説明

インクジェット用ブラックインク、インクセット、インクジェット記録方法、インクカートリッジ、記録ユニット及びインクジェット記録装置

【課題】 耐候性、光学濃度及び記録ヘッドのノズル耐固着性を向上することができるインクジェット用ブラックインクを提供すること。
【解決手段】 少なくとも、色材及び水溶性有機溶剤を含有するインクジェット用ブラックインクにおいて、前記色材が、下記一般式(I)で表される化合物又はその塩であり、20℃における比誘電率が30.0以上70.0未満であり、且つ、25℃において下記一般式(I)で表される化合物又はその塩を1.0質量%以上溶解することができる水溶性有機溶剤の含有量が、インクジェット用ブラックインクに含有される全ての水溶性有機溶剤の含有量の合計に対して50.0質量%以上であることを特徴とするインクジェット用ブラックインク。
一般式(I)
【化1】

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット用ブラックインク、インクセット、インクジェット記録方法、インクカートリッジ、記録ユニット及びインクジェット記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録方式は、インクの微小液滴を種々の作動原理により吐出させて、紙等の記録媒体に付着させることにより、画像、文字等を記録するものである。又、インクジェット記録方式は、高速低騒音、多色化が容易であり、記録パターンの融通性が大きい、又、現像、定着が不要であるという特徴を有するため、近年、各種画像を形成する記録装置として、情報機器をはじめ各種の用途において急速に普及している。更に、多色インクジェット方式により形成される画像は、製版方式による多色印刷や、カラー写真方式による印画と比較しても遜色のない記録を得ることも可能であり、作成部数が少ない場合には通常の多色印刷や印画よりも安価であることから、フルカラー画像記録分野にまで広く応用されつつある。
【0003】
又、近年、インクジェット用の記録媒体として、銀塩写真に匹敵、或いはそれを凌ぐ画質を得るためにアルミナやシリカのような多孔体をインク受容材料として使用した記録媒体が使用されている。特にアルミナ水和物を用いた記録媒体は、アルミナ水和物が正電荷を持っているため、インク中で負電荷を有する色材の定着が良く、発色の良い画像が得られ、特にフルカラー画像における画質及び光沢の点で従来の記録媒体に比べ好ましいなどの長所を有している。
【0004】
インクジェット記録方法において用いられるインクは、インクジェット適性等の信頼性の他にも、記録物に十分な光学濃度を与えること、乾燥性が良いこと、記録画像ににじみがないこと、水、アルコール等と接触しても記録画像の流れ出しがないこと、記録画像の耐候性が良好であること、等が求められる。中でも、記録画像の耐候性が良好であることは非常に強く要求されている。耐候性とは即ち、太陽光や各種照明光等による変腿色を起こさないこと(耐光性)や、大気中に微量に含まれる酸化性ガス(オゾン、NO、SO等)に対して変腿色を起こさないこと(耐ガス性)といった画像堅牢性のことである。
【0005】
画像堅牢性においては、従来は、主として太陽光や各種照明光による画像の褪色(耐光性)が問題視され、前記褪色の課題は、耐光性に優れた染料用いることで解決が図られてきた。しかし、近年は、画像の高画質化に伴い、室内に画像を展示する機会が増えたため、大気中の酸化性ガスによって起こる変褪色(耐ガス性)が、耐光性と共に重要な課題とされてきている。
【0006】
又、近年、インクジェット用の記録媒体として、インクの鮮明性、色調再現性や光学濃度を高めるために、基材上に顔料とバインダーとを含むインク受容層を形成した記録媒体が使用されている。しかし、前記記録媒体に形成した画像は、耐ガス性の点で、著しく変褪色を示す場合があり、改良が望まれている。
【0007】
耐ガス性を向上させるために、色調及びオゾンガスに対する変褪色を改良する提案がある(例えば、特許文献1及び2参照)。しかし、銀塩写真に匹敵するほどの高画質な記録画像を得ることができる近年のインクジェット記録方式においては、耐ガス性のより一層の改善が必要である。
【0008】
又、画像堅牢性を向上すること以外にも、アルミナ、シリカ等の多孔体をインク受容材料として使用した記録媒体に画像を形成する場合において、十分な階調性、シャドウ部の深みを得るため、画像濃度(光学濃度)を向上することが求められている。
【0009】
画像濃度を向上させるために、特定の二種類の染料を含有するインクを用いる提案がある(例えば、特許文献3参照)。又、高分子物質を含有する処理剤を記録媒体に付与した後に、色材を含有するインクを記録媒体に付着させることで色材を凝集させて、画像濃度を向上させる提案がある(例えば、特許文献4参照)。更に、新規なジスアゾ、トリスアゾの染料を用いて、画像濃度を向上させる提案がある(例えば、特許文献5及び6参照)。
【特許文献1】特登録02919615号公報
【特許文献2】特公平8−26263号公報
【特許文献3】特開2000−290552号公報
【特許文献4】特開2000−318300号公報
【特許文献5】特開2002−275380号公報
【特許文献6】特開2003−292808号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、近年の高耐久化、高画質化の要求に伴い、より充分な画像堅牢性を有し、且つ、光学濃度がより高いインクが検討されている。
【0011】
そこで、本発明者等が鋭意検討した結果、下記一般式(I)の化合物が、充分な画像堅牢性を有し、光学濃度も比較的優れるということを見出した。
【0012】
しかし、下記一般式(I)の化合物は、その使用方法によっては記録ヘッドのノズルにおける耐固着性が十分でない場合がある。又、下記一般式(I)の化合物は光学濃度も比較的優れているが、より高くすることが望まれる。
【0013】
一般式(I)
【0014】
【化1】

【0015】
(一般式(I)中、R、Rはそれぞれ独立に水素原子;ヒドロキシル基;アミノ基;カルボキシル基;スルホン酸基;炭素数1〜4のアルキル基;炭素数1〜4のアルコキシ基を表し、R、Rは、水素原子;炭素数1〜4のアルキル基;炭素数1〜4のアルコキシ基;ヒドロキシル基;ヒドロキシル基若しくは炭素数1〜4のアルコキシ基で置換されても良い炭素数1〜4のアルキル基;ヒドロキシル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、スルホン酸基若しくはカルボキシル基で置換されてもよい炭素数1〜4のアルコキシ基;アルキル基若しくはアシル基によって置換されているアミノ基であり、nは0又は1である。)
【0016】
従って、本発明の目的は、耐候性、光学濃度及び記録ヘッドのノズル耐固着性を向上することができるインクジェット用ブラックインクを提供することにある。
【0017】
又、本発明の別の目的は、前記インクジェット用ブラックインクを用いたインクセット、インクジェット記録方法、インクカートリッジ、記録ユニット及びインクジェット記録装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記の目的は以下の本発明によって達成される。即ち、本発明にかかるインクジェット用ブラックインクは、少なくとも、色材及び水溶性有機溶剤を含有するインクジェット用ブラックインクにおいて、前記色材が、下記一般式(I)で表される化合物又はその塩であり、20℃における比誘電率が30.0以上70.0未満であり、且つ、25℃において下記一般式(I)で表される化合物又はその塩を1.0質量%以上溶解することができる水溶性有機溶剤の含有量が、インクジェット用ブラックインクに含有される全ての水溶性有機溶剤の含有量の合計に対して50.0質量%以上であることを特徴とする。
一般式(I)
【0019】
【化2】

【0020】
(一般式(I)中、R、Rはそれぞれ独立に水素原子;ヒドロキシル基;アミノ基;カルボキシル基;スルホン酸基;炭素数1〜4のアルキル基;炭素数1〜4のアルコキシ基を表し、R、Rは、水素原子;炭素数1〜4のアルキル基;炭素数1〜4のアルコキシ基;ヒドロキシル基;ヒドロキシル基若しくは炭素数1〜4のアルコキシ基で置換されても良い炭素数1〜4のアルキル基;ヒドロキシル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、スルホン酸基若しくはカルボキシル基で置換されてもよい炭素数1〜4のアルコキシ基;アルキル基若しくはアシル基によって置換されているアミノ基であり、nは0又は1である。)
【0021】
又、本発明の別の実施態様にかかるインクセットは、複数のインクからなるインクセットにおいて、ブラックインクとして上記構成のインクジェット用ブラックインクを含むことを特徴とするインクセット。
【0022】
又、本発明の別の実施態様にかかるインクジェット記録方法は、インクをインクジェット方法で吐出する工程を有するインクジェット記録方法において、前記インクが、上記構成のインクジェット用ブラックインクであることを特徴とする。
【0023】
又、本発明の別の実施態様にかかるインクカートリッジは、インクを収容するインク収容部を備えたインクカートリッジにおいて、前記インクが、上記構成のインクジェット用ブラックインクであることを特徴とする。
【0024】
又、本発明の別の実施態様にかかる記録ユニットは、インクを収容するインク収容部と、インクを吐出するための記録ヘッドとを備えた記録ユニットにおいて、前記インクが、上記構成のインクジェット用ブラックインクであることを特徴とする。
【0025】
又、本発明の別の実施態様にかかるインクジェット記録装置は、インクを収容するインク収容部と、インクを吐出するための記録ヘッドとを備えたインクジェット記録装置において、前記インクが、上記構成のインクジェット用ブラックインクであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、充分な耐候性を有し、且つ、光学濃度の高い画像やドットを形成できるインク、更に好ましくは、記録ヘッドのノズルの耐固着性にも優れるインクジェット用ブラックインクを提供することができる。更にそのインクを用いることにより、耐候性に優れた記録物、且つ、印字濃度の高い記録物を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、好ましい実施の形態を挙げて本発明を更に詳細に説明する。
【0028】
尚、本発明においては、化合物が塩である場合は、インク中では塩はイオンに解離して存在しているが、便宜上、「塩を含有する」と表現する。
【0029】
本発明者らは、一般式(I)で表される化合物又はその塩を含有し、更に特定の水溶性有機溶剤を特定の組成で含有するインクジェット用ブラックインク(以下、単に「インク」と言うこともある)を用いることで、本発明の効果が得られる理由を、以下のように推測している。
【0030】
記録ヘッドから吐出されたインクに含有される色材は、インクが記録媒体に着弾した後、記録媒体に吸着する。特に、インク受容材料としてカチオン性電荷を有する多孔体を備えた記録媒体に、アニオン性電荷を有する色材を含有するインクを用いて画像形成を行う場合、以下に述べる現象が起きていると推測される。記録ヘッドから吐出されたインクに含有されるアニオン性電荷を有する色材は、インクが記録媒体に着弾した後、カチオン性電荷を有する多孔体に対して強く吸着を起こす。その結果、インク中に含有される色材及び水性媒体は一種の固液分離を起こす。即ち、色材は記録媒体の受容層表層部近傍に固定され、逆に電荷をほとんど帯びていない水性媒体は、記録媒体の深さ方向へ浸透していく。
【0031】
ところで、高い光学濃度を有する画像を得るためには、下記の3点が重要である。
(1)色材のモル吸光係数が高いこと
(2)光の透過性を向上させるため、記録媒体の受容層を形成する材料が、可視光に対して限りなく透明であること
(3)記録媒体の受容層中における色材密度を上げること
つまり、インクが記録媒体に着弾した後、色材をできる限り記録媒体の表層部近傍に固定することができれば、受容層を形成する材料の曇りによる影響を避けつつ、色材密度を上げることができ、従って、高い光学濃度を発現できるようになる。
【0032】
そこで、本発明者らは、インクジェット用インクに通常用いられる各種の水溶性有機溶剤について、インクに含有されるそれぞれの水溶性有機溶剤と、インクに含有される色材が記録媒体の深さ方向への浸透する程度(浸透深さ)、の関係について検討を行った。その結果、比誘電率の高い水溶性有機溶剤を含有するインクは、比誘電率の低い水溶性有機溶剤を含有するインクと比較して、インクに含有される色材が記録媒体の深さ方向への浸透する程度(浸透深さ)が浅くなり、光学濃度が向上することがわかった。
【0033】
上記現象が起きる理由を、本発明者らは以下のように推測している。比誘電率の高い水溶性溶剤は分極率が高いため、水溶性有機溶剤が記録媒体の受容層へ浸透する際に、多孔体表面のカチオン性電荷を遮蔽しない。従って、前記多孔体のカチオン性はあまり低下しない。その結果、記録媒体に着弾したインクに含有される色材及び水性媒体は、速やかに固液分離を起こし、色材を効果的に記録媒体の表面近傍に定着することができる。
【0034】
更に本発明者らが、インクに含有される色材が記録媒体の深さ方向への浸透する程度(浸透深さ)及びインクに含有される水溶性有機溶剤の比誘電率について詳細な検討を行った結果、比誘電率が30.0以上70.0未満である水溶性有機溶剤を含有することで、色材を効果的に記録媒体の表面近傍に定着できることがわかった。
【0035】
特に、インクに含有される色材が、一般式(I)で表される化合物又はその塩である場合、上記効果が顕著に発現することがわかった。この理由は、一般式(I)で表される化合物又はその塩は、従来のインクジェット用インクにおいて使用されている色材と比較して高いモル吸光係数を持つだけではなく、その分子量が大きいため、多孔体間を移動する速度が小さくなるためであると推測される。
【0036】
つまり、比誘電率が30.0以上70.0未満である水溶性有機溶剤を使用することで、多孔体のカチオン性を維持するという効果、及び、一般式(I)で表される化合物又はその塩の分子量が大きいために多孔体間を移動する速度が小さいという効果、の2つの効果が相乗的に働くことで、色材を記録媒体の表面近傍に定着することが可能となり、高い光学濃度が実現できる。
【0037】
更に、一般式(I)で表される化合物又はその塩は、耐候性にも非常に優れているため、本発明の構成により、高い光学濃度及び高い堅牢性を両立することができる。
【0038】
(色材)
本発明のインクに用いられる色材は、下記一般式(I)で表される化合物又はその塩である。前記色材は、耐候性に優れている。特に、本発明の構成のインクに前記色材を用いることで、本発明の目的である、高い耐候性及び高い光学濃度を達成することができる。
一般式(I)
【0039】
【化3】

【0040】
(一般式(I)中、R、Rはそれぞれ独立に水素原子;ヒドロキシル基;アミノ基;カルボキシル基;スルホン酸基;炭素数1〜4のアルキル基;炭素数1〜4のアルコキシ基を表し、R、Rは、水素原子;炭素数1〜4のアルキル基;炭素数1〜4のアルコキシ基;ヒドロキシル基;ヒドロキシル基若しくは炭素数1〜4のアルコキシ基で置換されても良い炭素数1〜4のアルキル基;ヒドロキシル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、スルホン酸基若しくはカルボキシル基で置換されてもよい炭素数1〜4のアルコキシ基;アルキル基若しくはアシル基によって置換されているアミノ基であり、nは0又は1である。)
【0041】
以下に、一般式(I)で表される化合物又はその塩の具体例として例示化合物1〜3を示す。勿論、本発明で使用する色材は、これらに限られるものではない。又、色材は同時に2種類以上を用いてもよい。尚、一般式(I)において、n=0とは、下記例示化合物2のように、SOHの位置がHであることを示す。
【0042】
【化4】

【0043】
本発明のインクにおける、一般式(I)で表される化合物又はその塩の含有量の下限は、インク全質量に対して0.1質量%以上が好ましく、1.0質量%以上が更に好ましい。含有量の下限が0.1質量%未満の場合、本発明の効果である高い光学濃度及び高い耐候性が十分に得られないことがあるためである。又、一般式(I)で表される化合物又はその塩の含有量の上限は、インク全質量に対して15.0質量%以下が好ましく、7.0質量%以下が更に好ましい。含有量の上限が15.0質量%を超える場合、記録媒体上で一般式(I)で表される化合物又はその塩が凝集し、金属的な光沢を放つ現象(ブロンズ)が起こることがあるためである。
【0044】
〔染料の検証方法〕
本発明において用いられる色材の検証には、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いた下記(1)〜(3)の検証方法が適用できる。
(1)ピークの保持時間
(2)(1)のピークにおける最大吸収波長
(3)(1)のピークにおけるマススペクトルのM/Z(posi、nega)
【0045】
高速液体クロマトグラフィーの分析条件は以下に示す通りである。純水で約1000倍に希釈したインク溶液に対して、下記の条件で高速液体クロマトグラフィーでの分析を行い、ピークの保持時間(retention time)、及び、ピークの最大吸収波長を測定する。
・カラム:Symmetry C18 2.1mm×150mm
・カラム温度:40℃
・流速:0.2ml/min
・PDA:210nm〜700nm
・移動相及びグラジエント条件:表1
【0046】
【表1】

【0047】
又、マススペクトルの分析条件は以下に示す通りである。得られたピークに対して、下記の条件でマススペクトルを測定し、最も強く検出されたM/Zをposi、negaそれぞれに対して測定する。
・イオン化法
・ESI キャピラリ電圧 3.5kV
脱溶媒ガス 300℃
イオン源温度 120℃
・検出器 posi 40V 200−1500amu/0.9sec
nega 40V 200−1500amu/0.9sec
例示化合物1に対しての保持時間、最大吸収波長、M/Z(posi)、M/Z(nega)の値を表2に示す。表2に示された値に該当する場合、本発明において用いる化合物に該当すると判断できる。
【0048】
【表2】

【0049】
〔その他の色材〕
本発明においては、上記化合物の他に、調色用の色材として上記以外の色材を用いても構わない。
【0050】
又、フルカラー画像等を形成するために、本発明のインクとは別の色調を有するインクを併用しても構わない。例えば、シアンインク、マゼンタインク、イエローインク等である。又、これらのインクと同一色調を有する淡インクを組み合わせて用いることもできる。これらの別の色調を有するインク、又は淡インクの色材は、公知の色材であっても、新規に合成された色材であっても用いることができる。
【0051】
以下に、調色用色材、及び本発明のブラックインクと共に使用する他のインクに用いる色材の具体例を色調別に示す。勿論、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0052】
[マゼンタ色材]
C.I.ダイレクトレッド:2、4、9、11、20、23、24、31、39、46、62、75、79、80、83、89、95、197、201、218、220、224、225、226、227、228、229、230等
C.I.アシッドレッド:6、8、9、13、14、18、26、27、32、35、42、51、52、80、83、87、89、92、106、114、115、133、134、145、158、198、249、265、289等
C.I.フードレッド:87、92、94等
C.I.ダイレクトバイオレット:107等
[シアン色材]
C.I.ダイレクトブルー:1、15、22、25、41、76、77、80、86、90、98、106、108、120、158、163、168、199、226、307、等
C.I.アシッドブルー:1、7、9、15、22、23、25、29、40、43、59、62、74、78、80、90、100、102、104、112、117、127、138、158、161、203、204、221、244等
[イエロー色材]
C.I.ダイレクトイエロー:8、11、12、27、28、33、39、44、50、58、85、86、87、88、89、98、100、110、132、173等
C.I.アシッドイエロー:1、3、7、11、17、23、25、29、36、38、40、42、44、76、98、99等
[ブラック色材]
C.I.ダイレクトブラック:17、19、22、31、32、51、62、71、74、112、113、154、168、195等
C.I.アシッドブラック:2、48、51、52、110、115、156等
C.I.フードブラック:1、2等
下記一般式(II)で示される染料又はその塩
一般式(II)
【0053】
【化5】

【0054】
(一般式(II)中、R、R、R、Rはそれぞれ独立に水素原子;ヒドロキシル基;アミノ基;カルボキシル基;スルホン酸基;炭素数1〜4のアルキル基;炭素数1〜4のアルコキシ基;ヒドロキシル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、スルホン酸基若しくはカルボキシル基で置換されているアルコキシ基;カルボキシル基又はスルホン酸基で更に置換されてもよい炭素数1〜4のアルコキシ基;フェニル基、アルキル基、又はアシル基によって置換されているアミノ基であり、nは0又は1である。尚、一般式(II)において、n=0とは、一般式(I)で表される化合物又はその塩と同様、SOHの位置がHであることを示す。)
【0055】
下記一般式(III)で表される化合物と下記一般式(IV)で表される化合物との縮合染料
一般式(III)
【0056】
【化6】

【0057】
(一般式(III)中、Mは水素原子又はアルカリ金属原子である。)
一般式(IV)
【0058】
【化7】

【0059】
(一般式(IV)中、R、R、R、R、Rはそれぞれ独立に水素原子;ハロゲン原子;ヒドロキシル基;スルホン酸基;カルボキシル基;炭素数1〜4のアルキル基;炭素数1〜4のアルコキシ基である。)
【0060】
(水性媒体)
〔20℃における比誘電率が30.0以上70.0未満であり、且つ、25℃において一般式(I)で表される化合物又はその塩を1.0質量%以上溶解することができる水溶性有機溶剤〕
本発明で使用される、20℃における比誘電率が30.0以上70.0未満であり、且つ、25℃において一般式(I)で表される化合物又はその塩を1.0質量%以上溶解することができる水溶性有機溶剤は、上記範囲の比誘電率、及び、前記化合物又はその塩の溶解性を示すものであれば特に限定されない。20℃における比誘電率が30.0以上70.0未満であり、且つ、25℃において下記一般式(I)で表される化合物又はその塩を1.0質量%以上溶解することができる水溶性有機溶剤の具体例は、グリセリン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオールが挙げられる。中でも特に、グリセリン、エチレングリコールが好ましい。これらの水溶性有機溶剤は、一般式(I)で表される化合物又はその塩と組み合わせてインクジェット用インクとして用いた場合にインクの吐出性に優れるためである。
【0061】
本発明においては、20℃における比誘電率が30.0以上70.0未満であり、且つ、25℃において一般式(I)で表される化合物又はその塩を1.0質量%以上溶解することができる水溶性有機溶剤の含有量が、インクに含有される全ての水溶性有機溶剤の含有量の合計に対して50.0%以上であることが必須である。含有量の比率が50.0%未満である場合、含有量の比率が50.0%以上である場合と比較して、記録物の光学濃度が低下し、本発明の効果が十分には得られないことがある。又、インクに含有される水溶性有機溶剤全てが、20℃における比誘電率が30.0以上70.0未満であり、且つ、25℃において一般式(I)で表される化合物又はその塩を1.0質量%以上溶解することができる水溶性有機溶剤であっても構わない。
【0062】
又、本発明で使用される20℃での比誘電率が30.0以上70.0未満である水溶性有機溶剤が、25℃において一般式(I)で表される化合物又はその塩を1.0質量%以上溶解する必要がある理由は、記録ヘッドのノズルにおける固着回復性向上のためである。つまり、25℃において一般式(I)で表される化合物又はその塩を1.0質量%以上溶解することができる水溶性有機溶剤の含有量が、インクに含有される全ての水溶性有機溶剤の含有量の合計に対して50.0%を下回るにつれ、高温、又は低湿の環境における固着回復性が低下する。
【0063】
尚、色材の溶解性(溶解度)の測定は、以下の手順で行った。100mlのビーカー(JIS R3503)に、前記色材が溶解した水溶液50グラムを入れ、温度60℃、湿度20%の恒温槽に放置し、3時間当たりの質量変化が0.01グラム以下になるまで蒸発乾固した。そして、得られた物質を乳鉢ですりつぶし、粉体を得た。この粉体を、25℃において、目的の水溶性有機溶剤に対して飽和状態になるまで溶解させた。飽和状態にするために要した色材の質量を、水溶性有機溶剤及び色材の質量の合計で割って求めた値を溶解率(溶解度)とした。尚、もともと粉体状態の色材の場合には、25℃において、目的の水溶性有機溶剤に対して飽和状態になるまで溶解させ、飽和状態にするために要した色材の質量を、水溶性有機溶剤及び色材の質量の合計で割って求めた値を溶解率(溶解度)とした。
【0064】
〔その他の水溶性有機溶剤及び水〕
本発明のインクにおいては、上記した20℃における比誘電率が30.0以上70.0未満であり、且つ、25℃において一般式(I)で表される化合物又はその塩を1.0質量%以上溶解することができる水溶性有機溶剤の他に、これらを添加することによる効果が得られ、且つ本発明の目的効果を損なわない範囲で、水、或いは水と各種の水溶性有機溶剤との混合溶媒を使用することができる。
【0065】
水溶性有機溶剤は、水溶性であれば特に制限は無く、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、n−ペンタノール等の炭素数1〜5のアルキルアルコール類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド類;アセトン、ジアセトンアルコール等のケトン又はケトアルコール類;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のオキシエチレン又はオキシプロピレン共重合体;トリメチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2,6−ヘキサントリオール等のアルキレングリコール類;エチレングリコールモノメチル(又はエチル)エーテル、ジエチレングリコールモノメチル(又はエチル)エーテル、トリエチレングリコールモノメチル(又はエチル)エーテル等の低級アルキルエーテル類;トリエチレングリコールジメチル(又はエチル)エーテル、テトラエチレングリコールジメチル(又はエチル)エーテル等の多価アルコールの低級ジアルキルエーテル類;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアミン類;スルホラン、N−メチル−2−ピロリドン、2−ピロリドン等を用いることができる。上記水溶性有機溶剤は、単独で用いても、或いは混合物として用いても良い。
【0066】
これらの水溶性有機溶剤、及び、上記した20℃における比誘電率が30.0以上70.0未満であり、且つ、25℃において一般式(I)で表される化合物又はその塩を1.0質量%以上溶解することができる水溶性有機溶剤の含有量の合計は、インク全質量に対して好ましくは10質量%〜95質量%、より好ましくは10質量%〜80質量%である。含有量がこの範囲より少ない場合は、記録ヘッドにおける固着回復性に問題が生じることがあり、含有量がこの範囲より多い場合は、インクの粘度が高くなり、インクの連続吐出性に問題が生じることがある。
【0067】
又、水は脱イオン水(イオン交換水)を用いることが好ましい。水の含有量は、インク全質量に対して10質量%〜90質量%であることが好ましい。
【0068】
(その他の添加剤)
更に、本発明においては必要に応じて、界面活性剤、pH調整剤、防錆剤、防腐剤、防カビ剤、酸化防止剤、還元防止剤、蒸発促進剤、キレート化剤、水溶性ポリマー等、種々の添加剤を含有させてもよい。
【0069】
例えば、界面活性剤の具体例は、脂肪酸塩類、高級アルコール硫酸エステル塩類、液体脂肪油硫酸エステル塩類、アルキルアリルスルホン酸塩類等の陰イオン界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルエステル類、ポリオキシエチレンソルビタンアルキルエステル類、アセチレンアルコール、アセチレングリコール等の非イオン性界面活性剤があり、これらの1種又は2種以上を適宜選択して使用できる。中でも特に、アセチレンアルコール類や、アセチレングリコール類が普通紙への浸透性に優れた効果を発揮するために好ましい。界面活性剤のインク中における含有量は、インク全質量に対して0.01質量%〜5質量%が好ましい。
【0070】
記録ヘッドのノズル先端の濡れによる印字ヨレ(インク滴の着弾点のズレ)等の発生を有効に抑え、吐出特性を付与するために、インクの25℃における表面張力は10mN/m(dyn/cm)以上が好ましく、より好ましくは20mN/m以上となるように、又、表面張力が60mN/m以下となるように界面活性剤の含有量を決定することが好ましい。又、本発明のインクをインクジェット記録装置に適用する場合は、良好な吐出特性を得るために、所望の粘度やpHを有するインクとなるように調整することが好ましい。
【0071】
<記録媒体>
本発明のインクを用いて画像を形成する際に用いる記録媒体は、インクを付与して記録を行う記録媒体であれば何れのものでも使用することができる。中でも、インク受容層が、カチオン性の電荷を有する多孔質の微粒子で形成された記録媒体が好ましい。更には、平均粒子径が1μm以下である微粒子を主体として、インク受容層を形成した記録媒体が好ましい。
【0072】
前記微粒子の具体例は、酸化アルミニウム、アルミナ水和物、表面がアルミニウムで表面処理されたカチオン変性シリカ、表面がアニオン性であるシリカ粒子表面にカチオン性基とシリカ粒子と反応し得る基(トリスメトキシシリル基等)を有する化合物を反応させて得られるシリカ粒子等が挙げられる。中でも、下記式により表されるアルミナ水和物が好ましい。
Al3−n(OH)2n
(上記式中、nは1、2又は3の整数の何れかを表し、mは0〜10、好ましくは0〜5の値を表す。但し、mとnは同時には0にはならない。mHOは、多くの場合mHO結晶格子の形成に関与しない脱離可能な水相をも表すものである為、mは整数又は整数でない値を取ることもできる。又この種の材料を加熱するとmは0の値に達することがありうる。)
【0073】
アルミナ水和物は、米国特許第4,242,271号、米国特許第4,202,870号に記載のアルミニウムアルコキシドの加水分解やアルミン酸ナトリウムの加水分解、又、特公昭57−44605号公報に記載のアルミン酸ナトリウム等の水溶液に硫酸ナトリウム、塩化アルミニウム等の水溶液を加えて中和を行う方法など、公知の方法で製造することができる。
【0074】
上述のアルミナ水和物を用いた記録媒体は、前述したような写真画質を実現するために必要とされる光沢、透明性、及びインク中の色材の定着性等が優れているために好ましい。
【0075】
バインダーの具体例は、水溶性高分子やラテックス等が挙げられる。例えば、ポリビニルアルコール又はその変性体、澱粉又はその変性体、ゼラチン又はその変性体、アラビアゴム、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースなどのセルロース誘導体、SBRラテックス、NBRラテックス、メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体ラテックス、官能基変性重合体ラテックス、エチレン酢酸ビニル共重合体などのビニル系共重合体ラテックス、ポリビニルピロリドン、無水マレイン酸又はその共重合体、アクリル酸エステル共重合体等が使用される。これらから選択した1種、あるいは必要に応じて2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0076】
微粒子とバインダーの混合比は、質量比で、1:1〜100:1であることが好ましい。酸化アルミニウム微粒子又はシリカ微粒子のインク受容層中の好ましい含有量は、50質量%以上、より好ましくは70質量%以上、更に好ましくは、80質量%以上であり、99質量%以下であることが最も好適である。インク受容層の塗工量は、乾燥固形分換算で10g/m以上であることが好ましく、10〜60g/mが最も好適である。
【0077】
記録媒体は上記したインク受容層を支持するための支持体を有することが好ましい。支持体は、インク受容層が、上記多孔質の微粒子で形成することが可能であって、且つインクジェットプリンタ等の搬送機構によって搬送可能な剛度を与えるものであれば、特に制限はなく、何れのものでも使用できる。例えば、支持体とインク受容層の間に硫酸バリウム、酸化チタン、酸化亜鉛等の無機顔料等をバインダーと共に塗工して形成した多孔質層を有するものや、支持体にレジンコート紙を用いても良い。
【0078】
インク受容層には、その他の添加剤を使用することもでき、例えば、必要に応じて分散剤、増粘剤、pH調整剤、潤滑剤、流動性変性剤、界面活性剤、消泡剤、離型剤、蛍光増白剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤などを挙げることができる。
【0079】
<インクセット>
本発明のインクは、他のインクと組み合わせてインクセットとした場合においても好ましく使用することができる。本発明におけるインクセットは、本発明のインクを、シアンインク、マゼンタインク、イエローインク、ブラックインク等の他のインクと共に用いる状態ことである。尚、インクセットとして組み合わせることのできる他のインクについての限定は特にない。又、本発明におけるインクセットとは、インクタンクが複数一体になっているインクタンク自体は無論のこと、単独のインクタンクを複数組み合わせて使用する場合も含み、更に、前記インクタンク及び記録ヘッドを一体としたものも含まれる。
【0080】
<インクジェット記録方法>
本発明にかかるインクは、インクをインクジェット方法で吐出する工程を有するインクジェット記録方法に用いることが特に好適である。インクジェット記録方法は、インクに力学的エネルギーを作用させてインクを吐出させる記録方法、及びインクに熱エネルギーを作用させてインクを吐出させる記録方法等がある。特に、本発明においては、熱エネルギーを利用するインクジェット記録方法を好ましく用いることができる。
【0081】
<インクカートリッジ>
本発明にかかるインクを用いて記録を行うのに好適なインクカートリッジは、これらのインクを収容するインク収容部を備えたインクカートリッジが挙げられる。
【0082】
<記録ユニット>
本発明にかかるインクを用いて記録を行うのに好適な記録ユニットは、これらのインクを収容するインク収容部と、記録ヘッドとを備えた記録ユニットが挙げられる。特に、前記記録ヘッドが、記録信号に対応した熱エネルギーをインクに作用させ、前記エネルギーによりインク液滴を発生させる記録ユニットが挙げられる。
【0083】
<インクジェット記録装置>
本発明にかかるインクを用いて記録を行うのに好適な記録装置は、これらのインクが収容されるインク収容部を有する記録ヘッドの室内のインクに、記録信号に対応した熱エネルギーを与え、前記エネルギーによりインク液滴を発生させる装置が挙げられる。
【0084】
以下に、インクジェット記録装置の機構部の概略構成を説明する。記録装置本体は、各機構の役割から、給紙部、用紙搬送部、キャリッジ部、排紙部、クリーニング部及びこれらを保護し、意匠性を持たす外装部から構成されている。以下、これらの概略を説明していく。
【0085】
図1は、記録装置の斜視図である。又、図2及び図3は、記録装置本体の内部機構を説明するための図であり、図2は右上部からの斜視図、図3は記録装置本体の側断面図をそれぞれ示したものである。
【0086】
記録装置において給紙を行う際には、まず給紙トレイM2060を含む給紙部において記録媒体の所定枚数のみが給紙ローラM2080と分離ローラM2041から構成されるニップ部に送られる。送られた記録媒体はニップ部で分離され、最上位の記録媒体のみが搬送される。用紙搬送部に送られた記録媒体は、ピンチローラホルダM3000及びペーパーガイドフラッパーM3030に案内されて、搬送ローラM3060とピンチローラM3070とのローラ対に送られる。搬送ローラM3060とピンチローラM3070とからなるローラ対は、LFモータE0002の駆動により回転され、この回転により記録媒体がプラテンM3040上を搬送される。
【0087】
キャリッジ部では記録媒体に画像を形成する場合、記録ヘッドH1001(図4)を目的の画像形成位置に配置させ、電気基板E0014からの信号に従って、記録媒体に対しインクを吐出する。記録ヘッドH1001についての詳細な構成は後述するが、記録ヘッドH1001により記録を行いながらキャリッジM4000が列方向に走査する記録主走査と、搬送ローラM3060により記録媒体が行方向に搬送される副走査とを交互に繰り返すことにより、記録媒体上に画像を形成していく構成となっている。
【0088】
最後に画像を形成された記録媒体は、排紙部で第1の排紙ローラM3110と拍車M3120とのニップに挟まれ、搬送されて排紙トレイM3160に排出される。
【0089】
尚、クリーニング部において、画像記録前後の記録ヘッドH1001をクリーニングする目的のために、キャップM5010を記録ヘッドH1001のインク吐出口に密着させた状態で、ポンプM5000を作用させると、記録ヘッドH1001から不要なインク等が吸引されるようになっている。又、キャップM5010を開けた状態で、キャップM5010に残っているインクを吸引することにより、残インクによる固着及びその後の弊害が起こらないように配慮されている。
【0090】
(記録ヘッド構成)
ヘッドカートリッジH1000の構成について説明する。ヘッドカートリッジH1000は、記録ヘッドH1001と、インクタンクH1900を搭載する手段、及びインクタンクH1900から記録ヘッドにインクを供給するための手段を有しており、キャリッジM4000に対して着脱可能に搭載される。
【0091】
図4は、ヘッドカートリッジH1000に対し、インクタンクH1900を装着する様子を示した図である。記録装置は、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック、淡マゼンタ、淡シアン、及びグリーンインクによって画像を形成し、従ってインクタンクH1900も7色分が独立に用意されている。上記において、少なくとも一種のインクに、本発明にかかるインクを用いる。そして、図に示すように、それぞれがヘッドカートリッジH1000に対して着脱自在となっている。尚、インクタンクH1900の着脱は、キャリッジM4000にヘッドカートリッジH1000が搭載された状態で行えるようになっている。
【0092】
図5は、ヘッドカートリッジH1000の分解斜視図を示したものである。図において、ヘッドカートリッジH1000は、第1の記録素子基板H1100及び第2の記録素子基板H1101、第1のプレートH1200、第2のプレートH1400、電気配線基板H1300、タンクホルダーH1500、流路形成部材H1600、フィルターH1700、シールゴムH1800などから構成されている。
【0093】
第1の記録素子基板H1100及び第2の記録素子基板H1101はSi基板であり、その片面にインクを吐出するための複数の記録素子(ノズル)がフォトリソ技術により形成されている。各記録素子に電力を供給するAl等の電気配線は、成膜技術により形成されており、個々の記録素子に対応した複数のインク流路も又、フォトリソグラフィ技術により形成されている。更に、複数のインク流路にインクを供給するためのインク供給口が裏面に開口するように形成されている。
【0094】
図6は、第1の記録素子基板H1100及び第2の記録素子基板H1101の構成を説明するための正面拡大図である。H2000〜H2600は、それぞれ異なるインク色に対応する記録素子の列(以下ノズル列ともいう)であり、第1の記録素子基板H1100には、イエローインクの供給されるノズル列H2000、マゼンタインクの供給されるノズル列H2100、及びシアンインクの供給されるノズル列H2200の3色分のノズル列が構成されている。第2の記録素子基板H1101には、淡シアンインクの供給されるノズル列H2300、ブラックインクの供給されるノズル列H2400、オレンジインクの供給されるノズル列H2500、及び淡マゼンタインクの供給されるノズル列H2600の4色分のノズル列が構成されている。
【0095】
各ノズル列は、記録媒体の搬送方向に1200dpi(dot/inch;参考値)の間隔で並ぶ768個のノズルによって構成され、約2ピコリットルのインク滴を吐出させる。各ノズル吐出口における開口面積は、およそ100平方μm2に設定されている。又、第1の記録素子基板H1100及び第2の記録素子基板H1101は第1のプレートH1200に接着固定されており、ここには、第1の記録素子基板H1100及び第2の記録素子基板H1101にインクを供給するためのインク供給口H1201が形成されている。
【0096】
更に、第1のプレートH1200には、開口部を有する第2のプレートH1400が接着固定されており、この第2のプレートH1400は、電気配線基板H1300と第1の記録素子基板H1100及び第2の記録素子基板H1101とが電気的に接続されるように、電気配線基板H1300を保持している。
【0097】
電気配線基板H1300は、第1の記録素子基板H1100及び第2の記録素子基板H1101に形成されている各ノズルからインクを吐出するための電気信号を印加するものであり、第1の記録素子基板H1100及び第2の記録素子基板H1101に対応する電気配線と、この電気配線端部に位置し記録装置本体からの電気信号を受け取るための外部信号入力端子H1301とを有している。外部信号入力端子H1301は、タンクホルダーH1500の背面側に位置決め固定されている。
【0098】
一方、インクタンクH1900を保持するタンクホルダーH1500には、流路形成部材H1600が例えば超音波溶着により固定され、インクタンクH1900から第1のプレートH1200に通じるインク流路H1501を形成している。
【0099】
インクタンクH1900と係合するインク流路H1501のインクタンク側端部には、フィルターH1700が設けられており、外部からの塵埃の侵入を防止し得るようになっている。又、インクタンクH1900との係合部にはシールゴムH1800が装着され、係合部からのインクの蒸発を防止し得るようになっている。
【0100】
更に、前述のようにタンクホルダーH1500、流路形成部材H1600、フィルターH1700及びシールゴムH1800から構成されるタンクホルダー部と、第1の記録素子基板H1100及び第2の記録素子基板H1101、第1のプレートH1200、電気配線基板H1300及び第2のプレートH1400から構成される記録ヘッド部H1001とを、接着等で結合することにより、ヘッドカートリッジH1000が構成されている。
【0101】
尚、ここでは記録ヘッドの一形態として、電気信号に応じて膜沸騰をインクに対して生じさせるための熱エネルギーを生成する電気熱変換体(記録素子)を用いて記録を行うバブルジェット(登録商標)方式の記録ヘッドについて一例を挙げて述べた。
【0102】
この代表的な構成や原理については、例えば、米国特許第4,723,129号明細書、同第4,740,796号明細書に開示されている基本的な原理を用いて行うものが好ましい。この方式は、所謂オンデマンド型、コンティニュアス型の何れにも適用可能であるが、特に、オンデマンド型の場合には、液体(インク)が保持されているシートや液流路に対応して配置されている電気熱変換体に、記録情報に対応していて核沸騰を超える急速な温度上昇を与える少なくとも一つの駆動信号を印加することによって、電気熱変換体に熱エネルギーを発生せしめ、記録ヘッドの熱作用面に膜沸騰を生じさせて、結果的にこの駆動信号に一対一で対応した液体(インク)内の気泡を形成できるので有効である。この気泡の成長、収縮により吐出用開口を介して液体(インク)を吐出させて、少なくとも一つの滴を形成する。この駆動信号をパルス形状とすると、即時適切に気泡の成長・収縮が行われるので、特に応答性に優れた液体(インク)の吐出が達成でき、より好ましい。
【0103】
又、第二の力学的エネルギーを利用したインクジェット記録装置の形態として、複数のノズルを有するノズル形成基板と、ノズルに対向して配置される圧電材料と導電材料からなる圧力発生素子と、この圧力発生素子の周囲を満たすインクを備え、印加電圧により圧力発生素子を変位させ、インクの小液滴をノズルから吐出させるオンデマンドインクジェット記録ヘッドを挙げることができる。
【0104】
又、インクジェット記録装置は、上述のようにヘッドとインクタンクとが別体となったものに限らず、それらが分離不能に一体になったものを用いるものでもよい。又、インクタンクはヘッドに対し分離可能又は分離不能に一体化されてキャリッジに搭載されるもののほか、装置の固定部位に設けられて、インク供給部材、例えばチューブを介して記録ヘッドにインクを供給する形態のものでもよい。更に、記録ヘッドに対し好ましい負圧を作用させるための構成をインクタンクに設ける場合には、インクタンクのインク収納部に吸収体を配置した形態、あるいは可撓性のインク収容袋とこれに対しその内容積を拡張する方向の付勢力を作用するばね部とを有した形態などを採用することができる。又、記録装置は、上述のようにシリアル記録方式を採るもののほか、記録媒体の全幅に対応した範囲にわたって記録素子を整列させてなるラインプリンタの形態をとるものであってもよい。
【実施例】
【0105】
以下、実施例及び比較例を用いて本発明を更に詳細に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、下記の実施例によって何ら限定されるものではない。尚、特に指定の無い限り、実施例、比較例のインク成分は「質量部」を意味する。
【0106】
<色材の調製>
(化合物(α)の調製)
水に下記式(A)の化合物を、炭酸ナトリウムを添加した水に加えて溶解し、更に塩酸、亜硝酸ナトリウムを添加し、ジアゾ化を行った。このジアゾ混濁液に、6−フェニルアミノ−1−ヒドロキシナフタレン−3−スルホン酸水溶液を添加し、炭酸ナトリウムの存在下で溶解し、反応液(A)を得た。次に、2−アミノスルホン酸を、水酸化ナトリウムの存在下で溶解し、塩酸、亜硝酸ナトリウムを添加して、ジアゾ化を行った。次に、6−アミノ−1−ヒドロキシナフタレン−3−スルホン酸を、水酸化ナトリウムの存在下で溶解し、無水酢酸を添加し、アセチル化を行った。ここに上記ジアゾ化混濁液を、炭酸ナトリウムの存在下で滴下して、カップリング反応を行い、反応液(B)を得た。この反応液(B)に、水酸化ナトリウム、次いで塩化ナトリウムを添加して塩析を行い、化合物を得た。この化合物を水酸化ナトリウムの存在下で、水に溶解させ、塩酸、亜硝酸ナトリウムを添加し、ジアゾ化を行った。このジアゾ混濁液に、炭酸ナトリウムの存在下で、溶液(A)を滴下し、カップリング反応を完結させ、反応液を得た。この反応液を塩化ナトリウムで塩析した後、濾過を行うことにより、化合物(C)を得た。N,N−ジメチルホルムアミドに、2−ニトロ−4−クレゾール、トルエン、水酸化カリウムを添加し、トルエンとの共沸により水を留去し、プロパンスルトンを滴下した後、水酸化ナトリウムを添加し、これを濃縮後、オートクレーブにて、パラジウムカーボンを添加し、水素ガスを封入し溶液を得た。これを、塩酸、亜硝酸ナトリウムを添加することでジアゾ化を行い、上記反応液(A)を滴下し、水酸化ナトリウムの存在下でカップリング反応を完結させ、反応液を得た。この反応液を塩酸、亜硝酸ナトリウムを添加することでジアゾ化を行い、このジアゾ混濁液を上記化合物(C)を溶解した水溶液に添加し、カップリング反応を完結させた。これを塩化ナトリウムにより塩析、濾過し、洗浄を行うことにより、化合物(α)を得た。
【0107】
式(A)
【0108】
【化8】

【0109】
化合物(α)
【0110】
【化9】

【0111】
<インクの調製>
下記表3及び表4に示した各成分を混合し、十分撹拌した後、ポアサイズ0.2μmのフィルターにて加圧濾過を行い、実施例1〜7及び比較例1〜9のインクを調製した。
【0112】
【表3】

【0113】
【表4】

【0114】
<記録媒体の作製>
濾水度が、450mlCSF(Canadian Standarad Freeness)の、広葉樹晒しクラフトパルプ(LBPK)80質量部、濾水度が、480mlCSFの、針葉樹晒しクラフトパルプ(NBPK)20質量部を含有するパルプスラリーに、カチオン化澱粉0.60質量部、重質炭酸カルシウム10質量部、軽質炭酸カルシウム15質量部、アルキルケテンダイマー0.10質量部、カチオン性ポリアクリルアミド0.03質量部、硫酸バンド0.40質量部を添加して、紙料を調製した。その後、前記紙料を長網抄紙機で抄造し、3段のウエットプレスを行って、多筒式ドライヤーで乾燥した。その後、サイズプレス装置で、酸化澱粉水溶液を、固形分で1.0g/mとなるように含浸し、乾燥した後、マシンカレンダー仕上げを行い、坪量155g/m、ステキヒトサイズ度100秒、透気度50秒、ベック平滑度30秒、ガーレー剛度11.0mNの基材を得た。
【0115】
次に、上記で得られた基材上に、以下のようにして下塗り層を形成した。まず、下塗り層の形成に使用する塗工液を調製した。カオリン(ウルトラホワイト90;Engelhard製)/酸化亜鉛/水酸化アルミニウムの、質量比が65/10/25である填量100質量部、市販のポリアクリル酸系分散剤0.1質量部を含有する固形分濃度70%のスラリーに、市販のスチレン−ブタジエン系ラテックス7質量部を添加して、固形分60%になるように調整して組成物を得た。次に、この組成物を、乾燥塗工量が15g/mになるように、ブレードコータで基材の両面に塗工し、乾燥した。その後、線圧150kgf/cmでマシンカレンダー仕上げを行い、坪量185g/m、ステキヒトサイズ度300秒、透気度3,000秒、ベック平滑度200秒、ガーレー剛度11.5mNの下塗り層付き基材を得た。下塗り層付き基材の白色度は、断裁されたA4サイズ5枚のサンプルに対して、それぞれ測定し、その平均値として求めた。その結果、白色度は、L:95、a:0、b:−2であった(JIS Z8729の色相として求めた)。
【0116】
次に、インク受容層を形成した。インク受容層の形成は、上記の第二の表面処理工程における塗工後、即ち、塗工液が下塗り層に含浸された直後に、下塗り層上にインク受容層を形成した。
【0117】
インク受容層の形成に用いた塗工液及び塗工方法等は、以下の通りである。塩化アルミニウムの4質量%水溶液に、アルミン酸ソーダを加え、溶液のpHを4に調整した。その後、攪拌下で溶液を90℃まで昇温させ、しばらく攪拌を行った。その後、前記溶液に再びアルミン酸ソーダを加えて、溶液のpHを10に調整し、90℃に保ったまま40時間熟成反応を行った。その後、溶液を室温に戻し、pHを7〜8程度に調整し、分散液を得た。この分散液に対して脱塩処理を行い、その後、酢酸を用いて解膠処理を行い、アルミナ水和物のコロイダルゾルを得た。このコロイダルゾルを濃縮して、17質量%の溶液を得た。又、ポリビニルアルコール(商品名:PVA117;クラレ製)を純水に溶解して、9質量%の溶液を得た。上記コロイダルゾル溶液とポリビニルアルコール溶液を、アルミナ水和物固形分とポリビニルアルコール固形分が、質量比で10:1になるように混合攪拌して、分散液を得た。ダイコータを用いて、前記分散液の乾燥塗工量が35g/mになるように、基材上に毎分30mで塗工した。その後、基材を170℃で乾燥してインク受容層を形成した。この記録媒体のインク受容層表面に、リウエットキャストコーターを用いて、熱湯を用いたリウエットキャスト処理を行い、記録媒体を得た。
【0118】
<水溶性有機溶剤の比誘電率>
各種の水溶性有機溶剤の比誘電率を、LCRメータ 4284A(日本ヒューレットパッカード製)を用いて、室温20℃、測定周波数1MHzの条件で測定を行った。結果を表5に示す。
【0119】
【表5】

【0120】
<化合物(α)の溶解率>
100mlのビーカー(JIS R3503)に、色材が溶解した水溶液50グラムを入れ、温度60℃、湿度20%の恒温槽に放置し、3時間当たりの質量変化が0.01グラム以下になるまで蒸発乾固した。そして、得られた物質を乳鉢ですりつぶし、粉体を得た。この粉体を、25℃において、各種の水溶性有機溶剤に対して飽和状態になるまで溶解させた。飽和状態にするために要した色材の質量を、水溶性有機溶剤及び色材の質量の合計で割って求めた値を溶解率(溶解度)とした。結果を表6に示す。
【0121】
【表6】

【0122】
<評価>
以下の項目について以下の評価基準で評価を行った。
【0123】
<光学濃度>
上記で得られた実施例1〜7及び比較例1〜9のインクを、キヤノン製インクジェットプリンタ(商品名:BJ F900)にそれぞれ搭載し、温度25℃、湿度60%の環境において、上記で得られた記録媒体に対して、インク付与量100%のベタパッチを印字した。得られた記録物を、温度25℃、湿度60%の環境で24時間乾燥させて、その後の画像について光学濃度(画像濃度)の測定を行った。尚、測定には分光光度計(Spectorolino;Gretag Macbeth製)を用いた。光学濃度の基準は以下の通りである。評価結果を表7に示す。
AA:光学濃度が2.50以上
A:光学濃度が2.45以上2.50未満
B:光学濃度が2.40以上2.45未満
C:光学濃度が2.40未満
【0124】
<固着回復性>
上記で得られた実施例1〜7及び比較例1〜9のインクを、キヤノン製インクジェットプリンタ(商品名:BJ F900)用記録ヘッド部に充填した後、記録ヘッド部を取り外し、吐出口を環境雰囲気下に曝し、温度35℃、湿度15%の環境で2週間放置を行った。その後、再度記録ヘッド部をプリンタ本体に装着し、インク吸引回復操作及び印字を行い、固着回復性についての評価を行った。固着回復性の基準は以下の通りである。評価結果を表7に示す。
A:記録ヘッド装着後、吸引2回以内で全ノズルが問題なく吐出可能に回復する
B:記録ヘッド装着後、吸引3回以上、4回以内で全ノズルが問題なく吐出可能に回復する
C:記録ヘッド装着後、吸引5回以上行っても吐出できないノズルが一部存在する
【0125】
【表7】

【図面の簡単な説明】
【0126】
【図1】記録装置の斜視図である。
【図2】記録装置の機構部の斜視図である。
【図3】記録装置の断面図である。
【図4】ヘッドカートリッジにインクタンクを装着する状態を示す斜視図である。
【図5】ヘッドカートリッジの分解斜視図である。
【図6】ヘッドカートリッジにおける記録素子基板を示す正面図である。
【符号の説明】
【0127】
M2041 分離ローラ
M2060 給紙トレイ
M2080 給紙ローラ
M3000 ピンチローラホルダ
M3030 ペーパーガイドフラッパー
M3040 プラテン
M3060 搬送ローラ
M3070 ピンチローラ
M3110 排紙ローラ
M3120 拍車
M3160 排紙トレイ
M4000 キャリッジ
M5000 ポンプ
M5010 キャップ
E0002 LFモータ
E0014 電気基板
H1000 ヘッドカートリッジ
H1001 記録ヘッド
H1100 第1の記録素子基板
H1101 第2の記録素子基板
H1200 第1のプレート
H1201 インク供給口
H1300 電気配線基板
H1301 外部信号入力端子
H1400 第2のプレート
H1500 タンクホルダー
H1501 インク流路
H1600 流路形成部材
H1700 フィルター
H1800 シールゴム
H1900 インクタンク
H2000 イエローノズル列
H2100 マゼンタノズル列
H2200 シアンノズル列
H2300 淡シアンノズル列
H2400 ブラックノズル列
H2500 グリーンノズル列
H2600 淡マゼンタノズル列

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、色材及び水溶性有機溶剤を含有するインクジェット用ブラックインクにおいて、
前記色材が、下記一般式(I)で表される化合物又はその塩であり、
20℃における比誘電率が30.0以上70.0未満であり、且つ、25℃において下記一般式(I)で表される化合物又はその塩を1.0質量%以上溶解することができる水溶性有機溶剤の含有量が、インクジェット用ブラックインクに含有される全ての水溶性有機溶剤の含有量の合計に対して50.0質量%以上であることを特徴とするインクジェット用ブラックインク。
一般式(I)
【化1】

(一般式(I)中、R、Rはそれぞれ独立に水素原子;ヒドロキシル基;アミノ基;カルボキシル基;スルホン酸基;炭素数1〜4のアルキル基;炭素数1〜4のアルコキシ基を表し、R、Rは、水素原子;炭素数1〜4のアルキル基;炭素数1〜4のアルコキシ基;ヒドロキシル基;ヒドロキシル基若しくは炭素数1〜4のアルコキシ基で置換されても良い炭素数1〜4のアルキル基;ヒドロキシル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、スルホン酸基若しくはカルボキシル基で置換されてもよい炭素数1〜4のアルコキシ基;アルキル基若しくはアシル基によって置換されているアミノ基であり、nは0又は1である。)
【請求項2】
前記20℃における比誘電率が30.0以上70.0未満であり、且つ、25℃において下記一般式(I)で表される化合物又はその塩を1.0質量%以上溶解することができる水溶性有機溶剤が、グリセリン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオールかなる群から選ばれるものである請求項1に記載のインクジェット用ブラックインク。
【請求項3】
複数のインクからなるインクセットにおいて、ブラックインクとして請求項1又は2に記載のインクを含むことを特徴とするインクセット。
【請求項4】
インクをインクジェット方法で吐出する工程を有するインクジェット記録方法において、前記インクが、請求項1又は2に記載のインクジェット用ブラックインクであることを特徴とするインクジェット記録方法。
【請求項5】
インクを収容するインク収容部を備えたインクカートリッジにおいて、前記インクが、請求項1又は2に記載のインクジェット用ブラックインクであることを特徴とするインクカートリッジ。
【請求項6】
インクを収容するインク収容部と、インクを吐出するための記録ヘッドとを備えた記録ユニットにおいて、前記インクが、請求項1又は2に記載のインクジェット用ブラックインクであることを特徴とする記録ユニット。
【請求項7】
インクを収容するインク収容部と、インクを吐出するための記録ヘッドとを備えたインクジェット記録装置において、前記インクが、請求項1又は2に記載のインクジェット用ブラックインクであることを特徴とするインクジェット記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−45538(P2006−45538A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−192194(P2005−192194)
【出願日】平成17年6月30日(2005.6.30)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】