説明

インクジェット画像形成方法

【課題】インクジェット法により記録媒体上に画像を形成する場合に、カックル及び画像の白抜けを共に抑制し、かつ高速印刷が可能な画像形成方法を提供する。
【解決手段】顔料、水溶性の重合性化合物および水を含み、前記水溶性の重合性化合物がインク組成物中に15質量%以上30質量%以下含有されるインク組成物を、特定の数式を満たす範囲で記録媒体上に付与する画像形成方法を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット画像形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
カラー画像を記録する画像記録方法の一つであるインクジェット記録方法は、比較的安価、簡便に画像を形成できるため、写真や各種印刷等様々な印刷分野に応用されてきている。インクジェット技術は、オフィスプリンタ、ホームプリンタ等の分野に適用されてきたが、近年では商業印刷での応用もなされつつある。
【0003】
インクジェット記録に用いるインクとして、色材と重合性モノマーを含有させた水性UVインクが知られている。水性インクを用いて記録媒体上に画像を形成した場合、記録媒体へのインクの染み込み、水の蒸発等の影響によって、記録媒体のぼこつき(以後カックルと称する)が生じることが問題となっており、様々な研究が行われている。例えば特許文献1では、自己分散型顔料を用いた水性UVインクを使用することにより、インクの浸透を抑制し、カックルを抑制する技術が開示されている。また、特許文献2には水性UVインクを硬化後、乾燥、加圧することにより、強制的に画像を平坦化してしわ(カックル)を延ばす技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−275404号公報
【特許文献2】特開2004−306589号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
インクジェット法による高速印刷を実現するには、ライン上に複数並んだインクジェットノズルからインクを吐出して、1ラインを1度に形成するシングルパス方式が極めて有利である。
当該シングルパス方式は画像を形成するスピードが速いため、1ラインの画像が形成された後、完全にインクが乾燥しない状態で次のラインが形成されていく。このような場合、画像の乾燥が遅れやすく、その結果、インク溶媒の紙への浸透が助長されてカックルが極めて発生しやすくなる。カックルが強いと外観の印象が悪いだけでなく、搬送上の問題を引き起こしやすい。特に両面印刷をする際に大きな問題となる。したがって、シングルパス方式ではカックルを抑制することが特に重要である。しかしながら、特許文献1及び2に記載の方法ではカックルの抑制が未だ不十分である。さらに特許文献1及び2では、カックルと画像の白抜けの両者を同時に抑制することについても、未だ検討が不十分である。
【0006】
本発明は、特にシングルパス方式を用いたインクジェット法により記録媒体上に画像を形成する場合に、カックル及び画像の白抜けを共に抑制し、かつ高速に印刷することができる画像形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するための具体的手段は以下の通りである。
<1> インク組成物をインクジェット法で記録媒体上に付与して画像を形成する画像形成方法であって、前記インク組成物が顔料、水溶性の重合性化合物及び水を含み、前記水溶性の重合性化合物が前記インク組成物中に15質量%以上30質量%以下含有され、前記インク組成物を下記数式1及び2を満たす範囲で記録媒体上にシングルパス方式で付与するインク組成物付与工程を備えた画像形成方法。
【数1】


(数式1および2において、xはインク組成物の打滴量(ng)、Rは解像度(dpi)を表す。)
<2> 前記数式1が下記数式1−1である、<1>に記載の画像形成方法。
【数2】


(数式1−1において、xはインク組成物の打滴量(ng)、Rは解像度(dpi)を表す。)
<3> 前記水溶性の重合性化合物が下記一般式(M)で表される化合物である、<1>または<2>に記載の画像形成方法。
【化1】


(式(M)中、Qはn価の連結基を表し、Rは水素原子またはメチル基を表す。また、nは1以上の整数を表す。)
<4> 前記顔料は、その表面の少なくとも一部がポリマー分散剤で被覆された水分散性顔料である、<1>〜<3>のいずれか1に記載の画像形成方法。
<5> 前記ポリマー分散剤がカルボキシル基を有する、<4>に記載の画像形成方法。
<6> 前記ポリマー分散剤は、酸価が120mgKOH/g以下である、<4>又は<5>に記載の画像形成方法。
<7> 更に前記インク組成物の成分を凝集させる凝集剤を含む処理液を記録媒体上に付与する処理液付与工程を備えた、<1>〜<6>のいずれか1に記載の画像形成方法。
<8> 前記凝集剤が有機酸である、<7>に記載の画像形成方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、特にシングルパス方式を用いたインクジェット法により記録媒体上に画像を形成する方式を採用する場合に、カックル及び画像の白抜けを共に抑制し、かつ高速印刷が可能な画像形成方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明のインクジェット画像形成方法の実施に用いるインクジェット記録装置の構成例を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の画像形成方法は、インク組成物をインクジェット法で記録媒体上に付与して画像を形成する画像形成方法であって、前記インク組成物が顔料、水溶性の重合性化合物及び水を含み、前記水溶性の重合性化合物が前記インク組成物中に15質量%以上30質量%以下含有され、前記インク組成物を下記数式1及び2を満たす範囲で記録媒体上にシングルパス方式で付与することを特徴とする。以下、詳細に説明する。なお、本明細書において「〜」とは、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。
【0011】
【数3】


(式1および2において、xはインク組成物の打滴量(ng)、Rは解像度(dpi)を表す。)数式1において「R」は「Rの三乗」を表し、数式2において「R」は「Rの二乗」を表す。
【0012】
<画像形成方法>
(インク組成物付与工程)
本発明の画像形成方法は、インク組成物付与工程において記録媒体上へのインク組成物の打滴量を数式1および2を同時に満たす範囲に設定し、かつ重合性化合物の含有量を特定の範囲としたインク組成物を選択することで、カックル及び画像の白抜けを同時に抑制し、かつ高速印刷を行うことに成功したものである。
【数4】

【0013】
(式1および2において、xはインク組成物の打滴量(ng)、Rは解像度(dpi)を表す。)
【0014】
本発明においてインク組成物の打滴量とは、インクジェット法により1画素あたりに付与されるインク組成物の質量を言う。また本発明において解像度とは、1インチあたりのドットの数である。
【0015】
本発明者らが検討を行ったところ、記録媒体へのインクの付与量を減少させることでカックルは抑制されるものの、インクの付与量の減少に伴い、画像の白抜けが発生し、画像品位が低下してしまうことが分かった。そこで本発明者らは、画像を形成するインク組成物の付与量を最小限に抑えてカックルを抑制し、かつ画像の白抜けが発生しない条件を鋭意研究した結果、打滴したインク組成物を立体的観点及び平面的観点より検討することが重要であることを見出した。この条件をもとにさらに検討を進めた結果、解像度R(dpi)の画像を形成する際に、x(ng)のインク組成物を、上記数式1及び2を同時に満たす範囲で記録媒体上に付与することで、カックルおよび画像の白抜けを抑制することに成功した。すなわち、所望の解像度R(dpi)の画像を形成する場合、数式1及び2を同時に満たすようにインク組成物の打滴量x(ng)を設定すれば、シングルパス方式により画像を形成する際に、カックル及び画像の白抜けを抑制し、高速印刷が可能となることを見出した。なお、画像を形成する際に複数種のインク組成物を使用する場合は、少なくとも1種のインク組成物が本発明における特定の構成をもつインク組成物であり、かつ当該インク組成物が本発明の数式1及び2を同時に満たす打滴量x(ng)で記録媒体上へ付与されるものとする。また、複数種のインク組成物を使用する場合、使用する全てのインク組成物が各々、本発明における特定の構成をもつインク組成物であり、かつ当該全てのインク組成物が各々、本発明の数式1及び2を同時に満たす打滴量x(ng)で記録媒体上へ付与されることが好ましい。
【0016】
上記数式1が、さらに下記数式1−1である場合、記録媒体の選択性を広げる観点でより効果がある。
【数5】


(数式1−1において、xはインク組成物の打滴量(ng)、Rは解像度(dpi)を表す。)
【0017】
また本発明の画像形成方法がさらに下記数式3を満たす場合、画像再現性を向上させる観点でより効果がある。
【数6】

【0018】
(インクジェット法)
本発明に適用できるインクジェット法としては、公知の方式、例えば、静電誘引力を利用してインクを吐出させる電荷制御方式、ピエゾ素子の振動圧力を利用するドロップオンデマンド方式(圧力パルス方式)、電気信号を音響ビームに変えインクに照射して放射圧を利用してインクを吐出させる音響インクジェット方式、及びインクを加熱して気泡を形成し、生じた圧力を利用するサーマルインクジェット(バブルジェット(登録商標))方式等のいずれであってもよい。尚、前記インクジェット法には、フォトインクと称する濃度の低いインクを小さい体積で多数射出する方式、実質的に同じ色相で濃度の異なる複数のインクを用いて画質を改良する方式や無色透明のインクを用いる方式が含まれる。
【0019】
また、インクジェット法で用いるインクジェットヘッドは、オンデマンド方式でもコンティニュアス方式でも構わない。さらに前記インクジェット法により記録を行う際に使用するインクノズル等については特に制限はなく、目的に応じて、適宜選択することができる。
【0020】
インクジェット法としては、短尺のシリアルヘッドを用い、ヘッドを記録媒体の幅方向に走査させながら記録を行なうシャトル方式と、記録媒体の1辺の全域に対応して記録素子が配列されているラインヘッドを用いたシングルパス方式とがある。シングルパス方式では、記録素子の配列方向と直交する方向に記録媒体を走査させることで記録媒体の全面に画像記録を行なうことができ、短尺ヘッドを走査するキャリッジ等の搬送系が不要となる。また、キャリッジの移動と記録媒体との複雑な走査制御が不要になり、記録媒体だけが移動するので、シャトル方式に比べて記録速度の高速化が実現できる。本発明の画像形成方法は、上記2種類の方式うち、シングルパス方式を用いるものであり、これにより高速記録を実現しながら、カックル及び画像の白抜けを抑制することができる。
【0021】
<インク組成物>
本発明で使用するインク組成物は、顔料、水溶性の重合性化合物及び水を含み、前記水溶性の重合性化合物が前記インク組成物中に15質量%以上30質量%以下含有されるものであれば限定されず、インク組成物は必要に応じて、更に界面活性剤、その他の成分を用いて構成される。
【0022】
(顔料)
本発明におけるインク組成物は、色材成分として顔料の少なくとも1種を含有する。顔料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、有機顔料、無機顔料のいずれであってもよい。顔料は、水に殆ど不溶であるか又は難溶である顔料であることが、インク着色性の点で好ましい。また本発明における顔料は、その表面の少なくとも一部が後述するポリマー分散剤で被覆された水分散性顔料であることが好ましい。
【0023】
有機顔料としては、例えば、アゾ顔料、多環式顔料、染料キレート、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラック、などが挙げられる。これらの中でも、アゾ顔料、多環式顔料などがより好ましい。また、無機顔料としては、例えば、酸化チタン、酸化鉄、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、バリウムイエロー、カドミウムレッド、クロムイエロー、カーボンブラック、などが挙げられる。これらの中でも、黒色顔料としてはカーボンブラックが特に好ましい。
【0024】
本発明に用いることができる顔料として具体的には、例えば、特開2007−100071号公報の段落番号[0142]〜[0145]に記載の顔料などが挙げられる。顔料は、1種単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0025】
本発明における顔料は、体積平均粒子径が40〜150nmであることが好ましく、70〜130nmであることがさらに好ましい。また、顔料の粒径分布に関しては、特に制限はなく、広い粒径分布を持つもの又は単分散の粒径分布を持つもののいずれでもよい。また、単分散の粒径分布を持つ顔料を2種以上混合して使用してもよい。
【0026】
ここで、顔料の体積平均粒子径は、インク化した状態での体積平均粒子径を示すが、インク化する前段階のいわゆる濃縮インク分散物についても同様である。なお、分散状態での顔料の体積平均粒子径及び粒径分布は、Micorotrac粒度分布測定装置(Version 10.1.2−211BH(商品名)、日機装(株)製)を用いて、動的光散乱法により求められるものである。
【0027】
本発明において顔料の体積平均粒子径は、通常用いられる方法で調整することができる。例えば、後述する分散剤を用いて顔料分散液を調製する際の分散時間等を適宜選択することで、顔料の体積平均粒子径を所望の範囲に調整することができる。
【0028】
顔料の含有量としては、インク組成物の全質量に対して、0.1〜30質量%が好ましく、1〜25質量%がより好ましく、1〜20質量%がさらに好ましく、1〜15質量%が特に好ましく、1〜10質量%が最も好ましい。
【0029】
(水溶性の重合性化合物)
本発明におけるインク組成物は、水溶性の重合性化合物の少なくとも1種を含有する。本発明における水溶性の重合性化合物の含有量は、インク組成物に対して15質量%以上30質量%以下であり、15質量%以上27質量%以下であることが好ましく、15質量%以上25質量%以下であることがさらに好ましい。本発明では、水溶性の重合性化合物を15質量%以上30質量%以下含んだインク組成物を、数式1及び2を同時に満たす条件で記録媒体上に付与することで、記録媒体上でのインク組成物の広がりを適切な範囲に調整することができると考えられる。その結果、画像の白抜けを抑制しながらインク組成物の打滴量を低減させ、カックル等を抑制することができると考えられる。
【0030】
本発明における水溶性とは、水に一定濃度以上溶解できることをいい、水性のインク中に(望ましくは均一に)溶解し得るものであればよい。また、後述する水溶性有機溶剤を添加することにより溶解度が上がってインク中に(望ましくは均一に)溶解するものであってもよい。具体的には、25℃の水に対する溶解度が10質量%以上であることが好ましく、15質量%以上であることがより好ましい。
【0031】
重合性化合物としては、ノニオン性又はカチオン性の重合性化合物が好ましく、25℃の水に対する溶解度が10質量%以上(更には15質量%以上)の重合性化合物が好ましい。
【0032】
ノニオン性の重合性モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリルモノマー類などの重合性化合物を挙げることができる。ここで、(メタ)アクリルモノマー類とは、メタアクリルモノマー類及びアクリルモノマー類の少なくとも一種をいう。
【0033】
前記(メタ)アクリルモノマー類としては、例えば、多価アルコールの(メタ)アクリル酸エステル、多価アルコールのグリシジルエーテルの(メタ)アクリル酸エステル、ポリエチレングリコールの(メタ)アクリル酸エステル、多価アルコールのエチレンオキシド付加化合物の(メタ)アクリル酸エステル、多塩基酸無水物と水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルとの反応物などの紫外線硬化型モノマー、オリゴマーが挙げられる。前記多価アルコールは、エチレンオキシドの付加により内部にエチレンオキシド鎖で鎖延長されたものでもよい。
【0034】
以下、ノニオン性の重合性化合物の具体例(ノニオン性化合物1〜6)を示す。但し、本発明においては、これらに限定されるものではない。
【0035】
【化2】

【0036】
また、多水酸基化合物から誘導される1分子中に2以上のアクリロイル基を有するアクリル酸エステルも用いることができる。前記多水酸基化合物としては、例えば、グリコール類の縮合物、オリゴエーテル、オリゴエステル類等が挙げられる。
【0037】
更に、ノニオン性の重合性化合物としては、単糖類、2糖類などの2以上の水酸基を有するポリオールの(メタ)アクリル酸エステル又は;トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリスヒドロキシアミノメタン、トリスヒドロキシアミノエタン等との(メタ)アクリル酸エステルも好適である。
【0038】
また、ノニオン性の重合性化合物としては分子内にアクリルアミド構造を有する水溶性の重合性化合物も好適である。ここで、分子内にアクリルアミド構造有する重合性化合物は、下記一般式(M)で表される化合物であることが好ましい。
【0039】
【化3】

【0040】
一般式(M)中、Qはn価の連結基を表し、Rは水素原子またはメチル基を表す。また、nは1以上の整数を表す。
【0041】
一般式(M)で表される化合物は不飽和単量体が、アミド結合により連結基Qに結合したものである。Rは、水素原子、またはメチル基を表し、好ましくは水素原子である。連結基Qの価数nに制限はないが、カックル及び画像の白抜けを抑制し、印刷速度を向上する観点から、nは、2以上であることが好ましく、2以上6以下であることがより好ましく、2以上4以下であることがさらに好ましい。
【0042】
また、前記連結基Qは、(メタ)アクリルアミド構造と連結可能な基であれば特に制限はないが、一般式(M)で表される化合物が前述の水溶性を満たすような連結基から選択されることが好ましい。具体的には以下の化合物群Xから選ばれる化合物から、1以上の水素原子またはヒドロキシル基が除去された残基をあげることができる。
【0043】
−化合物群X−
エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,4−ペンタンジオール、2,4−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、1,5−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2,5−ヘキサンジオール、グリセリン、1,2,4−ブタントリオール,1,2,6−ヘキサントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、チオグリコール、トリメチロールプロパン、ジトリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ジトリメチロールエタン、ネオペンチルグリコール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、及びこれらの縮合体、低分子ポリビニルアルコール、または糖類などのポリオール類。エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ポリエチレンイミン、ポリプロピレンジアミンなどのポリアミン類。
【0044】
さらに、メチレン、エチレン、プロピレン、ブチレン基等の炭素数4以下の置換又は無置換のアルキレン鎖、更にはピリジン環、イミダゾール環、ピラジン環、ピペリジン環、ピペラジン環、モルホリン環などの飽和もしくは不飽和のヘテロ環を有する官能基などを例示することができる。
【0045】
前記連結基Qとしては、これらの中でも、オキシアルキレン基を含むポリオール類の残基であることが好ましく、オキシアルキレン基を3以上含むポリオール類の残基であることが特に好ましい。前記オキシアルキレン基は、オキシエチレン基およびオキシプロピレン基からなる群から選ばれる少なくとも一種を含む基であることが好ましい。
【0046】
以下に、一般式(M)で表される化合物の具体例(ノニオン性化合物(a)〜(i))を示す。但し、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0047】
【化4】

【0048】
【化5】

【0049】
【化6】

【0050】
前記カチオン性の重合性化合物は、カチオン基と不飽和二重結合等の重合性基とを有する化合物であり、例えば、エポキシモノマー類、オキタセンモノマー類などを好適に用いることができる。カチオン性の重合性化合物を含有すると、カチオン基を有することでインク組成物のカチオン性が強くなり、アニオン性インクを用いたときの混色がより効果的に防止される。
【0051】
前記カチオン性の重合性化合物としては、例えば、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピルメタクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリレート、N,N−ジメチルアミノアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノメタアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノエチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノエチルメタアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピルメタアクリルアミド、及びこれらの4級化合物などが挙げられる。エポキシモノマー類としては、例えば、多価アルコールのグリシジルエーテル、グリシジルエステル、脂肪族環状エポキシドなどが挙げられる。さらに、カチオン性の重合性化合物の例として、下記構造を有するものを挙げることができる。
【0052】
【化7】



【0053】
前記構造において、Rは、ポリオールの残基を表す。また、Xは、H又はCHを表し、AはCl、HSO又はCHCOOを表す。このポリオールを導入するための化合物としては、例えば、グリセリン、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、1,2,6−ヘキサントリオール、トリメチロールプロパン、トリメチロールメタン、トリメチロールエタン、ペンタエリスリトール、ビスフェノールA、脂環型ビスフェノールA及びこれらの縮合物等を挙げることができる。以下、カチオン基を有する重合性化合物の具体例(カチオン性化合物1〜11)を例示する。
【0054】
【化8】

【0055】
【化9】

【0056】
【化10】

【0057】
【化11】

【0058】
本発明における重合性化合物としては、多官能のモノマーが好ましく、2官能〜6官能のモノマーがより好ましく、2官能〜4官能のモノマーがさらに好ましい。重合性化合物は、1種単独又は2種以上を組み合わせて含有することができる。
【0059】
(水)
インク組成物は、水を含有するものであるが、水の量には特に制限はない。中でも、水の好ましい含有量は、10〜99質量%であり、より好ましくは30〜80質量%であり、更に好ましくは50〜70質量%である。
【0060】
(分散剤)
本発明のインク組成物は、分散剤の少なくとも1種を含有することができる。前記顔料の分散剤としては、ポリマー分散剤、又は低分子の界面活性剤型分散剤のいずれでもよいが、ポリマー分散剤であることが好ましい。また、ポリマー分散剤は、水溶性の分散剤、又は非水溶性の分散剤のいずれでもよい。また、前記インク組成物中における顔料は、当該ポリマー分散剤によってその表面の少なくとも一部が被覆されることが好ましい。
【0061】
前記低分子の界面活性剤型分散剤は、インクを低粘度に保ちつつ、顔料を水溶媒に安定に分散させることができる。低分子の界面活性剤型分散剤は、分子量2,000以下の低分子分散剤である。また、低分子の界面活性剤型分散剤の分子量は、100〜2,000が好ましく、200〜2,000がより好ましい。
【0062】
前記低分子の界面活性剤型分散剤は、親水性基と疎水性基とを含む構造を有している。また、親水性基と疎水性基とは、それぞれ独立に1分子に1以上含まれていればよく、また、複数種類の親水性基、疎水性基を有していてもよい。また、親水性基と疎水性基とを連結するための連結基も適宜有することができる。
【0063】
前記親水性基は、アニオン性、カチオン性、ノニオン性、あるいはこれらを組み合わせたベタイン型等である。前記アニオン性基は、マイナスの電荷を有するものであればいずれでもよいが、リン酸基、ホスホン酸基、ホスフィン酸基、硫酸基、スルホン酸基、スルフィン酸基又はカルボン酸基であることが好ましく、リン酸基、カルボン酸基であることがより好ましく、カルボン酸基であることがさらに好ましい。前記カチオン性基は、プラスの荷電を有するものであればいずれでもよいが、有機のカチオン性置換基であることが好ましく、窒素又はリンのカチオン性基であることがより好ましい。また、ピリジニウムカチオン又はアンモニウムカチオンであることがさらに好ましい。また、前記ノニオン性基は、ポリエチレンオキシドやポリグリセリン、糖ユニットの一部等が挙げられる。
【0064】
前記親水性基は、アニオン性基であることが好ましい。アニオン性基は、リン酸基、ホスホン酸基、ホスフィン酸基、硫酸基、スルホン酸基、スルフィン酸基、又はカルボン酸基であることが好ましく、リン酸基、カルボン酸基であることがより好ましく、カルボン酸基であることがさらに好ましい。
【0065】
また、低分子の界面活性剤型分散剤がアニオン性の親水性基を有する場合、酸性の処理液と接触させて凝集反応を促進させる観点から、pKaが3以上であることが好ましい。低分子の界面活性剤型分散剤のpKaは、テトラヒドロフラン−水(体積比3:2)溶液に低分子の界面活性剤型分散剤1mmol/Lを溶解した液を酸あるいはアルカリ水溶液で滴定し、滴定曲線より実験的に求めた値のことである。低分子の界面活性剤型分散剤のpKaが3以上であると、理論上pH3程度の液と接したときにアニオン性基の50%以上が非解離状態になる。したがって、低分子の界面活性剤型分散剤の水溶性が著しく低下し、凝集反応が起こる。すなわち、凝集反応性が向上する。かかる観点からも、低分子の界面活性剤型分散剤は、アニオン性基としてカルボン酸基を有する場合が好ましい。
【0066】
前記疎水性基は、炭化水素系、フッ化炭素系、シリコーン系等の構造を有しており、特に炭化水素系であることが好ましい。また、疎水性基は、直鎖状構造又は分岐状構造のいずれであってもよい。また、疎水性基は、1本鎖状構造又はこれ以上の鎖状構造でもよく、2本鎖状以上の構造である場合は、複数種類の疎水性基を有していてもよい。また、疎水性基は、炭素数2〜24の炭化水素基が好ましく、炭素数4〜24の炭化水素基がより好ましく、炭素数6〜20の炭化水素基がさらに好ましい。
【0067】
前記ポリマー分散剤のうち、水溶性分散剤としては、親水性高分子化合物が挙げられる。例えば、天然の親水性高分子化合物では、アラビアガム、トラガンガム、グアーガム、カラヤガム、ローカストビーンガム、アラビノガラクトン、ペクチン、クインスシードデンプン等の植物性高分子、アルギン酸、カラギーナン、寒天等の海藻系高分子、ゼラチン、カゼイン、アルブミン、コラーゲン等の動物系高分子、キサンテンガム、デキストラン等の微生物系高分子等が挙げられる。
【0068】
また、天然物を原料に修飾した親水性高分子化合物では、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース等の繊維素系高分子、デンプングリコール酸ナトリウム、デンプンリン酸エステルナトリウム等のデンプン系高分子、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールエステル等の海藻系高分子等が挙げられる。
【0069】
更に、合成系の親水性高分子化合物としては、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルメチルエーテル等のビニル系高分子、非架橋ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸又はそのアルカリ金属塩、水溶性スチレンアクリル樹脂等のアクリル系樹脂、水溶性スチレンマレイン酸樹脂、水溶性ビニルナフタレンアクリル樹脂、水溶性ビニルナフタレンマレイン酸樹脂、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、β−ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物のアルカリ金属塩、四級アンモニウムやアミノ基等のカチオン性官能基の塩を側鎖に有する高分子化合物、セラック等の天然高分子化合物等が挙げられる。
【0070】
これらの中でも、アクリル酸、メタクリル酸、スチレンアクリル酸のホモポリマーや、他の親水基を有するモノマーとの共重合体などのように、カルボキシル基が導入された水溶性分散剤が親水性高分子化合物として好ましい。
【0071】
ポリマー分散剤のうち、非水溶性分散剤としては、疎水性部と親水性部の両方を有するポリマーを用いることができる。例えば、スチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、スチレン−(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、(メタ)アクリル酸エステル−(メタ)アクリル酸共重合体、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート−(メタ)アクリル酸共重合体、酢酸ビニル−マレイン酸共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体等が挙げられる。
【0072】
ポリマー分散剤の重量平均分子量は、3,000〜100,000が好ましく、より好ましくは5,000〜50,000であり、更に好ましくは5,000〜40,000であり、特に好ましくは10,000〜40,000である。
【0073】
ポリマー分散剤の酸価としては、120mgKOH/g以下が好ましい。更には、該酸価は、25〜120mgKOH/gがより好ましく、30〜120mgKOH/gが更に好ましい。ポリマー分散剤の酸価は、120mgKOH/g以下になると、相対的に顔料が疎水的になるため、画像の耐水性向上等の観点でより効果がある。ポリマー分散剤の酸価は25mgKOH/g以上であると、自己分散性の安定性向上等の観点でより効果がある。
【0074】
ポリマー分散剤は、自己分散性と処理液が接触したときの凝集速度の観点から、カルボキシル基を有するポリマーを含むことが好ましく、カルボキシル基を有し、酸価が25〜120mgKOH/gのポリマーを含むことがより好ましく、カルボキシル基を有し、酸価が30〜120mgKOH/gのポリマーを含むことがさらに好ましい。
【0075】
顔料(p)と分散剤(s)との混合質量比(p:s)としては、1:0.06〜1:3の範囲が好ましく、1:0.125〜1:2の範囲がより好ましく、更に好ましくは1:0.125〜1:1.5である。
【0076】
本発明におけるインク組成物は色材として顔料を含むが、必要に応じて染料を含んでいてもよい。色材として染料を用いる場合には、染料を水不溶性の担体に保持したものを水不溶性着色粒子として用いることができる。染料としては公知の染料を特に制限なく用いることができ、例えば、特開2001−115066号公報、特開2001−335714号公報、特開2002−249677号公報等に記載の染料を本発明においても好適に用いることができる。また、担体としては、水に不溶または水に難溶であれば特に制限なく、無機材料、有機材料及びこれらの複合材料を用いることができる。具体的には、特開2001−181549号公報、特開2007−169418号公報等に記載の担体を本発明においても好適に用いることができる。染料を保持した担体(水不溶性着色粒子)は、分散剤を用いて水系分散物として用いることができる。分散剤としては上述した分散剤を好適に用いることができる。
【0077】
本発明におけるインク組成物は、カックル及び画像の白抜け抑制等の観点から、顔料と分散剤と含むことが好ましく、有機顔料とポリマー分散剤とを含むことがより好ましく、有機顔料とカルボキシル基を含むポリマー分散剤とを含むことが特に好ましい。また、顔料は、凝集性の観点から、カルボキシル基を有するポリマー分散剤にその表面の少なくとも一部が被覆され、水不溶性であることが好ましい。
【0078】
(重合開始剤)
本発明におけるインク組成物は、既述の処理液に含有すると共にあるいは含有せずに、活性エネルギー線により前記重合性化合物の重合を開始する重合開始剤の少なくとも1種を含有することができる。重合開始剤は、1種単独で又は2種以上を混合して、あるいは増感剤と併用して使用することができる。
【0079】
重合開始剤(以下、単に「開始剤」ということがある)は、活性エネルギー線により重合反応を開始し得る化合物を適宜選択して含有することができ、例えば、放射線もしくは光、又は電子線により活性種(ラジカル、酸、塩基など)を発生する開始剤(例えば、光重合開始剤等)を用いることができる。
【0080】
開始剤としては、例えば、アセトフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、p−ジメチルアミノアセトフェン、p−ジメチルアミノプロピオフェノン、ベンゾフェノン、2−クロロベンゾフェノン、p,p’−ジクロロベンゾフェン、p,p’−ビスジエチルアミノベンゾフェノン、ミヒラーケトン、ベンジル、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインn−プロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインn−ブチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、テトラメチルチウラムモノサルファイド、チオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−メチルチオキサントン、アゾビスイソブチロニトリル、ベンゾインパーオキサイド、ジ−tert−ブチルパーオキサイド、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−1−オン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、メチルベンゾイルフォーメートが挙げられる。更に、例えばトリフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート等の、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族ハロニウム塩、芳香族スルホニウム塩、メタロセン化合物等が挙げられる。
【0081】
開始剤を含有する場合、インク組成物中における開始剤の含有量としては、重合性化合物に対して、1〜40質量%が好ましく、5〜30質量%がより好ましい。開始剤の含有量は、1質量%以上であると画像の耐擦過性がより向上し、高速記録に有利であり、40質量%以下であると吐出安定性の点で有利である。
【0082】
前記増感剤としては、アミン系(脂肪族アミン、芳香族基を含むアミン、ピペリジンなど)、尿素(アリル系、o−トリルチオ尿素など)、イオウ化合物(ナトリウムジエチルジチオホスフェート、芳香族スルフィン酸の可溶性塩など)、ニトリル系化合物(N,N−ジ置換p−アミノベンゾニトリルなど)、リン化合物(トリn−ブチルホスフィン、ネトリウムジエチルジチオホスフィードなど)、窒素化合物(ミヒラーケトン、N−ニトリソヒドロキシルアミン誘導体、オキサゾリジン化合物、テトラヒドロ1,3オキサジン化合物、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒドとジアミンの縮合物など)、塩素化合物(四塩化炭素、ヘキサクロロエタンなど)、エポキシ樹脂とアミンの反応生成物の高分子化アミン、トリエタノールアミントリアクリレート、等が挙げられる。増感剤は、本発明の効果を損なわない範囲で含有することができる。
【0083】
(水溶性有機溶剤)
本発明におけるインク組成物は、水溶性有機溶剤の少なくとも1種を含むことができる。水溶性有機溶剤を含有することで、例えば、インク噴射口におけるインクの乾燥によって発生し得るノズルの目詰まりを効果的に抑制したり(乾燥防止剤)、インク組成物を記録媒体(好ましくは、印刷用紙)により良く浸透させたり(浸透促進剤)することができる。また、水溶性有機溶剤によってインク組成物の粘度を調整することもできる。
【0084】
水溶性有機溶剤としては通常用いられる水溶性有機溶剤を特に制限なく用いることができる。また1種単独でも、2種以上を組み合わせて用いてもよい。水溶性有機溶剤の具体的な例としては、
アルコール類(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、t−ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール等)、
多価アルコール類(例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキサンジオール、ペンタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、グリセリン、ヘキサントリオール、トリメチロールプロパン、チオジグリコール、ジチオグリコール、アセチレングリコール誘導体等)、
グリコール誘導体(例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングルコールモノメチルエーテル、ジエチレングルコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールジアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル)、
アミン類(例えば、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、モルホリン、N−エチルモルホリン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ポリエチレンイミン、テトラメチルプロピレンジアミン)、
及び、その他の極性溶剤(例えば、ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、スルホラン、3−スルホレン、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、N−ビニル−2−ピロリドン、2−オキサゾリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、アセトニトリル、アセトン)が挙げられる。
【0085】
また、水溶性有機溶剤の例として、アルキレンオキシアルコール類も挙げられる。アルキレンオキシアルコールとしては、好ましくは、プロピレンオキシアルコールである。プロピレンオキシアルコールとしては、例えば、サンニックスGP250、サンニックスGP400(三洋化成工業(株)製)が挙げられる。
【0086】
上記の水溶性有機溶剤に加え、必要に応じて、乾燥防止、浸透促進、粘度調整などを図る目的で、他の有機溶剤を含有してもよい。
【0087】
前記水溶性有機溶剤として、水より蒸気圧の低い水溶性有機溶剤を用いることで、インクジェット記録におけるノズルの乾燥をより効果的に抑制することができる。水より蒸気圧の低い水溶性有機溶剤の具体的な例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、チオジグリコール、ジチオジグリコール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,2,6−ヘキサントリオール、アセチレングリコール誘導体、グリセリン、トリメチロールプロパン等に代表される多価アルコール類、エチレングリコールモノメチル(又はエチル)エーテル、ジエチレングリコールモノメチル(又はエチル)エーテル、トリエチレングリコールモノエチル(又はブチル)エーテル等の多価アルコールの低級アルキルエーテル類、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、N−エチルモルホリン等の複素環類、スルホラン、ジメチルスルホキシド、3−スルホレン等の含硫黄化合物、ジアセトンアルコール、ジエタノールアミン等の多官能化合物、尿素誘導体等が挙げられる。中でも、グリセリン、ジエチレングリコール等の多価アルコールが好ましい。これらの水溶性有機溶剤は、インク組成物中に、5〜50質量%含有されることが好ましい。
【0088】
また水溶性有機溶剤として、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、ジ(トリ)エチレングリコールモノブチルエーテル、1,2−ヘキサンジオール等のアルコール類を用いることで、インクの記録媒体への浸透をより効果的に促進できる。これらの水溶性有機溶剤は、インク組成物中に、5〜30質量%含有されることで、充分な効果を発揮する。また水溶性有機溶剤は、印画の滲み、紙抜け(プリントスルー)を起こさない添加量の範囲内で使用されることが好ましい。尚、浸透促進剤としては、ラウリル硫酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウムやノニオン性界面活性剤等も好適に用いることができる。
【0089】
(その他の添加剤)
本発明におけるインク組成物は、上記成分以外にその他の添加剤を用いて構成することができる。その他の添加剤としては、例えば、重合禁止剤、乾燥防止剤(湿潤剤)、褪色防止剤、乳化安定剤、浸透促進剤、紫外線吸収剤、防腐剤、防黴剤、pH調整剤、表面張力調整剤、消泡剤、粘度調整剤、分散剤、分散安定剤、防錆剤、キレート剤等の公知の添加剤が挙げられる。これらの各種添加剤は、インク組成物の場合はインクに直接添加し、また、油性染料を分散物として用いる場合は染料分散物の調製後に分散物に添加するのが一般的であるが、調製時に油相又は水相に添加してもよい。
【0090】
前記紫外線吸収剤は、画像の保存性を向上させることができる。紫外線吸収剤としては、特開昭58−185677号公報、同61−190537号公報、特開平2−782号公報、同5−197075号公報、同9−34057号公報等に記載のベンゾトリアゾール系化合物、特開昭46−2784号公報、特開平5−194483号公報、米国特許第3214463号明細書等に記載のベンゾフェノン系化合物、特公昭48−30492号公報、同56−21141号公報、特開平10−88106号公報等に記載の桂皮酸系化合物、特開平4−298503号公報、同8−53427号公報、同8−239368号公報、同10−182621号公報、特表平8−501291号公報等に記載のトリアジン系化合物、リサーチ・ディスクロージャーNo.24239号に記載の化合物やスチルベン系、ベンズオキサゾール系化合物に代表される、紫外線を吸収して蛍光を発する化合物、いわゆる蛍光増白剤も用いることができる。
【0091】
前記褪色防止剤は、画像の保存性を向上させることができる。褪色防止剤としては、各種の有機系及び金属錯体系の褪色防止剤が挙げられる。有機系の褪色防止剤としては、ハイドロキノン類、アルコキシフェノール類、ジアルコキシフェノール類、フェノール類、アニリン類、アミン類、インダン類、クロマン類、アルコキシアニリン類、ヘテロ環類等が挙げられ、金属錯体系の褪色防止剤としては、ニッケル錯体、亜鉛錯体等が挙げられる。より具体的には、リサーチ・ディスクロージャーNo.17643の第VIIのIないしJ項、同No.15162、同No.18716の650頁左欄、同No.36544の527頁、同No.307105の872頁、同No.15162に引用された特許に記載の化合物や、特開昭62−215272号公報の127頁〜137頁に記載の代表的化合物の一般式及び化合物例に含まれる化合物を用いることができる。
【0092】
前記防黴剤としては、デヒドロ酢酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、ナトリウムピリジンチオン−1−オキシド、p−ヒドロキシ安息香酸エチルエステル、1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン及びその塩等が挙げられる。防黴剤の含有量は、インク組成物に対して0.02〜1.00質量%の範囲が好ましい。
【0093】
前記pH調整剤としては、中和剤(有機塩基、無機アルカリ)を用いることができる。pH調整剤は、インク組成物の保存安定性を向上させることができる。pH調整剤は、インク組成物のpHが6〜10となるように添加するのが好ましく、pHが7〜10となるように添加するのがより好ましい。
【0094】
前記表面張力調整剤としては、ノニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、ベタイン系界面活性剤等が挙げられる。表面張力調整剤の添加量は、インク組成物の表面張力を20〜60mN/mに調整できる範囲が好ましく、20〜45mN/mに調整できる範囲がより好ましく、25〜40mN/mに調整できる範囲が更に好ましい。添加量が前記範囲内であると、インクジェット法で良好に打滴することができる。
【0095】
前記界面活性剤の具体例としては、炭化水素系では、脂肪酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、アルキルリン酸エステル塩、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル塩等のアニオン系界面活性剤や、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、グリセリン脂肪酸エステル、オキシエチレンオキシプロピレンブロックコポリマー等のノニオン系界面活性剤が好ましい。また、アセチレン系ポリオキシエチレンオキシド界面活性剤であるSURFYNOLS(AirProducts&ChemicaLs社製)やオルフィン(日信化学工業(株)製)も好ましく用いられる。また、N,N−ジメチル−N−アルキルアミンオキシド等のアミンオキシド型の両性界面活性剤も好ましい。更に、特開昭59−157636号の第(37)〜(38)頁、リサーチ・ディスクロージャーNo.308119(1989年)に界面活性剤として挙げられたものも用いることができる。また、特開2003−322926号、特開2004−325707号、特開2004−309806号の各公報に記載のフッ素(フッ化アルキル系)系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤等を用いることにより、耐擦性を良化することもできる。
【0096】
また、これら表面張力調整剤は、消泡剤としても使用することができ、フッ素系化合物、シリコーン系化合物、及びEDTAに代表されるキレート剤等も使用可能である。
【0097】
<記録媒体>
本発明の画像形成方法は、記録媒体に上に画像を形成するものである。記録媒体には、特に制限はないが、一般のオフセット印刷などに用いられる、いわゆる上質紙、コート紙、アート紙などのセルロースを主体とする一般印刷用紙を用いることができる。セルロースを主体とする一般印刷用紙は、水性インクを用いた一般のインクジェット法による画像記録においては比較的インクの吸収、乾燥が遅く、打滴後に色材移動が起こりやすく、画像品質が低下しやすいが、本発明の画像形成方法によると、色材移動を抑制して色濃度、色相に優れた高品位の画像の記録が可能である。
【0098】
記録媒体としては、一般に市販されているものを使用することができ、例えば、王子製紙(株)製の「OKプリンス上質」、日本製紙(株)製の「しおらい」、及び日本製紙(株)製の「ニューNPI上質」等の上質紙(A)、王子製紙(株)製の「OKエバーライトコート」及び日本製紙(株)製の「オーロラS」等の微塗工紙、王子製紙(株)製の「OKコートL」及び日本製紙(株)製の「オーロラL」等の軽量コート紙(A3)、王子製紙(株)製の「OKトップコート+」及び日本製紙(株)製の「オーロラコート」等のコート紙(A2、B2)、王子製紙(株)製の「OK金藤+」及び三菱製紙(株)製の「特菱アート」等のアート紙(A1)等が挙げられる。また、インクジェット記録用の各種写真専用紙を用いることも可能である。
【0099】
記録媒体の中でも、一般のオフセット印刷などに用いられるいわゆる塗工紙が好ましい。塗工紙は、セルロースを主体とした一般に表面処理されていない上質紙や中性紙等の原紙の表面に、無機顔料を含むコート材を塗布してコート層を設けたものである。塗工紙は、通常の水性インクジェットによる画像形成においては、カックル等の問題を生じやすいが、本発明の画像形成方法では、カックル及び画像の白抜けを抑制することができる。特に、原紙と無機顔料を含むコート層とを有する塗工紙を用いるのが好ましく、原紙とカオリン及び/又は重炭酸カルシウムを含むコート層とを有する塗工紙を用いるのがより好ましい。具体的には、アート紙、コート紙、軽量コート紙、又は微塗工紙がより好ましい。
【0100】
さらに本発明における記録媒体としては、温度25℃、湿度50%RHにて動的走査吸液計で測定した、接触時間100msにおける純水の転移量が2〜25ml/mであり、かつ接触時間400msにおける純水の転移量が3〜30ml/mの範囲であるものが好ましい。さらに好ましい記録媒体としては、接触時間100msにおける純水の転移量が2〜20ml/mであり、かつ接触時間400msにおける純水の転移量が3〜25ml/mの範囲であるものが挙げられる。特に好ましい記録媒体としては、接触時間100msにおける純水の転移量が2〜15ml/mであり、かつ接触時間400msにおける純水の転移量が3〜20ml/mの範囲であるものが挙げられる。
【0101】
<処理液付与工程>
本発明では更に、インク組成物の成分を凝集させる凝集剤を含む処理液を記録媒体上に付与する処理液付与工程を備えていてもよい。処理液付与工程は、前記インク組成物付与工程の前又は後のいずれに設けてもよい。本発明においては、処理液付与工程で処理液を付与した後にインク組成物付与工程を設けた態様が好ましい。具体的には、記録媒体上に、インク組成物を付与する前に、予め処理液を付与しておき、記録媒体上に付与された処理液に接触するようにインク組成物を付与して画像化する態様が好ましい。
【0102】
処理液の付与量としては、インク組成物を凝集可能であれば特に制限はないが、好ましくは、凝集剤の付与量が0.1g/m以上となる量とすることができる。中でも、凝集剤の付与量が0.2〜0.7g/mとなる量が好ましい。凝集剤は、付与量が0.1g/m以上であるとインク組成物の種々の使用形態に応じ良好な高速凝集性が保てる。また、凝集剤の付与量が0.7g/m以下であることは、付与した記録媒体の表面性に悪影響(光沢の変化等)を与えない点で好ましい。
【0103】
また、本発明においては、処理液付与工程後にインク組成物付与工程を設け、処理液を記録媒体上に付与した後、インク組成物が付与されるまでの間に、記録媒体上の処理液を加熱乾燥する加熱乾燥工程を更に設けることが好ましい。インク組成物付与工程前に予め処理液を加熱乾燥させることにより、滲み防止などのインク着色性が良好になり、色濃度及び色相の良好な可視画像を記録できる。
【0104】
前記凝集剤としては、酸性化合物であっても、多価金属塩であっても、ポリアリルアミン類などの4級もしくは3級アミンを有するポリマーであってもよい。本発明においては、インク組成物の凝集性の観点から、酸性化合物が好ましい。
【0105】
酸性化合物としては、例えば、硫酸、塩酸、硝酸、リン酸、ポリアクリル酸、酢酸、グリコール酸、マロン酸、リンゴ酸、マレイン酸、アスコルビン酸、コハク酸、グルタル酸、フマル酸、クエン酸、酒石酸、乳酸、スルホン酸、オルトリン酸、ピロリドンカルボン酸、ピロンカルボン酸、ピロールカルボン酸、フランカルボン酸、ピリジンカルボン酸、クマリン酸、チオフェンカルボン酸、ニコチン酸、若しくはこれらの化合物の誘導体、又はこれらの塩等が好適に挙げられる。
酸性化合物は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0106】
本発明における処理液が酸性化合物を含む場合、処理液のpH(25℃)は、6以下が好ましく、より好ましくはpHは4以下である。中でも、pH(25℃)は1〜4の範囲が好ましく、特に好ましくは、pHは1〜3である。このとき、前記インク組成物のpH(25℃)は、7.5以上(より好ましくは8.0以上)であることが好ましい。中でも、画像濃度、解像度、及びインクジェット記録の高速化の観点から、インク組成物のpH(25℃)が8.0以上であって、処理液のpH(25℃)が0.5〜4である場合が好ましい。
【0107】
中でも、本発明における凝集剤としては、水溶性の高い酸性化合物が好ましく、凝集性を高め、インク全体を固定化させる点で、有機酸が好ましく、2価以上の有機酸がより好ましく、2価以上3価以下の有機酸が特に好ましい。前記2価以上の有機酸としては、その第1pKaが3.5以下の有機酸が好ましく、より好ましくは3.0以下の有機酸である。具体的には、例えば、リン酸、シュウ酸、マロン酸、クエン酸などが好適に挙げられる。
【0108】
前記多価金属塩としては、周期表の第2属のアルカリ土類金属(例えば、マグネシウム、カルシウム)、周期表の第3属の遷移金属(例えば、ランタン)、周期表の第13属からのカチオン(例えば、アルミニウム)、ランタニド類(例えば、ネオジム)の塩を挙げることができる。これら金属の塩としては、カルボン酸塩(蟻酸、酢酸、安息香酸塩など)、硝酸塩、塩化物、及びチオシアン酸塩が好適である。中でも、好ましくは、カルボン酸(蟻酸、酢酸、安息香酸塩など)のカルシウム塩又はマグネシウム塩、硝酸のカルシウム塩又はマグネシウム塩、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、及びチオシアン酸のカルシウム塩又はマグネシウム塩である。
【0109】
凝集剤は、1種単独で又は2種以上を混合して用いることができる。インク組成物を凝集させる凝集剤の処理液中における含有量としては、1〜50質量%が好ましく、より好ましくは3〜45質量%であり、更に好ましくは5〜40質量%の範囲である。
【0110】
処理液は、本発明の効果を損なわない範囲内で、更にその他の成分として他の添加剤を含有することができる。他の添加剤としては、例えば、乾燥防止剤(湿潤剤)、褪色防止剤、乳化安定剤、浸透促進剤、紫外線吸収剤、防腐剤、防黴剤、pH調整剤、表面張力調整剤、消泡剤、粘度調整剤、分散剤、分散安定剤、防錆剤、キレート剤等の公知の添加剤が挙げられる。
【0111】
<画像形成装置>
本発明の画像形成方法を実施するのに好適なインクジェット記録装置の一例を、図1を参照して具体的に説明する。図1は、インクジェット記録装置全体の構成例を示す概略構成図である。
【0112】
図1に示すように、インクジェット記録装置は、記録媒体の搬送方向(図中の矢印方向)に向かって順次、処理液を吐出する処理液吐出用ヘッド12Sを備えた処理液付与部12と、付与された処理液を乾燥させる加熱手段(不図示)を備えた処理液乾燥ゾーン13と、各種インク組成物を吐出するインク吐出部14と、吐出されたインク組成物を乾燥させるインク乾燥ゾーン15とが配設されている。また、記録媒体の搬送方向におけるインク乾燥ゾーン15の下流側には、紫外線照射ランプ16Sを備えた紫外線照射部16が配設されている。
【0113】
このインクジェット記録装置に供給された記録媒体は、記録媒体が装填されたケースから記録媒体を給紙する給紙部から、搬送ローラによって、処理液付与部12、処理液乾燥ゾーン13、インク吐出部14、インク乾燥ゾーン15、紫外線照射部16と順に送られて集積部に集積される。搬送は、搬送ローラによる方法のほか、ドラム状部材を用いたドラム搬送方式やベルト搬送方式、ステージを用いたステージ搬送方式などを採用してもよい。
【0114】
複数配置された搬送ローラのうち、少なくとも1つのローラはモータ(不図示)の動力が伝達された駆動ローラとすることができる。モータで回転する駆動ローラを定速回転することにより、記録媒体は所定の方向に所定の搬送量で搬送されるようになっている。
【0115】
処理液付与部12には、処理液を貯留する貯留タンクに繋がる処理液吐出用ヘッド12Sが設けられている。処理液吐出用ヘッド12Sは、記録媒体の記録面と対向配置された吐出ノズルから処理液を吐出し、記録媒体の上に処理液を液滴付与できるようになっている。なお、処理液付与部12は、ノズル状のヘッドから吐出する方式に限らず、塗布ローラを用いた塗布方式を採用することもできる。この塗布方式は、下流側に配置されたインク吐出部14で記録媒体上にインク滴が着弾する画像領域を含むほぼ全面に処理液を容易に付与することができる。記録媒体上の処理液の厚みを一定にするために、例えば、エアナイフを用いたり、あるいは尖鋭な角を有する部材を、処理液の規定量に対応するギャップを記録媒体との間に設けて設置したりする等の方法を設けてもよい。
【0116】
処理液付与部12の記録媒体搬送方向の下流側には、処理液乾燥ゾーン13が配置されている。処理液乾燥ゾーン13は、ヒータ等の公知の加熱手段やドライヤ等の送風を利用した送風手段、あるいはこれらを組み合わせた手段を用いて構成することができる。加熱手段は、記録媒体の遮断層形成面と反対側(例えば、記録媒体を自動搬送する場合は記録媒体を載せて搬送する搬送機構の下方)にヒータ等の発熱体を設置する方法や、記録媒体の遮断層形成面に温風又は熱風をあてる方法、赤外線ヒータを用いた加熱法などが挙げられ、これらの複数を組み合わせて加熱してもよい。
【0117】
また、記録媒体の種類(材質、厚み等)や環境温度等によって、記録媒体の表面温度は変化するため、記録媒体の表面温度を計測する計測部と該計測部で計測された記録媒体の表面温度の値を加熱制御部にフィードバックする制御機構を設けて温度制御しながら遮断層を形成することが好ましい。記録媒体の表面温度を計測する計測部としては、接触又は非接触の温度計が好ましい。
また、溶媒除去ローラー等を用いて溶媒除去を行なってもよい。他の態様として、エアナイフで余剰な溶媒を記録媒体から取り除く方式も用いられる。
【0118】
インク吐出部14は、処理液乾燥ゾーン13の記録媒体搬送方向下流側に配置されている。インク吐出部14には、ブラック(K)、シアン(C)、マゼンダ(M)、イエロー(Y)の各色インクを貯留するインク貯留部の各々と繋がる記録用ヘッド(インク吐出用ヘッド)30K、30C、30M、30Yが配置されている。不図示の各インク貯留部には、各色相に対応する顔料と樹脂粒子と水溶性有機溶剤と水とを含有するインク組成物が貯留されており、画像の記録に際して必要に応じて各インク吐出用ヘッド30K、30C、30M、30Yに供給されるようになっている。また、インク吐出用ヘッド30K、30C、30M、及び30Yの搬送方向下流側には、図1に示すように、必要に応じて特色インクを吐出可能なように、特色インク吐出用の記録ヘッド30A、30Bを更に配設することもできる。
【0119】
インク吐出用ヘッド30K、30C、30M、30Yは、記録媒体の記録面と対向配置された吐出ノズルから、それぞれ画像に対応するインクを吐出する。これにより、記録媒体の記録面上に各色インクが付与され、カラー画像が記録される。
【0120】
処理液吐出用ヘッド12S、並びにインク吐出用ヘッド30K、30C、30M、30Y、30A、及び30Bはいずれも、記録媒体上に記録される画像の最大記録幅(最大記録幅)にわたって多数の吐出口(ノズル)が配列されたフルラインヘッドとなっている。記録媒体の幅方向(記録媒体搬送面において搬送方向と直交する方向)に短尺のシャトルヘッドを往復走査しながら記録を行なうシリアル型のものに比べて、記録媒体に高速に画像記録を行なうことができる。本発明においては、1回の走査で1ラインを形成するシングルパスで主走査方向に吐出して記録できる方式(シングルパス方式)を採用する。本発明のインク組成物を、既述の数式1及び2を同時に満たす範囲で、シングルパス方式により記録媒体上に付与することで、カックル及び画像の白抜けを抑制し、高速印刷を行うことが可能となる。
【0121】
ここでは、処理液吐出用ヘッド12S、並びにインク吐出用ヘッド30K、30C、30M、30Y、30A、及び30Bは、全て同一構造になっている。
【0122】
処理液の付与量とインク組成物の付与量とは、必要に応じて調節することが好ましい。例えば、記録媒体に応じて、処理液とインク組成物とが混合してできる凝集物の粘弾性等の物性を調節する等のために、処理液の付与量を変えてもよい。
【0123】
インク乾燥ゾーン15は、インク吐出部14の記録媒体搬送方向下流側に配置されている。インク乾燥ゾーン15は、処理液乾燥ゾーン13と同様に構成することができる。
【0124】
紫外線照射部16は、インク乾燥ゾーン15の記録媒体搬送方向のさらに下流側に配置されており、紫外線照射部16に設けられた紫外線照射ランプ16Sにより紫外線を照射し、画像乾燥後の画像中のモノマー成分を重合硬化させるようになっている。紫外線照射ランプ16Sは、記録媒体の記録面と対向配置されたランプにより記録面の全体を照射し、画像全体の硬化が行なえるようになっている。なお、紫外線照射部16は、紫外線照射ランプ16Sに限らず、ハロゲンランプ、高圧水銀灯、レーザー、LED、電子線照射装置などを採用することもでき、活性エネルギー線を照射するものであれば限定されない。紫外線照射部16は、インク乾燥ゾーン15の前後のいずれに設置されていてもよく、インク乾燥ゾーン15の前後両方に設置してもよい。
【0125】
活性エネルギー線の波長としては、例えば、200〜600nmであることが好ましく、300〜450nmであることがより好ましく、350〜420nmであることがさらに好ましい。
活性エネルギー線の出力としては、その積算照射量が5000mJ/cm以下であることが好ましく、10〜4000mJ/cmであることがより好ましく、20〜3000mJ/cmであることがさらに好ましい。
【0126】
また、インクジェット記録装置には、給紙部から集積部までの搬送路に、記録媒体に加熱処理を施す加熱手段を配置することもできる。例えば、処理液乾燥ゾーン13の上流側や、インク吐出部14とインク乾燥ゾーン15との間、などの所望の位置に加熱手段を配置することで、記録媒体を所望の温度に昇温させることにより、乾燥、定着を効果的に行なうようにすることが可能である。
【実施例】
【0127】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はその主旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は質量基準である。
【0128】
<インク組成物の調製>
−ポリマー分散剤1溶液の調製−
反応容器に、スチレン6部、ステアリルメタクリレート11部、スチレンマクロマーAS−6(東亜合成(株)製)4部、ブレンマーPP−500(日本油脂(株)製)5部、メタクリル酸5部、2−メルカプトエタノール0.05部、及びメチルエチルケトン24部を加え、混合溶液を調液した。
【0129】
一方、滴下ロートに、スチレン14部、ステアリルメタクリレート24部、スチレンマクロマーAS−6(東亜合成(株)製)9部、ブレンマーPP−500(日本油脂(株)製)9部、メタクリル酸10部、2−メルカプトエタノール0.13部、メチルエチルケトン56部、及び2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)1.2部を加え、混合溶液を調液した。
【0130】
そして、窒素雰囲気下、反応容器内の混合溶液を攪拌しながら75℃まで昇温し、滴下ロート中の混合溶液を1時間かけて徐々に滴下した。滴下終了から2時間経過後、これに、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)1.2部をメチルエチルケトン12部に溶解した溶液を3時間かけて滴下し、更に75℃で2時間、80℃で2時間熟成させ、ポリマー分散剤1溶液を得た。
【0131】
得られたポリマー分散剤1溶液の一部について、溶媒を除去することによって単離し、得られた固形分をテトラヒドロフランにて0.1質量%に希釈し、高速GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)HLC−8220GPCにて、TSKgeL SuperHZM−H、TSKgeL SuperHZ4000、TSKgeL SuperHZ2000(東ソー(株)製)を3本直列につなぎ、重量平均分子量を測定した。その結果、重量平均分子量は、ポリスチレン換算で25,000であった。また、JIS規格(JIS K 0070:1992)記載の方法により、このポリマーの酸価を求めたところ酸価は99mgKOH/gであった。
【0132】
−シアン分散液C1の調製−
次に、上記のポリマー分散剤溶液を固形分換算で5.0g、シアン顔料Pigment Blue 15:3(大日精化(株)製)10.0g、メチルエチルケトン40.0g、1mol/L(リットル;以下同様)の水酸化ナトリウム8.0g 及びイオン交換水82.0gを、0.1mmジルコニアビーズ300gと共にベッセルに供給し、レディーミル分散機(アイメックス社製)で1000rpmで6時間分散した。得られた分散液をエバポレーターでメチルエチルケトンが充分に留去できるまで減圧濃縮し、さらに顔料濃度が10%になるまで濃縮して、水分散性顔料が分散したシアン分散液C1を調製した。得られたシアン分散液C1の体積平均粒子径(二次粒子)を、Micorotrac粒度分布測定装置(Version 10.1.2−211BH(商品名)、日機装(株)製)で動的光散乱法により測定したところ、77nmであった。
【0133】
−自己分散性ポリマー粒子1の合成−
攪拌機、温度計、還流冷却管、及び窒素ガス導入管を備えた2リットル三口フラスコに、メチルエチルケトン360.0gを仕込んで、75℃まで昇温した。その後、フラスコ内温度を75℃に保ちながら、フェノキシエチルアクリレート180.0g、メチルメタクリレート162.0g、アクリル酸18.0g、メチルエチルケトン72g、及び「V−601」(和光純薬(株)製)1.44gからなる混合溶液を、2時間で滴下が完了するように等速で滴下した。滴下完了後、これに「V−601」0.72g及びメチルエチルケトン36.0gからなる溶液を加え、75℃で2時間攪拌後、さらに「V−601」0.72g及びイソプロパノール36.0gからなる溶液を加え、75℃で2時間攪拌した。その後、85℃に昇温して、さらに2時間攪拌を続け、フェノキシエチルアクリレート/メチルメタクリレート/アクリル酸(=50/45/5[質量比])共重合体の樹脂溶液を得た。
得られた共重合体の上記ポリマー分散剤1と同様に測定した重量平均分子量(Mw)は、64,000(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によりポリスチレン換算で算出)であり、酸価は38.9mgKOH/gであった。
【0134】
次に、得られた樹脂溶液668.3gを秤量し、これにイソプロパノール388.3g及び1mol/L NaOH水溶液145.7mlを加え、反応容器内温度を80℃に昇温した。次に、蒸留水720.1gを20ml/minの速度で滴下し、水分散化した後、大気圧下にて反応容器内温度80℃で2時間、85℃で2時間、90℃で2時間保った後、反応容器内を減圧にし、イソプロパノール、メチルエチルケトン、蒸留水を合計で913.7g留去し、固形分濃度28.0質量%の自己分散性ポリマー粒子1の水分散物を得た。
【0135】
−重合性化合物1の合成−
攪拌機を備えた1Lの三口フラスコに4,7,10−トリオキサ−1,13−トリデカンジアミン40.0g(182mmol)、炭酸水素ナトリウム37.8g(450mmol)、水100g、テトラヒドロフラン300gを加えて、氷浴下、アクリル酸クロリド35.2g(389mmol)を20分かけて滴下した。滴下後、室温で5時間攪拌した後、得られた反応混合物から減圧下でテトラヒドロフランを留去した。次に水層を酢酸エチル200mlで4回抽出し、得られた有機層を硫酸マグネシウムで乾燥後、ろ過を行い、減圧下溶媒留去することにより目的の重合性化合物1の固体を35.0g(107mmol、収率59%)得た。
【0136】
上記のようにシアン分散液C1を調製した後、これに上記の自己分散性ポリマー粒子1の水分散物、上記の重合性化合物1、有機溶剤、界面活性剤、及びイオン交換水を用いることにより、下記組成になるようにインク組成物を調製した。調製後、得られたインクを5μmフィルタを通して粗大粒子を除去し、シアンインクとした。
【0137】
(シアンインクC−1の組成)
・シアン分散液C1 ・・・4質量%(固形分)
・重合性化合物1 ・・・20質量%
・オルフィンE1010(日信化学工業(株)製) ・・・1質量%
・開始剤(イルガキュア 2959(チバ・ジャパン社製))・・・3質量%
・イオン交換水 ・・・残量(全量で100質量%となるよう加えた)
【0138】
【化12】

【0139】
(シアンインクC−2の組成)
・シアン分散液C1 ・・・4質量%(固形分)
・自己分散性ポリマー粒子1 ・・・8質量%(固形分)
・オルフィンE1010(日信化学工業(株)製) ・・・1質量%
・サンニックスGP250(三洋化成工業(株)製) ・・・10質量%
・トリプロピレングリコールモノメチルエーテル(TPGmME)(和光純薬(株)製) ・・・ 8質量%
・イオン交換水 ・・・残量(全量で100質量%となるよう加えた)
【0140】
(シアンインクC−3の組成)
・シアン分散液C1 ・・・4質量%(固形分)
・重合性化合物1 ・・・15質量%
・オルフィンE1010(日信化学工業(株)製) ・・・1質量%
・開始剤(イルガキュア 2959(チバ・ジャパン社製)) ・・・3質量%
・イオン交換水 ・・・残量(全量で100質量%となるよう加えた)
【0141】
(シアンインクC−4の組成)
・シアン分散液C1 ・・・4質量%(固形分)
・重合性化合物1 ・・・30質量%
・オルフィンE1010(日信化学工業(株)製) ・・・1質量%
・開始剤(イルガキュア 2959(チバ・ジャパン社製)) ・・・3質量%
・イオン交換水 ・・・残量(全量で100質量%となるよう加えた)
【0142】
−マゼンタ分散液M1の調製−
次に、上記のポリマー分散剤1溶液を固形分換算で5.0g、マゼンタ顔料Pigment Red122(大日精化(株)製)10.0g、メチルエチルケトン40.0g、1mol/L(リットル;以下同様)の水酸化ナトリウム8.0g 及びイオン交換水82.0gを、0.1mmジルコニアビーズ300gと共にベッセルに供給し、レディーミル分散機(アイメックス社製)で1000rpmで6時間分散した。得られた分散液をエバポレーターでメチルエチルケトンが充分に留去できるまで減圧濃縮し、さらに顔料濃度が10%になるまで濃縮して、水分散性顔料が分散したマゼンタ分散液M1を調製した。
得られたマゼンタ分散液M1の体積平均粒子径(二次粒子)を、Micorotrac粒度分布測定装置(Version 10.1.2−211BH(商品名)、日機装(株)製)で動的光散乱法により測定したところ、84nmであった。
【0143】
(マゼンタインクM−1〜M−4の調製)
上記のように分散したマゼンタ分散液M1を使用して、顔料分散液以外はシアンインクC−1と同様にしてマゼンタインクM−1を調製した。同様にマゼンタ分散液M1を使用して、顔料分散液以外はシアンインクC−2、C−3、C−4と同様にしてマゼンタインクM−2、M−3、M−4調製した。
【0144】
(イエローインクY−1〜Y−4の調製)
Pigment Blue 15:3の代わりにPigment Yellow 72を用いる以外はシアン分散液C1と同様にして、イエロー分散液Y1を作成した。さらにシアン分散液C1の代わりに、イエロー分散液Y1を用いる以外はシアンインクC−1、C−2、C−3、C−4と同様にして、イエローインクY−1、Y−2、Y−3、Y−4を調製した。
【0145】
(ブラックインクBK−1〜BK−4の調製)
Pigment Blue 15:3の代わりにPigment Black 7を用いる以外はシアン分散液C1と同様にして、ブラック分散液BK1を作成した。さらにシアン分散液C1の代わりに、ブラック分散液BK1を用いる以外はシアンインクC−1、C−2、C−3、C−4と同様にして、ブラックインクBK−1、BK−2、BK−3、BK−4を調製した。
【0146】
(インクセット1、2、3、4)
シアンインクC−1、マゼンタインクM−1、イエローインクY−1、ブラックインクBK−1をインクセット1とした。同様にシアンインクC−2〜C−4、マゼンタインクM−2〜M−4、イエローインクY−2〜Y−4、ブラックインクBK−2〜BK−4を各々用いてインクセット2〜4とした。
【0147】
<処理液の調製>
(処理液1の組成)
・マロン酸(和光純薬工業(株)製) ・・・25質量%
・ジエチレングリコールモノメチルエーテル ・・・20.0質量%
(和光純薬工業(株)製)
・エマルゲンP109(花王(株)製、ノニオン性界面活性剤)・・・1.0質量%
・イオン交換水 ・・・残量
【0148】
(処理液2の組成)
・硝酸マグネシウム・六水和物(反応剤) ・・・25質量%
・イソブチルベンゾインエーテル ・・・10質量%
・トリエチレングリコールモノブチルエーテル ・・・10質量%
・グリセリン ・・・10質量%
・イオン交換水 ・・・残量
【0149】
−3級アミンを有するポリマー水溶液の調整−
酢酸グアニジン(65g)と1,6−ヘキサメチレンジアミン(66.7g)を250mlの丸底フラスコ中に仕込み混合後、Nガスの雰囲気下で攪拌しながら混合物を120℃に加熱し、攪拌を4時間続けた。次いで温度を150℃に上げ、反応混合物をこの温度で更に20時間攪拌した。反応混合物を室温に自然冷却し、次いで同じ体積の蒸留水と混合し、80℃に加熱し、均一溶液になるまでこの温度で保持した。溶液を冷却し、酢酸を使用してpHをpH7に調節し、本混合物をイオン交換水を使用して25%固形分になるよう希釈した。こうして得られた3級アミンを有するポリマー水溶液は、ゲル透過クロマトグラフィーによる測定で1120の重量平均分子量(Mw)を有した。
【0150】
(処理液3の組成)
・上記3級アミンを有するポリマー水溶液 ・・・20質量%
・2−ピロリドン ・・・9質量%
・チオジエチレングリコール ・・・9質量%
・シクロヘキサノール ・・・2質量%
・イオン交換水 ・・・残量
【0151】
<画像記録及び評価>
上記で得られたインクセットおよび処理液を下記表1に示す組み合わせで用い、下記のようにして画像を記録した。さらに記録された画像に対して、下記の方法でカックル及び画像の白抜けを評価した。評価結果は下記表1に示す。
【0152】
(画像記録)
まず、図1に示すように、記録媒体の搬送方向(図中の矢印方向)に向かって順次、水性処理液を吐出する処理液吐出用ヘッド12Sを備えた処理液付与部12と、付与された水性処理液を乾燥させる処理液乾燥ゾーン13と、各種水性インクを吐出するインク吐出部14と、吐出された水性インクを乾燥させるインク乾燥ゾーン15と、紫外線(UV)を照射可能なUV照射ランプ16Sを備えたUV照射部16とが配設されたインクジェット装置を準備した。なお、インクを吐出するヘッドは、リコーのGELJETプリンターGX5000のヘッドを所定の解像度になるように搬送方向に対して傾けて使用した。
処理液乾燥ゾーン13は、図示しないが、記録媒体の記録面側には乾燥風を送って乾燥を行なう送風器を備え、記録媒体の非記録面側には赤外線ヒータを備えており、処理液付与部で処理液の付与を開始した後900msecが経過するまでに、温度・風量を調節して水性処理液中の水の70質量%以上を蒸発(乾燥)できるように構成されている。また、インク吐出部14は、搬送方向(矢印方向)にブラックインク吐出用ヘッド30K、シアンインク吐出用ヘッド30C、マゼンタインク吐出用ヘッド30M、及びイエローインク吐出用ヘッド30Yが順次配置されており、各ヘッドは300dpi/10inch幅のノズル列が900μm離れて2列並んでいるヘッドでありそれぞれの列のノズルが、もう一方の列の間になるように配置されており2列で600dpi/10inch幅の解像度のヘッドになっている。更に各ヘッドは搬送方向に対して任意に角度を変えることが可能であり、角度を変えることで任意に解像度を変化させることができる。すなわち、搬送方向に対して垂直にヘッドのノズル列を調整すれば300dpi(1列だけ吐出すれば150dpi)になり、搬送方向に対して75.5度傾けてヘッドのノズル列を調整すれば1200dpiになり、搬送方向に対して77.2度傾けてヘッドノズル列を調整すれば1400dpiに調整できる。駆動周波数と、記録媒体の搬送速度は出力したい解像度にあわせて任意に調整して出力する(たとえば、1200dpiで出力する場合には、駆動周波数:25kHz、記録媒体の搬送速度530mm/sec)。このようにして、各色をシングルパスで主走査方向に吐出して記録できるようになっている。
【0153】
図1に示すように構成されたインクジェット装置の処理液吐出用ヘッド12S、シアンインク吐出用ヘッド30Cにそれぞれ繋がる貯留タンク(不図示)に、上記で得た処理液、インクを装填して、記録媒体にテストパターンを記録した。水性処理液の記録媒体への付与量は、5ml/mとした。記録媒体には、王子製紙(株)製の「OKトップコート+」(坪量104.7g/m)を用いた。画像の記録は、下表に示す条件にてテストパターンを出力することにより行った。なお、テストパターンを形成する際に複数種のインク組成物を使用する場合は、各色のインク組成物をそれぞれ、表に記載の打滴量で記録媒体上へ付与し、画像を形成した。
画像の白抜けのテストパターンとしては、シアンインク、マゼンタインク、イエローインク、ブラックインクのそれぞれについて4ポイントの明朝体の「鷹」の文字が並んだ画像を使用した。カックルのテストパターンとしては、シアンインク、マゼンタインク、イエローインク、ブラックインクについて、4色重ねた画像を使用した。
【0154】
画像の記録はまず、記録媒体上に処理液吐出用ヘッド12Sから処理液をシングルパスで吐出した後、処理液の乾燥は処理液乾燥ゾーン13で行ない、処理液乾燥ゾーンを水性処理液の吐出開始から900msec迄に通過するようにした。処理液乾燥ゾーン13では、着滴した水性処理液を着滴面の裏側(背面)から赤外線ヒータで膜面温度が40〜45℃となるように加熱しながら、送風器により記録面に120℃の温風をあて、風量を変えて所定の乾燥量になるように調整した。続いて、シアンインク吐出用ヘッド30Cにより、シアンインクをシングルパスで吐出して画像を記録した後、インク乾燥ゾーン15で前記同様にインク着滴面の裏側(背面)から赤外線ヒータで加熱しながら、送風器により120℃、5m/secの温風を記録面に15秒間あてて乾燥させた。画像乾燥後、UV照射部16において、UV光(アイグラフィックス(株)製メタルハライドランプ、最大照射波長:365nm)を積算照射量3J/cmになるように照射して画像を硬化した。なお、マゼンタインク、イエローインク、ブラックインクについては各々、吐出用ヘッド30M、30Y、30Kに繋がる貯留タンク(不図示)に装填した以外は上記シアンインクと同様に画像を形成した。
【0155】
(評価)
−画像の白抜け−
上記のようにしてA5サイズのOKトップコート+上に、テストパターンを出力し、50倍のルーペで観察し、文字の解像性、および文字の線再現性に関して下記の基準で評価した。結果を下表に示す。
[評価基準]
1:4ptの文字が解像しており、文字を構成する線が完全に埋まっている。
2:4ptの文字が解像しており、文字を構成する線に白抜けは一部しか存在せず殆ど埋まっている。
3:4ptの文字が解像しており、文字を構成する線に白抜けが顕著に存在する。
4:4ptの文字が解像していない。
※1〜2が実用に問題がない範囲である。
【0156】
−カックル−
テストパターン出力10分後に、記録媒体(OKトップコート+)上のテストパターン出力部(搬送方向に5cm)と、テストパターン出力部から5mm離れた部分を出力部と平行にレーザー変位計で測定し、それぞれの経緯積分値をX、Xとし、(X−X)/X×100の値をカックルの特性値として下記の基準に従って評価した。結果を下表に示す。なお、レーザー変位計として(株)ミツトヨ製 クイックビジョンQVApex202システムを用いた。
[評価基準]
1:0.02未満
2:0.02以上0.05未満
3:0.05以上0.08未満
4:0.08以上
※1〜2が実用に問題がない範囲である。
【表1】

【0157】
表1より、本発明の画像形成方法を用いることでカックルおよび画像の白抜けの双方が抑制された画像を形成することができ、シングルパス方式による高速印刷を実現することができたと分かる。さらに、表1において、処理液1に換えて処理液2または処理液3を使用した場合も、処理液1を用いた場合と同様の効果が得られた。
【符号の説明】
【0158】
12・・・処理液付与部
12S・・・処理液吐出用ヘッド
13・・・処理液乾燥ゾーン
14・・・インク吐出部
15・・・インク乾燥ゾーン
16・・・紫外線照射部
16S・・・紫外線照射ランプ
30K、30C、30M、30Y、30A、30B・・・インク吐出用ヘッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インク組成物をインクジェット法で記録媒体上に付与して画像を形成する画像形成方法であって、前記インク組成物が顔料、水溶性の重合性化合物及び水を含み、前記水溶性の重合性化合物が前記インク組成物中に15質量%以上30質量%以下含有され、前記インク組成物を下記数式1及び2を満たす範囲で記録媒体上にシングルパス方式で付与するインク組成物付与工程を備えた画像形成方法。
【数1】


(数式1および2において、xはインク組成物の打滴量(ng)、Rは解像度(dpi)を表す。)
【請求項2】
前記数式1が下記数式1−1である、請求項1に記載の画像形成方法。
【数2】


(数式1−1において、xはインク組成物の打滴量(ng)、Rは解像度(dpi)を表す。)
【請求項3】
前記水溶性の重合性化合物が下記一般式(M)で表される化合物である、請求項1または2に記載の画像形成方法。
【化1】


(式(M)中、Qはn価の連結基を表し、Rは水素原子またはメチル基を表す。また、nは1以上の整数を表す。)
【請求項4】
前記顔料は、その表面の少なくとも一部がポリマー分散剤で被覆された水分散性顔料である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の画像形成方法。
【請求項5】
前記ポリマー分散剤がカルボキシル基を有する、請求項4に記載の画像形成方法。
【請求項6】
前記ポリマー分散剤は、酸価が120mgKOH/g以下である、請求項4又は請求項5に記載の画像形成方法。
【請求項7】
更に前記インク組成物の成分を凝集させる凝集剤を含む処理液を記録媒体上に付与する処理液付与工程を備えた、請求項1〜6のいずれか1項に記載の画像形成方法。
【請求項8】
前記凝集剤が有機酸である、請求項7に記載の画像形成方法。

【図1】
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【公開番号】特開2011−207004(P2011−207004A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−76015(P2010−76015)
【出願日】平成22年3月29日(2010.3.29)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】