説明

インクジェット画像形成方法

【課題】塗工層を有する記録メディアに、インクジェット用インクを高速で付与した際に生じる、ドット径の増大を抑制したインクジェット画像形成方法の提供。
【解決手段】色材を含有する水性インクをインクジェット記録方式で記録メディアへ付与して画像を形成するインクジェット画像形成方法である。前記水性インクは25℃における表面張力が40mN/m以上、25℃における粘度が15mPa・s以上であり、前記記録メディアは塗工層を有する印刷用紙であり、前記水性インクを前記記録メディアに吐出速度15m/s以上、30m/s以下で付与する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット画像形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、塗工層を有する記録メディアにインクジェット用インクを付与する技術が検討されている。塗工層を有する記録メディアとしては、例えば、顔料や接着剤などを含む塗料を原紙の表面に塗工した塗工紙や微塗工紙等の印刷用紙が挙げられる。これらの印刷用紙は塗工層を有する点で、表面に塗工層を有さない普通紙と区別される。
【0003】
しかしながら、これらの塗工紙や微塗工紙は表面に塗工層を有しているため、普通紙に比べてインクの浸透が極めて遅い。このため、記録メディアである紙にインクが着弾してから記録メディア内部にインクが浸透するまでの間に、インク液滴が記録メディア表面で拡がり、ドット径が大きくなりやすい傾向にある。その結果、画像の粒状性の悪化を招いたり、小ポイント対応が困難になったりするという課題が生じている。
【0004】
また、インクジェット記録方式で高速印刷に対応するためには、着弾精度向上の観点から吐出速度を速くする必要がある。しかしながら、吐出速度が速くなると着弾時のエネルギーも大きくなる。このため、インク液滴が拡がってドット径が大きくなり、画像の粒状性は悪化する傾向になり、小ポイント化はさらに困難になる。なお、下記特許文献1には、表面張力が35mN/m以上であるインクジェット用インクが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−270241号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の特許文献1に記載のインクジェット用インクは、インクジェット記録方式で普通紙へ印刷する際にインクの浸透性を制御することを目的としている。そして、特許文献1には、塗工層を有する印刷用紙への印字や高速印刷の記載はなく、これらを目的としていない。
【0007】
そのため、本発明では、塗工層を有する印刷用紙を記録メディアとして用いて、インクジェット用水性インクを高速で付与した(高速印刷したともいう)際に生じる、ドット径の増大を抑制したインクジェット画像形成方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題は以下の本発明によって達成される。すなわち本発明は、色材を含有する水性インクをインクジェット記録方式で記録メディアへ付与して画像を形成するインクジェット画像形成方法であって、前記水性インクは25℃における表面張力が40mN/m以上、25℃における粘度が15mPa・s以上であり、前記記録メディアは塗工層を有する印刷用紙であり、前記水性インクを前記記録メディアに吐出速度15m/s以上、30m/s以下で付与することを特徴とするインクジェット画像形成方法である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、インクジェット記録方式により、塗工層を有する印刷用紙に、インクジェット用水性インクを高速で付与した際に生じる、ドット径の増大を抑制でき、高解像度の画像を形成することができるインクジェット画像形成方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明者らは、記録メディアとして塗工層を有する印刷用紙を用い、インクジェット記録方式によって高速印刷を実現するために検討を行った。その結果、印刷速度が一定である場合、高い表面張力を有するインクは、表面張力の低いインクに比べ、インクが浸透しにくい塗工層を有する印刷用紙に付与されても、インク液滴の拡がりが抑制されることを見出した。さらに、高い粘度を有するインクを用いて、高速印刷を行った場合と低速印刷を行った場合とでドット径を比較すると、低い粘度を有するインクを用いたときに比べて、印刷速度によるドット径の変化が小さいことを見出した。
【0011】
以下、好ましい実施の形態を挙げて、本発明をさらに詳細に説明する。
<インク>
本発明で用いるインクは、着色剤として用いられる色材が、液媒体である水または水と水溶性化合物の混合液である水性媒体に分散した水性インクである。色材および水溶性化合物については、インク物性が25℃における表面張力が40mN/m以上、25℃における粘度が15mPa・s以上の範囲に入るものであれば特に限定されるものではないが、特に好ましい態様について以下に示す。
【0012】
(色材)
本発明で用いる水性インクで使用する色材は特に限定されるものではないが、以下の理由から顔料が好ましい。すなわち、色材として染料のような溶解状態のものを用いると、塗工層を有する印刷用紙にインクを塗布した際に、色材が液媒体とともに塗工層に速やかに浸透する。この時に液媒体は塗工層の厚み方向だけではなく、平面方向にも拡散するためドットは着弾した液滴以上に拡がる。これに対して、色材に顔料を用いた場合は色材が塗工層に浸透しないために、ドットの拡がりを抑えることができ、本発明の目的であるドットの拡がりを抑えるにはより好適である。ただし、顔料は凝集しやすいため水性インク中に分散させて分散状態にしておく必要がある。この顔料の分散機構は特に限定されるものではなく、自己分散でも樹脂分散でもよい。なかでも、自己分散顔料は、塗工層を有する印刷用紙にインクが着弾した直後に凝集および定着するので、ブリードの抑制などの観点からより好ましい。
【0013】
自己分散顔料は、基本的には分散剤を必須とせず、顔料表面に直接または他の原子団を介して水溶性の親水性基を導入して水溶性化した顔料である。水溶性化する前の顔料としては、次に挙げるように様々なタイプのものが使用できる。
【0014】
ブラックインクに使用される顔料としては、カーボンブラックが好適である。例えば、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等のカーボンブラック顔料である。カーボンブラック顔料は、次のような特性を有するものが好ましい。一次粒子径が15nm以上、40nm以下、BET法による比表面積が50m2/g以上、400m2/g以下、DBP吸油量が40mL/100g以上、200mL/100g以下、揮発分が0.5質量%以上、10質量%以下の特性である。
【0015】
カラーインクに使用される顔料としては、有機顔料が好適である。具体的には、以下の各顔料を挙げることができる。トルイジンレッド、トルイジンマルーン、ハンザイエロー、ベンジジンイエロー、ピラゾロンレッド等の不溶性アゾ顔料。リトールレッド、ヘリオボルドー、ピグメントスカーレット、パーマネントレッド2B等の水溶性アゾ顔料。アリザリン、インダントロン、チオインジゴマルーン等の建染染料からの誘導体。フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン等のフタロシアニン系顔料。キナクリドンレッド、キナクリドンマゼンタ等のキナクリドン系顔料。ペリレンレッド、ペリレンスカーレット等のペリレン系顔料。イソインドリノンイエロー、イソインドリノンオレンジ等のイソインドリノン系顔料。ベンズイミダゾロンイエロー、ベンズイミダゾロンオレンジ、ベンズイミダゾロンレッド等のイミダゾロン系顔料。ピランスロンレッド、ピランスロンオレンジ等のピランスロン系顔料。チオインジゴ系顔料。縮合アゾ系顔料。チオインジゴ系顔料。ジケトピロロピロール系顔料。フラバンスロンイエロー、アシルアミドイエロー、キノフタロンイエロー、ニッケルアゾイエロー、銅アゾメチンイエロー、ペリノンオレンジ、アンスロンオレンジ、ジアンスラキノニルレッド、ジオキサジンバイオレット等の顔料を挙げることができる。
【0016】
以上の顔料を原料とし、水溶性の親水性基を導入して自己分散顔料とすることができる。この場合に親水性基は顔料の表面に直接結合させることができる。あるいは、他の原子団を顔料表面と親水性基との間に介在させ、親水性基を顔料表面に間接的に結合させてもよい。このような水溶性の親水性基としては、例えば、カルボキシル基、スルホン基、ホスホン基、ヒドロキシル基などが挙げられる。
【0017】
(水溶性化合物)
本発明で用いる水性インクは、水を必須成分とする。水性インク中の水の含有量は、インク全質量に対して、10質量%以上であることが好ましい。また、80質量%以下であることがさらに好ましい。さらに、水と水溶性化合物を併用して水性媒体とすることが好ましい。この水溶性化合物とは、20質量%濃度の水との混合液で水と相分離せずに混ざり合う、親水性の高いものをいう。さらに、固液分離や目詰まり防止への点から蒸発しやすいものは好ましくなく、20℃での蒸気圧が0.04mmHg以下の物質が好ましい。
【0018】
本発明に用いられる水性インクは、表面張力が40mN/m以上、粘度が15mPa・s以上である。水溶性化合物は、水性インクにおけるこれらの物性値を上記の範囲に調整するのに適したものであることが好ましい。このような水溶性化合物としては特に限定されるものではないが、1,2−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,3−ブタンジオール、1,2−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2,4−ペンタンジオール、1,7−へプタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、トリメチロールプロパン、尿素、エチレン尿素、1,2,6−ヘキサントリオール、1,2,3−ブタントリオール、ソルビトール、ジエチレングリコール、1,2,4−ブタントリオール、グリセリン、ジグリセリン、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール200、ポリエチレングリコール600などが挙げられる。
【0019】
水溶性化合物を用いてインクの表面張力を制御する場合は、以下の理由から、ヘキサンジオールの異性体である1,2−ヘキサンジオールと1,6−ヘキサンジオールを併用した混合液を用いることが好ましい。すなわち、水に水溶性化合物を混合して表面張力を制御する際、混合比率に応じて粘度も変化してしまい、表面張力のみの制御が困難である。一方で、1,2−ヘキサンジオールと1,6−ヘキサンジオールの混合液の粘度は両者の比率によらず一定であるが、表面張力は両者の比率によって変化する。このため、両者の比率を変化させることにより、混合液の粘度を一定にしたまま表面張力を連続的に変化させることができ、表面張力の制御方法として好適である。
【0020】
また、水溶性化合物を用いてインクの粘度を制御する場合は、以下の理由から、グリセリンを用いることが好ましい。すなわち、水に水溶性化合物を混合して粘度を調整する際、混合比率に応じて表面張力も変化し、粘度のみの制御が困難である。また、水溶性化合物には表面張力が低いものが多く、粘度を調整するために水に混合すると混合液の表面張力が著しく低下する場合が多い。例えば1,2−ヘキサンジオールを粘度調整のために利用した場合、水にわずか10質量%添加するだけで、混合液の表面張力は72mN/mから27mN/mまで大きく低下するため、高い表面張力を有する混合液を調製することが困難である。一方、グリセリンの表面張力は63mN/mと高く、水の表面張力72mN/mに近いため、水にグリセリンを加えた混合液は高い表面張力を維持することができる。このため、本発明のように比較的高い表面張力を有するインクを調製する場合に好適に用いられる。
【0021】
水性インク中の水溶性化合物の含有量は、インク全質量に対して10質量%以上であることが好ましい。また、90質量%以下であることがさらに好ましい。
【0022】
(その他の添加剤)
また、本発明で用いる水性インクは、所望の物性値とするために、上記した成分の他に必要に応じて、粘度調整剤、消泡剤、防腐剤、防カビ剤、酸化防止剤、浸透剤等を添加剤として添加することができる。
【0023】
<印字プロセス>
本発明のインクジェット画像形成方法は、塗工層を有する印刷用紙に高速で画像を形成可能な、インクジェット記録方式による印字プロセスである。そして本発明のインクジェット画像形成方法によれば、解像度が600dpi以上、4800dpi以下という高画質の画像を形成することができる。以下に本発明のインクジェット画像形成方法を達成できる記録装置、吐出条件、インク物性について例示的に説明する。
【0024】
(インクジェット記録装置)
本発明においては、水性インクを記録メディアに付与するに際して、インクジェット記録装置を用いることができる。インクジェット記録装置に用いられる記録ヘッドのインク吐出方式は特に制限されるものではない。インク吐出方式としては、ポンプまたは流路内に設けた圧電素子の変形でインクに圧力を加えて吐出させる方式、インクに熱エネルギーを与えて気泡を発生させる方式、インクを帯電させその静電吸引力を利用する静電吸引方式などを挙げることができる。また、高速印刷の観点から、単位時間当たりに記録できるドット数が多い方が有利である。このため、記録ヘッドとして、複数のノズルを有するマルチノズルヘッドを備えたインクジェット記録装置を用いることが好ましい。また、紙送り速度は50m/s以上であることが本発明の機能を発現する上で好ましい。
【0025】
(液滴サイズ)
印刷ではポイント数のより小さい小文字へ対応することが求められており、4pt以下の小文字へ対応するために、液滴サイズは50pL以下とすることが好ましく、40pL以下とすることがさらに好ましい。また、前述の通り、高速印刷の観点から、紙送り速度は50m/s以上であることが好ましいが、紙送り速度が50m/s以上になると、塗工層を有する印刷用紙に限らず記録メディアの上に気流が発生してしまう。吐出したインク液滴サイズが小さすぎるとこの気流の影響で着弾精度が悪化するため、着弾精度向上の観点から、液滴サイズは2pL以上であることが好ましく、4pL以上であることがさらに好ましい。
【0026】
(吐出速度)
高速印刷へ対応するためには、着弾精度の観点から高速のインク吐出速度が要求されており、本発明のインクジェット画像形成方法では吐出速度15m/s以上である。吐出速度は速い方が着弾精度が向上するため好ましいが、30m/sを超えると着弾したインク滴がはじかれてしまい、記録メディアである塗工層を有する印刷用紙に定着できなくなる。このため、本発明のインクジェット画像形成方法では吐出速度15m/s以上、30m/s以下である。
【0027】
(インクの表面張力)
本発明で使用する水性インクの25℃における表面張力は、40mN/m以上である。塗工層を有する印刷用紙を記録メディアに用いる場合、これよりも表面張力が低いと下記式(A)で定義されるにじみ率が220%を超えるため画像の粒状性の悪化を招き、また小ポイント化対応が困難になるので好ましくない。特にインク液滴サイズが4pL以上となるインクジェット記録装置を用いる場合、画像の粒状性の向上および小ポイント化対応の観点から、にじみ率を低く抑える必要があるので水性インクの表面張力を40mN/m以上とすることが必須となる。
【0028】

【0029】
(インクの粘度)
本発明のインクジェット画像形成方法で用いる水性インクの25℃における粘度は、15mPa・s以上である。前述の通り、高速印刷の観点から、本発明のインクジェット画像形成方法では吐出速度15m/s以上である。この場合、水性インクの粘度が15mPa・sより小さいと、インクが記録メディアに着弾する時のエネルギーにより、インク液滴が記録メディアである塗工層を有する印刷用紙上で拡がりやすいため、にじみ率が大きくなり、画像の粒状性が低下する。また、水性インクの粘度が15mPa・s以上であれば、吐出速度が変わってもドット径の変化が小さい。このため、15m/s以上、30m/s以下の範囲で吐出速度がばらついた場合も、ドット径および上記で示されるにじみ率がほぼ一定となるので、ドットの均一性の観点からも好ましい。マルチノズルヘッドを用いる場合、特に吐出速度がばらつくことが多いため、水性インクの粘度が15mPa・s以上であるとより好ましい。
【0030】
<記録メディア>
本発明で用いる記録メディアは、主にオフセット印刷、グラビア印刷等に用いられる塗工層を有する印刷用紙である。
【0031】
塗工層とは、紙の表面の美感や平滑さを高め、あるいは印刷適性を高める為に、上質紙または中質紙の表面および/または裏面に塗布された塗料の層、または抄紙時に表層に形成された塗料の層をいう。一般に、塗料は水に分散させた顔料に、接着剤や助剤を加えて調製される。
【0032】
経済産業省の「工業調査統計」や日本製紙連合会「紙・板紙統計年報」の「紙・板紙の品種分類表」によると、塗工層を有する印刷用紙は「印刷・情報用紙」の中の塗工印刷用紙または微塗工印刷用紙に分類される。塗工印刷用紙と微塗工印刷用紙とは、塗工層を形成する塗料の質量によって区別され、前者は、原紙の表面に1m2当たり両面で15g前後から40g前後の塗料を塗布されたもの、後者は、1m2当たり12g以下の塗料を塗布されたものである。さらに塗工印刷用紙は、塗料の塗布量や塗布後の表面処理の方法等で、アート紙、コート紙、軽量コート紙、その他塗工紙(キャストコート紙、エンボス紙)等に分類される。また表面の光沢感の違いで、グロス系、マット系、ダル系などに分類されることもある。本発明は、これら塗工層を有する印刷用紙すべてを対象とする。
【0033】
具体的な塗工印刷用紙は特に限定されるものではないが、以下の商品名の紙が挙げられる。
アート紙としては、OKウルトラアクアサテン、OK金藤、SA金藤、サテン金藤(以上、王子製紙製)、ハイパーピレーヌ、シルバーダイア(以上、日本製紙製)、グリーンユトリロ(以上、大王製紙製)、パールコート、ニューVマット(以上、三菱製紙製)、雷鳥スーパーアート(中越パルプ製)、ハイマッキンレー(五條製紙製)等を挙げることができる。
【0034】
コート紙としては、OKトップコート、OKトップコートダル、OKトップコートマット、OKトリニティ、OKカサブランカ(以上、王子製紙製)、オーロラコート、シルバーダイア、しらおいマット(以上、日本製紙製)、グリーンユトリロ(以上、大王製紙製)、パールコート、ニューVマット(以上、三菱製紙製)等を挙げることができる。
【0035】
軽量コート紙としては、OKコートL(以上、王子製紙製)、オーロラL、イースターDX、ペガサス(以上、日本製紙製)、ユトリロコートL(以上、大王製紙製)、パールコートL(以上、三菱製紙製)、スーパーエミネ(中越パルプ製)、ドリームコート(丸住製紙製)等を挙げることができる。
【0036】
その他(キャストコート紙等)としては、ミラーコートプラチナ、OKクローム(以上、王子製紙製)、エスプリコート(以上、日本製紙製)、ピカソコート(以上、大王製紙製)等を挙げることができる。
【0037】
微塗工印刷用紙としては、OKエバーライト、OKクリスタル、OKプラナスホワイト(以上、王子製紙製)、ピレーヌDX、オーロラS(以上、日本製紙製)等を挙げることができる。
【実施例】
【0038】
本発明を実施例を挙げて説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、以下の記載で「部」および「%」とあるものは、特に断りのない限り質量基準である。また、水性インクの表面張力は、協和界面科学製の全自動表面張力計(商品名「CBVP−Z」)を使用して測定した。水性インクの粘度は、東機産業製の粘度計(商品名「RE80型粘度計」)を使用して測定した。特に断りのない限り、水性インクの表面張力および粘度は25℃にて測定した。本実施例においては、自己分散顔料として、下記の方法で製造した自己分散顔料Aを用いた。
【0039】
<自己分散顔料Aの製造>
比表面積が220m2/gでDBP吸油量が160mL/100gのカーボンブラック500gを、イオン交換水3750gに加え、攪拌しながら50℃まで昇温した。その後0.5mmのジルコニアビーズを用いたビーズミルにより、粉砕しながら次亜塩素酸ナトリウム水溶液(有効塩素濃度12%)4500gを50℃で3時間かけて滴下した。その後30分間粉砕し、自己分散カーボンブラックが含まれている反応液を得た。得られた反応液を400メッシュの網に通してろ過することで、粉砕に用いたビーズミル用ビーズ及び未反応のカーボンブラックを除去した。その後、水酸化ナトリウム水溶液で中和し、限外ろ過装置で電導度が1.5mS/cmになるまで脱塩した。自己分散カーボンブラックの濃度が10%となるように調整後、プレフィルターおよびポアサイズ1μmフィルターの併用系でろ過して自己分散顔料Aを得た。
【0040】
次に、実施例および比較例で用いた水性インク(インク1〜インク4)の調製例について説明する。自己分散顔料には上記製造法で製造した自己分散顔料Aを用いた。水はイオン交換水を用いた。
【0041】
<インク1の調製>
以下の全構成成分を合計100部とし、2時間混合後、ポアサイズ2.5μmのフィルターを用いてろ過して、インク1を得た。得られたインク1の表面張力は50.0mN/m、粘度は40.0mPa・sであった。
・自己分散顔料A:1部
・グリセリン:75.6部
・1,2−ヘキサンジオール:0.4部
・1,6−ヘキサンジオール:2.6部
・水:残部
【0042】
<インク2の調製>
以下の全構成成分を合計100部とし、2時間混合後、ポアサイズ2.5μmのフィルターを用いてろ過して、インク2を得た。得られたインク2の表面張力は40.0mN/m、粘度は40.0mPa・sであった。
・自己分散顔料A:1部
・グリセリン:75.6部
・1,2−ヘキサンジオール:2.6部
・1,6−ヘキサンジオール:0.4部
・水:残部
【0043】
<インク3の調製>
以下の全構成成分を合計100部とし、2時間混合後、ポアサイズ2.5μmのフィルターを用いてろ過して、インク3を得た。得られたインク3の表面張力は50.0mN/m、粘度は20.0mPa・sであった。
・自己分散顔料A:1部
・グリセリン:67.9部
・1,2−ヘキサンジオール:0.4部
・1,6−ヘキサンジオール:2.6部
・水:残部
【0044】
<インク4の調製>
以下の全構成成分を合計100部とし、2時間混合後、ポアサイズ2.5μmのフィルターを用いてろ過して、インク4を得た。得られたインク4の表面張力は30.0mN/m、粘度は40.0mPa・sであった。
・自己分散顔料A:1部
・グリセリン:68.5部
・1,2−ヘキサンジオール:10.0部
・水:残部
【0045】
(実施例1〜5および比較例1)
インク1〜4を用いて、以下に示す条件で画像形成および評価を行った。
【0046】
<画像形成>
(インクジェット記録装置)
マイクロジェット製の記録ヘッド(商品名「IJHAヘッド」)を使用した。
【0047】
(吐出条件)
以下の吐出量および吐出速度で行った。
・吐出量:10pL
・吐出速度:15〜26m/s
【0048】
(記録メディア)
OKトップコート(王子製紙製)を用いた。
【0049】
<にじみ率測定>
着弾前のインク液滴を球形と仮定し、吐出量から液滴直径を算出した。また、画像形成後のドット径を実測し、以下の式(A)からにじみ率を求めた。
【0050】

【0051】
表1に示す条件で形成した画像についてにじみ率を測定した。測定結果を表1に示す。
【0052】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
色材を含有する水性インクをインクジェット記録方式で記録メディアへ付与して画像を形成するインクジェット画像形成方法であって、
前記水性インクは25℃における表面張力が40mN/m以上、25℃における粘度が15mPa・s以上であり、前記記録メディアは塗工層を有する印刷用紙であり、前記水性インクを前記記録メディアに吐出速度15m/s以上、30m/s以下で付与することを特徴とするインクジェット画像形成方法。
【請求項2】
マルチノズルヘッドを備えたインクジェット記録装置を用いて、前記水性インクを記録メディアへ付与する請求項1に記載のインクジェット画像形成方法。
【請求項3】
紙送り速度が50m/s以上である請求項1または2に記載のインクジェット画像形成方法。
【請求項4】
前記画像の解像度が600dpi以上、4800dpi以下である請求項1〜3のいずれか1項に記載のインクジェット画像形成方法。

【公開番号】特開2013−59989(P2013−59989A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−201629(P2011−201629)
【出願日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】