説明

インクジェット記録シートの製造方法

【課題】本発明の目的は、優れた画像再現性と高い表面光沢性を持ち、且つ表面の耐キズ性、高生産性及びリサイクル性に優れたインクジェット記録シートを提供することである。
【解決手段】本発明に係るインクジェット記録シートの製造方法は、最表層に隣接する記録層を、極微細顔料を高圧噴射衝突式粉砕機で湿式粉砕処理したスラリーとバインダーとを主成分として含有する塗工液を塗工して得られた塗工膜が湿潤状態のうちに鏡面体に圧着し、乾燥することで光沢インク受容層とする工程と、最表層の記録層を、極微細顔料として球状コロイダルシリカとバインダーとを主成分とし、該バインダーを該球状コロイダルシリカに対して質量比で1:0.02〜1:1の割合で含有する塗工液を、乾燥塗工量が0.02〜0.3g/mとなるよう塗工し、得られた塗工膜が湿潤状態のうちに鏡面体に圧着し、乾燥することで光沢保護層とする工程と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、優れた画像再現性を持ち、且つ表面の耐キズ性に優れたインクジェット記録シートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、コンピューター技術の飛躍的な進歩とその低価格化によってデジタル画像の取り扱いが極めて容易になり、それに伴って高性能なパーソナルプリンタが開発されて広く普及しており、フルカラー印刷を手軽に行なうことが可能になった。現在、パーソナルプリンタとして最も普及しているのはインクジェットプリンタである。インクジェット方式の利点としては、多色化が容易なこと、高速印刷が可能であること、非接触型で低騒音であること、装置が小型で安価なことが挙げられる。
【0003】
インクジェット方式の画像形成システムは、以下の通りである。すなわち、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラック等の各色のインクを、サーマル方式やピエゾ方式等によってノズルから微小な液滴として吐出し、記録媒体上に画像を形成せしめる。
【0004】
インクジェット記録用媒体に要求される特性としては、インク吸収容量が大きくインク吸収速度が速いこと、発色が鮮やかで均一であること、滲みが少なく解像度が高いこと等が挙げられる。
【0005】
上記の適性を得るため、インクジェット記録用紙においては、合成非晶質シリカを主成分とした、数μmから数十μm厚のインク受容層を基材上に形成させることで、より大きなインク吸収容量と鮮やかな発色性を実現した、いわゆるインクジェット専用紙が主流となっている。
【0006】
また、デジタルカメラに代表されるデジタル画像技術の飛躍的な進歩に伴い、フォト画像をインクジェットプリンタによって印刷することが一般的となったが、この際には、銀塩写真と同等の高級感と印刷精細感を得るために、表面にナノオーダーの極微細粒子からなる光沢層を設けた、いわゆる光沢タイプのインクジェットメディアも普及している。
【0007】
これらの光沢タイプインクジェットメディアを製造する方法として、従来の高光沢のオフセット印刷用塗工紙を製造する方法としてのキャスト方式を応用し、紙基材上にインク受容層を塗布して鏡面ドラムに圧着乾燥する方法が、生産性の良い光沢メディア製造法として用いられてきた。
【0008】
しかしながら、光沢インクジェットメディアは、インク受容層の表面の平滑性が非常に高く、巻き取り保管時や後加工時、流通時、或いは末端ユーザーによるプリンタ印刷時のプリンタ装置内、前後の取り扱いによってインク受容層の表面にコスレ傷やコスレ跡が発生しやすかった。
【0009】
また近年、ますますインクジェットメディアの印刷品質に対する要求が高くなっており、この要求を満たすためにはインク受容層は従来のものより更に多孔質性の極微粒子、例えば気相法シリカやアルミナ等を使用することが求められ、このことが更に耐キズ性を悪化させる原因となっている。
【0010】
このような問題を回避するために、インク受容層の厚みより大きい球状微粒子ポリマーを含有するインクジェット用記録材料が提案されている(例えば、特許文献1を参照。)。また、最上層表面からその一部が突出するような平均粒径を有する粒子を含有するインクジェット用記録材料が提案されている(例えば、特許文献2を参照。)。
【0011】
また、紙基材の両面を樹脂によって被覆したレジンコートタイプ(以下、「RCタイプ」という。)の光沢インクジェットメディアにおいて、多孔質無機微粒子のインク受容層の上に、コロイダルシリカからなる保護層を設けることによって、耐キズ性を向上させる技術が提案されている(例えば、特許文献3を参照。)。
【0012】
【特許文献1】特開平7−25133号公報
【特許文献2】特開平11−254807号公報
【特許文献3】特開2003−025711号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、特許文献1又は特許文献2に記載された技術を用いても、多孔質無機極微細粒子と親水性バインダーを含有するインク受容層からなる高い光沢を有するインクジェット用記録材料においては、耐キズ性の改良が不十分であったり、特徴的な表面性が損なわれたりしてしまう等の問題があった。
【0014】
また、特許文献3に記載された技術では、表面保護層のコロイダルシリカに対する好ましいバインダーの比率は1:0.05以下と少なく、その一方で塗工量は0.5g/m以上と多い。このことから、特許文献3の表面保護層においてバインダーはコロイダルシリカを接着する最低限の量で粒子間を点接着し、そのコロイダルシリカ層が表面を全て覆い隠すように存在していると考えられる。ここで、特許文献3のインクジェットメディアは、基材が樹脂被覆紙に限定されており、生産効率に優れた光沢メディア製造法であるキャスト方式を用いることが出来ない。また、樹脂被覆紙は一般的な古紙再利用方法が使用できず、地球環境保護の観点からも好ましくない。
【0015】
上述の如く、優れた画像再現性と高い表面光沢性を持ち、且つ表面の耐キズ性、高生産性及びリサイクル性に優れたインクジェット記録シートは未だ存在しない。本発明は、上記特性を兼ね備えたインクジェット記録シートの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者らは鋭意検討の結果、通気性を有する支持体を使用し、最表層に隣接する記録層を極微細顔料とバインダーを主成分とした光沢インク受容層とし、最表層の記録層を極微細顔料とバインダーを主成分とした薄い光沢保護層とすることで、上記特性を兼ね備えたインクジェット記録シートが得られることを見出し、本発明を完成させた。
【0017】
本発明に係るインクジェット記録シートの製造方法は、通気性を有する支持体の少なくとも片面に、1層以上からなる記録層を設けたインクジェット記録シートの製造方法において、最表層に隣接する記録層を、極微細顔料を高圧噴射衝突式粉砕機で湿式粉砕処理したスラリーとバインダーとを主成分として含有する塗工液を塗工して得られた塗工膜が湿潤状態のうちに鏡面体に圧着し、乾燥することによって、光沢インク受容層とする工程と、最表層の記録層を、極微細顔料として球状コロイダルシリカバインダーとを主成分とし、該バインダーを該球状コロイダルシリカに対して質量比で1:0.02〜1:1の割合で含有する塗工液を、乾燥塗工量が0.02〜0.3g/mとなるよう塗工し、得られた塗工膜が湿潤状態のうちに鏡面体に圧着し、乾燥することによって、光沢保護層とする工程と、を有することを特徴とする。最終製品であるインクジェット記録シートの表面性に、光沢保護層の下層に設けられた光沢インク受容層の面質が大きく影響するため、光沢インク受容層と光沢保護層にいずれも、いわゆるキャスト方式によって形成する。
【0018】
本発明に係るインクジェット記録シートの製造方法では、前記光沢インク受容層とする工程において、前記塗工液の塗工後湿潤状態にあるうちに、前記塗工膜をゲル化させる成分を含有するゲル化液を塗布又は含浸したのち圧着し、乾燥し、前記光沢保護層とする工程において、前記塗工液の塗工後直ちに鏡面ドラム又はフィルムに圧着し、乾燥することが好ましい。光沢インク受容層を形成する場合に採用するゲル化法キャスト方式は光沢インク受容層がポーラスになり易く、高いインク吸収性を得易い。光沢保護層を前記方式で形成することによって、光沢保護層は非常に薄いため、下層にその塗工液が吸われる前に形成させてしまうことで均一な光沢保護層を得ることができる。
【0019】
また本発明に係るインクジェット記録シートの製造方法では、前記光沢インク受容層とする工程において、前記塗工液の塗工後ドライヤゾーンにて一旦乾燥し、その後リウェット液によって再湿潤させたのち、圧着し、乾燥し、前記光沢保護層とする工程において、前記塗工液の塗工後直ちに鏡面ドラム又はフィルムに圧着し、乾燥しても良い。光沢インク受容層を形成する場合に採用するリウェット法は生産速度を高くし易く、高い生産効率が得られる。光沢保護層を前記方式で形成することによって、光沢保護層は非常に薄いため、下層にその塗工液が吸われる前に形成させてしまうことで均一な光沢保護層を得ることができる。
【0020】
本発明に係るインクジェット記録シートの製造方法では、前記光沢インク層の極微細顔料のうち60質量%以上が、気相法シリカ又はアルミナのいずれか一方あるいは両方であることが好ましい。気相法シリカ又はアルミナは非常に多孔質で液体吸収性に富み、インクの吸収性に優れるため、所望の画像再現性を表面光沢性を有するインクジェット記録シートを得ることができる。
【0021】
本発明に係るインクジェット記録シートの製造方法では、前記球状コロイダルシリカの一部又は全ては、表面がアルミナ処理されていることが好ましい。より良好な画像再現性を有するインクジェット記録シートを得ることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明では、優れた画像再現性と高い表面光沢性を持ち、且つ表面の耐キズ性、高生産性及びリサイクル性に優れたインクジェット記録シートの製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明について詳細に説明するが、本発明はこれらの記載に限定して解釈されない。本実施形態に係るインクジェット記録シートの製造方法は、通気性を有する支持体の少なくとも片面に、1層以上からなる記録層を設けたインクジェット記録シートの製造方法において、最表層に隣接する記録層を、極微細顔料を高圧噴射衝突式粉砕機で湿式粉砕処理したスラリーとバインダーとを主成分として含有する塗工液を塗工して得られた塗工膜が湿潤状態のうちに鏡面体に圧着し、乾燥することによって、光沢インク受容層とする工程と、最表層の記録層を、極微細顔料として球状コロイダルシリカとバインダーとを主成分とし、該バインダーを該球状コロイダルシリカに対して質量比で1:0.02〜1:1の割合で含有する塗工液を、乾燥塗工量が0.02〜0.3g/mとなるよう塗工し、得られた塗工膜が湿潤状態のうちに鏡面体に圧着し、乾燥することによって、光沢保護層とする工程と、を有する。光沢インク受容層と光沢保護層をいずれもキャスト方式によって形成することで、鏡面光沢を保持することによって、表面質感が得られる。
【0024】
支持体は、酸性または中性の上質紙や中質紙或いは板紙、不織布等が挙げられ、本発明では限定されないが、塗工基材として平滑性、カラーの塗工適性を具備したものを使用することが好ましい。またキャスト方式によって光沢インク受容層及び光沢保護層を設ける場合には透気性のある支持体を用いることが必要であり、樹脂被覆紙いわゆるRCペーパーや樹脂フィルムを用いることは出来ない。支持体の原料としては木材パルプが最も好適に用いられるが、その他の天然パルプ、古紙パルプ、あるいは合成パルプを必要に応じて適宜用いても構わない。天然パルプは塩素、次亜塩素酸塩、二酸化塩素漂白の通常の漂白処理や、あるいはアルカリ抽出又はアルカリ処理及び必要に応じた過酸化水素、オゾン漂白などの酸化漂白処理、あるいはその組み合わせ処理を施した広葉樹パルプ、針葉樹パルプあるいはその混合パルプが望ましく、またソーダパルプや機械パルプも用いることが出来る。古紙パルプはその原料、脱墨方法、漂白方法を問わないが、紙の強度を損なわない程度の配合量としなければならない。合成パルプも各種のものを使用することができ、特にポリオレフィンからなるパルプ状多分岐繊維は、本発明において好適に用いることができる。
【0025】
上記のパルプは、ディスク型、コニカル型等の各種の叩解機によって適当なフリーネスとなるように必要に応じて叩解する。フリーネスは紙の強度を決定する重要な要因であり叩解が進むほどに強度が増すが、透気性、不透明度、嵩の低下等をもたらすため、一般的には400〜550mlCSF程度で、本発明においてもこの範疇でコントロールすることが好ましいが、これに限定されるものではない。
【0026】
紙料中には、上記のパルプ以外に、紙力剤、白色顔料、硫酸バンド、歩留まり向上剤、サイズ剤、染料、蛍光染料等の各種抄紙用薬品が適宜用いられる。紙力剤としてはカチオンでんぷん、両性でんぷん、ポリアクリルアマイドが用いられる。歩留まり向上剤はコロイダルシリカ、ポリアクリルアマイド、ポリエチレンイミン等が用いられる。染料、蛍光染料は紙の色相を調整するために添加され、直接染料、塩基性染料、酸性染料等が用いられる。サイズ剤としてはアルキルケテンダイマー(AKD)、アルケニル無水琥珀酸(ASA)、中性ロジン、強化ロジン、鹸化ロジンが、抄紙pH等に応じて適宜選択される。この他、嵩高剤も繊維間結合強度の低下が問題とならない程度に添加することが可能である。
【0027】
本実施形態においては、支持体上に設けられるインクジェット記録層は、インク受容層とその表面を保護する光沢保護層から構成される。インク受容層は単層あるいは多層で設けることが可能であるが、光沢保護層に隣接するインク受容層は光沢インク受容層であることが必要である。記録層は、支持体の片面に設けるが、両面印刷を考慮して、支持体の両面に記録層を設けても良い。
【0028】
インク受容層に用いられる顔料としては、非晶質シリカ、非晶質アルミナ、カオリン、クレー、焼成クレー、タルク、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、サチンホワイト、二酸化チタン、酸化亜鉛、硫酸バリウム、珪酸リチウム、珪藻土、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウム、マイカ、天然ゼオライト、合成ゼオライト、擬ベーマイト、ハイドロキシアパタイト、層間化合物等の無機顔料や、アクリル/メタクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ブタジエン系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、尿素樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂等の単体または共重合体からなる球状あるいは不定形の有機顔料を例示することができる。また、これらの顔料にカップリング剤や有機物による表面改質や、金属イオン交換法、気相蒸着法や液相析出法による表面処理など、多元的な機能性を付与させるための表面処理を施してもかまわない。また、これらを二種類以上組み合わせて使用してもよい。
【0029】
光沢インク受容層は、極微細顔料とバインダーを主成分として含有する。そこで光沢インク受容層には、上記のような顔料の中でも、優れた表面平滑性を得るために極微細顔料を用いることが望ましい。極微細顔料の二次粒子径としては、1μm以下が好ましく、より好ましくは500nm以下である。例えば、気相法シリカ、γ、θ、δ等の結晶構造をもつアルミナの極微粒子や、コロイダルシリカ、ベーマイト、擬ベーマイト等のコロイド製法による懸濁物、ゲル化法や沈降法による非晶質シリカ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化アルミニウム、二酸化チタン等の白色顔料やカオリン、タルク、珪藻土等の天然鉱物の、粉砕あるいは分級された極微粒子、あるいはこれらの無機微細顔料に表面処理を施したもの、あるいはポリスチレン、メチルメタクリレート、スチレン−ブタジエン共重合体、メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体、アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステル共重合体、マイクロカプセル、尿素樹脂、メラミン樹脂等の有機微細顔料を例示することができる。上記の極微細顔料を二種以上組み合わせて使用することも可能である。本実施形態では、光沢インク受容層の全無機顔料のうち60質量%以上を、気相法シリカあるいはアルミナのいずれか一方あるいは両方とすることが高い画像再現性と優れた表面光沢性を得る上で望ましい。ここで、アルミナは、気相法で得られた極微細粒子のほか、湿式法で得られた極微細粒子であるものも含まれる。気相法シリカあるいはアルミナのいずれか一方あるいは両方を使用する理由は、気相法シリカ或いはアルミナは非常に多孔質で液体吸収性に富むため、インクの吸収性に優れることが挙げられる。
【0030】
インク受容層には、以下のようなバインダーを用いることが出来る。例えば、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等のセルロース誘導体、ポリビニルピロリドン、ポリビニルピリジン、ポリアクリルアミド、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、澱粉、変性澱粉、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸ソーダ、アルギン酸ソーダ、ポリスチレンスルホン酸ソーダ、カゼイン、ゼラチン、テルペン等の水溶性バインダーや、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイソブチレン、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレン酢酸ビニル、ポリビニルアセタール、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸エチル、ポリメタクリル酸メチル、ポリアクリロニトリル、ポリテトラフルオロエチレン、ポリ弗化ビニリデン、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリクロロプレン、ナイロン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリビスクロロメチルオキサシクロブタン、ポリフェニレンオキサイド、ポリスルフォン、ポリ−p−キシリレン、ポリイミド、ポリベンズイミダゾール、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、アルキド樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ジアリルフタレート樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体、変性スチレン−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、メチルメタアクリレート−ブタジエン共重合体、アクリル酸エステル−メタアクリル酸エステル共重合体、酢酸ビニル−マレイン酸エステル共重合体、酢酸ビニル−アクリル共重合体、エチレン−酢酸ビニル−アクリル共重合体、等のエマルジョン型バインダーを例示することができる。これらのバインダーの重合度やケン化度、Tg(ガラス転移温度)、MFT(最低造膜温度)は限定されない。また、これらの分子鎖中に架橋性の官能基を付加しても構わない。インク受容層のバインダー含有量は本発明では規定されないが、顔料100質量部に対して5〜80質量部が適当量であり、5質量部よりバインダーが少ないと塗膜強度が不足し、80質量部を超えるとインク吸収性が低下する。
【0031】
インク受容層は、インクジェットインクの定着性と発色性を向上させるために、カチオン性高分子を主成分とするインク定着剤を含有することが好ましい。カチオン性高分子としては、例えばポリアミド、ポリアクリルアミド、アミドエピクロロヒドリン樹脂、ポリエチレンイミン、尿素−ホルムアルデヒド樹脂、ポリアルキレンイミン、ポリアルキレンポリアミン、ポリアミドポリアミンエピクロロヒドリン、水溶性アニリン樹脂およびその塩、ポリチオ尿素およびその塩、水溶性カチオン性アミノ樹脂、ポリビニルピリジンおよびその塩、ジアリルジメチルアンモニウム化合物、ジメチルアミノエチルアクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート等に代表される1級アミン、2級アミン、3級アミン、4級アンモニウム塩の高分子を適宜選択して使用する。これらの種類と添加量については本発明では限定されない。
【0032】
インク受容層の塗工液には、必要に応じて分散剤、消泡剤、pH調整剤、湿潤剤、保水剤、増粘剤、架橋剤、離型剤、防腐剤、柔軟剤、ワックス、導電防止剤、帯電防止剤、サイズ剤、耐水化剤、可塑剤、蛍光増白剤、着色顔料、着色染料、還元剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、香料、脱臭剤等を適宜選定して添加することができる。また例えば顔料スラリーに含有させる、あるいはバインダーに含有させる等、これらを添加する場所、方法については限定されない。
【0033】
インク受容層は、このようにして調製された塗工液を一般の塗工機、例えば、ブレードコーター、ロールコーター、エアナイフコーター、ロッドコーター、リップコーター、カーテンコーター、スプレーコーター、ダイコーター、チャンブレックスコーターなどによってオフマシンあるいはオンマシンで、単層あるいは多層で、片面あるいは両面を塗工する。
【0034】
塗工後の乾燥方式としては熱風乾燥、赤外乾燥、ドラム乾燥等が挙げられるが、光沢インク受容層より下層のインク受容層を塗設する際には特に限定されない。
【0035】
光沢インク受容層を形成するキャスト方式としては、既知の各方式を用いることが可能であるが、塗工層が湿潤状態のうちに塗工層をゲル化させる成分を含有した処理液すなわちゲル化液を塗布または含浸した後、塗工層が湿潤状態のうちに鏡面仕上げされた金属ドラムドライヤに圧着乾燥して表面を写し取る、いわゆるゲル化法キャスト方式が好適に用いられる。ゲル化法キャスト方式は塗工層がポーラスになり易く、高いインク吸収性を得易い。
【0036】
ここでいう塗工層をゲル化させる成分とは、無機架橋剤、例えば蟻酸、酢酸、クエン酸、酒石酸、乳酸、塩酸、硫酸等の各種酸とそのカルシウム、マグネシウム、アルミニウム等の金属塩、硼砂、硼酸等の硼素化合物、塩化ジルコニル、硝酸ジルコニル等のジルコニウム化合物、チタン化合物、アルミニウム化合物等が使用できる。また有機架橋剤、例えばヒドラジド系架橋剤、エポキシ系架橋剤、アルデヒド系架橋剤、イソシアネート系架橋剤、N−メチロール系架橋剤、ビニルスルホン系架橋剤、アクリロイル系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤、エチレンイミノ系架橋剤も使用できる。インク受容層のバインダーがポリビニルアルコールあるいはポリビニルアセタールの場合には硼酸または硼砂の組み合わせが好適であり、カゼイン等の蛋白系を用いている場合には有機酸の金属塩が好適に用いられるが、本発明では特に限定されない。
【0037】
また、キャスト方式として、ゲル化法キャスト方式に替わり、塗工液の塗工後一旦乾燥させた光沢インク受容層を、水または塗工層を再膨潤させる成分を含有する処理液すなわちリウェット液で再膨潤させて鏡面ドラムを写し取るリウェット法キャスト塗工方式による塗工方法を用いてもよい。リウェット法を用いる理由の一つとして、リウェット法はその原理上、生産速度を高くし易く、高い生産効率が得られることが挙げられる。
【0038】
また、キャスト方式の一つとして、鏡面ドラムの替わりに表面に鏡面光沢を有するフィルムを用いたフィルムキャスト方式や、金属板を用いたエンドレスプレス方式も、本発明におけるキャスト方式の範疇に含まれる。フィルムキャスト方式では、塗工層が湿潤状態のうちに圧着して乾燥後フィルムを剥がす。
【0039】
インク受容層の塗工量は、求めるインク吸収容量やインク受容層の構成と平滑性、表面光沢度と面質、基材の吸液性や平滑性によって異なるが、概ね乾燥塗工量で5〜50g/mである。これより塗工量が少ない場合にはインク吸収性が低下するし、多い場合には記録層強度が不足して断裁時の粉落ちや折れ割れ強度の低下といった悪影響をもたらす。
【0040】
本実施形態のインクジェット記録シートでは、最表層に極めて薄い光沢保護層を設けたことが特徴である。光沢保護層は、極微細顔料として球状コロイダルシリカとバインダーを主成分とする。ここで極微細顔料の一次粒子径としては、500nm以下が好ましく、より好ましくは300nm以下である。このことによって、インク受容層の優れたインク吸収性、画像再現性を損なうことなく、優れた表面耐キズ性を得ることが出来る。この光沢保護層の乾燥塗工量は、0.02〜0.3g/mであることが耐キズ性改善効果と良好なインク吸収性を両立するために必要で、0.03〜0.3g/mであることがより望ましい。光沢保護層の乾燥塗工量が0.3g/mより多くなると、インク受容層のインク吸収性を阻害し所望の画像再現性が得られず、0.02g/mより少ないと所望の表面耐キズ性改善効果が得られない。
【0041】
上記の通り、本実施形態のインクジェット記録シートでは、最表層に極めて薄い光沢保護層を設けており、この点、特許文献3に記載された技術とは異なる。すなわち、特許文献3に記載された技術では、表面保護層のコロイダルシリカに対する好ましいバインダーの比率は1:0.05以下と少なく、逆に塗工量は0.5g/m以上と多い。このことから、特許文献3の表面保護層は、バインダーはコロイダルシリカを接着する最低限の量で粒子間を点接着し、そのコロイダルシリカ層が表面を全て覆い隠すように存在していると考えられる。対して本実施形態において光沢保護層は、バインダー比率は1:0.02以上であり、塗工量は0.3g/m以下である。この光沢保護層は、バインダーからなる非常に薄い層の中に球状コロイダルシリカが点在し、バインダーによる表面保護効果を粒子が補う形となっていると考えられる。このように、特許文献3に記載された技術と本実施形態とでは構造の違いがある。加えて、特許文献3のインクジェットメディアは基材が樹脂被覆紙に限定されており、本実施形態において使用する、生産効率に優れた光沢メディア製造法であるキャスト方式は適用できない。また、樹脂被覆紙は一般的な古紙再利用方法が使用できず、地球環境保護の観点からも好ましくない。本実施形態に係るインクジェット記録シートは、優れた画像再現性、高い表面光沢性及び表面の耐キズ性を有しつつ、一般的な古紙再利用方法が使用できるのでリサイクル性に富む。さらに本発明のキャスト方式が適用できるので高生産性を有する。
【0042】
本実施形態において光沢保護層の主成分の一つである極微細顔料は、十分な耐キズ性改善効果を得るために球状コロイダルシリカであることが望ましい。コロイダルシリカは粒子間の結合力が強く強固な塗工膜を作り易い。コロイダルシリカは、一次粒子が単体で溶媒中に分散している球状コロイダルシリカ(例えば、スノーテックス20L、日産化学工業社製)の他に、鎖状(例えば、スノーテックスPS−SO、日産化学工業社製)や房状(例えば、スノーテックスHS−M−20、日産化学工業社製)の凝集体がある。鎖状や房状のものはよりポーラスな構造を作り易いため、表面キズ改善効果が低い。これらに対して、球状コロイダルシリカはより緻密で強固な膜を作り易いため、耐キズ性の点から、本実施形態では球状コロイダルシリカを使用する。本実施形態において、光沢保護層は、次粒子径500nm以下の球状コロイダルシリカを主成分とすることが望ましく、より好ましくは次粒子径300nm以下の球状コロイダルシリカを主成分とすることが望ましい。次粒子径が500nmを超える場合、十分な表面平滑性が得られず光沢性を損なう場合がある。また炭酸カルシウムや酸化チタンのような白色顔料を主成分として用いた場合、インク受容層の吸収性を阻害し画像再現性が低下しやすい。
【0043】
本実施形態で用いる球状コロイダルシリカは、その表面に有機、無機の各種の表面処理を施しても構わない。中でもアルミナによって表面処理されたコロイダルシリカ(例えば、スノーテックスAK−L;日産化学工業社製、あるいはサイロジェット4001;グレース社製)は、優れた画像再現性を得る上で好適に用いられる。
【0044】
光沢保護層には、球状コロイダルシリカ以外の、例えばインク受容層の説明中に例示された顔料を、本発明の効果を損なわない範囲であれば含有することも可能である。その許容含有量は、顔料の種類によって異なるため本発明では規定されない。
【0045】
光沢保護層には、球状コロイダルシリカの粒子間を結着させるバインダーを含有する。このバインダーの種類としてはインク受容層に用いるものと同様のものを用いることが出来るが、顔料とバインダーの質量比が1:0.02〜1:1の範囲となるようにバインダーを含有させることが良好な耐キズ性と光沢性を保ちつつインク吸収性を損なわないために望ましく、より好ましくは1:0.02〜1:0.4の範囲である。顔料の質量を1としたときのバインダーの比が0.02より小さい場合には、塗工層の強度が不足し耐キズ性の改善が不十分である。一方、バインダーの比が1より大きい場合には、インクの吸収性を阻害し画像再現性の低下を招いたり、均一な光沢面が得難かったりする。
【0046】
光沢保護層の塗工液には、インク受容層の塗工液と同様にカチオン性高分子、分散剤、消泡剤、pH調整剤、湿潤剤、保水剤、増粘剤、架橋剤、離型剤、防腐剤、柔軟剤、ワックス、導電防止剤、帯電防止剤、サイズ剤、耐水化剤、可塑剤、蛍光増白剤、着色顔料、着色染料、還元剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、香料、脱臭剤等を適宜選定して添加することができる。
【0047】
本実施形態において光沢保護層を設ける方法としては、キャスト方式を用いることが望ましい。その際のキャスト方式については従来知られているウェット法、ゲル化法、リウェット法の各方式を用いることが可能であるが、本発明の光沢保護層は非常に薄いため、塗工液を塗工後ただちに鏡面ドラムに圧着乾燥する、いわゆるウェット法キャスト方式が好適に用いられる。また、フィルムキャスト方式或いはエンドレスプレス方式としても良い。光沢保護層の塗工液を塗工後、乾燥までの時間が長すぎると下層に塗工液が吸われて均一な塗工層を得難くなることが挙げられる。
【0048】
得られたシートの記録層表面及び裏面の平滑性を制御する目的で、必要に応じてキャレンダー処理を行っても良い。キャレンダーは、スーパーキャレンダー、マシンキャレンダー、ソフトキャレンダー等が挙げられるが、この方式は特に限定されない。
【0049】
本実施形態に係るインクジェット記録シートでは、シートに、別の機能を付与する加工を行ってもよい。例えば風合いを持たせるためにエンボス加工を行なっても良い。また片面のみに記録層を設ける場合には、記録層の裏面に機能性の加工、例えば帯電防止加工、粘着加工、貼合加工、滑り性付与等を行っても構わない。また、本実施形態では樹脂被覆紙を塗工基材として用いることは出来ないが、キャスト塗工後に裏面を樹脂被覆加工することは可能である。
【実施例】
【0050】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。また、例中の「%」は特に断らない限り「乾燥質量%」を示す。
【0051】
(実施例1)
<原紙の抄造>
ECF漂白されたLBKP(CSF=500ml)のパルプスラリーに、パルプに対し、カチオンでんぷん1.0%、軽質炭酸カルシウム5.0%、中性ロジンサイズ剤0.25%を添加し調製した紙料を長網式抄紙機で抄紙し、坪量150g/mの原紙を得た。
<下層インク受容層用塗工液の調製>
純水725kgにpH調整剤として工業用酢酸90%液を0.4kg加え、更に二次粒子径9μmの合成非晶質シリカ(商品名:サイロジェットP409、グレースデビソン社製)182kgを添加し、セリエミキサーで30分攪拌して固形分濃度20%の顔料スラリーを調製した。この顔料スラリーに更に純水86kgを加え、ケン化度98%、重合度2400のポリビニルアルコール9%溶液(商品名:PVA−124、クラレ社製)302kg及び蛍光増白剤(商品名;カヤホールPASQリキッド、日本化薬社製)0.8kgを加えて10分攪拌した後、インク定着剤30%溶液(商品名;SR1001、住友化学社製)91kg及びポリエチレン酢酸ビニルバインダー56%溶液(商品名;ポリゾールEVA AD−10、昭和高分子社製)113kgを添加したのち30分攪拌し、固形分濃度20%の下層インク受容層用塗工液1500kgを得た。
<下層インク受容層の形成>
上記の原紙の片面に、得られた塗工液を片面乾燥塗工量が10g/mとなるようにエアナイフコーターで塗工し、エアドライヤで熱風乾燥した。さらに、ソフトカレンダーを用いて線圧30kg/cm、25℃、2ニップ1パスの条件で表面処理を行い、下層インク受容層シートを得た。
<光沢インク受容層用シリカスラリーの調製>
純水772.5kgとポリジメチルジアリルアンモニウムクロリド51%溶液(商品名;シャロールDC902P、第一工業製薬社製)27.5kgをカウレス分散機で混合した後、気相法シリカ(商品名;アエロジル300、日本アエロジル社製)200kgを添加して1時間分散した。その後、高圧噴射衝突式粉砕機(商品名;アルティマイザー、スギノマシン社製)にて湿式粉砕処理し、固形分濃度21.4%のシリカスラリー1000kgを得た。粉砕後のシリカの二次粒子径をレーザー回折/散乱法の粒度分布測定器(商品名:HORIBA LA−920、堀場製作所製)で測定したところ、110nmであった。
<光沢インク受容層用塗工液1の調製>
上記シリカスラリー850kgと純水155kg及びエタノール50kgをセリエミキサーで混合した後、ケン化度88%、重合度3500のポリビニルアルコール8%溶液(商品名;PVA235、クラレ社製)298kgを添加し10分攪拌した後、硼酸4%水溶液43kg添加し更に10分混合した。その後、カチオン性ウレタンバインダー30%溶液(商品名;スーパーフレックス620、第一工業製薬社製)91kgとカチオン性ポリエチレンエマルジョン40%溶液(商品名;メイカテックスHP70C、明成化学工業社製)13kgを加えて30分攪拌し、固形分濃度16%の光沢インク受容層用塗工液1を1500kg得た。
<光沢インク受容層用ゲル化液の調製>
純水969.88kgに、界面活性剤(商品名;オルフィンPD002W、日信化学工業社製)0.12kgを加え攪拌した後、硼砂10kgと硼酸20kgを添加して1時間攪拌し、光沢インク受容層用ゲル化液を1000kg得た。
<光沢インク受容層の形成>
上記光沢インク受容層用塗工液1を、上記下層インク受容層シートに片面乾燥塗工量が10g/mとなるようにエアナイフコーターで塗工し、塗工層が湿潤状態にあるうちに、上記光沢インク受容層用ゲル化液を塗布してゲル化させたのち、表面温度105℃のキャストドラムに圧着乾燥し、光沢インク受容層シート1を得た。
<光沢保護層用塗工液1の調製>
純水962kgに一次粒子径50nmの表面アルミナ処理球状コロイダルシリカ20%懸濁液(商品名;スノーテックスAK−L、日産化学工業社製)25kgとバインダーとしてポリビニルアルコール8%溶液(商品名;PVA235、クラレ社製)12.5kgを添加し、さらにポリエチレンエマルジョン40%溶液(商品名;ハイテックEC107、東邦化学社製)0.5kgを加えて30分攪拌し、光沢保護層用塗工液1を1000kg得た。
<光沢保護層の形成>
上記光沢保護層用塗工液1を、上記光沢インク受容層シート1にロッドバーにて塗工したのち、直ちに表面温度105℃のキャストドラムに圧着乾燥し、乾燥塗工量0.1g/mの光沢保護層を設けて実施例1のインクジェット記録シート1−1を得た。
【0052】
(実施例2)
<光沢インク受容層用アルミナスラリーの調製>
純水646.6kgと硝酸61%溶液3.4kgをカウレス分散機で混合した後、アルミナA(商品名;アルミナC、日本アエロジル社製)175kg及びアルミナB(商品名;SpectrAL FA81、CABOT社製)175kgを添加して1時間分散した。その後、高圧噴射衝突式粉砕機(商品名;アルティマイザー、スギノマシン社製)にて湿式粉砕処理し、固形分濃度35%のアルミナスラリー1000kgを得た。粉砕後のアルミナをレーザー回折/散乱法の粒度分布測定器(商品名:HORIBA LA−920、堀場製作所製)で測定したところ、100nmであった。
<光沢インク受容層用塗工液2の調製>
上記アルミナスラリー944kgと純水158kgをセリエミキサーで混合した後、ケン化度98%、重合度2400のポリビニルアルコール9%溶液(商品名;PVA124、クラレ社製)367kgを添加し10分攪拌した後、カチオン性ポリエチレンエマルジョン40%溶液(商品名;メイカテックスHP70C、明成化学工業社製)12kg及びポリエチレンエマルジョン35%溶液(商品名;ハイテックE2000、東邦化学社製)19kgを加えて30分攪拌し、固形分濃度25%の光沢インク受容層用塗工液2を1500kg得た。
<光沢インク受容層の形成>
上記光沢インク受容層用塗工液2を、上記下層インク受容層シートに片面乾燥塗工量が10g/mとなるようにエアナイフコーターで塗工し、塗工層が湿潤状態にあるうちに、上記光沢インク受容層用ゲル化液を塗布してゲル化させたのち、表面温度105℃のキャストドラムに圧着乾燥し、光沢インク受容層シート2を得た。
<光沢保護層の形成>
上記光沢インク受容層シート2に、実施例1に準じて光沢保護層を設けて、実施例2のインクジェット記録シート2−1を得た。
【0053】
(実施例3)
<光沢インク受容層用塗工液3の調製>
上記シリカスラリー593kgと上記アルミナスラリー509kg及び純水156kgをセリエミキサーで混合した後、ケン化度98%、重合度2400のポリビニルアルコール9%溶液(商品名;PVA124、クラレ社製)165kgを添加し10分攪拌した後、カチオン性ウレタンバインダー30%溶液(商品名;スーパーフレックス620、第一工業製薬社製)49kgとカチオン性ポリエチレンエマルジョン40%溶液(商品名;メイカテックスHP70C、明成化学工業社製)11kg及びポリエチレンエマルジョン35%溶液(商品名;ハイテックE2000、東邦化学社製)17kgを加えて30分攪拌し、固形分濃度23%の光沢インク受容層用塗工液3を1500kg得た。
<光沢インク受容層の形成>
上記光沢インク受容層用塗工液3を、上記下層インク受容層シートに片面乾燥塗工量が10g/mとなるようにエアナイフコーターで塗工し、塗工層が湿潤状態にあるうちに、上記光沢インク受容層用ゲル化液を塗布してゲル化させたのち、表面温度105℃のキャストドラムに圧着乾燥し、光沢インク受容層シート3を得た。
<光沢保護層の形成>
上記光沢インク受容層シート3に、実施例1に準じて光沢保護層を設けて、実施例3のインクジェット記録シート3−1を得た。
【0054】
(実施例4)
<光沢インク受容層用塗工液4の調製>
上記シリカスラリー507kgと上記アルミナスラリー249kg及び球状コロイダルシリカ20%懸濁液(商品名;スノーテックスAK−L、一次粒子径;50nm、日産化学工業社製)507kgをセリエミキサーで混合した後、ケン化度98%、重合度2400のポリビニルアルコール9%溶液(商品名;PVA124、クラレ社製)161kgを添加し10分攪拌した後、カチオン性ウレタンバインダー30%溶液(商品名;スーパーフレックス620、第一工業製薬社製)48kgとカチオン性ポリエチレンエマルジョン40%溶液(商品名;メイカテックスHP70C、明成化学工業社製)11kg及びポリエチレンエマルジョン35%溶液(商品名;ハイテックE2000、東邦化学社製)17kgを加えて30分攪拌し、固形分濃度22.4%の光沢インク受容層用塗工液4を1500kg得た。
<光沢インク受容層の形成>
上記光沢インク受容層用塗工液4を、上記下層インク受容層シートに片面乾燥塗工量が10g/mとなるようにエアナイフコーターで塗工し、塗工層が湿潤状態にあるうちに、上記光沢インク受容層用ゲル化液を塗布してゲル化させたのち、表面温度105℃のキャストドラムに圧着乾燥し、光沢インク受容層シート4を得た。
<光沢保護層の形成>
上記光沢インク受容層シート4に、実施例1に準じて光沢保護層を設けて、実施例4のインクジェット記録シート4−1を得た。
【0055】
(実施例5)
<光沢インク受容層用塗工液5の調製>
上記シリカスラリー365kgと上記アルミナスラリー209kg及び表面アルミナ処理球状コロイダルシリカ20%懸濁液(商品名;スノーテックスAK−L、一次粒子径;50nm、日産化学工業社製)730kgをセリエミキサーで混合した後、ケン化度98%、重合度2400のポリビニルアルコール9%溶液(商品名;PVA124、クラレ社製)130kgを添加し10分攪拌した後、カチオン性ウレタンバインダー30%溶液(商品名;スーパーフレックス620、第一工業製薬社製)39kgとカチオン性ポリエチレンエマルジョン40%溶液(商品名;メイカテックスHP70C、明成化学工業社製)11kg及びポリエチレンエマルジョン35%溶液(商品名;ハイテックE2000、東邦化学社製)16kgを加えて30分攪拌し、固形分濃度22%の光沢インク受容層用塗工液5を1500kg得た。
<光沢インク受容層の形成>
上記光沢インク受容層用塗工液5を、上記下層インク受容層シートに片面乾燥塗工量が10g/mとなるようにエアナイフコーターで塗工し、塗工層が湿潤状態にあるうちに、上記光沢インク受容層用ゲル化液を塗布してゲル化させたのち、表面温度105℃のキャストドラムに圧着乾燥し、光沢インク受容層シート5を得た。
<光沢保護層の形成>
上記光沢インク受容層シート5に、実施例1に準じて光沢保護層を設けて、実施例5のインクジェット記録シート5−1を得た。
【0056】
(実施例6)
<光沢保護層用塗工液2の調製>
純水962kgに一次粒子径50nmの球状コロイダルシリカ20%懸濁液(商品名;スノーテックス20L、日産化学工業社製)25kgとバインダーとしてポリビニルアルコール8%溶液(商品名;PVA235、クラレ社製)12.5kgを添加し、さらにポリエチレンエマルジョン40%溶液(商品名;ハイテックEC107、東邦化学社製)0.5kgを加えて30分攪拌し、光沢保護層用塗工液2を1000kg得た。
<光沢保護層の形成>
上記光沢保護層用塗工液2を、上記光沢インク受容層シート1にロッドバーにて塗工したのち、直ちに表面温度105℃のキャストドラムに圧着乾燥し、乾燥塗工量0.1g/mの光沢保護層を設けて、実施例6のインクジェット記録シート1−2を得た。
【0057】
参考例7)
<光沢保護層用塗工液3の調製>
純水962kgに一次粒子径25nm、二次粒子径280nmの房状凝集体コロイダルシリカ20%懸濁液(商品名;スノーテックスHS−M−20、日産化学工業社製)25kgとバインダーとしてポリビニルアルコール8%溶液(商品名;PVA235、クラレ社製)12.5kgを添加し、さらにポリエチレンエマルジョン40%溶液(商品名;ハイテックEC107、東邦化学社製)0.5kgを加えて30分攪拌し、光沢保護層用塗工液3を1000kg得た。
<光沢保護層の形成>
上記光沢保護層用塗工液3を、上記光沢インク受容層シート1にロッドバーにて塗工したのち、直ちに表面温度105℃のキャストドラムに圧着乾燥し、乾燥塗工量0.1g/mの光沢保護層を設けて、参考例7のインクジェット記録シート1−3を得た。
【0058】
参考例8)
<光沢保護層用塗工液4の調製>
純水953.7kgに一次粒子径10〜15nm、二次粒子径80〜120nmの鎖状コロイダルシリカ15%懸濁液(商品名;スノーテックスPS−SO、日産化学工業社製)33.3kg及びバインダーとしてポリビニルアルコール8%溶液(商品名;PVA235、クラレ社製)12.5kgを添加し、さらにポリエチレンエマルジョン40%溶液(商品名;ハイテックEC107、東邦化学社製)0.5kgを加えて30分攪拌し、光沢保護層用塗工液4を1000kg得た。
<光沢保護層の形成>
上記光沢保護層用塗工液4を、上記光沢インク受容層シート1にロッドバーにて塗工したのち、直ちに表面温度105℃のキャストドラムに圧着乾燥し、乾燥塗工量0.1g/mの光沢保護層を設けて、参考例8のインクジェット記録シート1−4を得た。
【0059】
(実施例9)
<光沢保護層用塗工液5の調製>
純水968kgに表面アルミナ処理球状コロイダルシリカ20%懸濁液(商品名;スノーテックスAK−L、一次粒子径;50nm、日産化学工業社製)30kg及びバインダーとしてポリビニルアルコール8%溶液(商品名;PVA235、クラレ社製)1.5kgを添加し、さらにポリエチレンエマルジョン40%溶液(商品名;ハイテックEC107、東邦化学社製)0.5kgを加えて30分攪拌し、光沢保護層用塗工液5を1000kg得た。
<光沢保護層の形成>
上記光沢保護層用塗工液5を、上記光沢インク受容層シート1にロッドバーにて塗工したのち、直ちに表面温度105℃のキャストドラムに圧着乾燥し、乾燥塗工量0.1g/mの光沢保護層を設けて、実施例9のインクジェット記録シート1−5を得た。
【0060】
(参考例10)
<光沢保護層用塗工液6の調製>
純水968.75kgに表面アルミナ処理球状コロイダルシリカ20%懸濁液(商品名;スノーテックスAK−L、一次粒子径;50nm、日産化学工業社製)30kg及びバインダーとしてポリビニルアルコール8%溶液(商品名;PVA235、クラレ社製)0.75gを添加し、さらにポリエチレンエマルジョン40%溶液(商品名;ハイテックEC107、東邦化学社製)0.5kgを加えて30分攪拌し、光沢保護層用塗工液6を1000kg得た。
<光沢保護層の形成>
上記光沢保護層用塗工液6を、上記光沢インク受容層シート1にロッドバーにて塗工したのち、直ちに表面温度105℃のキャストドラムに圧着乾燥し、乾燥塗工量0.1g/mの光沢保護層を設けて、参考例10のインクジェット記録シート1−6を得た。
【0061】
(実施例11)
<光沢保護層用塗工液7の調製>
純水947kgに表面アルミナ処理球状コロイダルシリカ20%懸濁液(商品名;スノーテックスAK−L、一次粒子径;50nm、日産化学工業社製)15kg及びバインダーとしてポリビニルアルコール8%溶液(商品名;PVA235、クラレ社製)37.5kgを添加し、さらにポリエチレンエマルジョン40%溶液(商品名;ハイテックEC107、東邦化学社製)0.5kgを加えて30分攪拌し、光沢保護層用塗工液7を1000kg得た。
<光沢保護層の形成>
上記光沢保護層用塗工液7を、上記光沢インク受容層シート1にロッドバーにて塗工したのち、直ちに表面温度105℃のキャストドラムに圧着乾燥し、乾燥塗工量0.10g/mの光沢保護層を設けて、実施例11のインクジェット記録シート1−7を得た。
【0062】
(参考例12)
<光沢保護層用塗工液8の調製>
純水939.5kgに表面アルミナ処理球状コロイダルシリカ20%懸濁液(商品名;スノーテックスAK−L、一次粒子径;50nm、日産化学工業社製)10kg及びバインダーとしてポリビニルアルコール8%溶液(商品名;PVA235、クラレ社製)50kgを添加し、さらにポリエチレンエマルジョン40%溶液(商品名;ハイテックEC107、東邦化学社製)0.5kgを加えて30分攪拌し、光沢保護層用塗工液8を1000kg得た。
<光沢保護層の形成>
上記光沢保護層用塗工液8を、上記光沢インク受容層シート1にロッドバーにて塗工したのち、直ちに表面温度105℃のキャストドラムに圧着乾燥し、乾燥塗工量0.1g/mの光沢保護層を設けて、参考例12のインクジェット記録シート1−8を得た。
【0063】
(参考例13)
<光沢保護層用塗工液9の調製>
純水837.0kgに表面アルミナ処理球状コロイダルシリカ20%懸濁液(商品名;スノーテックスAK−L、一次粒子径;50nm、日産化学工業社製)150kg及びバインダーとしてポリビニルアルコール8%溶液(商品名;PVA235、クラレ社製)12.5kgを添加し、さらにポリエチレンエマルジョン40%溶液(商品名;ハイテックEC107、東邦化学社製)0.5kgを加えて30分攪拌し、光沢保護層用塗工液9を1000kg得た。
<光沢保護層の形成>
上記光沢保護層用塗工液9を、上記光沢インク受容層シート1にロッドバーにて塗工したのち、直ちに表面温度105℃のキャストドラムに圧着乾燥し、乾燥塗工量0.5g/mの光沢保護層を設けて、参考例13のインクジェット記録シート1−9を得た。
【0064】
(実施例14)
<光沢保護層用塗工液10の調製>
純水992.4kgに表面アルミナ処理球状コロイダルシリカ20%懸濁液(商品名;スノーテックスAK−L、一次粒子径;50nm、日産化学工業社製)5kg及びバインダーとしてポリビニルアルコール8%溶液(商品名;PVA235、クラレ社製)2.5kgを添加し、さらにポリエチレンエマルジョン40%溶液(商品名;ハイテックEC107、東邦化学社製)0.1kgを加えて30分攪拌し、光沢保護層用塗工液10を1000kg得た。
<光沢保護層の形成>
上記光沢保護層用塗工液10を、上記光沢インク受容層シート1にロッドバーにて塗工したのち、直ちに表面温度105℃のキャストドラムに圧着乾燥し、乾燥塗工量0.02g/mの光沢保護層を設けて、実施例14のインクジェット記録シート1−10を得た。
【0065】
(実施例15)
<光沢保護層用塗工液11の調製>
純水971.17kgに表面アルミナ処理球状コロイダルシリカ20%懸濁液(商品名;スノーテックスAK−L、一次粒子径;50nm、日産化学工業社製)25kg及びバインダーとしてカチオン性ウレタンバインダー30%溶液(商品名;スーパーフレックス620、第一工業製薬社製)3.33kgを添加し、さらにポリエチレンエマルジョン40%溶液(商品名;ハイテックEC107、東邦化学社製)0.5kgを加えて30分攪拌し、光沢保護層用塗工液11を1000kg得た。
<光沢保護層の形成>
上記光沢保護層用塗工液11を、上記光沢インク受容層シート1にロッドバーにて塗工したのち、直ちに表面温度105℃のキャストドラムに圧着乾燥し、乾燥塗工量0.1g/mの光沢保護層を設けて、実施例15のインクジェット記録シート1−11を得た。
【0066】
(参考例16)
<光沢保護層用塗工液12の調製>
純水962kgに上記光沢インク受容層用シリカスラリー25kg及びバインダーとしてポリビニルアルコール8%溶液(商品名;PVA235、クラレ社製)12.5kgを添加し、さらにポリエチレンエマルジョン40%溶液(商品名;ハイテックEC107、東邦化学社製)0.5kgを加えて30分攪拌し、光沢保護層用塗工液12を1000kg得た。
<光沢保護層の形成>
上記光沢保護層用塗工液12を、上記光沢インク受容層シート1にロッドバーにて塗工したのち、直ちに表面温度105℃のキャストドラムに圧着乾燥し、乾燥塗工量0.1g/mの光沢保護層を設けて、参考例16のインクジェット記録シート1−12を得た。
【0067】
(実施例17)
<光沢インク受容層の形成>
上記光沢インク受容層用塗工液2を、上記下層インク受容層シートに片面乾燥塗工量が10g/mとなるようにエアナイフコーターで塗工し、塗工層を熱風ドライヤで一旦乾燥させた後、60℃に加温した純水を塗布して再膨潤させたのち、表面温度120℃のキャストドラムに圧着乾燥し、光沢インク受容層シート2aを得た。
<光沢保護層の形成>
上記光沢インク受容層シート2aに、実施例1に準じて光沢保護層を設けて、実施例17のインクジェット記録シート2a−1を得た。
【0068】
(比較例1)
<光沢インク受容層の形成>
上記光沢インク受容層用塗工液1を、上記下層インク受容層シートに片面乾燥塗工量が10g/mとなるようにエアナイフコーターで塗工し、熱風ドライヤで乾燥した。さらに、ソフトカレンダーを用いて線圧30kg/cm、25℃、2ニップ1パスの条件で表面処理を行い、光沢インク受容層シート1bを得た。
<光沢保護層の形成>
上記光沢インク受容層シート1bに実施例1に準じて光沢保護層を設けて、比較例1のインクジェット記録シート1b−1を得た。
【0069】
(比較例2)
<光沢保護層の形成>
上記光沢保護層用塗工液1を、上記光沢インク受容層シート1に片面乾燥塗工量が0.1g/mとなるようにエアナイフコーターで塗工し、エアドライヤで熱風乾燥した。さらに、ソフトカレンダーを用いて線圧30kg/cm、25℃、2ニップ1パスの条件で表面処理を行い、比較例2のインクジェット記録シート1−1bを得た。
【0070】
(比較例3)
<光沢保護層用塗工液13の調製>
純水737.0kgに表面アルミナ処理球状コロイダルシリカ20%懸濁液(商品名;スノーテックスAK−L、一次粒子径;50nm、日産化学工業社製)250kg及びバインダーとしてポリビニルアルコール8%溶液(商品名;PVA235、クラレ社製)12.5kgを添加し、さらにポリエチレンエマルジョン40%溶液(商品名;ハイテックEC107、東邦化学社製)0.5kgを加えて30分攪拌し、光沢保護層用塗工液13を1000kg得た。
<光沢保護層の形成>
上記光沢保護層用塗工液13を、上記光沢インク受容層シート1にロッドバーにて塗工したのち、直ちに表面温度105℃のキャストドラムに圧着乾燥し、乾燥塗工量0.7g/mの光沢保護層を設けて、比較例3のインクジェット記録シート1−13を得た。
【0071】
(比較例4)
<光沢保護層用塗工液14の調製>
純水996.2kgに表面アルミナ処理球状コロイダルシリカ20%懸濁液(商品名;スノーテックスAK−L、一次粒子径;50nm、日産化学工業社製)2.5kg及びバインダーとしてポリビニルアルコール8%溶液(商品名;PVA235、クラレ社製)1.25kgを添加し、さらにポリエチレンエマルジョン40%溶液(商品名;ハイテックEC107、東邦化学社製)0.05kgを加えて30分攪拌し、光沢保護層用塗工液14を1000kg得た。
<光沢保護層の形成>
上記光沢保護層用塗工液14を、上記光沢インク受容層シート1にロッドバーにて塗工したのち、直ちに表面温度105℃のキャストドラムに圧着乾燥し、乾燥塗工量0.01g/mの光沢保護層を設けて、比較例4のインクジェット記録シート1−14を得た。
【0072】
(比較例5)
光沢保護層を設けなかった以外は実施例1に準じて、比較例5のインクジェット記録シート1−0を得た。
【0073】
以上の実施例及び比較例において得られたインクジェット記録シートについて、表1に記録層構成の概略を示した。
【表1】

【0074】
<評価方法>
得られたインクジェット記録シートは、23℃−50%RHの恒温恒湿室で24時間調湿後、同環境下でそれぞれ下記の方法に従って、評価を行った。
<記録層表面の光沢面質>
得られたインクジェット記録シートの記録層表面の20度光沢度を、JIS P 8142:2005「紙及び板紙の75度鏡面光沢度試験方法」及びJIS Z 8741:1997「鏡面光沢度‐測定方法」に準拠して測定した。また、記録層表面の光沢ムラを目視で評価した。
<インクジェット印刷適性>
市販の染料インクフルカラーインクジェットプリンタ(商品名;PM−900C、セイコーエプソン社製)及び顔料インクフルカラーインクジェットプリンタ(商品名;PX−G900、セイコーエプソン社製)を用いて写真画像を印刷し、画像細部の潰れや境界部の滲み、発色の鮮やかさ、インク吸収速度を目視観察してインクジェット印刷適性を評価した。
<記録層表面の耐キズ性>
得られたインクジェット記録シートの記録面表面の耐キズ性を、JIS P8136:1994「板紙の耐摩耗強さ試験方法」に準拠して荷重500gf、5往復の磨耗試験を行い、試験後の記録層表面のコスレ傷(記録層表面の破壊)及びコスレ跡(記録層表面の光沢変化)を目視で評価した。
【0075】
以上の物性のうち、目視評価によるものは、下記要領によって記述することにした。
◎…優れている、
○…良い(実用レベル)、
△…やや劣る(実用下限レベル)、
×…劣る(実用に適さない)
【0076】
表2に表面光沢面質とインクジェット印刷適性の評価結果及び表面耐キズ試験の評価結果を示す。
【表2】

【0077】
実施例1〜、9、11、14、15、17はいずれも、インクジェット印刷において高いインク吸収性と画像再現性を保ちつつ、且つ表面の耐キズ性に優れ、且つ光沢面質を有し、実用レベルを満足するものであった。その中でも、具体的には、光沢保護層の乾燥塗工量が0.5g/mである参考例13を基準に考えれば、乾燥塗工量が0.1g/mである実施例1は、光沢ムラが少なく、インクジェット印刷適性及び表面耐キズ性がいずれも向上した。また、光沢保護層の乾燥塗工量が0.02g/mである実施例14を基準に考えれば、乾燥塗工量が0.1g/mである実施例1は、20度光沢値が向上し、表面耐キズ性が向上した。また、光沢保護層の顔料とバインダーの比が1:0.01である参考例10を基準に考えれば、顔料とバインダーの比が1:0.2である実施例1は、20度光沢値が向上し、表面耐キズ性が向上した。光沢保護層の顔料とバインダーの比が1:2である参考例12を基準に考えれば、顔料とバインダーの比が1:0.2である実施例1は、光沢ムラが少なく、インクジェット印刷適性が向上し、コスレ傷が少なくなった。また、光沢インク受容層に含有される全無機顔料のうち50質量%が気相法シリカ及びアルミナである実施例5を基準に考えれば、65質量%である実施例4は、光沢ムラが少なくなり、また、インクジェット印刷適性が向上し、さらに100質量%である実施例1〜3は、光沢ムラがさらに少なくなり、また、インクジェット印刷適性がより向上する。また、光沢保護層に含有させるシリカ種類として房状コロイダルシリカを用いる参考例7を基準に考えれば、アルミナ処理球状コロイダルシリカを使用する実施例1は、コスレ跡が少なくなる。また、光沢保護層に含有させるシリカ種類として鎖状コロイダルシリカを用いる参考例8を基準に考えれば、アルミナ処理球状コロイダルシリカを使用する実施例1は、20度光沢値が向上し、顔料インクでのインクジェット印刷適性及び表面耐キズ性がいずれも向上した。また、光沢保護層に含有させるシリカ種類として気相法シリカを用いる参考例16を基準に考えれば、アルミナ処理球状コロイダルシリカを使用する実施例1或いは球状コロイダルシリカを使用する実施例6は、20度光沢値が向上し、表面耐キズ性が向上した。また、光沢インク受容層をリウェット法キャスト方式で形成した実施例17は、ゲル化法キャスト方式で形成した実施例2と同等の性能のインクジェット記録シートが得られた。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
通気性を有する支持体の少なくとも片面に、1層以上からなる記録層を設けたインクジェット記録シートの製造方法において、
最表層に隣接する記録層を、極微細顔料を高圧噴射衝突式粉砕機で湿式粉砕処理したスラリーとバインダーとを主成分として含有する塗工液を塗工して得られた塗工膜が湿潤状態のうちに鏡面体に圧着し、乾燥することによって、光沢インク受容層とする工程と、
最表層の記録層を、極微細顔料として球状コロイダルシリカとバインダーとを主成分とし、該バインダーを該球状コロイダルシリカに対して質量比で1:0.02〜1:1の割合で含有する塗工液を、乾燥塗工量が0.02〜0.3g/mとなるよう塗工し、得られた塗工膜が湿潤状態のうちに鏡面体に圧着し、乾燥することによって、光沢保護層とする工程と、
を有することを特徴とするインクジェット記録シートの製造方法。
【請求項2】
前記光沢インク受容層とする工程において、前記塗工液の塗工後湿潤状態にあるうちに、前記塗工膜をゲル化させる成分を含有するゲル化液を塗布又は含浸したのち圧着し、乾燥し、
前記光沢保護層とする工程において、前記塗工液の塗工後直ちに鏡面ドラム又はフィルムに圧着し、乾燥することを特徴とする請求項に記載のインクジェット記録シートの製造方法。
【請求項3】
前記光沢インク受容層とする工程において、前記塗工液の塗工後ドライヤゾーンにて一旦乾燥し、その後リウェット液によって再湿潤させたのち、圧着し、乾燥し、
前記光沢保護層とする工程において、前記塗工液の塗工後直ちに鏡面ドラム又はフィルムに圧着し、乾燥することを特徴とする請求項に記載のインクジェット記録シートの製造方法。
【請求項4】
前記光沢インク層の極微細顔料のうち60質量%以上が、気相法シリカ又はアルミナのいずれか一方あるいは両方であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載のインクジェット記録シートの製造方法。
【請求項5】
前記球状コロイダルシリカの一部又は全ては、表面がアルミナ処理されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載のインクジェット記録シートの製造方法。

【公開番号】特開2010−115925(P2010−115925A)
【公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−5614(P2010−5614)
【出願日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【分割の表示】特願2005−331579(P2005−331579)の分割
【原出願日】平成17年11月16日(2005.11.16)
【出願人】(000241810)北越紀州製紙株式会社 (196)
【Fターム(参考)】