説明

インクジェット記録ヘッドのコゲ評価用サンプルの作成方法およびコゲの評価方法

【課題】インクジェット記録ヘッドにおいて生じるコゲを簡易かつ高精度に評価するのためのコゲ評価用サンプルを短時間で極めて廉価に作成することができる作成方法、および、そのコゲ評価用サンプルを用いるコゲの評価方法を提供すること。
【解決手段】基板21における耐キャビテーション膜22の上にインク23を付与し、そのインク23を炉30の内部にて発泡させてコゲ評価用のサンプル20を作成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクを発泡させる電気熱変換素子を用いるインクジェット記録ヘッドにおいて、その電気熱変換素子を覆う耐キャビテーション膜に生じるコゲを評価するためのサンプルの作成方法、および、そのサンプル用いるコゲの評価方法に関するものである。インクジェット記録ヘッドは、紙、プラスチックシート、布、物品等を包含する記録保持体に対して、例えば、インク等の機能性液体を吐出することにより、文字、記号、画像等の記録、印刷等を行うために用いられる。
【背景技術】
【0002】
特許文献1,2に開示されているインクジェット記録方式は、インクを高密度かつ高精度に付与して、高画質の画像を高速記録可能であり、記録画像のカラー化、および記録装置のコンパクト化に適している。このようなインクジェット記録方式に用いられる記録ヘッドは、電気熱変換素子(発熱抵抗体、ヒータ)の発熱によりインクを発泡させ、その発泡エネルギーを利用して、吐出口からインクを吐出させる構成となっている。
【0003】
このような記録ヘッドは、一般に、発熱抵抗体と、それに接続される配線と、が形成された記録ヘッド用基板の上に、吐出口やインク流路などを含むノズルが形成されている。記録ヘッド用基板は、投入する電気エネルギーの省力化のため、およびインクの発泡に伴う機械的ダメージや熱パルスによる記録ヘッド用基板の寿命の低下を防ぐために、様々な工夫がなされている。特に、一対の配線パターンの間に位置する発熱部(発熱抵抗体を含む部分)インクから保護するための耐キャビテーション膜については、多くの工夫がなされている。この耐キャビテーション膜は、発熱抵抗体の発熱の利用効率の観点からは、熱伝導率の高いもの、あるいは薄い方が有利となる。一方、耐キャビテーション膜は、発熱抵抗体に接続される配線を守る絶縁性の観点からは、耐キャビテーション膜の欠陥の発生確率を低くするために厚い方が有利となる。このようなエネルギー効率と信頼性の観点から、耐キャビテーション膜の厚さが最適に設定されている。
【0004】
このような耐キャビテーション膜は、インクの吐出時に、機械的ダメージと化学的ダメージの両方を受ける。機械的ダメージは、インクの発泡に伴うキャビテーションによるダメージであり、化学的ダメージは、インクの発泡後に耐キャビテーション膜の表面が高温となったときのインク成分との化学反応によるダメージである。実際には、耐キャビテーション膜において、配線を守るための絶縁性と、機械的および化学的ダメージに対する耐久性と、の両立は難しい。そのため、記録ヘッド用基板の保護膜としては、その上層に、インクの発泡による機械的および化学的ダメージに対して安定性の高い膜を形成し、その下層に、配線を守るための絶縁性の膜を形成することが一般的である。具体的には、上層に、機械的および化学的安定性の極めて高い膜であるTa膜を形成し、下層に、既存の半導体製造装置によって安易かつ安定に形成可能なSiN膜やSiO膜を形成することが一般的である。例えば、配線上に、保護層としてSiN膜を約0.2〜1μm形成し、その後に上層としての保護膜、一般的にはキャビテーションによるダメージに対する膜としてのTa膜を0.2〜0.5μmの厚さに形成する。このような保護膜によって、記録ヘッド用基板の発熱抵抗体の寿命および信頼性の両立が図られている。
【0005】
ところで、発熱抵抗体を含む発熱部においては、インクに含まれる色材および含有物などが高温加熱によって分子レベルで分解されて難溶性の物質になり、それが保護膜の上層である耐キャビテーション膜上に物理吸着する現象が発生するおそれがある。このような現象は、コゲーション(以下、「コゲ」と称す)と呼ばれている。耐キャビテーション膜上に難溶性の有機物や無機物が吸着した場合には、発熱抵抗体からインクへの熱伝導が不均一となり、インクの発泡が不安定となる。そのため、発熱部における耐キャビーション膜上にコゲが発生させない対策を講じる必要がある。しかし、その対策については未だ開発途上である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第4723129号明細書
【特許文献2】米国特許第4740796号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従前のコゲの発生に関する検討は、実際の記録ヘッドを使用して、コゲの生成メカニズムを解明することが主な評価方法であった。しかし、実際の記録ヘッドにおけるノズルサイズはますます微細化の方向に向かっており、発熱抵抗体のサイズは、近年、一辺が30μm以下の四角形となってきている。このような微小なサイズの発熱抵抗体を含む発熱部に形成されるコゲの組成分析、および構造解析を行うことは、非常に難しくなっている。実際の記録ヘッドを用いてコゲを分析するためには、まず、記録ヘッドからノズル部分を切り離してから、そのノズル部分の耐キャビテーション膜の表面に生成されたコゲについて分析しなければならない。しかし、コゲが生成されている部分が微小であるため、その組成をESCA(X線光電子分光法)等で分析する際に分析部分の面積が小さく、高い分析精度を得ることが難しい。また、記録ヘッドからノズル部分を完全に取り除くことが難しく、残ったノズル部分がコゲの分析の障害となることがあった。また、コゲの付着力に関するデータを得ることが難しかった。一方、記録ヘッドを作成するには非常に長い工程を経なければならず、コゲを評価するための記録ヘッドの試作には、莫大な費用と時間が必要になる。
【0008】
本発明の目的は、インクジェット記録ヘッドにおいて生じるコゲを簡易かつ高精度に評価するのためのコゲ評価用サンプルを短時間で極めて廉価に作成することができる作成方法、および、そのコゲ評価用サンプルを用いるコゲの評価方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のインクジェット記録ヘッドのコゲ評価用サンプルの作成方法は、インクを発泡させる電気熱変換素子を用いて吐出口からインクを吐出させるインクジェット記録ヘッドにおいて、前記電気熱変換素子を覆う耐キャビテーション膜に生じるコゲを評価するためのサンプルの作成方法であって、前記耐キャビテーション膜が表面に形成されたコゲ評価用サンプルの基板を用意する工程と、前記基板における前記耐キャビテーション膜の上にインクを付与する付与工程と、所定温度に昇温された炉の内部に前記基板を所定時間導入して、前記耐キャビテーション膜の上に付与された前記インクを発泡させる導入工程と、前記炉の内部から、前記基板をコゲ評価用サンプルとして取り出す取り出し工程と、を含むことを特徴とする。
【0010】
本発明のインクジェット記録ヘッドのコゲの評価方法は、上記の作成方法により作成されたコゲ評価用サンプルを用い、前記インクジェット記録ヘッドの前記耐キャビテーション膜に生じるコゲとして、前記コゲ評価用サンプルの前記基板における前記耐キャビテーション膜に生成されたコゲを評価することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、基板における耐キャビテーション膜上にインクを付与し、そのインクを炉内にて発泡させてコゲ評価用サンプルを作成することにより、インクジェット記録ヘッドにおいて生じるものと同様のコゲを再現することができる。このようなコゲ評価用サンプルは短時間で極めて廉価に作成することができ、しかも、そのサンプルを用いることにより、実際のインクジェット記録ヘッドを用いることなくコゲを簡易かつ高精度に評価することができる。しかも、コゲの生成メカニズムの解明、コゲが付着しにくい耐キャビ膜の効率的な開発を進めることができ、結果的に、インクジェット記録ヘッドの開発時間の短縮および開発コストの低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】インクジェット記録ヘッドの分解斜視図である。
【図2】図1における記録ヘッド用基板の要部の平面図である。
【図3】図2のIII−III線に沿う拡大断面図である。
【図4】本発明におけるサンプルの作成方法の説明図である。
【図5】本発明の第1から第3の実施例において生成したコゲと、実際のインクジェット記録ヘッドに生じたコゲと、のラマン分光法による分析結果の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0014】
図1は、インクジェット記録ヘッドの分解斜視図、図2は、図1における記録ヘッド用の基板の要部の平面図、図3は、図2のIII−III線に沿う拡大断面図である。
【0015】
本例のインクジェット記録ヘッドには、基板1と天板2との間に、複数の吐出口3と、それらの吐出口3に個別に連通する複数のインク流路4と、それらのインク流路4に連通する共通液室5と、が形成されている。インク流路4は、複数の流路壁6が一体的に形成された天板2と、基板1と、を画像処理等の手段により位置合わせしながら接合することにより形成される。基板1には、それぞれのインク流路4毎に対応する電気熱変換素子(ヒータ)7が形成されている。電気熱変換素子7は、インク流路4内のインクを吐出口3から吐出させるための吐出エネルギーを発生する。共通液室5には、インクタンク(図示せず)からインクが供給され、そのインクは、それぞれのインク流路4内に導かれて、吐出口3においてメニスカスを形成する。複数の電気熱変換素子7を選択的に通電して発熱させることにより、それに対応するインク流路4内のインクを発泡させ、その発泡エネルギーを利用して対応する吐出口からインクを吐出することができる。
【0016】
本例の電気熱変換素子7は、配線8A,8Bの間に位置する発熱抵抗層9の部分によって形成されており、それらの配線8A,8B間を通電することにより、それらの間の発熱抵抗層9の部分が電気熱変換素子7として発熱する。配線8A,8Bは、Al,Al−Si,Al−Cu等の金属配線である。
【0017】
基板1は,シリコン基板10をベースとし、その上に複数の層が形成されている。11は、熱酸化膜からなる蓄熱層、12は、蓄熱機能を兼ねるSiO膜やSiN膜等からなる層間膜、9は前述した発熱抵抗層と、8は、前述した配線8A,8Bを含む金属配線である。13は、SiO膜やSiN膜等からなる保護層であり、14は、電気熱変換素子7の発熱に伴う化学的および物理的衝撃から保護膜2006を守るための耐キャビテーション膜である。15は、電気熱変換素子7の発熱がインクに作用する熱作用部である。
【0018】
このような実際の記録ヘッドにおいては、非常に短い電気パルス(駆動パルス)を電気熱変換素子7に印加することにより、その電気熱変換素子7が発熱し、その熱が耐キャビテーション膜14に伝わってインクを発泡させる。通常の電気パルスの印加条件においては、電気パルスを100万パルス程度印加してから、耐キャビテーション膜14上にコゲが生成され始める。このように実際の記録ヘッドでは、電力の微小時間の印加が繰り返させることにより、コゲが徐々に生成されていると考えてよい。電気熱変換素子7は、その一辺が30μmの四角形程度のサイズ(ヒータサイズ)であれば、その発熱が耐キャビテーション膜14に伝わって、インクに発泡現象を起こすことができる。
【0019】
耐キャビテーション膜14に生成されるコゲを評価するために必要なサンプルのサイズは、20mmから30mm角程度が望ましい。しかし、ヒーターサイズを20〜30mm角程度に大きくした場合には、電気パルスを印加して、インクを発泡させる程度にまで電気熱変換素子7を発熱させることは非常に難しい。
【0020】
本発明は、インクの発泡現象に伴って発生するコゲの評価に必要な充分に大きなサイズのコゲ評価用サンプルを作成する。そのために、実際の記録ヘッド内の耐キャビテーション膜14が到達している温度雰囲気の中に、インクが付与されたコゲ評価用サンプルの基板を所定時間導入して、そのインクを発泡させる。
【0021】
すなわち、まずは図4のように、耐キャビテーション膜14と同様の耐キャビテーション膜22が表面に成膜されたSi(シリコン)のコゲ評価用サンプルの基板(以下、「サンプル基板」ともいう)21を用意する。そのサンプル20のサイズは20mmから30mm角程度が望ましい。耐キャビテーション膜22上にインク23を滴下し、サンプル20を予め350〜400℃に昇温された大気マッフル炉30の内部に投入する。耐キャビテーション膜22上のインク23は急激に加熱され、大気マッフル炉30内への投入直後に発泡して、そのインク23の周りに飛散する。この結果、耐キャビテーション膜22上にコゲが付着する。
【0022】
本例の場合は、コゲを評価するためのサンプル20のサイズを20〜30mm角として、そのサンプルサイズのサンプル基板21上において、実際の記録ヘッドにおける電気熱変換素子7の発熱現象を再現する。つまり、20〜30mm角のサンプル基板21において、実際の記録ヘッドと同様のインクの発泡現象を生じさせる。そのために、熱容量の大きいマッフル炉30を使用し、そのマッフル炉30をインクが発泡する温度であると考えられる350〜400℃に温度に予め保持しておいて、そのマッフル炉30の中に、インクが滴下されたサンプル20を直接投入した。
【0023】
この方法によれば、20〜30mm角の大きなサンプル20において、その熱容量の大きさに問題なく、実際の記録ヘッドと同様のインクの発泡現象を生じさせることができた。また、サンプル基板21として、熱伝導率が比較的高いSi基板を使用することにより、耐キャビテーション膜22の昇温速度も早くなり、マッフル炉30へのサンプル20の投入直後にインク23が発泡することが確認できた。このことから判断して、耐キャビテーション膜22上に生じたコゲは、実際の記録ヘッドにおいて生じたものと近い状態のものであると予想できる。実際に、後述する実施例から、サンプル20の耐キャビテーション膜22上に生じたコゲは、実際の記録ヘッドの耐キャビテーション膜14上に生じたコゲと同等のものであることが確認できた。つまり、サンプル20に生じたコゲを評価することは、実際の記録ヘッドにおいて生成されたコゲを評価することになる。また、このような方法によりサンプル20に生成されたコゲは、サンプル20の耐キャビテーション膜22上においてインクを1回発泡させた場合だけではなく、その発泡を複数回繰り返した場合にも同等のものとなると考えられる。
【実施例1】
【0024】
まず、サンプル基板21となるSi基板(6インチウエハー、625μm厚)を用意し、このSi基板上に、耐キャビテーション膜22として、Ta膜を3000Aの膜厚でスパッタ法により成膜した。この時、Arガスの流量は20sccm、Taへの投入パワーは500W、基板温度は室温とし、これらの条件で成膜した。次に、このSi基板をガラス切りにより20×30mm角に切り出して、それをサンプル基板21とした。このサンプル基板21におけるTa膜(耐キャビテーション膜22)の表面に、インクジェット記録用のインク(商品名:ファーストトブラック)を注射器により一滴滴下する。このときのインク滴の大きさは、直径が約3mm程度である。その後、温度を予め350℃に設定した大気マッフル炉(ヤマト科学製:F0100)30内に、このサンプル基板21を投入して2分間保持した。その後、このサンプル基板21をマッフル炉30内から取り出した。このようなサンプル基板21に対するインク滴の付与、マッフル炉30への投入、および取り出しの一連の処理をさらに2回繰り返し、結果的に、そのような一連の処理を計3回行って、コゲ評価用サンプル20を作成した。このように同じ処理を3回繰り返した理由は、サンプル20の全面にコゲを完全に付着させて、その後のコゲの分析において不都合が発生することを回避するためである。
【0025】
このようにコゲが生成されたサンプル20に対し、ラマン分光法によりコゲの構造解析を行った。その解析結果を図5中のプロット線Aによって示す。本実施例において生成したコゲの全ては、後述する比較例(図5中のプロット線D)におけるコゲと同等のアモルファスカーボンであることが分かった。カーボン以外のピークはインクの添加成分と考えられる。
【実施例2】
【0026】
マッフル炉30の温度設定を375℃に変更した以外は全て実施例1の場合と同じ条件下において、コゲが生成されたサンプルを作成し、ラマン分光法により、そのコゲの構造解析を行った。その解析結果を図5中のプロット線Bによって示す。本実施例において生成したコゲの全ては、後述する比較例(図5中のプロット線D)におけるコゲと同等のアモルファスカーボンであることが分かった。カーボン以外のピークはインクの添加成分と考えられる。
【実施例3】
【0027】
マッフル炉30の温度設定を400℃に変更した以外は全て実施例1の場合と同じ条件下において、コゲが生成されたサンプルを作成し、ラマン分光法により、そのコゲの構造解析を行った。その解析結果を図5中のプロット線Cによって示す。本実施例において生成したコゲの全ては、後述する比較例(図5中のプロット線D)におけるコゲと同等のアモルファスカーボンであることが分かった。カーボン以外のピークはインクの添加成分と考えられる。
【0028】
(比較例)
前述した図1から図3のような実際の記録ヘッドを使用し、下記の条件下においてコゲを発生させて、ラマン分光法により、そのコゲの構造解析を行った。ラマン分光法においては、レーザーを使用してコゲを分析し、そのレーザーは照射部分を光学的に数μmφ程度まで絞ることができる。そのため、実際の記録ヘッドにおける微小な耐キャビテーション膜14の部分のみの解析は可能である。
【0029】
コゲを生成するときの条件は下記のとおりである。
(1)電気熱変換素子7の印加電圧:20V
(2)電気熱変換素子7の駆動パルスの周波数:10KHz
(3)電気熱変換素子7の駆動パルス数:2×106パルス
(4)電気熱変換素子7のサイズ(ヒーターサイズ):20μm角
このような比較例において、実際の記録ヘッドの耐キャビテーション膜14上にコゲを生成させ、ラマン分光法により、そのコゲの構造解析を行った。その解析結果を図5中のプロット線Dによって示す。前述したように、本比較例において生成したコゲの全ては、上記の実施例1,2,3(図5中のプロット線A,B,C)におけるコゲと同等のアモルファスカーボンであることが分かった。
【0030】
(他の実施形態)
上述した実施形態においては、大気マッフル炉の内部の温度を350℃から400℃の範囲内の所定温度とし、大気マッフル炉の内部にサンプル基板を導入する時間を2分とした。しかし、大気マッフル炉の内部の温度、および、その内部にサンプル基板を導入する時間は任意であり、記録ヘッドの使用条件や構成などに応じて、最適な所定温度および所定時間に設定することができる。また、大気マッフル炉以外の炉を用いることも可能であり、要は、熱容量が充分に大きいものであればよい。
【符号の説明】
【0031】
1 基板
3 吐出口
7 電気熱変換素子(ヒータ)
9 発熱抵抗層
14 耐キャビテーション膜
20 サンプル
21 サンプル基板
22 耐キャビテーション膜
23 インク
30 マッフル炉

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクを発泡させる電気熱変換素子を用いて吐出口からインクを吐出させるインクジェット記録ヘッドにおいて、前記電気熱変換素子を覆う耐キャビテーション膜に生じるコゲを評価するためのサンプルの作成方法であって、
前記耐キャビテーション膜が表面に形成されたコゲ評価用サンプルの基板を用意する工程と、
前記基板における前記耐キャビテーション膜の上にインクを付与する付与工程と、
所定温度に昇温された炉の内部に前記基板を所定時間導入して、前記耐キャビテーション膜の上に付与された前記インクを発泡させる導入工程と、
前記炉の内部から、前記基板をコゲ評価用サンプルとして取り出す取り出し工程と、
を含むことを特徴とするインクジェット記録ヘッドのコゲ評価用サンプルの作成方法。
【請求項2】
前記基板は、シリコン基板であることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録ヘッドのコゲ評価用サンプルの作成方法。
【請求項3】
前記基板の表面には、前記耐キャビテーション膜だけが形成されることを特徴とする請求項1または2に記載のインクジェット記録ヘッドのコゲ評価用サンプルの作成方法。
【請求項4】
前記基板は、一辺が20mmから30mmの四角形であることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のインクジェット記録ヘッドのコゲ評価用サンプルの作成方法。
【請求項5】
前記炉は、大気マッフル炉であることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のインクジェット記録ヘッドのコゲ評価用サンプルの作成方法。
【請求項6】
前記炉の前記所定温度は、350℃から400℃の範囲内であることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載のインクジェット記録ヘッドのコゲ評価用サンプルの作成方法。
【請求項7】
前記付与工程、前記導入工程、および前記取り出し工程の一連の処理を複数回繰り返すことを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載のインクジェット記録ヘッドのコゲ評価用サンプルの作成方法。
【請求項8】
請求項1から7のいずれかに記載の作成方法により作成されたコゲ評価用サンプルを用い、前記インクジェット記録ヘッドの前記耐キャビテーション膜に生じるコゲとして、前記コゲ評価用サンプルの前記基板における前記耐キャビテーション膜に生成されたコゲを評価することを特徴とするインクジェット記録ヘッドのコゲの評価方法。
【請求項9】
ラマン分光法によって、前記耐キャビテーション膜に生成された前記コゲの構造解析を行なうことを特徴とする請求項8に記載のインクジェット記録ヘッドのコゲの評価方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−218213(P2012−218213A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−83658(P2011−83658)
【出願日】平成23年4月5日(2011.4.5)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】