説明

インクジェット記録シート用有機粒子及び記録シート

【課題】
高光沢でインク吸収性に優れ、且つ耐水性、耐光性、耐黄変性、発色濃度に優れ、染料系インク、顔料系インクの両方のインクに適応できるインクジェット記録シート用有機粒子およびそれからなるインクジェット記録シートを提供する。
【解決手段】
有機粒子が(A)イソボルニルメタクリレートと(B)その他の共重合可能なモノマーとを共重合して得られる有機粒子であり、またシート状支持体上に該有機粒子を含有するインク受容層を少なくとも一層以上有するインクジェット記録シート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット記録方式を利用したプリンターやプロッターに適用されるインクジェット記録用有機粒子及びそれからなるインクジェット記録シートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録方式は、インクの微小液滴を種々の作動原理により飛翔させて紙等の記録シートに付着させ、画像・文字等の記録を行うものである。該記録方式は、高速、低騒音、多色化が容易、記録パターンの融通性が大きい、現像及び定着が不要等の特徴があり、漢字を含め各種図形及びカラー画像等の記録装置として、種々の用途において急速に普及している。さらに、インクジェット方式を利用したプリンターやプロッターは、市場からの更なる画像の品質向上に対する要求のために、高解像度化、色再現範囲の拡大が図られており、これにはインクの吐出量を多くすることで対応している。従って、吐出量に見合ったインク受理容量の増大が該記録用シートの重要な技術課題となっており、高インク受理容量の確保や発色性の良好な塗層の塗設が不可欠となっている。加えて、光沢、剛直、色相等の外観も銀塩写真や印刷用紙に類似することが要望され、従来からある上質紙や塗工紙のインクジェット記録シートではこれらの要望に応えられなくなってきている。特に、従来の技術では光沢を付与すると、インクジェット記録シートに要求される重要な特性であるインク吸収性が欠如してしまう問題が付随して生じる。該吸収を確保するには、空隙量の大きな塗層を設ける必要があり、該塗層の塗被組成物に多量の無機粒子を適用してきたが、塗層表面は該粒子の影響を受けて粗い表面となるため、光沢の低いものしか得られなかった。
【0003】
インクジェット記録シートに光沢を付与する目的で、高線圧下でカレンダー処理を行うと、光沢は向上するが、塗層の空隙が減少し、インクの吸収が遅くなり、また、吸収容量の不足からインクのあふれが発生してしまう問題がある。このことから、カレンダー処理は、許容されるインク吸収容量の範囲内で条件を選択せざるを得ず、現行技術でインク吸収と高い光沢を両立することは難しいのが現状である。また、より高い光沢を得る方法として、塗工層に微小な無機粒子を多量に含有させ、キャストコーティング法と称される方法によってインクジェット記録シートを製造することも提案されている。しかしながらキャストコーティング法は、塗工層が完全に乾燥するまで塗工面とキャストドラムが接触していなければならず、このためカレンダーによる平滑化に比べると生産性が著しく低下する。また、インクそのものを耐光性、耐ガス性に優れる顔料インクを用いることも検討されてきた。ただ、顔料を用いたインクではインクの吐出であるノズルがつまり易いという問題が存在する。また顔料インクを使用した場合、表層近くに残った顔料インクがすれやこすれにより削りとれてしまう、いわゆる耐さっか性に劣ることとなる。
【0004】
特許文献1では、カチオン性モノマーを50〜100モル%含有する重合物の存在下で、脂環式(メタ)アクリル酸エステルを50〜100モル%含む共重合性モノマーを共重合したカチオン性インクジェット記録用添加物が開示されている。特許文献2には、カチオン性エマルション組成物が光沢層に含まれていることを特徴とする記録シートが開示されている。しかしカチオン性ポリマー量を増やすと、無機粒子含有量が減少するため、インク吸収性の確保が難しくなるという問題がある。特許文献3では、シリカ系の無機顔料のpHを7以上にすることによって染料の変色を防止する記録材が開示されている。また、本発明者らはカチオン性有機粒子のカチオン化度が20〜300μeq/gであるカチオン有機粒子が有用であることを提案したが、インクジェット記録シートの生産性が必ずしも充分とは言えなかった(特許文献4)。このように、従来の技術では、高光沢・インク吸収性・発色濃度・耐水性・耐光性・耐黄変性を全て満足し、さらに染料系、顔料系両方のタイプのインクに適応したインクジェット記録用シートを得ることは困難であった。
【特許文献1】特許第3436351号公報
【特許文献2】特開平11−302337号公報
【特許文献3】特公平8―13569号公報
【特許文献4】特開2003−211821号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、高光沢でインク吸収性に優れ、且つ耐水性、耐光性、耐黄変性、発色濃度に優れ、染料系インク、顔料系インクの両方のインクに適応できるインクジェット記録シート用有機粒子およびそれからなるインクジェット記録シートを提供すること。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記の問題を解決すべく、鋭意検討した結果、有機粒子が(A)イソボルニルメタクリレートと(B)その他の共重合可能なモノマーとを共重合して得られる有機粒子であることを特徴とするインクジェット記録シート用有機粒子であり、また、これを用いたインクジェット記録シートが高光沢で、インク吸収性に優れ、且つ耐水性、耐光性、耐黄変性、発色濃度に優れ、染料系インク、顔料系インクの両方のインクに適応できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
即ち、本発明は、有機粒子が(A)イソボルニルメタクリレートと(B)その他の共重合可能なモノマーとを共重合して得られることを特徴とするインクジェット記録シート用有機粒子である。好ましくは、前記(A)イソボルニルメタクリレートと(B)その他の共重合可能なモノマーとの総重量を100重量%とした場合、(A)が20〜70重量%、(B)が30〜80重量%含有されているジェット記録シート用有機粒子である。また、前記有機粒子が、カチオン性有機粒子であるインクジェット記録シート用有機粒子。さらに有機粒子の計算によるガラス転移温度が90〜160℃であることが好ましい。また、本発明は、シート状支持体上に該有機粒子を含有するインク受容層を少なくとも一層以上有するインクジェット記録シートである。この記録シートは、該有機粒子を含有するインク受容層が、最表層であることが好ましく、また、有機粒子を含有するインク受容層の総固形分100重量%中に、該有機粒子が5〜100重量%含まれているインクジェット記録シートが好ましい。さらに、記録シートの最表層を平滑化処理し、シートの最表面のJIS Z8741に基づいた75度鏡面光沢度が60%以上であるインクジェット記録シートであり、前記平滑化処理が、キャストコーティング法または、カレンダー処理であることが好ましい。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、高光沢でインク吸収性に優れ、且つ耐水性、耐光性、耐黄変性、発色濃度に優れ、染料系インク、顔料系インクの両方のインクに適応できるインクジェット記録シート用有機粒子、及びインクジェット記録シートを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明のインクジェット記録シート用有機粒子およびそれからなるインクジェット記録シートとは、有機粒子が(A)イソボルニルメタクリレートと(B)その他の共重合可能なモノマーとを共重合して得られる有機粒子であり、またシート状支持体上に該有機粒子を含有するインク受容層を少なくとも一層以上有することを特徴とするインクジェット記録シートである。以下、詳細に説明する。
【0010】
[有機粒子の組成]
本発明における有機粒子の態様としては、(A)イソボルニルメタクリレートと(B)その他の共重合可能なモノマーとを共重合して得られる有機粒子である。有機粒子が(A)イソボルニルメタクリレートを含有することで、該有機粒子を含有するインク受容層を少なくとも一層以上有するインクジェット記録用シートの表層を平滑化処理する際の温度が100℃を越えた場合でも、有機粒子の形状変化が低減されるため、該インクジェット記録用シートのインク吸収性が優れると共に生産性を高めることが出来る。
【0011】
前記(B)その他の共重合可能なモノマーとしては特に制限は無く、例えば、アクリル酸エステル類;メチルアクリレート、エチルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、n−アミルアクリレート、イソアミルアクリレート、n−ヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、オクチルアクリレート、デシルアクリレート、ドデシルアクリレート、オクタデシルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、フェニルアクリレート、ベンジルアクリレート、イソボルニルアクリレート、その他の炭素原子数1乃至14のアルキルアクリレート等、
メタクリル酸エステル類;メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、t−ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、n−アミルメタクリレート、イソアミルメタクリレート、n−ヘキシルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、オクチルメタクリレート、デシルメタクリレート、ドデシルメタクリレート、オクタデシルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、フェニルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、その他の炭素原子数1乃至14のメタクリレート等、芳香族ビニル類;スチレン、2−メチルスチレン、t−ブチルスチレン、クロルスチレン、ビニルアニソール、ビニルナフタレン、ジビニルベンゼン等、不飽和カルボン酸類;アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、無水アクリル酸、無水メタクリル酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水フマル酸等、水酸基含有ビニル類;2−ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、4−ヒドロキシブチルメタクリレート等、
アミド類;アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、マレイン酸アミド等、ビニルエステル類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等、ハロゲン化ビニリデン類;塩化ビニリデン、フッ化ビニリデン等、アミノアルキルアクリレート又はアミノアルキルメタクリレート類;N、N−ジメチルアミノエチルアクリレート、N、N−ジメチルアミノエチルメタクリレート、N、N−ジメチルアミノプロピルアクリレート、N、N−ジメチルアミノプロピルメタクリレート等、N−アミノアルキルアクリルアミド又はN−アミノアルキルメタクリルアミド類;N、N−ジメチルアクリルアミド、N、N−ジメチルメタクリルアミド、N、N−ジエチルアクリルアミド、N、N−ジエチルメタクリルアミド、N、N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、N、N−ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド、N、N−ジメチルアミノエチルアクリルアミド、N、N−ジメチルアミノエチルメタクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド等、ハロゲンとして塩素、臭素、ヨウ素等であるハロゲン化メチル基、ハロゲン化エチル基、ハロゲン化ベンジル基等で4級塩化された、上記アミノアルキルアクリレート又はアミノアルキルメタクリレート類と、N−アミノアルキルアクリルアミド又はN−アミノアルキルアクリルアミド類の4級塩類;
アクリロイルモルホリン、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メタクリロイルオキシエチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メタクリロイルオキシフェニル)−ベンゾトリアゾール、2−ヒドロキシ−4−(2−メタクリロイルオキシ)エトキシベンゾフェノン、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メタクリロイルオキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルメタクリレート、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルメタクリレート等塩化ビニル、ビニルエーテル、ビニルケトン、ビニルアミド、クロロプレン、エチレン、プロピレン、イソプレン、ブタジエン、クロロプレン、ビニルピロリドン、2−メトキシエチルアクリレート、2−エトキシエチルアクリレート、グリシジルアクリレート、グリシジルメタアクリレート、アリルグリシジルエーテル、アクリロニトリル、メタアクリロニトリル、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、ポリプロピレングリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、1,3−ブチレングリコールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、アリルメタアクリレート、ジシクロペンテニルアクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレート、イソプロペニル−α,α−ジメチルベンジルイソシアネート、アリルメルカプタン等、が挙げられ、これらの1種、又は2種以上を選択することができる。
【0012】
特に2−ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、4−ヒドロキシブチルメタクリレート等の水酸基を有するモノマーの中から選ばれる1種以上を含有する場合、有機粒子の得られる形状であるエマルション粒子の安定性が向上するため好ましい。また、前記(B)その他の共重合可能なモノマーとして、メチルメタクリレート、t−ブチルメタクリレート、イソボルニルアクリレートの1種以上が選ばれる場合、平滑化処理の際の有機粒子の変形が特に低減されるため、特に好ましい。
【0013】
また有機粒子の性状としては、染料と強い相互作用が生じるカチオン性を有するものが高い発色濃度を得るために好ましい。また、(A)イソボルニルメタクリレートと(B)その他の共重合可能なモノマーとの総重量を100重量%とした場合、通常(A)が20〜70重量%、(B)が30〜80重量%である。(A)及び(B)がそれぞれこの範囲にあると、(A)イソボルニルメタクリレートと(B)その他の共重合可能なモノマーとの共重合性に優れ、未反応モノマーが低減できるため好ましい。また、平滑化処理の際に生じる該有機粒子の変形度合いが小さくなる為、本発明のインクジェット記録用シートのインク吸収性が向上し、更に、光沢性を損なうことがない。好ましくは、(A)が20〜40重量%、(B)が60〜80重量%である。
【0014】
[有機粒子の粒子径]
本発明における有機粒子の平均粒子径としては、10〜300nmが好ましく、より好ましくは30〜200nmである。平均粒子径がこの範囲であると、インク吸収性、印字濃度性の点で好ましい。尚、本発明における粒子径は、具体的にはレーザー粒径解析システム LPA−3000/3100(大塚電子株式会社製)で測定することができる。
【0015】
[有機粒子のガラス転移温度(Tg)]
本発明の有機粒子のガラス転移温度は、通常90〜160℃であり、より好ましくは100〜140℃である。ガラス転移温度がこの範囲であると、塗設層の乾燥温度が好適でその結果、生産効率が良く、また、光沢性を損なうことがない。なお、本発明におけるガラス転移温度は、JIS K 7121に基づきDSC曲線から求めたものである。
【0016】
[有機粒子を含有する層の構成]
本発明の有機粒子を含有する層は、該層が記録シート記録面の最表層にあった場合、平滑化処理後の光沢が優れ、更に顔料タイプのインクを使用しているプリンターを使用した場合の顔料インク定着性に優れ、耐さっか性が向上するので好ましい。また該有機粒子を含有する層には、通常インクジェット記録用シートに使用されている各種添加剤等を併用しても良い。例えばバインダー機能を有するポリマーとして、水溶性ポリマーや、水不溶性ポリマーの水分散体などが挙げられる。以下に詳しく述べる。
【0017】
水溶性ポリマーとしては、例えば、カチオン系水溶性ポリマーである、カチオン化ポリビニルアルコール、カチオン化澱粉、カチオン化ポリアクリルアミド、カチオン化ポリメタクリルアミド、ポリアミドポリウレア、ポリエチレンイミン、アリルアミン又はその塩の共重合体、エピクロルヒドリン−ジアルキルアミン付加重合体、ジアリルアルキルアミン又はその塩の重合体、ジアリルジアルキルアンモニウム塩の重合体、ジアリルアミン又はその塩と二酸化イオウ共重合体、ジリルジアルキルアンモニウム塩−二酸化イオウ共重合体、ジアリルジアルキルアンモニウム塩とジアリルアミン又はその塩もしくは誘導体との共重合体、ジアルキルアミノエチルアクリレート4級塩の重合体、ジアルキルアミノエチルメタクリレート4級塩の重合体、ジアリルジアルキルアンモニウム塩−アクリルアミド共重合体、アミン−カルボン酸共重合体等が挙げられる。
【0018】
また、ノニオン系水溶性ポリマーである、ポリビニルアルコール又はその誘導体;酸化澱粉、エーテル化澱粉、リン酸エステル化澱粉等の澱粉誘導体;ポリビニルピロリドン又は酢酸ビニルを共重合させたポリビニルピロリドン等のポリビニルピロリドン誘導体;その誘導体カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース等のセルロース誘導体;ポリアクリルアミド又はその誘導体;ポリメタクリルアミド又はその誘導体;ゼラチン、カゼイン等が挙げられる。アニオン系水溶性ポリマーとして、ポリアルギン酸及びその金属塩、カルボキシメチルセルロース及びその金属塩、ポリアクリル酸及びその金属塩、ポリアクリルアミドの部分加水分解物及びその金属塩、マレイン酸共重合物、リグニンスルホン酸及びその金属塩及びそれらの誘導体、オキシ有機酸及びその金属塩、アルキルアリルスルホン酸及びその金属塩、ポリオキシアルキルアリルエーテル、ポリオール複合体、高級多価アルコールスルホン酸及びその金属塩、ゼラチン・ニカワ等の水溶性蛋白質及びその金属塩及びそれらの誘導体等が挙げられる。
【0019】
さらに水不溶性ポリマーの水分散体としては、例えば、アクリル系ポリマー(アクリル酸エステル及び/又はメタクリル酸エステルの重合体又は共重合体)、スチレン−アクリル系ポリマー(スチレンと、アクリル酸エステル及び/又はメタクリル酸エステルの共重合体)、MBR系ポリマー(メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体)、SBR系ポリマー(スチレン−ブタジエン共重合体)、ウレタン系ポリマー、エポキシ系ポリマー、EVA系ポリマー(エチレン−酢酸ビニル共重合体)の水分散体等が挙げられる。
【0020】
特に耐黄変性に優れるという特徴から、ポリビニルアルコール、カチオン化ポリビニルアルコール、アクリル系ポリマー(アクリル酸エステル及び/又はメタクリル酸エステルの重合体又は共重合体)の水分散体が好ましい。また、水分散体の場合には、ポリマーのガラス転移温度は40℃以下が好ましい。
【0021】
これらのバインダー機能を有するポリマーの使用量は、有機粒子を含有するインク受容層の総固形分100重量%に対して、通常0〜30重量%である。バインダー量が多い場合には粒子間空隙をバインダーが埋めて、インク吸収性が低下する場合がある。また、有機粒子の含有量は、有機粒子を含有するインク受容層の総固形分100重量%中に、5〜100重量%含まれていることが好ましい。
【0022】
本発明の有機粒子は、実質的に無機粒子を含有していなくてもインク吸収性に優れるため、必ずしも無機粒子を含有させる必要はないが、無機粒子を含有させることも可能である。無機粒子としては、具体的には、例えば、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、カオリン、クレー、タルク、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、水酸化亜鉛、硫化亜鉛、炭酸亜鉛、ハイドロタルサイト、珪酸アルミニウム、ケイソウ土、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、合成非晶質シリカ、コロイダルシリカ、アルミナ、コロイダルアルミナ、擬ベーマイト、水酸化アルミニウム、リトボン、ゼオライト、水酸化マグネシウム等が挙げられる。高い空隙率を得てインク吸収性を向上させるためには、シリカやアルミナが好ましく、より好ましくは1次粒子径が100nm以下の微粒子である。
【0023】
さらに、その他に、本発明の有機粒子を含有する層には、帯電防止剤、酸化防止剤、乾燥紙力増強剤、湿潤紙力増強剤、耐水化剤、防腐剤、紫外線吸収剤、光安定化剤、蛍光増白剤、着色顔料、着色染料、浸透剤、発泡剤、離型剤、抑泡剤、消泡剤、流動性改良剤、増粘剤、顔料分散剤、カチオン性定着剤等を含んでいてもよい。
【0024】
[光沢の測定方法]
本発明における光沢とは、JIS Z8741に基づき、記録用シート記録面表面の75°での光沢度を測定したものであり、例えば変角光沢計 GM−3D型(村上色彩技術研究所社製)等で測定することができる。本発明の記録用シートは75°における光沢が、50%以上であるのが好ましい。
【0025】
[有機粒子の製造方法]
本発明において使用する有機粒子は、公知の乳化重合法、あるいは機械乳化法に基づき製造することができる。例えば乳化重合法では、分散剤と開始剤の存在下で、各種モノマーを一括で仕込み重合する方法、モノマーを連続的に供給しながら重合する方法がある。その際の重合温度としては通常30〜90℃で行われ、一般的にエマルションと呼ばれる実質的に有機粒子の水分散体が得られる。乳化重合法によって得られる有機粒子の水分散体は、少量の分散剤で非常に安定で、且つ粒子径の非常に小さいものが容易に得られるという点で優れている。
【0026】
ここで好ましく使用される分散剤としては、カチオン性界面活性剤や両性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性水溶性ポリマー、ノニオン性水溶性ポリマー、アニオン性水溶性ポリマーなどが挙げられ、これらの1種、又は2種以上を選択することができる。 重合に使用される開始剤としては、通常のラジカル開始剤が使用できる。 一般的な開始剤の使用量は、共重合させるモノマーの全重量を基準として0.01〜20重量%である。
【0027】
[記録シートの構成]
本発明における記録用シートの好ましい構成例としては、有機粒子の含有される層が、インクの受理に関わる表層に使用されていることである。例えば、支持体上に本発明である有機粒子を含有する層のみを設けた単層構造や、支持体上にインク受理層を設け、その上層に本発明である有機粒子を含有する層を設けたり、本発明の有機粒子を含有する層を設けた後に、その上層に別の層を設けることによって構成される、多層構造等が挙げられる。本発明の有機粒子を含有する層の量は、通常、シート状支持体上に、坪量として通常1〜300g/mであるが、特に制限されるものではない。
【0028】
[シート支持体種]
本発明において、支持体としては、従来からインクジェット記録用シートに用いられる支持体、例えば、普通紙、アート紙、コート紙、キャストコート紙、樹脂被服紙、樹脂含浸紙、非塗工紙、塗工紙等の紙支持体、両面又は片面をポリエチレン及び/又はチタン等の白色顔料を練り込んだポリエチレン等のポリオレフィンで被覆した紙支持体、プラスチック支持体、不織布、布、織物、金属フィルム、金属板、及びこれらを貼り合わせた複合支持体を用いることができる。プラスチック支持体としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、トリアセチルセルロース、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリイミド、ポリカーボネート、セロファン、ポリナイロン等のプラスチックシート、フィルム等が好ましく使用される。これらのプラスチック支持体は透明なもの、半透明なもの、及び不透明なものを用途に応じて適宜使い分けることができる。
【0029】
また支持体には白色のプラスチックフィルムを用いることも好ましい。白色のプラスチック支持体としては、少量の硫酸バリウム、酸化チタン、酸化亜鉛などの白色顔料をプラスチックに含有させたものや、微細な空隙を多数設けて不透明性を付与した発泡プラスチック支持体、及び白色顔料(酸化チタン、硫酸バリウム)を有する層を設けた支持体を用いることができる。本発明においては支持体の形状は限定されないが、通常用いられるフィルム状、シート状、板状等の他に、飲料缶のような円柱状、CDやCD−R等の円盤状、その他複雑な形状を有するものも支持体として使用できる。
【0030】
[記録シートの製造方法]
本発明の記録用シートは、シート状支持体の片面または両面に、有機粒子を含んだ塗被組成物を塗布し、これを乾燥させて層を形成することによって製造される。塗工液の塗布方法に限定はなく、例えば、エアナイフコーター、ロールコーター、バーコーター、ブレードコーター、スライドホッパーコーター、グラビアコーター、フレキソグラビアコーター、カーテンコーター、エクストルージョンコーター、フローティングナイフコーター、コンマコーター、ダイコーター等の従来既知の塗布方法を用いることができる。
また光沢を付与するための処理方法については特に限定はないが、一般的なカレンダー処理、つまりはスーパーカレンダー、グロスカレンダー等のカレンダー装置を用い、圧力や温度をかけたロール間を通過させて塗層表面を平滑化する方法や、或いは直接法、凝固法、リウエット法(再湿潤法)、プレキャスト法などのキャストコーティング法を好ましく用いることができる。またキャストコーティング法に係る圧接時の圧力、鏡面ドラムの温度、塗工速度等は適宜選択されるが、特に鏡面ドラムの温度は乾燥速度を左右するため生産性に影響を与え、また出来上がるインクジェット記録シートのインク吸収性を左右する。本発明の有機粒子を使用する場合、キャストドラムの温度は通常100〜140℃である。キャストドラムの温度がこの範囲であると、インクの吸収性を低下させることなく生産性が向上し、また高光沢が得られやすくなり好ましい。
【実施例】
【0031】
以下に、本発明の実施例を挙げて説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。又、実施例において示す部及び%は、特に明示しない限り重量部及び重量%を示す。
<有機粒子の作製>
有機粒子の組成、ガラス転移点(Tg)、粒子径、イオン性について表1に示した。
【0032】
[製造例1]
脱イオン水195部とステアリルトリメチルアンモニウムクロライド2.0部を反応容器に仕込み、窒素気流下で70℃に昇温し、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩0.5部を添加した。これとは別に、スチレン40部、イソボルニルメタクリレート30部、メチルメタクリレート30部を脱イオン水40部中にステアリルトリメチルアンモニウムクロライド0.5部を使って乳化させた乳化混合物を作り、この乳化混合物を4時間で反応容器に滴下して、その後、更に同温度で4時間保持した。続けて2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩0.1部を添加し、さらに同温度で3時間保持して重合を完結させた。その結果、有機粒子が水に分散したエマルション組成物が得られ、不揮発分30%、pH5、光散乱測定による平均粒子径60nm、及びJIS K 7121に基づきDSC曲線により求めた有機粒子ポリマーのガラス転移温度は106℃であった。
【0033】
[製造例2]
製造例1において、反応容器に仕込むステアリルトリメチルアンモニウムクロライドの部数を0.7部、使用するモノマーの種類と部数をイソボルニルメタクリレート40部、t−ブチルメタクリレート50部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート10部とした以外は製造例1と同様に重合した結果、有機粒子が水に分散したエマルション組成物が得られ、不揮発分30%、pH5、光散乱測定による平均粒子径92nm、及びJIS K 7121に基づきDSC曲線により求めた有機粒子ポリマーのガラス転移温度は102℃であった。
【0034】
[製造例3]
製造例1において、反応容器に仕込むステアリルトリメチルアンモニウムクロライドの部数を0.05部、使用するモノマーの種類と部数をイソボルニルメタクリレート30部、メチルメタクリレート65部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート5部とした以外は製造例1と同様に重合した結果、有機粒子が水に分散したエマルション組成物が得られ、不揮発分30%、pH5、光散乱測定による平均粒子径412nm、及びJIS K 7121に基づきDSC曲線により求めた有機粒子ポリマーのガラス転移温度は103℃であった。
【0035】
[製造例4]
製造例1において、使用するモノマーの種類と部数をイソボルニルメタクリレート85部、イソボルニルアクリレート10部、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート5部とした以外は製造例1と同様に重合した結果、有機粒子が水に分散したエマルション組成物が得られ、不揮発分30%、pH5、光散乱測定による平均粒子径53nm、及びJIS K 7121に基づきDSC曲線により求めた有機粒子ポリマーのガラス転移温度は119℃であった。
【0036】
[製造例5]
製造例1において、反応容器に仕込むステアリルトリメチルアンモニウムクロライドの部数を0.5部、使用するモノマーの種類と部数をイソボルニルメタクリレート40部、メチルメタクリレート40部、ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド20部とした以外は製造例1と同様に重合した結果、有機粒子が水に分散したエマルション組成物が得られ、不揮発分30%、pH5、光散乱測定による平均粒子径134nm、及びJIS K 7121に基づきDSC曲線により求めた有機粒子ポリマーのガラス転移温度は117℃であった。
【0037】
[製造例6]
製造例1において、反応容器に仕込むステアリルトリメチルアンモニウムクロライドの部数を2.5部、使用するモノマーの種類と部数をイソボルニルメタクリレート10部、メチルメタクリレート80部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート10部とした以外は製造例1と同様に重合した結果、有機粒子が水に分散したエマルション組成物が得られ、不揮発分30%、pH5、光散乱測定による平均粒子径42nm、及びJIS K 7121に基づきDSC曲線により求めた有機粒子ポリマーのガラス転移温度は100℃であった。
【0038】
[製造例7]
製造例1において、反応容器に仕込むステアリルトリメチルアンモニウムクロライドの部数を0.7部、使用するモノマーの種類と部数をイソボルニルメタクリレート30部、スチレン60部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート10部とした以外は製造例1と同様に重合した結果、有機粒子が水に分散したエマルション組成物が得られ、不揮発分30%、pH5、光散乱測定による平均粒子径90nm、及びJIS K 7121に基づきDSC曲線により求めた有機粒子ポリマーのガラス転移温度は95℃であった。
【0039】
[製造例8]
製造例1において、反応容器に仕込むステアリルトリメチルアンモニウムクロライドの部数を0.6部、使用するモノマーの種類と部数をイソボルニルメタクリレート69部、n−ブチルアクリレート11部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート20部とした以外は製造例1と同様に重合した結果、有機粒子が水に分散したエマルション組成物が得られ、不揮発分30%、pH5、光散乱測定による平均粒子径105nm、及びJIS K 7121に基づきDSC曲線により求めた有機粒子ポリマーのガラス転移温度は70℃であった。
【0040】
[製造例9]
製造例1において、反応容器に仕込むステアリルトリメチルアンモニウムクロライドの部数を0.3部、使用するモノマーの種類と部数をイソボルニルメタクリレート90部、メチルメタクリレート10部とした以外は製造例1と同様に重合した結果、有機粒子が水に分散したエマルション組成物が得られ、不揮発分30%、pH5、光散乱測定による平均粒子径187nm、及びJIS K 7121に基づきDSC曲線により求めた有機粒子ポリマーのガラス転移温度は120℃であった。
【0041】
[製造例10]
脱イオン水380部とカチオン性界面活性剤(商品名カチオーゲンL;第一工業製薬(株)製)8部、硫酸4部、2−メルカプトエタノール1部、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド30部を反応容器に仕込み、窒素気流下で70℃に昇温し、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩1部を添加し後、4時間保持した。50℃まで冷却した後、シクロヘキシルメタクリレート70部を添加して70℃まで昇温し、続けて脱イオン水80部に溶解した2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩1部を添加し、さらに同温度で3時間保持して重合を完結させた。その結果、有機粒子が水に分散したエマルション組成物が得られ、不揮発分18%、光散乱測定による平均粒子径180nm、及びJIS K 7121に基づきDSC曲線により求めた有機粒子ポリマーのガラス転移温度は90℃であった。
【0042】
<記録用シートの作製>
実施例、比較例で作成した記録用シートの構成、及び評価結果について、表2に示した。
【0043】
[実施例1]
合成非晶質シリカ(ファインシールX−37B;(株)トクヤマ製)100部と、完全鹸化ポリビニルアルコール(PVA−117;(株)クラレ製)20部、スミレーズレジン1001(住友化学工業(株)製;固形分30%)33.3部を水に加えて混合攪拌し、固形分15%の塗被組成物を得た。この塗被組成物を坪量105g/mの上質紙に、絶乾状態で20g/mの塗工量になるよう塗工し、120℃、1分間乾燥させた。更にその上に、製造例1で得たエマルション組成物100部とコロイダルシリカ(スノーテックス−O;日産化学工業(株)製、固形分20%)1350部と完全鹸化ポリビニルアルコール(PVA−117;(株)クラレ製)200部を水に加えて混合攪拌して得られる固形分15%の塗被組成物を、絶乾状態で5g/mの塗工量になるよう塗工し、その後、平滑化処理として表面温度が90℃に保たれた鏡面ドラムに、線圧100kg/cmで圧接させた。その結果、実施例1の記録用シートが得られた。
【0044】
[実施例2]
合成非晶質シリカ(ファインシールX−37B;(株)トクヤマ製)100部と、完全鹸化ポリビニルアルコール(PVA−117;(株)クラレ製)20部、スミレーズレジン1001(住友化学工業(株)製;固形分30%)33.3部を水に加えて混合攪拌し、固形分15%の塗被組成物を得た。この塗被組成物を坪量105g/mの上質紙に、絶乾状態で20g/mの塗工量になるよう塗工し、120℃、1分間乾燥させた。更にその上に、製造例2で得たエマルション組成物1000部と完全鹸化ポリビニルアルコール(PVA−117;(株)クラレ製)100部を水に加えて混合攪拌して得られる固形分15%の塗被組成物を、絶乾状態で5g/mの塗工量になるよう塗工し、その後、平滑化処理として表面温度が120℃に保たれた鏡面ドラムに、線圧100kg/cmで圧接させた。その結果、実施例2の記録用シートが得られた。
【0045】
[実施例3]
合成非晶質シリカ(ファインシールX−37B;(株)トクヤマ製)100部と、完全鹸化ポリビニルアルコール(PVA−117;(株)クラレ製)20部、スミレーズレジン1001(住友化学工業(株)製;固形分30%)33.3部を水に加えて混合攪拌し、固形分15%の塗被組成物を得た。この塗被組成物を坪量105g/mの上質紙に、絶乾状態で20g/mの塗工量になるよう塗工し、120℃、1分間乾燥させた。更にその上に、製造例3で得たエマルション組成物500部とコロイダルシリカ(スノーテックス−O;日産化学工業(株)製、固形分20%)750部と完全鹸化ポリビニルアルコール(PVA−117;(株)クラレ製)200部を水に加えて混合攪拌して得られる固形分15%の塗被組成物を、絶乾状態で5g/mの塗工量になるよう塗工し、その後、平滑化処理として表面温度が110℃に保たれた鏡面ドラムに、線圧100kg/cmで圧接させた。その結果、実施例3の記録用シートが得られた。
【0046】
[実施例4]
合成非晶質シリカ(ファインシールX−37B;(株)トクヤマ製)100部と、完全鹸化ポリビニルアルコール(PVA−117;(株)クラレ製)20部、スミレーズレジン1001(住友化学工業(株)製;固形分30%)33.3部を水に加えて混合攪拌し、固形分15%の塗被組成物を得た。この塗被組成物を坪量105g/mの上質紙に、絶乾状態で20g/mの塗工量になるよう塗工し、120℃、1分間乾燥させた。更にその上に、製造例4で得たエマルション組成物800部とコロイダルシリカ(スノーテックス−O;日産化学工業(株)製、固形分20%)300部と完全鹸化ポリビニルアルコール(PVA−117;(株)クラレ製)140部を水に加えて混合攪拌して得られる固形分15%の塗被組成物を、絶乾状態で5g/mの塗工量になるよう塗工し、その後、平滑化処理として表面温度が130℃に保たれた鏡面ドラムに、線圧100kg/cmで圧接させた。その結果、実施例4の記録用シートが得られた。
【0047】
[実施例5]
合成非晶質シリカ(ファインシールX−37B;(株)トクヤマ製)100部と、完全鹸化ポリビニルアルコール(PVA−117;(株)クラレ製)20部、スミレーズレジン1001(住友化学工業(株)製;固形分30%)33.3部を水に加えて混合攪拌し、固形分15%の塗被組成物を得た。この塗被組成物を坪量105g/mの上質紙に、絶乾状態で20g/mの塗工量になるよう塗工し、120℃、1分間乾燥させた。更にその上に、製造例5で得たエマルション組成物1000部と完全鹸化ポリビニルアルコール(PVA−117;(株)クラレ製)100部を水に加えて混合攪拌して得られる固形分15%の塗被組成物を、絶乾状態で5g/mの塗工量になるよう塗工し、120℃で1分乾燥させた。更にその後、平滑化処理として表面温度が130℃に保たれたカレンダーロールに、線圧50kg/cmで圧接しロール間を5回通過させた。その結果、実施例5の記録用シートが得られた。
【0048】
[実施例6]
実施例2において、使用したエマルション組成物を、製造例6で得られたエマルション組成物に変え、更に平滑化の処理として鏡面ドラムの温度を110℃に変えた以外は実施例2と同様に記録用シートを作成した。その結果、実施例6の記録用シートが得られた。
【0049】
[実施例7]
合成非晶質シリカ(ファインシールX−37B;(株)トクヤマ製)100部と、完全鹸化ポリビニルアルコール(PVA−117;(株)クラレ製)20部、スミレーズレジン1001(住友化学工業(株)製;固形分30%)33.3部を水に加えて混合攪拌し、固形分15%の塗被組成物を得た。この塗被組成物を坪量105g/mの上質紙に、絶乾状態で20g/mの塗工量になるよう塗工し、120℃、1分間乾燥させた。更にその上に、製造例7で得たエマルション組成物30部とコロイダルシリカ(スノーテックス−O;日産化学工業(株)製、固形分20%)1455部と完全鹸化ポリビニルアルコール(PVA−117;(株)クラレ製)200部を水に加えて混合攪拌して得られる固形分15%の塗被組成物を、絶乾状態で5g/mの塗工量になるよう塗工し、その後、平滑化処理として表面温度が120℃に保たれた鏡面ドラムに、線圧100kg/cmで圧接させた。その結果、実施例7の記録用シートが得られた。
【0050】
[実施例8]
実施例6において、使用したエマルション組成物を、製造例8で得られたエマルション組成物に変え、平滑化の処理として鏡面ドラムの温度を80℃に変えた以外は実施例6と同様に記録用シートを作成した。その結果、実施例8の記録用シートが得られた。
【0051】
[実施例9]
実施例2において、使用したエマルション組成物を、製造例9で得られたエマルション組成物に変え、更に平滑化の処理として鏡面ドラムの温度を160℃に変えた以外は実施例2と同様に記録用シートを作成した。その結果、実施例9の記録用シートが得られた。
【0052】
[比較例1]
合成非晶質シリカ(ファインシールX−37B;(株)トクヤマ製)100部と、完全鹸化ポリビニルアルコール(PVA−117;(株)クラレ製)20部、スミレーズレジン1001(住友化学工業(株)製;固形分30%)33.3部を水に加えて混合攪拌し、固形分15%の塗被組成物を得た。この塗被組成物を坪量105g/mの上質紙に、絶乾状態で20g/mの塗工量になるよう塗工し、120℃、1分間乾燥させた。更にその上に、コロイダルシリカ(スノーテックス−O;日産化学工業(株)製、固形分20%)1500部と完全鹸化ポリビニルアルコール(PVA−117;(株)クラレ製)200部を水に加えて混合攪拌して得られる固形分15%の塗被組成物を、絶乾状態で5g/mの塗工量になるよう塗工し、その後、平滑化処理として表面温度110℃に保たれた鏡面ドラムに、線圧100kg/cmで圧接させた。その結果、比較例1の記録用シートが得られた。
【0053】
[比較例2]
実施例8において、使用したエマルション組成物を、製造例10で得られたエマルション組成物に変えに変えた以外は実施例8と同様に記録用シートを作成した。その結果、比例2の記録用シートが得られた。
【0054】
[評価方法]
評価は以下の方法に従って実施した。
<光沢値>
光沢の測定は、JIS Z8741に基づき、変角光沢計 GM−3D型(村上色彩技術研究所社製)を使用して、記録用シート表面の75°での光沢度を測定した。
【0055】
<インク吸収性>
市販のインクジェットプリンター(セイコーエプソン社製、PM2000C)を用いて、イエローインク、マゼンダインク、シアンインク、ブラックインクを縦方向にベタ印刷し、プリンターから排出された直後に、上部にPPC用紙を押しつけて、インクがPPC用紙へ転写される度合いを目視で評価した。評価基準は以下の通りである。
◎:インクの転写がなく、インク吸収性に優れる。
○:インクの転写がわずかにあるが、インク吸収性が実用レベルである。
△:インクの転写が多く、インク吸収性が実用レベル以下である。
×:インクが全く吸収されていない。
【0056】
<耐さっか性>
市販のインクジェットプリンター(セイコーエプソン社製、MC2000)を用いてブラックインクのベタ印刷を行い、一晩乾燥後、印刷部分を軽く爪で引っかき、印刷部分のインクのはがれ度合いを目視で評価した。評価基準は以下の通りである。
○:インクのはがれがなく、耐さっか性に優れる。
△:インクのはがれがわずかにあるが、耐さっか性が実用レベルである。
×:インクのはがれが多く、耐さっか性が実用レベル以下である。
【0057】
<耐光性>
市販のインクジェットプリンター(セイコーエプソン社製、PM2000C)を用いて、マゼンタインクのベタ印刷を行った。キセノンフェードメーターを用いて、印刷した記録シートに100時間光照射し、光照射前に対する光照射後の光学反射濃度の残存率を耐光性とした。光学反射濃度はマクベス濃度計(RD−918)で測定した。
【0058】
<耐黄変性>
カーボンアークフェードメーターを用いて、印刷していない記録シートに7時間光照射し、光照射した前後の色差を測定した。色差(ΔE)はL(CIEに準拠した表示方法)に従って、光照射前後の色測定した結果を基に、
ΔE={(ΔL+(Δa+(Δb1/2
で算出した。色差が大きいほど色劣化が生じていることを示す。
【0059】
<印字濃度>
市販のインクジェットプリンター(セイコーエプソン社製 PM2000C;染料系インク使用、セイコーエプソン社製 MC2000;顔料系インク使用)を用いて、ブラックインクのベタ印刷を行い、ベタ部の光学反射濃度をマクベス濃度計(RD−918)で測定した。
【0060】
<耐水性>
市販のインクジェットプリンター(セイコーエプソン社製、PM2000C)を用いて、ブラックインクで文字印刷を行い、印字部分に30℃の市水を滴下して一時間放置した。その後、残存する水滴が存在する場合はそれをウェスで吸い取り、表面状態やにじみ等の印字状態を目視で判定した。評価基準は以下の通りである。
○:にじみや発色濃度、表面状態の変化が殆ど見られない。
△:にじみや発色濃度、表面状態の低下があるが、実用レベルである。
×:にじみや発色濃度、表面状態の低下があり、実用レベル以下である。
【0061】
<キャストコーティング法による平滑化の際の作業性(乾燥に要する時間)>
前記実施例、及び比較例で記録シートをキャストコーティング法で作成する際、作成するシート(A4サイズ)が、鏡面ドラムに接触してから乾燥して自然に剥がれ落ちるまでの時間を測定した。
【0062】
【表1】

【0063】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機粒子が(A)イソボルニルメタクリレートと(B)その他の共重合可能なモノマーとを共重合して得られることを特徴とするインクジェット記録シート用有機粒子。
【請求項2】
前記(A)イソボルニルメタクリレートと(B)その他の共重合可能なモノマーとの総重量を100重量%とした場合、(A)が20〜70重量%、(B)が30〜80重量%含有されていることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録シート用有機粒子。
【請求項3】
前記有機粒子の平均粒子径が、10〜300nmであることを特徴とする請求項1または2に記載のインクジェット記録シート用有機粒子。
【請求項4】
前記有機粒子が、カチオン性有機粒子であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のインクジェット記録シート用有機粒子。
【請求項5】
前記有機粒子の計算によるガラス転移温度が90〜160℃であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のインクジェット記録シート用有機粒子。
【請求項6】
シート状支持体上に有機粒子を含有するインク受容層を少なくとも一層以上有するインクジェット記録シートであって、該有機粒子が請求項1〜5のいずれかに記載の有機粒子であることを特徴とするインクジェット記録シート。
【請求項7】
前記有機粒子を含有するインク受容層が、最表層であることを特徴とする請求項6に記載のインクジェット記録シート。
【請求項8】
前記有機粒子を含有するインク受容層の総固形分100重量%中に、前記有機粒子が5〜100重量%含まれていることを特徴とする請求項6または7に記載のインクジェット記録シート。
【請求項9】
前記記録シートの最表層を平滑化処理し、シートの最表面のJIS Z8741に基づいた75度鏡面光沢度が60%以上である請求項6〜8に記載のインクジェット記録シート。
【請求項10】
前記平滑化処理が、キャストコーティング法であることを特徴とする請求項9に記載のインクジェット記録シート。
【請求項11】
前記キャストコーティング法において、100〜140℃に加熱したキャストドラムで平滑化したことを特徴とする請求項10に記載のインクジェット記録シート。
【請求項12】
前記平滑化処理が、カレンダー処理であることを特徴とする請求項9に記載のインクジェット記録シート。