説明

インクジェット記録シート及びその製造方法

【課題】本発明の目的は、インク受容層を高価な顔料であるシリカを顔料の主成分とせずに形成すること及び支持体の凹凸をインク受容層のアンダー層によって低減することを共に達成し、結果として、印字ムラが無く、高い印字の均一性を有し、かつ、経済的なインクジェット記録シートとその製造方法を提供することにある。
【解決手段】本発明のインクジェット記録シートは、支持体上の片面又は両面に1層以上からなるインク受容層を設けたインクジェット記録シートにおいて、前記インク受容層を構成するアンダー層は、焼成クレーと接着剤とを主成分として含有し、かつ、該アンダー層に含有されている全顔料のうち70質量%以上が焼成クレーであり、かつ、該アンダー層がソフトチップブレードコーターで塗工して設けられたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット記録シートに関し、特に印字ムラが無く、経済性に優れたインクジェット記録シートとその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、コンピューター技術やデジタルカメラの飛躍的な進歩とその低価格化によってデジタル画像の取り扱いが極めて容易になり、それに伴って高性能なパーソナルプリンターが開発されて広く普及しており、銀塩写真並みのフルカラー印刷を手軽に行うことが可能になった。現在、パーソナルプリンターとして最も普及しているのは、インクジェットプリンターである。インクジェット方式の利点としては、多色化が容易なこと、高速印刷が可能であること、非接触型で低騒音であること、装置が小型で安価なことが挙げられる。
【0003】
インクジェット方式の画像形成システムを、次に示す。すなわち、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラック等の各色のインクを、サーマル方式やピエゾ方式等によってノズルから微小な液滴として吐出し、記録媒体上に画像を形成せしめる。
【0004】
インクジェット記録用媒体に要求される特性としては、インク吸収容量が大きくインク吸収速度が速いこと、発色が鮮やかで均一であること、滲みが少なく解像度が高いこと等が挙げられる。
【0005】
前記要求特性を得るため、インクジェット記録用紙においては、平均粒子径数μm〜十数μm程度の合成非晶質シリカを主成分とした、厚さ数μm〜数十μmのインク吸収層を基材上に形成させることによって、より大きなインク吸収容量と鮮やかな発色性を実現した、いわゆるインクジェット専用紙が主流となっている。
【0006】
例えば、接着剤として澱粉、ポリビニルアルコール、更に酢酸ビニル重合体を必須成分とし、かつ、ブレードコーターで塗工したインクジェット記録媒体が提案されている(例えば特許文献1を参照。)。
【0007】
【特許文献1】特許3891017号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
インクジェット記録媒体は、特許文献1に記載のように従来の製造方法では、ブレードコーターを使用しているため、原紙の凹凸の影響を大きく受け、高い印字の均一性を得ることが難しい。また、特許文献1の実施例の記述からわかるように高価な顔料であるシリカを100部使用しているため、経済的にも課題が残る。
【0009】
そこで本発明の目的は、インク受容層を高価な顔料であるシリカを顔料の主成分とせずに形成すること及び支持体の凹凸をインク受容層のアンダー層によって低減することを共に達成し、結果として、印字ムラが無く、高い印字の均一性を有し、かつ、経済的なインクジェット記録シートとその製造法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、鋭意検討の結果、トップ層塗工前の凹凸状態が印字品質に大きく関与しており、これを適正に保つためにアンダー層の顔料選定及び塗工方法を規定することよって、高価なシリカを顔料の主成分とせずとも印字ムラが無く高い印字の均一性を有するインクジェット記録シートが得られることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明に係るインクジェット記録シートは、支持体上の片面又は両面に1層以上からなるインク受容層を設けたインクジェット記録シートにおいて、前記インク受容層を構成するアンダー層は、焼成クレーと接着剤とを主成分として含有し、かつ、該アンダー層に含有されている全顔料のうち70質量%以上が焼成クレーであり、かつ、該アンダー層がソフトチップブレードコーターで塗工して設けられたことを特徴とする。
【0011】
本発明に係るインクジェット記録シートでは、前記インク受容層を構成するアンダー層が、顔料の第2成分として合成非晶質シリカを30質量%以下含有していることが好ましい。アンダー層に含有される顔料として合成非晶質シリカを第2成分とすることで、高いインク吸収性を付与できる。
【0012】
本発明に係るインクジェット記録シートでは、前記インク受容層の表面にインク定着剤がオーバーコートされていてもよい。インクの定着性がより向上する。
【0013】
本発明に係るインクジェット記録シートでは、エンボス加工がなされていてもよい。紙に風合いを持たせることができる。
【0014】
本発明に係るインクジェット記録シートでは、前記支持体の表面に前記インク受容層を設け、裏面に帯電防止加工、滑り性付与加工又は樹脂ラミネートのいずれかの機能性加工を施してもよい。帯電防止加工によってインクジェット記録シートのプリンター搬送性を安定させ、滑り性付与加工によって使いやすさを向上させ、或いは、樹脂ラミネートによってカール安定性を向上させ又用紙強度を付与できる。
【0015】
本発明に係るインクジェット記録シートの製造方法は、支持体上の片面又は両面に1層以上からなるインク受容層を設けたインクジェット記録シートの製造方法において、全顔料のうち70質量%以上が焼成クレーである顔料と、接着剤とを含有し、固形分濃度が35〜55質量%の塗工液を調製する工程と、支持体の表面に前記塗工液をソフトチップブレードコーターで塗工してインク受容層を構成するアンダー層を塗工する工程と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、インク受容層を高価な顔料であるシリカを顔料の主成分とせずに形成すること及び支持体の凹凸をインク受容層のアンダー層によって低減することを共に達成することができ、結果として、印字ムラが無く、高い印字の均一性を有し、かつ、経済的なインクジェット記録シートが得られた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明について実施形態を示して詳細に説明するが、本発明はこれらの記載に限定して解釈されない。また、発明の効果を奏する限り、実施形態を変形してもよい。本実施形態に係るインクジェット記録シートは、支持体上の片面又は両面に1層以上からなるインク受容層を設けたインクジェット記録シートにおいて、前記インク受容層を構成するアンダー層は、焼成クレーと接着剤とを主成分として含有し、かつ、該アンダー層に含有されている全顔料のうち70質量%以上が焼成クレーであり、かつ、該アンダー層がソフトチップブレードコーターで塗工して設けられたものである。
【0018】
印字品質、特に印字ムラは、インク受容層の顔料として使用する焼成クレーを一定の割合以上に配合し、顔料として第1成分(主顔料)としなければならない。インク受容層に含有される全顔料のうち焼成クレーの割合が所定配合割合より少ないと、塗工液の粘度上昇の問題が生ずる。例えば、全顔料のうち従来使用している合成非晶質シリカの割合が焼成クレーの割合を超えて高くなると、粘度上昇が発生し、生産性を阻害することとなる。合成非晶質シリカ以外の顔料を選択した場合は、インク受容量が不足する懸念がある。
【0019】
通常のいわゆるブレードコーターは、ベントタイプとチップタイプに分類され、更にチップタイプの中でもソフトタイプとハードタイプとに分類される。ここで使用するソフトタイプのチップブレードは、先端がウレタン加工してあり、塗工液の掻き取りがよりソフトになるように施されている。
【0020】
したがって、ソフトチップブレードコーターは、ブレードコーターの掻き取り能力を維持しながら、輪郭塗工であるエアナイフコーターに近い塗工面が施される。
【0021】
ここで合成非晶質シリカをインク受容層の顔料とした場合、塗工液は、固形分濃度25質量%以上としたときに流動性が悪化し、塗料として適さなくなる。しかし、インク受容層の全顔料のうち焼成クレーを70質量%以上とした塗工液は、固形分濃度35〜55質量%と高濃度であっても流動性が確保される。また、高固形分濃度で塗工した方が塗工面の仕上がりを均一にさせることができ、焼成クレーを顔料とした高固形分濃度の塗工液がソフトチップブレードコーターで塗工されることによって、より均一なアンダー塗工層が形成される。
【0022】
また、焼成クレーをインク受容層の顔料の主成分とすると固形分濃度が高い塗工液として使用することができるため、高い固形分濃度の塗工液とできない合成非晶質シリカを顔料の主成分とする場合と比較して生産性が向上する。また、焼成クレーは合成非晶質シリカと比較して安価であるため、経済性の面でも優れている。
【0023】
本実施形態のインクジェット記録媒体の支持体は、特に制限されるものではなく、木材繊維主体の紙、ポリエチレンなどの熱可塑性樹脂シート又は木材繊維、合成繊維を主体とした不織布などのシート状物質が挙げられ、必要に応じ、例えば紙の場合は、内添サイズ剤の添加、サイズプレスによるサイズ剤及び/又は表面改質剤の塗布を行う。
【0024】
本実施形態のインクジェット記録媒体の支持体に使用される木材繊維としては、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)、針葉樹晒クラフトパルプ等の化学パルプ、グランドパルプ、加圧式砕木パルプ、リファイナー砕木パルプ、サーモメカニカルパルプ、ケミサーモメカニカルパルプ、ケミメカニカルパルプ等の機械パルプ、脱墨古紙パルプ等の古紙パルプ等の木材パルプを含む。また、必要に応じて従来公知の填料、バインダー、サイズ剤、定着剤、歩留まり向上剤、紙力増強剤等の各種添加剤を1種以上用いて混合し、長網抄紙機、円網抄紙機、ツインワイヤー抄紙機等の各種抄紙機にて紙匹を形成した後に、乾燥させて得ることができる。特にインク吸収性に優れた支持体を使用することが望ましい。
【0025】
インク受容層は少なくとも1層以上から構成する。本実施形態では、インク受容層が1層から構成される場合には、そのインク受容層をアンダー層に含める。また、インク受容層が2層以上から構成される場合には、支持体上の層をアンダー層という。
【0026】
アンダー層は、含有されている全顔料のうち70質量%以上を焼成クレーとする。含有されている全顔料のうち焼成クレーが70質量%未満であると、高い固形分濃度の塗工液とすることが難しくなり、ソフトチップブレードコーターで塗工する意義が薄れ、塗工面の均一な仕上がりのメリットも薄れる。
【0027】
インク受容層に用いる顔料としては、アンダー層に焼成クレー以外の顔料として合成非晶質シリカ、コロイダルシリカ、コロイダルアルミナ、擬ベーマイト、水酸化アルミニウム、アルミナ、リトポン、加水ハロイサイト、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、珪酸アルミニウム、ケイソウ土、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、カオリン、タルク、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、炭酸亜鉛、サチンホワイト等の白色無機顔料はもとより、スチレン系プラスチックピグメント、アクリル系プラスチックピグメント、ポリエチレン、マイクロカプセル、尿素樹脂、メラミン樹脂等の有機顔料も使用することができるが、高いインク吸収性を得るために、合成シリカが好ましく用いられる。ここで、本実施形態に係るインクジェット記録シートでは、インク受容層を構成するアンダー層が、顔料の第2成分として合成非晶質シリカを30質量%以下含有していることが好ましい。アンダー層に含有される顔料として焼成クレーを第1成分とした上で合成非晶質シリカを第2成分とすることで、より高いインク吸収性を付与できる。
【0028】
インク受容層のトップ層については、配合比率の制限なく前記顔料が使用できる。
【0029】
インク受容層には、アンダー層及びトップ層共に次のようなバインダーを含有させる。例えば、ポリビニルアルコール、ポリエチレン酢酸ビニル、変性ポリビニルアルコール、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等のセルロース誘導体、ポリビニルピロリドン、ポリビニルピリジン、ポリアクリルアミド、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、でんぷん、変性でんぷん、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸ソーダ、アルギン酸ソーダ、ポリスチレンスルホン酸ソーダ、カゼイン、ゼラチン、テルペン等の水溶性バインダー、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイソブチレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアセタール、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸エチル、ポリメタクリル酸メチル、ポリアクリロニトリル、ポリテトラフルオロエチレン、ポリ弗化ビニリデン、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリクロロプレン、ナイロン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリビスクロロメチルオキサシクロブタン、ポリフェニレンオキサイド、ポリスルフォン、ポリ−p−キシリレン、ポリイミド、ポリベンズイミダゾール、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、アルキド樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ジアリルフタレート樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体、変性スチレン−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、メチルメタアクリレート−ブタジエン共重合体、アクリル酸エステル−メタアクリル酸エステル共重合体、酢酸ビニル−マレイン酸エステル共重合体、酢酸ビニル−アクリル共重合体、エチレン−酢酸ビニル−アクリル共重合体等のエマルジョン型バインダー又はエマルジョン型であるウレタン樹脂バインダーを例示することができる。これらのバインダーの重合度、ケン化度、Tg(ガラス転移温度)、MFT(最低造膜温度)などは、限定されない。また、これらの分子鎖中に架橋性の官能基を付加しても構わない。
【0030】
本実施形態のインクジェットのインク受容層には、アンダー層及びトップ層共にインクジェットインクの定着性と発色性を向上させるために、カチオン性高分子を主成分とする次に列記するインク定着剤を用いることが好ましい。このようなカチオン性インク定着剤としては、ポリエチレンイミン、エピクロルヒドリン変性ポリアルキルアミン、ポリアミンポリアミドエピクロルヒドリン、ジメチルアミンアンモニアエピクロルヒドリン、ポリビニルベンジルトリメチルアンモニウムハライド、ポリジアクリルジメチルアンモニウムハライド、ポリジメチルアミノエチルメタクリレート塩酸塩、ポリビニルピリジウムハライド、カチオン性ポリアクリルアミド、カチオン性ポリスチレン共重合体、ジアリルジメチルアンモニウムクロライド重合物、ジアリルジメチルアンモニウムクロライド二酸化硫黄共重合物、ジアリルジメチルアンモニウムクロライドアミド共重合物、ジシアンジアミドホルマリン重縮合物、ジシアンジアミドジエチレントリアミン重縮合物、ポリアリルアミン、ポリアリルアミン塩酸塩、ポリアクリルアミド系樹脂、ポリアミドエポキシ樹脂、メラミン樹脂酸コロイド、尿素系樹脂、カチオン変性ポリビニルアルコール、アミノ酸型両性界面活性剤、ベタイン型化合物、その他第4級アンモニウム塩類、ポリアミン等が用いられる。
【0031】
インク受容層に用いる塗工液には、必要に応じて分散剤、消泡剤、pH調整剤、湿潤剤、保水剤、増粘剤、架橋剤、離型剤、防腐剤、柔軟剤、ワックス、導電防止剤、帯電防止剤、サイズ剤、耐水化剤、可塑剤、蛍光増白剤、着色顔料、着色染料、還元剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、香料、脱臭剤等を適宜選定して添加することができる。また、例えばシリカスラリーに含有させる、又はバインダーに含有させるなど、これらを添加する場所、方法については特に限定されない。
【0032】
インク受容層のアンダー層用の塗工液は、全顔料のうち70質量%以上が焼成クレーである顔料と、接着剤とを含有させ、固形分濃度が35〜55質量%に調製することが好ましく、固形分濃度が40〜50質量%に調製することがより好ましい。固形分濃度が35質量%未満では、生産効率を上げることができず、またソフトチップブレードコーターで塗工しても、所望の塗工量を均一に塗工することができない場合がある。一方、固形分濃度が55質量%を超えると、焼成クレーを使用しても塗工液の流動性が得られにくくなる。
【0033】
インク受容層のアンダー層は、このようにして調製された塗工液をソフトチップブレードコーターによってオフマシン又はオンマシンで、乾燥塗工量が片面あたり3〜10g/m、好ましくは5〜8g/mとなるように支持体に片面若しくは両面塗工する。
【0034】
インク受容層のトップ層に関しては、一般の塗工機、例えば、ブレードコーター、ロールコーター、エアナイフコーター、ロッドコーター、リップコーター、カーテンコーター、スプレーコーター、ダイコーター、チャンブレックスコーター、チップブレードコーターなどによってオフマシン又はオンマシンで、塗工液をアンダー層含めて乾燥塗工量が片面当たり5〜25g/m、好ましくは10〜20g/mとなるようにアンダー層の上に片面若しくは両面塗工する。なお、塗工液の固形分濃度は特に限定されないが、各々の上記塗工機で所定塗工量が塗布できうる固形分濃度及び粘度に調整することが望ましい。
【0035】
アンダー層含めたインク受容層の乾燥塗工量が片面当たり5g/mに満たないと、インク受容層である塗工層が支持体表面を完全に覆うことが難しく、塗工層によるインクの吸収性が十分でないため、吸収ムラが発生し、インクジェット印字性能に悪影響が生じる。また、乾燥塗工量が25g/mを超えると、インク受容層と支持体間の接着強度が実用に耐えられないレベルとなり、粉落ちと呼ばれる支持体からの塗工層の脱落・剥離等が発生し、重大な問題が生じる。
【0036】
塗工後の乾燥方式としては熱風乾燥、赤外乾燥、ドラム乾燥等が挙げられるが、本発明においては特に限定されるものではない。乾燥温度は、例えば110〜160℃、好ましくは130〜150℃となるようにする。
【0037】
また、インク受容層の表面の平滑性を制御する目的で、必要に応じてキャレンダー処理を行ってもよい。キャレンダーは、スーパーキャレンダー、マシンキャレンダー、ソフトキャレンダー等が挙げられるが、この方式は特に限定されない。
【0038】
記録層として、インク受容層の表面に、別の機能を付与する加工を行ってもよい。例えば、表面にインク定着剤をオーバーコートすること及び/又は風合いを持たせるためにエンボス加工を行うことも、表面の摩擦特性を損なわない限りは、本発明において限定されない。また、記録層の裏面に機能性の加工、例えば、帯電防止加工、滑り性付与、樹脂ラミネート等を行っても構わない。
【実施例】
【0039】
次に、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。また、例中の「部」及び「%」は、特に断らない限り「質量部」及び「質量%」を示す。
【0040】
実施例1:
<支持体の作製>
LBKP100部(カナディアンスタンダードフリーネス:CSF=500ml)のパルプスラリーに、パルプに対し、カチオン澱粉1.0部、タルク5.0部、酸性ロジンサイズ剤0.2部、液体硫酸バンド1部を添加し調製した紙料を長網式抄紙機で抄紙し、坪量180g/mの原紙を得た。
<インク受容層のアンダー層用塗工液の調製>
焼成クレー(商品名:アンシレックス、エンゲルハード社製)70部と平均粒径6μmの合成非晶質シリカ(商品名:74x6500、グレースデビソン社製)30部とに水を加え、カウレス分散機で分散濃度45%の顔料スラリーを調製した。この顔料スラリーにポリエチレン酢酸ビニルバインダー25部(商品名;スミカフレックス450、住友化学社製)、ポリビニルアルコール5部(商品名:PVA−117、クラレ社製)及びインク定着剤5部(商品名;SR1001、田岡化学社製)を添加・攪拌し、更に水を添加し、固形分濃度が40%の塗工液を得た。
<インク受容層のアンダー層の形成>
前記原紙の片面に、得られた塗工液を片面乾燥塗工量が5g/mとなるようにソフトチップブレードで塗工し、エアドライヤーで熱風乾燥した。
<インク受容層のトップ用塗工液の調製>
平均粒径7μmの合成非晶質シリカ(商品名:サイロジェットP407、グレースデビソン社製)50部と平均粒径6μmの合成非晶質シリカ(商品名:74x6500、グレースデビソン社製)50部とに、水とpH調整剤として酢酸0.5部を添加し、カウレス分散機で分散濃度28%の顔料スラリーを調製した。この顔料スラリーにポリビニルアルコール15部(商品名:PVA−117、クラレ社製)及びポリエチレン酢酸ビニルバインダー25部(商品名;スミカフレックス450、住友化学社製)、及びインク定着剤15部(商品名;SR1001、田岡化学社製)を添加・攪拌し、更に水を添加し、固形分濃度が25%の塗工液を得た。
<インク受容層のトップ層の形成>
前記のアンダー層を施した面に、得られた塗工液を片面乾燥塗工量が10g/mとなるようにエアナイフコーターで塗工し、エアドライヤーで熱風乾燥した。さらに、ソフトキャレンダーを用いて線圧30kg/cm、25℃、2ニップ1パスの条件で表面処理を行ない、インクジェット記録シートを得た。
【0041】
実施例2:
顔料スラリーにおいて、インク受容層のアンダー層に用いる顔料の分散濃度を50%とし、かつ、アンダー層用塗工液の固形分濃度を50%とした以外は、実施例1と同様にして、インクジェット記録シートを得た。
【0042】
実施例3:
インク受容層のアンダー層に用いる顔料を焼成クレー100部とし、合成非晶質シリカを0部とした以外は、実施例1と同様にして、インクジェット記録シートを得た。
【0043】
実施例4:
インク受容層のトップ層の塗工方式を通常のハードタイプチップブレードを使用するブレードコーターとした以外は、実施例1と同様にして、インクジェット記録シートを得た。
【0044】
実施例5:
インク受容層のトップ層の塗工方式を通常のベントタイプブレードを使用するブレードコーターとした以外は、実施例1と同様にして、インクジェット記録シートを得た。
【0045】
実施例6:
実施例1で得られたインクジェット記録シートに対して、更にインク定着剤(商品名;SR1001、田岡化学社製)を0.3g/mオーバーコートし、インクジェット記録シートを得た。
【0046】
実施例7:
実施例1で得られたインクジェット記録シートにエンボス加工を施し、インクジェット記録シートを得た。エンボス加工は、凹凸の高さを30μmの格子パターンとした。
【0047】
実施例8:
実施例1でアンダー層及びトップ層を形成した中間製品の裏面に更に実施例1と同様の手法でアンダー層及びトップ層を施した後、ソフトキャレンダー処理を行ない、インクジェット記録シートを得た。なお、ソフトキャレンダー処理の条件は実施例1と同様に線圧30kg/cm、25℃、2ニップ1パスの条件とした。
【0048】
実施例9:
実施例1で得られたインクジェット記録シートに対して、裏面に帯電防止剤として使用するポリスチレンスルホン酸ソーダ(商品名:ケミスタッドSA‐9、三洋化成工業社製)と、バインダーとして使用するポリビニルアルコール(商品名:PVA‐117、クラレ社製)を2:1の質量比で溶解した水溶液を1.5g/mを塗布し、乾燥してインクジェット記録紙を得た。
【0049】
実施例10:
実施例1で得られたインクジェット記録シートに対して、裏面に滑り付与剤として使用するポリエチレンワックス(商品名:ハイテックE‐2000、東邦化学工業社製)と、バインダーとして使用するポリビニルアルコール(商品名:PVA‐117、クラレ社製)を1:1の質量比で溶解した水溶液を1.0g/mを塗布し、乾燥してインクジェット記録紙を得た。
【0050】
実施例11:
実施例1で得られたインクジェット記録シートに対して、裏面に合成樹脂フィルム(商品名:ルミラーS10、東レ社製、厚さ12μm)を接着剤で貼り合わせ、インクジェット記録紙を得た。
【0051】
比較例1:
顔料スラリーにおいて、インク受容層のアンダー層に用いる顔料の分散濃度を60%とし、かつ、アンダー層用塗工液の固形分濃度を60%とした以外は、実施例1と同様にして塗工液を調製したが、塗工液の粘度上昇によって塗工することができなかった。
【0052】
比較例2:
顔料スラリーにおいて、インク受容層のアンダー層に用いる顔料の分散濃度を35%とし、かつ、アンダー層用塗工液の固形分濃度を34%とした以外は、実施例1と同様にして、塗工液を調製したが、塗工液の粘度低下によって塗工することができなかった。
【0053】
比較例3:
インク受容層のアンダー層に用いる顔料を焼成クレー50部、合成非晶質シリカ50部とした以外は、実施例1と同様にして、インクジェット記録シートを得た。ただし、粘度上昇の為、固形分濃度を30%まで下げて塗工した。
【0054】
比較例4:
インク受容層のアンダー層の塗工方式を通常のハードタイプチップブレードを使用するブレードコーターとした以外は、実施例1と同様にして、インクジェット記録シートを得た。
【0055】
比較例5:
インク受容層のアンダー層の塗工方式を通常のベントタイプブレードを使用するブレードコーターとした以外は、実施例1と同様にして、インクジェット記録シートを得た。
【0056】
比較例6:
インク受容層のアンダー層の塗工方式をエアナイフコーターとした以外は、実施例1と同様にして、インクジェット記録シートを得た。
【0057】
比較例7:
インク受容層において、アンダー層を設けずトップ層だけとし、その塗工量を15g/mとした以外は、実施例1と同様にして、インクジェット記録シートを得た。
【0058】
以上の実施例及び比較例において得られたインクジェット記録シートについて、表1に記録層のインクジェット印刷適性及び塗工層強度の評価結果を示した。
【0059】
<評価方法>
得られたインクジェット記録シートは、23℃‐50%RHの恒温恒湿室で24時間調湿後、同環境下でそれぞれ次の方法によって、評価を行った。
【0060】
<インクジェット印刷適性>
市販のフルカラーインクジェットプリンター(商品名:PM‐900C、セイコーエプソン社製)を用いて写真画像を印刷し、画像細部のムラのほか、境界部の滲み、発色の鮮やかさなどを目視観察して、インクジェット印刷適性を総合評価した。
【0061】
前記インクジェット印刷適性の評価は、次に示す要領によって記述することにした。
◎…優れている
○…良い(実用レベル)
△…やや劣る(実用下限レベル)
×…劣る(実用に適さない)
【0062】
<経済性評価>
塗工液の薬品費及び生産性から評価した。
【0063】
前記塗料薬品費及び生産性評価は、次に示す要領によって記述することにした。
◎…採算レベル以上
○…採算レベル(実用レベル)
△…採算取れず(不適)
×…採算が、更に取れず(不適)
【0064】
【表1】

【0065】
実施例1〜11の結果からわかるように、アンダー層において、焼成クレー70質量%以上かつ塗工方式をソフトチップブレードとした組み合わせだけが、インクジェット印刷適性及び経済性評価がいずれも実用レベル以上であった。
【0066】
比較例1では、アンダー層の塗工液の固形分濃度が60%と高かったため、アンダー層を塗工できなかった。
【0067】
比較例2では、アンダー層の塗工液の固形分濃度が34%と低かったため、アンダー層を塗工できなかった。
【0068】
また、比較例3の結果からわかるように、アンダー層において、焼成クレー70質量%未満の場合は、合成非晶質シリカの使用量を多くししたため、塗工方式をソフトチップブレードとしても経済性評価で劣る結果となった。
【0069】
さらに、比較例4〜6の結果からわかるように、アンダー層において、焼成クレー70質量%以上であっても塗工方式をソフトチップブレード以外のものを用いた場合は、インクジェット印刷適性で劣る結果となった。
【0070】
さらに、比較例7の結果からわかるように、アンダー層を設けなかったため、支持体表面の凹凸の影響を受け、インクジェット印刷適性で劣る結果となった。また、トップ層を多く塗工することとなり、トップ層の含有される合成非晶質シリカの使用量が多くなり、経済性評価で劣る結果となった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体上の片面又は両面に1層以上からなるインク受容層を設けたインクジェット記録シートにおいて、
前記インク受容層を構成するアンダー層は、焼成クレーと接着剤とを主成分として含有し、かつ、該アンダー層に含有されている全顔料のうち70質量%以上が焼成クレーであり、かつ、該アンダー層がソフトチップブレードコーターで塗工して設けられたことを特徴とするインクジェット記録シート。
【請求項2】
前記インク受容層を構成するアンダー層が、顔料の第2成分として合成非晶質シリカを30質量%以下含有していることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録シート。
【請求項3】
前記インク受容層の表面にインク定着剤がオーバーコートされていることを特徴とする請求項1又は2に記載のインクジェット記録シート。
【請求項4】
エンボス加工がなされていることを特徴とする請求項1、2又は3に記載のインクジェット記録シート。
【請求項5】
前記支持体の表面に前記インク受容層を設け、裏面に帯電防止加工、滑り性付与加工又は樹脂ラミネートのいずれかの機能性加工を施したことを特徴とする請求項1、2、3又は4に記載のインクジェット記録シート。
【請求項6】
支持体上の片面又は両面に1層以上からなるインク受容層を設けたインクジェット記録シートの製造方法において、
全顔料のうち70質量%以上が焼成クレーである顔料と、接着剤とを含有し、固形分濃度が35〜55質量%の塗工液を調製する工程と、
支持体の表面に前記塗工液をソフトチップブレードコーターで塗工してインク受容層を構成するアンダー層を塗工する工程と、
を有することを特徴とするインクジェット記録シートの製造方法。



【公開番号】特開2009−166364(P2009−166364A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−7229(P2008−7229)
【出願日】平成20年1月16日(2008.1.16)
【出願人】(000241810)北越製紙株式会社 (196)
【Fターム(参考)】