説明

インクジェット記録システムおよびインクジェット記録方法

【課題】インク種や吐出頻度に伴ってノズル内の色材濃度が様々に変化する場合であっても、インクごとあるいは階調ごとに適切な補正を行うことにより、画像弊害を抑えることが可能なインクジェット記録システムを提供する。
【解決手段】ラスタデータにおける濃度データの配列から、各画素における濃度変動値Dを想定しこれに応じた濃度補正LUTを設定する。これにより、インク種や吐出頻度に伴ってノズル内の色材濃度が変化する状況においても、インクごとあるいは階調に応じて適切な濃度補正を行うことが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は記録ヘッドからインクを吐出して記録媒体に画像を形成するインクジェット記録装置に関する。特に、記録ヘッドの吐出口近傍に滞留するインクの濃度変化に伴う画像弊害を緩和するための処理に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録装置では、暫くインクの吐出が行われないノズルが存在すると、当該ノズルに滞留しているインクの揮発成分が蒸発し、色材濃度が変化する。そして、そのままの状態で記録を行うと、出力された画像において、所望の濃度や発色が得られなかったり濃度むらが発生したりする。
【0003】
多くのインクジェット記録装置では、このような現象を抑制するために、適切なタイミングで画像とは無関係な吐出いわゆる予備吐出を行なって、常に新しく供給されたインクで画像を記録するようにしている。通常、予備吐出は、記録装置内の記録媒体から外れた箇所で行われる。例えばシリアル型のインクジェット記録装置では、記録ヘッドの移動可能な領域のうち、記録媒体が通過しない左右端部に予備吐受けを設け、各ページの記録前や、各記録走査の度に予備吐出を行うことが出来るようになっている。このような構成であれば、前回の記録走査でインクが吐出されなくても、次の記録走査では所望の色材濃度を有するインクで画像を記録することが出来る。
【0004】
しかしながら、例えばA3サイズのような比較的幅広の用紙に記録する場合、1回の記録走査で記録ヘッドが移動する距離も長くなり、走査の途中でインクの蒸発すなわち色材濃度の上昇が進んでしまうことがある。これに対応するため、例えば特許文献1や特許文献2には、記録媒体上であっても、画像データとは無関係な吐出(紙面予備吐)を行う構成が開示されている。しかし、紙面予備吐を行った場合、画像とは無関係なドットが画像中に記録されるので、ユーザにとって違和感のある色味やドットが確認されるおそれがある。
【0005】
一方、特許文献3には、個々のノズルの吐出頻度に応じてインクの色材濃度を予測し、予測された色材濃度に基づいて記録前の画像データを補正する方法が開示されている。特許文献3の方法であれば、想定される色材濃度に応じて画像データが処理されるので、画像とは無関係なドットが紙面に記録されることもなく、所望の濃度や発色を表現することが出来る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−144599号公報
【特許文献2】特開2004−025627号公報
【特許文献3】特開2005−1352号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、本発明者らの鋭意検討によれば、ノズル内における色材濃度の変化はインクの種類によって様々であり、吐出頻度が少ないほど色材濃度が上昇するインクもあれば、逆に下降するインクもあった。特に顔料を色材とする顔料インクでは、ノズル内の誘電率勾配によって色材濃度が影響を受けることが確認された。具体的には、例えば誘電率勾配が小さいインクでは、濃縮されたインクはそのまま吐出口近傍に滞留しやすいため、蒸発口となる吐出口に近いインクほど濃縮度が増し、1ドット目のインクの色材濃度が通常より高くなりやすい。これに対し、誘電率勾配が大きいインクでは、濃縮されたインクが吐出方向と逆の方向に移動する傾向があり、吐出口に近いインクはこれに続くインクよりもの濃縮度が低くなる。つまり、最初に色材濃度が低いインクが吐出され、これに続いて色材濃度が高いインクが吐出される。更に、インクの溶剤によって揮発性の程度も様々であり、揮発性の低いインクでは吐出頻度が少なくてもノズル内の色材濃度は安定し、濃度変動は起こりにくい。
【0008】
このように、ノズル内における色材濃度の変化はインクの種類に応じて様々であるのに対し、特許文献3の方法は、吐出頻度が少ないほど色材濃度が上昇する場合についてのみ一様に対応している。よって、吐出頻度が少ないほど最初の色材濃度が下降するインクや、揮発性の低いインク、更にこれら様々なインクを併用する記録システムにおいて、夫々のインクで最適に濃度が調整された記録を行うことは困難であった。加えて、本発明者らの検討によれば、このようなインクの濃度変動が画像に影響する程度は、画像の階調によっても異なることが確認された。しかし、特許文献3では画像や階調に応じた濃度変動には着目しておらず、低階調から高階調までを含む様々な画像において、適切な補正を行うことが出来なかった。
【0009】
本発明は上記問題点を解決するためになされたものである。よって、その目的とするところは、インク種や吐出頻度に伴ってノズル内の色材濃度が様々に変化する場合であっても、インクごとあるいは階調ごとに適切な補正を行うことにより、画像弊害を抑えることが可能なインクジェット記録システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
そのために本発明は、インクを吐出する複数のノズルを備えた記録ヘッドを、記録媒体に対して走査することにより、前記記録媒体に画像を記録するインクジェット記録システムにおいて、個々の画素に対応する画像データを取得する手段と、前記記録ヘッドの所定のノズルが記録するべき画素が有する画像データの前記走査の方向における配列から、前記所定のノズルが着目画素を記録する際のノズル内の色材濃度を示す濃度変動量を決定する決定手段と、前記濃度変動量に基づいて前記着目画素が有する画像データを変換して補正データを生成する変換手段と、前記記録ヘッドの走査中に、前記所定のノズルによって前記補正データに従った前記着目画素の記録を行う手段とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、インク種や吐出頻度に伴ってノズル内の色材濃度が変化する状況においても、インクごとあるいは階調に応じて適切な補正を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に使用可能なインクジェット記録システムの構成を示すブロック図である。
【図2】プリンタにおける記録部の概略斜視図である。
【図3】プリンタの制御構成を示すブロック図である。
【図4】ホスト装置およびプリンタで実行する画像処理の構成を示すブロック図である。
【図5】制御部が濃度補正処理で実行する処理工程を説明するフローチャートである。
【図6】濃度変動量を取得するために参照するLUTの具体的な内容を示す図である。
【図7】個々の画素に対する濃度データの変換工程を説明するフローチャートである。
【図8】濃度補正LUTを取得するために参照するテーブルを示す図である。
【図9】濃度補正LUTを示す図である。
【図10】濃度補正処理で実行されるデータ変換の様子を説明する図である。
【図11】双方向記録時に実行されるデータ変換の様子を説明する図である。
【図12】実施例2において制御部が実行する処理工程を説明するフローチャートである。
【図13】実施例2において濃度変動量を取得するために参照するLUTを示す図である。
【図14】実施例2の濃度補正処理で実行されるデータ変換の様子を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。
【実施例1】
【0014】
図1は、本発明に使用可能なインクジェット記録システムの構成を示すブロック図である。図において、情報処理装置としてのホスト装置100は、パーソナルコンピュータやデジタルカメラなど、インクジェット記録装置であるプリンタ200に接続される。ホスト装置100は、CPU10と、メモリ11と、記憶部13と、キーボードやマウス等の入力部12と、プリンタ200との間の通信のためのインタフェース14とを備えている。CPU10は、メモリ11に格納されたプログラムに従い、種々の処理を実行する。これらのプログラムは、予め記憶部13に記憶されていてもよいが、CD−ROMなどの外部装置から外部記憶部13に供給された後、メモリ11に展開されてもよい。ホスト装置100は表示装置としてのディスプレイ300と接続されており、ディスプレイ300は、メモリ11や記憶部13の状態、あるいはキーボードやマウス等の入力部12からの操作結果を表示する。また、ホスト装置100は、インタフェース14を介してプリンタ200とも接続されており、プリンタ200が記録するべき画像データや、当該画像データを処理するためのパラメータやテーブルを送信する。
【0015】
プリンタ200は、送信された画像処理情報を基に、特に後述の色処理、2値化処理等の画像処理や、本実施形態に関する記録特性の補正処理を実行する。また、画像処理を施した後の記録データに基づいて記録媒体に記録を行うことができる。
【0016】
図2は、上述したプリンタ200における記録部の概略斜視図である。記録前、不図示のカセット等に積層されている記録媒体1は、ホスト100より記録コマンドが入力されると、不図示の給紙ローラによって1枚ずつ分離されて記録部に供給される。給紙された記録媒体は、一定間隔を隔てて配置される第1搬送ローラ対3および第2搬送ローラ対4によって挟持され、記録ヘッド5による1行分の記録走査が終了したタイミングで矢印A方向(搬送方向、副走査方向とも称する)に所定量ずつ搬送される。第1搬送ローラ対3は、ステッピングモータによって駆動される駆動ローラと駆動ローラの回転にともなって回転する従動ローラからなり、第2搬送ローラ対4も同様の構成である。なお、ここでは、カセット等に積層された定型の記録媒体を例に説明するが、本実施例のプリンタ200は、ロール状に収納された長尺の記録媒体に対し、記録することも可能である。
【0017】
記録ヘッド5は、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色のインクを吐出して記録を行うインクジェット方式の記録ヘッドである。記録ヘッド5は、互いに異なる色のインクを吐出する複数の記録ヘッド(5a〜5d)の集合体として形成されている。個々の記録ヘッド(5a〜5d)には、同色のインクを吐出するノズルが所定のピッチで配列されている。
【0018】
記録ヘッド5には不図示のインクカートリッジからインクが供給され、供給されたインクは、個々のノズルの吐出口近傍まで誘導される。ノズル内には電気熱変換素子(ヒータ)が設けられており、吐出信号に応じて電圧パルスが印加される。すると、電気熱変換素子が発生する熱エネルギによって、これに接触するノズル内のインクに気泡が生じ、この気泡の圧力によってインクが吐出口から吐出される仕組みになっている。
【0019】
記録ヘッド5が搭載されているキャリッジ6には、ベルト7及びプーリ8a、8bを介してキャリッジモータ2の駆動力が伝達される。これにより、キャリッジ6はガイドシャフト9に沿ってB方向に往復走査が可能になっている。キャリッジ6の走査中に記録ヘッド5から記録データに従った吐出動作を行うことにより、記録媒体に対し1回分の記録走査が行われる。
【0020】
記録ヘッド5の走査可能領域のうち記録領域の外には吐出回復装置18が設置されている。吐出回復装置18は、記録ヘッドの吐出口にキャップを押し当てて吐出口から強制的にインクを吸引したり、吐出口からの予備吐出を受容したりする。このような吸引回復動作や予備吐出動作を行うことにより、吐出口近傍にある濃縮されたインクやごみ等が除去され、個々のノズルの吐出状態を正常な状態に回復することが出来る。図では、走査可能領域の片側にのみ吐出回復装置18を配備したが、もう一方の側にも予備吐出を受容するための機構を設けても良い。
【0021】
図3は、プリンタ200の制御構成を示すブロック図である。制御部20は、マイクロプロセッサ等のCPU20a、ROM20c及びRAM20b等をメモリとして備えている。ROM20cは、CPU20aの制御プログラムや記録動作に必要なパラメータなどの各種データを格納している。本発明の特徴的な制御のために使用するルックアップテーブル(LUT)などもROM20cに格納されている。RAM20bは、CPU20aのワークエリアとして使用されると共に、ホスト装置から受信した画像データや生成した記録データなどの各種データを一時的に保管する。
【0022】
制御部20は、インタフェース21を介してホスト装置100と接続され、ホスト装置100から画像データやパラメータを受信したり、操作パネル22を介してユーザから指示された情報(例えば文字ピッチ、文字種類等)をホスト装置100に送信したりする。また、制御部20は、各種モータ23〜26を駆動させるためのON、OFF信号を、インタフェース21を介してドライバ27に出力する。ドライバ27は、CPU20aからの指示に従って、キャリッジ駆動用のモータ23、給紙ローラ駆動用のモータ24、第1搬送ローラ対駆動用のモータ25、第2搬送ローラ対駆動用のモータ26をそれぞれ駆動する。さらに、制御部20は、吐出信号をヘッドドライバ28に出力し、記録ヘッド5におけるインク吐出のための駆動を制御する。
【0023】
図4は、本実施例のホスト装置100およびプリンタ200で実行する画像処理の構成を示すブロック図である。これら一連の処理は、ホスト装置100ではCPU10が、プリンタ200では制御部20が夫々実行する。
【0024】
本実施例の画像処理では、レッド(R)、グリーン(G)、ブルー(B)の各8ビット(それぞれ256階調)の画像データ(輝度データ)を、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)およびブラック(K)の1ビット(2階調)の記録データに変換する。なお、色の種類や階調(ビット数)についてはこれに限定されるものではない。
【0025】
ホスト装置100では、3次元のLUTを用いて、8ビットデータ(R、G、B)を、やはり8ビットデータの(R´G´B´)に変換する色空間変換処理401を行う。色空間変換処理401は、モニターで表現される色空間をプリンタで表現可能な色空間に対応づけるための処理である。オフセット印刷機などの印刷結果をシミュレートするシステムのように、入力される画像データが元々(C、M、Y、K)である場合には、入力された(C、M、Y、K)をプリンタで表現可能な色空間に対応づけて(C´M´Y´K´)に変換すればよい。
【0026】
色空間変換処理401が施された後の(R´G´B´)は、プリンタ200に送信され、最初に色変換処理402が施される。色変換処理402では、3次元のLUTが参照されることにより、8ビットデータの(R´G´B´)が、プリンタが使用するインク色に対応した8ビットデータ(C、M、Y、K)に変換される。
【0027】
更に、色変換処理402から出力された8ビットデータ(C、M、Y、K)は、出力γ処理403において、インク色ごとに1次元のLUTが参照され、8ビットデータ(C´M´Y´K´)に変換される。通常、記録媒体の単位面積当たりに記録されるドットの数と記録された画像の濃度は、線形関係にはない。出力γ処理では、両者の線形関係を成立させるために、入力信号に対する補正を行っている。
【0028】
出力γ補正403が施された8ビットデータ(C´M´Y´K´)は、濃度補正処理404によって更なる補正処理が施され、8ビットデータ(C″M″Y″K″)の補正データに変換される。濃度補正処理404においても、濃度補正処理用の様々なLUTが予め用意されており、これを参照することによって処理が行われる。濃度補正処理用のLUTおよび具体的な処理については、後述する。
【0029】
濃度補正処理404から出力された8ビットの補正データ(C″M″Y″K″)は、量子化処理405が施され、各色1ビットデータ(2値)に変換される。量子化処理の方法としては、誤差拡散処理法やディザ法を用いることも出来るが、多値量子化処理を行った後にインデックスパターンを用いて2値化処理を行っても良い。
【0030】
量子化処理405から出力された2値データは、その後パス分解ノズル列分配処理406が施され、夫々の2値データが、いずれのノズルによっていずれの記録走査で記録されるかが決定される。
【0031】
以下、濃度補正処理404の具体的な処理内容について説明する。出力γ処理403から出力されたデータに従って記録を行った場合、個々のノズルのインク濃度が正常であれば、入力データに対し線形性を有する出力濃度を得ることが出来る。しかし、吐出頻度が少ないノズルが存在し、ノズル内における色材濃度が変化している場合には、上記線形性は得られなくなる。そして、色材濃度の変化の程度ひいては吐出されたドットによって記録される画像濃度は、ノズルの吐出頻度のみならず、インクの種類や表現しようとする画像濃度に依存する。
【0032】
よって、本実施例の濃度補正処理404では、記録された画像が目標の濃度に一致するように、個々のノズルの吐出履歴、インクの種類、および入力画像データに応じて入力データを補正し、補正データとして出力する。そして、そのためのテーブルが予め用意されている。
【0033】
図5は、制御部20が濃度補正処理404で実行する処理工程を説明するためのフローチャートである。出力γ補正処理404から出力される8ビットデータ(C´M´Y´K´)は、プリンタの記録解像度に対応しており、1つのノズルが1回の走査で記録するデータの単位すなわちラスタ単位で管理されている。本実施例の濃度補正処理404は、夫々のラスタデータに対し、図5のフローチャートで示す処理を実行する。以後、本処理では、出力γ補正処理404から出力される8ビットデータ(C´M´Y´K´)を濃度データと称し、ここではブラックの濃度データ(K´)が格納されたラスタデータに対する処理について説明する。
【0034】
本処理では、ラスタデータ内の着目画素の位置を示すX、着目画素までに濃度データが0である画素の数を示すW、着目画素までに濃度データが0でない画素の数を示すC、着目画素を記録する際のノズルの濃度変動量D、の4つのパラメータが用いられている。処理が進むにつれ、着目画素の位置Xは記録ヘッドの走査方向に1つずつずれていく。
【0035】
本処理が開始されると、まず制御部20は、ステップS1000において初期設定(X=0、W=0、C=0)を行う。
【0036】
ステップS1001では着目画素の濃度データ(K´)を取得する。
【0037】
ステップS1002では、着目画素のデータに応じて、パラメータWおよびCを書き換え、ステップS1003では新たなWおよびCに基づいて着目画素の濃度変動量Dを取得する。具体的には、着目画素の濃度データが0である場合にはW=W+1、C=Cとし、着目画素の濃度データが0でない場合にはW=W、C=C+1とする。そして、予め用意されたルックアップテーブル(LUT)を参照することにより、WおよびCの組み合わせに対応した濃度変動量Dを取得する。
【0038】
図6は、ステップS1003で参照するLUTの具体的な内容を示す図である。本実施例において、濃度変動量Dとは、WとCの条件で吐出されるインクの濃度が通常の濃度に対しどの程度変動しているか(濃くなっているか、或は薄くなっているか)を示すパラメータである。このような濃度の変動量はインクの種類によって異なる特徴を有しているので、本実施例では4つのインク夫々についてLUTが用意されている。表において、0は一般的なインク濃度であることを示している。正の値は通常よりも濃いインク濃度、負の値は通常よりも薄いインク濃度であることを示している。例えば、シアンインクではWの値が大きくCの値が小さいほど、濃度変動量Dは高い値になっている。反対にマゼンタインクでは、Wの値が大きくCの値が小さいほど、濃度変動量Dは低い値になっている。Yインクでは、WやCの値によらず濃度変動量Dは一律0になっている。また、ブラックインクでは、Cの値に応じて、Wの値が大きいほど濃度変動量Dが高くなったり低くなったりしている。このように、WとCの組み合わせに対する濃度変動量Dの関係は、インクの種類によって傾向が異なっている。但し、ここに示すW、C及び濃度変動量の関係は一例であり、記載されるべき数値はこの限りではない。また、このような濃度変動量設定TBLは、吸引動作や予備吐出などのメンテナンス処理が行われた状態と、通常の状態とで別々に用意することも出来る。
【0039】
図5のフローチャートに戻る。ステップS1003で濃度変動量Dが取得されると、ステップS1004へ進み、現在の着目画素がラスタデータの最後の画素であるか否かを判断する。最後の画素である場合は本処理を終了する。最後の画素でない場合はステップS1005に進む。
【0040】
ステップS1005では、着目画素の濃度データが0であるか否かを判断する。0である場合ステップS1008へ進み、Xをインクリメントすることによって着目画素を主走査方向に1画素分ずらし、再びステップS1001へ戻る。一方、着目画素の濃度データが0でない場合はステップS1006へ進む。
【0041】
ステップS1006では、ステップS1003で取得した濃度変動量Dが0であるか否かを判断する。濃度変動量Dが0でない場合、ステップS1008でXをインクリメントした後、ステップS1001へ戻る。一方、濃度変動量Dが0である場合、ステップS1007へ進み、WおよびCの値をリセット(W=0、C=0)する。
【0042】
以上説明したフローチャートによれば、着目画素の濃度データが0である或は着目画素の濃度変動量Dが0ではない場合は、これまでのWやCの値に応じてインク濃度が変化しているおそれがあるので、WおよびCの値を維持する。つまり、次の着目画素の濃度変動量Dを定めるに当たって、これまでのWおよびCの値を反映させる。しかし、着目画素の濃度データが0でなく且つ着目画素の濃度変動量Dが0である場合は、インク濃度が十分に正常であることが予測できるので、次の着目画素の濃度変動量Dを定めるに当たってこれまでのWおよびCの値を反映させる必要がない。よって、これらをリセットする。以上のようにして、ラスタデータに格納された各画素の濃度変動量Dが取得される。制御部20は、図5のフローチャートに従った処理を、全ラスタ全インク色に対して実行することにより、全インク色全画素に対する濃度変動量Dを取得する。
【0043】
図7は、制御部20が実行する、個々の画素に対する濃度データの変換工程を説明するフローチャートである。ステップS2001において、制御部20は、予め用意されたテーブルを参照することにより、着目画素に対応した濃度補正LUTを選択する。
【0044】
図8は、ステップS2001で制御部20が参照するテーブルを示す図である。濃度変動量Dに対し濃度補正LUTが1対1で対応づけられている。
【0045】
着目画素に対する濃度補正LUTが設定されると、ステップS2002に進み、制御部20は、設定された濃度補正LUTを用いて着目画素の8ビットデータ(C´M´Y´K´)を同じく8ビットデータ(C″M″Y″K″)に変換する。
【0046】
図9は、ステップS2002において制御部20が参照する複数の濃度補正LUTを示す図である。横軸は出力γ処理403から出力される8ビットの濃度データ(C´M´Y´K´)を示し、縦軸は濃度補正処理404から出力する8ビットの補正データ(C″M″Y″K″)を示している。複数の曲線は、図8で示した11個の濃度補正LUT(γ5〜γ―5)に対応している。図において、濃度補正LUT(γ0)は、濃度変動量Dが0の場合に選択される濃度補正LUTであり、入力信号と出力信号が等しくなっている。濃度補正LUT(γ5〜γ1)は、濃度変動量Dが正の値の場合に選択される濃度補正LUTであり、入力信号よりも出力信号が大きくなっている。逆に、濃度補正LUT(γ−1〜γ−5)は、濃度変動量Dが負の値の場合に選択される濃度補正LUTであり、入力信号よりも出力信号が小さくなっている。濃度補正LUT(γ0)以外の濃度補正LUTは、曲線形状を呈しており、濃度データの値すなわち階調に応じて補正の程度が適切に調整されている。無論、適切な補正曲線は、インク色によっても異なる傾向を示すので、このような、濃度補正LUT(γ−1〜γ−5)は、各インク色について用意されていることが好ましい。
【0047】
このようなテーブルを利用して、制御部20が着目画素の8ビットデータ(C´M´Y´K´)を同じく8ビットデータ(C″M″Y″K″)に変換すると本処理は終了する。なお、図6、図8および図9で説明した、本実施例の制御部20が参照する3種類のテーブルは、ROM20cに予め格納されていてもよいし、制御部20がホスト装置100から受信してRAM20bに格納する形態であってもよい。
【0048】
図10は、濃度補正処理404で実行される以上説明したデータ変換の様子を、ブラックデータの場合を例に説明する図である。最上段は濃度補正処理404に入力されるラスタデータであり、各画素に8ビットデータからなる256値の濃度データが対応している。2段目は、ラスタデータにおける各画素の位置Xを示している。ここではX=0〜64の範囲の画素を示している。3段目は、走査方向において着目画素までに濃度データが0である累計画素数W、4段目は着目画素までに濃度データが0でない累計画素数Cを示している。また、5段目は、図6のテーブルを参照することによって、WおよびCから得られる濃度変動量Dを示し、6段目は、図8のテーブルを参照することによって濃度変動量Dから得られる濃度補正LUTを示している。更に7段目は、設定された濃度補正LUTを用いて1段目に示した濃度データを変換した結果の濃度データ(補正データ)を示している。
【0049】
個々の画素に着目して具体的に説明すると、例えば1画素目(X=1)の濃度データは「0」であるため、図5のS1002において、0の累計画素数W=1、0以外の累計画素数C=0となる。続くS1003では、図6のブラックインク用の濃度変動量テーブルを参照することによって、W=1とC=0の情報から、濃度変動量D=0が求められる。更に、図7のステップS2001において、図8の濃度補正LUT設定TBLを参照することにより、濃度変動量D=0の情報から濃度補正LUT(γ0)が設定される。更にステップS2001において、図9に示す濃度補正LUT(γ0)を用いて入力濃度データ「0」を変換することによって、出力濃度データ「0」が得られる。
【0050】
2〜21画素目(X=2〜21)についても入力濃度データは「0」であるため、図5のS1002において、0の累計画素数Wは2〜21まで順にカウントアップされる。その一方で、0以外の累計画素数Cは0のままである。続くS1003では、これら情報を用いながら、図6のブラックインク用の濃度変動量テーブルを参照することにより、個々のXについて濃度変動量D=0が求められる。その結果、X=2〜21についても濃度補正LUT(γ0)が設定され、出力濃度データは「0」となる。
【0051】
22画素目(X=22)では入力濃度データが「128」であるため、0の累計画素数W=21のまま、0以外の累計画素数C=1となる。そして、S1003では、図6のブラックインク用の濃度変動量テーブルを参照することによって、W=21とC=1の情報から、濃度変動量D=−2が求められる。また、図7のステップS2001において、図8の濃度補正LUT設定TBLを参照することにより、濃度変動量D=−2の情報から濃度補正LUT(γ2)が設定される。更に、ステップS2001において、図9に示す濃度補正LUT(γ2)を用いて入力濃度データ「128」を変換することによって、出力濃度データ「132」が得られる。
【0052】
23画素目(X=23)の濃度データは「128」であるため、0の累計画素数W=21のまま、0以外の累計画素数C=2となる。S1003では、図6のブラックインク用の濃度変動量テーブルを参照することによって、W=21とC=2の情報から、濃度変動量D=2が求められる。図7のステップS2001では、図8の濃度補正LUT設定TBLを参照することにより、濃度変動量D=2の情報から濃度補正LUT(γ−2)が設定される。更に、ステップS2001において、図9に示す濃度補正LUT(γ−2)を用いて入力濃度データ「128」を変換することによって、出力濃度データ「124」が得られる。
【0053】
26画素目(X=26)の濃度データは「128」であるため、0の累計画素数W=21のまま、0以外の累計画素数C=5となる。S1003では、図6のブラックインク用の濃度変動量テーブルを参照することによって、W=21とC=5の情報から、濃度変動量D=0が求められる。D=0となったため、ステップS1006において、0の累計画素数Wおよび0以外の累計画素数Cがリセット(W=0、C=0)される。図7のステップS2001では、図8の濃度補正LUT設定TBLを参照することにより、濃度変動量D=0の情報から濃度補正LUT(γ0)が設定される。更に、ステップS2001において、図9に示す濃度補正LUT(γ0)を用いて入力濃度データ「128」を変換することによって、出力濃度データ「128」が得られる。
【0054】
27画素目(X=27)の濃度データは「128」であるが、26画素目でWおよびCがリセットされているため、当該画素における0の累計画素数W=0のまま、0以外の累計画素数C=1となる。S1003では、図6のブラックインク用の濃度変動量テーブルを参照することによって、W=0とC=1の情報から、濃度変動量D=0が求められる。
D=0となったため、ステップS1006において、WおよびCが再びリセット(W=0、C=0)される。図7のステップS2001では、図8の濃度補正LUT設定TBLを参照することにより、濃度変動量D=0の情報から濃度補正LUT(γ0)が設定される。更に、ステップS2001において、図9に示す濃度補正LUT(γ0)を用いて入力濃度データ「128」を変換することによって、出力濃度データ「128」が得られる。
【0055】
このように、変換前の濃度データが主走査方向に、0、・・・0、128、128、128・・・である場合、変換後の画像データは、0、・・・0、132、124、124・・・となる。
【0056】
以上説明したように本実施例によれば、ラスタデータにおける濃度データの配列から、各画素における濃度変動値Dを取得しこれに応じた濃度補正LUTを設定する。これにより、インク種や吐出頻度に伴ってノズル内の色材濃度が変化する状況においても、インクごとあるいは階調に応じて適切な補正を行うことが可能となる。
【0057】
なお、以上では往路走査のみで記録を行う片方向記録モードの場合を例に説明したが、本実施例は記録媒体の同一画像領域に対し記録ヘッドの往路走査と復路走査の両方でインクを吐出する双方向記録モードにも応用することが出来る。この場合、往路方向のWとCから求めた濃度変動値D1と、復路方向のWとCから求めた濃度変動値D2から、何らかの方法で濃度変動値D3を算出すればよい。例えば、濃度変動値D3はD1とD2の平均値とすることも出来る。
【0058】
図11は、濃度平均値D3を、往路方向の濃度変動値D1と復路走査の濃度変動値D2の平均を取ることによって求めた場合の、データ変換の様子を、図10と同様に説明する図である。ここでは、往路走査と復路走査夫々について、W、Cをカウントし、図6のテーブルを参照することによって、濃度変動量を取得している。図において、X1、W1、C1およびD1は、往路走査における、画素位置X1、濃度データが0である累計画素数W1、濃度データが0でない累計画素数C1および濃度変動量D1を夫々示している。また、X2、W2、C2およびD2は、復路走査における、画素位置X2、濃度データが0である累計画素数W2、濃度データが0でない累計画素数C2および濃度変動量D2を夫々示している。往路走査の濃度変動量D1と復路走査の濃度変動量D2の平均から双方向記録における濃度変動量D3を算出し、この値に基づいて図8の濃度補正LUT設定TBLを参照することにより、個々の画素の濃度補正LUTを設定している。但し、濃度変動量D3の求め方はこれに限らない。往路走査と復路走査で走査前の予備吐出動作が異なるような場合は、D1とD2を用いた何らかの関数により濃度変動値D3を求めるようにしてもよい。いずれにせよ、D1とD2から得られたD3によって適切な濃度補正LUTが設定され、入力された濃度データが変換されれば、双方向記録においても本実施例の効果を得ることが出来る。この際、図6に示した濃度変動量設定TBLや、図9に示した濃度補正LUTについては往路走査用と復路走査用で独立に用意することも出来る。
【0059】
また、ノズル内のインクの濃度変動に伴う画像弊害は、マルチパス記録におけるマルチパス数や記録方向、ヘッドのキャリッジスピードによっても現象が異なる。よって、記録モード毎に濃度変動量設定TBLと濃度補正LUTを用意し、記録モードに適した補正とすることも出来る。
【実施例2】
【0060】
本実施例でも、図1〜図3で説明したインクジェット記録システムを用いる。
【0061】
図12は、本実施例の制御部20が濃度補正処理404で実行する処理工程を説明するためのフローチャートである。本処理では、ラスタデータ内の着目画素の位置を示すX、着目画素までに濃度データが0である画素の数を示すW、着目画素までの累積画素値M、および着目画素を記録する際のノズルの濃度変動量Dの4つのパラメータを用いている。ここで、累積画素値Mとは、濃度データの最高値を1とした画素値を着目画素まで累積した値である。本実施例のように濃度データが8ビット256階調(0〜255)の場合は、濃度データを255で割った値が画素値をとなり、これを着目画素まで累積した値が累積画素値Mとなる。ここでは、ブラックのラスタデータ(K´)について説明する。
【0062】
本処理が開始されると、まず制御部20は、ステップS3000において初期設定(X=0、W=0、M=0)を行う。
【0063】
ステップS3001では着目画素の濃度データ(K´)を取得する。
【0064】
ステップS3002では、着目画素のデータに応じて、パラメータWおよびMを書き換え、ステップS3003では新たなWおよびMに基づいて着目画素の濃度変動量Dを取得する。具体的には、着目画素の濃度データ(K´)が0である場合にはW=W+1、M=Mとし、着目画素の濃度データ(K´)が0でない場合にはW=W、M=M+K´/255とする。そして、予め用意されたルックアップテーブル(LUT)を参照することにより、WおよびMの組み合わせに対応した濃度変動量Dを取得する。
【0065】
図13は、ステップS3003で参照するLUTの具体的な内容を示す図である。本実施例において、濃度変動量Dは、WとMの条件で吐出されるインクの濃度が通常の濃度に対しどの程度変動しているか(濃くなっているか、或は薄くなっているか)を示すパラメータである。このような濃度の変動量はインクの種類によって異なる特徴を有しているので、4つのインク夫々についてLUTが用意されている。
【0066】
ステップS3003で濃度変動量Dが取得されると、ステップS3004へ進み、現在の着目画素がラスタデータの最後の画素であるか否かを判断する。最後の画素である場合は本処理を終了する。最後の画素でない場合はステップS3005に進む。
【0067】
ステップS3005では、着目画素の濃度データが0であるか否かを判断する。0である場合ステップS3008へ進み、Xをインクリメントすることによって着目画素を主走査方向に1画素分ずらして、再びステップS3001へ戻る。一方、着目画素の濃度データが0でない場合はステップS3006へ進む。
【0068】
ステップS3006では、ステップS3003で取得した濃度変動量Dが0であるか否かを判断する。濃度変動量Dが0でない場合、ステップS3008でXをインクリメントした後、ステップS3001へ戻る。一方、濃度変動量Dが0である場合、ステップS3007へ進み、WおよびMの値をリセット(W=0、M=0)する。
【0069】
以上のようにして、ラスタデータに格納された各画素の濃度変動量Dが取得される。制御部20は、図12のフローチャートに従った処理を、全ラスタ全インク色に対して実行することにより、全インク色全画素に対する濃度変動量Dを取得する。その後の変換処理は実施例1と同様、図7に示したフローチャートに従い、図8および9に示したテーブルを用いて行う。
【0070】
図14は、本実施例の濃度補正処理404で実行されるデータ変換の様子を、ブラックデータの場合を例に説明する図である。最上段は濃度補正処理404に入力されるラスタデータであり、各画素に8ビットデータからなる256値の濃度データが対応している。2段目は、ラスタデータにおける各画素の位置Xを示している。ここではX=0〜64の範囲の画素を示している。3段目は、走査方向において着目画素までに濃度データが0である累計画素数W、4段目は着目画素までの累積画素置Mを示している。また、5段目は、図13のテーブルを参照することによって、WおよびMから得られる濃度変動量Dを示し、6段目は、図8のテーブルを参照することによって濃度変動量Dから得られる濃度補正LUTを示している。更に7段目は、設定された濃度補正LUTを用いて1段目に示した濃度データを変換した結果の補正データを示している。
【0071】
個々の画素に着目して具体的に説明すると、例えば1画素目(X=1)の濃度データは「0」であるため、図12のS3002において、0の累計画素数W=1、累積画素置M=0となる。続くS3003では、図14のブラックインク用の濃度変動量テーブルを参照することによって、W=1とM=0の情報から、濃度変動量D=0が求められる。更に、図7のステップS2001において、図8の濃度補正LUT設定TBLを参照することにより、濃度変動量D=0の情報から濃度補正LUT(γ0)が設定される。更にステップS2001において、図9に示す濃度補正LUT(γ0)を用いて入力濃度データ「0」を変換することによって、出力濃度データ「0」が得られる。
【0072】
22画素目(X=22)では入力濃度データが「128」であるため、0の累計画素数W=21のまま、累積画素置M=128/255≒0.5となる。そして、S3003では、図13のブラックインク用の濃度変動量テーブルの、Wは(21)の行、Mは(〜1)の行が参照されることにより、濃度変動量D=−2が求められる。また、図7のステップS2001において、図8の濃度補正LUT設定TBLを参照することにより、濃度変動量D=−2の情報から濃度補正LUT(γ2)が設定される。更に、ステップS2001において、図9に示す濃度補正LUT(γ2)を用いて入力濃度データ「128」を変換することによって、出力濃度データ「132」が得られる。
【0073】
23画素目(X=23)の濃度データは「128」であるため、0の累計画素数W=21のまま、累積画素置M=0.5+128/255≒1となる。S3003では、図13のブラックインク用の濃度変動量テーブルの、Wは(21)の行、Mは(〜1)の行が参照されることにより、濃度変動量D=−2が求められる。図7のステップS2001では、図8の濃度補正LUT設定TBLを参照することにより、濃度変動量D=―2の情報から濃度補正LUT(γ2)が設定される。更に、ステップS2001において、図9に示す濃度補正LUT(γ2)を用いて入力濃度データ「128」を変換することによって、出力濃度データ「132」が得られる。
【0074】
30画素目(X=30)の濃度データは「128」であるため、0の累計画素数W=21のまま、累積画素置M=4.5となる。S3003では、図13のブラックインク用の濃度変動量テーブルを参照することによって、W=21とM=4.5の情報から、濃度変動量D=0が求められる。D=0となったため、ステップS3006において、0の累計画素数Wおよび累積画素置Mがリセット(W=0、M=0)される。図7のステップS2001では、図8の濃度補正LUT設定TBLを参照することにより、濃度変動量D=0の情報から濃度補正LUT(γ0)が設定される。更に、ステップS2001において、図9に示す濃度補正LUT(γ0)を用いて入力濃度データ「128」を変換することによって、出力濃度データ「128」が得られる。
【0075】
31画素目(X=31)の濃度データは「128」であるが、30画素目でWおよびMがリセットされているため、当該画素における0の累計画素数W=0のまま、累積画素値M=0.5となる。S3003では、図13のブラックインク用の濃度変動量テーブルを参照することによって、W=0とM=0.5の情報から、濃度変動量D=0が求められる。
【0076】
D=0となったため、ステップS3006において、WおよびMが再びリセット(W=0、M=0)される。図7のステップS2001では、図8の濃度補正LUT設定TBLを参照することにより、濃度変動量D=0の情報から濃度補正LUT(γ0)が設定される。更に、ステップS2001において、図9に示す濃度補正LUT(γ0)を用いて入力濃度データ「128」を変換することによって、出力濃度データ「128」が得られる。
【0077】
以上説明したように本実施例によれば、ラスタデータにおける濃度データの配列から、各画素における濃度変動値Dを想定しこれに応じた濃度補正LUTを設定することが出来る。これにより、インク種や吐出頻度に伴ってノズル内の色材濃度が変化する状況においても、インクごとあるいは階調に応じて適切な補正を行うことが可能となる。
【0078】
なお、以上説明した実施例では、図1に示したホスト装置とプリンタから構成される場合を例に説明したが、本発明のインクジェット記録システムはこのような形態に限定されるものではない。例えば、色空間変換処理401からパス分解ノズル列分配処理406までの一連の処理をホスト装置100で行い、プリンタ200は特別な画像処理は行わず、受信した2値データをそのまま記録する形態であってもよい。逆に、ホスト装置100は画像データをプリンタに送信するのみで、全ての処理がプリンタ200で行われる形態であっても構わない。どのような構成であれ、個々の画素を記録する際のノズルの濃度変動量が、当該ノズルが記録すべき画像データの配列に基づいて推測され、この濃度変動量に応じて画像データが補正される処理が行われれば、本発明のインクジェット記録システムに相応する。
【符号の説明】
【0079】
1 記録媒体
5 記録ヘッド
20 制御部
100 ホスト装置
200 プリンタ
401 色空間変換処理
402 色変換処理
403 出力γ処理
404 濃度補正処理
405 量子化処理


【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクを吐出する複数のノズルを備えた記録ヘッドを、記録媒体に対して走査することにより、前記記録媒体に画像を記録するインクジェット記録システムにおいて、
個々の画素に対応する画像データを取得する手段と、
前記記録ヘッドの所定のノズルが記録するべき画素が有する画像データの前記走査の方向における配列から、前記所定のノズルが着目画素を記録する際のノズル内の色材濃度を示す濃度変動量を決定する決定手段と、
前記濃度変動量に基づいて前記着目画素が有する画像データを変換して補正データを生成する変換手段と、
前記記録ヘッドの走査中に、前記所定のノズルによって前記補正データに従った前記着目画素の記録を行う手段と
を有することを特徴とするインクジェット記録システム。
【請求項2】
前記画像データは、多値の濃度データであることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録システム。
【請求項3】
前記記録ヘッドは、同色のインクを吐出する複数のノズルが配列して構成されるノズル列をインク色に応じて備え、
前記決定手段は、インク色に応じて異なる前記濃度変動量を決定することを特徴とする請求項1または2に記載のインクジェット記録システム。
【請求項4】
前記決定手段は、記録モードに応じて異なる前記濃度変動量を決定することを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載のインクジェット記録システム。
【請求項5】
前記決定手段は、前記走査の方向における前記着目画素までの画像データが0である画素数Wと、前記着目画素までの画像データが0でない画素数Cの組み合わせから、前記濃度変動量を決定することを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載のインクジェット記録システム。
【請求項6】
前記決定手段は、前記走査の方向における前記着目画素までの画像データが0である画素数Wと、前記着目画素までの画像データが0でない画素の画像データを累積した値に相応する累積画素値Mの組み合わせから、前記濃度変動量を決定することを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載のインクジェット記録システム。
【請求項7】
前記変換手段は、前記濃度変動量の値に応じて用意された1次元のルックアップテーブルを参照することにより、前記着目画素が有する画像データを前記補正データに変換することを特徴とする請求項1乃至6の何れかに記載のインクジェット記録システム。
【請求項8】
前記決定手段は、
前記記録媒体の同一画像領域に対する前記記録ヘッドの往路走査と復路走査によって前記記録媒体に画像を記録する双方向記録モードにおいて、
前記所定のノズルが記録するべき画素が有する画像データの前記往路走査の方向における配列と、前記復路走査の方向における配列とから、前記濃度変動量を決定することを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録システム。
【請求項9】
インクを吐出する複数のノズルを備えた記録ヘッドを、記録媒体に対して走査することにより、前記記録媒体に画像を記録するインクジェット記録方法において、
個々の画素に対応する画像データを取得する工程と、
前記記録ヘッドの所定のノズルが記録するべき画素が有する画像データの前記走査の方向における配列から、前記所定のノズルが着目画素を記録する際のノズル内の色材濃度を示す濃度変動量を決定する工程と、
前記濃度変動量に基づいて前記着目画素が有する画像データを変換して補正データを生成する変換工程と、
前記記録ヘッドの走査中に、前記所定のノズルによって前記補正データに従った前記着目画素の記録を行う工程と
を有することを特徴とするインクジェット記録方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2013−86412(P2013−86412A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−230536(P2011−230536)
【出願日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】