説明

インクジェット用紙

【課題】高速インクジェットシステムにおけるフルカラー印刷において十分なバーコード印刷適性と耐水性を有するインクジェット用紙を提供することにある。
【解決手段】原紙の両面にカチオン樹脂とデンプンを含有し、顔料を含まない表面サイズプレス処理剤が塗布されているインクジェット用紙において、表面サイズプレス処理剤中にカチオン樹脂と長鎖アルキル基を含有するデンプンを含有し、好ましくは、該カチオン樹脂の0.1%水溶液のカチオン電荷量が10μeq/L〜30μeq/Lの範囲であるアミン・エピクロルヒドリン共重合体であり、更に好ましくは、スチレン・アクリル共重合体を含有するインクジェット用紙。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット用紙に関するものであり、特に、高速インクジェットシステムにおけるフルカラー印刷においても優れた耐水性とバーコード印刷適性を有するインクジェット用紙に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、パーソナルコンピューターで作製した画像情報等を用紙に表示する手段として、熱や圧力を駆動源として、ノズルより溶液状の染料インクや顔料インクを用紙上に吐出させ、インクにより画像を形成して印刷を行うインクジェット記録方式やトナーを用紙上に転写させることにより画像を形成させて印刷を行う電子写真記録方式が使用されている。
また、商業印刷等の分野においては、デジタル情報を製版することなく紙などのメディ
アに直接印刷できるため少部数の印刷や可変情報印刷(バリアブル印刷)に最適であるイ
ンクジェット記録方式や電子写真記録方式が、オンデマンド印刷分野で導入されている。
なかでも、インクジェット方式は記録時の騒音が少なく、カラー化が容易であること、高速記録が可能であること等の理由から近年、急速に発展をとげている。
【0003】
しかし、一般の印刷に使用される上質紙はインクの吸収性が劣るため、印字されたインクが紙表面で乾燥せずに長時間のこり、装置を汚染したり画像が汚れたりするため実用性に乏しい。
こうした問題を解決するために、サイズ度の低い用紙を用いる(例えば、特許文献1参照)ことや、適度なサイズ性を有し、炭酸カルシウム等の填料を含有した電子写真とインクジェット記録共用紙(例えば、特許文献2参照)が提案されている。しかしながら、上記の提案にある記録媒体は、水性インクによる記録が行われるため、媒体上に形成された記録画像に水などが付着した場合、耐水性に劣り、再溶出により記録画像が損なわれるという欠点を有している。
【0004】
そこでカチオン性ポリマーや水溶性金属塩等の染料とレーキを形成する耐水化剤を印刷後に付与すること(例えば、特許文献3参照)や、樹脂型染料固着剤あるいは4級アンモニウム塩を塩基性化合物とする染料固着剤を塗布したもの(例えば、特許文献4参照)等が提案されている。しかし、これらの提案に示されているジシアンジアミドホルムアルデヒド縮合物や、ポリアミン、ポリエチレンイミン等の各種カチオン性のインク定着剤よりなる染料媒染剤は、十分な耐水性が得られる量を使用すると、白紙黄変や、染料の褪色を引き起こすという欠点があった。
【0005】
これらの欠点を解決するために、特定の構造を持つ第4級アンモニウム塩(例えば、特許文献5〜7参照)やポリアルキレンポリアミンジシアンジアミドアンモニウム塩を用いること(例えば、特許文献8参照)等が提案されている。また、高速インクジェットシステムの普及に伴い、高速インクジェットシステムにおけるインク乾燥性や耐水性を備える(例えば、特許文献9〜12参照)等の提案もされている。しかし、上記提案の記録シートは高速インクジェットシステムにおけるフルカラー印刷において、インクの色によっては著しく耐水性に劣り、印刷物に水がかかったり、水に浸漬された場合の印刷部の鮮明性が不十分であるためフルカラー印刷用紙として満足できるものではなかった。
また、本発明と同様、長鎖アルキル基を含有するデンプンを用いること(例えば、特許文献13参照)が提案されているが、塗工層に顔料を含み、インクジェット印刷適性に対し考慮しておらず、耐水性、バーコード印刷適性が十分ではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭52−53012号公報
【特許文献2】特開平6−8617号公報
【特許文献3】特開昭55−150396号公報
【特許文献4】特開昭60−161188号公報
【特許文献5】特開昭61−293886号公報
【特許文献6】特開昭62−238783号公報
【特許文献7】特開平1−9776号公報
【特許文献8】特公平2−35675号公報
【特許文献9】特開平9―202042号公報
【特許文献10】特開2000―265394号公報
【特許文献11】特開2003―326831号公報
【特許文献12】特開2000―247016号公報
【特許文献13】特開2005―232638号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、高速インクジェットシステムにおけるフルカラー印刷においても十分な耐水性を有し、優れたバーコード印刷適性が得られ、更にはオフセット印刷にも適したインクジェット用紙を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意研究を行った結果、下記の構成を採用
することにより、達成できることを見出し、本発明に至った。
【0009】
(1)原紙の両面にカチオン樹脂とデンプンを含有し、顔料を含まない表面サイズプレス処理剤が塗布されているインクジェット用紙において、表面サイズプレス処理剤中にカチオン樹脂と長鎖アルキル基を含有するデンプンを含有することを特徴とするインクジェット用紙。
(2)前記表面サイズプレス処理剤に含有されるカチオン樹脂の0.1%水溶液のカチオン電荷量が10〜30μeq/Lであることを特徴とする(1)記載のインクジェット用紙。(カチオン電荷量は、MUTEK社 パーティクル・チャージ・デテクター PCD03によりポリエチレン硫酸ナトリウムを用いて測定した。)
(3)前記表面サイズプレス処理剤が、スチレン・アクリル系共重合体を含有する事を特徴とする(1)または(2)のいずれか1項記載のインクジェット用紙。
(4)前記表面サイズプレス処理剤に含有されるカチオン樹脂がアミン・エピクロルヒドリン共重合体であることを特徴とする(1)〜(3)のいずれか1項記載のインクジェット用紙。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係るインクジェット用紙は、高速インクジェットシステムにおけるフルカラー印刷においても画像の十分な耐水性とバーコード印刷適性を有し、優れた記録画像が得られるインクジェット用紙である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<表面処理剤>
本発明で使用される表面サイズプレス処理剤は、カチオン性樹脂と長鎖アルキル基を含有するデンプンを含有し、更に好ましくは、スチレン・アクリル系共重合体を含有する。
【0012】
本発明で使用するカチオン性樹脂は、(1)アルキルアミン−エピクロルヒドリン共重合物、(2)第2級アミノ基、第3級アミノ基や第4級アンモニウム基を有するアクリル重合体、(3)ポリビニルアミン、ポリビニルアミジン、5員環アミジン類、(4)ジシアンジアミド−ホルマリン共重合体に代表されるジシアン系カチオン樹脂、(5)ジシアンジアミド−ポリエチレンアミン共重合物に代表されるポリアミン系カチオン樹脂、(6)ポリエチレンポリアミンやポリプロピレンポリアミンなどのポリアルキレンポリアミン類又はその誘導体、(7)ジアリルジメチルアンモニウム−SO共重合物、(8)ジアリルアミン塩−SO共重合物、(9)ジメチルジアリルアンモニウムクロライド重合物、(10)アリルアミン塩の重合物、(11)ビニルベンジルトリアリルアンモニウム塩の単独重合体又は共重合体、(12)ジアルキルアミノエチル(メタ)アクリレート4級塩共重合物、(13)アクリルアミド−ジアリルアミン塩共重合物、(14)ポリ塩化アルミニウム、ポリ酢酸アルミニウムなどのアルミニウム塩等の一般市販されているものが挙げられ、単独あるいは数種類併用して用いられる。
【0013】
カチオン性樹脂の0.1%水溶液のカチオン電荷量は、10〜30μeq/Lであることが好ましく、10μeq/L未満であると画像の発色性の低下や、印刷部の耐水性の低下が起こり、30μeq/Lを超えるとオフセット印刷時に地汚れが発生する場合がある。中でも20μeq/L〜30μeq/Lであることが好ましい。カチオン電荷量は、MUTEK社 パーティクル・チャージ・デテクター PCD03によりポリエチレン硫酸ナトリウムを用いて測定した。
【0014】
カチオン性樹脂の重量平均分子量は、500以上20000未満のものが好ましく、重量平均分子量が500未満であると耐水性が劣り、20000以上であると用紙表面の成膜性が高くなり、インク吸収性が劣る場合がある。
【0015】
これらのカチオン性樹脂の中でも、アミン・エピクロルヒドリン共重合体を使用することが高速インクジェットプリンターで印刷した際の発色性、細線再現性が優れるので好ましい。
【0016】
カチオン性樹脂の配合量は、表面サイズプレス処理剤総質量部100部に対して20〜70質量部が好ましく、より好ましくは30〜50質量部の範囲で調節される。カチオン性樹脂が20質量部未満であると、画像の発色性の低下や、印刷部の耐水性の低下が起こりやすくなり、70質量部を超えると、相対的にデンプン等のバインダー成分の配合量が減少し、表面強度が低下する。
【0017】
本発明で使用する長鎖アルキル基を含有するデンプンとしては、原料デンプンを酸化触媒にて酸化処理して得たデンプンに、長鎖アルキル基を含有すべく所定の処理を施したデンプンが好適である。また、充分な疎水性を得るためには、アルキル基の炭素数は8以上が好ましい。原料デンプンの種類については特に限定されないが、再湿潤時に粘着性が出ないため、とうもろこしデンプンが好ましい。
【0018】
インクジェット印刷物の細線再現性は、用紙最表面の疎水性が高いほどインクのニジミが抑えられるため良くなり、これによりバーコード印刷適性も良くなるため、表面サイズプレス処理剤の主成分として疎水基である長鎖アルキル基を含有する酸化デンプンを使用することにより、バーコード印刷適性が向上する。
通常使用される酸化デンプン、エステル化デンプンあるいはエーテル化デンプンなどは、そのデンプンは疎水性が低く、細線再現性のレベルは低い。これらの通常使用されるデンプンに表面サイズ剤を添加することで、用紙表面の疎水性を高めることはできる。しかし、表面サイズ剤を添加しても表面処理剤フィルムが万遍なく疎水化されている訳ではないので、用紙表面に疎水性の低い部分が生じる場合がある。
一方、本発明のサイズプレス処理剤の主成分である長鎖アルキル基を含有するデンプンは、疎水基が含有されているため、用紙表面を万遍なく疎水化することができ、ムラなくバーコード印刷適性を向上させることができる。
【0019】
長鎖アルキル基を含有するデンプンの配合量は、表面サイズプレス処理剤総質量部100部に対して30〜80質量部が好ましく、より好ましくは50〜70質量部の範囲で調節される。長鎖アルキル 基を含有するデンプンが30質量部未満であると、バーコード印刷適性の発色性の低下や、表面強度の低下が起こりやすくなり、80質量部を超えると、インク吸収性の低下、印字ムラ、画像の鮮明性の低下が起こりやすくなる。
【0020】
なお、本発明においては、表面サイズプレス処理剤の副成分として、生デンプン、長鎖アルキル基を含有しない酸化デンプン、エーテル化デンプン、エステル化デンプン等のデンプン類、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロースなどの水溶性セルロース類、アルギン酸、グアーガム、キサンタンガム、プルラン等の天然水溶性高分子誘導体類、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド等の合成水溶性高分子類、消泡剤類、スライムコントロール剤類、染料類などを適宜配合しても差し支えない。特にポリビニルアルコールの配合は、表面強度を向上させオフセット印刷適性を良化させる効果が高いため好ましい。
【0021】
ポリビニルアルコールの配合量は、総質量部100部に対して0〜40質量部が好ましい。ポリビニルアルコ−ルの配合量が40質量部を超えると、インク吸収性の低下、印字ムラ、画像の鮮明性の低下が起こりやすくなる。
【0022】
本発明の表面サイズプレス処理剤には、外添サイズ剤としてスチレン・アクリル系共重合体を含有することが好ましい。スチレン・アクリル系共重合体を含有することにより、更に表面の疎水性を高め、バーコード印刷適性を向上させることが出来る。
【0023】
スチレン・アクリル系共重合体の配合量は、総質量部100部に対して1〜10質量部が好ましく、より好ましくは2〜6質量部の範囲で調節される。スチレン・アクリル系共重合体が1質量部未満であると、バーコード印刷適性の発色性の低下が起こりやすくなり、10質量部を超えると、インク吸収性の低下が起こりやすくなる。
【0024】
また、必要に応じ各種助剤、例えば、界面活性剤、pH調節剤、粘度調節剤、柔軟剤、
光沢付与剤、ワックス類、分散剤、流動変性剤、安定化剤、帯電防止剤、架橋剤、サイズ
剤、蛍光増白剤、着色剤、紫外線吸収剤、消泡剤、耐水化剤、可塑剤、滑剤、防腐剤及び
香料等が必要に応じて適宜配合される。
【0025】
本発明においては、長鎖アルキル基を含有する澱粉とカチオン樹脂を含有する表面サイズプレス処理剤の塗布量については、特に限定されるものではないが、両面当りの乾燥塗布量が0.5〜5.0g/m2の範囲となるように、原紙の両面に塗布、乾燥するのが好ましく、1.0〜3.0g/m2の範囲とするのがさらに好ましい。表面サイズプレス処理剤の塗布量が0.5g/m2未満では、充分なバーコード印刷適性および耐水性が得られず、他方、5.0g/m2を越えるとインク吸収性が低下しやすくなる。
【0026】
<原紙>
本発明で用いるインクジェット用紙の原紙としては、原料パルプとして化学パルプ(NBKP、LBKP等)、機械パルプ(GP、CGP、RGP、PGW、TMP等)、脱墨古紙パルプ(DIP等)等を単独または任意の比率で混合して使用される。特に、DIPを配合した場合には微細繊維や夾雑物の影響で内添薬品の効果、特にサイズ性が出にくい傾向にあるため、本発明を適応することが好ましい。また、ホワイトカーボン、クレー、無定形シリカ、タルク、酸化チタン、炭酸カルシウムなどの製紙用填料が抄紙時に添加される。また、必要に応じて、内添サイズ剤、定着剤、紙力増強剤、歩留り向上剤、耐水化剤、紫外線吸収剤等の公知公用の抄紙用薬品が適宜添加され、公知公用の抄紙機にて抄紙される。原紙の抄造条件についても、特に限定はない。抄紙機としては、例えば、長網式抄紙機、ギャップフォーマー型抄紙機、円網式抄紙機、短網式抄紙機等の商業規模の抄紙機が、目的に応じて適宜選択して使用できる。
本発明のインクジェット用紙に使用する原紙は、特に限定されるものではないが、一般的には、坪量が50〜200g/m2程度の範囲にある原紙が、目的に応じて適宜選択して使用される。
【0027】
<表面サイズプレス処理剤の原紙への塗布>
表面サイズプレス処理剤を紙原紙へ塗布するための装置としては、特に限定されるものではないが、例えば2ロールサイズプレス、ブレードメタリングサイズプレス、ロッドメタリングサイズプレス、ゲートロールコーターなどのロールコーター、トレーリング、フレキシブル、ロールアプリケーション、ファウンテンアプリケーション、ショートドゥエル等のベベルタイプやベントタイプのブレードコーターロッドブレードコーター、バーコーター、エアーナイフコーター、カーテンコーター、スプレーコーター、グラビアコーターなどの公知公用の装置が適宜使用される。なお、表面処理剤組成物を塗布後の湿潤塗被層を乾燥する方法としては、例えば、蒸気乾燥、ガスヒーター乾燥、電気ヒーター乾燥、赤外線ヒーター乾燥等の各種方式が採用できる。
【0028】
本発明のインクジェット用紙の製造に際しては、表面サイズプレス処理剤組成物の塗被層の形成後に、各種キャレンダー装置にて平滑化処理を施しても良く、かかるキャレンダー装置としては、スーパーキャレンダー、ソフトキャレンダー、グロスキャレンダー、コンパクトキャレンダー、マットスーパーキャレンダー、マットキャレンダー等の一般に使用されているキャレンダー装置が適宜使用できる。キャレンダー仕上げ条件としては、剛性ロールの温度、キャレンダー圧力、ニップ数、ロール速度、キャレンダー前の紙水分等が、要求される品質に応じて適宜選択される。さらに、キャレンダー装置は、コーターと別であるオフタイプとコーターと一体となっているオンタイプがあるが、どちらにおいても使用できる。使用するキャレンダー装置の材質は、剛性ロールでは金属もしくはその表面に硬質クロムメッキ等で鏡面処理したロールである。弾性ロールはウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、フェノール樹脂、ポリアクリレート樹脂等の樹脂ロール、コットン、ナイロン、アスベスト、アラミド繊維等を成型したロールが適宜使用される。なお、キャレンダーによる仕上げ後の塗被紙の調湿、加湿のための水塗り装置、静電加湿装置、蒸気加湿装置等を適宜組合せて使用することも可能である。
【0029】
本発明に係るインクジェット記録用紙の白色度は特に限定されないが、70%以上、好ましくは75%以上であれば、印刷面が鮮明である。
【0030】
本発明に係るインクジェット記録用紙の不透明度は特に限定されないが、75%以上、好ましくは80%以上であれば、印刷面の裏面に印刷面が透き通ることなく印刷後の不透明性を維持できる。
【0031】
以下、実施例に基づいて本発明をさらに詳細に説明する。例中、部とあるのは質量部を、%とあるのは質量%をそれぞれ示す。尚、本発明は、これらの実施例に何等制限を受けるものではない。
【0032】
基材の調整
ユーカリ、オーク材を原料としてECF漂白されたLBKP90%とDIP10%を450mlCSFに叩解し、填料として軽質炭酸カルシウムを10.0%、内添サイズ剤としてアルケニル無水コハク酸(ナショナルスターチ社製、ファイブラン81)を0.07%、歩留向上剤(協和産業社製、パーコール182)を0.02%で長網多筒型抄紙機によって抄紙し、坪量81.4g/mの原紙を作成した。
【0033】
実施例1
上記原紙上に、アミン・エピクロルヒドリン重合体(星光PMC製、DK6810、カチオン電荷量20μeq/L)30部、長鎖アルキル基含有デンプン(王子コーンスターチ製、GRS−T110)70部の混合塗布液を両面で2.5g/mとなるように2ロールサイズプレス機で、塗布後乾燥しインクジェット記録用紙を得た。
【0034】
実施例2
上記原紙上に、アミン・エピクロルヒドリン重合物(里田化工製、ジェットフィックス30、カチオン電荷量22μeq/L)30部、長鎖アルキル基含有デンプン(王子コーンスターチ製、GRS−T110)67部、スチレン・アクリル系共重合体(星光PMC社、SE2220)3部の混合塗布液を両面で2.5g/mとなるように2ロールサイズプレス機で、塗布後乾燥しインクジェット記録用紙を得た。
【0035】
実施例3
上記原紙上に、アミン・エピクロルヒドリン重合体(星光PMC社製、DK6810、カチオン電荷量20μeq/L)22部、長鎖アルキル基含有デンプン(王子コーンスターチ製、GRS−T110)78部の混合塗布液を両面で2.5g/mとなるように2ロールサイズプレス機で、塗布後乾燥しインクジェット記録用紙を得た。
【0036】
実施例4
上記原紙上に、ジアリル・ジメチル・アンモニウムクロライド重合体(センカ社製、ユニセンスCP−103、カチオン電荷量35μeq/L)30部、長鎖アルキル基含有デンプン(王子コーンスターチ製、GRS−T110)70部の混合塗布液を両面で2.5g/mとなるように2ロールサイズプレス機で、塗布後乾燥しインクジェット記録用紙を得た。
【0037】
実施例5
上記原紙上に、アミン・エピクロルヒドリン重合物(里田化工製、ジェットフィックス30、カチオン電荷量22μeq/L)30部、長鎖アルキル基含有デンプン(王子コーンスターチ製、GRS−T110)50部、ポリビニルアルコール(クラレ社製:PVA110)17部、スチレン・アクリル系共重合体(星光PMC社、SE2220)3部の混合塗布液を両面で2.5g/mとなるように2ロールサイズプレス機で、塗布後乾燥しインクジェット記録用紙を得た。
【0038】
実施例6
上記原紙上に、アミン・エピクロルヒドリン重合物(星光PMC社製、DK6802、カチオン電荷量3μeq/L)30部、長鎖アルキル基含有デンプン(王子コーンスターチ製、GRS−T110)50部、ポリビニルアルコール(クラレ社製:PVA110)20部の混合塗布液を両面で2.5g/mとなるように2ロールサイズプレス機で、塗布後乾燥しインクジェット記録用紙を得た。
【0039】
実施例7
上記原紙上に、アミン・エピクロルヒドリン重合体(星光PMC社製、DK6810、カチオン電荷量20μeq/L)65部、長鎖アルキル基含有デンプン(王子コーンスターチ製、GRS−T110)35部の混合塗布液を両面で2.5g/mとなるように2ロールサイズプレス機で、塗布後乾燥しインクジェット記録用紙を得た。
【0040】
比較例1
実施例1の長鎖アルキル基含有デンプン(王子コーンスターチ製、GRS−T110)70部を酸化デンプン(王子コーンスターチ製、エースA)70部とした以外は、実施例1と同様にしてインクジェット用紙を作製した。
【0041】
比較例2
実施例1の長鎖アルキル基含有デンプン(王子コーンスターチ製、GRS−T110)70部をポリビニルアルコール(クラレ社製:PVA110)70部とした以外は、実施例1と同様にしてインクジェット用紙を作製した。
【0042】
得られたインクジェット用紙について、以下に示す方法により評価を行った。得られた結果を表1に示す。
【0043】
<バーコード印刷適性>
各実施例および比較例で得たインクジェット用紙をミヤコシ製高速インクジェット プリンティングシステムMJP600で、「UCC/EAN128コード」を印刷した後、インクジェット印刷されたEAN128バーコードについて、バーコード検証機「Inspector D4000」(RJS社製)を用いてバーコードを10回走査させ評価した。
〈評価基準〉
5:バーコードリーダーの10回の走査の内、10回読み取れる。
4:バーコードリーダーの10回の走査の内、9回読み取れる。
3:バーコードリーダーの10回の走査の内、6以上9回未満読み取れる。
2:バーコードに対して複数の走査線を通過させると読み取れるレベル。
1:読み取ることが出来ないレベル。
なお、評価が2以下のものは、実用上問題がある。
【0044】
<インク乾燥性>
インクジェット 印刷を行った部位について、インクの転写汚れについて、目視判定を行った。
〈評価基準〉
5(優)−1(劣)
なお、評価が2以下のものは、実用上問題がある。
【0045】
<耐水性>
インクジェット 印刷後のシートを水道水中に30秒間浸積した後、自然乾燥した。その後、印刷画像の滲みの程度を目視で評価した。
〈評価基準〉
5(優)−1(劣)
なお、評価が2以下のものは、実用上問題がある。
【0046】
<オフセット印刷適性/表面強度>
各実施例および比較例で得たインクジェット用紙から巾2cmの試料ストリップを切り取り、これをサンプル台紙(OK特アートポスト 256g/m)に貼りつけ、RI印刷試験機(明製作所製)にて、印刷インキ(紙試験 SD50紅BT&K TOKA株式会社製)を0.4cc使用して印刷を行い、印刷面のピッキングの程度を目視評価した。評価は次の5段階評価で行った。
〈評価基準〉
5(優)−1(劣)
なお、評価が2以下のものは、実用上問題がある。
【0047】
<オフセット印刷適性/地汚れ>
フォーム用オフセット印刷機(ミヤコシ社製 MVF18B)で、長さ5,000m分を印刷し、非画線部の地汚れの状況を目視評価した。評価は次の5段階評価で行った。
〈評価基準〉
5(優)−1(劣)
なお、評価が2以下のものは、実用上問題がある。
【0048】
実施例1〜5及び比較例1〜3の、インクジェット印刷適性、オフセット印刷適性の評価結果を表1に示す。
【0049】
【表1】

【0050】
表1からわかるように、本発明のインクジェット記録用紙は、十分な耐水性とバーコード印刷適性を有し、オフセット印刷適性も良好である。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明のインクジェット用紙は、インクジェット印刷においても優れたバーコード印刷適性とインク乾燥性、耐水性を有するものであり、実用的に優れたものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原紙の両面にカチオン樹脂とデンプンを含有し、顔料を含まない表面サイズプレス処理剤が塗布されているインクジェット用紙において、表面サイズプレス処理剤中にカチオン樹脂と長鎖アルキル基を含有するデンプンを含有することを特徴とするインクジェット用紙。
【請求項2】
前記表面サイズプレス処理剤に含有されるカチオン樹脂の0.1%水溶液のカチオン電荷量が10μeq/L〜30μeq/Lであることを特徴とする請求項1記載のインクジェット用紙。
【請求項3】
前記表面サイズプレス処理剤が、スチレン・アクリル系共重合体を含有する事を特徴とする請求項1又は2のいずれか1項記載のインクジェット用紙。
【請求項4】
前記表面サイズプレス処理剤に含有されるカチオン樹脂がアミン・エピクロルヒドリン共重合体であることを特徴とする請求項1〜3項のいずれか1項記載のインクジェット用紙。

【公開番号】特開2012−121292(P2012−121292A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−275895(P2010−275895)
【出願日】平成22年12月10日(2010.12.10)
【出願人】(000122298)王子製紙株式会社 (2,055)
【Fターム(参考)】