説明

インクジェット用インク

【課題】インクのジェッティング性、光硬化性、硬化膜の基板に対する密着性に優れ、高透過率、高強度を示すマイクロレンズアレイを形成することが可能なインクジェット用インクの提供。
【解決手段】特定の3官能(メタ)アクリル酸エステル(A)、単官能(メタ)アクリレート(B)、及び光重合開始剤(C)を含有し、該インクより得られた硬化膜(膜厚5μm)の400nmにおける透過率が96%以上である光硬化性インクジェット用インク。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶ディスプレイや表示パネルなどの光学機器を製造するために好適に用いられるインクジェット用インクに関する。更に詳しくは、本発明は、バックライト装置に使用されるマイクロレンズアレイなどに適したインクジェット用インクに関する。
【背景技術】
【0002】
かねてより、液晶ディスプレイなどの液晶表示素子には、バックライト光を利用することで表示させる透過型、あるいは半透過型LCDが用いられてきた。このような透過型、あるいは半透過型LCDは、LCDの内部の反射板に開口部を設け、その開口部からバックライト光を透過させることで、表示する構造となっている。このように、バックライト光を透過させる際、輝度ムラを無くすため、液晶表示パネルとバックライトとの間にマイクロレンズアレイを配置した導光板が提案されている。(例えば、特開2003−107505号公報(特許文献1))。
従来、このような導光板を製造する方法として行われてきた射出成形法では、複数の金型を作製する必要があり、多くの時間と費用とを要す。また、上記製造法を用いて製造した場合、樹脂レンズのパターニング精度が悪く、輝度ムラが発生しやすい。
【0003】
これらの問題を解決するため、近年、インクジェット方式を用いて感光性材料を基板上に直接塗布し、マイクロレンズアレイを形成する方法が開発されている(例えば、特開平5−303017号公報(特許文献2)、特開2000−180605号公報(特許文献3)、特開2004−240294号公報(特許文献4))。このように、インクジェット方式を用いた樹脂レンズの製造方法は、従来のような金型を作製しなくても、パターニングはパソコンなどの電子データで容易に制御できるため、少量多品種生産に対しても製造コストを抑えることができる等の点から期待が持たれている。
【0004】
また、インクジェット法に用いられる感光性材料として、様々なインク組成物が提案されているが(例えば、特開2004−117955号公報(特許文献5)、特開2005−340467号公報(特許文献6)、特開2006−208734号公報(特許文献7)および特開2007−24970号公報(特許文献8))、これらのインクにより形成されたマイクロレンズアレイは、十分な光硬化性、基板に対する密着性、高透過率、高強度の全てを満足できる性能を有していない。
【0005】
一方、光硬化性、基板に対する密着性に優れた感光性材料として、様々なインクが提案されている(例えば、特開平2−6562号公報(特許文献9)、特開平7−53895号公報(特許文献10)、特開平7−70472号公報(特許文献11)、特開2003−192943号公報(特許文献12)、特開平2005−162882号公報(特許文献13)、WO2006−129530号公報(特許文献14)、特開2007−231231号公報(特許文献15)特開2007−231233号公報(特許文献16))。
しかし、特開平2−6562号公報(特許文献9)、特開平7−53895号公報(特許文献10)、特開平7−70472号公報(特許文献11)は、実施例から推測される硬化膜の透過率は高いものの、十分な強度を有していない。
【0006】
さらに、特開2003−192943号公報(特許文献12)、特開平2005−162882号公報(特許文献13)、WO2006−129530号パンフレット(特許文献14)、特開2007−231231号公報(特許文献15)、特開2007−231233号公報(特許文献16)には、いずれの組成物においても染料、顔料などの着色剤を添加しているため透過率が低く、また、仮に実施例の着色剤を無添加にした組成物を用いても、透過率が低く、十分な性能を有していないことが推測される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−107505号公報
【特許文献2】特開平5−303017号公報
【特許文献3】特開2000−180605号公報
【特許文献4】特開2004−240294号公報
【特許文献5】特開2004−117955号公報
【特許文献6】特開2005−340467号公報
【特許文献7】特開2006−208734号公報
【特許文献8】特開2007−24970号公報
【特許文献9】特開平2−6562号公報
【特許文献10】特開平7−53895号公報
【特許文献11】特開平7−70472号公報
【特許文献12】特開2003−192943号公報
【特許文献13】特開平2005−162882号公報
【特許文献14】国際公開2006−129530号パンフレット
【特許文献15】特開2007−231231号公報
【特許文献16】特開2007−231233号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記の状況の下、本発明の目的は、十分な光硬化性、基板に対する密着性に優れ、高透過率、高強度を示すマイクロレンズアレイを形成することが可能な、インクジェット用インクを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等は、式(1)で表される(メタ)アクリル酸エステル、単官能(メタ)アクリレート、及び光重合開始剤を含有する光硬化性インクジェット用インクが、光硬化性、基板に対する密着性に優れ、高透過率、高強度を示すマイクロレンズアレイを形成できることを見出し、この知見に基づいて本発明を完成した。さらに本発明は、このようなインクジェット用インクから得られたマイクロレンズアレイ及びそのマイクロレンズアレイの用途などを提供する。
すなわち本発明は、以下の項を含む。
【0010】
[1]式(1)で表される(メタ)アクリル酸エステル(A)、単官能(メタ)アクリレート(B)、及び光重合開始剤(C)を含有する光硬化性インクジェット用インクであって、該インクより得られた硬化膜(膜厚5μm)の400nmにおける透過率が96%以上である、光硬化性インクジェット用インク。



(式中、R、R、R、及びRはそれぞれ独立に水素又は炭素数が1〜6のアルキルであり、R、R、R及びRはそれぞれ独立に炭素数が1〜6のアルキレンであり、kは0又は1であり、l、m、及びnはそれぞれ独立に1〜10の整数である。)
【0011】
[2]インク総重量に対して、式(1)で表される(メタ)アクリル酸エステル(A)を30〜70重量%、単官能(メタ)アクリレート(B)を20〜60重量%、光重合開始剤(C)を1〜20重量%含有する、[1]に記載のインクジェット用インク。
【0012】
[3]式(1)において、R、R、及びRは炭素数がそれぞれ独立に2、又は3のアルキレンである、[1]又は[2]に記載のインクジェット用インク。
【0013】
[4]式(1)において、Rが水素であり、kが0である、[1]〜[3]のいずれかに記載のインクジェット用インク。
【0014】
[5]式(1)において、l、m、及びnが1である、[1]〜[4]のいずれかに記載のインクジェット用インク。
【0015】
[6]単官能(メタ)アクリレート(B)が、炭素数が1〜6のアルキルを有する単官能(メタ)アクリレートである、[1]〜[5]のいずれかに記載のインクジェット用インク。
【0016】
[7]単官能(メタ)アクリレート(B)が、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、又はメチル(メタ)アクリレートからなる群から選ばれる少なくとも1種である、[1]〜[6]のいずれかに記載のインクジェット用インク。
【0017】
[8]光重合開始剤(C)が、α−ヒドロキシルアルキルフェノン系又はアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤である、[1]〜[7]のいずれかに記載のインクジェット用インク。
【0018】
[9]さらに重合禁止剤を含有する、[1]〜[8]のいずれかに記載のインクジェット用インク。
【0019】
[10]式(1)で表される(メタ)アクリル酸エステル(A)としてエチレンオキサイド変性グリセリントリアクリレート(エチレンオキサイド変性:3モル)、単官能(メタ)アクリレート(B)としてn−ブチル(メタ)アクリレート、光重合開始剤(C)として2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、重合禁止剤としてフェノチアジンを含有する、[9]に記載のインクジェット用インク。
【0020】
[11][1]〜[10]のいずれかに記載のインクジェット用インクを硬化させて得られる硬化膜。
【0021】
[12][11]に記載の硬化膜から得られるマイクロレンズアレイ。
【0022】
[13][12]に記載のマイクロレンズアレイを有する、光学機器。
【発明の効果】
【0023】
本発明のインクジェット用インクはジェッティング性および該インクの塗膜の光硬化性に優れ、該インクから得られる硬化膜は基板に対する密着性に優れ、さらに該硬化膜から得られるマイクロレンズアレイは高透過率、高強度である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
[1.本発明のインクジェット用インク]
本発明のインクジェット用インク(以下単に「本発明のインク」ともいう)は、式(1)で表される(メタ)アクリル酸エステル(A)をインク総重量に対して30〜70重量%、単官能(メタ)アクリレート(B)をインク総重量に対して20〜60重量%、光重合開始剤(C)をインク総重量に対して1〜20重量%含有する光硬化性インクジェット用インクであって、該光硬化性インクジェット用インクを4cm角のガラス基板上の中心部にインクジェット塗布することにより、3cm角の正方形の塗膜を形成し、該塗膜を光硬化させることにより得られた硬化膜(膜厚5μm)を有するガラス基板の400nmにおける透過率が96%以上を示す光硬化性インクジェット用インクである。



(式中、R、R、R、及びRはそれぞれ独立に水素又は炭素数が1〜6のアルキルであり、R、R、R及びRはそれぞれ独立に炭素数が1〜6のアルキレンであり、kは0又は1であり、l、m、及びnはそれぞれ独立に1〜10の整数である。)
【0025】
本発明のインクは無色であっても有色であってもよい。透過率の観点からは無色が好ましいが、発明の効果を妨げない範囲で有色の化合物を含有してもよい。また、例えば、硬化膜の状態を検査する際に基板との識別を容易にするために、着色剤を含んでもよい。
【0026】
本明細書において、「(メタ)アクリレート」は、アクリレートとメタクリレートの両者又は一方を示すために用いられる。
【0027】
また、本発明のインクは、必要に応じて、フェノール樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、エポキシ硬化剤、界面活性剤、他のラジカル重合性二重結合を有する化合物、溶媒および重合禁止剤などを含むことができる。ここで、「他のラジカル重合性二重結合を有する化合物」とは、式(1)で表される(メタ)アクリル酸エステル(A)及び単官能(メタ)アクリレート(B)以外の化合物である。
以下、上記各成分および本発明のインクの粘度について説明する。
【0028】
<1.1.本発明のインクジェット用インクの粘度>
本発明のインクジェット用インクの、E型粘度計で測定した25℃における粘度は200mPa・s以下であることが好ましく、前記の粘度が1〜200mPa・sであることがより好ましい。1〜200mPa・sであると、インクジェット装置によるジェッティング特性が良好となる。25℃における本発明のインクの粘度は、さらに好ましくは2〜150mPa・sであり、特に好ましくは3〜100mPa・sである。
【0029】
また、インクジェット塗布装置で吐出する際の温度(好ましくは10〜120℃)における本発明のインクの粘度は、1〜30mPa・sであることが好ましく、2〜25mPa・sであることがさらに好ましく、3〜20mPa・sであることが特に好ましい。
【0030】
25℃における粘度が30mPa・sを超えるインクを使用する場合は、インクジェットヘッドを加熱して吐出時のインクの粘度を下げることで、より安定した吐出が可能になる。インクジェットヘッドを加熱してジェッティングを行う場合は、加熱温度(好ましくは40〜120℃)におけるインクジェット用インクの粘度は1〜30mPa・sであることが好ましく、2〜25mPa・sであることがさらに好ましく、3〜20mPa・sであることが特に好ましい。
【0031】
インクジェットヘッドを加熱する場合は、溶媒を含まないインクを用いることが好ましい。
【0032】
<1.2.式(1)で表される(メタ)アクリル酸エステル(A)>
式(1)で表わされる(メタ)アクリル酸エステル(A)を使用することにより、本発明のインクは光硬化性に優れる。本発明のインクより形成される硬化膜は基板に対する密着性に優れるとともに、高透過率、高強度を示す。さらに該硬化膜から得られるマイクロレンズアレイは基板に対する密着性に優れるとともに、高透過率、高強度を示す。
【0033】
式(1)において、R、R、R、及びRはそれぞれ独立に水素、又は炭素数が1〜6のアルキルであり、R、R、R及びRはそれぞれ独立に炭素数が1〜6のアルキレンであり、kは0又は1であり、l、m、及びnはそれぞれ独立に1〜10の整数である。
【0034】
中でも特に、Rが水素、CH、又はCHCHであり、kが0であると、本発明のインクの光硬化性は良好であり、かつ得られた硬化膜は高透過率、高強度を示すことから好ましい。さらにRが水素であると、硬化膜の透過率がより高くなり好ましい。R、R、及びRは光硬化性の観点から水素又はCHが好ましく、さらに水素であることがより好ましい。R、R、及びRはインクから得られる硬化膜の透過率と強度のバランスの観点から、エチレン、プロピレン又はブチレンであることが好ましく、さらにエチレンであることがより好ましい。
【0035】
式(1)で表される(メタ)アクリル酸エステルの具体例としては、トリメチロールプロパンPO変性(3モル)トリアクリレート、トリメチロールプロパンPO変性(6モル)トリアクリレート、トリメチロールプロパンPO変性(9モル)トリアクリレート、トリメチロールプロパンEO変性(3モル)トリアクリレート、トリメチロールプロパンEO変性(6モル)トリアクリレート、トリメチロールプロパンEO変性(9モル)トリアクリレート、PO変性(3モル)グリセリントリアクリレート、PO変性(6モル)グリセリントリアクリレート、PO変性(9モル)グリセリントリアクリレート、EO変性(3モル)グリセリントリアクリレート、EO変性(6モル)グリセリントリアクリレート、EO変性(9モル)グリセリントリアクリレートが挙げられる。なお、「EO変性」はエチレンオキサイド変性、「PO変性」はプロピレンオキサイド変性を表し、カッコ内のモル数は1分子あたりに付加させたエチレンオキサイド、又はプロピレンオキサイドの数を示す。
【0036】
これらの中でも特に、トリメチロールプロパンPO変性(3モル)トリアクリレート、EO変性(3モル)グリセリントリアクリレートを用いると、本発明のインクは、光硬化性に優れるだけでなく、透過率、基板に対する密着性、強度のバランスが良好な硬化膜が得られ、さらにその中でも、EO変性(3モル)グリセリントリアクリレートを用いると、硬化膜の透過率が最も高く、良好である。
【0037】
式(1)で表される(メタ)アクリル酸エステル(A)は、上述した化合物等から選ばれる1種の化合物であってもよく、またこれらの2種以上の混合物であってもよい。
【0038】
以上、説明した式(1)で表される(メタ)アクリル酸エステル(A)は公知の方法で製造することができ、また市販もされている。例えば、トリメチロールプロパンPO変性(3モル)トリアクリレート(M−310:商品名;東亞合成(株)製)、トリメチロールプロパンPO変性(6モル)トリアクリレート(M−320:商品名;東亞合成(株)製)、トリメチロールプロパンEO変性(3モル)トリアクリレート(M−350:商品名;東亞合成(株)製)、トリメチロールプロパンEO変性(6モル)トリアクリレート(M−360:商品名;東亞合成(株)製)、EO変性(3モル)グリセリントリアクリレート(A-GLY-3E:商品名;新中村化学工業(株)製)、EO変性(9モル)グリセリントリアクリレート(A-GLY-9E:商品名;新中村化学工業(株)製)として市販されている。
【0039】
本発明のインクにおける式(1)で表される(メタ)アクリル酸エステル(A)の含有量が30〜70重量%であると、光硬化性に優れるだけでなく、本発明のインクより形成される硬化膜の透過率、基板に対する密着性、強度のバランスが良いので好ましく、より好ましくは、40〜65重量%であり、さらに好ましくは45〜60重量%であり、特に好ましくは50〜60重量%である。
【0040】
<1.3.単官能(メタ)アクリレート(B)>
単官能(メタ)アクリレート(B)は、本発明のインクのジェッティング性および光硬化性、ならびに、該インクから得られる硬化膜の基板に対する密着性、透過率、強度に影響を与えず、かつ本発明のインクの粘度を下げることのできる化合物である。
また、単官能(メタ)アクリレート(B)を使用することで、該硬化膜から得られるマイクロレンズアレイに必要な基板に対する密着性、透過率、強度を維持することができる。
【0041】
単官能(メタ)アクリレート(B)は上記の特性を満たしている限り特に限定されないが、アルキル部分を有する単官能(メタ)アクリレートが好ましく、より好ましくは、炭素数が1〜6のアルキル部分を有する単官能(メタ)アクリレートであり、さらに好ましくは炭素数が2〜4のアルキル部分を有する単官能(メタ)アクリレートであり、特に好ましくは炭素数が4のアルキル部分を有する単官能(メタ)アクリレートである。
【0042】
単官能(メタ)アクリレート(B)の具体例としては、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、4−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−メチル−2−アダマンチル(メタ)アクリレート、2−メチル−2−アダマンチル(メタ)アクリレート、2−エチル−2−アダマンチル(メタ)アクリレート、3,5−ジメチル−7−ヒドロキシアダマンチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシ−1−メタクリルオキシアダマンタン、3−ヒドロキシ−1−アダマンチル(メタ)アクリレート、エチルシクロペンチル(メタ)アクリレート、3,5−ジヒドロキシ−1−メタクリルオキシアダマンタン、メタクリロイルオキシノルボルナンメタクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、N−アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタルイミド、環状トリメチロールプロパンフォルマルアクリレート、γ−ブチロラクトン(メタ)アクリレート、メバロノラクトン(メタ)アクリレート、環状イミドアクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、メチルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、2−フェノキシエチル(メタ)アクリレート、2−フェノキシエチル(メタ)アクリレートのエチレンオキサイドおよび/又はプロピレンオキサイド付加モノマー、4−t−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシルジメタノールモノ(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピルアクリレート、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、へプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、1、4-シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、3−メトキシブチル(メタ)アクリレート、エトキシエトキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、エチルジグリコール(メタ)アクリレート、グリセロールモノ(メタ)アクリレート、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート、メチルグリシジル(メタ)アクリレート、3−メチル−3−(メタ)アクリロキシメチルオキセタン、3−エチル−3−(メタ)アクリロキシメチルオキセタン、3−メチル−3−(メタ)アクリロキシエチルオキセタン、3−エチル−3−(メタ)アクリロキシエチルオキセタン、p−ビニルフェニル−3−エチルオキセタン−3−イルメチルエーテル、2−フェニル−3−(メタ)アクリロキシメチルオキセタン、2−トリフロロメチル−3−(メタ)アクリロキシメチルオキセタン、4−トリフロロメチル−2−(メタ)アクリロキシメチルオキセタン、(3−エチル−3−オキセタニル)メチル(メタ)アクリレート、ω−カルボキシポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート、コハク酸モノ[2−(メタ)アクリロイロキシエチル]、マレイン酸モノ[2−(メタ)アクリロイロキシエチル]および2−(メタ)アクリロイロキシエチルアシッドホスフェート、および(メタ)アクリル酸、が挙げられる。
【0043】
これらの中でも、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、又はメチル(メタ)アクリレートを用いると、ジェッティング性および光硬化性、ならびに、該インクから得られる硬化膜の透過率、基板に対する密着性、高強度のバランスが良好となる。これらの観点からより好ましくは、n−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレートであり、さらに好ましくはn−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレートである。
【0044】
単官能(メタ)アクリレート(B)は、1種の化合物であっても、2種以上の化合物の混合物であってもよい。
【0045】
単官能(メタ)アクリレート(B)の含有量は、本発明のインク総量の20〜60重量%であると、該インクを、使用する用途に合わせた粘度に調整できるので好ましく、他特性とのバランスを考慮すると、より好ましくは25〜50重量%であり、さらに好ましくは30〜45重量%であり、特に好ましくは30〜40重量%である。
【0046】
<1.4.光重合開始剤(C)>
本発明のインクジェット用インクは、光重合開始剤(C)を含む。光重合開始剤(C)は、紫外線あるいは可視光線の照射によりラジカルを発生することのできる化合物であれば特に限定されないが、α−ヒドロキシルアルキルフェノン系、又は、アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤が好ましく、その中でも特にアシルフォスフィンオキサイド系化合物が、光硬化性、該インクから得られる硬化膜の透過率の観点からより好ましい。
また、該硬化膜から得られるマイクロレンズアレイの透過率の観点からも、特にアシルフォスフィンオキサイド系化合物が好ましい。
【0047】
光重合開始剤(C)の具体例としては、ベンゾフェノン、ミヒラーズケトン、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、キサントン、チオキサントン、イソプロピルキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2−エチルアントラキノン、アセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−4’−イソプロピルプロピオフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、イソプロピルベンゾインエーテル、イソブチルベンゾインエーテル、2,2−ジエトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、カンファーキノン、ベンズアントロン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン−1、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、4,4’−ジ(t−ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,4,4’−トリ(t−ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’,4,4’−テトラ(t−ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’,4,4’−テトラ(t−ヘキシルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’−ジ(メトキシカルボニル)−4,4’−ジ(t−ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,4’−ジ(メトキシカルボニル)−4,3’−ジ(t−ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、4,4’−ジ(メトキシカルボニル)−3,3’−ジ(t−ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、2−(4’−メトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(3’,4’−ジメトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(2’,4’−ジメトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(2’−メトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4’−ペンチルオキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、4−[p−N,N−ジ(エトキシカルボニルメチル)]−2,6−ジ(トリクロロメチル)−s−トリアジン、1,3−ビス(トリクロロメチル)−5−(2’−クロロフェニル)−s−トリアジン、1,3−ビス(トリクロロメチル)−5−(4’−メトキシフェニル)−s−トリアジン、2−(p−ジメチルアミノスチリル)ベンズオキサゾール、2−(p−ジメチルアミノスチリル)ベンズチアゾール、2−メルカプトベンゾチアゾール、3,3’−カルボニルビス(7−ジエチルアミノクマリン)、2−(o−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニル−1,2’−ビイミダゾール、2,2’−ビス(2−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラキス(4−エトキシカルボニルフェニル)−1,2’−ビイミダゾール、2,2’−ビス(2,4−ジクロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニル−1,2’−ビイミダゾール、2,2’−ビス(2,4−ジブロモフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニル−1,2’−ビイミダゾール、2,2’−ビス(2,4,6−トリクロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニル−1,2’−ビイミダゾール、3−(2−メチル−2−ジメチルアミノプロピオニル)カルバゾール、3,6−ビス(2−メチル−2−モルホリノプロピオニル)−9−n−ドデシルカルバゾール、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ビス(η5−2,4−シクロペンタジエン−1−イル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)−フェニル)チタニウム、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイドおよび2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイドを挙げることができる。
【0048】
この中でも特に、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−4’−イソプロピルプロピオフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイドおよび2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイドがより好ましい。
【0049】
光重合開始剤(C)は、1種の化合物であっても、2種以上の化合物の混合物であってもよい。
【0050】
光重合開始剤(C)の含有量は、本発明のインク総量の1〜20重量%であると、本発明のインクは紫外線に対して特に光硬化性に優れ、高透過率も維持できるため好ましく、より好ましくは2〜15重量%であり、さらに好ましくは3〜10重量%である。
【0051】
<1.5.その他の成分>
本発明のインクジェット用インクは、各種特性を向上させるためにフェノール樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、エポキシ硬化剤、界面活性剤、着色剤および重合禁止剤などのその他の成分を含んでもよい。
【0052】
(1.5.1.フェノール樹脂)
本発明のインクジェット用インクには、該インクから得られる硬化膜の強度を向上させるために、フェノール樹脂を含有させてもよい。
【0053】
フェノール樹脂としては、フェノール性水酸基を有する芳香族化合物とアルデヒド類との縮合反応により得られるノボラック樹脂、ビニルフェノールの単独重合体(水素添加物を含む)、および、ビニルフェノールとこれと共重合可能な化合物とのビニルフェノール系共重合体(水素添加物を含む)などが好ましく用いられる。
【0054】
フェノール性水酸基を有する芳香族化合物の具体例としては、フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、o−エチルフェノール、m−エチルフェノール、p−エチルフェノール、o−ブチルフェノール、m−ブチルフェノール、p−ブチルフェノール、o−キシレノール、2,3−キシレノール、2,4−キシレノール、2,5−キシレノール、3,4−キシレノール、3,5−キシレノール、2,3,5−トリメチルフェノール、3,4,5−トリメチルフェノール、p−フェニルフェノール、レゾルシノール、ホドロキノン、ヒドロキノンモノメチルエーテル、ピロガロール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、テルペン骨格含有ジフェノール、没食子酸、没食子酸エステル、α−ナフトールおよびβ−ナフトールが挙げられる。
【0055】
アルデヒド類の具体例としては、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、フラフラール、ベンズアルデヒド、ニトロベンズアルデヒドおよびアセトアルデヒドが挙げられる。
【0056】
ビニルフェノールと共重合可能な化合物の具体例としては、(メタ)アクリル酸又はその誘導体、スチレン又はその誘導体、無水マレイン酸、酢酸ビニルおよびアクリロニトリルが挙げられる。
【0057】
フェノール樹脂の具体例としては、レヂトップPSM−6200(群栄化学(株)製)、ショウノールBRG−555(昭和高分子(株)製)、マルカリンカーM S−2P、マルカリンカーCST70およびマルカリンカーPHM−C(丸善石油化学(株)製)が挙げられる。
【0058】
本発明のインクに用いられるフェノール樹脂は、1種の化合物であっても、2種以上の化合物の混合物であってもよい。
【0059】
フェノール樹脂の含有量が、本発明のインク総量の0.5〜20重量%であると、該インクから得られる硬化膜の強度が向上するので好ましく、他特性とのバランスを考慮すると、より好ましくは0.5〜10重量%であり、さらに好ましくは0.5〜7重量%である。
【0060】
(1.5.2.メラミン樹脂)
本発明のインクジェット用インクには、該インクから得られる硬化膜の強度を向上させるために、メラミン樹脂を含有させてもよい。
【0061】
メラミン樹脂は、メラミンとホルムアルデヒドとの重縮合により製造された樹脂であれば特に限定されないが、その具体例として、メチロールメラミン、エーテル化メチロールメラミン、ベンゾグアナミン、メチロールベンゾグアナミン、エーテル化メチロールベンゾグアナミン及びそれらの縮合物を挙げることができ、中でも、メチロールメラミンが好ましい。
【0062】
なお、メラミン樹脂の市販品の具体例としては、ニカラックMW−30、MW−30HM、MW−390、MW−100LM、MX−750LM((株)三和ケミカル製)が挙げられる。
【0063】
本発明のインクに用いられるメラミン樹脂は、1種の化合物であっても、2種以上の化合物の混合物であってもよい。
【0064】
メラミン樹脂の含有量が、本発明のインク総量の0.5〜20重量%であると、該インクから得られる硬化膜の強度が向上するので好ましく、他特性とのバランスを考慮すると、より好ましくは0.5〜10重量%であり、さらに好ましくは0.5〜7重量%である。
【0065】
(1.5.3.エポキシ樹脂)
本発明のインクジェット用インクには、該インクから得られる硬化膜の強度を向上させるために、エポキシ樹脂を含有させてもよい。
【0066】
前記エポキシ樹脂は、1分子中に少なくとも1つの式(2−1)又は式(2−2)で表わされるエポキシドから誘導される構造(以下単に「エポキシ構造」ともいう)を有する化合物であれば、特に限定されない。


【0067】
エポキシ樹脂の具体例としては、例えば、ノボラック型(フェノールノボラック型およびクレゾールノボラック型)、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、水添ビスフェノールA型、水添ビスフェノールF型、ビスフェノールS型、トリスフェノールメタン型、テトラフェノールエタン型、ビキシレノール型、ビフェノール型、脂環式および複素環式エポキシ化合物、また、ジシクロペンタジエン骨格やナフタレン骨格を有するエポキシ化合物が挙げられ、好ましくはノボラック型、ビスフェノールA型およびビスフェノールF型エポキシ化合物、その中でもさらに好ましくはビスフェノールA型およびビスフェノールF型のエポキシ化合物である。
【0068】
エポキシ樹脂は公知の方法で製造することができ、また市販もされている。市販品の例としては、エピコート828、同834、同1001、同1004(ジャパンエポキシレジン(株)製)、エピクロン840、同850、同1050、同2055、(DIC(株)製)、エポトートYD−011、同YD−013、同YD−127、同YD−128(東都化成(株)製)、D.E.R.317、同331、同661、同664(ダウ・ケミカル日本(株)製)、アラルダイド6071、同6084、同GY250、同GY260(チバ・ジャパン(株)製)、スミ−エポキシESA−011、同ESA−014、同ELA−115、同ELA−128(住友化学工業(株)製)、A.E.R.330、同331、同661、同664(旭化成イーマテリアルズ(株)製)等のビスフェノールA型エポキシ化合物;エピコート152、154(ジャパンエポキシレジン(株)製)、D.E.R.431、同438(ダウ・ケミカル日本(株)製)、エピクロンN−730、同N−770、同N−865(DIC(株)製)、エポトートYDCN−701、同YDCN−704(東都化成(株)製)、アラルダイドECN1235、同ECN1273、同ECN1299(チバ・ジャパン(株)製)、XPY307、EPPN−201、EOCN−1025、EOCN−1020、EOCN−104S、RE−306(日本化薬(株)製)、スミ−エポキシESCN−195X、同ESCN−220(住友化学工業(株)製)、A.E.R.ECN−235、同ECN−299(旭化成イーマテリアルズ(株)製)等のノボラック型エポキシ化合物;エピクロン830(DIC(株)製)、JER807(ジャパンエポキシレジン(株)製)、エポトートYDF−170(東都化成(株)製)、YDF−175、YDF−2001、YDF−2004、アラルダイドXPY306(チバ・ジャパン(株)製)等のビスフェノールF型エポキシ化合物;エポトートST−2004、同ST−2007、同ST−3000(東都化成(株)製)等の水添ビスフェノールA型エポキシ化合物;セロキサイド2021P(ダイセル化学工業(株)製)、アラルダイドCY175、同CY179(チバ・ジャパン(株)製)等の脂環式エポキシ化合物;YL−933(ジャパンエポキシレジン(株)製)、EPPN−501、EPPN−502(ダウ・ケミカル日本(株)製)等のトリヒドロキシフェニルメタン型エポキシ化合物;YL−6056、YX−4000、YL−6121(ジャパンエポキシレジン(株)製)等のビキシレノール型もしくはビフェノール型エポキシ化合物又はそれらの混合物;EBPS−200(日本化薬(株)製)、EPX−30((株)ADEKA製)、EXA−1514(DIC(株)製)等のビスフェノールS型エポキシ化合物;
JER157S(ジャパンエポキシレジン(株)製)等のビスフェノールAノボラック型エポキシ化合物;YL−931(ジャパンエポキシレジン(株)製)、アラルダイド163(チバ・ジャパン(株)製)等のテトラフェニロールエタン型エポキシ化合物;
アラルダイドPT810(チバ・ジャパン(株)製)、TEPIC(日産化学工業(株)製)等の複素環式エポキシ化合物;HP−4032、EXA−4750、EXA−4700(DIC(株)製)等のナフタレン基含有エポキシ化合物;HP−7200、HP−7200H、HP−7200HH(DIC(株)製)等のジシクロペンタジエン骨格を有するエポキシ化合物;キシリレンビスオキセタンが挙げられる。
【0069】
本発明のインクに用いられるエポキシ樹脂は、1種の化合物であっても、2種以上の化合物の混合物であってもよい。
エポキシ樹脂の含有量が、インク総量の0.5〜20重量%であると、本発明のインクから得られる硬化膜の強度が向上するので好ましく、より好ましくは0.5〜10重量%であり、さらに好ましくは0.5〜7重量%である。
【0070】
(1.5.4.エポキシ硬化剤)
本発明のインクジェット用インクがエポキシ樹脂を含んでいる場合、硬化膜の強度を向上させるために、さらにエポキシ硬化剤を添加しても良い。エポキシ硬化剤としては、酸無水物系硬化剤、アミン系硬化剤、および触媒型硬化剤などが好ましい。
【0071】
酸無水物系硬化剤の具体例としては、無水マレイン酸、テトラヒドロフタル酸無水物、ヘキサヒドロフタル酸無水物、メチルヘキサヒドロフタル酸無水物、ヘキサヒドロトリメリット酸無水物、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、3,6−エンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサクロルエンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、メチル−3,6−エンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸およびスチレン−無水マレイン酸共重合体が挙げられる。
【0072】
アミン系硬化剤の具体例としては、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ジシアンジアミド、ポリアミドアミン(ポリアミド樹脂)、ケチミン化合物、イソホロンジアミン、m−キシレンジアミン、m−フェニレンジアミン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、N−アミノエチルピペラジン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジエチルジフェニルメタンおよびジアミノジフェニルスルフォンが挙げられる。
【0073】
触媒型硬化剤の具体例としては、3級アミン化合物およびイミダゾール化合物が挙げられる。
【0074】
本発明のインクに用いられるエポキシ硬化剤は、1種の化合物であっても、2種以上の化合物の混合物であってもよい。
【0075】
エポキシ硬化剤の含有量が、本発明のインク総量の0.5〜20重量%であると、本発明のインクから得られる硬化膜の強度が向上するので好ましく、より好ましくは0.5〜10重量%であり、さらに好ましくは0.5〜7重量%である。
【0076】
(1.5.5.界面活性剤)
本発明のインクジェット用インクは、例えば、下地基板への濡れ性や、該インクから得られる硬化膜の膜面均一性を向上させるために界面活性剤を含んでもよい。界面活性剤としては、シリコン系界面活性剤、アクリル系界面活性剤及びフッ素系界面活性剤などが用いられる。
【0077】
界面活性剤の具体例としては、Byk−300、同306、同335、同310、同341、同344、及び同370(ビックケミー・ジャパン(株)製)などのシリコン系界面活性剤、Byk−354、同358、及び同361(ビックケミー・ジャパン(株)製)などのアクリル系界面活性剤、DFX−18、フタージェント250、又は同251((株)ネオス製)およびメガファックF−475、F−477、F−553、F−554(DIC(株)製)などのフッ素系界面活性剤を挙げることができる。
【0078】
本発明のインクに用いられる界面活性剤は、1種の化合物であっても、2種以上の化合物の混合物であってもよい。
【0079】
界面活性剤の含有量が、本発明のインク総量の0.001〜1重量%であると、該インクから得られる硬化膜の膜面均一性が向上するので好ましく、他特性とのバランスを考慮すると、より好ましくは0.001〜0.1重量%であり、さらに好ましくは0.001〜0.05重量%である。
【0080】
(1.5.6.他のラジカル重合性二重結合を有する化合物)
本発明のインクジェット用インクは、式(1)で表される(メタ)アクリル酸エステル(A)及び単官能(メタ)アクリレート(B)以外にも、本発明のインクのジェッティング性および光硬化性、ならびに、該インクから得られる硬化膜の基板に対する密着性、透過率、強度を損なわない範囲で、他のラジカル重合性二重結合を有する化合物を添加しても良い。
【0081】
他のラジカル重合性二重結合を有する化合物の具体例としては、ビス(ヒドロキシメチル)トリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメチロールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールF EO変性ジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールA EO変性ジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸EO変性ジ及びトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリストールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、又はトリメチロールプロパントリオキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸ダイマー、クロトン酸、α−クロルアクリル酸、ケイ皮酸、マレイン酸、フマル酸、N-ビニルホルムアミド、及びポリメチルメタクリレートマクロモノマー、N−シクロヘキシルマレイミド、N−フェニルマレイミド、(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、およびN−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミドが挙げられる。
【0082】
本発明のインクに用いられる他のラジカル重合性二重結合を有する化合物は1種の化合物であっても、2種以上の化合物の混合物であってもよい。
【0083】
他のラジカル重合性二重結合を有する化合物の含有量が、本発明のインク総量の0.1〜20重量%であると、光硬化性、硬化膜の基板に対する密着性、透過率、強度のバランスが良いので好ましく、より好ましくは0.1〜10重量%であり、さらに好ましくは0.1〜5重量%である。
【0084】
(1.5.7.溶媒)
本発明のインクジェット用インクは、本発明のインクのジェッティング性および光硬化性、ならびに、該インクから得られる硬化膜の基板に対する密着性、透過率、強度を損なわない範囲で、溶媒を添加しても良い。
【0085】
本発明に用いることができる溶媒としては、沸点がインクジェットヘッドを加熱する温度よりも高い溶媒、より具体的には沸点が100〜300℃の溶媒が、ジェッティング特性の観点から好ましい。インクジェットヘッドを高温(例えば70〜120℃)に加熱する場合には、沸点が200〜300℃の溶媒が好ましい。
ただし、インクジェットヘッドを加熱する場合には、基本的に本発明のインクに溶媒は含有させないことが好ましい。
【0086】
沸点が100〜300℃である溶媒の具体例としては、酢酸ブチル、プロピオン酸ブチル、乳酸エチル、オキシ酢酸メチル、オキシ酢酸エチル、オキシ酢酸ブチル、メトキシ酢酸メチル、メトキシ酢酸エチル、メトキシ酢酸ブチル、エトキシ酢酸メチル、エトキシ酢酸エチル、3−オキシプロピオン酸メチル、3−オキシプロピオン酸エチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、2−オキシプロピオン酸メチル、2−オキシプロピオン酸エチル、2−オキシプロピオン酸プロピル、2−メトキシプロピオン酸メチル、2−メトキシプロピオン酸エチル、2−メトキシプロピオン酸プロピル、2−エトキシプロピオン酸メチル、2−エトキシプロピオン酸エチル、2−オキシ−2−メチルプロピオン酸メチル、2−オキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、2−メトキシ−2−メチルプロピオン酸メチル、2−エトキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、ピルビン酸プロピル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、2−オキソブタン酸メチル、2−オキソブタン酸エチル、ジオキサン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、トルエン、キシレン、アニソール、γ−ブチロラクトン、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドンおよびジメチルイミダゾリジノンが挙げられる。
【0087】
本発明のインクに用いられる溶媒は1種の化合物であっても、2種以上の化合物の混合物であってもよい。
【0088】
溶媒の含有量が、本発明のインク総量の0.1〜20重量%であると、ジェッティング中にノズルが乾燥し難いために好ましい。他特性とのバランスを考慮すると、より好ましくは0.1〜10重量%であり、さらに好ましくは0.1〜5重量%である。
【0089】
(1.5.8.重合禁止剤)
本発明のインクジェット用インクは、保存安定性を向上させるために重合禁止剤を含んでもよい。重合禁止剤の具体例としては、4−メトキシフェノール、ヒドロキノンおよびフェノチアジンを挙げることができる。これらの中でもフェノチアジンが長期の保存においてもインクの粘度の変化(増加)が小さいために好ましい。
【0090】
本発明のインクに用いられる重合禁止剤は、1種の化合物であっても、2種以上の化合物の混合物であってもよい。
【0091】
重合禁止剤の含有量が、本発明のインク総量の0.01〜1重量%であると、長期の保存においても粘度の変化が小さいために好ましく、他特性とのバランスを考慮すると、より好ましくは0.01〜0.5重量%であり、さらに好ましくは0.01〜0.1重量%である。
【0092】
<1.6.本発明の光硬化性インクジェット用インクの調製方法>
本発明のインクジェット用インクは、原料となる各成分を公知の方法により混合することで調製することができる。
特に、本発明のインクは、前記(A)〜(C)成分および必要に応じてその他の成分を混合し、得られた溶液をろ過して脱気することにより調製されることが好ましい。そのようにして調製された本発明のインクは、ジェッティング性に優れる。前記ろ過には、例えばフッ素樹脂製のメンブレンフィルターが用いられる。
【0093】
<1.7.本発明のインクジェット用インクの保存>
本発明のインクジェット用インクは、−20〜25℃で保存すると保存中の粘度変化(増加)が小さく、保存安定性が良好である。
【0094】
[2.インクジェット方法によるインクジェット用インクの塗布]
本発明のインクジェット用インクは、公知のインクジェット塗布方法を用いて塗布することができる。インクジェット塗布方法としては、例えば、インクに力学的エネルギーを作用させてインクをインクジェットヘッドから吐出(塗布)させる方法(いわゆるピエゾ方式)、及びインクに熱エネルギーを作用させてインクを塗布させる塗布方法(いわゆるバブルジェット(登録商標)方式)等がある。
【0095】
インクジェット塗布方法を用いることにより、インクジェット用インクを予め定められたパターン状に塗布することができる。
【0096】
インクジェットヘッドとしては、例えば、金属及び/又は金属酸化物を含有する発熱部接液面を有するものが挙げられる。金属及び/又は金属酸化物の具体例としては、例えば、Ta、Zr、Ti、Ni、Al等の金属、及びこれらの金属の酸化物等が挙げられる。
【0097】
本発明のインクを用いて塗布を行うのに好ましい塗布装置としては、例えば、インクが収容されるインク収容部を有するインクジェットヘッドの室内のインクに、塗布信号に対応したエネルギーを与え、前記エネルギーによりインク液滴を発生させながら、前記塗布信号に対応した塗布(描画)を行う装置が挙げられる。
【0098】
インクジェット塗布装置は、インクジェットヘッドとインク収容部とが分離されているものに限らず、それらが分離不能に一体になったものを用いてもよい。また、インク収容部はインクジェットヘッドに対し分離可能又は分離不能に一体化されてキャリッジに搭載されるもののほか、装置の固定部位に設けられて、インク供給部材、例えばチューブを介してインクジェットヘッドにインクを供給する形態のものでもよい。
【0099】
また、前述のようにインクジェットヘッドの加熱温度は40〜120℃が好ましく、その加熱温度における本発明のインクの粘度は、1〜30mPa・sであることが好ましい。
【0100】
[3.硬化膜の形成]
本発明の硬化膜は、上述した本発明のインクジェット用インクをインクジェット法により基板表面に塗布した後に、該インクに紫外線や可視光線等の光を照射して塗膜を硬化させることで得られる。
【0101】
紫外線や可視光線等を照射する場合、照射する露光量は、前記インクの組成に依存するが、ウシオ電機(株)製の受光器UVD−365PDを取り付けた積算光量計UIT−201で測定して、100〜5,000mJ/cm2程度が好ましく、200〜4000mJ/cm2程度がより好ましく、300〜3000mJ/cm2程度がさらに好ましい。また、照射する紫外線や可視光線等の波長は、200〜500nmが好ましく、300〜450nmがより好ましい。
なお、以下に記載するUV露光量はウシオ電機(株)製の受光器UVD−365PDを取り付けた積算光量計UIT−201で測定した値である。
【0102】
なお、露光機としては、高圧水銀灯ランプ、超高圧水銀灯ランプ、メタルハライドランプ、ハロゲンランプ等を搭載し、250〜500nmの範囲で、紫外線や可視光線等を照射する装置であれば特に限定されない。
【0103】
また、必要に応じて、光の照射により硬化した上記硬化膜をさらに加熱・焼成してもよく、80〜250℃で10〜60分間加熱・焼成をすることによって、硬化膜をより強固に硬化させることができる。
【0104】
本発明に使用できる、本発明のインクが塗布される「基板」は、本発明のインクが塗布される対象となり得るものであれば特に限定されず、その形状は平板状に限られず、曲面状であってもよい。
【0105】
また、基板の材質は特に限定されないが、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)およびポリブチレンテレフタレート(PBT)などのポリエステル系樹脂、ポリエチレンおよびポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂、ポリ塩化ビニル、フッ素樹脂、アクリル系樹脂、ポリアミド、ポリカーボネートおよびポリイミドなどのプラスチックフィルム、セロハン、アセテート、金属箔、ポリイミドと金属箔との積層フィルム、目止め効果があるグラシン紙、パーチメント紙、ならびに、ポリエチレン、クレーバインダー、ポリビニルアルコール、でんぷん又はカルボキシメチルセルロース(CMC)などで目止め処理した紙およびガラスを挙げることができる。
【0106】
これらの基板を構成する物質には、本発明の効果に悪影響を及ぼさない範囲において、さらに、酸化防止剤、劣化防止剤、充填剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤及び/又は電磁波防止剤などの添加剤を含有させてもよい。また、基板の表面の一部には、必要により撥水処理、コロナ処理、プラズマ処理、又はブラスト処理などの易接着処理を施したり、表面に易接着層やカラーフィルター用保護膜、ハードコート膜を設けたりしてもよい。
【0107】
基板の厚さは特に限定されないが、通常、10μm〜2mm程度であり、使用する目的により適宜調整されるが、15μm〜1.5mmが好ましく、20μm〜1mmがさらに好ましい。
【0108】
基板の用途は特に限定されないが、本発明のインクジェット用インクから得られる硬化膜は基板に対する密着性に優れ、高透過率、高強度を示すため、特に、バックライト装置に使用されるマイクロレンズアレイの製造に用いることが好ましい。
【0109】
このようなバックライト装置に使用されるマイクロレンズアレイなどとして機能する本発明の硬化膜のドット径は特に限定されないが、通常10〜100μmが好ましく、20〜60μmがさらに好ましく、30〜50μmが特に好ましい。また、ドットの高さについても特に限定されないが、通常0.5〜10μmが好ましく、1〜8μmがさらに好ましく、2〜6μmが特に好ましい。
【0110】
上記のようにして本発明の硬化膜を用いて製造されたバックライトを実装することで、例えば液晶表示素子用の液晶ディスプレイを作製することができる。
【実施例】
【0111】
以下、実施例により本発明をさらに説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
【0112】
<インクジェット用インクの調製及び硬化膜パターン形成基板の作製>
まず、実施例1〜6及び比較例1〜4に係るインクジェット用インク及びそれから得られた硬化膜パターン形成基板について説明する。
【0113】
[実施例1]
式(1)で表される(メタ)アクリル酸エステル(A)としてEO変性(3モル)グリセリントリアクリレートであるA-GLY-3E(新中村化学工業(株)製)と、単官能(メタ)アクリレート(B)としてn−ブチルメタクリレート(東京化成工業(株)製)と、光重合開始剤(C)として、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイドであるDAROCUR TPO(商品名;チバ・ジャパン(株)製)と、重合禁止剤としてフェノチアジン(東京化成工業(株)製)とを下記組成割合にて混合・溶解した後、1μmのPTFE製のメンブレンフィルターでろ過し、インクジェット用インク1を調製した。
(A) A-GLY-3E 350.00g
(B) n−ブチルメタクリレート 200.00g
(C) DAROCUR TPO 55.00g
(その他)フェノチアジン 0.28g
E型粘度計(東機産業(株)製 TV−22、以下同じ)を用い、25℃におけるインクジェット用インク1の粘度を測定した結果、12mPa・sであった。
【0114】
4cm角のガラス基板(厚さ:0.7mm)を2枚用意し、インクジェット用インク1をインクジェットカートリッジに注入し、これをインクジェット装置(FUJIFILM Dimatix Inc.製のDMP−2831)に装着し、10pl用のヘッドを用いて、吐出電圧(ピエゾ電圧)16V、ヘッド温度30℃、駆動周波数5kHz、塗布回数1回の吐出条件で、一方のガラス基板上に設計値が直径40μmのドットパターンを描画し、他方のガラス基板上の中心部に一片が3cmの正方形のパターンを描画した。
【0115】
インクジェット用インク1を用いてドットパターン及び正方形パターンを描画した2枚の基板に、UV照射装置((株)ジャテック製のJ−CURE1500)を用いて紫外線を2000mJ/cm2のUV露光量で照射することで、ドット径40μm、高さ5.0μmのドットを形成した基板1a及び一片が3cm、厚さ5.0μmの正方形のパターンを形成した基板1bを得た。
【0116】
[実施例2]
式(1)で表される(メタ)アクリル酸エステル(A)としてトリメチロールプロパンEO変性(3モル)トリアクリレートであるM−350(東亞合成(株)製)を用い、下記組成割合とした以外は、実施例1と同様にして、インクジェット用インク2を調製した。
(A) M−350 350.00g
(B) n−ブチルメタクリレート 200.00g
(C) DAROCUR TPO 55.00g
(その他)フェノチアジン 0.28g
E型粘度計を用い、25℃におけるインクジェット用インク2の粘度を測定した結果、10mPa・sであった。
【0117】
インクジェット用インク2を用い、実施例1と同様の方法で、ドット径40μm、高さ4.9μmのドットパターンを形成した基板2a及び一片が3cm、厚さ4.8μmの正方形のパターンを形成した基板2bを得た。
【0118】
[実施例3]
単官能(メタ)アクリレート(B)としてエチルメタクリレート(東京化成工業(株)製)用い、下記組成割合とした以外は、実施例1と同様にして、インクジェット用インク3を調製した。
(A) A-GLY-3E 350.00g
(B) エチルメタクリレート 200.00g
(C) DAROCUR TPO 55.00g
(その他)フェノチアジン 0.28g
E型粘度計を用い、25℃におけるインクジェット用インク3の粘度を測定した結果、9mPa・sであった。
【0119】
インクジェット用インク3を用い、実施例1と同様の方法で、ドット径39μm、高さ4.8μmのドットパターンを形成した基板3a及び一片が3cm、厚さ4.8μmの正方形のパターンを形成した基板3bを得た。
【0120】
[実施例4]
単官能(メタ)アクリレート(B)としてn−ヘキシルメタクリレート(東京化成工業(株)製)用い、下記組成割合とした以外は、実施例1と同様にして、インクジェット用インク4を調製した。
(A) A-GLY-3E 350.00g
(B) n−ヘキシルメタクリレート 200.00g
(C) DAROCUR TPO 55.00g
(その他)フェノチアジン 0.28g
E型粘度計を用い、25℃におけるインクジェット用インク4の粘度を測定した結果、14mPa・sであった。
【0121】
インクジェット用インク4を用い、実施例1と同様の方法で、ドット径41μm、高さ5.1μmのドットパターンを形成した基板4a及び一片が3cm、厚さ5.1μmの正方形のパターンを形成した基板4bを得た。
【0122】
[実施例5]
式(1)で表される(メタ)アクリル酸エステル(A)であるA-GLY-3Eを増量して下記組成割合とした以外は、実施例1と同様にして、インクジェット用インク5を調製した。
(A) A-GLY-3E 600.00g
(B) n−ブチルメタクリレート 200.00g
(C) DAROCUR TPO 80.00g
(その他)フェノチアジン 0.40g
E型粘度計を用い、25℃におけるインクジェット用インク5の粘度を測定した結果、87mPa・sであった。
【0123】
インクジェット用インク5を用い、ヘッド温度を70℃にした以外は実施例1と同様の方法で、ドット径40μm、高さ5.3μmのドットパターンを形成した基板5a及び一片が3cm、厚さ5.3μmの正方形のパターンを形成した基板5bを得た。
【0124】
[実施例6]
式(1)で表される(メタ)アクリル酸エステル(A)であるA-GLY-3Eを減量し、その代わりにその他成分のトリメチロールプロパントリアクリレートであるM−309(東亞合成(株)製)を添加して下記組成割合とした以外は、実施例1と同様にして、インクジェット用インク6を調製した。
(A) A-GLY-3E 200.00g
(その他)M−309 150.00g
(B) n−ブチルメタクリレート 200.00g
(C) DAROCUR TPO 55.00g
(その他)フェノチアジン 0.28g
E型粘度計を用い、25℃におけるインクジェット用インク6の粘度を測定した結果、10mPa・sであった。
【0125】
インクジェット用インク6を用い、実施例1と同様の方法で、ドット径40μm、高さ4.9μmのドットパターンを形成した基板6a及び一片が3cm、厚さ5.0μmの正方形のパターンを形成した基板6bを得た。
【0126】
[比較例1]
式(1)で表される(メタ)アクリル酸エステル(A)であるA-GLY-3Eをさらに減量し、その代わりにその他成分のトリメチロールプロパントリアクリレートであるM−309を添加して下記組成割合とした以外は、実施例1と同様にして、インクジェット用インク7を調製した。
(A) A-GLY-3E 100.00g
(その他)M−309 250.00g
(B) n−ブチルメタクリレート 200.00g
(C) DAROCUR TPO 55.00g
(その他)フェノチアジン 0.28g
E型粘度計を用い、25℃におけるインクジェット用インク7の粘度を測定した結果、10mPa・sであった。
【0127】
インクジェット用インク7を用い、実施例1と同様の方法で、ドット径40μm、高さ4.9μmのドットパターンを形成した基板7a及び一片が3cm、厚さ5.0μmの正方形のパターンを形成した基板7bを得た。
【0128】
[比較例2]
式(1)で表される(メタ)アクリル酸エステル(A)の代わりに、その他成分のトリメチロールプロパントリアクリレートであるM−309を添加して下記組成割合とした以外は、実施例1と同様にして、インクジェット用インク8を調製した。
(その他)M−309 350.00g
(B) n−ブチルメタクリレート 200.00g
(C) DAROCUR TPO 55.00g
(その他)フェノチアジン 0.28g
E型粘度計を用い、25℃におけるインクジェット用インク8の粘度を測定した結果、9mPa・sであった。
【0129】
インクジェット用インク8を用い、実施例1と同様の方法で、ドット径39μm、高さ4.8μmのドットパターンを形成した基板8a及び一片が3cm、厚さ4.9μmの正方形のパターンを形成した基板8bを得た。
【0130】
[比較例3]
式(1)で表される(メタ)アクリル酸エステル(A)の代わりに、その他成分のプロピレンオキサイド変性ネオペンチルジアクリレートであるSR−9003(サートマージャパン(株)製)を添加して下記組成割合とした以外は、実施例1と同様にして、インクジェット用インク9を調製した。
(その他)SR−9003 600.00g
(B) n−ブチルメタクリレート 200.00g
(C) DAROCUR TPO 60.00g
(その他)フェノチアジン 0.30g
E型粘度計を用い、25℃におけるインクジェット用インク9の粘度を測定した結果、6mPa・sであった。
【0131】
インクジェット用インク9を用い、実施例1と同様の方法でパターン基板の作製を試みたが、硬化性不良のため、ドットパターン、硬化膜が得られなかった。
【0132】
[比較例4]
式(1)で表される(メタ)アクリル酸エステル(A)であるA-GLY-3E、単官能(メタ)アクリレート(B)と、さらにその他成分のプロピレンオキサイド変性ネオペンチルジアクリレートであるSR−9003を添加して下記組成割合とした以外は、実施例1と同様にして、インクジェット用インク10を調製した。
(A) A-GLY-3E 200.00g
(その他)SR−9003 200.00g
(B) n−ブチルメタクリレート 100.00g
(C) DAROCUR TPO 50.00g
(その他)フェノチアジン 0.25g
E型粘度計を用い、25℃におけるインクジェット用インク10の粘度を測定した結果、13mPa・sであった。
【0133】
インクジェット用インク10を用い、実施例1と同様の方法で、ドット径40μm、高さ5.1μmのドットパターンを形成した基板10a及び一片が3cm、厚さ5.2μmの正方形のパターンを形成した基板10bを得た。
【0134】
<インクジェット用インク及びパターン状硬化膜の評価>
続いて、上記で得られたインクジェット用インクのジェッティング性、光硬化性、硬化膜の基板に対する密着性、硬化膜の透過率、強度を評価した。各試験方法は以下のとおりで、評価結果を表1、表2に示す。
【0135】
(インクのジェッティング性試験)
各実施例及び比較例で得られた基板(1a〜10a、1b〜10b)上のドットパターン、また、3cm角の正方形パターンの乱れ、印刷のかすれを観察して、インクのジェッティング性を評価した。評価基準は以下のとおりである。
○:パターンの乱れ、印刷のかすれが全くない
△:パターンの乱れ、印刷のかすれが多い
×:インクを吐出できない(つまり、パターンの形成ができない)。
【0136】
(光硬化性試験)
各実施例及び比較例で得られた3cm角の正方形パターン基板(1b〜10b)表面を指触し、硬化膜の表面状態を顕微鏡観察した。評価基準は以下のとおりである。
○:硬化膜表面に指触跡が全く残らない。
△:硬化膜表面に指触跡が僅かに残る。
×:硬化膜表面に指触跡が完全に残る。
【0137】
(硬化膜の透過率測定)
透過率測定装置V−670(日本電子(株)製)を用いて各実施例及び比較例で得られた3cm角の正方形パターン基板(1b〜10b)を用い、波長400nmでの透過率を測定した。リファレンスとして、硬化膜を形成していない4cm角のガラス基板(厚さ:0.7mm)を用いた。
【0138】
(硬化膜の基板に対する密着性試験)
各実施例及び比較例で得られたドットパターン基板(1a〜10a)に粘着テープ(住友スリーエム(株)製「ポリエステルテープNo.56:粘着力;5.5N/cm」)を貼り付け、その後、剥離した際に基板上に残ったドットパターンの状態を観察することで、硬化膜の基板への密着性を評価した。なお、評価基準は以下の通りである。
○:ドットパターンは全く変化なかった
△:一部のドットが剥がれた
×:全てのドットが剥がれた
【0139】
(強度測定)
各実施例及び比較例で得られた3cm角の正方形パターン基板(1b〜10b)を用い、JIS5400に準じて、鉛筆硬度を測定することで、強度を調べた。
【0140】
以上の評価結果を下記表1及び2に示す。
【表1】


【表2】

【0141】
表1に示す結果から明らかなように、本発明にかかるインクジェット用インクを用いて得られた基板1a〜10a、1b〜10bには、パターンの乱れ、印刷のかすれが見られず、ジェッティング特性は良好であった。
【0142】
続いて、基板1b〜10bにおいて、インクの光硬化性を評価したところ、評価した基板のうち、基板9b以外の全ての基板において、硬化膜表面に指触跡が全く残らず、良好であった。
【0143】
一方、基板9bにおいては、硬化膜表面に指触跡が完全に残り、硬化性不良であるため、その後の試験を中断した。
【0144】
また、基板1b〜8b、10bを用いて、400nm光線の透過率を測定したところ、基板1b>基板3b>基板4b>基板10b>基板2b>基板6bの順に透過率が高かった。一方、基板7b、基板8bの透過率は96%以下と低かった。
【0145】
さらに、基板1a〜8a、10aを用いて、硬化膜の密着性を評価したところ、基板1a〜6a、10aのドットパターンには全く変化がなく、密着性が良好であった。一方、基板7a〜8aにおいては、一部のドットに剥がれが見られ、密着性が低下していた。
【0146】
最後に、基板1b〜8b、10bを用いて、強度を測定したところ、基板1b〜8bの硬化膜は、3Hの鉛筆硬度を示した。一方、基板10bの硬化膜は、Hの鉛筆硬度を示し、強度が低かった。
【産業上の利用可能性】
【0147】
以上説明したように、本発明によれば、インクのジェッティング性、光硬化性、硬化膜の基板に対する密着性に優れ、高透過率、高強度を示す硬化膜を形成することが可能なインクジェット用インクを得ることができ、液晶ディスプレイや表示パネルなどの光学機器を製造するために好適に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)で表される(メタ)アクリル酸エステル(A)、単官能(メタ)アクリレート(B)、及び光重合開始剤(C)を含有する光硬化性インクジェット用インクであって、該インクより得られた硬化膜(膜厚5μm)の400nmにおける透過率が96%以上である、光硬化性インクジェット用インク。



(式中、R、R、R、及びRはそれぞれ独立に水素又は炭素数が1〜6のアルキルであり、R、R、R及びRはそれぞれ独立に炭素数が1〜6のアルキレンであり、kは0又は1であり、l、m、及びnはそれぞれ独立に1〜10の整数である。)
【請求項2】
インク総重量に対して、式(1)で表される(メタ)アクリル酸エステル(A)を30〜70重量%、単官能(メタ)アクリレート(B)を20〜60重量%、光重合開始剤(C)を1〜20重量%含有する、請求項1に記載のインクジェット用インク。
【請求項3】
式(1)において、R、R、及びRはそれぞれ独立に炭素数が2、又は3のアルキレンである、請求項1又は2に記載のインクジェット用インク。
【請求項4】
式(1)において、Rが水素であり、kが0である、請求項1〜3のいずれかに記載のインクジェット用インク。
【請求項5】
式(1)において、l、m、及びnが1である、請求項1〜4のいずれかに記載のインクジェット用インク。
【請求項6】
単官能(メタ)アクリレート(B)が、炭素数が1〜6のアルキルを有する単官能(メタ)アクリレートである、請求項1〜5のいずれかに記載のインクジェット用インク。
【請求項7】
単官能(メタ)アクリレート(B)が、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、又はメチル(メタ)アクリレートからなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項1〜6のいずれかに記載のインクジェット用インク。
【請求項8】
光重合開始剤(C)が、α−ヒドロキシルアルキルフェノン系又はアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤である、請求項1〜7のいずれかに記載のインクジェット用インク。
【請求項9】
さらに重合禁止剤を含有する、請求項1〜8のいずれかに記載のインクジェット用インク。
【請求項10】
式(1)で表される(メタ)アクリル酸エステル(A)としてエチレンオキサイド変性グリセリントリアクリレート(エチレンオキサイド変性:3モル)、単官能(メタ)アクリレート(B)としてn−ブチル(メタ)アクリレート、光重合開始剤(C)として2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、重合禁止剤としてフェノチアジンを含有する、請求項9に記載のインクジェット用インク。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれかに記載のインクジェット用インクを硬化させて得られる硬化膜。
【請求項12】
請求項11に記載の硬化膜から得られるマイクロレンズアレイ。
【請求項13】
請求項12に記載のマイクロレンズアレイを有する、光学機器。

【公開番号】特開2011−132349(P2011−132349A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−292444(P2009−292444)
【出願日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【出願人】(311002067)JNC株式会社 (208)
【Fターム(参考)】