説明

インクジェット用連続用紙、インクジェットプリンター、およびインクジェットプリンターの予備吐出方法

【課題】インクジェットプリンターのメンテナンス作業を容易にするインクジェット用連続用紙を提供する。
【解決手段】インクジェットプリンター10によって搬送され情報が記録されるインクジェット用連続用紙80であって、情報が記録される記録領域95を有し、前記記録領域95以外の領域に、搬送方向と交差する方向において前記記録領域95の長さをカバーする長さの開口部96が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報が記録されるインクジェット用連続用紙、インクジェットプリンター、およびインクジェットプリンターの予備吐出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェットプリンターは、インクジェットヘッドの複数のノズルからインクを液滴として吐出して記録用紙上に情報を記録する。インクジェットプリンターは、所定期間使用しないと気泡の混入やインクの増粘が発生する虞がある。また、記録用紙からの紙粉等の塵芥がノズル周辺に付着する可能性もある。そのため、インクジェットプリンターは、所定のタイミングでインクを吐出して上述のようなインクの吐出不良要因を除去する。この動作を予備吐出(またはフラッシング)という。
【0003】
インクジェットヘッドが記録用紙の搬送方向と直交する方向に移動するシリアル型のインクジェットプリンターや、単票等の長さが有限な記録用紙に情報を記録するインクジェットプリンターは、記録用紙への記録領域以外の領域や、記録用紙間で予備吐出を行う。
【0004】
近年、記録印刷の高速化等を目的に、記録用紙の記録領域以上の幅寸法を備えるインクジェットヘッドを記録位置に停止させたままの状態で記録用紙に情報を記録するライン型のインクジェットプリンターが提案されている。この種のインクジェットプリンターにおいて、記録用紙として長尺の連続用紙が使用される場合がある。この場合、予備吐出動作を確保するため、記録用紙上に予備吐出領域を設け、その予備吐出領域に向け予備吐出を行うインクジェットプリンターが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−144792号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述のインクジェットプリンターでは、記録用紙上に余分なパターンが記録され、見栄えがよくない。さらには、吐出不良要因を除去するために吐出されるインクは集中して吐出されるため、通常の文字や画像情報と比較して乾きにくく記録用紙や搬送経路の周辺を汚染する虞があった。特に、記録用紙としてラベルが間隔をおいて台紙上に連続的に貼付されているラベル紙を適用する場合は、ラベルを台紙から剥離させる剥離性向上のために台紙表面がコーティングされたグラシン紙等を台紙として使用している。そのため、この傾向が顕著となる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0008】
(適用例1)インクジェットプリンターによって搬送され情報が記録されるインクジェット用連続用紙であって、情報が記録される記録領域を有し、前記記録領域以外の領域に、搬送方向と交差する方向において前記記録領域の長さをカバーする長さの開口部が形成されていることを特徴とするインクジェット用連続用紙。
【0009】
この構成によれば、インクジェット用連続用紙は、インクジェットプリンターによって搬送される搬送方向と交差する方向、すなわちインクジェット用連続用紙の幅方向において、記録領域の長さ、すなわちインクジェットプリンターのインクジェットヘッドのインク吐出が可能な領域をカバーできる長さの開口部を有する。そのため、インクジェットヘッドは、この開口部に向けてインクを予備吐出することができる。その結果、予備吐出されたインクがインクジェット用連続用紙の表面に付着することを防止することができる。従って、インクジェット用連続用紙の記録部分の見栄えを確保しつつ、インクジェット用連続用紙や搬送経路の周辺が汚染されることを低減することができる。
【0010】
(適用例2)前記開口部は、前記搬送方向および/または前記搬送方向と交差する方向に複数に分割配置されていることを特徴とする上記のインクジェット用連続用紙。
【0011】
(適用例3)前記開口部は、前記搬送方向において前記記録領域を挟んで、前記搬送方向および/または前記搬送方向と交差する方向に複数に分割配置されていることを特徴とする上記のインクジェット用連続用紙。
【0012】
これらの構成によれば、インクジェット用連続用紙は、幅方向において連続した開口部の長さを小さくすることができる。そのため、インクジェット用連続用紙の剛性が低下することを防止することができる。その結果、インクジェット用連続用紙の安定搬送を確保しつつ、これらの開口部を介してインクを予備吐出することができる。従って、予備吐出されたインクがインクジェット用連続用紙の表面に付着することを防止することができる。
【0013】
(適用例4)連続した長尺状の台紙と、所定の間隔をおいて前記台紙に貼付されたラベルと、を有し、前記記録領域は、前記ラベルの面積に含まれ、前記開口部は、前記ラベルの貼付領域以外の前記台紙部分に設けられていることを特徴とする上記のインクジェット用連続用紙。
【0014】
この構成によれば、インクジェット用連続用紙として、長尺状の台紙に所定の間隔をおいてラベルが貼付されたラベル紙を適用することができる。
【0015】
(適用例5)前記搬送方向に所定の間隔をおいてミシン目が設けられ、前記開口部は前記ミシン目に係るように形成されていることを特徴とする上記のインクジェット用連続用紙。
【0016】
この構成によれば、インクジェット用連続用紙として、長尺状の用紙に所定の間隔をおいてミシン目が形成されたファンホールド紙を適用することができる。
【0017】
(適用例6)上記のインクジェット用連続用紙を、搬送経路に沿って搬送する紙搬送部と、前記インクジェット用連続用紙にインクを吐出して情報を記録するインクジェットヘッドと、少なくとも、前記紙搬送部で搬送される前記インクジェット用連続用紙に設けられた開口部の位置を検出する開口部検出部と、前記搬送経路を挟んで、前記インクジェットヘッドに対向する予備吐出インク収容部と、を備え、前記インクジェットヘッドは、前記開口部検出部で検出された前記インクジェット用連続用紙の前記開口部を介して前記予備吐出インク収容部にインクを予備吐出することを特徴とするインクジェットプリンター。
【0018】
この構成によれば、インクジェットプリンターは、開口部検知部によって、紙搬送部で搬送されるインクジェット用連続用紙の開口部の位置を検知することができる。そして、その開口部を介して、インクジェットヘッドから、搬送経路を挟んでインクジェットヘッドに対向する位置に設けられた予備吐出インク収容部にインクを吐出して予備吐出を行うことができる。そのため、インクジェット用連続用紙が搬送経路にある状態で予備吐出を行うことができるとともに、予備吐出されたインクがインクジェット用連続用紙の表面に付着することを防止することができる。その結果、インクジェットプリンターは、インクジェット用連続用紙の記録部分の見栄えを確保しつつ、インクジェット用連続用紙や搬送経路の周辺を汚染することを低減できる。
【0019】
(適用例7)上記のインクジェット用連続用紙を、搬送経路に沿って搬送する紙搬送工程と、搬送される前記インクジェット用連続用紙に設けられた開口部の位置を検出する開口部検出工程と、インクを吐出して情報を記録するインクジェットヘッドを用い、予備吐出指令を受けたとき、前記開口部検出工程で検出された前記開口部を介して、前記搬送経路を挟んで前記インクジェットヘッドに対向する位置に設けられた予備吐出インク収容部に、インクを予備吐出する予備吐出工程と、を備えることを特徴とするインクジェットプリンターの予備吐出方法。
【0020】
この方法によれば、インクジェットプリンターは、開口部検出工程によって、紙搬送工程で搬送されるインクジェット用連続用紙の開口部の位置を検出することができる。そして、その開口部を介して、インクジェットヘッドから、搬送経路を挟んでインクジェットヘッドに対向する位置に設けられた予備吐出インク収容部にインクを吐出して予備吐出を行うことができる。そのため、インクジェット用連続用紙が搬送経路にある状態で予備吐出を行うことができるとともに、予備吐出されたインクがインクジェット用連続用紙の表面に付着することを防止することができる。その結果、インクジェットプリンターは、インクジェット用連続用紙の記録部分の見栄えを確保しつつ、インクジェット用連続用紙や搬送経路の周辺を汚染することを低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】インクジェットプリンターの全体構成を示す概略断面図。
【図2】インクジェットプリンターの制御を説明するブロック図。
【図3】第1実施形態に係るインクジェット用連続用紙を示す図。
【図4】インクジェットプリンターの予備吐出の流れを示すフローチャート。
【図5】その他の実施形態のインクジェット用連続用紙の態様を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下の説明で参照する図面では、説明および図示の便宜上、部材ないし部分の縦横の縮尺を実際のものとは異なるように表す場合がある。
【0023】
(インクジェットプリンターの全体構成について)
まず、本実施形態に係るインクジェット用連続用紙が適用されるインクジェットプリンターの全体構成について、図1を参照して説明する。図1はインクジェットプリンターの全体構成を示す概略断面図である。なお、図1に示すX方向はインクジェット用連続用紙の搬送方向を示し、Y方向は、インクジェット用連続用紙の幅方向を示し、Z方向は、X方向およびY方向と直交する方向を示す。
【0024】
図1に示すように、インクジェットプリンター10(以下、プリンター10という)は、全体としてほぼ直方体形状をした外装ケース12に収容され、ロール紙収容部14と、紙搬送部20と、記録部30と、プラテン40と、開口部検出部50と、予備吐出インク収容部60と、これらを統括的に制御する制御装置70とを有する。
【0025】
プリンター10は、複数種類のカラーインクを用いてインクジェット用連続用紙80に情報を記録して発行するものである。以下の実施形態では、インクジェット用連続用紙80の一例として、長尺の台紙の一面に所定の間隔を隔ててラベルが貼付されたラベル紙90を適用する場合を例にとり説明する。ラベル紙90の詳細については後述する。
【0026】
ロール紙収容部14は、インクジェット用連続用紙80としての長尺のラベル紙90をロール状に巻き上げたロール紙15を回転自在に収容する。ロール紙収容部14に収容されているロール紙15から繰り出される長尺状のラベル紙90は、後述する紙搬送部20により、プリンター10内の搬送経路25に沿ってX方向に紙送りされ、外装ケース12の一面に設けられた用紙排出口18から排出される。
【0027】
紙搬送部20は、搬送経路25のインクジェット用連続用紙80の正の搬送方向(用紙排出口18に向かう矢印C方向)に沿ってロール紙収容部14の下流側に配置される。紙搬送部20は、1つの紙送りローラー対22を有している。紙送りローラー対22は、送りローラー23と押さえローラー24とから構成される。送りローラー23は、ゴム等の弾性部材で円柱状に形成され、図示しない紙送りモーターから回転駆動力を得て紙幅方向を軸として回転する。押さえローラー24は、同じくゴム等の弾性部材で円柱状に形成され、送りローラー23に対して一定の圧力で回転自在に付勢されている。
【0028】
この送りローラー23と押さえローラー24との間には、ラベル紙90が挟持される。回転する送りローラー23と、送りローラー23の回転に従って従動する押さえローラー24とに挟持されるラベル紙90は、その回転に伴い正方向または逆方向に所定のピッチで紙送りされる。なお、送りローラー23と押さえローラー24との軸方向の長さは、ラベル紙90の最大紙幅以上の長さに形成されている。
【0029】
開口部検出部50は、搬送経路25に沿って紙搬送部20の送りローラー23の下流側に配置されている。開口部検出部50は、例えば、反射型の光学センサー等が好適に適用され、後述するラベル紙90の台紙部分に形成された開口部の位置を検出する。開口部検出部50は、開口部そのものを検出してもよいし、台紙の裏面に印刷されたマーキングを検出し、開口部の位置を割り出してもよい。また、検出結果に基づいて台紙上の記録領域としてのラベルの位置を検出してもよい。
【0030】
記録部30は、搬送経路25のラベル紙90の搬送方向(C方向)に沿って紙搬送部20の下流側に配置される。記録部30は、インクジェットヘッド32とキャリッジ34とを有する。インクジェットヘッド32は、ブラック、シアン、イエローおよびマゼンタのインクを吐出する多数のノズル36を有し、多数のノズル36は列状に配列されノズル列を形成している。インクジェットヘッド32は、ラベル紙90よりも幅広に形成されており、各ノズル列は、図1中Y方向において、ラベル紙90の記録領域全体をカバーできる幅の領域に配列されている。
【0031】
インクジェットヘッド32は、インクを吐出する複数のノズル36が図1中Z方向下側を向くようキャリッジ34に搭載されている。本実施形態では、キャリッジ34は、搬送経路25上に固定されている。インクジェットヘッド32は、前述の紙搬送部20によって紙送りされるラベル紙90のラベル上の記録領域にインクを液滴として吐出し、情報を記録する。このようなインクジェットヘッド32が搭載されたインクジェットプリンター10は、ライン型インクジェットプリンターと称される。
【0032】
プラテン40は、上述のインクジェットヘッド32のノズル36面に対して一定の間隙を有し、Z方向において対向配置されている。このプラテン40は、Y方向に長い扁平な直方体形状を呈しており、プラテン40の表面には、ラベル紙90の搬送方向に延びる複数本の縦リブが所定の間隔で形成されている。プラテン40の表面によって、インクジェットヘッド32による記録位置が規定される。また、プラテン40は、キャリッジ34に搭載されたインクジェットヘッド32の各ノズル36に対向する位置に予備吐出インク収容部60を備えている。
【0033】
予備吐出インク収容部60は、プラテン40の表面において、インクジェットヘッド32の各ノズル36に対向する範囲が開口となった箱形状を呈し、箱形状の内部に予備吐出される廃インクの吸収材62が充填されている。吸収材62は、例えば、フェルト等が好適に用いられる。なお、過剰に予備吐出された廃インクは、予備吐出インク収容部60から図示しないチューブ等を介して、図示しない廃インクカートリッジに吸引されてもよい。
【0034】
制御装置70は、プリンター10の外装ケース12の下部に配設され、上述の機構を統括的に制御する。制御装置70の詳細については、以下に述べる。
【0035】
(プリンターの制御について)
プリンターの制御系について、図2を参照して説明する。図2は、プリンターの主要構成を示すブロック図である。図2に示すように、プリンター10は、紙搬送部20、インクジェットヘッド32を有する記録部30、開口部検出部50と、これらを統括的に制御する制御装置70とを備えている。
【0036】
制御装置70は、制御系の主要部となる制御部71と、インクジェットヘッド32を駆動制御するヘッドドライバー72と、紙搬送部20を駆動するモータードライバー74と、インターフェイス部75とを備えている。制御部71は、CPU(Central Processing Unit)76と、情報処理部77と、記憶部78とを備えている。CPU76は、開口部検出部50等の検出系や図示しない操作系からの入力信号処理、記録処理等の各種処理を実行する。情報処理部77は各種情報を処理する。
【0037】
記憶部78は、図示しないRAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等を含んだ構成を有している。RAMは、ホストコンピューター79からインターフェイス部75を介して入力される記録データ等の各種データを一時的に格納したり、CPU76によって実行される記録処理等のプログラムを一時的に展開したりする。ここで、記録データは、インクジェットヘッド32でラベル紙90に記録すべき文字や画像等のパターンを指示するものである。
【0038】
ヘッドドライバー72は、CPU76からの指令に基づいて、インクジェットヘッド32を制御する。モータードライバー74は、CPU76からの指令に基づいて、紙搬送部20のモーターを制御する。インターフェイス部75は、ホストコンピューター79から受け取った記録データ等を制御部71に出力したり、制御部71から受け取った各種情報をホストコンピューター79に出力したりする。
【0039】
上述の構造を有するプリンター10は、図1に示す紙搬送部20によってラベル紙90を搬送経路25に沿ってX方向に所定紙送り量ずつ紙送りしながら、記録部30のインクジェットヘッド32によって紙送りされるラベル紙90に対してインクを吐出して情報を記録する。そして、情報が記録されたラベル紙90は用紙排出口18から発行される。
【0040】
また、プリンター10は、インクジェットヘッド32のノズル36からのインク吐出特性を良好な状態に保つため、所定のタイミングでメンテナンス作業を実施する。プリンター10は、例えば、所定期間以上使用されないと、インクへ気泡が混入したり、溶媒の蒸発によってインクの粘度が上昇したりする。また、紙粉等の塵芥がノズル36周辺に付着する場合もある。これらはインクの吐出特性を悪化させる要因となる。著しい場合は吐出不可となってしまう。そのため、プリンター10は、所定のタイミングでインクを吐出して上述の吐出不良要因を除去する。この動作を予備吐出(またはフラッシング)といい、上述の制御装置70で制御される。
【0041】
(インクジェット用連続用紙について)
(第1実施形態)
まず、第1実施形態に係るインクジェット用連続用紙について、図3を参照して説明する。図3は、第1実施形態に係るインクジェット用連続用紙を示す図であり、詳しくはラベル紙の例を示す図である。図3(a)はラベル貼付面からみた平面図、図3(b)はラベル紙の断面図である。以下、インクジェット用連続用紙としてラベル紙を適用した例について説明する。
【0042】
図3に示すように、インクジェット用連続用紙80としてのラベル紙90は、台紙92と、ラベル94とから構成される。ラベル94は、四角形状を呈し裏面に粘着材が塗布されている。ラベル94の表面は、上述のプリンター10が情報を記録する記録領域95となっている。このラベル94は、台紙92の一面に所定のピッチPで連続的に貼付される。
【0043】
台紙92は、所定の幅を有し長尺状に形成され、一方の面92aにはラベル94の剥離を容易にするコーティング層98が形成されている。また、台紙92は、ラベル94が貼付されていない領域(以降、記録外領域97という)に、長さ方向に沿って所定のピッチPで矩形形状の穴である開口部96が連続的に形成されている。
【0044】
開口部96の台紙92の幅方向の長さmは、少なくともラベル94の幅方向の長さ、もしくは記録領域95の幅方向の長さnより大きく形成されている。また、開口部96のラベル紙90の長尺方向(搬送方向)の長さは任意の長さに設定されている。開口部96の開口形状は矩形形状に限定されるものではなく如何ようにも変形できるものとする。
【0045】
(予備吐出の動作について)
次いで、予備吐出の動作について、図4を参照して説明する。図4は、予備吐出の動作を示すフローチャートである。以下、上述のプリンターおよびインクジェット用連続用紙としてのラベル紙を適用した場合を例にとり説明する。
【0046】
図4に示すように、予備吐出の動作は、紙搬送工程S1と、開口部検出工程S2と、開口部位置合わせ工程S3と、予備吐出工程S4と、記録工程S5とを備える。予備吐出は、インクジェットヘッド32から、所定期間以上、インクが吐出されないときに実施される。例えば、プリンター10の電源投入時、記録停止が所定の期間経過後、もしくは予備吐出スイッチが入れられたとき等に実施される。この動作は、図2に示す制御部71の指令により実施される。
【0047】
図4に示す紙搬送工程S1では、図1に示す紙搬送部20を用い、ラベル紙90を搬送経路25に沿って図1中矢印C方向に所定のピッチで搬送する。開口部検出工程S2では、搬送経路25に設けられた開口部検出部50を用い、搬送経路25に沿って搬送される図3に示すラベル紙90の開口部96もしくは台紙92の裏面に印刷された図示しないマーキングを検出し開口部96の位置を検出する。
【0048】
開口部位置合わせ工程S3では、開口部検出工程S2で検出されたラベル紙90の開口部96の位置を、インクジェットヘッド32のノズル36およびプラテン40に設けられた予備吐出インク収容部60の間に位置合わせする。具体的には、図1に示す紙搬送部20を用いラベル紙90を所定量紙送りし位置合わせを行う。
【0049】
予備吐出工程S4では、図2に示す制御部71の指令に基づいて、インクジェットヘッド32のノズル36からインクを、ラベル紙90の開口部96を介して予備吐出インク収容部60の吸収材62に向け吐出する。インクの種類、吐出量、吐出周期は、各条件等により予め複数設定されている。予備吐出工程S4において、気泡混入、インクの増粘および塵芥の付着等の吐出不良要因を除去し、インク吐出特性を良好な状態に保つ。
【0050】
記録工程S5では、良好な吐出特性を有するインクジェットヘッド32を用い、紙搬送部20によって搬送されるラベル紙90のラベル94の記録領域95に所望の情報を記録する。
【0051】
以下、第1実施形態の効果を記載する。
(1)インクジェット用連続用紙80としてのラベル紙90は、記録領域95を有するラベル94が貼付されている台紙92の部分に、記録領域95の幅方向の長さnより大きい長さmを有する開口部96が形成されている。そのため、インクジェットヘッド32から予備吐出されるインクは、この開口部96を介してプリンター10の搬送経路25に設けられた予備吐出インク収容部60に吐出される。その結果、予備吐出されたインクがラベル紙90の表面に付着することを防止することができる。従って、ラベル紙90の記録部分の見栄えを確保しつつ、ラベル紙90や搬送経路25の周辺が汚染されることを低減することができる。
【0052】
(2)ライン型であるプリンター10は、上述のインクジェット用連続用紙80としてのラベル紙90を使用することにより、連続する長尺の記録用紙が搬送経路25上にあった状態でも予備吐出動作を実行することができる。そのため、予備吐出を実施するためにインクジェットヘッド32を移動させる必要もなく、また、記録用紙を一旦排除する必要もない。よって、インクジェットヘッド32のメンテナンス作業が容易な使い勝手のよいプリンター10を提供することができる。
【0053】
(その他の実施形態)
ここで、その他の実施形態について、図5を参照して説明する。図5は、その他の実施形態のインクジェット用連続用紙の態様を説明する図である。なお、第1実施形態と同様な構成および内容については、符号を等しくして説明を省略する。
【0054】
図5(a)に示すように、インクジェット用連続用紙80としてのラベル紙90Aは、台紙92Aと、第1実施形態と同様なラベル94とから構成される。台紙92Aは、所定の幅を有し長尺状に形成され、コーティング層98が形成されている。また、台紙92Aには、ラベル94が貼付されていない記録外領域97に複数(本実施形態では4つ)の矩形形状の穴部91a,91b,91c,91dからなる開口部群96Aが形成されている。開口部群96Aは、ラベル94を長尺方向に挟んで穴部91a,91bの組と穴部91c,91dの組とに分離されている。
【0055】
4つの穴部91a,91b,91c,91dの幅方向のトータル長さmは、少なくともラベル94の幅方向の長さ、もしくは記録領域95の幅方向の長さnより大きく形成されている。穴部91a,91b,91c,91dのラベル紙90Aの長尺方向の長さは任意の長さに設定される。また、穴部91nの数、開口形状は上記実施形態に限定されるものではなく如何ようにも変形できるものとする。
【0056】
上述のようにラベル紙90Aは、幅方向において連続した穴部91nの長さを小さくすることができる。そのため、ラベル紙90Aの剛性が低下することを防止することができる。その結果、ラベル紙90Aの安定搬送を確保しつつ、これらの開口部群96Aを介してインクを予備吐出することができる。従って、予備吐出されたインクがラベル紙90Aの表面に付着することを防止することができる。
【0057】
図5(b)に示すように、インクジェット用連続用紙80としてのラベル紙90Bは、台紙92Bと、第1実施形態と同様なラベル94とから構成される。台紙92Bは、所定の幅を有し長尺状に形成され、コーティング層98が形成されている。また、台紙92Bには、ラベル94が貼付されていない記録外領域97に複数(本実施形態では4つ)の矩形形状の穴部93a,93b,93c,93dからなる開口部群96Bが形成されている。開口部群96Bは、2つのラベル94の間に形成されている。
【0058】
4つの穴部93a,93b,93c,93dの幅方向のトータル長さmは、少なくともラベル94の幅方向の長さ、もしくは記録領域95の幅方向の長さnより大きく形成されている。穴部93a,93b,93c,93dのラベル紙90Bの長尺方向の長さは任意の長さに設定される。また、穴部93nの数、開口形状は上記実施形態に限定されるものではなく如何ようにも変形できるものとする。
【0059】
上述のようにラベル紙90Bは、幅方向において連続した穴部93nの長さを小さくすることができる。そのため、ラベル紙90Bの剛性が低下することを防止することができる。また、1枚のラベル94に情報を記録する前に全ノズル36の予備吐出を行うことができる。その結果、ラベル紙90Bの安定搬送を確保しつつ、これらの開口部群96Bを介してインクを予備吐出することができる。従って、予備吐出されたインクがラベル紙90Bの表面に付着することを防止することができる。
【0060】
図5(c)に示すように、インクジェット用連続用紙80としてのファンホールド紙85は、長尺の記録用紙82が適用され、長尺の記録用紙82に対して搬送方向に所定の間隔をおいてミシン目81が設けられている。このファンホールド紙85は、ミシン目81部分で互い違いに折り畳まれ連続的に使用される。
【0061】
記録用紙82には、記録領域95以外の領域のミシン目81に係るように複数(本実施形態では4つ)の矩形形状の穴部99a,99b,99c,99dからなる開口部群96Cが形成されている。開口部群96Cは、1つの記録領域95を長尺方向に挟んで穴部99a,99bの組と穴部99c,99dの組とに分離されている。
【0062】
4つの穴部99a,99b,99c,99dの幅方向のトータル長さmは、少なくとも記録領域95の幅方向の長さnより大きく形成されている。穴部99a,99b,99c,99dの長尺方向の長さは任意の長さに設定される。また、穴部99nの数、開口形状は上記実施形態に限定されるものではなく如何ようにも変形できるものとする。
【0063】
上述のようにファンホールド紙85は、開口部群96Cを介してインクを予備吐出することができる。従って、予備吐出されたインクがファンホールド紙85の表面に付着することを防止することができる。
【0064】
図5(d)に示すように、インクジェット用連続用紙80としての長尺の記録用紙87を使用することもできる。長尺の記録用紙87は、搬送方向に所定の間隔を隔てて開口部96が設けられている。この開口部96の幅方向の長さmは、少なくとも記録領域95の幅方向の長さnより大きく形成されている。また、開口部96の記録用紙87の長尺方向の長さは任意の長さに設定されている。開口部96の開口形状は矩形形状に限定されるものではなく如何ようにも変形できるものとする。
【0065】
上述のように長尺の記録用紙87は、開口部96を介してインクを予備吐出することができる。従って、予備吐出されたインクが長尺の記録用紙87の表面に付着することを防止することができる。
【0066】
以上、本発明の実施例について説明したが、上記実施例に対しては、本発明の趣旨から逸脱しない範囲で様々な変形を加えることができる。
【符号の説明】
【0067】
10…インクジェットプリンターとしてのプリンター、20…紙搬送部、25…搬送経路、30…記録部、32…インクジェットヘッド、40…プラテン、50…開口部検出部、60…予備吐出インク収容部、70…制御装置、80…インクジェット用連続用紙、82,87…記録用紙、85…ファンホールド紙、90,90A,90B…ラベル紙、92,92A,92B…台紙、94…ラベル、95…記録領域、96…開口部、96A,96B,96C…開口部群。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクジェットプリンターによって搬送され情報が記録されるインクジェット用連続用紙であって、
情報が記録される記録領域を有し、
前記記録領域以外の領域に、搬送方向と交差する方向において前記記録領域の長さをカバーする長さの開口部が形成されていることを特徴とするインクジェット用連続用紙。
【請求項2】
前記開口部は、前記搬送方向および/または前記搬送方向と交差する方向に複数に分割配置されていることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット用連続用紙。
【請求項3】
前記開口部は、前記搬送方向において前記記録領域を挟んで、前記搬送方向および/または前記搬送方向と交差する方向に複数に分割配置されていることを特徴とする請求項1または2に記載のインクジェット用連続用紙。
【請求項4】
連続した長尺状の台紙と、
所定の間隔をおいて前記台紙に貼付されたラベルと、を有し、
前記記録領域は、前記ラベルの面積に含まれ、
前記開口部は、前記ラベルの貼付領域以外の前記台紙部分に設けられていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載のインクジェット用連続用紙。
【請求項5】
前記搬送方向に所定の間隔をおいてミシン目が設けられ、
前記開口部は前記ミシン目に係るように形成されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載のインクジェット用連続用紙。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか一項に記載のインクジェット用連続用紙を、搬送経路に沿って搬送する紙搬送部と、
前記インクジェット用連続用紙にインクを吐出して情報を記録するインクジェットヘッドと、
少なくとも、前記紙搬送部で搬送される前記インクジェット用連続用紙に設けられた開口部の位置を検出する開口部検出部と、
前記搬送経路を挟んで、前記インクジェットヘッドに対向する予備吐出インク収容部と、を備え、
前記インクジェットヘッドは、前記開口部検出部で検出された前記インクジェット用連続用紙の前記開口部を介して前記予備吐出インク収容部にインクを予備吐出することを特徴とするインクジェットプリンター。
【請求項7】
請求項1乃至5のいずれか一項に記載のインクジェット用連続用紙を、搬送経路に沿って搬送する紙搬送工程と、
搬送される前記インクジェット用連続用紙に設けられた開口部の位置を検出する開口部検出工程と、
インクを吐出して情報を記録するインクジェットヘッドを用い、予備吐出指令を受けたとき、前記開口部検出工程で検出された前記開口部を介して、前記搬送経路を挟んで前記インクジェットヘッドに対向する位置に設けられた予備吐出インク収容部に、インクを予備吐出する予備吐出工程と、
を備えることを特徴とするインクジェットプリンターの予備吐出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−103428(P2013−103428A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−249414(P2011−249414)
【出願日】平成23年11月15日(2011.11.15)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】