コンデンサーおよび攪拌機を備えた反応容器に、イオン交換水100部を入れ、窒素雰囲気下、温度70℃で攪拌しながら、重合開始剤0.2部を添加する。これに、別途調製したモノマー溶液を滴下し重合反応させて、1次物質を調製する。その後、温度70℃で、該1次物質に、重合開始剤の10%水溶液2部を添加して攪拌し、更に別途調製した反応液を添加し攪拌して重合反応させ、重合反応物を得る。該重合反応物を、中和剤で中和してpHが8〜8.5になるように調整した後、0.3μmのフィルターでろ過し粗大粒子を除去して、分散質dが分散した樹脂分散液Dを得る。
【0045】
重合開始剤としては、通常のラジカル重合に用いられるものと同様のものが用いられ、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化水素、アゾビスイソブチロニトリル、過酸化ベンゾイル、過酸化ジブチル、過酢酸、クメンヒドロパーオキシド、t−ブチルヒドロキシパーオキシド、パラメンタンヒドロキシパーオキシド等が挙げられる。特に、前述の如く、重合反応を水中で行う場合には、水溶性の重合開始剤が好ましい。
【0046】
また、重合反応で用いられる乳化剤としては、例えば、ラウリル硫酸ナトリウムの他、一般にアニオン界面活性剤、非イオン界面活性剤または両性界面活性剤として用いられているもの等が挙げられる。
また、重合反応で用いられる連鎖移動剤としては、例えば、t−ドデシルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、キサントゲン類であるジメチルキサントゲンジスルフィド、ジイソブチルキサントゲンジスルフィド、ジペンテン、インデン、1,4−シクロヘキサジエン、ジヒドロフラン、キサンテン等が挙げられる。
【0047】
[水]
本発明のインクジェット用インクは、自己分散型顔料の分散媒として水を含んでいる。本発明において、水は主溶媒であり、イオン交換水、限外濾過水、逆浸透水、蒸留水等の純水または超純水を用いることが好ましい。特に紫外線照射または過酸化水素添加等により滅菌処理した水を用いることが、カビやバクテリアの発生を防止して顔料インクの長期保存を可能にする点で好ましい。
水の含有量は、10質量%以上60質量%以下であるのが好ましい。これにより、インクジェット用インクの分散安定性をより優れたものとすることができるとともに、耐摩擦性、グロスに優れた画像を形成することができる。
【0048】
[両性イオン化合物]
また、本発明のインクジェット用インクは、両性イオン化合物が含まれていてもよい。このような化合物を含むことにより、分散質dが記録媒体内部へ浸透するのをさらに向上させることができ、形成する画像の耐摩擦性をさらに向上させることができる。また、さらに、記録媒体表面における第1樹脂の造膜性を向上させることができ、形成される画像のグロスをさらに高いものとすることができる。
【0049】
両性イオン化合物としては、特に限定されず、例えば、ベタイン系化合物、アミノ酸およびその誘導体が挙げられる。より具体的にはベタイン系化合物として、グリシンベタイン(分子量117、「トリメチルグリシン」ともいう。)、γ−プチロベタイン(同145)、ホマリン(同137)、トリゴネリン(同137)、カルニチン(同161)、ホモセリンベタイン(同161)、バリンベタイン(同159)、リジンベタイン(同188)、オルニチンベタイン(同176)、アラニンベタイン(同117)、スタキドリン(同185)およびグルタミン酸ベタイン(同189)等のアミノ酸のN−トリアルキル置換体が挙げられる。また、アミノ酸として、グリシン(分子量75)、アラニン(同89)、セリン(同105)、トレオニン(同119)、バリン(同117)、メチオニン(同149)、システイン(同121)、プロリン(同115)、リシン(同146)、ヒスチジン(同155)、アルギニン(同174)やそれらの誘導体が挙げられる。これらの中では、印刷後の被記録媒体の膨張速度をより確実に遅くする観点、およびインク吐出ノズルの目詰まりを防止する観点から、ベタイン系化合物が好ましく、トリメチルグリシンがより好ましい。両性イオン化合物は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いられ、常法により合成してもよく、市販品を入手してもよい。市販品としては、例えば、トリメチルグリシンとして、アミノコート(旭化成ケミカルズ社製)を使用することもできる。
【0050】
また、両性イオン化合物の分子量は、100以上250以下であるのが好ましい。これにより、記録媒体表面における第1樹脂の造膜性をより好適なものとすることができ、形成する画像表面をより平滑にすることができ、より高いグロスを有する画像を形成することができる。また、分散質dが記録媒体内部へ浸透するのをさらに向上させることができ、形成する画像の耐摩擦性をさらに向上させることができる。
インクジェット用インクは、その全量に対して、両性イオン化合物を10質量%以上40質量%以下含有しているのが好ましく、10質量%以上25質量%以下含有しているのがより好ましい。これにより、優れた耐摩擦性および高いグロスを有する画像を効率よく形成することができる。
【0051】
[アセチレングリコール]
インクジェット用インクは、アセチレングリコールを含んでいてもよい。アセチレングリコールは、アセチレン基を中央に持ち、左右対称の構造をした非イオン系界面活性剤で、泡立ちにくい濡れ剤として各方面の水系材料に応用されている。アセチレングリコールは、濡れ、消泡、および分散といった機能に優れている。分子構造としても非常に安定したグリコールで、分子量も小さく、水の表面張力を下げる効果があるため、インクの被記録媒体への浸透性や滲みを適度に制御できる。
【0052】
アセチレングリコールの具体例としては、2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール、3,6−ジメチル−4−オクチン−3,6−ジオール、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オールなどが挙げられる。
アセチレングリコールの市販品としては、例えば、サーフィノール104(シリーズ)、420、440、465、485(以上、エアープロダクツ社(Air Products and Chemicals.Inc.)商品名)、オルフィン STG、PD−001、SPC、E1004、E1010(日信化学工業社(以上、Nissin Chemical Industry Co.,Ltd.)製商品名)、アセチレノールE00、E40、E100、LH(以上、川研ファインケミカル社(Kawaken Fine Chemicals Co.,Ltd.)製商品名)等が挙げられる。
アセチレングリコールは、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
アセチレングリコールの含有量は、0.1質量%以上3.0質量%以下であるのが好ましく、0.3質量%以上2.0質量%以下であるのがより好ましい。
【0053】
[湿潤剤]
インクジェット用インクは、湿潤剤を含んでいてもよい。これにより、インクジェットヘッドのノズル近傍での目詰まりを効果的に防止することができる。
湿潤剤として、例えば、グリセリン、1,2,6−ヘキサントリオール、トリメチロールプロパン、ペンタメチレングリコール、トリメチレングリコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ペンタエチレングリコール、数平均分子量2000以下のポリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、イソブチレングリコール、2−ブテン−1,4−ジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、メソエリスリトール、ペンタエリスリトール等の多価アルコール類、並びにグルコース、マンノース、フルクトース、リボース、キシロース、アラビノース、ガラクトース、アルドン酸、グルシトール(ソルビット)、マルトース、セロビオース、ラクトース、スクロース、トレハロース、およびマルトトリオース等の糖類、糖アルコール類、ヒアルロン酸類、および尿素類等のいわゆる固体湿潤剤、並びにエタノール、メタノール、ブタノール、プロパノール、およびイソプロパノール等の炭素数1〜4のアルキルアルコール類、並びに2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、ホルムアミド、アセトアミド、ジメチルスルホキシド、ソルビット、ソルビタン、アセチン、ジアセチン、トリアセチン、およびスルホラン等が挙げられる。
湿潤剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
湿潤剤の含有量は、10質量%以上50質量%以下であるのが好ましい。
【0054】
[酸化防止剤]
インクジェット用インクは、酸化防止剤を含んでいてもよい。
酸化防止剤(紫外線吸収剤)としては、例えば、アロハネート、メチルアロハネートなどのアロハネート類、ビウレット、ジメチルビウレット、テトラメチルビウレットなどのビウレット類など、L−アスコルビン酸およびその塩、並びにランタニドの酸化物などが挙げられる。これらの市販品としては、例えば、チバガイギー社製のTinuvin328、900、1130、384、292、123、144、622、770、292、Irgacor252、153、Irganox1010、1076、1035、MD1024などが用いられる。
酸化防止剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
酸化防止剤の含有量は、0.5質量%以下であるのが好ましい。
【0055】
[防腐剤・防黴剤]
インクジェット用インクは、防腐剤・防黴剤を含んでいてもよい。
防腐剤・防黴剤としては、例えば、安息香酸ナトリウム、ペンタクロロフェノールナトリウム、2−ピリジンチオール−1−オキサイドナトリウム、ソルビン酸ナトリウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、1,2−ジベンジソチアゾリン−3−オン、ジクロロフェン、ヘキサクロロフェン、p−ヒドロキシ安息香酸エステル、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、デヒドロ酢酸ナトリウム、3,4−イソチアゾリン−3−オン、および4,4−ジメチルオキサゾリジンが挙げられる。これらの市販品としては、例えば、プロキセルCRL、プロキセルBDN、プロキセルGXL、プロキセルXL−2(1,2−ベンチアゾリン−3−オン)、プロキセルTN(いずれもAvecia社製商品名)等が挙げられる。
防腐剤・防黴剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
防腐剤・防黴剤の含有量は、0.5質量%以下であるのが好ましい。
【0056】
[浸透促進剤]
インクジェット用インクは、浸透促進剤を含んでいてもよい。
このような浸透促進剤としては、多価アルコールのアルキルエーテル(グリコールエーテル類ともいう)および1,2−アルキルジオールのうち少なくともいずれかが好ましく用いられる。多価アルコールのアルキルエーテルとしては、例えばエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、1−メチル−1−メトキシブタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノイソプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、およびジプロピレングリコールモノブチルエーテル等が挙げられる。1,2−アルキルジオールとしては、例えば1,2−ペンタンジオール、および1,2−ヘキサンジオールなどが挙げられる。これらの他に、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、および1,8−オクタンジオール等の直鎖炭化水素のジオール類を挙げることができる。
浸透促進剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
浸透促進剤の含有量は、3質量%以上20質量%以下であるのが好ましい。
上述したような本発明のインクジェット用インクは、例えば、自己分散型顔料が分散した分散液と、上述したような第1樹脂を含む分散質bが分散した樹脂分散液Bと、上述したような第2樹脂を含む分散質dが分散した樹脂分散液Dと、水と、を混合することにより、得ることができる。
【0057】
《インクジェット記録装置》
次に、本発明のインクジェット用インクが好適に適用されるインクジェット記録装置について説明する。
図1〜図4に示すように、本実施形態に係るインクジェット記録装置100は、インクジェット記録装置100の筐体102内に配設され、インク組成物を用いて被記録媒体101の主面に記録を行う記録部としてのインクジェットヘッドユニット190と、主面を下方に向けて被記録媒体101を筐体102から外部に排出する排出部150と、排出部150から排出された被記録媒体101の裏面を下方に向けて押圧して被記録媒体101を矯正し且つ被記録媒体101をガイドする矯正ガイド301と、矯正ガイド301を被記録媒体101の排出方向と垂直な方向であって鉛直方向に垂直な方向である幅方向(以下、単に「幅方向」と記す)に移動させる幅方向移動部350と、排出部150から排出された被記録媒体101を載置する排出トレイ106と、ユーザインターフェイス400と、各種制御を行う制御部111と、給送される被記録媒体101の位置検出をする位置検出センサ109と、を備えて構成されている。
【0058】
インクジェットヘッドユニット190は、紙等の被記録媒体101に、インクの液滴(以下、「インク滴」ともいう)を吐出し画像を記録するものであり、インクの種類に対応した複数のインクジェットヘッド110及びそれらを搭載するキャリッジ(図示せず)を備え、各インクジェットヘッド110は、被記録媒体101の幅方向に亘って全幅に対応する多数のインク吐出ノズルが各々配列されている、所謂ラインヘッドで構成されている。但し、本発明では、インクジェットヘッド110はラインヘッドに限定されず、シリアル−ヘッドであってもよい。
【0059】
インクジェットヘッドユニット190の下方には、記録前の被記録媒体101を収納する収納カセット104と、収納カセット104から被記録媒体101を給送する給送ローラ105と、被記録媒体101を搬送するための一対の搬送ローラ(ゲートローラ)140と、被記録媒体101を搬送する搬送ベルト130が順に配設されている。また、搬送ベルト130の下方には、搬送ベルト130の開口部(図示せず)を介して被記録媒体101を減圧吸引する減圧吸引部210が配設されている。
【0060】
給送ローラ105は、収納カセット104内部の被記録媒体101を搬送ローラ140−送り出すためのローラであり、制御部111により駆動制御されるモータ118により駆動される。
搬送ローラ140は、制御部111により駆動制御されるモータ116により駆動するローラユニットとしての駆動ローラ140Aと、駆動ローラ140Aに接触することにより従動する従動ローラ140Bとを備えている。
【0061】
搬送ベルト130は、環状に配設されており、被記録媒体101をインクジェットヘッドユニット190(記録領域)まで搬送する。この搬送ベルト130は、搬送ベルト130を駆動する駆動ローラ180と、搬送ベルト130をインクジェットヘッドユニット190の吐出口に対向させながら従動する従動ローラ170に掛け渡されており、これらのローラによって循環(移動)するようになっている。なお、駆動ローラ180は、制御部111により駆動制御されるモータ115により駆動される。但し、本発明においては、被記録媒体101の搬送に搬送ベルト130を用いなくてもよく、所謂ローラ搬送方式であってもよい。
減圧吸引部210は、吸引ファン210Aと、それを包囲する置体210Bとで構成されている。吸引ファン210Aは、制御部111により駆動制御されるモータ211により駆動し、搬送ベルト130上の被記録媒体101を減圧吸引する。
【0062】
排出部150は、インクジェットヘッドユニット190の下流側に配設されており、被記録媒体101を排出するための一対の排出ローラ151、152及び154と、排出ローラ151及び152間並びに排出ローラ152及び154間で被記録媒体101を搬送するための搬送路156と、を備えている。排出ローラ151は、制御部111により駆動制御されるモータ117により駆動される駆動ローラ151Aと、駆動ローラ151Aに接触することにより従動する従動ローラ151Bから構成されている。また、排出ローラ152は、制御部111により駆動制御されるモータ153により駆動される駆動ローラ152Aと、駆動ローラ152Aに接触することにより従動する従動ローラ152Bから構成されている。また、排出ローラ154は、制御部111により駆動制御されるモータ155により駆動される駆動ローラ154Aと、駆動ローラ154Aに接触することにより従動する従動ローラ154Bから構成されている。そして、排出ローラ154は、筐体102の内部と外部との境界となる位置に配設されており、この位置が被記録媒体101の排出口となっている。
【0063】
矯正ガイド301は、筐体102の被記録媒体101が排出される側の外壁の幅方向両側且つ駆動ローラ154Aの上方に、後に詳述する幅方向移動部350を介して、各々取り付けられており、排出部150から排出された被記録媒体101の裏面を下方に向けて押圧することで被記録媒体101を矯正すると共に、被記録媒体101の進路を排出トレイ106に向けてガイドするものである。この各々の矯正ガイド301は、幅方向移動部350に移動可能に取付けられた板状の支持部301Aと、支持部301Aの下端に配設された角度調整機構302を介して接続され、被記録媒体101の搬送方向前方の斜め下方に向けて傾斜する傾斜部301Bとを、各々備えている。
【0064】
角度調整機構302は、互いに噛み合う一対の歯車(図示せず)と、制御部111により駆動制御され、この一対の歯車のうち一方の歯車を駆動させるモータ305とを備えている。
傾斜部301Bは、モータ305によって一方の歯車を駆動させることで変更される一対の歯車の噛み合わせ位置に応じて、支持部301Aとの傾斜角度αが変更されるようになっている。この傾斜部301Bは、支持部301Aとの傾斜角度αによって、被記録媒体101を押圧する押圧力を調整することが可能となっている。
【0065】
筐体102の被記録媒体101が排出される側の外壁に配設された矯正ガイド301と矯正ガイド301との間には、媒体押さえ部303が配設されている。この媒体押さえ部303は、筐体102の外壁から搬送方向前方に延びる板状の部材であり、その下方に搬送される被記録媒体101の厚み方向から見た形状は、搬送方向前方の先端に向かうにつれて先細りとなっている。また、媒体押さえ部303の先端付近には、垂下する板状の部分が設けられており、その板状の部分は更に先端に向かうにつれて下方に広がる三角形状を有している。但し、媒体押さえ部303の形状は、その機能を果たすのに適した形状であれば特に限定されない。即ち、媒体押さえ部303は、被記録媒体101の幅方向両端が多少上方に湾曲して浮き上がっていても、排出トレイ106と共に、積層した複数の被記録媒体101を挟み込むことができ、それにより被記録媒体101の積層状態を整えるものであればよい。
【0066】
幅方向移動部350は、筐体102の外壁の幅方向に長く配設されたラック351と、ラック351に噛み合って幅方向に移動するピニオン352と、制御部111により駆動制御され、ピニオン352を駆動させるモータ353と、を備えている。ピニオン352には、矯正ガイド301の支持部301Aが取付けられており、ピニオン352が幅方向に移動することにより、矯正ガイド301が筐体102の幅方向に移動するようになっている。
【0067】
ユーザインターフェイス400は、制御部111に接続されており、予め登録された複数の被記録媒体の種類とサイズの中から各々一つを選択することをユーザに要求する選択画面を表示すると共に、表示された内容からユーザが所望条件を入力可能な入力部と、入力部に入力された情報を制御部111に出力する出力部を備えている。
制御部111は、記録処理や矯正ガイド301による被記録媒体101の矯正処理等の各種処理を実行するCPU(CentralProcessingUnit)、ホストコンピュータ等からインタフェイスを介して入力される記録データや、ユーザインターフェイス400に入力されたデータ等の各種データをデータ格納領域に格納する、あるいは各種データを一時的に格納するRAM(RandomAccessMemory)、各部を制御する制御プログラム等を格納するPROM(ProgrammableRead−OnlyMemory)、EEPROM(ElectricallyErasableProgrammableRead−OnlyMemory)等を備えている。
【0068】
さらに制御部111は、ユーザがユーザインターフェイス400で選択した被記録媒体101の種類及びサイズ、ホストコンピュータから入手した記録データから算出されるインクの吐出量及び吐出位置、予めRAMに格納されている記録インクデータ、図示しない温度センサが検出した温度から、被記録媒体101の幅方向で最も湾曲する位置を推定し、その位置を取得する湾曲位置取得部と、排出部150から排出された被記録媒体101の湾曲量を取得する湾曲量取得部と、この湾曲量取得部が取得した湾曲量に応じて、矯正ガイド301の押圧力を制御する押圧制御部を備えており、これらを制御する制御プログラムは、PROMまたはEEPROMに格納されている。この制御部111は、被記録媒体101の湾曲量と、被記録媒体101の湾曲(排紙カール)を適切に矯正するために必要な矯正ガイド301の押圧力との関係を示すマップデータを有している。
【0069】
なお、本実施形態の場合、この押圧力は、矯正ガイド301の傾斜部301Bの支持部301Aに対する傾斜角度α(図4参照)に応じて調整される。即ち、傾斜角度αが大きくなると、傾斜部301Bの下端が下がり、被記録媒体101に対する押圧力が強くなり、傾斜角度αが小さくなると、傾斜部301Bの下端が上がり、被記録媒体101に対する押圧力が弱くなるため、被記録媒体101の矯正に必要な押圧力と、この押圧力を付与するために必要な傾斜角度α との関係を予め取得しておくことで、傾斜角度αを調整することにより、最適な矯正を行うことができる。
【0070】
位置検出センサ109は、例えば発光素子の赤外発光ダイオードと受光素子のフォトトランジスタを組み合わせた反射型フォトセンサを用いている。位置検出センサ109は、給送ローラ105と搬送ローラ140との間の用紙搬送部に配置され、搬送される被記録媒体101の先端位置(被記録媒体101の有無)を検出し、その検出信号は制御部111に入力される。制御部111では、被記録媒体101の先端位置の検出信号に基づいて搬送ローラ140の駆動制御処理が行われる。
なお、インクジェット記録装置100には、内部温度を検出する図示しない温度センサが配設されており、制御部111は、この温度センサで検出された温度をモニタするようになっている。
【0071】
以上、本発明について、好適な実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。
例えば、本発明のインクジェット用インクは、上述した樹脂以外の樹脂が分散した樹脂分散液が含まれていてもよい。
【実施例】
【0072】
次に、本発明の具体的実施例について説明する。
[1]自己分散型顔料の調製
(1)ブラック自己分散型顔料分散液(B1)
市販のカーボンブラックであるカラーブラックS170(商品名:デグサ・ヒュルス社製)100gを水1kgに混合して、ジルコニアビーズによるボールミルにて粉砕した。この粉砕原液に次亜塩素酸ナトリウム(有効塩素濃度12%)1400gを滴下して、ボールミルで粉砕しながら5時間反応させ、さらに撹拌しながら4時間煮沸して湿式酸化を行った。得られた分散原液をガラス繊維ろ紙GA−100 (商品名:アドバンテック東洋社製)で濾過して、さらに水で洗浄した。得られたウェットケーキを水5kgに再分散して、逆浸透膜により電導度が2mS/cmになるまで脱塩および精製し、さらに顔料濃度が20質量%になるまで濃縮してブラック自己分散型顔料分散液B1を調製した。この分散液の顔料の体積平均粒子径をMicrotrac UPA 150 (Microtrac社製)の粒度分布測定により測定したところ、120nmであった。
【0073】
(2)シアン自己分散型顔料分散液(C1)
回転子−固定子型高剪断混合機(シルバーソンL4RT−A)に4リットルステンレス鋼製ビーカーを取り付け、氷浴中に浸した。このビーカーに、C.I.ピグメントブルー15:4約75gと水1000gを入れ、7200rpmにて15分間均質化した。これに2.07g(0.01mol)のo−アセトアニシジドを溶解したイソプロパノール溶液20mlを添加し、更に15分間撹拌した。
【0074】
別の容器中で、スルファニル酸4.35g(0.025mol)、1N−HCl30mL、および亜硝酸ナトリウム1.73g(0.025mol)を5〜10℃にて混合して、ジアゾニウム塩を形成させた。次いで、これを上記C.I.ピグメントブルー15:4とo−アセトアニシジドの混合物に撹拌しながら添加し、温度を約10℃に維持した。この混合物を、5M水酸化ナトリウム溶液の滴加によりpH5〜6に調整し、ジアゾニウム塩の存在有無により反応の進行を確認しながら、更に2時間攪拌した。ジアゾニウム塩が存在する場合、反応混合物と0.1%アミノサリチル酸を溶解した1M−NaCO溶液とをそれぞれ濾紙上に1滴ずつ垂らした際、これら二つの滴の広がりが触れ合うと橙色となる。
【0075】
混合物をテルソニック流通型音波処理装置に移し、そして2時間超音波処理し、得られた顔料分散液を、50nmダイアフィルトレーション膜カラムを用いて精製後、20%の固形分含有率に濃縮し、自己分散型顔料分散液(C1)を得た。この分散液の顔料の体積平均粒子径をMicrotrac UPA 150 (Microtrac社製)の粒度分布測定により測定したところ、120nmであった。
【0076】
(3)シアン自己分散型顔料分散液(C2)
体積平均粒子径が105nmとなるように、製造条件を変更した以外は、上記シアン自己分散型顔料分散液C1と同様にしてシアン自己分散型顔料分散液C2を調製した。
(4)シアン自己分散型顔料分散液(C3)
体積平均粒子径が85nmとなるように、製造条件を変更した以外は、上記シアン自己分散型顔料分散液C1と同様にしてシアン自己分散型顔料分散液C3を調製した。
【0077】
(5)イエロー自己分散型顔料分散液(Y1)
顔料としてC.I.ピグメントブルー15:4に代えてC.I.ピグメントイエロー74を用いた点以外は、前記シアン自己分散型顔料分散液(C1)と同様に調製し、固形分濃度が20質量%のイエロー自己分散型顔料分散液(Y1)を得た。この分散液の顔料の体積平均粒子径をMicrotrac UPA 150 (Microtrac社製)の粒度分布測定により測定したところ、110nmであった。
【0078】
(6)マゼンダ自己分散型顔料分散液(M1)
顔料としてC.I.ピグメントブルー15:4に代えてC.I.ピグメントレッド122を用いた点以外は、前記シシアン自己分散型顔料分散液(C1)と同様に調製し、固形分濃度が20質量%のマゼンダ自己分散型顔料分散液(M1)を得た。この分散液の顔料の体積平均粒子径をMicrotrac UPA 150 (Microtrac社製)の粒度分布測定により測定したところ、100nmであった。
【0079】
[2]樹脂分散液(樹脂エマルション)Bの調製
(1)樹脂エマルションB1
溶融ドラムにポリオレフィンオリゴマーとしてポリエチレンワックス(三井ハイワックス210P、三井化学社製)40部およびマレイン酸変性ポリオレフィンオリゴマーとしてマレイン酸変性ポリエチレンワックス(三井ハイワックス1105A、三井化学社製)60部およびポリオキシエチレンアルキルエーテルとしてHLBが13.5であるポリオキシエチレンアルキル(C=11)エーテル(エマルゲン1108、花王社製)10部を160℃にて加熱し2時間攪拌混合する。その後、耐圧ホモミキサー(ホモミクサーMARKII:特殊機化社製)に、8000rpmで攪拌しながら、予め水9880mLおよび85%の水酸化カリウム120gを溶解した水酸化カリウム溶液1800g/hrおよび前述のポリオレフィンオリゴマー、マレイン酸変性ポリオレフィンオリゴマーおよびポリオキシエチレンアルキルエーテルを1200g/hrの速度にて140℃溶融状態でのままギアポンプによって上記ミキサーに供給し、密度が0.92g/cm、分散質の平均粒径が160nmの樹脂エマルションB1を得た。
【0080】
(2)樹脂エマルションB2
溶融ドラムにポリオレフィンオリゴマーとしてポリエチレンワックス(三井ハイワックス210P、三井化学社製)70部およびマレイン酸変性ポリオレフィンオリゴマーとしてマレイン酸変性ポリエチレンワックス(三井ハイワックス1105A、三井化学社製)30部およびポリオキシエチレンアルキルエーテルとしてHLBが13.5であるポリオキシエチレンアルキル(C=11)エーテル(エマルゲン1108、花王社製)10部を160℃にて加熱し2時間攪拌混合する。その後、耐圧ホモミキサー(ホモミクサーMARKII:特殊機化社製)に、8000rpmで攪拌しながら、予め水9880mLおよび85%の水酸化カリウム120gを溶解した水酸化カリウム溶液1800g/hrおよび前述のポリオレフィンオリゴマー、マレイン酸変性ポリオレフィンオリゴマーおよびポリオキシエチレンアルキルエーテルを1200g/hrの速度にて140℃溶融状態でのままギアポンプによって上記ミキサーに供給し、密度が0.92g/cm、分散質の平均粒径が220nmの樹脂エマルションB2を得た。
【0081】
(3)樹脂エマルションB3
溶融ドラムにポリオレフィンオリゴマーとしてポリエチレンワックス(三井ハイワックス210P、三井化学社製)70部およびマレイン酸変性ポリオレフィンオリゴマーとしてマレイン酸変性ポリエチレンワックス(三井ハイワックス1105A、三井化学社製)30部およびポリオキシエチレンアルキルエーテルとしてHLBが13.8であるポリオキシエチレンアルキルデシルエーテル(ノイゲンXL−80、第一工業製薬社製)10部を160℃にて加熱し2時間攪拌混合する。その後、耐圧ホモミキサー(ホモミキサーMARKII:特殊機化社製)に、8000rpmで攪拌しながら、予め水9880mLおよび85%の水酸化カリウム120gを溶解した水酸化カリウム溶液1800g/hrおよび前述のポリオレフィンオリゴマー、マレイン酸変性ポリオレフィンオリゴマーおよびポリオキシエチレンアルキルエーテルを1200g/hrの速度にて140℃溶融状態でのままギアポンプによって上記ミキサーに供給し、密度が0.92g/cm、分散質の平均粒径が310nmの樹脂エマルションB3を得た。
【0082】
(4)樹脂エマルションB4
溶融ドラムにマレイン酸変性ポリオレフィンオリゴマーとしてマレイン酸変性ポリエチレンワックス(三井ハイワックス2203A、三井化学社製)100部およびポリオキシエチレンアルキルエーテルとしてHLBが15.3であるポリオキシエチレンラウリルエーテル(エマルゲン120、花王社製)10部を160℃にて加熱し2時間攪拌混合する。その後、耐圧ホモミキサー(ホモミキサーMARKII:特殊機化社製)に、8000rpmで攪拌しながら、予め水9760mLおよび85%の水酸化カリウム240gを溶解した水酸化カリウム溶液1800g/hrおよび前述のマレイン酸変性ポリオレフィンオリゴマーおよびポリオキシエチレンアルキルエーテルを1200g/hrの速度にて140℃溶融状態でのままギアポンプによって上記ミキサーに供給し、密度が0.92g/cm、分散質の平均粒径が400nmの樹脂エマルションB4を得た。
【0083】
(5)樹脂エマルションB5
溶融ドラムにポリオレフィンオリゴマーとしてポリエチレンワックス(三井ハイワックス210P、三井化学社製)70部およびマレイン酸変性ポリオレフィンオリゴマーとしてマレイン酸変性ポリエチレンワックス(三井ハイワックス1105A、三井化学社製)30部およびポリオキシエチレンアルキルエーテルとしてHLBが13.6であるポリオキシエチレンオレイルエーテル(エマルゲン420、花王社製)10部を160℃にて加熱し2時間攪拌混合する。その後、耐圧ホモミキサー(ホモミキサーMARKII:特殊機化社製)に、8000rpmで攪拌しながら、予め水9880mLおよび85%の水酸化カリウム120gを溶解した水酸化カリウム溶液1800g/hrおよび前述のポリオレフィンオリゴマー、マレイン酸変性ポリオレフィンオリゴマーおよびポリオキシエチレンアルキルエーテルを1200g/hrの速度にて140℃溶融状態でのままギアポンプによって上記ミキサーに供給し、密度が0.92g/cm、分散質の平均粒径が150nmの樹脂エマルションB5を得た。
【0084】
(6)樹脂エマルションB6
溶融ドラムにポリオレフィンオリゴマーとしてポリエチレンワックス(三井ハイワックス210P、三井化学社製)70部およびマレイン酸変性ポリオレフィンオリゴマーとしてマレイン酸変性ポリエチレンワックス(三井ハイワックス1105A、三井化学社製)30部およびポリオキシエチレンアルキルエーテルとしてHLBが15.3であるポリオキシエチレンラウリルエーテル(エマルゲン120、花王社製)10部を160℃にて加熱し2時間攪拌混合する。その後、耐圧ホモミキサー(ホモミキサーMARKII:特殊機化社製)に、8000rpmで攪拌しながら、予め水9880mLおよび85%の水酸化カリウム120gを溶解した水酸化カリウム溶液1800g/hrおよび前述のポリオレフィンオリゴマー、マレイン酸変性ポリオレフィンオリゴマーおよびポリオキシエチレンアルキルエーテルを1200g/hrの速度にて140℃溶融状態でのままギアポンプによって上記ミキサーに供給し、密度が0.92g/cm、分散質の平均粒径が240nmの樹脂エマルションB6を得た。
【0085】
(7)樹脂エマルションB7
溶融ドラムにポリオレフィンオリゴマーとしてポリエチレンワックス(三井ハイワックス210P、三井化学社製)70部およびマレイン酸変性ポリオレフィンオリゴマーとしてマレイン酸変性ポリエチレンワックス(三井ハイワックス1105A、三井化学社製)30部およびポリオキシエチレンアルキルエーテルとしてHLBが13.0であるポリオキシエチレンオクチルドデシルエーテル(エマルゲン2020G−HA、花王社製)10部を160℃にて加熱し2時間攪拌混合する。その後、耐圧ホモミキサー(ホモミキサーMARKII:特殊機化社製)に、8000rpmで攪拌しながら、予め水9880mLおよび85%の水酸化カリウム120gを溶解した水酸化カリウム溶液1800g/hrおよび前述のポリオレフィンオリゴマー、マレイン酸変性ポリオレフィンオリゴマーおよびポリオキシエチレンアルキルエーテルを1200g/hrの速度にて140℃溶融状態でのままギアポンプによって上記ミキサーに供給し、密度が0.92g/cm、分散質の平均粒径が330nmの樹脂エマルションB7を得た。
【0086】
[3]樹脂分散液(樹脂エマルション)Dの調製
(1)樹脂エマルションD1
攪拌機、還流コンデンサー、滴下装置、および温度計を備えた反応容器に、イオン交換水1000gおよびラウリル硫酸ナトリウム2.5gを仕込み、攪拌下に窒素置換しながら70℃まで昇温した。内温を70℃に保ち、重合開始剤として過硫酸カリウム4gを添加し、溶解後、予めイオン交換水450g、ラウリル硫酸ナトリウム3gにアクリルアミド20gにスチレン300g、ブチルアクリレート640g、およびメタクリル酸30gを攪拌下に加えて作製した乳化物を、反応溶液内に連続的に4時間かけて滴下した。滴下終了後、3時間の熟成を行った。得られた水性エマルションを常温まで冷却した後、イオン交換水と5%水酸化ナトリウム水溶液とを添加して固形分40質量%、pH8に調整した。得られた樹脂エマルションD1における樹脂のガラス転移温度は−15℃、樹脂エマルションD1の密度が1.12g/cm、分散質の平均粒径が80nmであった。
【0087】
(2)樹脂エマルションD2
攪拌機、還流コンデンサー、滴下装置、および温度計を備えた反応容器に、イオン交換水1000gおよびラウリル硫酸ナトリウム7.5gを仕込み、攪拌下に窒素置換しながら70℃まで昇温した。内温を70℃に保ち、重合開始剤として過硫酸カリウム4gを添加し、溶解後、予めイオン交換水450g、ラウリル硫酸ナトリウム3gにアクリルアミド20gにスチレン130g、2−エチルヘキシルアクリレート780g、メタクリル酸30g、およびエチレングリコールジメタクリレート2gを攪拌下に加えて作製した乳化物を、反応溶液内に連続的に4時間かけて滴下した。滴下終了後、3時間の熟成を行った。得られた水性エマルションを常温まで冷却した後、イオン交換水と5%アンモニア水溶液とを添加して固形分40質量%、pH8に調整した。得られた樹脂エマルションD2における樹脂のガラス転移温度は−50℃、樹脂エマルションD2の密度が1.12g/cm、分散質の平均粒径が60nmであった。
【0088】
(3)樹脂エマルションD3
攪拌機、還流コンデンサー、滴下装置、および温度計を備えた反応容器に、イオン交換水1000gおよびラウリル硫酸ナトリウム7.5gを仕込み、攪拌下に窒素置換しながら70℃まで昇温した。内温を70℃に保ち、重合開始剤として過硫酸カリウム4gを添加し、溶解後、予めイオン交換水450g、ラウリル硫酸ナトリウム3gにアクリルアミド20gにスチレン300g、ブチルアクリレート640g、およびメタクリル酸30gを攪拌下に加えて作製した乳化物を、反応溶液内に連続的に4時間かけて滴下した。滴下終了後、3時間の熟成を行った。得られた水性エマルションを常温まで冷却した後、イオン交換水と5%水酸化ナトリウム水溶液とを添加して固形分40質量%、pH8に調整した。得られた樹脂エマルションD3における樹脂のガラス転移温度は−15℃、樹脂エマルションD3の密度が1.12g/cm、分散質の平均粒径が60nmであった。
【0089】
(4)樹脂エマルションD4
攪拌機、還流コンデンサー、滴下装置、および温度計を備えた反応容器に、イオン交換水1000gおよびラウリル硫酸ナトリウム7.5gを仕込み、攪拌下に窒素置換しながら70℃まで昇温した。内温を70℃に保ち、重合開始剤として過硫酸カリウム4gを添加し、溶解後、予めイオン交換水450g、ラウリル硫酸ナトリウム3gにアクリルアミド20gにスチレン356g、ブチルアクリレート545g、およびメタクリル酸30gを攪拌下に加えて作製した乳化物を、反応溶液内に連続的に4時間かけて滴下した。滴下終了後、3時間の熟成を行った。得られた水性エマルションを常温まで冷却した後、イオン交換水と5%水酸化ナトリウム水溶液とを添加して固形分40質量%、pH8に調整した。得られた樹脂エマルションD4における樹脂のガラス転移温度は−6℃、樹脂エマルションD4の密度が1.12g/cm、分散質の平均粒径が60nmであった。
【0090】
(5)樹脂エマルションD5
攪拌機、還流コンデンサー、滴下装置、および温度計を備えた反応容器に、イオン交換水1000gおよびラウリル硫酸ナトリウム7.5gを仕込み、攪拌下に窒素置換しながら70℃まで昇温した。内温を70℃に保ち、重合開始剤として過硫酸カリウム4gを添加し、溶解後、予めイオン交換水450g、ラウリル硫酸ナトリウム3gにアクリルアミド20gにスチレン500g、ブチルアクリレート410g、メタクリル酸30g、およびエチレングリコールジメタクリレート2gを攪拌下に加えて作製した乳化物を、反応溶液内に連続的に4時間かけて滴下した。滴下終了後、3時間の熟成を行った。得られた水性エマルションを常温まで冷却した後、イオン交換水と5%水酸化ナトリウム水溶液とを添加して固形分40質量%、pH8に調整した。得られた樹脂エマルションD5における樹脂のガラス転移温度は15℃、樹脂エマルションD5の密度が1.12g/cm、分散質の平均粒径が60nmであった。
【0091】
(6)樹脂エマルションD6
攪拌機、還流コンデンサー、滴下装置、および温度計を備えた反応容器に、イオン交換水1000gおよびラウリル硫酸ナトリウム2.5gを仕込み、攪拌下に窒素置換しながら70℃まで昇温した。内温を70℃に保ち、重合開始剤として過硫酸カリウム4gを添加し、溶解後、予めイオン交換水450g、ラウリル硫酸ナトリウム3gにアクリルアミド20gにスチレン130g、2−エチルヘキシルアクリレート780g、メタクリル酸30g、およびエチレングリコールジメタクリレート2gを攪拌下に加えて作製した乳化物を、反応溶液内に連続的に4時間かけて滴下した。滴下終了後、3時間の熟成を行った。得られた水性エマルションを常温まで冷却した後、イオン交換水と5%アンモニア水溶液とを添加して固形分40質量%、pH8に調整した。得られた樹脂エマルションD6における樹脂のガラス転移温度は−50℃、樹脂エマルションD6の密度が1.12g/cm、分散質の平均粒径が80nmであった。
【0092】
(7)樹脂エマルションD7
攪拌機、還流コンデンサー、滴下装置、および温度計を備えた反応容器に、イオン交換水1000gおよびラウリル硫酸ナトリウム2.5gを仕込み、攪拌下に窒素置換しながら70℃まで昇温した。内温を70℃に保ち、重合開始剤として過硫酸カリウム4gを添加し、溶解後、予めイオン交換水450g、ラウリル硫酸ナトリウム3gにアクリルアミド20gにスチレン356g、ブチルアクリレート545g、およびメタクリル酸30gを攪拌下に加えて作製した乳化物を、反応溶液内に連続的に4時間かけて滴下した。滴下終了後、3時間の熟成を行った。得られた水性エマルションを常温まで冷却した後、イオン交換水と5%水酸化ナトリウム水溶液とを添加して固形分40質量%、pH8に調整した。得られた樹脂エマルションD7における樹脂のガラス転移温度は−6℃、樹脂エマルションD7の密度が1.12g/cm、分散質の平均粒径が80nmであった。
【0093】
[4]インクジェット用インクの調製
表1〜2に示す割合で各成分を混合し、室温にて2時間接拝した後、孔径5μmのメンブランフィルターにて濾過して、実施例1〜24、比較例1〜6の各インクジェット用インクを調製した。ただし、表1〜2中に示す添加量は全て質量%の濃度として表されており、顔料分散液の()内の数字は顔料の固形分濃度(質量%)を示し、樹脂エマルションの()の数字は樹脂濃度(質量%)を示す。またイオン交換水の「残量」とは、インクジェット用インクの全量が100質量%となるようにイオン交換水を加えることを意味する。
【0094】
【表1】

【0095】
【表2】

【0096】
[5]評価
[布擦り試験の評価]
調整した各インクをインクジェットプリンタPX−A550(セイコーエプソン社製)に充填し、100%Dutyパッチパターンの印刷を行った。記録媒体としては、写真用紙<光沢>(セイコーエプソン社製)、フォト光沢紙(セイコーエプソン社製)を使用して印字を行い、得られたサンプルを常温常湿環境下で1時間放置した。放置後、印刷部分を摺擦布としてベンコットM−3(旭化成製)の表面が摺擦するように直径10mm、荷重200gの分銅により押圧しながら1cm/秒の速度で掃引した。摺擦後の各パッチ部分及びベンコットの摺擦面を目視で観察し、下記評価規準に基づき判定した。
A :布擦りによる摺擦痕が全く認められない。
B :摺擦痕が認められるが、布表面に汚れが認められない。
C :摺擦痕が認められ、布表面に汚れが僅かに認められる(許容できる)。
D :摺擦痕が認められ、布表面に汚れが多量に認められる(許容できない)。
【0097】
[ラインマーカー試験]
調整した各インクをインクジェットプリンタPX−A550(セイコーエプソン社製)に充填し、24point文字パターンの印刷を行った。録媒体としては、Xerox4200、XeroxP紙を使用して印字を行い、得られたサンプルを常温常湿環境下で24時間放置した。放置後、ゼブラ社製のイエロー水性蛍光ペンZEBRA PEN2(登録商標)を用いて、印刷文字を筆圧300g/15mmで摺擦した。摺擦後の印刷文字を目視で観察し、下記評価規準に基づき判定した。
A :同一部分を2回擦った際、汚れが全く認められない。
B :1回目の擦りでは汚れが認められないが、2回目の擦りで汚れが認められる。
C :1回目の擦りで汚れが僅かに認められる(許容できる)。
D :1回目の擦りで汚れが多量に認められる(許容できない)。
【0098】
[グロスの評価]
調整した各インクをインクジェットプリンタPX−A550(セイコーエプソン社製)に充填し、100%Dutyパッチパターンの印刷を行った。記録媒体としては、写真用紙<光沢>(セイコーエプソン社製)、フォト光沢紙(セイコーエプソン社製)を使用して印字を行い、得られたサンプルを常温常湿環境下で1時間放置した。放置後、各パッチ部分をグレタグ濃度計(グレタグマクベス社製)を用いて光沢度計GM−268(コニカミノルタ社製)を用いて20°におけるグロスを測定し、その平均グロス値を下記基準に基づき判定した。
A :正反射角20°における記録メディアグロスの150%以上である。
B :正反射角20°における記録メディアグロスの100%以上150%未満である。
C :正反射角20°における記録メディアグロスの50%以上100%未満である。
D :正反射角20°における記録メディアグロスの50%未満である(許容できない)。
【0099】
[OD値]
調整した各インクをインクジェットプリンタPX−A550(セイコーエプソン社製)に充填し、100%Dutyパッチパターンの印刷を行った。記録媒体としては、Xerox4200、XeroxP紙を使用して印字を行い、得られたサンプルを常温常湿環境下で1時間放置した。放置後、各パッチ部分をグレタグ濃度計(グレタグマクベス社製)を用いて各パッチ部分のODを測定し、その平均OD値を下記基準に基づき判定した。
A :光学反射濃度(OD値)が1.3以上である。
B :光学反射濃度(OD値)が1.2以上1.3未満である。
C :光学反射濃度(OD値)が1.1以上1.2未満である。
D :光学反射濃度(OD値)が1.1未満である(許容できない)。
【0100】
[記録面の擦れ痕]
調整した各インクをフェイスダウン排紙機構を備える図示する記録装置に充填し、100%Dutyパッチパターンの印刷を行った。記録媒体としては、XeroxP紙を使用して100%Dutyパッチパターンの印刷を連続で100枚行い、専用の排紙トレイにスタックした。常温常湿環境下でフェイスダウンにより連続スタック後の記録媒体における印刷面を目視で観察し、下記評価規準に基づき判定した。
A :ベタ画像を連続100枚スタックした際に記録面に摺擦痕が全く認められない。
B :同、摺擦痕が僅かに認められる(許容できる)。
C :同、摺擦痕が多量に認められる(許容できない)。
【0101】
[裏面の汚れ]
調整した各インクをフェイスダウン排紙機構を備える図示する記録装置に充填し、100%Dutyパッチパターンの印刷を行った。記録媒体としては、XeroxP紙を使用して100%Dutyパッチパターンの印刷を連続で100枚行い、専用の排紙トレイにスタックした。常温常湿環境下でフェイスダウンにより連続スタック後の記録媒体における印刷面の裏面を目視で観察し、下記評価規準に基づき判定した。
A :ベタ画像を連続100枚スタックした際に裏面に汚れが全く認められない。
B :同、汚れが僅かに認められる(許容できる)。
C :同、汚れが多量に認められる(許容できない)。
これらの結果を表3に示した。
【0102】
【表3】

【0103】
表3から明らかなように、本発明のインクジェット用インクでは、耐摩擦性に優れるとともに、高いグロスの画像を記録することが可能であった。これに対して、各比較例では、満足行く結果が得られなかった。
【符号の説明】
【0104】
100…インクジェット記録装置 101…被記録媒体 102…筐体 104…収納カセット 105…給送ローラ 106…排出トレイ 109…位置検出センサ 110…インクジェットヘッド 111…制御部 115…モータ 116…モータ 117…モータ 118…モータ 130…搬送ベルト 140…搬送ローラ 140A…駆動ローラ 140B…従動ローラ 150…排出部 151…排出ローラ 151A…駆動ローラ 151B…従動ローラ 152…排出ローラ 152A…駆動ローラ 152B…従動ローラ 153…モータ 154…排出ローラ 154A…駆動ローラ 154B…従動ローラ 155…モータ 156…搬送路 170…従動ローラ 180…駆動ローラ 190…インクジェットヘッドユニット 210…減圧吸引部 210A…吸引ファン 210B…置体 211…モータ 301…矯正ガイド 301A…支持部 301B…傾斜部 302…角度調整機構 303…媒体押さえ部 305…モータ 350…幅方向移動部 351…ラック 352…ピニオン 353…モータ 400…ユーザインターフェイス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自己分散型顔料と、
第1樹脂を含む分散質bが分散した樹脂分散液Bと、
第2樹脂を含む分散質dが分散した樹脂分散液Dと、
水と、を含み、
前記樹脂分散液Bは、分散質bの比重が1よりも小さく、かつ、前記分散質bの平均粒径が前記自己分散型顔料の平均粒径よりも大きく、
前記樹脂分散液Dは、分散質dの比重が1よりも大きく、分散質dの平均粒径が前記自己分散型顔料の平均粒径よりも小さく、かつ、
前記第2樹脂のガラス転移点が23℃以下であることを特徴とするインクジェット用インク。
【請求項2】
前記第1樹脂は、非晶性ポリオレフィンである請求項1に記載のインクジェット用インク。
【請求項3】
前記非晶性ポリオレフィンは、マレイン酸変性ポリオレフィンオリゴマーおよびポリエチレングリコールアルキルエーテルを少なくとも含む請求項2に記載のインクジェット用インク。
【請求項4】
前記第2樹脂は、アクリル樹脂である請求項1ないし3のいずれか1項に記載のインクジェット用インク。
【請求項5】
両性イオン化合物を含む請求項1ないし4のいずれか1項に記載のインクジェット用インク。
【請求項6】
前記両性イオン化合物は、分子量100以上250以下のベタイン系化合物である請求項5に記載のインクジェット用インク。
【請求項7】
主面と前記主面とは反対側の面である裏面とを有する被記録媒体の前記主面に、請求項1ないし6のいずれか1項に記載のインクジェット用インクを用いて記録を行う記録部と、
前記主面を下方に向けて前記被記録媒体を排出する排出部と、
前記排出部から排出中の前記被記録媒体の前記裏面を下方に向けて押圧し、当該被記録媒体を矯正する矯正ガイドと、
前記排出部から排出された前記被記録媒体の湾曲量を取得する湾曲量取得部と、
前記湾曲量取得部が取得した前記湾曲量に応じて、前記矯正ガイドの押圧力を制御する押圧制御部と、を備えてなることを特徴とするインクジェット記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−255089(P2012−255089A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−128937(P2011−128937)
【出願日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】