説明

インクジェット用抜染インクおよび抜染加工されたポリエステル系繊維布帛の製造方法

予め色素が付与された布帛を抜染するインクジェット抜染において、抜染性に優れ、抜色する染料が限定されず、安全で安定加工を可能とするインクジェット用抜染インク、および抜染加工されたポリエステル系繊維布帛の製造方法を提供する。HLB値が9〜16であり、エチレンオキサイド付加モル数が30以下である非イオン性界面活性剤、グアニジン弱酸塩、および水からなるインクジェット用抜染インクである。また、前記インクをインクジェットにて噴射する工程、150〜190℃で湿熱処理または乾熱処理する工程、およびソーピング処理する工程により、抜染加工されたポリエステル系繊維布帛を製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット用抜染インクおよび抜染加工されたポリエステル系繊維布帛の製造方法に関し、さらに詳しくは、予め色素が付与されたポリエステル系繊維を含む布帛を抜染することが可能なインクジェット用抜染インクおよび抜染加工されたポリエステル系繊維布帛の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエステル系繊維布帛の抜染加工方法としては、還元性またはアルカリ分解性の染料により布帛を染色し、その後、ナトリウムハイドロサルファイトなどの還元剤や水酸化ナトリウムなどのアルカリ剤を含む抜色糊を印捺して、抜色を行なうという方法が広く行なわれている。
【0003】
しかしながら、従来のこのような抜染方法では、抜染用プリント型版を作成する必要があるため、時間的、コスト的問題が生じ、少ない数量の加工への対応が極めて難しい。また、プリント型版を使用するため、柄も制約される。さらに、作業者の安全性という点からみても、従来の方法においては、使用する抜染剤は危険なものが多く、とくに気をつける必要があった。
【0004】
前者の問題を解決するものとして、特開昭62−232473号公報(特許文献1)には、インクジェット方式を用いた抜染加工方法が開示されている。インクジェット方式は、従来方式のように型版を必要としないため、柄の制限や、時間的およびコスト的な問題もなく、少量でも加工が可能であり、非常に有効な手段と思われる。
【0005】
しかし、抜染インク用薬剤としてナトリウムハイドロサルファイトなどの還元剤を用いているため、抜色する染料は還元脱色性染料に限られていた。そのため、フルカラー着色する場合に色表現範囲が狭くなったり、カーシート用途など高堅牢度を求められる場合であっても、その堅牢度を満足できないという問題がある。また、還元剤を多量に水に溶解させることが必要であるため、抜染インクの長期保存安定性および長期保存後の抜色性に劣るといった問題も生じる。
【0006】
また、後者の問題を解決するものとしては、近年、特許第2977546号公報(特許文献2)にて開示されているように、比較的安全な抜染材料である炭酸グアニジンと無機吸着物質とを糊剤に混合し、プリントおよび抜染加工を行なうという方法が知られている。
【0007】
特許文献1のインクジェット方式を用いた抜染加工方法に、特許文献2に開示の抜染剤を適用すれば、従来の問題を一挙に解決できるものと思われるが、実際のところは、インクジェットノズルからの抜染剤の吐出性が不安定であり、ノズル詰まりやドット不良が発生してしまい、好ましい結果は得られない。
【0008】
さらに、特開昭57−154482号公報には、予めアルカリ分解性分散染料を染着させた合成繊維に、アルカリ性無機化合物、吸湿剤、糊剤、アルカリ非分解性分散染料、およびHLBが14.0〜19.5の非イオン系界面活性剤を適用した着色抜染法が開示されている。
【0009】
しかし、HLB値が17以上であると、親水性が強くなりすぎて、抜色したい分散染料との親和性が低くなってしまい、染料によっては抜色できない場合が生じるという問題がある。
【0010】
また、抜染インク中の抜染剤は、一般的に無色または白色であるため、インクの吐出状態を検知、検査できず、吐出不良の発見ができないといった新たな問題も生じた。そのため、インクに着色剤を含有させることが考えられたが、着色剤を入れることにより、インクの凝集、析出が起こりやすくなり、吐出不良が多くなってしまった。
【0011】
以上、インクジェット抜染加工において、抜染性に優れ、抜色する染料が限定されず、しかも安全性が高く、連続して安定な加工を可能とするインクジェット抜染方法は未だ見いだされていない。
【発明の開示】
【0012】
本発明は、予め色素が付与された布帛を抜染するインクジェット抜染において、抜染性に優れ、抜色する染料が限定されず、安全で安定加工を可能とするインクジェット用抜染インク、および抜染加工されたポリエステル系繊維布帛の製造方法を提供することを目的とする。
【0013】
すなわち、本発明は、HLB値が9〜16であり、エチレンオキサイド(以下、EOと称す)付加モル数が30以下である非イオン性界面活性剤、グアニジン弱酸塩、および水からなるインクジェット用抜染インクに関する。
【0014】
さらに水溶性色素を含むことが好ましい。
【0015】
前記非イオン性界面活性剤が、ハロゲン化フェノールのエチレンオキサイド付加物であることが好ましい。
【0016】
前記非イオン性界面活性剤の含有量が5〜30重量%、前記グアニジン弱酸塩の含有量が0.1〜5重量%であることが好ましい。
【0017】
また、本発明は、色素が付与されたポリエステル系繊維を含む布帛に、HLB値が9〜16でありEO付加モル数が30以下である非イオン性界面活性剤、グアニジン弱酸塩、および水からなるインクジェット用抜染インクをインクジェットにて噴射する工程、150〜190℃で湿熱処理または乾熱処理する工程、およびソーピング処理する工程を含む、抜染加工されたポリエステル系繊維布帛の製造方法に関する。
【0018】
前記色素が付与されたポリエステル系繊維を含む布帛に、インク受容層を付与する工程を含むことが好ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明のインクジェット用抜染インクは、HLB値が9〜16であり、かつEO付加モル数が30以下の非イオン性界面活性剤、グアニジン弱酸塩および水からなることを、基本的な特徴としている。
【0020】
このインク組成であると、特定の可抜染料を選択する必要がなく、難還元脱色性の染料であっても抜色することが可能である。また、溶解安定性、吐出安定性が良好であるため、インクジェットに最適なインクを得ることができる。さらに、有害物質を用いないため、インクの安全性も高い。
【0021】
本発明の抜染加工されたポリエステル系繊維布帛の製造方法は、予め色素を付与されたポリエステル系繊維布帛に、必要に応じてインク受容層を付与したのち、インクジェット方式にて本発明のインクジェット用抜染インクを噴射し、そして150〜190℃で湿熱処理あるいは乾熱処理後、ソーピング処理を施すことを基本的な特徴としている。
【0022】
本発明において使用されるポリエステル系繊維布帛としては、通常のポリエステルに加えてカチオン可染などの改質ポリエステルも含まれ、ポリエステルのみからなる繊維布帛はもちろんのこと、ナイロン、レーヨン、綿、アセテートおよび絹などの他の繊維種との複合繊維布帛であってもよい。また、布帛の組織は、織物、編物、起毛布および不織布など、とくに限定されない。
【0023】
予め布帛に付与する色素としては、とくに限定されないが、ポリエステル系布帛に効率よく染色することが可能である点から、分散染料またはカチオン染料を用いることが好ましい。とくに、耐光などの堅牢度が優れる面で、分散染料が好ましい。
【0024】
インク受容層としては、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、グアガム、デンプン、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸エステルおよびアクリル酸アクリルアミド共重合体などがあげられる。なかでも、染料の固着安定性、耐アルカリ性および保水性に優れている点で、カルボキシメチルセルロースが好ましい。また、その付与量は、5〜30g/mが好ましい。5g/mより少ないと、保水性に乏しくなる傾向にあり、30g/mをこえると、付与量が多くなりすぎて受容層のひび割れが起こりやすくなる傾向にある。
【0025】
本発明においては、HLB値が9〜16であり、かつEO付加モル数が30以下の非イオン性界面活性剤を用いる。非イオン性界面活性剤のHLB値が9より小さいと、親油性が強過ぎるため、水への溶解性が低下し、水溶解させると高粘度低表面張力の液体となる。また、水への溶解安定性に劣るため、油膜状スペックが発生する可能性が高く、吐出適正に問題が生じる。それにより、インクジェット用インクとして使用することが困難となる。逆にHLB値が16をこえると、親水性が高過ぎるため、比較的親油性の高い分散染料およびカチオン染料を抜色することが難しくなる。好ましくは、HLB値が12〜14である。
【0026】
また、非イオン性界面活性剤のEO付加モル数が30より多くなると、染料によっては抜色性がわるくなる。また、ごく僅かな量を水溶解させただけで高粘度な液体となるため、先に述べたインクジェット吐出適正などの問題により、非イオン性界面活性剤濃度の低いものしか作ることができず、充分な抜色効果が得られない。前記EO付加モル数の下限は、好ましくは2モル、より好ましくは4モルである。また、上限は、好ましくは20モル、より好ましくは10モルである。
【0027】
前記非イオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテルおよびポリオキシエチレンフェニルエーテルなどのエーテル型非イオン性界面活性剤、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステルなどのエーテルエステル型非イオン性界面活性剤、およびポリエチレングリコール脂肪酸エステルなどのエステル型非イオン性界面活性剤などがあげられる。なかでも、分散染料との親和性が優れる点で、芳香族系のエーテル型、エーテルエステル型およびエステル型非イオン性界面活性剤が好ましい。さらには、インクジェット用インクとしての条件である低粘度を実現することができる点で、EO付加モル数を下げてもHLBが低くならず、かつ水溶解性が良好で、インク中に高濃度で配合することが可能であるハロゲン(フッ素、塩素、臭素およびヨウ素)化フェノールのエチレンオキサイド付加物が好ましい。
【0028】
前記非イオン性界面活性剤の抜染インクへの配合量としては、5〜30重量%の範囲が好ましく、さらには10〜30重量%、とくには10〜20重量%の範囲が好ましい。前記配合量が5重量%より少ないと、抜色が不充分になる傾向にあり、逆に30重量%をこえると、高粘度なインクになる可能性が高く、インクジェットの吐出適正に問題が生じることがある。
【0029】
さらに、本発明の抜染インクにおいては、グアニジン弱酸塩を配合させて、インクのpHをアルカリ性にする。分散染料やカチオン染料にはアルカリ雰囲気下で還元され消色されやすいものも存在するため、グアニジン弱酸塩は、抜色効果を助長する効果があると考えられる。また、酸雰囲気下で染色されやすい布帛に対しても、アルカリ塩を付与することで布帛をアルカリ雰囲気とし、非イオン性界面活性剤によって引き出された染料が再度布帛に染着されることを防ぐ効果があることから、抜色を補助する効果が高いと考えられる。
【0030】
使用されるグアニジン弱酸塩としては、炭酸グアニジン、重炭酸グアニジンなどの炭酸塩、酢酸グアニジンなどのカルボン酸塩、その他、リン酸グアニジンやフェノール誘導体化合物との塩などが使用できるが、水への溶解度が高く、吐出安定性、保存安定性の高いインクを製造することができるという面から、炭酸グアニジンがとくに好ましい。
【0031】
グアニジン弱酸塩の抜染インクへの配合量としては、0.1〜5重量%の範囲が好ましく、さらには0.5〜3重量%が好ましい。前記配合量が0.1重量%より少ないと、抜色補助としての効果が低くなり、使用する染料によっては、充分な抜色が行なえない場合がある。また、5重量%をこえると、生地を構成するポリエステル糸が比較的細い場合、抜染インクを印写した部分が減量され、場合によっては凹凸模様が発現してしまうことがある。
【0032】
さらに本発明のインクジェット用抜染インクにおいては、インクの詰まりやドット不良などのインクの吐出状態を容易に判断可能とするために、水溶性色素を混合させることが好ましい。使用できる水溶性色素については、インクを付与する布帛に対して高い染色性を示す色素を用いると、布帛に染色してしまい抜色効果が極端に下がってしまうおそれがあり、また、最後に得られる布帛の画像色が変わってしまうなどの問題も発生するおそれがあることを考慮すると、反応性染料および酸性染料が好ましい。なかでも、水への溶解安定性に優れる点で、反応性染料が好ましい。染料構造としては、比較的分解されやすく、またポリエステル系繊維布帛への汚染が少ない点で、アゾ系およびフタロシアニン系が好ましい。
【0033】
前記水溶性色素の含有量としては、0.001〜0.1重量%の範囲が好ましく、さらには0.005〜0.05重量%の範囲が好ましい。水溶性色素が0.001重量%より少ないと、インクの着色濃度が低すぎることとなり、インクの吐出状態を目視で確認することが困難となる傾向にあり、0.1重量%をこえると、水溶性色素が析出する場合があり、ノズル詰まりを引き起こすことがある。
【0034】
本発明のインクの光学密度としては、2〜30/gの範囲が好ましく、さらには3〜20/gが好ましい。2/gより小さいと、インクの着色濃度が低く、ノズル詰まりなどの吐出状態を目視や光学センサーで確認することが困難である。また、30/gをこえると、水溶性色素の添加量が過剰になる場合があり、そのため染料などの析出が発生するなどノズル詰まりの原因となりやすい。なお、前記光学密度は、一般的に用いられる分光光度計にて測定することができる。
【0035】
本発明のインクジェット用抜染インクの粘度については、25℃において、1〜10cpsであることが好ましく、さらには1〜5cpsであることが好ましい。1cpsより低いと、吐出したインク滴が飛翔中に分裂し、模様のシャープ性に劣る傾向にあり、10cpsをこえると、高粘度のためノズルからのインクの吐出が困難となる傾向にある。
【0036】
また、本発明のインクジェット用抜染インクの布帛への付与量については、10〜100g/mの範囲で付与されることが好ましい。付与量が10g/mより少ないと、インクの付与量が少なく、充分な抜色効果が得られない傾向にある。また、100g/mをこえると、必要以上の量となりコスト高になるだけではなく、インクが滲み、柄際のシャープさにかけるおそれがあるためである。
【0037】
さらに本発明のインクジェット用抜染インクは、布帛への着色用インクと併用することが可能である。こうすることにより、抜染と着色(着抜)加工を同時に行なうことができ、同一布帛上で抜色のみの部分、着色のみの部分、着抜部分といった表現を、自由自在に行なうことが可能となる。
【0038】
前記着色用インクとして使用できるものとしては、分散染料、酸性染料、直接染料、反応性染料、カチオン染料および顔料などを、水分散あるいは水溶解したものなどがあげられ、とくに限定されない。
【0039】
また、本発明に用いられるインクジェット印写装置としては、インクを加熱しない方式であればよく、荷電変調方式、帯電噴射方式、マイクロドット方式およびインクミスト方式などの連続方式、ピエゾ変換方式および静電吸引方式などのオンデマンド方式があげられる。なかでも、インク吐出量安定性および連続吐出性に優れ、比較的安価で製造できる点で、ピエゾ方式が好ましい。
【0040】
このように、抜染方法としてインクジェット方式を用いることで、少量の加工に対応でき、さらに型枠を作成する必要がないため、低コスト、短納期、柄に制約がないなどの利点が多くあり、従来の方式ではできなかった柄や数量にも充分に対応することができる。
【0041】
本発明においては、前記インクジェット印写装置にて本発明のインクジェット用抜染インクを噴射したのち、150〜190℃で湿熱処理または乾熱処理し、ソーピング処理を施すことにより、目的とする抜染されたポリエステル系繊維布帛を得ることができる。インク受容層付与、湿熱処理、乾熱処理、およびソーピング処理の方法については後述する実施例にて行われているような従来公知の方法にて行なえばよく、とくに限定されない。
【0042】
前記湿熱または乾熱処理の処理温度は、150〜190℃であり、好ましくは155〜185℃、より好ましくは160〜180℃である。処理温度が150℃より低いと、充分な抜色効果が得られない場合があり、190℃をこえると、インク受容層に添加する薬剤や糊剤が布帛に焦げ付く場合がある。また、前記処理時間は、好ましくは3〜30分、より好ましくは5〜20分である。処理時間が3分より短いと、充分な抜色効果が得られない場合があり、30分をこえると、必要以上であり、エネルギーの無駄となってしまう。
【実施例】
【0043】
以下、本発明の実施例を比較例と共にあげ、本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の実施例によって限定されるものではない。なお、実施例、比較例中の「部」は、「重量部」をあらわす。
【0044】
実施例1
ポリオキシエチレンクロロフェニルエーテル(HLB13.5、EO付加モル数6)を20部、C.I.Reactive Red 24(アゾ系)を0.02部、炭酸グアニジン3部、純水76.98部を混合、2時間攪拌し、東洋濾紙No.5Aにて減圧濾過後、真空脱気処理し、インクジェット用インクを得た。
【0045】
(抜色用染色布の準備)
ポリエステル100%の起毛布帛に、難還元脱色性分散染料であるC.I.Disperse Blue 60を用いて浸染処理を行ない、つぎにカルボキシメチルセルロース(ファインガムHEL−1、第一工業製薬(株)製)を付与量20g/mになるようディップニップ法にて付与、乾燥し、インク受容層を設けた染色起毛布を得た。
【0046】
得られたインク、および染色起毛布を用い、以下のインクジェット印写条件にて、印写を実施した。
【0047】
(インクジェット印写条件)
印写装置:オンデマンド方式シリアル走査型インクジェット印写装置(ピエゾ変換方式)
ノズル径:50μm
駆動電圧:100V
周波数:5kHz
解像度:360dpi
付与量:20、40、60、80、100g/m
印写柄:付与量毎のマトリックス柄
【0048】
ついで、印写した布帛を乾燥した後、175℃で10分間湿熱処理した。その後、界面活性剤(ラッコールS170、明成化学(株)製)と二酸化チオ尿素とを用いて洗浄を行ない、乾燥し、整毛工程を施した。
【0049】
実施例2
ポリオキシエチレントリスチレン化フェニルエーテル(HLB12、EO付加モル数14)を8部、C.I.Reactive Red 24を0.02部、炭酸グアニジンを3部、純水88.98部を混合、2時間攪拌し、東洋濾紙No.5Aにて減圧濾過後、真空脱気処理し、インクジェット用インクを得た。
【0050】
得られたインクを用いて、実施例1と同様にインクジェット抜染を行なった。
【0051】
比較例1
ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル(HLB7.4、EO付加モル数3)を10部、C.I.Reactive Red 24を0.02部、炭酸グアニジンを3部、純水86.98部を混合、2時間攪拌し、東洋濾紙No.5Aにて減圧濾過後、真空脱気処理し、インクジェット用インクを得た。
【0052】
得られたインクを用いて、実施例1と同様にインクジェット抜染を行なった。
【0053】
比較例2
ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル(HLB16.9、EO付加モル数50)を5部、C.I.Reactive Red 24を0.02部、炭酸グアニジンを3部、純水91.98部を混合、2時間攪拌し、東洋濾紙No.5Aにて減圧濾過後、真空脱気処理し、インクジェット用インクを得た。
【0054】
得られたインクを用いて、実施例1と同様にインクジェット抜染を行なった。
【0055】
比較例3
ポリオキシエチレンクロロフェニルエーテル(HLB13.5、EO付加モル数6)を20部、C.I.Reactive Red 24を0.02部、純水79.98部を混合、2時間攪拌し、東洋濾紙No.5Aにて減圧濾過後、真空脱気処理し、インクジェット用インクを得た。
【0056】
得られたインクを用いて、実施例1と同様にインクジェット抜染を行なった。
【0057】
比較例4
炭酸グアニジンを3部、C.I.Reactive Red 24を0.02部、純水96.98部を混合、2時間攪拌し、東洋濾紙No.5Aにて減圧濾過後、真空脱気処理し、インクジェット用インクを得た。
【0058】
得られたインクを用いて、実施例1と同様にインクジェット抜染を行った。
【0059】
実施例1〜2、比較例1〜4にて得られたインクおよび得られた布帛について、以下の方法により評価した。その結果を表1に示す。
【0060】
(インク粘度)
(株)東京計器BL型粘度計 BLローター(60rpm、25℃)を用いて測定した。
【0061】
(インク吐出性)
1ドットパターンを普通紙に60分間連続印写し、目視でドットの乱れ、および詰まりを確認した。
◎ 60分間、吐出不良は全く無し
○ 10分間、吐出不良は全く無し
△ ノズル詰まりは無いが、吐出不良ノズル有り
× 詰まりノズル有り、吐出不可能
【0062】
(インク光学密度)
(株)島津製作所製UV2200を用いて、インクを400nm〜700nmの範囲でスペクトル測定を行い、最大吸収ピーク波長での光学密度を測定した。
【0063】
(抜色性)
マクベスRD918(マクベス社製)を用いて抜色前後の反射濃度を測定し、抜色前の反射濃度を100%として評価した。
◎ すべての付与量において、50%以上抜色されている
○ すべての付与量において、30%以上抜色されている
△ すべての付与量において、10%以上抜色されている
× すべての付与量において、抜色が10%より少ない
【0064】
(抜色後の色相変化)
目視により評価した。
○ すべての付与量において、抜色前後で色相変化無し
△ すべての付与量において、わずかに色相変化が認められる
× すべての付与量において、色相の違いが一見して判別できる
【0065】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明によれば、インクジェット方式で充分使用可能で、抜色する染料の選択性がなく、安全性の高いインクジェット用抜染インクおよび抜染加工されたポリエステル系繊維布帛の製造方法を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
HLB値が9〜16であり、エチレンオキサイド付加モル数が30以下である非イオン性界面活性剤、グアニジン弱酸塩、および水からなるインクジェット用抜染インク。
【請求項2】
さらに水溶性色素を含む請求の範囲第1項記載のインクジェット用抜染インク。
【請求項3】
前記非イオン性界面活性剤が、ハロゲン化フェノールのエチレンオキサイド付加物である請求の範囲第1項記載のインクジェット用抜染インク。
【請求項4】
前記非イオン性界面活性剤の含有量が5〜30重量%、前記グアニジン弱酸塩の含有量が0.1〜5重量%である請求の範囲第1項記載のインクジェット用抜染インク。
【請求項5】
色素が付与されたポリエステル系繊維を含む布帛に、HLB値が9〜16であり、エチレンオキサイド付加モル数が30以下である非イオン性界面活性剤、グアニジン弱酸塩、および水からなるインクジェット用抜染インクをインクジェットにて噴射する工程、150〜190℃で湿熱処理または乾熱処理する工程、およびソーピング処理する工程を含む、抜染加工されたポリエステル系繊維布帛の製造方法。
【請求項6】
前記色素が付与されたポリエステル系繊維を含む布帛に、インク受容層を付与する工程を含む、請求の範囲第5項記載の抜染加工されたポリエステル系繊維布帛の製造方法。

【国際公開番号】WO2005/033221
【国際公開日】平成17年4月14日(2005.4.14)
【発行日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−514388(P2005−514388)
【国際出願番号】PCT/JP2004/013528
【国際出願日】平成16年9月16日(2004.9.16)
【出願人】(000107907)セーレン株式会社 (462)
【Fターム(参考)】