説明

インクジェット記録ヘッドカートリッジ

【課題】 4色以上のインクを一体的に収容するインクジェット記録ヘッドカートリッジにおいて、各色のインク収容量をほぼ等しくしつつ、記録装置に装着した際に高画質記録を実現する。
【解決手段】 L字型のインクジェット記録ヘッドカートリッジは、記録ヘッドが設けられる突出部H1501a側に、その延長面が記録ヘッドのノズル列に対して交差する、インク収容部内を分割する第1の仕切り壁H1551を有する。第1の仕切り壁H1551で分割された2つの空間のうち、電気接続部を有する面がない側には、第1の仕切り壁H1551と、及び電気接続部を有する外壁面H1501bと対向する外壁面と、の双方に接する複数の第2の仕切り壁H1552、H1553が設けられる。第1及び第2の仕切り壁によって、このインクジェット記録ヘッドカートリッジは4色以上の互いに異なるインクを収容することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インク等の液体を吐出して記録を行うインクジェット記録ヘッド部と、該記録ヘッド部へ供給するインクを収容するインク収容部と、を一体的に備えるインクジェット記録ヘッドカートリッジに関する。具体的には微小な複数種類のインクを吐出するインクジェット記録ヘッドカートリッジに関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録方式は、いわゆるノンインパクト記録方式であり、高速な記録と様々な記録媒体に対して記録することが可能であって、記録における騒音が殆ど生じない特徴を持つ。このようなことから、インクジェット記録装置は、プリンター、複写機、ファクシミリ、ワードプロセッサ等の記録機構を担う装置として、広く採用されている。
【0003】
このようなインクジェット記録装置には、インク等の液体を吐出して記録を行うインクジェット記録ヘッド部と、該記録ヘッド部へ供給するインクを収容するインク収容部と、を一体的に備えるインクジェット記録ヘッドカートリッジを用いるものが知られている。
【0004】
特許文献1では、図5に示すようにインク収容部がT字型に3つに仕切られ、互いに色の異なるインクを収容可能なインクジェット記録ヘッドカートリッジH100を開示している。このカートリッジを構成する容器本体H501は側面から見てL字状(図5(a)参照)をなしており、インク収容部の底面(蓋部材H901と対向する面)から突出した部位H501aに記録ヘッド部H101が配置される表面部分H201を有している。この表面部分H201には、各インク収容部から記録ヘッド部へインクを供給するための開口部がそれぞれ設けられており、記録ヘッド部H101が配置されることで各開口部から記録ヘッドへのインク流路が形成される。記録ヘッド部H101には各インク収容部に対応した吐出口列がそれぞれ形成され、前述したインク流路を介してインクが供給される。容器本体の突出部側の、吐出口列と交差する方向の側面H501bには記録装置との位置決めのための位置決め部H560や、記録装置からの電気信号を受け取るための電気的接続部H302が設けられている。
【0005】
また、特許文献2では、少なくとも4色のインクを収容可能なインクジェット記録ヘッドカートリッジを開示している。
【特許文献1】欧州特許出願第1602486号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2006/0001711号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
さて、近年、インクジェット記録方式では、銀塩写真と同等の高品位カラー記録を達成することが求められている。このため、被記録媒体上でドットが見えにくい(粒状感が目立たない)程度に液体の吐出量を小さく(例えば5pl以下)、解像度を高く(例えば1200×1200dpi程度)することが求められている。
【0007】
このような高精細な記録を行う場合、記録装置内における記録ヘッドの吐出口列が設けられた吐出口面と被記録媒体との距離(いわゆる紙間距離)はなるべく短い方が望ましい。特許文献1に記載されるようなインクジェット記録ヘッドカートリッジを用いる記録装置では、被記録媒体を支持する拍車やピンチローラーといった搬送部材はカートリッジの突出部分(図5のH501a)を挟んで設けられる。被記録媒体の支持部の間隔が長くなると、その間で被記録部材が波打つ(コックリング)ため、このような状態でも吐出口面が被記録媒体と接触しないよう、吐出口面と被記録媒体との距離は空けておく必要がある。そのため、吐出口面と被記録媒体との距離を短くするためには、記録ヘッドが配置されている突出部の吐出口列方向の距離(図5(b)のL1)が短い方が望ましい。
【0008】
また、記録装置への取り付けの際に生じる誤差による影響を少なくするためには、基準面近傍にある電気接続部が設けられた面(図5のH501b)から、記録ヘッド部の距離(図5(a)のL2)が近い方が望ましい。
【0009】
さらに、使用されるインクとしては、イエロー,マゼンタ,シアンのほか、文字などの印刷に用いるブラックインクとは組成の異なる高画質印刷専用のブラックインクを用いたり、グリーンやレッドといったインクを用いたりすることがある。こうしたインクも収容可能な、4色以上のインクを収容するカートリッジでは、交換時のインク残りを少なくするために、なるべく各色でのインク収容量を等しくすることが望ましい。
【0010】
しかしながら、特許文献2に記載のインクジェット記録ヘッドカートリッジでは、上述の課題を全て同時に解決することは難しく、高画質な記録を行う際に問題があった。例えば図6に示すような、仕切り壁H701,H702,H703で4分割されたインクジェット記録ヘッドカートリッジの場合、従来に比べてL1が長くなってしまう。これに対し、L1を短くしようとすると電気接続部側のインク収容部(H601,H602)の容積が他のインク収容部(H603,H604)の容積と比べて小さくなってしまう。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、以上の点に鑑みてなされたものであり、4色以上のインクを収容可能なインクジェット記録ヘッドカートリッジにおいて、各色のインク収容量のばらつきがなく、かつ高精細な記録が容易なインクジェット記録ヘッドカートリッジを提供するものである。
【0012】
上述の課題を解決するために、本発明のインクジェット記録ヘッドカートリッジは、電気的接続部を有する第1の側面と、底面の一部に前記第1の側面側に偏倚した突出部とを有する、複数のインクを収納するための容器本体と、前記複数のインクを供給するための、互いに平行に設けられた複数のインク供給口列と、該複数のインク供給口列に沿って設けられる、前記複数のインクを吐出するための複数の吐出口列と、を有し、容器本体の前記突出部に取り付けられる記録ヘッド部と、を備え、前記記録ヘッド部のインク供給口列の方向が、前記第1の側面と交差するインクジェット記録ヘッドカートリッジにおいて、前記容器本体は、前記記録ヘッド部の吐出口列が設けられた面に直交する方向からみて、前記複数のインク供給口列と交差するように前記容器本体内部を区分することで、第1の側面を持つ第1のインク収容部と、第1の側面を持たない空間と、を形成する第1の仕切り壁と、該第1の仕切り壁と接し、前記第1の側面を持たない空間をさらに複数のインク収容部に分割する複数の第2の仕切り壁と、を有することを特徴とする。
【0013】
この構成によると、各インク収容部のインク収容量に極端な差をつけずとも、インク供給用の開口を、第1の仕切り壁近傍に集めることが容易に実現できる。そのため、各インク収容部から記録ヘッドのインク供給口までのインク流路を短く、かつ簡単な形状で形成することができる。その結果、突出部の大きさをコンパクトにすることができるので、記録ヘッドが配置されている突出部の吐出口列方向の距離、及び電気接続部が設けられた面から記録ヘッド部の距離を短くすることができる。
【0014】
なお、本明細書における「側面」「底面」とはこの容器本体を構成する外壁面の相対的な位置関係を説明するために便宜的に用いており、使用時や物流時の姿勢が限定されるものではない。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、上述のように4色以上のインクを一体的に収容するインクジェット記録ヘッドカートリッジにおいて、各色のインク収容量をほぼ等しくしつつ、記録装置に装着した際に高画質記録を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
次に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0017】
はじめに、図1、図2を用いて、本発明が実施または適用される好適なインクジェット記録ヘッドカートリッジの構成を説明する。
【0018】
(1)インクジェット記録ヘッドカートリッジ
図1に示すように、本実施例のインクジェット記録ヘッドカートリッジH1001は、電気信号に応じて膜沸騰をインクに対して生じせしめるための熱エネルギを生成する電気熱変換体を用いた記録ヘッドである。
【0019】
インクジェット記録ヘッドカートリッジH1001はブラック、シアン、マゼンタ、イエローの4色のインクを吐出させるためのものであり、図1の分解斜視図に示すように、以下のものを備えている。すなわち、記録素子基板H1101、電気配線テープH1301、流路部材H1410、インク収容部材H1501、フィルターH1701〜H1704、インク吸収体H1601〜H1604、蓋部材H1901、およびシール部材H1801である。
【0020】
(2)記録素子基板(インクジェット記録ヘッド部)
図2は、インクジェット記録ヘッド部としての記録素子基板H1101の構成を説明するために一部破断して示す斜視図であり、ブラック、シアン、マゼンタ、イエロー用の4個のインク供給口H1102が並列して形成されている。それぞれのインク供給口H1102を挟んでその両側に電気熱変換素子H1103と吐出口H1107とが一列に並んで千鳥状に配置されて形成されている。記録素子基板H1101は、Si基板、電気配線、ヒューズ、電極部H1104等から形成されており、その上に樹脂材料でフォトリソグラフィ技術によってインク流路壁H1106や吐出口H1107が形成されている。そして、電気配線に電力を供給するための電極部H1104にはAu等のバンプH1105が形成されている。本実施例では、電気熱変換素子H1103と吐出口H1107とが対向するように配置されている。
【0021】
基板裏面(吐出口が形成されている面と反対側の面)において、インク供給口の開口幅は約1mmであり、インク供給口同士の間隔は、約1.5mmとなっている。吐出口列の長さは約15mmである。
【0022】
(3)電気配線テープ
電気配線テープH1301は、記録素子基板H1101に対してインクを吐出するための電気信号を印加する電気信号経路を形成するものである。記録素子基板を組み込むための開口部が形成されており、この開口部の縁付近には、記録素子基板の電極部H1104に接続される電極端子H1304が形成されている。また、電気配線テープH1301には、本体装置からの電気信号を受け取るための外部信号入力端子H1302が形成されており、電極端子H1304と外部信号入力端子H1302は連続した銅箔の配線パターンでつながれている。
【0023】
(4)インク収容部材(容器本体)
インク収容部材H1501は、樹脂を成形することにより形成されている。樹脂材料には、形状的剛性を向上させるためにガラスフィラーを5〜40%混入した樹脂材料を使用することが望ましい。
【0024】
図1に示すように、インク収容部材H1501は、内部にブラック、シアン、マゼンタ、イエローのインクを保持するための負圧を発生するためのインク吸収体H1601、H1602、H1603、H1604をそれぞれ独立して保持するための空間を有する。
【0025】
各空間には、記録素子基板H1101の各インク供給口H1102に、それぞれインクを導くための独立したインク流路が設けられており、容器本体はインクタンクとしての機能と、インク供給流路としての機能を兼ね備えている。
【0026】
流路部材H1410は、それぞれ独立したインク流路を形成するために接合するもので、インク収容部材H1501に対して、記録素子基板H1101の吐出口H1107の配列方向と同一方向に勘合させて接合する。このため、インク収容部材H1501における記録素子基板H1101を貼付ける面と、ヘッド基準面H1570,H1580,H1590とを同一部材に設けることが可能となり、高精度な記録ヘッドを構成することができる。
【0027】
各インク流路の上流部のインク吸収体H1601、H1602、H1603、H1604との境界部には、記録素子基板H1101内部にゴミの進入を防ぐためのフィルターH1701、H1702、H1703、H1704がそれぞれ溶着により接合されている。
【0028】
インク流路の下流部には、記録素子基板H1101にブラック、シアン、マゼンタ、イエローの各インクを供給するためのインク供給溝H1201が形成されている。そして、記録素子基板H1101の各インク供給口1102がインク収容部材H1501の各インク供給溝H1201に連通するよう、記録素子基板H1101がインク収容部材H1501に対して位置精度良く接着固定される。この接着に用いられる第1の接着剤は、低粘度で硬化温度が低く、短時間で硬化し、硬化後比較的高い硬度を有し、かつ、耐インク性のあるものが望ましい。例えば、第1の接着剤としては、エポキシ樹脂を主成分とした熱硬化接着剤が用いられ、その際の接着層の厚みは50μm程度が望ましい。
【0029】
また、インク供給口H1201付近周囲の平面には、電気配線テープH1301の一部の裏面が第2の接着剤により接着固定される。記録素子基板H1101と電気配線テープH1301との電気接続部分は、封止剤により封止され、電気接続部分をインクによる腐食や外的衝撃から保護されている。そして、電気配線テープH1301の未接着部は折り曲げられ、インク収容部材H1501のインク供給口H1201を有する面にほぼ直交した側面に熱カシメもしくは接着等で固定される。
【0030】
(5)蓋部材
蓋部材H1901は、インク収容部材H1501の上部開口部に溶着されることで、インク収容部材H1501内部の独立した空間をそれぞれ閉塞するものである。但し、蓋部材H1901にはインク収容部材H1501内部の各部屋の圧力変動を逃がすための細口H1911、H1912、H1913、H1914と、それぞれに連通した微細溝H1921、H1922、H1923、H1924を有している。微細溝H1921、H1923、H1924の他端はそれぞれ途中で合流している。さらに、細口H1911、H1912、H1913、H1914と微細溝H1921、H1922、H1923、H1924のほとんどをシール部材H1801で覆い、微細溝H1922の他端部を開口することで大気連通口を形成している。また、記録ヘッドをインクジェット記録装置に固定するための係合部H1930を有している。
【0031】
(第1の実施形態)
次に、図3を用いて、本発明の第1の実施形態について詳細に説明する。図3は本発明の第1の実施形態における、インクジェット記録ヘッドカートリッジ容器本体を示しており、図3(a)は上面図、図3(b)は側面図、図3(c)、図3(d)はそれぞれ図3(b)のA−A断面、B−B断面の断面を上面からみた断面図である。
【0032】
図3(a)、(b)に示すように、容器本体としてのインク収容部材H1501は、記録ヘッドへの電気的接続部を有する側面H1501bと、底面に該第1の側面側に偏倚した突出部H1501aと、を有し、略L字状をなしている。
【0033】
このインク収容部材H1501には、外壁に囲まれた内部を4つに区切るための第1の仕切り壁H1551と、第2の仕切り壁H1552,H1553とが設けられている。第1及び第2の仕切り壁や、容器本体の外壁の厚みは、容器のインク収容量にも依存するが、全体で40cc程度(各色10cc程度)のインクを収容する本実施形態の場合、強度などの観点から仕切り壁が1〜1.5mm程度、外壁が2〜3mm程度となっている。
【0034】
本実施形態の第1の仕切り壁H1551は、図3(a)に示す容器外壁により形成される略長方形形状の長辺を区切るように設けられており、図3(a)に示す上面図では、H1551は電気接続部を有する側面H1501bと平行になっている。図3(b)、(d)に示すように,第1の仕切り壁H1551は、図3(a)からみて、その延長が、記録ヘッドへインクを供給するために突出部H1501aに設けられたインク供給溝H1201(H1201a〜H1201d)を横切るように形成されている。記録ヘッド部H1001は、突出部H1501aのインク供給溝H1201が設けられた面に備えられるので、記録ヘッド部が取り付けられた状態で、記録ヘッド部のインク供給口列に対し、第1の仕切り壁H1551は図3(a)方向で見たときに交差する。この第1の仕切り壁H1551により、インク収容部材内部は第1の側壁H1501bを有する第1のインク収容部H1404と、他の空間(H1401〜H1403)とに区分される。
【0035】
第2の仕切り壁H1552,H1553は、第1の仕切り壁と接し、上述した他の空間を互いに略容積の等しい3つのインク収容部H1401,H1402,H1403に区分する。本実施形態の第2の仕切り壁H1552,H1553は、図3(a)に示す容器外壁により形成される略長方形形状の長辺と略平行に設けられている。
【0036】
このような第1の仕切り壁,複数の第2の仕切り壁によって、インク収容部材内部には、ほぼ容積の等しい4つのインク収容部H1401〜H1404が形成される。また、4つのインク収容部には、それぞれフィルターH1701〜H1704(図1参照)が取り付けられるフィルタータワーH1751〜H1754を備え、各インク収容部内のインクはインクをインク供給溝H1201へ供給することができる。ここで、本発明のような第1の仕切り壁、第2の仕切り壁の配置をすることで、各インク収容部のフィルタータワーを第1の仕切り壁近傍に集中させることができ、フィルタータワー基端からインク供給溝までのインク供給路を短くすることができる。その結果、インク供給路を内部に備える突出部の大きさを、記録素子基板(記録ヘッド部)の大きさに近づけることができ、図3(b)に示す突出部長さL1を短くすることができる。特に、本実施形態のように、第1の仕切り壁H1551が、図3(a)から見たとき、記録ヘッド部の吐出口列の中央を交差するように形成されていると、突出部の長さL1を長くすることなく上記インク供給路を突出部内に配設できるので望ましい。
【0037】
次に、フィルタータワーからインク供給溝までのインク供給路について説明する。本実施形態のインク収容部H1401〜H1404は、フィルタータワーH1751〜H1754のフィルターがない側の端部(基端)に、それぞれインク供給路の端部となる開口H1751a〜H1754aを備えている。
【0038】
第1のインク収容部であるインク収容部H1404では、フィルタータワーH1754の基端に開口H1754aを備え、インク流路と接続している。このインク流路は図3(d)に示すインク供給溝H1201dと接続し、その端部開口形状は図3(c)に示すH1764となっている。
【0039】
第2の仕切り壁によって形成される3つのインク収容部のうち、インク収容部H1402は2つの第2の仕切り壁を備えている。このインク収容部H1402では、フィルタータワーH1752の基端に開口H1752aを備え、インク流路と接続している。このインク流路は図3(d)に示すインク供給溝H1201bと接続し、その端部開口形状は図3(c)に示すH1762となっている。
【0040】
ここで、インク収容部H1404のインク供給溝側端部開口H1764とインク収容部H1402のインク供給溝側端部開口H1762とは、図3(a)に示す方向から見て第1の仕切り壁H1551を挟んで形成されている。このような位置関係とすることで、図3(c)に示すH1762とH1764との距離をとることができ、突出部内に形成されるインク供給路を容易に形成することができる。
【0041】
また、上述した2つのインク供給路は、いずれもフィルター基端側の開口とインク供給溝側の開口とが、図3(a)に示す方向から見て開口部が一致(少なくとも重なる)ように形成されている。そのため、いずれのインク供給路も、図3(c)の紙面垂直方向(記録ヘッドの吐出口面に対して直交する方向)に形成されている。この方向はフィルタータワーH1752の延在する方向、及び容器外壁や仕切り壁の延在する方向と一致しており、容器本体を射出成形で製造する際の型抜きが容易に行える形状となっており、生産性に優れる利点を有する。
【0042】
さて、第2の仕切り壁を1つのみ備えるインク収容部H1401,H1403のインク供給路は、上述したインク収容部H1402,H1404のインク供給路とは異なる構成をとる。これらのインク収容部のフィルタータワーH1751,H1753には、その基端部に、開口H1751a、H1753aを備える。これらは図3(c)に示す突出部H1501a内に第3の仕切り壁H1765と流路部材H1410とによって形成された空間H1765a、H1765bにそれぞれ連通している。そして、これらの空間には、それぞれ、図3(d)に示すインク供給溝H1201a、H1201cに連通する開口H1761,H1763が設けられている。
【0043】
このような構成とすることで、インク収容部材と流路部材の2部材により、容易にインク収容部H1401,H1403の流路を形成することができる。これらの流路のフィルター基端側開口と、インク供給溝側開口は、図3(c)に示す方向で見たときに重なっていないが、その分広い空間H1765a、H1765bを持っているため,インク供給性能が犠牲になることはない。
【0044】
(第2の実施形態)
次に、図4を用いて本発明の第2の実施形態について詳細に説明する。図4は本発明の第2の実施形態における、インクジェット記録ヘッドカートリッジ容器本体を示しており、図4(a)は上面図、図4(b)は側面図、図4(c)、図4(d)はそれぞれ図4(b)のA−A断面、B−B断面の断面を上面からみた断面図である。
【0045】
前述の第1の実施形態との違いは第2の仕切り壁がさらにもう一つ増えたことにより、インクを5色収容可能になっている点である。
【0046】
図4(a)、(b)に示すように、容器本体としてのインク収容部材H2501は、記録ヘッドへの電気的接続部を有する側面H2501bと、底面に該第1の側面側に偏倚した突出部H2501aと、を有し、略L字状をなしている。
【0047】
このインク収容部材H2501には、外壁に囲まれた内部を5つに区切るための第1の仕切り壁H2551と、第2の仕切り壁H2552,H2553、H2554とが設けられている。
【0048】
本実施形態の第1の仕切り壁H2551は、前述の第1の実施形態と同様、図4(a)からみて、その延長が、突出部H2501aに設けられたインク供給溝H2251〜H2255を横切るように形成されている。この第1の仕切り壁H2551により、インク収容部材内部は第1の側壁H2501bを有する第1のインク収容部H2405と、他の空間(H2401〜H2404)とに区分される。
【0049】
第2の仕切り壁H2552,H2553、H2554は、第1の仕切り壁と接し、上述した他の空間を互いに略容積の等しい4つのインク収容部H2401〜H2404に区分する。本実施形態の第2の仕切り壁H2552,H2553、H2554は、図4(a)に示す容器外壁により形成される略長方形形状の長辺と略平行に設けられている。
【0050】
このような第1の仕切り壁,複数の第2の仕切り壁によって、インク収容部材内部には、ほぼ容積の等しい5つのインク収容部H2401〜H2405が形成される。また、5つのインク収容部は、フィルタータワーH2751〜H2755を備え、各インク収容部内のインクはインクをインク供給溝H2251〜H2255へ供給することができる。
【0051】
本実施形態でも、このような第1の仕切り壁、第2の仕切り壁の配置をすることで、各インク収容部のフィルタータワーを第1の仕切り壁近傍に集中させることができ、フィルタータワー基端からインク供給溝までのインク供給路を短くすることができる。その結果、インク供給路を内部に備える突出部の大きさを、記録素子基板(記録ヘッド部)の大きさに近づけることができ、図4(b)に示す突出部長さL1を短くすることができる。
【0052】
次に、フィルタータワーからインク供給溝までのインク供給路について説明する。本実施形態のインク収容部H2401〜H2405は、フィルタータワーH2751〜H2755のフィルターがない側の端部(基端)に、それぞれインク供給路の端部となる開口H2751a〜H2755aを備えている。
【0053】
第1のインク収容部であるインク収容部H2405では、フィルタータワーH2755の基端に開口H2755aを備え、インク流路と接続している。このインク流路は図4(d)に示すインク供給溝H2255と接続し、その端部開口形状は図4(c)に示すH2765となっている。
【0054】
第2の仕切り壁によって形成される4つのインク収容部のうち、インク収容部H2402、H2403は2つの第2の仕切り壁を備えている。このインク収容部H2402、H2403では、フィルタータワーH2752、H2753の基端に開口H2752a、2753aを備え、インク流路と接続している。このインク流路は図4(d)に示すインク供給溝H2252、H2253と接続し、その端部開口形状は図4(c)に示すH2762、H2763となっている。
【0055】
ここで、インク収容部H2405のインク供給溝側端部開口H2765とインク収容部H2402、H2403のインク供給溝側端部開口H2762、H2763とは、図4(a)に示す方向から見て第1の仕切り壁H2551を挟んで形成されている。このような位置関係とすることで、図4(c)に示すH2762、H2763とH2765との距離をとることができ、突出部内に形成されるインク供給路を容易に形成することができる。また、本実施例では、図4(c)の紙面上下方向で見たときに、H2762、H2763との間にH2765が形成されるようになっている。このような配置をすることで、H2762とH2763との間の距離をとることができる。
【0056】
また、上述した3つのインク供給路は、いずれもフィルター基端側の開口とインク供給溝側の開口とが、図4(a)に示す方向から見て開口部が一致(少なくとも重なる)ように形成されている。そのため、第1の実施形態同様、生産性に優れる利点を有する。
【0057】
さて、第2の仕切り壁を1つのみ備えるインク収容部H2401,H2404のインク供給路は、第1の実施形態と同様の構成をとる。すなわち、これらのインク収容部のフィルタータワーH2751,H2754には、その基端部に、開口H2751a、H2754aを備える。これらは図4(c)に示す突出部H2501a内に第3の仕切り壁H2766と流路部材H2410とによって形成された空間H2766a、H2766bにそれぞれ連通している。そして、これらの空間には、それぞれ、図4(d)に示すインク供給溝H2251、H2254に連通する開口H2761,H2764が設けられている。
【0058】
このような構成とすることで、インク収容部材と流路部材の2部材により、容易にインク収容部H2401,H2404の流路を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明を適用可能な、インクジェット記録ヘッドカートリッジの分解斜視図である。
【図2】本発明のインクジェット記録ヘッドカートリッジにおける、記録ヘッド部の一例を示す分解斜視図である。
【図3】(a)〜(d)は本発明の第1の実施形態における、インクジェット記録ヘッドカートリッジの上面図、側面図、及び断面図である。
【図4】(a)〜(d)は本発明の第2の実施形態における、インクジェット記録ヘッドカートリッジの上面図、側面図、及び断面図である。
【図5】(a)及び(b)は本発明の従来技術におけるインクジェット記録ヘッドカートリッジの一例を示す分解斜視図である。
【図6】本発明の従来技術におけるインクジェット記録ヘッドカートリッジのインク収容部一例を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0060】
H1001 インクジェット記録ヘッドカートリッジ
H1101 記録素子基板(インクジェット記録ヘッド部)
H1102 インク供給口
H1108 ノズル列
H1302 外部信号入力端子(電気接続部)
H1501 インク収容部材(容器本体)
H1501a 突出部
H1501b 電気的接続面
H1551 第1の仕切り壁
H1552,H1553 第2の仕切り壁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気的接続部を有する第1の側面と、底面の一部に前記第1の側面側に偏倚した突出部とを有する、複数のインクを収納するための容器本体と、
前記複数のインクを供給するための、互いに平行に設けられた複数のインク供給口列と、該複数のインク供給口列に沿って設けられる、前記複数のインクを吐出するための複数の吐出口列と、を有し、容器本体の前記突出部に取り付けられる記録ヘッド部と、を備え、
前記記録ヘッド部のインク供給口列の方向が、前記第1の側面と交差するインクジェット記録ヘッドカートリッジにおいて、
前記容器本体は、
前記記録ヘッド部の吐出口列が設けられた面に直交する方向からみて、前記複数のインク供給口列と交差するように前記容器本体内部を区分することで、第1の側面を持つ第1のインク収容部と、第1の側面を持たない空間と、を形成する第1の仕切り壁と、
該第1の仕切り壁と接し、前記第1の側面を持たない空間をさらに複数のインク収容部に分割する複数の第2の仕切り壁と、を有することを特徴とするインクジェット記録ヘッドカートリッジ。
【請求項2】
前記第1の仕切り壁は、前記記録ヘッド部の吐出口列が設けられた面に直交する方向からみて、前記複数の吐出口列の、各列の中央を交差するように形成されていることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録ヘッドカートリッジ。
【請求項3】
前記容器本体は、各インク収容部と該インク収容部に対応する前記インク供給口とを連通する複数のインク流路を有し、
前記第1のインク収容部と連通するインク流路のインク供給口側端部と、前記第2の仕切り壁で分割された複数の空間のうち、複数の第2の仕切り壁を備えるインク収容部と連通するインク流路の少なくとも一つのインク供給口側端部と、は、前記記録ヘッド部の吐出口列が設けられた面に直交する方向からみて、前記第1の仕切り壁を挟んで設けられることを特徴とする請求項1または2に記載のインクジェット記録ヘッドカートリッジ。
【請求項4】
前記第1の仕切り壁を挟んで設けられるインク流路の、インク収容部側端部開口と、インク供給口側端部開口は、前記記録ヘッド部の吐出口列が設けられた面に直交する方向からみて重なる部分を有することを特徴とする請求項3に記載のインクジェット記録ヘッドカートリッジ。
【請求項5】
前記突出部の前記記録ヘッド部の取り付け部には、前記複数のインク供給口列に対応した複数のインク排出口溝が形成されており、前記インク流路のインク供給口側端部と連通していることを特徴とする請求項3または4に記載のインクジェット記録ヘッドカートリッジ。
【請求項6】
前記突出部は、前記電気的接続部が設けられる面に開口部と、該開口部内の空間を区分する第3の仕切り壁と、を備え、該開口部を塞ぐ流路部材と第3の仕切り壁により、前記第2の仕切り壁で分割された複数の空間のうち、第2の仕切り壁をひとつのみ備えるインク収容部と連通するインク流路を形成することを特徴とする請求項3ないし5のいずれか1項に記載のインクジェット記録ヘッドカートリッジ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−253468(P2007−253468A)
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−80906(P2006−80906)
【出願日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】