説明

インクジェット記録シート

【課題】
本発明の課題は、インクジェット印刷において、優れた画像鮮明性と保存性を持ち、且つ印刷時の搬送性に優れ、印字画像の裏抜けが生じにくいインクジェット記録シートを提供することである。
【解決手段】
この課題は、支持体上に、顔料とバインダーとを含むインク受理層を設けたインクジェット記録シートであって、前記顔料は含水非晶質シリカとタルクを含み、前記バインダーはポリビニルアルコールとエチレン酢酸ビニルを含み、かつ、前記含水非晶質シリカの体積)平均粒子径が2〜8μmであり、前記タルクの体積平均粒子径が20〜35μmであり、前記含水非晶質シリカと前記タルクとの配合質量比が90:10〜60:40であり、前記インク受理層の絶乾塗工量が支持体の片面あたり3〜15g/mであることを特徴とするインクジェット記録シートにより解決される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクを用いて記録するインクジェット記録シートに関するものである。さらに詳しくは、優れた画像鮮明性と保存性を持ち、且つ印刷時の搬送性に優れ、画像の裏抜けが生じにくいインクジェット記録シートを提供することに関するものでる。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録方式は、騒音が少なく、現像や定着等のプロセスを必要とせず、且つ容易にフルカラー記録が行える各種プリンターに利用され、近年急速に普及してきている。特に、コンピューターにより発色画像が形成されることと、記録装置を比較的小型にすることができること、その装置の保守が容易であり、なおかつ駆動音及び記録音の発生が非常に低いという利点により、近年ファクシミリや各種プリンターの記録方式として利用されている。
【0003】
更に最近では、インクジェット記録方式の高速化・高精細化されインクジェット記録装置の性能向上や用途拡大に伴い、インクジェット記録シートに対してもより高度な特性が求められている。
【0004】
まず、インクジェット記録シートとしては、画像の印字濃度が高く色調が明るく鮮明であること、インクの吸収が早く印字画像の重なった場合においてもインクが流れ出したり滲んだりしないこと、印字ドットの縦方向や横方向への拡散が必要以上に大きくなく且つ周辺が滑らかであることなど、画像鮮明性に優れていることが要求される。
【0005】
また、長期に保存する際に、高湿度条件下などや、印字画像部が水に侵された場合にもインクが流れ出さないように、印字画像の耐水性に優れていることが要求される。
【0006】
このような要求を満たすために、いわゆるコート紙タイプのインクジェット記録シートは、支持体である紙の上に、シリカなどの顔料を主体とするインク受理層を設けている。また、インク受理層にカチオン性高分子染料定着剤を含有することによって、印字画像の耐水性を向上させている。
【0007】
インクジェット記録シートにおいては、平均粒子径数十nm〜10数μm程度の含水非晶質シリカを主成分とした、数μmから数十μm厚のインク吸収層を基材上に形成させることで、より大きなインク吸収容量と鮮やかな発色性を実現した、いわゆるインクジェット専用紙が主流となっている。
【0008】
しかし、上記のような粒子径を持つ含水非晶質シリカを用いたインクジェット記録用紙は、記録層の表面の摩擦係数が大きく、プリンターに給紙される際に重送トラブルを発生しやすい。
【0009】
このインクジェット記録用紙における搬送性を解決する方法としては、記録面の反対面に適当量の滑剤を塗工してシートの表面と裏面の間の摩擦係数を下げる方法が従来提案されており、滑剤の種類としては、高級脂肪酸塩(特許文献1参照)、あるいはポリエチレンエマルジョン(特許文献2参照)が挙げられる。
【0010】
また、内添サイズ剤としてアルキルケテンダイマー(AKD)を用いた紙において、摩擦係数が低すぎて紙がスリップし給排紙が出来なくなるという搬送トラブルを防ぐために、紙の表面にロジンエステルエマルジョンを塗布して静摩擦係数を一定以上の値に保つ方法も提案されており、類似技術として挙げられる。(特許文献3参照)
しかしながら、用紙の特性によって、いまだに給紙の際におけるピックアップ不良、重送や斜行、紙づまりなどが生じ搬送性が十分ではないという問題がある。表面に印字した画像の裏抜けやコックリング(用紙の波打ち)に対しても問題がある。
【0011】
インクジェット記録層表面の摩擦係数をコントロールする方法としては、記録層に特定の粒子径を有する有機球状粒子を含有せしめる方法が提案されている。(特許文献4参照)
【0012】
しかしながら、有機球状粒子は多孔質ではないためインクジェットインクの吸収性を有さず、大きな効果を得ようとして添加量を増やすほどインクジェット適性が悪化する上、塗工層からの脱落が問題となるおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開平8−337050号公報
【特許文献2】特開平10−278414号公報
【特許文献3】特開平9−11610号公報
【特許文献4】特開2002−292997号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
従って本発明の課題は、インクジェット印刷において、優れた画像鮮明性と保存性を持ち、且つ印刷時の搬送性に優れ、印字画像の裏抜けが生じにくいインクジェット記録シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者らは、鋭意検討した結果、本発明のインクジェト記録シートを発明するに至った。
【0016】
即ち、請求項1記載の発明では、顔料とバインダーとを主成分として含むインク受理層を設けたインクジェット記録シートであって、前記顔料は含水非晶質シリカとタルクからなり、前記バインダーはポリビニルアルコールとエチレン酢酸ビニルからなり、かつ、前記含水非晶質シリカの体積平均粒子径が2〜8μmであり、前記タルクの体積平均粒子径が20〜35μmであり、前記含水非晶質シリカと前記タルクとの配合質量比が90:10〜60:40であり、前記インク受理層の絶乾塗工量が支持体の片面あたり3〜15g/mとするインクジェット記録シートであることを要旨とする。
【0017】
請求項2記載の発明では、JIS P−8147:1994で測定した静摩擦係数が0.3〜0.9、且つ動摩擦係数が0.2〜0.7であることを含むものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明を実施することによって、優れた画像鮮明性と保存性を持ち、且つ印刷時の搬送性に優れ、印字画像の裏抜けが生じにくいインクジェット記録シートを提供することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明のインクジェット記録シートは、支持体上に、顔料とバインダーとを主成分として含むインク受理層を設け、前記顔料は含水非晶質シリカとタルクを含み、前記バインダーはポリビニルアルコールとエチレン酢酸ビニルを含み、かつ、前記含水非晶質シリカの体積平均粒子径が2〜8μmであり、前記タルクの体積平均粒子径が20〜35μmであり、前記含水非晶質シリカと前記タルクとの配合質量比が90:10〜60:40であり、前記インク受理層の絶乾塗工量が支持体の片面あたり3〜15g/mであることを特徴とするものである。インク受理層にタルク顔料を含むことで、用紙の不透明度が高まり、インクが用紙の裏面に到達しにくくなり、印字した画像の裏抜けやコックリングが良好となる。さらに、JIS P8147:1994に規定される静摩擦係数が0.3〜0.9且つ、動摩擦係数が0.2〜0.7であることで、用紙の重送がなく、搬送性が良好となる。
【0020】
本発明においては、インク受理層の顔料には、含水非晶質シリカとタルクとを用いる。インク受理層中、顔料は50質量%〜91質量%含むとよく、60質量%〜80質量%含むことが好ましい。インク吸収性に優れる含水非晶質シリカと、摩擦係数のコントロールに寄与するタルクとを一定量の配合比で併用することにより、滲みが少なく、画像の鮮明性に優れ、且つ印刷時の搬送性に優れたインクジェット記録シートとすることができる。前記含水非晶質シリカと前記タルクとの配合質量比は、90:10〜60:40であり、さらに好ましくは、80:20〜70:30である。前記含水非晶質シリカの配合質量比が90より多く、かつ前記タルクが10より少なくなると、摩擦係数の軽減に寄与するタルクの配合質量比が相対的に少なくなるため、静摩擦係数または動摩擦係数が大きくなる問題がある。前記含水非晶質シリカの配合質量比が60より少なくなると、静摩擦係数または動摩擦係数は良いものの、ドットの形状が粗いために、滲みが劣り、画像の鮮明性を低下させるという問題がある。
【0021】
本発明におけるインク受理層の含水非晶質シリカは、体積平均粒子径が2〜8μmである含水非晶質シリカを用いる。さらに好ましくは、体積平均粒子径3〜5μmである含水非晶質シリカを主体とすることである。ここで本発明において、含水非晶質シリカ粒子の体積平均粒子径は、マイクロトラックによる散乱式レーザー光回折法(Leeds+Northrup社製)により測定した。体積平均粒子径が2μmより小さいと、インク吸収性が劣り、画像の鮮明性が劣る問題がある。体積平均粒子径が8μmより大きいと、インク吸収性は良いものの、ドットの形状が粗いために、滲みが劣り、画像の鮮明性を低下させるという問題がある。また、インク受理層の支持体片面当たりの絶乾塗工量は3〜15g/mであり、好ましくは4〜12g/mである。絶乾塗工量が3g/mより少ないと、インク吸収容量の不足によりインクの溢れ、滲み、発色ムラ等を生じる。絶乾塗工量が15g/mより多いと、記録層の強度が低下し、また過剰なインク吸収容量により印字部のドット径が小さくなりすぎるために印字濃度を低下させてしまう問題がある。また、体積平均粒子径の異なる二種類以上の含水非晶質シリカを用いることが好ましい。体積平均粒子径の異なる含水非晶質シリカを用いることで、ドット形状を向上させる効果と画質を向上させる効果とを共に達成することができる。
【0022】
本発明におけるインク受理層のタルクは、体積平均粒子径20〜35μmであるタルクを用いる。さらに好ましくは、粒子径22〜30μmであるタルクを主体とすることである。ここで本発明において、タルク粒子の体積平均粒子径は、マイクロトラックによる散乱式レーザー光回折法(Leeds+Northrup社製)により定める。体積平均粒子径が20μmより小さいと、静摩擦係数または動摩擦係数が大きくなる問題がある。体積平均粒子径が35μmより大きいと、静摩擦係数またはどう摩擦係数は良いものの、ドットの形状が粗いために、滲みが劣り、画像の鮮明性を低下させるという問題がある。
【0023】
本発明におけるインク受理層のバインダーには、ポリビニルアルコールとエチレン酢酸ビニルとを用いる。ポリビニルアルコールとエチレン酢酸ビニルとを併用することにより、インク吸収性が良好で、画像の鮮明性に優れるインクジェット記録シートとすることができる。更に、受理層には、添加剤として、染料定着剤、顔料分散剤、増粘剤、流動性改良剤、消泡剤、抑泡剤、浸透剤、着色染料、着色顔料、蛍光増白剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、防腐剤、防バイ剤、耐水化剤、湿潤紙力増強剤、乾燥紙力増強剤、硬化剤等を適宜配合することもできる。好ましくは、保存性向上の観点から、インクの定着性に優れたカチオン性の染料定着剤を用いる。
【0024】
特に、水性インクの染料分である水溶性直接染料や水溶性酸性染料中のスルホン酸基、カルボキシル基、アミノ基などと不溶な塩を形成する2級アミン、3級アミン、4級アンモニウム塩からなるカチオン性染料定着剤を配合すると、インク受理層にて染料が捕獲されるために、色彩性の向上や不溶な塩の形成により水の滴下や湿度によるインクの流れ出しや滲み出しを抑制するので好ましい。例えば、アクリルカチオンポリマーと二級アミンポリマー、アミンエピクロルヒドリン重縮合物、ジメチルジアリルアンモニウムクロライドポリマー、アルキルアミン四級化物、ジシアンジアミド、ポリジメチルジアリルアンモニウムクロリド、アクリルアミドジメチルアンモニウムクロリド共重合物等が挙げられる。好ましくは、保存性向上の観点から、ポリジメチルジアリルアンモニウムクロリドとアクリルアミドジメチルアンモニウムクロリド共重合物を用いることである。
【0025】
本発明におけるインク受理層のバインダーの部数は、顔料100部に対して5〜40部とすることが好ましい。さらに好ましくは10部〜35部とすることである。さらに好ましくは20部〜30部とすることである。部数が5部より少ないと、滲みが劣り、画像の鮮明性を低下させる問題がある。部数が40部より多いと、インク吸収性が劣り、画像の鮮明性を低下させるという問題がある。インク吸収性向上の観点から、前記バインダーとしては、具体的には、ポリビニルアルコール3部〜16部とエチレン酢酸ビニル7部〜19部とし、全バインダーを10部〜35部とすることが好ましい。
【0026】
本発明におけるインク受理層の染料定着剤の部数は、顔料100部に対して5〜30部とすることが好ましい。さらに好ましくは10部〜25部とすることである。部数が5部より少ないと、滲みが劣り、画像の鮮明性を低下させる問題がある。部数が30部より多いと、インク吸収性が劣り、画像の鮮明性を低下させるという問題がある。保存性向上の観点から、前記染料定着剤は、アクリルアミドジメチルアンモニウムクロリド共重合物2部〜8部とポリジメチルジアリルアンモニウムクロリド8部〜17部とし、全染料定着剤を10部〜25部とすることが好ましい。
【0027】
インク受理層の形成は、形成する成分を適当な溶媒中に分散させて調液した塗工液を、各種公知の塗工または含浸する方法を用いてよい。例えば、各種ブレードコータ、ロールコータ、エアーナイフコータ、バーコータ、ロッドブレードコータ、カーテンコータ等の各種装置のマシンで用いることができる。
【0028】
セルロースパルプを主体とする支持体である紙は、特に限定するものではないが、使用される内添サイズ剤及び外添サイズ剤は、中性ロジンサイズ剤またはAKD、ASA、強化ロジンサイズ剤など各種公知のものが使用できる。サイズ剤を紙に内添及び外添する方法は、サイズ剤の種類によって適宜選択されて良い。
【0029】
抄紙機としては、丸網式、長網式いずれでも可能である。表面サイズ剤の処理は、サイズプレス、ゲートロール、メタリングサイズプレス、エアナイフコーター、ロッドコーターブレードコーターなどいずれも可能である。
【0030】
また、支持体には、填料の歩留り向上剤、見た目の白さを向上させるための着色顔料や染料、蛍光染料などを使用できる。この歩留り向上剤として、例えば、ポリアクリルアミド、ポリエチレンイミン、カチオン化澱粉などを挙げることができる。さらに必要に応じて、抄紙工程における原料の発泡を防ぐために、消泡剤を添加することも可能である。また、インクジェット記録シートの生産性及び保存安定性などを考慮して、分散剤、蛍光染料、pH調整剤、消泡剤、界面活性剤、湿潤剤、保水剤、防腐剤などを添加してもよい。
【実施例】
【0031】
以下に実施例を挙げて説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。また実施例に於いて示す「部」及び「%」は特に明示しない限り絶乾質量部及び絶乾質量%を示す。また、特に明示しない限り「平均粒子径」は体積平均粒子径を示す。
【0032】
〔支持体の形成〕
広葉樹晒クラフトパルプL−BKPからなるパルプスラリー中の絶乾パルプ100%に対し、炭酸カルシウム(タマパールTP−121:奥多摩工業社製)5%、カチオン化でん粉(ケート308:日本NSC社製)0.8%、中性ロジンサイズ剤(NT−85:荒川化学社製)0.4%の配合で抄紙し、米坪81.4g/mの原紙を抄造した。
〔インク受理層の形成〕
含水非晶質シリカA(AZ−6A0、平均粒子径4.5μm:東ソーシリカ社製)38部、含水非晶質シリカB(BZ−400、平均粒子径3.5μm:東ソーシリカ社製)38部、タルク(NK−48、平均粒子径26μm:富士タルク社製)24部と水を加え、含水非晶質シリカAと含水非晶質シリカBの混合比率を38:38、合成非晶質シリカAと含水非晶質シリカBを混合したものとタルクの混合比率を76:24としてカウレス分散機で固形分濃度が26.5%の顔料スラリーを調整した。この顔料スラリーに、ポリビニルアルコール(PVA−235:クラレ社製)10部とエチレン酢酸ビニル(ポリゾールEVA AD−10:昭和高分子社製)13部から成るバインダーと水を加え、アクリルアミドジメチルアンモニウムクロリド共重合物(ハイマックスSC−103:ハイモ株式会社製)4部、ポリジメチルジアリルアンモニウムクロリド(ハイマックスSC−600L:ハイモ株式会社製)12部から成る染料定着剤と水を加え、これらを混合してインク受理層塗工液とした。該インク受理層の塗工液を絶乾塗工量4g/mとなるように、支持体上に塗工して、インク受理層を形成した。
【実施例1】
【0033】
〔インクジェット記録シートの作成〕
支持体の表面に、インク受理層を形成し、インクジェット記録シートを得た。
【実施例2】
【0034】
実施例1において、含水非晶質シリカ(AZ−6A0、平均粒子径4.5μm:東ソーシリカ社製)45部、含水非晶質シリカ(BZ−400、平均粒子径3.5μm:東ソーシリカ社製)45部、タルク(NK−48、平均粒子径26μm:富士タルク社製)10部と水を加え、含水非晶質シリカと含水非晶質シリカの混合比率を45:45、合成非晶質シリカと含水非晶質シリカを混合したものとタルクの混合比率を90:10としたこと以外は実施例1と同じ方法でインクジェット記録シートを得た。
【実施例3】
【0035】
実施例1において、含水非晶質シリカ(AZ−6A0、平均粒子径4.5μm:東ソーシリカ社製)30部、含水非晶質シリカ(BZ−400、平均粒子径3.5μm:東ソーシリカ社製)30部、タルク(NK−48、平均粒子径26μm:富士タルク社製)40部と水を加え、含水非晶質シリカと含水非晶質シリカの混合比率を30:30、合成非晶質シリカと含水非晶質シリカを混合したものとタルクの混合比率を60:40としたこと以外は実施例1と同じ方法でインクジェット記録シートを得た。
【実施例4】
【0036】
実施例1において、インク受理層の絶乾塗工量を6g/mとしたこと以外は実施例1と同じ方法でインクジェット記録シートを得た。
【実施例5】
【0037】
実施例1において、インク受理層の絶乾塗工量を12g/mとしたこと以外は実施例1と同じ方法でインクジェット記録シートを得た。
【比較例1】
【0038】
実施例1において、インク受理層の含水非晶質シリカと含水非晶質シリカの混合比率を48:48、合成非晶質シリカと含水非晶質シリカを混合したものとタルクの混合比率を96:4としたこと以外は実施例1と同じ方法でインクジェット記録シートを得た。
【比較例2】
【0039】
実施例1において、インク受理層の含水非晶質シリカと含水非晶質シリカの混合比率を20:20、合成非晶質シリカと含水非晶質シリカを混合したものとタルクの混合比率を40:60としたこと以外は実施例1と同じ方法でインクジェット記録シートを得た。
【比較例3】
【0040】
実施例1において、インク受理層の顔料を平均粒子径9.5μmのシリカ(サイロジェットP−409:グレースジャパン社製)76部としたこと以外は実施例1と同じ方法でインクジェット記録シートを得た。
【比較例4】
【0041】
実施例1において、インク受理層の顔料のシリカ(AZ−200、平均粒子径1.9μm:東ソーシリカ社製)38部とシリカ(BZ−200、平均粒子径1.7μm:東ソーシリカ社製)38部としたこと以外は実施例1と同じ方法でインクジェット記録シートを得た。
【比較例5】
【0042】
実施例1において、インク受理層の顔料を平均粒子径11μmのタルク(LMP−100:富士タルク工業社製)24部としたこと以外は実施例1と同じ方法でインクジェット記録シートを得た。
【比較例6】
【0043】
実施例1において、インク受理層の顔料を平均粒子径38μmのタルク(SP−50A:富士タルク工業社製)24部としたこと以外は実施例1と同じ方法でインクジェット記録シートを得た。
【比較例7】
【0044】
実施例1において、インク受理層の絶乾塗工量を2g/m塗工としたこと以外は実施例1と同じ方法でインクジェット記録シートを得た。
【比較例8】
【0045】
実施例1において、インク受理層の絶乾塗工量を30g/mとしたこと以外は実施例1と同じ方法でインクジェット記録シートを得た。
【0046】
このようにして得られたインクジェット記録シートにおいて、画像鮮明性、滲み、表面強度、印字画像の裏抜け、コックリング、搬送性、静摩擦係数、動摩擦係数をそれぞれ下記の方法で評価し、表1及び表2に示した。インクジェットプリンターは、キヤノン社製PIXUS950i機で印字した。
【0047】
「画像鮮明性」PIXUSip7500で印字して、印字画像の鮮明性を目視評価した。
◎:印字画像が非常に鮮明でコントラストがはっきりしている。
○:印字画像が鮮明でコントラストがある。
△:印字画像が鮮明であるがコントラストがあまりはっきりしなく、やや白ボケ気味である。
×:印字画像が鮮明でなく、白ボケ気味である。
【0048】
「滲み」PIXUSip7500で印字して、印字の滲みを目視評価した。
◎:混色印字部の滲みがほとんどなく、非常に明瞭に文字が読み取れる。
○:混色印字部の滲みが少なく、明瞭に文字が読み取れる。
△:混色印字部の滲みがややあり、少し文字が読み取りにくい。
×:混色印字部の滲みがあり、文字が読み取りにくい。
【0049】
「表面強度」塗工面を指で擦り、粉落ちを評価した。
◎:塗工面の粉落ちがなく、指にも付着せず非常に良好である。
○:塗工面の粉落ちが少なく、指にもあまり付着せず良好である。
△:塗工面の粉落ちがややあり、指に少し付着している。
×:塗工面の粉落ちが多くあり、指にも付着している。
【0050】
「耐水性」ベタ印字部を水に5秒間浸し、濾紙でふき取り、インクの流れ出しを評価した。
◎:インクの流れ出しがなく、非常に耐水性が良好である。
○:インクの流れ出しが目立たず、耐水性が良好である。
△:インクの流れ出しが二次色で生ずるなど、耐水性がやや悪い。
×:インクの流れ出しが全般に生じ、耐水性が非常に悪い。
【0051】
「印字画像の裏抜け」PIXUSip7500で印字して、用紙裏面から、インクの裏抜け度合いを評価した。
◎:インクの裏抜けがなく、非常に印字画像の裏抜けが良好である。
○:インクの裏抜けが目立たず、印字画像の裏抜けが良好である。
△:インクの裏抜けが二次色で生ずるなど、印字画像の裏抜けがやや悪い。
×:インクの裏抜けが全般に生じ、印字画像の裏抜けが非常に悪い。
【0052】
「コックリング」PIXUSip7500で印字して、用紙の波打ち度合いを評価した。
◎:用紙の波打ちがなく、非常にコックリングが良好である。
○:用紙の波打ちが目立たず、コックリングが良好である。
△:用紙の波打ちが二次色で生ずるなど、コックリングがやや悪い。
×:用紙の波打ちが全般に生じ、コックリングが非常に悪い。
【0053】
「搬送性」記録シートが、重送などがなく、スムーズに搬送されるかを評価した。
◎:重送がほとんどなく(100枚当り重送0〜1枚)、非常にスムーズに搬送される。
○:重送は少しあるが(100枚当り重送2〜4枚)、スムーズに搬送される。
△:重送が多少あり(100枚当り重送5〜9枚)、あまりスムーズに搬送されない。
×:重送が多く(100枚当り重送10枚以上)、スムーズに搬送されない。
【0054】
「静摩擦係数」、「動摩擦係数」
得られた記録シートの記録面同士の静摩擦係数を、ストログラフ(商品名:STROGRAPH−R2、東洋精機社製)を用いてJIS P 8147(水平条件)に準じて測定した。
【0055】
【表1】

【表2】

【0056】
表1及び表2から、実施例1〜5は支持体上に、顔料とバインダーを主成分とする1層以上のインク受理層を設けたインクジェット記録シートにおいて、JIS P8147:1994に規定される静摩擦係数が0.3〜0.9であるか、または動摩擦係数が0.2〜0.7であることを特徴とするインクジェット記録シートとして好ましい。さらに、インク受理層の絶乾塗工量が3〜20g/mであることを含むものであり、インクジェット記録シートとして好ましい。比較例1〜5は上記条件から外れるもので、本発明のインクジェット記録シートとしては不適である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体上に、顔料とバインダーとを含むインク受理層を設けたインクジェット記録シートであって、前記顔料は含水非晶質シリカとタルクを含み、前記バインダーはポリビニルアルコールとエチレン酢酸ビニルを含み、かつ、前記含水非晶質シリカの体積平均粒子径が2〜8μmであり、前記タルクの体積平均粒子径が20〜35μmであり、前記含水非晶質シリカと前記タルクとの配合質量比が90:10〜60:40であり、前記インク受理層の絶乾塗工量が支持体の片面あたり3〜15g/mであることを特徴とするインクジェット記録シート。
【請求項2】
JIS P−8147:1994で測定した静摩擦係数が0.3〜0.9、且つ動摩擦係数が0.2〜0.7である請求項1に記載のインクジェット記録シート。

【公開番号】特開2012−223957(P2012−223957A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−92761(P2011−92761)
【出願日】平成23年4月19日(2011.4.19)
【出願人】(000241810)北越紀州製紙株式会社 (196)
【Fターム(参考)】