説明

インクジェット記録シート用樹脂組成物及び記録シート

【課題】
高光沢でインク吸収性に優れ、且つ耐水性、印字濃度、耐ひび割れ性に優れるインクジェット記録シート用樹脂組成物およびそれからなるインクジェット記録シートを提供することにある。
【解決手段】
分子末端に疎水性基を有するポリビニルアルコールを分散安定剤とし、エチレン性不飽和単量体から選ばれる1種または2種以上の単量体を構成単位とする重合体を分散質とする水性エマルションからなることを特徴とするインクジェット記録シート用樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット記録方式を利用したプリンターやプロッターに適用されるインクジェット記録シート用樹脂組成物、およびそれからなるインクジェット記録シートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録方式は、インクの微小液滴を種々の作動原理により飛翔させて紙等の記録用シートに付着させ、画像・文字等の記録を行うものである。該記録方式は、高速、低騒音、多色化が容易、記録パターンの融通性が大きい、現像及び定着が不要等の特徴があり、漢字を含め各種図形及びカラー画像等の記録装置として、種々の用途において急速に普及している。
【0003】
さらに、インクジェット方式を利用したプリンターやプロッターは、市場からの更なる画像の品質向上に対する要求のために、高解像度化、色再現範囲の拡大が図られており、これにはインクの吐出量を多くすることで対応している。従って、吐出量に見合ったインク受理容量の増大が該記録用シートの重要な技術課題となっており、高インク受理容量の確保や発色性の良好な塗層の塗設が不可欠となっている。加えて、光沢、剛直、色相等の外観も銀塩写真や印刷用紙に類似することが要望され、従来からある上質紙や塗工紙のインクジェット記録シートではこれらの要望に応えられなくなってきている。
【0004】
特に、従来の技術では光沢を付与すると、インクジェット記録シートに要求される重要な特性であるインク吸収性が欠如してしまう問題が付随して生じる。該吸収を確保するには、空隙量の大きな塗層を設ける必要があり、該塗層の塗被組成物に多量の無機粒子を適用してきたが、その結果、塗層表面は非常に剛性が高く、硬いものとなる。このような塗層表面は塗工液の乾燥工程での内部応力の発生、または乾燥後のシートに加わる弱い外部からの力により容易にひび割れを発生しやすく、平滑性や光沢が損なわれるといった問題点があった。また、これら多量の無機粒子を結着するため、バインダーとしてポリビニルアルコールに代表される親水性ポリマーが用いられる。水溶性であることから塗工液として水が使用できるため有機溶剤を使用する必要がないことから、塗工作業中の作業環境の問題や、製品に残存する溶剤の問題は生じないが、記録シートの表面を指で触ると、指紋が残るといった問題や、水溶性インクで印刷した場合の耐水性、耐湿性に問題がある。
【0005】
特許文献1には、ポリビニルアルコールを主成分とする水溶性ポリマーを保護コロイドとするラテックスを含有するインクジェット記録媒体が耐水性に優れることが、特許文献2には、水溶性高分子化合物の存在下に単量体を重合して得られる重合体からなり、該重合体のテトラヒドロフラン不溶解分含量が80重量%以下である重合体ラテックスを含有してなるインクジェット記録媒体に耐水性や印刷物の滲みが優れることが記載されている。また、特許文献3では、分子末端にメルカプト基を有するビニルアルコール系重合体を分散安定剤とし、エチレン性不飽和単量体及びジエン系不飽和単量体から選ばれる1種または2種以上の単量体を構成単位とする重合体を分散質とする水性エマルジョンをバインダーに用い、平均粒子径が200nm以下の無機粒子を含有するインクジェット記録材が表面のひび割れに効果があり、且つ光沢、インク吸収性、皮膜の透明性に優れることが記載されている。しかし上記特許で開示された方法では、実用的に粒子径が100nm以下にすることは困難であり、インクジェット印刷物の重要な要素の一つである印字濃度が低下する原因となる。また、界面活性剤を併用することで粒子径を下げることは可能であるが、併用した界面活性剤により耐湿性が低下し、画像がにじむといった問題が顕著となる。このように、従来の技術では光沢、印字濃度、耐水性、耐湿性をすべて満足するものは得られていない。
【特許文献1】特許公開2003−1930号公報
【特許文献2】特許公開2003−312126号公報
【特許文献3】特許公開2003−251923号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、高光沢でインク吸収性に優れ、且つ耐水性、印字濃度、耐ひび割れ性に優れるインクジェット記録シート用樹脂組成物およびそれからなるインクジェット記録シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記の問題を解決すべく、鋭意検討した結果、分子末端に疎水性基を有するポリビニルアルコールを分散安定剤とし、不飽和二重結合を有する単量体から選ばれる1種または2種以上の単量体を構成単位とする重合体を分散質とする水性エマルションからなることを特徴とするインクジェット記録シート用樹脂組成物、およびそれからなるインクジェット記録シートに、高光沢でインク吸収性に優れ、且つ耐水性、印字濃度、耐ひび割れ性に優れることを見い出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
即ち、分子末端に疎水性基を有するポリビニルアルコールを分散安定剤とし不飽和二重結合を有する単量体から選ばれる1種または2種以上の単量体を構成単位とする重合体を分散質とする水性エマルションからなることを特徴とするインクジェット記録シート用樹脂組成物である。また、前記水性エマルションの分散質がアクリル酸エステル系重合体及び/又はメタクリル酸エステル系重合体であることが好ましい樹脂組成物である。
更に、前記水性エマルションが、カチオン性を有することが好ましい樹脂組成物である。
また、前記水性エマルションに含まれるポリビニルアルコールが、架橋剤により架橋されていることが好ましい。また、前記水性エマルションが実質的に界面活性剤を含有しないことを特徴とする樹脂組成物である。
また、シート状支持体上に樹脂組成物を含有するインク受容層を少なくとも一層以上有するインクジェット記録シートであって、該樹脂組成物が請求項1〜9のいずれかに記載のインクジェット記録シート用樹脂組成物であり、JIS Z8741に基づき、記録シート記録面表面の75°での光沢度が、50%以上であることを特徴とするインクジェット記録シートである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、高光沢でインク吸収性に優れ、且つ耐水性、印字濃度、耐ひび割れ性に優れるインクジェット記録シート用樹脂組成物、及びインクジェット記録シートを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明のインクジェット記録シート用樹脂組成物、およびそれからなるインクジェット記録シートとは、分子末端に疎水性基を有するポリビニルアルコールを分散安定剤とし、不飽和二重結合を有する単量体から選ばれる1種または2種以上の単量体を構成単位とする重合体を分散質とする水性エマルションからなることを特徴とするインクジェット記録シート用樹脂組成物、およびそれからなるインクジェット記録シートである。
以下、詳細に説明する。
【0011】
[水性エマルション]
本発明におけるインクジェット記録シート用樹脂組成物は、分散質と分散安定剤からなる。分散質は不飽和二重結合を有する単量体から選ばれる1種または2種以上の単量体からなる。例えば、アクリル酸エステル類;メチルアクリレート、エチルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、n−アミルアクリレート、イソアミルアクリレート、n−ヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、オクチルアクリレート、デシルアクリレート、ドデシルアクリレート、オクタデシルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、フェニルアクリレート、ベンジルアクリレート、イソボルニルアクリレート、その他の炭素原子数1乃至14のアルキルアクリレート等、メタクリル酸エステル類;メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、t−ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、n−アミルメタクリレート、イソアミルメタクリレート、n−ヘキシルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、オクチルメタクリレート、デシルメタクリレート、ドデシルメタクリレート、オクタデシルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、フェニルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート、その他の炭素原子数1乃至14のメタクリレート等、芳香族ビニル類;スチレン、2−メチルスチレン、t−ブチルスチレン、クロルスチレン、ビニルアニソール、ビニルナフタレン、ジビニルベンゼン等、不飽和カルボン酸類;アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、無水アクリル酸、無水メタクリル酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水フマル酸等、水酸基含有ビニル類;2−ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、4−ヒドロキシブチルメタクリレート等、アミド類;アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、マレイン酸アミド等、ビニルエステル類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等、ハロゲン化ビニリデン類;塩化ビニリデン、フッ化ビニリデン等、
アミノアルキルアクリレート又はアミノアルキルメタクリレート類;N、N−ジメチルアミノエチルアクリレート、N、N−ジメチルアミノエチルメタクリレート、N、N−ジメチルアミノプロピルアクリレート、N、N−ジメチルアミノプロピルメタクリレート等、
N−アミノアルキルアクリルアミド又はN−アミノアルキルメタクリルアミド類;N、N−ジメチルアクリルアミド、N、N−ジメチルメタクリルアミド、N、N−ジエチルアクリルアミド、N、N−ジエチルメタクリルアミド、N、N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、N、N−ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド、N、N−ジメチルアミノエチルアクリルアミド、N、N−ジメチルアミノエチルメタクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド等、ハロゲンとして塩素、臭素、ヨウ素等であるハロゲン化メチル基、ハロゲン化エチル基、ハロゲン化ベンジル基等で4級塩化された、上記アミノアルキルアクリレート又はアミノアルキルメタクリレート類とN−アミノアルキルアクリルアミド又はN−アミノアルキルアクリルアミド類の4級塩類等アクリロイルモルホリン、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メタクリロイルオキシエチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メタクリロイルオキシフェニル)−ベンゾトリアゾール、2−ヒドロキシ−4−(2−メタクリロイルオキシ)エトキシベンゾフェノン、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メタクリロイルオキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルメタクリレート、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルメタクリレート等塩化ビニル、ビニルエーテル、ビニルケトン、ビニルアミド、クロロプレン、エチレン、プロピレン、イソプレン、ブタジエン、クロロプレン、ビニルピロリドン、2−メトキシエチルアクリレート、2−エトキシエチルアクリレート、グリシジルアクリレート、グリシジルメタアクリレート、アリルグリシジルエーテル、アクリロニトリル、メタアクリロニトリル、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、ポリプロピレングリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、1,3−ブチレングリコールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、アリルメタアクリレート、ジシクロペンテニルアクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレート、イソプロペニル−α,α−ジメチルベンジルイソシアネート、アリルメルカプタン等、が挙げられ、これらの1種、又は2種以上を選択することができる。
【0012】
これらの中で、アクリル酸エステル系重合体及び/又はメタクリル酸エステル系重合体が好適に用いられ、特に2−ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、4−ヒドロキシブチルメタクリレート等の水酸基を有するモノマーの中から選ばれる1種以上を含有する場合、エマルション粒子の安定性が向上するため好ましい。
【0013】
また有機粒子の性状としては、染料と強い相互作用が生じるカチオン性を有するものが高い発色濃度を得るために好ましい。カチオン性を付与する方法としては、カチオン性の開始剤を使用する方法、カチオン性の界面活性剤を使用する方法、カチオン性の単量体を共重合する方法、カチオン性の水溶性ポリマーを併用する方法等が挙げられる。
【0014】
また本発明に用いられる分散安定剤は、分子末端に疎水基を有するポリビニルアルコールを必須成分とするものである。ここでいう疎水基とは、炭素数が5以上の炭化水素基を有するものであり、鎖状であっても、環状であっても構わない。またベンゼン環等の芳香族であっても良い。疎水基は、ポリビニルアルコール中の両末端や、片末端と分子の途中に存在していても効果を示すが、特に片末端のみに存在する場合、本発明の水性エマルションの安定性が向上するため好ましい。特に疎水基が炭素数8以上のアルキル鎖である場合、得られる水性エマルションの粒子径を小さくすることが可能となり好ましい。またポリビニルアルコールとしては、けん化度が高い方が得られる水性エマルションの安定性が向上するため好ましい。
【0015】
本発明における水性エマルションの分散質と分散安定剤としてのポリビニルアルコールとの比率は、水性エマルションの分散安定性とインクジェット記録シートに用いた際のインク吸収性の観点から、分散質の総重量を100重量部としたときポリビニルアルコールが10〜100重量部であり、好ましくは20〜80重量部である。
【0016】
更に本発明の分散安定剤として、上記分子末端に疎水性基を有するポリビニルアルコールと併せて、重合度が1000〜10000のポリビニルアルコールを併用することで、水性エマルションのインクジェット記録シート用樹脂組成物としての結着力が向上し好ましい。この重合度が1000以上のポリビニルアルコールは、ポリ酢酸ビニルを加水分解して得られる通常のポリビニルアルコールの他に、末端をカチオン変性したカチオン変性ポリビニルアルコールやアニオン性基を有するアニオン変性ポリビニルアルコール等の変性ポリビニルアルコールも含まれる。また、重合度が1500〜4500の場合、水性エマルションのインクジェット記録シート用樹脂組成物としての結着力が特に優れるため好ましい。重合度が1000以上のポリビニルアルコールを併用する場合の比率は、本発明の水性エマルションをインクジェット記録シートに用いた際のインク吸収性と結着力の観点から、分子末端に疎水基を有するポリビニルアルコールの総重量を100重量部とした場合、通常100〜0重量部であり、好ましくは70.0〜0.1重量部である。
【0017】
更に、本発明の水性エマルションに架橋剤を併用することで、耐水性や結着力が向上するため好ましい。架橋剤としては、グリオキザール、グルタールアルデヒド、ジアルデヒドデンプン、水溶性エポキシ化合物、メチロール化合物、塩基性塩化ジルコニル、酢酸ジルコニル、チタン系架橋剤等を使用する事ができる。特にチタン系架橋剤が好ましい。チタン系架橋剤としては、テトラメチルチタネート、テトラエチルチタネート、テトラノルマルプロピルチタネート、テトライソプロピルチタネート、テトラノルマルブチルチタネート、テトライソブチルチタネート、テトラ−t−ブチルチタネート、テトラオクチルチタネート等のチタンアルコキシド、及びチタンブチルダイマー、チタンブチルテトラマー等のチタンアルコキシドの加水分解分解反応により得られるオリゴマーやポリマー、及びそれらの誘導体等、チタンアセチルアセトナート、チタンオクチレングリコレート、チタンテトラアセチルアセトナート、チタンエチルアセトアセテート等のチタンキレート錯体、ポリヒドロキシチタンステアレート等のチタンアシレート、その他水溶性チタン化合物としてチタンラクテート、チタントリエタノールアミネート等が挙げられ、これらの1種または2種以上が選ばれる。
【0018】
これら架橋剤を使用する場合の使用量は、水性エマルションの分散安定性の観点から、本発明における水性エマルションの分散安定剤としてのポリビニルアルコールの総重量を100重量部とした場合、50.0〜0重量部であり、好ましくは20.0〜0.1重量部である。
【0019】
[水性エマルションの粒子径]
本発明における水性エマルションの平均粒子径としては、10〜100nmであり、好ましくは30〜70nmである。平均粒子径がこの範囲であると、インク吸収性、印字濃度性の点で好ましい。尚、本発明における粒子径は、具体的にはレーザー粒径解析システム LPA−3000/3100(大塚電子株式会社製)で測定することができる。
[水性エマルションのガラス転移温度(Tg)]
本発明の水性エマルションのガラス転移温度は、―40℃〜20℃が好ましい。ガラス転移温度がこの範囲であると、本発明の水性エマルションを含有するインクジェット記録シートが柔軟性に優れ、ひび割れが発生し難くなる。また、無機粒子等、インクジェット記録シートを構成するその他の要素を結着する力に優れたものとなる。
なお、本願で用いるガラス転移温度は、通常知られているFOXの式(1/Tg=a/Tg+a/Tg+a/Tg+・・・)に従い計算により求めたものであり、式中のTg、Tg、Tgは各重合体を構成する単量体を単独で重合した際に得られる重合体のガラス転移温度(POLYMER HANDBOOK(J.BRANDRUP・E.H.IMMERGUT,Editors)等に記載)を表し、a、a、aは各重合体を構成する単量体単位の重量分率を表す。
【0020】
[インクジェット記録シート]
本発明の水性エマルションを含有するインクジェット記録シートは、本願におけるもう1つの発明である。本発明の水性エマルションを含有する層には、インクを吸収する空隙を形成するための無機粒子や有機粒子が使用される。無機粒子としては例えば、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、カオリン、クレー、タルク、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、水酸化亜鉛、硫化亜鉛、炭酸亜鉛、ハイドロタルサイト、珪酸アルミニウム、ケイソウ土、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、合成非晶質シリカ、コロイダルシリカ、アルミナ、コロイダルアルミナ、擬ベーマイト、水酸化アルミニウム、リトボン、ゼオライト、水酸化マグネシウム等が挙げられる。また、有機粒子としては例えば、アクリル系ポリマー(アクリル酸エステル及び/又はメタクリル酸エステルの重合体又は共重合体)、スチレン−アクリル系ポリマー(スチレンと、アクリル酸エステル及び/又はメタクリル酸エステルの共重合体)、MBR系ポリマー(メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体)、SBR系ポリマー(スチレン−ブタジエン共重合体)、ウレタン系ポリマー、エポキシ系ポリマー、EVA系ポリマー(エチレン−酢酸ビニル共重合体)の水分散体等が挙げられる。有機粒子の場合には、ポリマーのガラス転移温度は50℃以上が好ましい。高い空隙率を得てインク吸収性を向上させるためには、好ましくは1次粒子径が100nm以下の微粒子である。
【0021】
該水性エマルションを含有する層には、通常インクジェット記録用シートに使用されている各種添加剤や各種添加材を併用しても良い。例えばバインダー機能を有するポリマーとして、水溶性ポリマーや、水不溶性ポリマーの水分散体などが挙げられる。以下に詳しく述べる。
【0022】
水溶性ポリマーとしては、例えば、カチオン系水溶性ポリマーである、カチオン化ポリビニルアルコール、カチオン化澱粉、カチオン化ポリアクリルアミド、カチオン化ポリメタクリルアミド、ポリアミドポリウレア、ポリエチレンイミン、アリルアミン又はその塩の共重合体、エピクロルヒドリン−ジアルキルアミン付加重合体、ジアリルアルキルアミン又はその塩の重合体、ジアリルジアルキルアンモニウム塩の重合体、ジアリルアミン又はその塩と二酸化イオウ共重合体、ジリルジアルキルアンモニウム塩−二酸化イオウ共重合体、ジアリルジアルキルアンモニウム塩とジアリルアミン又はその塩もしくは誘導体との共重合体、ジアルキルアミノエチルアクリレート4級塩の重合体、ジアルキルアミノエチルメタクリレート4級塩の重合体、ジアリルジアルキルアンモニウム塩−アクリルアミド共重合体、アミン−カルボン酸共重合体等が挙げられる。
【0023】
また、ノニオン系水溶性ポリマーである、ポリビニルアルコール又はその誘導体;酸化澱粉、エーテル化澱粉、リン酸エステル化澱粉等の澱粉誘導体;ポリビニルピロリドン又は酢酸ビニルを共重合させたポリビニルピロリドン等のポリビニルピロリドン誘導体;その誘導体カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース等のセルロース誘導体;ポリアクリルアミド又はその誘導体;ポリメタクリルアミド又はその誘導体;ゼラチン、カゼイン等が挙げられる。
【0024】
アニオン系水溶性ポリマーとして、ポリアルギン酸及びその金属塩、カルボキシメチルセルロース及びその金属塩、ポリアクリル酸及びその金属塩、ポリアクリルアミドの部分加水分解物及びその金属塩、マレイン酸共重合物、リグニンスルホン酸及びその金属塩及びそれらの誘導体、オキシ有機酸及びその金属塩、アルキルアリルスルホン酸及びその金属塩、ポリオキシアルキルアリルエーテル、ポリオール複合体、高級多価アルコールスルホン酸及びその金属塩、ゼラチン・ニカワ等の水溶性蛋白質及びその金属塩及びそれらの誘導体等が挙げられる。
【0025】
さらに水不溶性ポリマーの水分散体としては、例えば、アクリル系ポリマー(アクリル酸エステル及び/又はメタクリル酸エステルの重合体又は共重合体)、スチレン−アクリル系ポリマー(スチレンと、アクリル酸エステル及び/又はメタクリル酸エステルの共重合体)、MBR系ポリマー(メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体)、SBR系ポリマー(スチレン−ブタジエン共重合体)、ウレタン系ポリマー、エポキシ系ポリマー、EVA系ポリマー(エチレン−酢酸ビニル共重合体)の水分散体等が挙げられる。
水分散体の場合には、ポリマーのガラス転移温度は40℃以下が好ましい。
【0026】
さらに、その他に、本発明の有機粒子を含有する層には、帯電防止剤、酸化防止剤、乾燥紙力増強剤、湿潤紙力増強剤、耐水化剤、防腐剤、紫外線吸収剤、光安定化剤、蛍光増白剤、着色顔料、着色染料、浸透剤、発泡剤、離型剤、抑泡剤、消泡剤、流動性改良剤、増粘剤、顔料分散剤、カチオン性定着剤等を含んでいてもよい。
【0027】
[光沢の測定方法]
本発明における光沢とは、JIS Z8741に基づき、記録用シート記録面表面の75°での光沢度を測定したものであり、例えば変角光沢計 GM−3D型(村上色彩技術研究所社製)等で測定することができる。本発明の記録用シートは75°における光沢が、50%以上であるのが好ましい。50%未満では光沢が不十分となり易く、光沢を有する記録シートとは言い難くなる場合がある。
【0028】
[水性エマルションの製造方法]
本発明において使用する水性エマルションは、種々の方法で製造することができる。例えば、水、上記分子末端に疎水性基を有するポリビニルアルコールからなる分散安定剤、及び重合開始剤の存在下に、前述したエチレン性不飽和単量体から選ばれる1種または2種以上の単量体を、一時、又は連続的に添加して加熱、攪拌する方法が好適である。上記の方法において、単量体を予め分散安定剤の水溶液と混合乳化したものを連続的に添加しても良い。その際の重合温度としては、通常30〜90℃で行われる。 重合に使用される開始剤としては、通常のラジカル開始剤が使用できる。 一般的な開始剤の使用量は、共重合させる単量体の全重量を基準として0.01〜20重量%である。分散安定剤として、通常の乳化重合で使用されるカチオン性界面活性剤や両性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性水溶性ポリマー、ノニオン性水溶性ポリマー、アニオン性水溶性ポリマーなどを併用しても良いが、このうち、分子量が1000以下の界面活性剤を実質的に含有しないと、印刷したインクジェット記録シートを長期保存した場合の画像の滲みが低減できるため、好ましい態様である。尚、ここでいう実質的含まないとは、印刷画像の滲みに影響しない程度には含むことができ、その程度はエチレン性不飽和単量体100重量部に対し、界面活性剤の添加量が0〜0.1重量部の範囲である。
【0029】
[記録シートの構成]
本発明における記録シートの好ましい構成例としては、水性エマルションの含有される層が、インクの受理に関わる表層に使用されていることである。例えば、支持体上に本発明である水性エマルションを含有する層のみを設けた単層構造や、支持体上にインク受理層を設け、その上層に本発明である水性エマルションを含有する層を設けたり、本発明の水性エマルションを含有する層を設けた後に、その上層に別の層を設けることによって構成される、多層構造等が挙げられる。本発明の有機粒子を含有する層の量は、通常、シート状支持体上に、坪量として通常1〜300g/mであるが、特に制限されるものではない。
【0030】
[シート支持体種]
本発明において、支持体としては、従来からインクジェット記録用シートに用いられる支持体、例えば、普通紙、アート紙、コート紙、キャストコート紙、樹脂被服紙、樹脂含浸紙、非塗工紙、塗工紙等の紙支持体、両面又は片面をポリエチレン及び/又はチタン等の白色顔料を練り込んだポリエチレン等のポリオレフィンで被覆した紙支持体、プラスチック支持体、不織布、布、織物、金属フィルム、金属板、及びこれらを貼り合わせた複合支持体を用いることができる。プラスチック支持体としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、トリアセチルセルロース、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリイミド、ポリカーボネート、セロファン、ポリナイロン等のプラスチックシート、フィルム等が好ましく使用される。これらのプラスチック支持体は透明なもの、半透明なもの、及び不透明なものを用途に応じて適宜使い分けることができる。
【0031】
また支持体には白色のプラスチックフィルムを用いることも好ましい。白色のプラスチック支持体としては、少量の硫酸バリウム、酸化チタン、酸化亜鉛などの白色顔料をプラスチックに含有させたものや、微細な空隙を多数設けて不透明性を付与した発泡プラスチック支持体、及び白色顔料(酸化チタン、硫酸バリウム)を有する層を設けた支持体を用いることができる。本発明においては支持体の形状は限定されないが、通常用いられるフィルム状、シート状、板状等の他に、飲料缶のような円柱状、CDやCD−R等の円盤状、その他複雑な形状を有するものも支持体として使用できる。
【0032】
[記録シートの製造方法]
本発明の記録シートは、シート状支持体の片面または両面に、水性エマルションを含んだ塗被組成物を塗布し、これを乾燥させて層を形成することによって製造される。塗工液の塗布方法に限定はなく、例えば、エアナイフコーター、ロールコーター、バーコーター、ブレードコーター、スライドホッパーコーター、グラビアコーター、フレキソグラビアコーター、カーテンコーター、エクストルージョンコーター、フローティングナイフコーター、コンマコーター、ダイコーター等の従来既知の塗布方法を用いることができる。 また光沢を付与するための方法については特に限定はないが、一般的なカレンダー処理、つまりはスーパーカレンダー、グロスカレンダー等のカレンダー装置を用い、圧力や温度をかけたロール間を通過させて塗層表面を平滑化する方法や、或いは直接法、凝固法、リウエット法(再湿潤法)、プレキャスト法などのキャストコーティング法を好ましく用いることができる。また支持体が、例えば写真用原紙の両面をポリエチレンで被覆した紙支持体のような平滑な支持体であれば、表面の後処理がなくても優れた光沢を得ることが可能である。
【実施例】
【0033】
以下に、本発明の実施例を挙げて説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。又、実施例において示す部及び%は、特に明示しない限り重量部及び重量%を示す。
【0034】
<水性エマルションの作製>
製造例で作成した水性エマルションについて、表1に示した。
【0035】
[製造例1]
攪拌翼、温度計、冷却管付きのフラスコに25℃の脱イオン水560部を仕込み、攪拌下、ポリビニルアルコール(PVA−MP102;(株)クラレ製、片末端に疎水基を有するポリビニルアルコール)40部を徐々にフラスコへ添加する。95℃まで昇温し、そのまま1時間放置する。70℃迄冷却した後、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩0.5部を添加した。これとは別に、スチレン(以下St)37部、n−ブチルアクリレート(以下nBA)58部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(以下HEMA)5部を混合した混合物を作り、この混合物をフラスコへ、4時間かけて滴下し、その後、更に同温度で4時間保持した。その結果、水性エマルションが得られ、不揮発分20%、pH5、光散乱測定による平均粒子径71nm、及び各モノマーのガラス転移温度より求めた有機粒子ポリマーのガラス転移温度は−10℃であった。
【0036】
[製造例2]
攪拌翼、温度計、冷却管付きのフラスコに25℃の脱イオン水600部を仕込み、攪拌下、ポリビニルアルコール(PVA−MP103;(株)クラレ製、片末端に疎水基を有するポリビニルアルコール)40部、及びポリビニルアルコール(PVA−117;(株)クラレ製、完全けん化型ポリビニルアルコール)10部を徐々にフラスコへ添加する。95℃まで昇温し、そのまま1時間放置する。70℃迄冷却した後、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩0.5部を添加した。これとは別に、St37部、nBA58部、HEMA5部を混合した混合物を作り、この混合物をフラスコへ、4時間かけて滴下した。その後、13部の脱イオン水に希釈したチタン系架橋剤(オルガチックスTC−400;松本製薬工業(株)製、有効固形分75%)1.3部を添加し、更に同温度で4時間保持した。その結果、水性エマルションが得られ、不揮発分20%、pH7、光散乱測定による平均粒子径75nm、及び各モノマーのガラス転移温度より求めた有機粒子ポリマーのガラス転移温度は−10℃であった。
【0037】
[製造例3]
攪拌翼、温度計、冷却管付きのフラスコに25℃の脱イオン水480部を仕込み、攪拌下、ポリビニルアルコール(PVA−M205;(株)クラレ製、片末端にメルカプト基を有するポリビニルアルコール)20部を徐々にフラスコへ添加する。95℃まで昇温し、そのまま1時間放置する。70℃迄冷却した後、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩0.5部を添加した。これとは別に、メチルメタクリレート(以下MMA)50部、nBA50部、n−ドデシルメルカプタン(以下nDM)0.5部を混合した混合物を作り、この混合物をフラスコへ、4時間かけて滴下し、更に同温度で4時間保持した。その結果、水性エマルションが得られ、不揮発分20%、pH5、光散乱測定による平均粒子径380nm、及び各モノマーのガラス転移温度より求めた有機粒子ポリマーのガラス転移温度は5℃であった。
【0038】
[製造例4]
攪拌翼、温度計、冷却管付きのフラスコに25℃の脱イオン水480部を仕込み、攪拌下、ポリビニルアルコール(PVA−M205;(株)クラレ製、片末端にメルカプト基を有するポリビニルアルコール)20部を徐々にフラスコへ添加する。95℃まで昇温し、そのまま1時間放置する。70℃迄冷却した後、コータミン24P(花王(株)製;カチオン性界面活性剤)2.0部、及び2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩0.5部を添加した。これとは別に、MMA50部、nBA50部、nDM0.5部を混合した混合物を作り、この混合物をフラスコへ、4時間かけて滴下し、更に同温度で4時間保持した。その結果、水性エマルションが得られ、不揮発分20%、pH5、光散乱測定による平均粒子径92nm、及び各モノマーのガラス転移温度より求めた有機粒子ポリマーのガラス転移温度は5℃であった。
【0039】
[製造例5]
攪拌翼、温度計、冷却管付きのフラスコに25℃の脱イオン水520部を仕込み、攪拌下、ポリビニルアルコール(PVA−117)30部を徐々にフラスコへ添加する。95℃まで昇温し、そのまま1時間放置する。70℃迄冷却した後、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩0.5部を添加した。これとは別に、t−ブチルメタクリレート(以下tBMA)3部、nBA57部、St30部、HEMA10部を混合した混合物を作り、この混合物をフラスコへ、4時間かけて滴下し、更に同温度で4時間保持した。その結果、水性エマルションが得られ、不揮発分20%、pH5、光散乱測定による平均粒子径530nm、及び各モノマーのガラス転移温度より求めた有機粒子ポリマーのガラス転移温度は−10℃であった。
【0040】
<記録用シートの作製>
実施例、比較例で作成した記録用シート、及び評価結果について、表2に示した。
【0041】
[実施例1]
1次粒子の平均粒径が約12nmの気相法シリカ粉末であるアエロジルA−300(日本アエロジル(株)製)600部を、酢酸12を溶解した脱イオン水2400部に分散し、高圧式ホモジナイザーPA2K(ニロ・ソアビ社製)にて分散し、20重量%のシリカ分散液を得た。この分散液に分散しているシリカの平均粒子径は、70nmであった。次に、この分散液500部に、製造例1で得られた水性エマルション30部、及び脱イオン水に溶解した10%PVA−117水溶液150部を加え、良く混合し、塗工液を得た。次にこの塗工液を、室温にて、ブレードコーターにて乾燥時の塗被量が20g/mとなるようにコロナ放電処理を施したPETフィルムの表面に塗工し、熱風乾燥機で60℃、5分間乾燥し、実施例1のインクジェット記録シートを得た。
【0042】
[実施例2]
実施例1において使用する水性エマルションを製造例2で得られた水性エマルションとした以外は、実施例1と同様にして、実施例2のインクジェット記録シートを得た。
【0043】
[比較例1]
実施例1において使用する水性エマルションを製造例3で得られた水性エマルションとした以外は、実施例1と同様にして、比較例1のインクジェット記録シートを得た。
【0044】
[比較例2]
実施例1において使用する水性エマルションを製造例4で得られた水性エマルションとした以外は、実施例1と同様にして、比較例2のインクジェット記録シートを得た。
【0045】
[比較例3]
実施例1において使用する水性エマルションを製造例5で得られた水性エマルションとした以外は、実施例1と同様にして、比較例3のインクジェット記録シートを得た。
【0046】
[比較例4]
実施例1において使用する水性エマルションを使用せず、その代わりに10%PVA117を210部とした以外は、実施例1と同様にして、比較例4のインクジェット記録シートを得た。
【0047】
[評価方法]
評価は、以下の方法に従って実施した。
【0048】
<光沢値>
光沢の測定は、JIS Z8741に基づき、変角光沢計 GM−3D型(村上色彩技術研究所社製)を使用して、記録用シート表面の75°での光沢度を測定した。
【0049】
<インク吸収性>
市販のインクジェットプリンター(セイコーエプソン社製、PM2000C)を用いて、イエローインク、マゼンダインク、シアンインク、ブラックインクを縦方向にベタ印刷し、プリンターから排出された直後に、上部にPPC用紙を押しつけて、インクがPPC用紙へ転写される度合いを目視で評価した。評価基準は以下の通りである。
◎:インクの転写がなく、インク吸収性に優れる。
○:インクの転写がわずかにあるが、インク吸収性が実用レベルである。
△:インクの転写が多く、インク吸収性が実用レベル以下である。
×:インクが全く吸収されていない。
【0050】
<表面状態>
インク受容層の表面を光学顕微鏡により観察した(100倍拡大)。
○:表面にひび割れが全く観察されない。
△:表面に部分的にひび割れが発生。
×:表面全体にひび割れが発生。
【0051】
<皮膜透明性>
ガラス板に、固形分10%に調整した水性エマルションを、約0.2μmの厚みに塗工し、室温にて乾燥後の状態を目視にて観察した。
○:完全に透明である。
△:やや白濁している。
×:白濁している。
【0052】
<にじみ耐湿性>
市販のインクジェットプリンター(セイコーエプソン社製、PM2000C)を用いて、ブラックインクで文字印刷を行い、40℃−相対湿度80%で5日間保存した。保存前後で文字のにじみを評価した。
○:にじみは発生せず、美観を損なわない。
△:にじみは小さく、美観を損なう程ではない。
×:にじみが発生し、美観を損なう。
【0053】
<印字濃度>
市販のインクジェットプリンター(セイコーエプソン社製 PM2000C;染料系インク使用、セイコーエプソン社製 MC2000;顔料系インク使用)を用いて、ブラックインクのベタ印刷を行い、ベタ部の光学反射濃度をマクベス濃度計(RD−918)で測定した。
【0054】
<耐水性>
市販のインクジェットプリンター(セイコーエプソン社製、PM2000C)を用いて、ブラックインクで文字印刷を行い、印字部分に30℃の市水を滴下して一時間放置した。その後、残存する水滴が存在する場合はそれをウェスで吸い取り、表面状態やにじみ等の印字状態を目視で判定した。評価基準は以下の通りである。
○:にじみや発色濃度、表面状態の変化が殆ど見られない。
△:にじみや発色濃度、表面状態の低下があるが、実用レベルである。
×:にじみや発色濃度、表面状態の低下があり、実用レベル以下である。
【0055】
<キャストコーティング法による平滑化の際の作業性(乾燥に要する時間)>
前記実施例、及び比較例で記録シートをキャストコーティング法で作成する際、作成するシート(A4サイズ)が、鏡面ドラムに接触してから乾燥して自然に剥がれ落ちるまでの時間を測定した。
【0056】
【表1】

【0057】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
分子末端に疎水性基を有するポリビニルアルコールを分散安定剤とし不飽和二重結合を有する単量体から選ばれる1種または2種以上の単量体を構成単位とする重合体を分散質とする水性エマルションからなることを特徴とするインクジェット記録シート用樹脂組成物。
【請求項2】
前記水性エマルションの分散質がアクリル酸エステル系重合体及び/又はメタクリル酸エステル系重合体であることを特徴とする請求項1に記載のインクェット記録シート用樹脂組成物。
【請求項3】
前記水性エマルションの平均粒子径が、10〜100nmであることを特徴とする請求項1又は2に記載のインクジェット記録シート用樹脂組成物。
【請求項4】
前記水性エマルションが、カチオン性を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のインクジェット記録シート用樹脂組成物。
【請求項5】
前記水性エマルションの分散質のガラス転移温度が−40〜20℃であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のインクジェット記録シート用樹脂組成物。
【請求項6】
前記水性エマルションに含まれるポリビニルアルコールが、分子末端に疎水性基を有し、かつ重合度が1000以上のポリビニルアルコールを必須成分とすることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のインクジェット記録シート用樹脂組成物。
【請求項7】
前記水性エマルションに含まれるポリビニルアルコールが、架橋剤により架橋されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のインクジェット記録シート用樹脂組成物。
【請求項8】
前記架橋剤がチタン系の架橋剤であることを特徴とする請求項7に記載のインクジェット記録シート用樹脂組成物。
【請求項9】
前記水性エマルションが実質的に界面活性剤を含有しないことを特徴とする請求項1〜8に記載のインクジェット記録シート用樹脂組成物。
【請求項10】
シート状支持体上に樹脂組成物を含有するインク受容層を少なくとも一層以上有するインクジェット記録シートであって、該樹脂組成物が請求項1〜9のいずれかに記載のインクジェット記録シート用樹脂組成物であり、JIS Z8741に基づき、記録シート記録面表面の75°での光沢度が、50%以上であることを特徴とするインクジェット記録シート。






【公開番号】特開2006−76249(P2006−76249A)
【公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−265489(P2004−265489)
【出願日】平成16年9月13日(2004.9.13)
【出願人】(000005887)三井化学株式会社 (2,318)
【Fターム(参考)】