説明

インクジェット記録ヘッド

【課題】外力に対して脆弱な吐出口面の剛性を強化することができるインクジェット記録ヘッドを提供する。
【解決手段】インクジェット記録ヘッドは、吐出口プレート7の厚みを増すように吐出口プレートの基板5に対向する面上に設けられた梁状突起9を有している。インク吐出口3からのインク吐出量がインク供給口(共通液室)8の両側にそれぞれ配置されたインク吐出口列ごとに異なっている。梁状突起9と同じく吐出口プレート7の基板5に対向する面上に設けられ、梁状突起9からインク吐出量が大きい方のインク吐出口列側に延びるように梁状突起9と一体に形成された補強リブ4が基板5上に接触している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インク吐出口からインクを吐出して記録を行うインクジェット記録ヘッドに関するものである。
【0002】
本発明のインクジェット記録ヘッドは、一般的なプリント装置のほか、複写機、通信システムを有するファクシミリ、プリント部を有するワードプロセッサ等の装置、あるいは、これらの装置を複合した多機能記録装置等に適用することができる。
【背景技術】
【0003】
一般にインクジェット記録ヘッドは、記録画像の高画質化を図るために、吐出口の数が64個から増えて128個、256個、あるいはそれ以上の数のものが用いられている。そのため、各ヘッド部は、1インチ当たりの吐出口数を指す「dpi(ドット・パー・インチ)」で、300dpi、600dpi、1200dpi等の高密度で吐出口が配置されている。これらの吐出口に対して配置される電気熱変換体としての発熱体は、数μsecオーダーから10μsecオーダーのパルス的な駆動に応答して膜沸騰による気泡を形成するが、高周波的で駆動できるため、高速プリント、高画質の形成を達成している。
【0004】
このようなインクジェット記録装置においては、記録しない状態が続いたような場合、前記吐出口からの水分蒸発等によりインクの粘度が上昇して、インクの吐出速度が遅くなったり目詰まりになる場合がある。このような吐出不良の原因を解消する手段として、例えば、弾性体であるゴム等より作られたキャップを圧接して前記吐出口からの水分蒸発等を防止し吐出不良を防止するキャップ機構が用いられている。このキャップ機構にはポンプが連結されており、キャップ内に負圧を発生させて吐出口からインクを引き出し、より安定した吐出を維持するようになっている。また、吐出口周辺に付着した紙粉などの異物によってインクの吐出方向が曲げられる場合がある。このような吐出不良状態を正常に回復するために、これも弾性体のゴムワイパーによって吐出口面をワイピングすることで、異物を除去できるような機構も設けられている。
【特許文献1】特開平10−146976号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した従来のインクジェット記録ヘッドには、以下のような課題がある。
【0006】
近年は、より高精細な画像への要求が高まっており、インクジェット記録ヘッドは吐出量をより小さくして解像度を上げることが必要になっている。そのため、近年のインクジェット記録ヘッドは、ヒーターやピエゾ素子等の吐出エネルギー発生素子を上層に形成した基板上に樹脂膜を形成している。その樹脂内に流路を任意数の吐出エネルギー発生素子に対応するように形成した後、各々の流路を樹脂表面に連通させてインクの吐出口を形成した構造をとる場合が多い。このヘッド構造は、インク吐出量に影響するヒーターと吐出口との距離を樹脂の膜厚によって決定できるため、微小量を吐出する高精細記録用ヘッドの製造に適しているからである。このようなインクジェット記録ヘッドは、吐出口周辺は内部にインク流路やヒーターなどがあるため中空構造となり、その結果、吐出口を形成している樹脂部が外力に対して脆弱になりやすくなっている。特に、インク吐出量が比較的大きい吐出口を備えた吐出口が列状に配置されている部位は、インク吐出性能を確保するために吐出口の直径やインク流路が大きくなるために、最も脆弱な部位となる。したがって、このような近年のインクジェット記録ヘッドの吐出口が形成された面(以下、「吐出口面」という。)に一定以上の外力が加わった場合には、脆弱な部位を起点にして吐出口周辺にクラックが入ることがある。外力の発生要因には、記録ヘッドの目詰まりなどを正常に回復するために、記録装置本体が行う吸引動作やワイパー動作がある。また、記録装置本体の記録媒体搬送手段に生じた何らかの不具合によって紙ジャム等が発生し、記録媒体が吐出口面を擦ることで、吐出口面に外力が加わることもある。さらに、記録ヘッドをユーザーが取り扱う際の吐出口面への不用意な接触なども、外力の発生要因となる。
【0007】
図11に、ワイパー動作によって吐出口プレートにクラックが入る様子を示す。吐出口面に紙粉などの異物124が付着し、インク吐出方向を著しく曲げるような場合、インクジェット記録装置本体に備えられたゴム製のワイパー120でインク吐出口面をふき取ることで、正常な状態に回復させる機構がある。しかし、このワイパー動作に伴って吐出口プレート107が変形し(符号114が示す点線部)、応力集中によってクラック115が発生するおそれがあった。
【0008】
また、図12に示すように、記録装置本体の記録媒体搬送手段に生じた何らかの不具合によって紙ジャム等が発生し、記録媒体122が吐出口面を擦ることで、吐出口プレート107が変形し(符号114が示す点線部)、クラック115が発生するおそれがあった。
【0009】
そこで本発明は、外力に対して脆弱な吐出口面の剛性を強化することができるインクジェット記録ヘッドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明のインクジェット記録ヘッドは、インク滴を吐出するエネルギーを発生する複数の吐出エネルギー発生素子と、前記複数の吐出エネルギー発生素子が両側に列状に配されているとともに、前記吐出エネルギー発生素子の配列方向に沿って延在する貫通口からなるインク供給口を有する基板と、前記複数の吐出エネルギー発生素子に対応し、前記インク供給口の両側にそれぞれ配置されたインク吐出口列を形成する複数のインク吐出口を備え、前記基板に対して前記インク供給口と対向するように設けられた吐出口プレートと、前記基板と前記吐出口プレートとの間に形成され、前記インク供給口と前記各インク吐出口とを連通する複数のインク流路と、前記吐出口プレートの厚みを増すように前記吐出口プレートの前記基板に対向する面上に設けられた梁状突起と、を備えたインクジェット記録ヘッドにおいて、前記インク吐出口からのインク吐出量が前記インク供給口の両側にそれぞれ配置されたインク吐出口列ごとに異なっており、前記梁状突起と同じく前記吐出口プレートの前記基板に対向する面上に設けられ、前記梁状突起からインク吐出量が大きい方の前記インク吐出口列側に延びるように前記梁状突起と一体に形成された補強リブが前記基板上に接触していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
上記本発明によれば、外力に対して脆弱な吐出口面の剛性を強化することができるインクジェット記録ヘッドを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下に、添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について説明する。
【0013】
図1から図9は、本発明が実施または適用される好適なインクジェット記録ヘッドを説明するための説明図である。以下、これらの図面を参照して各構成要素について説明する。
【0014】
図2に示すインクジェット記録ヘッドはインクタンクと一体構成になっている。図2中の記録ヘッドH1001は、カラーインク(シアンインク、マゼンタインク、イエローインク)をそれぞれ内部に収容している。これら記録ヘッドH1001は、インクジェット記録装置本体に備えられているキャリッジ(図7参照)の位置決め手段および電気的接点によって固定支持されている。また、キャリッジに対して着脱可能となっており、収容したインクが消費されるとそれぞれ交換される。
【0015】
次に、これらの記録ヘッドに関して、記録ヘッドを構成しているそれぞれの構成要素毎に順を追って説明する。
【0016】
図2に示した記録ヘッドH1001は、電気信号に応じて膜沸騰をインクに対して生じせしめるための熱エネルギを生成する電気熱変換体を用い、電気熱変換体とインク吐出口とが対向するように配置されたインクジェット記録ヘッドである。
【0017】
<1>記録ヘッド
図示した記録ヘッドH1001は、シアン、マゼンタ、イエローの3色のインクを吐出させるものである。記録ヘッドH1001は、図3の分解斜視図に示すように、記録素子基板H1101、電気配線テープH1301、インク供給保持部材H1501を有している。また、記録ヘッドH1001は、フィルタH1701,H1702,H1703、インク吸収体H1601,H1602,H1603、蓋部材H1901、およびシール部材H1801を有している。
【0018】
<2>記録素子基板
図4は、第2の記録素子基板H1101を一部破断して示す斜視図である。第2の記録素子基板H1101には、シアンインク、マゼンタインク、イエローインク用の3つのインク供給口H1102が並列して形成されている。電気熱変換素子H1103と吐出口H1107とが、それぞれのインク供給口H1102を挟んでその両側に、一列に並んで配置されて形成されている。Si基板H1101上には、第1の記録素子基板H1100におけるSi基板H1110と同様に、電気配線、抵抗等、電極部H1104などが形成されている。その上には、フォトリソグラフィ技術によってインク流路壁H1106や吐出口H1107が樹脂材料で形成されている。電気配線に電力を供給するための電極部H1104には、Au等のメッキバンプH1105が形成されている。
【0019】
<3>インク供給保持部材
インク供給保持部材H1501は、例えば、樹脂成形によって形成されている。図3に示すように、インク供給保持部材H1501は、内部にシアン、マゼンタ、イエローのインクを保持するための負圧を発生するための吸収体H1601,H1602,H1603をそれぞれ独立して保持する。このための空間を有することでインクタンクの機能と、記録素子基板H1101の各インク供給口H1102にそれぞれインクを導くための独立したインク流路を形成することでインク供給機能とを備えている。インク吸収体H1601,H1602,H1603は、PP(ポリプロピレン)繊維を圧縮したものが使われている。各インク流路の上流部のインク吸収体H1601,H1602,H1603との境界部には、記録素子基板H1101内部にゴミの進入を防ぐためのフィルタH1701,H1702,H1703がそれぞれ溶着により接合されている。
【0020】
インク流路の下流部には、記録素子基板H1101にシアン、マゼンタ、イエローの各インクを供給するためのインク供給口H1201が形成されておいる。記録素子基板H1101の各インク供給口1102がインク供給保持部材H1501の各インク供給口H1201に連通するよう、記録素子基板H1101がインク供給保持部材H1501に対して位置精度良く接着固定される。この接着に用いられる第1の接着剤は、低粘度で硬化温度が低く、短時間で硬化し、硬化後比較的高い硬度を有し、かつ、耐インク性のあるものが望ましい。例えば、第1の接着剤としては、エポキシ樹脂を主成分とした熱硬化接着剤が用いられ、その際の接着層の厚みは50μm程度が望ましい。
【0021】
また、インク供給口H1201付近周囲の平面には、電気配線テープH1301の一部の裏面が第2の接着剤により接着固定される。記録素子基板H1101と電気配線テープH1301との電気接続部分は、第1の封止剤H1307および第2の封止剤H1308(図6参照)により封止され、電気接続部分をインクによる腐食や外的衝撃から保護されている。第1の封止剤H1307は、主に電気配線テープH1300の電極端子H1302と記録素子基板のバンプH1105との接続部の裏面側と記録素子基板の外周部分を封止し、第2の封止剤H1308は、上述の接続部の表側を封止している。
【0022】
次に、上述したようなカートリッジタイプの記録ヘッドを搭載可能なインクジェット記録装置について説明する。図7は、本発明のインクジェット記録ヘッドを搭載可能なインクジェット記録装置の一例を示す図である。
【0023】
図7に示す記録装置において、図2に示した記録ヘッドH1001がキャリッジ102に位置決めされて、交換可能に搭載されている。キャリッジ102は、主走査方向に延在して装置本体に設置されたガイドシャフト103に沿って往復移動可能に案内支持されている。そして、キャリッジ102は主走査モータ104により駆動機構(プーリ105,106およびその間に巻回されたタイミングベルト107)を介して駆動されるとともにその位置および移動が制御される。
【0024】
記録用紙やプラスチック薄板等の記録媒体108は、給紙モータ135からギアを介してピックアップローラ131を回転させることにより、オートシートフィーダ(ASF)132から一枚ずつ分離給紙される。記録媒体108は、更に、搬送ローラ109の回転により、記録ヘッドH1001の吐出口面と対向する位置(プリント部)を通って搬送(副走査)される。搬送ローラ109はLFモータ134の回転によりギアを介して行われる。
【0025】
なお、記録媒体108は、プリント部において平坦なプリント面を形成するように、その裏面をプラテン(不図示)により支持されている。この場合、キャリッジ102に搭載された記録ヘッドH1001は、それらの吐出口面がキャリッジ102から下方へ突出して前記2組の搬送ローラ対の間で記録媒体108と平行になるように保持されている。
【0026】
記録ヘッドH1000およびH1001は、各吐出部における吐出口の並び方向が上述したキャリッジ102の走査方向に対して交差する方向になるようにキャリッジ102に搭載され、これらの吐出口列から液体を吐出して記録を行う。
【0027】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態を図1、図3、図5および図9を参照して説明する。
【0028】
図1は本発明の第1実施の形態による第二の記録素子基板H1101の吐出口周辺部を示す模式的断面図および模式的透過平面図である。図5は記録素子基板5および梁状突起9と補強リブ4を一部破断した状態で示す斜視図である。
【0029】
これらの図に示すように、本実施形態の記録ヘッドH1001は、上層にフォトリソグラフィ技術を用いて配線及び発熱素子6が形成されたシリコン基板5と、シリコン基板5上にて発熱素子6に対応する流路の隔離壁11、吐出口3などを備えている。シリコン基板5上には、吐出口3が開口した流路の天井部を形成する樹脂からなる吐出口プレート7が形成されている。さらには、吐出口プレート7からインク供給口である共通液室8に向かって突き出した梁状突起9と、同じく吐出口プレート7からシリコン基板に向かって突き出した柱状突起16と、梁状突起9と一体となった補強リブ4とが備えられている。柱状突起16および補強リブ4は、シリコン基板5上に接触している。図1(b)のA−A’線で示されているように、補強リブ4は、その延長方向に関する中心がインク流路2のインク流入方向中心と一致するように設けている。このような配置にするのは、補強リブ4によるインク流入方向が偏らないようにし、各ノズルからのインク吐出性能を安定させるためである。
【0030】
吐出エネルギー発生素子である発熱素子6とインク吐出口3は、共通液室8の延在方向の両側に配列されている。インク吐出量はインク吐出口列13とインク吐出口列21とで異なっており、インク吐出口列13の方がインク吐出量が大きい。本実施形態では、そのうちインク吐出量の大きい吐出口列13のインク流路に向かって伸びるように、梁状突起9と一体となった補強リブ4が2ノズル分のピッチ毎に配置されている。柱状突起16は補強リブ4同士の間に1つずつ配置されている。補強リブ4の幅および柱状突起16の大きさはより太いことが吐出口プレート7の剛性向上のためには望ましい。しかし、配置される場所が高周波でインクを供給する流路にあたるため、その流抵抗が大きくならないように設計される必要がある。本実施形態では、補強リブ4の幅および円柱状突起16の直径をそれぞれ13μmとした。この流路形状ではインク吐出性能に大きな影響を及ぼさないことを確認した。なお、インク吐出量が小さいインク吐出口列21側には補強リブは配置されておらず、柱状突起16のみを1ノズルあたり2つの割合で配置した。
【0031】
図5に示すように、本実施形態では、シリコン基板5と接触することなく共通液室8の両側に橋をかけるように備えられた吐出口プレート7に梁状突起9が設けられている。そして、梁状突起9から延びる補強リブ4と、吐出口プレート7から突出した円柱状突起16とによって、吐出口プレート7のシリコン基板5に接触していない部分を支持している。このような構成により、吐出口3を形成している吐出口プレート7のうち、外力に対して最も脆弱で破壊されやすい部位である、シリコン基板5に接触していない部位の強度が増加している。
【0032】
図8に、本実施形態に係る3色一体型のインクジェット記録ヘッドの吐出口列配置を示す。3色のインクはそれぞれシアン、マゼンタ、イエローの染料インクで、記録媒体上に吐出・定着して任意のカラー記録画像を得ることができるようになっている。インク吐出量は、インク供給口8の両側にそれぞれ配置されたインク吐出口列によって異なっているが、吐出量の順列は各色インク供給口によって違っていても良い。本実施形態では、吐出量の大きい方の吐出口列13は、シアンインク用の吐出口列Cではインク供給口8の図面左側に、マゼンタおよびイエローインク用の吐出口列M,Yではインク供給口8の図面右側に配置されている。それに伴って、補強リブ4は、シアンインク用の吐出口列Cでは、吐出量の大きい吐出口列13が形成されている側であるインク供給口8の図面左側の吐出口プレート部12に配置されている。また、マゼンタおよびイエローインク用の吐出口列M,Yでは、補強リブ4は、吐出量の大きい吐出口列13が形成されている側であるインク供給口8の図面右側の吐出口プレート部12に配置されている。これにより、外力に対して最も脆弱で破壊されやすい部位である、シリコン基板5に接触していない部位の強度が補強されている。従って、吸引やワイパー等による回復動作、記録媒体による吐出口面の擦れ、ユーザの不用意な接触等によって吐出口プレート7に加わる外力によって、吐出口3周辺にクラックが入ったり、吐出口面を形成する吐出口プレート7が剥がれたりしてしまうことがない。
【0033】
図9は本実施形態を適用しない従来の吐出口プレート構造を模式的に示している。補強構造のない図9の吐出口プレート部12は、図8に示す構造と比較して外力に対して脆弱である。
【0034】
なお、本実施形態では、記録液であるインクを吐出するエネルギー発生手段として発熱素子6を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限られるものではない。また、図1に示すようにシリコン基板5の背面から表面に向けて異方性エッチングによる共通液室8が貫通しており、図3に示すインク供給部材H1501のインク供給口H1201から共通液室8を介して、吐出口3に繋がる流路内にインクが供給される。
【0035】
(第2の実施形態)
本発明の第2の実施形態を図10を参照して説明する。本実施形態に関しては、第1の実施形態と異なる点を主に説明する。
【0036】
図10に示す基本的な構造は第1の実施形態と同じあるので、その詳細な説明は省略する。図10に示すように、吐出エネルギー発生素子である発熱素子6が共通液室8の延在方向の両側に配列されている。本実施形態では、そのうちインク吐出量の大きい吐出口列13のインク流路に向かって伸びるように、梁状突起9と一体となった補強リブ4が8ノズル分のピッチ毎に配置されている。柱状突起16は補強リブ4の間に7つずつ並んでいる。補強リブ4の幅がより広く、かつ柱状突起16がより太いことが、吐出口プレート7の剛性向上のためには望ましい。しかし、それらが配置される場所は高周波でインクを供給する流路にあたるため、流抵抗が大きくならないように設計される必要がある。本実施形態では、補強リブ4の幅および円柱状突起16の直径をそれぞれ13μmとした。この流路形状では第1の実施形態の構造よりもインク吐出性能に影響を及ぼさないことを確認した。なお、インク吐出量が小さいインク吐出口列21側には補強リブ4は配置されておらず、柱状突起16のみが1ノズルあたり2つの割合で配置されている。
【0037】
本実施形態においても、シリコン基板5と接触することなく共通液室8の両側に橋をかけるように備えられた吐出口プレート7に梁状突起9が設けられている。そして、梁状突起9から延びる補強リブ4と、吐出口プレート7から突出した円柱状突起16とによって、吐出口プレート7のシリコン基板5に接触していない部分を支持している。このような構成により、吐出口3を形成している吐出口プレート7のうち、外力に対して最も脆弱で破壊されやすい部位である、シリコン基板5に接触していない部位の強度が増加している。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の一実施形態によるインクジェット記録ヘッドの吐出口プレート周辺部を示す図であり、同図(a)は同図(b)のA−A’線に沿った断面図、同図(b)は模式的透過図である。
【図2】本発明の一実施形態によるインクジェット記録ヘッドの斜視図である。
【図3】本発明の一実施形態によるインクジェット記録ヘッドの分解斜視図である。
【図4】インクジェット記録ヘッドにおける記録素子基板を一部破断した状態で示す斜視図である。
【図5】インクジェット記録ヘッドにおける記録素子基板の、梁状突起および補強リブを含む部分を一部破断した状態で示す斜視図である。
【図6】インクジェット記録ヘッドの記録素子基板と電気配線テープとの電気接続部分を示す断面図である。
【図7】本発明のインクジェット記録ヘッドを搭載可能なインクジェット記録装置の一例を示す図である。
【図8】本発明の第1の実施形態によるインクジェット記録ヘッドにおける、複数のインク吐出口列が並べられた吐出口プレート周辺部を示す模式的透過図である。
【図9】従来技術によるインクジェット記録ヘッドにおける、複数のインク吐出口列が並べられた吐出口プレート周辺部を示す模式的透過図である。
【図10】本発明の第2の実施形態によるインクジェット記録ヘッドの吐出口プレート周辺部を示す図である。
【図11】ワイパー動作によって吐出口プレートにクラックが入る様子を示す図である。
【図12】紙ジャム等によって記録媒体が擦れて吐出口プレートにクラックが入る様子を示す図である。
【符号の説明】
【0039】
3 吐出口
4 補強リブ
5 記録素子基板
6 発熱素子
7 吐出口プレート
8 共通液室
9 梁状突起

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インク滴を吐出するエネルギーを発生する複数の吐出エネルギー発生素子と、
前記複数の吐出エネルギー発生素子が両側に列状に配されているとともに、前記吐出エネルギー発生素子の配列方向に沿って延在する貫通口からなるインク供給口を有する基板と、
前記複数の吐出エネルギー発生素子に対応し、前記インク供給口の両側にそれぞれ配置されたインク吐出口列を形成する複数のインク吐出口を備え、前記基板に対して前記インク供給口と対向するように設けられた吐出口プレートと、
前記基板と前記吐出口プレートとの間に形成され、前記インク供給口と前記各インク吐出口とを連通する複数のインク流路と、
前記吐出口プレートの厚みを増すように前記吐出口プレートの前記基板に対向する面上に設けられた梁状突起と、
を備えたインクジェット記録ヘッドにおいて、
前記インク吐出口からのインク吐出量が前記インク供給口の両側にそれぞれ配置されたインク吐出口列ごとに異なっており、
前記梁状突起と同じく前記吐出口プレートの前記基板に対向する面上に設けられ、前記梁状突起からインク吐出量が大きい方の前記インク吐出口列側に延びるように前記梁状突起と一体に形成された補強リブが前記基板上に接触していることを特徴とするインクジェット記録ヘッド。
【請求項2】
前記補強リブは前記吐出エネルギー発生素子の配列方向に沿って一定の間隔で複数配置され、前記補強リブ同士の間に前記吐出口プレートから前記基板に向かって突き出した柱状突起が配置されている、請求項1に記載のインクジェット記録ヘッド。
【請求項3】
前記補強リブは前記吐出エネルギー発生素子の配列方向に沿って一定の間隔で複数配置され、前記補強リブの延長方向中心が前記インク流路のインク流入方向中心と一致している、請求項1または2に記載のインクジェット記録ヘッド。
【請求項4】
前記インク供給口が前記基板に複数配列されている、請求項1から3のいずれか1項に記載のインクジェット記録ヘッド。
【請求項5】
前記吐出口プレートが樹脂で構成されている、請求項1から4のいずれか1項に記載のインクジェット記録ヘッド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2007−283501(P2007−283501A)
【公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−109910(P2006−109910)
【出願日】平成18年4月12日(2006.4.12)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】