説明

インクジェット記録媒体用塗工液、製造方法および記録媒体

【課題】 本発明の課題は、優れたインク吸収性、表面光沢、耐擦過性、画質を有するインクジェット用記録媒体を提供することである。
【解決手段】 感温点以下の温度領域では親水性を示し、感温点を超える温度領域では疎水性を示す高分子化合物(A)を含有する高分子エマルジョン及びアルミナ水和物を含有することを特徴とするインクジェット記録媒体製造用塗工液。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はインク吸収性、表面光沢、耐擦過性、画質に優れたインクジェット用記録媒体を効率よく製造するのに有用な塗工液および記録媒体の製造方法ならびに記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録方式は、記録時の騒音が少なく、カラー化が容易であること、高速記録が可能であることから広い分野で利用が進められている。
近年、高画質を得るための光沢表面を持つインクジェット記録媒体の技術開発が進んでいるが、このような表面光沢の高い用紙としては、高い表面光沢を有するインクジェット用記録媒体として、キャスト法を用いた記録媒体が市販されている。キャスト法には、顔料や接着剤を主成分とする塗工液組成物を原紙上に塗工した後、該塗工層が湿潤状態にある間に鏡面仕上げした加熱ドラムの表面に圧着し、乾燥するウェットキャスト法(直接法)、湿潤状態の塗工層をいったん乾燥あるいは半乾燥して凝固させた後、再湿潤液により湿潤可塑化させ、鏡面仕上げした加熱ドラムに圧着し乾燥するリウェットキャスト法、湿潤状態の塗工層を凝固処理によりゲル状態にして、鏡面仕上げした加熱ドラムに圧着し乾燥するゲル化キャスト法(凝固法)の3種類の方法が一般的に知られており、これらのキャスト法は、いずれも、湿潤可塑化状態にある塗工層を鏡面仕上げした加熱ドラムに圧着して乾燥し、加熱ドラムから離型させて鏡面を写し取ることは共通している。キャスト法は一般に前述の冷却セットを利用する製造方法に比べて生産性の点で優れているといわれているが、キャスト法にて得られた記録媒体の表面は、高光沢、高平滑となるが、塗工層表面に数ミクロンあるいはそれ以下のサイズの微小な地割れ状のクラック(以下、マイクロクラックと称す)が多数存在しており、高解像度の画像が得られにくいという問題がある。特に、インクジェットプリンターを用い顔料インクにより印刷を行う場合、該クラックに顔料が浸透してしまい良好な発色の印刷画像が得られない等の問題点がある。
【0003】
前記マイクロクラックを発生させないインクジェット記録媒体の製造方法が特許文献1に開示されており、(メタ)アクリルアミド共重合体もしくはラクタム基を有する樹脂を含有させることで解決を図っているが、該樹脂がエマルジョンを形成していないため塗工液に添加した場合の粘度が高くなる傾向にあり、均質かつ平滑な塗工を行なうためには、塗工液中の該樹脂の含有量を低く抑える必要があり、効果に制限があった。
また、マイクロクラックの発生が比較的少なく、優れた表面光沢を持つインクジェット記録媒体としては、アルミナ水和物をインク吸収剤として用いた例(例えば、特許文献2)が挙げられるが、これらのインクジェット記録媒体においては、表面の強度が低く、擦れに因る傷がつき易く、該観点からの画像の保存性が低いことが問題であった。
近年、インクジェット記録の高速化、記録画像の高精細化、フルカラー化といった用途の拡大に伴い、さらに高光沢かつ高画質、高い画像保存性が要望されるようになり、例えば銀塩方式の写真用印画紙に匹敵する様な光沢、記録品質を有するインクジェット記録媒体の開発が求められている。
【0004】
【特許文献1】特開2003−312123号公報
【特許文献2】特開平02−276670号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、従来に比べて、より効率的に、より優れたインク吸収性、表面光沢、耐擦過性、画質を有するインクジェット用記録媒体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は、前記課題を解決するために鋭意検討した結果、感温点以下の温度領域では親水性を示し、感温点を超える温度領域では疎水性を示す高分子化合物(A)を含有する高分子エマルジョン及びアルミナ水和物を含有することを特徴とするインクジェット記録媒体製造用塗工液が前記問題の解決に有効であることを見出し、本発明をなすに至った。すなわち、本発明は以下の通りである。
1)感温点以下の温度領域では親水性を示し、感温点を超える温度領域では疎水性を示す高分子化合物(A)を含有する高分子エマルジョン及びアルミナ水和物を含有することを特徴とするインクジェット記録媒体製造用塗工液。
2)前記アルミナ水和物が擬ベーマイトであることを特徴とする1)のインクジェット記録媒体製造用塗工液。
3)前記高分子化合物(A)がカチオン基を含有することを特徴とする1)または2)のインクジェット記録媒体製造用塗工液。
4)前記高分子化合物(A)がカルボキシル基を含有することを特徴とする1)〜3)のいずれかのインクジェット記録媒体製造用塗工液。
5)支持体上に1層以上の塗工層を設けたインクジェット記録媒体の製造方法であって、該塗工層の少なくとも1層の形成方法が、1)〜4)のいずれかの塗工液を、高分子化合物(A)の感温点を超える温度で支持体上に塗工後、キャスト仕上げを行なうことを特徴とする上記インクジェット記録媒体の製造方法。
6)支持体上に1層以上の塗工層を設けたインクジェット記録媒体の製造方法であって、該塗工層の少なくとも1層の形成方法が、1)〜4)のいずれかの塗工液を、高分子化合物(A)の感温点を超える温度で支持体上に塗工後、キャスト仕上げ前に、感温点以下の温度まで冷却する工程を含むことを特徴とする5)の製造方法。
7)支持体上に1層以上の塗工層を設けたインクジェット記録媒体において、該塗工層の少なくとも1層が、5)または6)に記載の製造方法によって製造されたものであることを特徴とする上記インクジェット記録媒体。
【発明の効果】
【0007】
本発明をもちいれば、従来に比べて、より効率的に、より優れたインク吸収性、表面光沢、耐擦過性、画質を有するインクジェット用記録媒体を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明について、以下に具体的に説明する。
本発明に用いる、感温点以下の温度領域では親水性を示し、感温点を超える温度領域では疎水性を示す高分子化合物(A)は、単独重合することによって温度応答性(温度の変化による親水性−疎水性の変化)を呈する高分子化合物が得られるモノマー(主モノマー(M))の単独重合高分子化合物、又は二種類以上の主モノマー(M)の共重合高分子化合物、さらには、該主モノマー(M)と反応して高分子化合物を作ることができかつ単独重合によっては該温度応答性を呈する高分子化合物が得られないモノマー(副モノマー(N))と主モノマー(M)との共重合高分子化合物である。主モノマー(M)と副モノマー(N)は各々1種又は2種以上のものを組み合わせて用いることも出来る。
主モノマー(M)の単独重合により高い温度応答性を有する高分子化合物が得られるが、主モノマー(M)と副モノマー(N)とを共重合することによって、主モノマー(M)の単独重合高分子化合物とは異なる感温点を持つ高分子化合物(A)が得られたり、モノマー(M)の単独重合高分子化合物とは異なる成膜性を有する高分子化合物(A)を得ることができる。
【0009】
主モノマー(M)としてはN−アルキル又はN−アルキレン置換(メタ)アクリルアミド誘導体(ここで、(メタ)アクリルとはメタアクリル(又はメタクリル)又はアクリルを簡便に表記したものである)、ビニルメチルエーテルなどが挙げられ、具体的には例えば、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−シクロプロピル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−n−プロピル(メタ)アクリルアミド、N−メチル−N−n−プロピルアクリルアミド、N−メチル−N−イソプロピルアクリルアミド、N−(メタ)アクリロイルピロリジン、N−(メタ)アクリロイルピペリジン、N−テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリルアミド、N−メトキシプロピル(メタ)アクリルアミド、N−エトキシプロピル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロポキシプロピル(メタ)アクリルアミド、N−エトキシエチル(メタ)アクリルアミド、N−(2,2−ジメトキシエチル)−N−メチルアクリルアミド、N−メトキシエチル(メタ)アクリルアミド、N−(メタ)アクリロイルモルホリンなどが挙げられる。成膜性の観点から、N−イソプロピルアクリルアミド、N−n−プロピルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、N−アクリロイルモルホリンが好ましい。
【0010】
副モノマー(N)としては親油性ビニル化合物、親水性ビニル化合物、イオン性ビニル化合物などが挙げられ、具体的には、親油性ビニル化合物としては、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、グリシジルメタクリレート、スチレン、α−メチルスチレン、エチレン、イソプレン、ブタジエン、酢酸ビニル、塩化ビニルなどが挙げられ、親水性ビニル化合物としては、例えば2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、ダイアセトンアクリルアミド、メチレンビスアクリルアミド、2−メチル−5−ビニルピリジン、N−ビニル−2−ピロリドン、N−アクリロイルピロリジン、アクリロニトリル、などが挙げられ、イオン性ビニル化合物としては、例えばアクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、フマル酸、マレイン酸、クロトン酸、ブテントリカルボン酸、マレイン酸モノエチル、マレイン酸モノメチル、イタコン酸モノエチル、イタコン酸モノメチル等のカルボン酸基含有モノマー、2−アクリルアミド−2−メチル−プロパンスルホン酸、スチレンスルホン酸、ビニルスルホン酸、(メタ)アクリルスルホン酸等のスルホン酸基含有モノマー、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のアミノ基含有モノマーなどが挙げられる。特に、メチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、スチレン、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、アクリルアミド、メタアクリルアミド、ダイアセトンアクリルアミド、メチレンビスアクリルアミドが好ましく用いられる。
【0011】
主モノマー(M)と副モノマー(N)の共重合割合は、得られる共重合高分子化合物が一定の温度を境界にして親水性と疎水性が変化する温度応答性を呈する範囲の中で決められる。つまり、副モノマー(N)の割合が多すぎれば得られる共重合高分子化合物が該温度応答性を示さなくなる。
即ち、主モノマー(M)と副モノマー(N)の共重合割合は用いるモノマー種の組み合わせに依存するが、生成する高分子化合物中における副モノマー(N)の割合は50質量%以下が好ましい。更に好ましくは、30質量%以下である。また、副モノマー(N)の添加効果がより良く発現されるためには0.01質量%以上が好ましい。
【0012】
本発明において、高分子化合物(A)の「感温点」とは、その親水性−疎水性が変化する温度であり、「温度応答性」とは、該親水性−疎水性の変化を示す性質を意味する。また、本発明において、「親水性」とは高分子化合物(A)と水とが共存する系において高分子化合物(A)は水と相溶した状態の方が、相分離した状態よりも安定であることを意味し、「疎水性」とは高分子化合物(A)と水とが共存する系において高分子化合物(A)は水と相分離した状態の方が、相溶した状態よりも安定であることを意味する。該親水性−疎水性の変化は例えば、高分子化合物(A)と水とが共存する系の温度変化に伴う急激な粘度変化、または高分子化合物(A)と水とが共存する系の透明性の急激な変化、高分子化合物(A)の水に対する溶解性の急激な変化として現れる。本発明においては、高分子化合物(A)と水とが共存する系の温度を、高分子化合物(A)が疎水性を示す温度領域(感温点を超える温度)から徐々に低下させたときの粘度を測定して得られる温度−粘度曲線が急激に変化する転移点として高分子化合物(A)の感温点を求める。
【0013】
本発明の高分子化合物(A)は、アニオン性、カチオン性、非イオン性、両性の何れであっても良いが、得られる記録紙の表面光沢および印刷時の画質の観点からカチオン性が好ましい。
カチオン性の高分子化合物(A)は例えば、重合に使用する副モノマー(N)として、カチオン基を持つエチレン性不飽和モノマーを含めることによって得ることができる。該カチオン基を持つエチレン性不飽和モノマーは各々1種または2種以上のものを組み合わせて用いることも出来る。
【0014】
カチオン基を持つエチレン性不飽和モノマーとしては、例えば、ビニロキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド、2,3−ジメチル−1−ビニルイミダゾリニウムクロライド、トリメチル−(3−(メタ)アクリルアミド−3,3−ジメチルプロピル)アンモニウムクロライド、トリメチル−(3−メタクリルアミドプロピル)アンモニウムクロライド、トリメチル−(3−アクリルアミドプロピル)アンモニウムクロライド、N−(1,1−ジメチル−3−ジメチルアミノプロピル)(メタ)アクリルアミドおよびその4級アンモニウム塩、トリメチル−(3−(メタ)アクリルアミド)アンモニウムクロライド、1−ビニル−2−メチル−イミダゾール、1−ビニル−2−エチル−イミダゾール、1−ビニル−2−フェニル−イミダゾール、1−ビニル−2、4,5−トリメチル−イミダゾール、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレートおよびその4級アンモニウム塩、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートおよびその4級アンモニウム塩、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレートおよびその4級アンモニウム塩、t−ブチルアミノエチル(メタ)アクリレートおよびその4級アンモニウム塩、N−(3−ジメチルアミノプロピル)メタクリルアミドおよびその4級アンモニウム塩、N−(3−ジメチルアミノプロピル)アクリルアミドおよびその4級アンモニウム塩、N−(3−ジエチルアミノプロピル)メタクリルアミドおよびその4級アンモニウム塩、N−(3−ジエチルアミノプロピル)アクリルアミドおよびその4級アンモニウム塩、o−,m−,p−アミノスチレンおよびその4級アンモニウム塩、o−,m−,p−ビニルベンジルアミンおよびその4級アンモニウム塩、N−(ビニルベンジル)ピロリドン、N−(ビニルベンジル)ピペリジン、N−ビニルイミダゾールおよびその4級アンモニウム塩、2−メチル−1−ビニルイミダゾールおよびその4級アンモニウム塩、N−ビニルピロリドンおよびその4級アンモニウム塩、N,N’−ジビニルエチレン尿素およびその4級アンモニウム塩、α−,またはβ−ビニルピリジンおよびその4級アンモニウム塩、α−,またはβ−ビニルピペリジンおよびその4級アンモニウム塩、2−,または4−ビニルキノリンおよびその4級アンモニウム塩等が例示される。特に、得られる記録紙の表面光沢の観点から、例えばN,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、t−ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N−(3−ジメチルアミノプロピル)メタクリルアミド、N−(3−ジメチルアミノプロピル)アクリルアミド、N−(3−ジエチルアミノプロピル)メタクリルアミド、N−(3−ジエチルアミノプロピル)アクリルアミドが好ましく用いられる。
【0015】
主モノマー(M)と前記カチオン基を持つエチレン性不飽和モノマーを含む副モノマー(N)の共重合割合は、得られる共重合高分子化合物が感温点を境にして親水性と疎水性が可逆的に変化する温度応答性を呈する範囲の中で決められる。
本発明に用いる、高分子化合物(A)中のカチオン基を持つエチレン性不飽和モノマー単位の含有率は、用いるモノマーの種類や組み合わせによって好ましい範囲が異なるが、概して、塗工液調整の容易さの観点から0.01質量%以上が好ましく、成膜性の観点から50質量%以下が好ましい。更に好ましくは0.1〜30質量%である。
得られる塗工層の耐擦過性、印刷して得られる画像の発色性等の観点から高分子化合物(A)がカルボキシル基を有することは好ましく、該カルボキシル基を有する高分子化合物(A)は例えば、重合に使用する副モノマー(N)として、カルボン酸基を持つエチレン性不飽和モノマーを含めることによって得ることができる。該カルボン酸基を持つエチレン性不飽和モノマーは各々1種または2種以上のものを組み合わせて用いることも出来る。
【0016】
カルボン酸基を持つエチレン性不飽和モノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、フマル酸、マレイン酸、クロトン酸、ブテントリカルボン酸、マレイン酸モノエチル、マレイン酸モノメチル、イタコン酸モノエチル、イタコン酸モノメチル等のカルボン酸基含有モノマーなどが好ましい例として挙げられ、特にアクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、フマル酸、マレイン酸を用いることはより好ましい。
主モノマー(M)と前記カルボン酸基を持つエチレン性不飽和モノマーを含む副モノマー(N)の共重合割合は、得られる共重合高分子化合物が感温点を境にして親水性と疎水性が可逆的に変化する温度応答性を呈する範囲の中で決められる。
【0017】
本発明に用いる、高分子化合物(A)中のカルボン酸基を持つエチレン性不飽和モノマー単位の含有率は、用いるモノマーの種類や組み合わせによって好ましい範囲が異なるが、概して、塗工液調整の容易さの観点から0.01質量%以上が好ましく、成膜性の観点から30質量%以下が好ましい。更に好ましくは0.1〜10質量%である。
本発明に用いる、高分子化合物(A)のガラス転移点は、成膜性および得られる記録媒体の柔軟性などの観点から−50〜150℃が好ましく、キャスト仕上げ時の生産性の観点から80〜150℃が好ましい。ただし、得られるインクジェット用記録媒体の柔軟性とインク吸収層の透明性を重視する場合には−50〜30℃が好ましい。
【0018】
本発明に用いる高分子エマルジョンは、高分子化合物(A)の温度変化による親水性−疎水性の変化の影響によって急激に粘度変化を生じる感温点を有する。即ち、該感温点を超える温度領域において、高分子化合物(A)を含む高分子エマルジョンは水系溶媒中において安定なエマルジョンを形成し、該高分子エマルジョンを含有する塗工液は比較的低い粘度を保つことができるが、該感温点以下の温度領域では高分子化合物(A)が親水性を示すために、前記高分子エマルジョンが膨潤あるいは一部溶解し、前述の塗工液粘度が高くなり、あるいは経時的に該粘度が増加する。塗工液粘度が、例えば、20〜300mPa・s程度の比較的低粘度であれば、均質な高い表面光沢をもつ記録紙を容易に製造することができる。よって、本発明の塗工液は、本発明の高分子化合物(A)の感温点以上の温度に保たれていることが好ましい。
【0019】
高分子化合物(A)を製造するに際しては、高分子化合物(A)の感温点を超える温度領域において水性溶媒中で重合反応を行うことが好ましい。該温度領域において高分子化合物(A)は疎水性を示しエマルジョンを形成することから、該温度領域において、広く知られている高分子エマルジョンの製造技術を用いることができる。具体的には、水に界面活性剤を溶解し、前記主モノマー(M)、副モノマー(N)等共重合モノマー成分を加えて乳化させ、ラジカル重合開始剤を加えて一括仕込みによる反応により乳化重合を行う方法のほか、連続滴下、分割添加などの方法により反応系に上記共重合成分や、ラジカル重合開始剤を供給する方法が挙げられる。
本発明に用いる高分子化合物(A)エマルジョンを製造するにおいては、界面活性剤を利用することが好ましい。
【0020】
本発明に用いる高分子化合物(A)エマルジョンは、アニオン性、カチオン性、非イオン性、両性の何れであっても良いが、前述のように得られる記録紙の表面光沢および印刷時の画質の観点からカチオン性が好ましい。
高分子化合物(A)エマルジョンがカチオン性の場合には、カチオン性界面活性剤および/または非イオン性界面活性剤を使用する。例えば、カチオン性界面活性剤としては、ラウリルアミン塩酸塩、アルキルベンジルジメチルアンモニウムクロライド、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、アルキルアンモニウムヒドロキシド、ポリオキシエチレンアルキルアミン等が挙げられ、非イオン性界面活性剤としては、例えばポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、オキシエチレンオキシプロピレンプロックコポリマー、ポリグリセリン脂肪酸エステル等が挙げられる。
【0021】
また高分子化合物(A)エマルジョンがアニオン性の場合には、アニオン性界面活性剤および/または非イオン性界面活性剤を使用する。例えば、脂肪酸石鹸、アルキルスルホン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩、ポリオキシエチレンアルキル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルアリール硫酸塩、p−スチレンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸塩、ホルマリン重縮合物、高級脂肪酸とアミノ酸の縮合物、ジアルキルスルホコハク酸エステル塩、ナフテン酸塩等、アルキルエーテルカルボン酸塩、アシル化ペプチド、α−オレフィンスルホン酸塩、N−アシルメチルタウリン、アルキルエーテル硫酸塩、第二級高級アルコールエトキシサルフェート、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩、モノグリサルフェート、アルキルエーテル燐酸エステル塩、アルキル燐酸エステル塩等のアニオン性界面活性剤が挙げられる。
非イオン性界面活性剤としては、例えばポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、オキシエチレンオキシプロピレンプロックコポリマー、ポリグリセリン脂肪酸エステル等が挙げられる。
【0022】
高分子化合物(A)エマルジョンが非イオン性である場合には、非イオン性界面活性剤を使用する。非イオン性界面活性剤としては、例えばポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、オキシエチレンオキシプロピレンブロックコポリマー、ポリグリセリン脂肪酸エステル等が挙げられる。
高分子化合物(A)エマルジョンが両性の場合には、両性界面活性剤を使用することが高分子化合物(A)エマルジョンのpHの変化に対する安定性の観点から好ましいが、本発明の塗工液中で該高分子化合物(A)エマルジョンがカチオン性を示す場合にはカチオン性界面活性剤を使用する事ができ、本発明の塗工液中で該高分子化合物(A)エマルジョンがアニオン性を示す場合にはアニオン性界面活性剤を使用する事ができる。
【0023】
両性界面活性剤としては、例えばカルボキシベタイン型、アミノカルボン酸塩、レシチン等が挙げられる。
これらの界面活性剤の使用量としては、高分子化合物(A)エマルジョンの樹脂固形分100質量部に対して0.05〜50質量部であることが好ましく、さらに好ましくは1〜30質量部である。
本発明においては、前記界面活性剤を1種単独で使用することもできるし、またその2種以上を併用することもできる。
本発明に用いる高分子化合物(A)エマルジョン粒子の平均粒子径は、塗工層の成膜性と高分子化合物(A)エマルジョンの製造効率などの観点から、10〜600nmのものが好ましく、さらに好ましくは10〜300nm、最も好ましくは20〜100nmである。ここで言う平均粒子径とは、高分子化合物(A)が疎水性を示す温度領域において動的光散乱法により測定される高分子化合物(A)エマルジョンの数平均粒子径である。
【0024】
本発明において塗工液に親水性有機高分子化合物を含有することは得られる記録媒体の光沢の観点から好ましい。該親水性有機高分子化合物としては、例えばゼラチンまたはゼラチン誘導体、ポリビニルピロリドン、プルラン、ポリビニルアルコールまたはその誘導体、ポリエチレングリコール、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、デキストラン、デキストリン、ポリアクリル酸およびその塩、寒天、κ−カラギーナン、λ−カラギーナン、ι−カラギーナン、キサンテンガム、ローカストビーンガム、アルギン酸、アラビアゴム、プルラン、例えば特開平7−195826号公報および同7−9757号公報に記載のポリアルキレンオキサイド系共重合性ポリマー、水溶性ポリビニルブチラール、あるいは、例えば特開昭62−245260号公報に記載のカルボキシル基やスルホン酸基を有するビニルモノマーの単独またはこれらのビニルモノマーを繰り返して有する共重合体等のポリマーを挙げることができる。これらの親水性有機高分子化合物は単独で使用しても良く、2種以上を併用しても良い。
【0025】
好ましい親水性有機高分子化合物は、ポリビニルアルコールまたはその誘導体、ゼラチンまたはゼラチン誘導体であり、特に好ましくはポリビニルアルコールである。
本発明において好ましく用いられるポリビニルアルコールは平均重合度が300〜4000のものであり、特に平均重合度が1000以上のものが塗工時の増粘性が良好であることや、得られる塗工層の膜強度が良好であることなどからより好ましい。また、ポリビニルアルコールのケン化度は70〜100%のものが好ましく、80〜100%のものが特に好ましい。
前記親水性有機高分子化合物を用いる場合、親水性有機高分子化合物とアルミナ水和物の比率は、親水性有機高分子化合物添加効果発現および得られる記録媒体の表面光沢性の観点から、乾燥質量比で1:100〜30:100であり、好ましくは3:100〜10:100の範囲である。
本発明において、記録媒体表面の耐擦過性および記録媒体の耐水性の観点から、前記親水性有機高分子化合物が硬膜剤により硬膜されていることが好ましい。
【0026】
硬膜剤は、一般的には前記親水性有機高分子化合物と反応し得る官能基を有する化合物あるいは親水性有機高分子化合物が有する官能基同士の反応を促進するような化合物であり、親水性有機高分子化合物の種類に応じて適宜選択して用いられる。
硬膜剤の具体例としては、例えば、エポキシ系硬膜剤(ジグリシジルエチルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ジグリシジルシクロヘキサン、N,N−ジグリシジル−4−グリシジルオキシアニリン、ソルビトールポリグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル等)、アルデヒド系硬膜剤(ホルムアルデヒド、グリオキザール等)、活性ハロゲン系硬膜剤(2,4−ジクロロ−4−ヒドロキシ−1,3,5−s−トリアジン等)、活性ビニル系化合物(1,3,5−トリスアクリロイル−ヘキサヒドロ−s−トリアジン、ビスビニルスルホニルメチルエーテル等)、ホウ酸およびその塩、ホウ砂、アルミ明礬等が挙げられる。
特に好ましい親水性有機高分子化合物としてポリビニルアルコールを使用する場合には、塗工層の塗膜強度の観点から、ホウ酸およびその塩および/またはエポキシ系硬膜剤から選ばれる少なくとも1種の硬膜剤を使用するのが好ましく、塗工直後の塗工液増粘性(ゲル化)の観点も加味すればホウ酸および/またはホウ砂がもっとも好ましい。
上記硬膜剤の使用量は親水性有機高分子化合物の種類、硬膜剤の種類等により変化するが、概ね親水性有機高分子化合物1g当たり1〜200mg,好ましくは5〜100mgである。
【0027】
上記親水性有機高分子化合物としてゼラチンを用いる場合には、ゼラチンの硬膜剤として知られている下記化合物を用いることができる。例えば、ホルムアルデヒド、グリオキザール、グルタールアルデヒド等のアルデヒド系化合物、ジアセチル、シクロペンタンジオン等のケトン系化合物、ビス(2−クロロエチル尿素)−2−ヒドロキシ−4,6−ジクロロ−1,3,5−トリアジン、2,4−ジクロロ−6−S−トリアジン・ナトリウム塩等の活性ハロゲン化合物、ジビニルスルホン酸、1,3−ビニルスルホニル−2−プロパノール、N,N’−エチレンビス(ビニルスルホニルアセタミド)、1,3,5−トリアクリロイル−ヘキサヒドロ−S−トリアジン等の活性ビニル化合物、ジメチロール尿素、メチロールジメチルヒダントイン等のN−メチロール化合物、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート等のイソシアネート系化合物、例えば米国特許第3017280号明細書、同第2983611号明細書等に記載のアジリジン系化合物、例えば米国特許第3100704号明細書等に記載のカルボキシイミド系化合物、グリセロールトリグリシジルエーテル等のエポキシ系化合物、1,6−ヘキサメチレン−N,N’−ビスエチレン尿素等のエチレンイミノ系化合物、ムコクロル酸、ムコフェノキシクロル酸等のハロゲン化カルボキシアルデヒド系化合物、2,3−ジヒドロキシジオキサン等のジオキサン系化合物、クロム明ばん、カリ明ばん、硫酸ジルコニウム、酢酸クロム等である。尚、上記硬膜剤は、一種単独でも、2種以上を組み合わせてもよい。
【0028】
上記硬膜剤は、硬膜剤を水および/または有機溶剤に溶解して使用することが塗工液の調整のしやすさ、安定性などの観点から好ましい。硬膜剤溶液中の硬膜剤の濃度としては、硬膜剤溶液の全質量に対して、0.05〜20質量%が好ましく、1〜10質量%が特に好ましい。硬膜剤溶液を構成する溶媒としては、一般に水が使用され、該水と混和性を有する有機溶媒を含む水系混合溶媒であってもよい。上記有機溶剤としては、硬膜剤が溶解するものであれば任意に使用することができ、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、グリセリン等のアルコール;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン;酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル;トルエン等の芳香族溶剤;テトラヒドロフラン等のエーテル、およびジクロロメタン等のハロゲン化炭素系溶剤等を挙げることができる。
【0029】
高分子化合物(A)を架橋し得る架橋剤を塗工液に含有させることは得られる記録媒体の耐擦過性の観点から好ましい。
特に、塗工前の塗工液中では架橋反応は進行せず、塗工後架橋反応が進行することが工業的に望ましい。該反応としてカルボニル基とヒドラジン基またはセミカルバジド基との反応が好ましい。即ち、カルボニル基をもつ高分子化合物(A)を重合し、ヒドラジン基および/またはセミカルバジド基を有するヒドラジン誘導体を架橋剤として用いることが好ましい。
カルボニル基を含有する高分子化合物(A)は例えば、主モノマー(M)と、カルボニル基を含有するモノマーを含む副モノマー(N)とを共重合させて得られる。主モノマー(M)、カルボニル基を含有するモノマーを含む副モノマー(N)は各々1種または2種以上のものを組み合わせて用いることも出来る。主モノマー(M)とカルボニル基含有モノマーを含む副モノマー(N)との共重合割合は、得られる共重合高分子化合物が感温点を境にして親水性と疎水性が可逆的に変化する温度応答性を呈する範囲の中で決められる。
【0030】
高分子化合物(A)中のカルボニル基含有モノマー単位の含有率は、成膜性の観点から0.01〜50質量%が好ましく、更に好ましくは0.1〜20質量%である。
カルボニル基含有モノマーとしては、モノマー中にケト基またはアルド基を含む構造を有するものであれば特に制限されないが、例えばアクロレイン、ダイアセトンアクリルアミド、ダイアセトンメタクリルアミド、ホルミルスチロール、ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルイソブチルケトン、アクリルオキシアルキルプロパナール類、メタクリルオキシアルキルプロパナール類、ダイアセトンアクリレート、ダイアセトンメタクリレート、アセトニトリルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレートアセチルアセテート、ブタンジオールアクリレートアセチルアセテート等が例示される。
【0031】
高分子化合物(A)がカルボニル基を含有する場合、塗工液に、架橋剤として少なくとも2個のヒドラジン基および/またはセミカルバジド基を有するヒドラジン誘導体を用いることが、得られる記録媒体の耐水性や強度などの観点から好ましい。該ヒドラジン誘導体を、高分子化合物(A)を含有する塗工液に添加、混合し、塗布、乾燥することによりカルボニル基部位がヒドラジン誘導体によって架橋された分子構造を持つ化合物を含有する塗工層を得ることができる。ヒドラジン誘導体としては少なくとも2個のヒドラジン基および/またはセミカルバジド基を有する化合物が用いられ、これらの内、ヒドラジン基を有する化合物としては、例えばカルボヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、こはく酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、マレイン酸ジヒドラジド、フマル酸ジヒドラジド、イタコン酸ジヒドラジド、ポリアクリル酸ヒドラジド、エチレン−1,2−ジヒドラジン、プロピレン−1,3−ジヒドラジン、ブチレン−1,4−ジヒドラジン、水加ヒドラジンなどが例示され、セミカルバジド基を有する化合物としては、例えばポリイソシアネート化合物と該ヒドラジン化合物の反応により得られる生成物が例示される。該ヒドラジン誘導体としては、セミカルバジド基を有する化合物が、得られる記録媒体の耐水性が高く好ましい。該ヒドラジン誘導体の含有量は、得られた高分子化合物(A)中のカルボニル基含有モノマー単位に対して0.01〜10倍モル量が好ましく用いられる。
【0032】
本発明の塗工液にアルミナ水和物を含有させることは、得られる記録媒体の表面光沢の観点およびインク吸収性の観点から好ましい。
アルミナ水和物としては、得られる記録媒体の表面光沢の観点およびインク吸収性の観点から擬ベーマイトが好ましい。ここで、擬ベーマイトは、Al2 3 ・nH2 O(n=1〜1.5)の組成式で表されるアルミナ水和物の微粒子であり、例えば、触媒化成工業(株)から市販されている「カタロイドAS−3」(商品名)が挙げられる。
アルミナ水和物:(高分子化合物(A)および前記親水性有機高分子化合物)の比率は、得られる記録媒体の表面の耐擦性の観点および得られる記録媒体にインクジェットプリンターを用いて印刷を行う際のインク吸収性の観点から、乾燥質量比で100:5〜100:60が好ましく、さらに好ましくは100:10〜100:40である。ただし、本発明において親水性有機高分子化合物は必須成分ではない。
【0033】
本発明に用いるアルミナ水和物は、一次粒子のまま用いてもよいし、二次粒子を形成した状態で用いることもできる。また、高光沢表面を持つ記録媒体を得るため、数平均粒子径が500nm以下のアルミナ水和物が好ましく用いられ、より好ましくは100nm以下のものが用いられ、さらに好ましくは50nm以下のものが用いられる。
アルミナ水和物の粒子径の下限は、アルミナ水和物の製造効率の観点からおよそ3nm以上の数平均粒子径であることが望ましい。ここで言う数平均粒子径とは、動的光散乱法により測定される数平均粒子径である。
本発明に用いる塗工液に使用する溶剤はアルコール、ケトン、エステル等の水溶性溶剤および/または水が好ましく使用される。更に、該塗工液中には必要に応じて顔料分散剤、増粘剤、流動調整剤、消泡剤、抑泡剤、離型剤、発泡剤、着色剤等を配合することができる。
【0034】
本発明において用いられる支持体としては、透気性を有するものであれば透明であっても不透明であっても良い。本発明においては、例えば上質紙、印画紙原紙、画用紙、画彩紙、アート紙、コート紙、キャスト紙、クラフト紙等の紙類や、不織布などが適宜用途に応じて使用することができる。記録紙生産性の点から、JIS−P−8117に準拠して測定した支持体の透気度は、好ましくは1,000秒/100ml以下であり、更に好ましくは500秒/100ml以下である。また、該透気度が低過ぎれば得られる記録媒体の実使用において容易に破損することが考えられることから、5秒/100ml以上が好ましい。
【0035】
本発明による製造装置は、本発明の塗工液を、支持体上に塗工させる手段と、塗工層が湿潤状態において該塗工層を加熱された鏡面仕上げの固体表面に圧着し、塗工層表面に光沢を付与する手段を含む製造装置であることが好ましい。さらに、塗工液を塗工後でキャスト仕上げ前に、速やかに塗工層を感温点以下の温度まで冷却する手段を該製造装置に含むことは、得られる記録媒体の表面光沢、マイクロクラック抑制の観点から好ましい。
支持体上に塗工させる手段としては各種ブレードコーター、ロールコーター、エアナイフコーター、バーコーター、ロッドブレードコーター、カーテンフローコーター、ゲートロールコーター、ショートドウェルコーター、エクストルージョンダイコーター、サイズプレス、スプレーなどの各種装置をオンマシンまたはオフマシンで用いることができる。
【0036】
支持体上に複数の塗工層を形成させる場合において、同時多層塗工を行うことは可能である。同時多層塗工は、例えば、エクストルージョンダイコーター、カーテンフローコーターを用いた塗工方法により行うことができる。複数の塗工層が混合ないし合一することを避ける目的ではエクストルージョンダイコーターがより好ましい。エクストルージョンダイコーターを用いる場合、同時に吐出される複数の塗布液は、エクストルージョンダイコーターの吐出口附近、即ち、支持体上に移る直前に積層形成され、その状態で支持体上に多層塗工される。該同時多層塗工を行う際、複数の塗工液の混合を回避するために、バリアー層液(中間層液)を塗工層と塗工層の間に介在させて同時塗工することもできる。該バリアー層液は、上下の塗工層と混合しにくいものであれば用いることができるが、チキソトロピー性を有する液体が好ましく用いられる。好ましく用いられる液体としては、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ゼラチン等のポリマーの水溶液が挙げられる。
また、原紙の厚さに関しては、紙を抄造中または抄造後カレンダー等にて圧力を印加して圧縮するなどした表面平滑性の良いものが好ましく、その坪量は30〜450g/m2 が好ましい。
【0037】
塗工層が湿潤状態において該塗工層を加熱された鏡面仕上げの固体表面に圧着し、塗工層表面に光沢を付与する方法は、一般にキャスト法と呼ばれており、キャスト法には大別して、ウェットキャスト法(直接法)、ゲル化キャスト法(凝固法)、リウェットキャスト法(再湿潤法)がある。直接法とは、塗工液を塗設後、未乾燥の状態(湿潤状態)で加熱された鏡面仕上げの固体表面に圧着し乾燥する方法であり、凝固法とは塗工層組成物を酸溶液、アルカリ溶液等により凝固させ、加熱された鏡面仕上げの固体表面に圧着する方法である。尚、凝固法には、赤外線を該組成物に照射して表面を凝固させる熱凝固法も含まれる。再湿潤法とは、塗工液を塗設乾燥後、水を主体とする液にて該塗工層組成物を再湿潤させ、加熱された鏡面仕上げの固体表面に圧着し乾燥する方法である。本発明では、必要に応じていずれのキャスト法を用いてもよいが、得られる塗工層内部の均質性およびインク吸収性の面内均質性などの観点から直接法あるいは再湿潤法が好ましく、生産性の観点も合わせれば直接法がもっとも好ましい。
【0038】
本発明において、キャスト仕上げにより塗工層表面に高い光沢を与える場合、微小クラックのない、あるいは微小クラックの極めて少ない、高い解像度の画像を与えることができるインクジェット記録媒体を製造できる。
塗工層が湿潤状態において該塗工層を加熱された鏡面仕上げの固体表面に圧着する手段における、鏡面仕上げされた固体の材質としては、例えばステンレス鋼等の金属、ガラス、ポリアクリル、ポリエチレンテレフタレート、シリコーン樹脂、フッ素樹脂等が挙げられるが、ステンレス鋼等の金属が表面の平滑性の観点で現状最も優れており好ましく用いられ、好ましい形状は円筒形、平面等であるが、円筒形が最も好ましく用いられる。
塗工層を乾燥させる手段として、熱風乾燥機、蒸気加熱乾燥機、遠赤外線乾燥機等の公知の乾燥手段を用いることができる。熱風乾燥機が好ましく用いられ、ドラムドライヤー、エアキャップドライヤー、エアホイルドライヤー、エアコンベアドライヤーおよびこれらの組み合わせが挙げられる。乾燥温度はドライヤーの種類によって様々に変化するが、ドライヤー内部の温度は50〜200℃、好ましくは90〜150℃である。
本発明の塗工液は、固形分濃度を5〜65質量%程度に調整し、支持体上あるいは後述の下塗り層上に乾燥重量で3〜40g/m2 、好ましくは8〜25g/m2 となるように前述の塗工方法により塗工を行う。
前述の塗工層を冷却する手段としては、送風機、冷風機などによる送風冷却が好ましい。
【0039】
本発明において下塗り層を設けることは、得られる記録媒体の表面光沢やインク吸収性の観点から好ましい。下塗り層とは後述の微粒子(C)および微粒子(C)を接着するための接着剤を含有する塗工液を、固形分濃度が5〜65質量%程度になるように調整し、前述の支持体上に乾燥重量で1〜30g/m2 、好ましくは2〜20g/m2 となるようにブレードコーター、エアナイフコーター、ロールコーター、ブラシコーター、チャンプレックスコーター、バーコーター、グラビアコーター等の各種公知公用の塗工装置により塗工、乾燥することによって得られる。さらに、必要に応じて記録層の乾燥後にスーパーキャレンダー、ブラシ掛け等の平滑化処理を施すこともできる。該接着剤としてカゼイン、大豆蛋白、合成蛋白等の蛋白質類、澱粉や酸化澱粉等の各種澱粉類、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロースやメチルセルロース等のセルロース誘導体、スチレン−ブタジエン共重合体、メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体の共役ジエン系重合体ラテックス、アクリル系重合体ラテックス、エチレン−酢酸ビニル共重合体等のビニル系重合体ラテックス等一般に塗被紙用として用いられている従来公知の接着剤、本発明の高分子エマルジョンを1種類あるいは2種類以上組み合わせて用いることができる。その際の微粒子(C):接着剤の比率は乾燥質量比で100:5〜100:100が好ましく、さらに好ましくは100:10〜100:40である。
【0040】
微粒子(C)としては、たとえば軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、カオリン、クレー、タルク、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、水酸化亜鉛、硫化亜鉛、炭酸亜鉛、ハイドロタルサイト、珪酸アルミニウム、珪藻土、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、合成非晶質シリカ、コロイダルシリカ、乾式シリカ、アルミナ、コロイダルアルミナ、擬ベーマイト系アルミナ、水酸化アルミニウム、ゼオライト、水酸化マグネシウム、その他にジルコニウム、チタン、タンタル、ニオブ、スズ、タングステンなどの金属酸化物、アルミニウム、バナジウム、ジルコニウム、タングステンなどの金属リン酸塩などが挙げられ、得られる記録媒体の表面光沢やインク吸収性の観点から合成非晶質シリカ、コロイダルシリカ、乾式シリカ、アルミナ、コロイダルアルミナ、擬ベーマイト系アルミナの使用が好ましい。該微粒子(C)の一部を他の元素に置換した物や、有機物で修飾することにより表面を改質した物も用いることができる。これら微粒子(C)のうち1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を使用することもできる。
また、下塗り層に前述のカチオン性ポリマー(D)を含有することは好ましい。カチオン性ポリマー(D)を含有することにより印字部の耐水性が向上する。カチオン性ポリマー(D)の含有量は、上述の添加効果の発現と下塗り層自体の耐水性やインク吸収性の観点から、下塗り層中の微粒子(C)100質量部に対して1〜30質量部が好ましく、更に好ましくは3〜20質量部である。
本発明における支持体には帯電防止性、搬送性、カール防止性などのために、各種のバックコート層を塗設することができる。バックコート層には無機帯電防止剤、有機帯電防止剤、ラテックス、硬化剤、顔料、界面活性剤などを適宜組み合わせて含有せしめることができる。
【実施例】
【0041】
以下、本発明を実施例に基づいて説明する。
以下の実施例及び比較例において、「部」および「%」は、「質量部」および「質量%」を表わす。
動的光散乱法による数平均粒子径は大塚電子(株)製ELS−800を用い測定した。高分子エマルジョンの粒子径を測定する場合においては、感温点以上の温度で測定した。
本発明に用いる高分子化合物(A)エマルジョンの感温点は、重合温度以上の温度を保ちながら水溶媒にて高分子化合物(A)の濃度を5質量%に調整した高分子エマルジョン温度を、徐々に低下さてエマルジョンの粘度測定を行い、温度−粘度曲線が急激に変化する転移点を高分子化合物(A)エマルジョンの感温点として求めた。
印刷時の画像解像性は、染料インクを使用した市販インクジェットプリンター(セイコー・エプソン製PM−G800)を用い官能的に評価した。その評価結果は10段階評価で行い、極めて良好な結果を10、良好な結果を8、やや良好な結果を6、やや劣る結果を4、劣る結果を2、極めて劣る結果を1とした。
【0042】
記録媒体表面のマイクロクラックは、デジタルマイクロスコープ(スカラー製DG−2)を用い、200倍レンズを使用し10箇所程度観察し10段階評価を行い、マイクロクラックが殆どない極めて良好な結果を10、良好な結果を8、やや良好な結果を6、やや劣る結果を4、劣る結果を2、極めて劣る結果を1とした。
記録媒体表面の光沢は、蛍光灯の映り込みを見て官能的に評価した。その評価結果は10段階評価を行い、極めて良好な結果を10、良好な結果を8、やや良好な結果を6、やや劣る結果を4、劣る結果を2、極めて劣る結果を1とした。 記録媒体表面の耐擦過性は、平滑な台上に固定した記録媒体表面上に、荷重が50g/cm2 となるようにおもりを乗せた普通紙(ライオン事務器製CS−HP)を乗せ、この普通紙を50往復させて擦った後の記録媒体表面の傷を、蛍光灯の映り込みを見て官能的に評価した。その評価結果は10段階評価を行い、極めて良好な結果を10、良好な結果を8、やや良好な結果を6、やや劣る結果を4、劣る結果を2、極めて劣る結果を1とした。
【0043】
(調製例1)
攪拌器、還流冷却器、滴下槽および温度計を取りつけた反応容器に、水360部を投入し反応容器内を80℃にした。次に「コータミン86W」(花王(株)製、カチオン性界面活性剤:商品名)の25%水溶液25部、「エマルゲン1135S−70」(花王(株)製、非イオン性界面活性剤:商品名)の70%水溶液7.5部およびN−(3−ジメチルアミノプロピル)アクリルアミドのメタンスルホン酸中和物の70%水溶液4部を該反応器内に添加した。さらに該反応器内に2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)ニ塩基酸塩の5%水溶液8部を投入し、その5分後に、メタクリル酸メチル9部、アクリル酸ブチル9部、スチレン9部、ダイアセトンアクリルアミド2部および2−ヒドロキシメタクリル酸エチル2部を混合した液を該反応器内に30分かけて連続的に添加した。添加は反応容器内を80℃に保ちながら行った。この段階でのエマルジョンの数平均粒子径は11nmであった。引き続き、水1254部にN−イソプロピルアクリルアミド290部、ダイアセトンアクリルアミド10部、メチレンビスアクリルアミド0.5部、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド塩化メチル4級塩の70%水溶液5部、「コータミン86W」の25%水溶液10部、「ブレンマーQA」(日本油脂(株)製、カチオン性反応型界面活性剤:商品名)の25%水溶液15部および2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)ニ塩基酸塩の5%水溶液11部を溶解した液を該反応容器内に添加開始し、5時間かけて添加を終了させた。添加中および添加終了後1時間、反応容器内液温を80℃に保った後、50℃まで冷却し、エタノールの60%水溶液1000部を徐々に該反応容器内に添加した。エタノール水溶液の添加終了後室温まで冷却することによって樹脂固形分11%、数平均粒子径が100nmの高分子エマルジョン1を得た。その感温点を測定したところ30℃であった。
【0044】
(調製例2)
攪拌器、還流冷却器、滴下槽及び温度計を取りつけた反応容器に、水360部を投入し反応容器内を80℃にした。次に「コータミン86W」(花王(株)製、カチオン性界面活性剤:商品名)の25%水溶液25部、「エマルゲン1135S−70」(花王(株)製、非イオン性界面活性剤:商品名)の70%水溶液7.5部及びN−(3−ジメチルアミノプロピル)アクリルアミドのメタンスルホン酸中和物の70%水溶液4部を該反応器内に添加した。さらに該反応器内に2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)ニ塩基酸塩の5%水溶液8部を投入し、その5分後に、メタクリル酸メチル9部、アクリル酸ブチル9部、スチレン9部、ダイアセトンアクリルアミド2部及び2−ヒドロキシメタクリル酸エチル2部を混合した液を該反応器内に30分かけて連続的に添加した。添加は反応容器内を80℃に保ちながら行った。この段階でのエマルジョンの数平均粒子径は11nmであった。引き続き、水1254部にN−イソプロピルアクリルアミド220部、ダイアセトンアクリルアミド10部、メチレンビスアクリルアミド0.5部、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド塩化メチル4級塩の70%水溶液5部、「コータミン86W」の25%水溶液10部、「ブレンマーQA」(日本油脂(株)製、カチオン性反応型界面活性剤:商品名)の25%水溶液15部及び2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)ニ塩基酸塩の5%水溶液11部を溶解した液とメタクリル酸メチル70部とを各々該反応容器内に添加開始し、4時間かけて添加を終了させた。添加中及び添加終了後1時間、反応容器内液温を80℃に保った後、50℃まで冷却し、エタノールの60%水溶液1000部を徐々に該反応容器内に添加した。エタノール水溶液の添加終了後室温まで冷却することによって樹脂固形分11%、数平均粒子径が80nmの高分子エマルジョン2を得た。その感温点を測定したところ19℃であった。
【0045】
(調製例3)
攪拌機、還流冷却器、滴下槽及び温度計を取りつけた反応容器に、水600部及び「コータミン86W」の28%水溶液40部、N−(3−ジメチルアミノプロピル)アクリルアミドのメタンスルホン酸中和物の70%水溶液6部を投入し、反応容器内を80℃とした。次に、ダイアセトンアクリルアミド4部、スチレン128部、メタクリル酸メチル80部、メタクリル酸ブチル66部を混合した添加液(1)と、水100部に「コータミン86W」の28%水溶液9部、「エマルゲン1135S−70」の70%水溶液1部、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)ニ塩基酸塩の5%水溶液45部、アミノエチルメタクリレート塩化メチル4級塩の70%水溶液6部を溶解した添加液(2)とを各々滴下槽より反応容器中へ4時間かけて添加した。添加中及び添加が終了してからさらに1時間、反応容器中の温度を80℃に保った後、室温まで冷却した。樹脂固形分30%、数平均粒子径40nmの高分子エマルジョン3を得た。その感温点の測定を試みたが、感温点と判断される変化は生じなかった。
【0046】
(調製例4)
ヘキサメチレンジイソシアネート168部、ビュレット化剤としての水1.5部を、エチレングリコールメチルエーテルアセテートとリン酸トリメチルの1:1(質量比)の混合溶媒130部に溶解し、反応温度160℃にて1時間反応させた。得られた反応液を薄膜蒸留缶を用いて、1回目は133Pa/160℃の条件下、2回目は13.3Pa/200℃の条件下にて2段階の処理により余剰のヘキサメチレンジイソシアネート、及び溶媒を留去回収し、残留物を得た。得られた残留物は、99.9質量%のポリイソシアネート(ヘキサメチレンジイソシアネートのビュウレット型ポリイソシアネート)及び0.1質量%の残存ヘキサメチレンジイソシアネートを含んでいた。得られた残留物の粘度は1900(±200)mPa.s/25℃、数平均分子量は約600(±100)であり、平均−NCO官能基数は約3.3、−NCO基含有量は23.3質量%であった。
還流冷却器、温度計及び撹拌装置を有する反応器にイソプロピルアルコール1000部にヒドラジン1水和物80部を撹拌しながら約30分かけて室温で添加した後、上記ポリイソシアネート(NCO基含量23.3質量%)144部をテトラヒドロフラン576部に溶解した溶液を10℃にて約1時間かけて添加し、さらに40℃にて3時間撹拌を続け、1000部の水を添加した。続いて得られた反応液中のイソプロピルアルコール、ヒドラジン、テトラヒドロフラン、水等を加熱減圧下に留去することにより168部のビウレット構造を有するポリセミカルバジド化合物(PSC)を得た。平均セミカルバジド残基数を測定したところ、4.6meq/gであった。
【0047】
(調製例5)
合成非晶質シリカ(( 株) トクヤマ製ファインシールX−60:商品名、平均二次粒子径6μm、以下、X−60と記す)100部に、固形分20%となるように水を加え、超音波分散機を使用して分散させた後、シラノール変性ポリビニルアルコール((株)クラレ製R−1130:商品名、以下、R−1130と記す)5%水溶液を、X−60/R−1130=100/20(乾燥質量比)となるよう添加し下塗り用塗工液を作成した。
190g/m2 の原紙((株)ジツタ製こな雪190:商品名)の片面に、前記下塗り用塗工液を、乾燥重量で12g/m2 になるようにバーコーターで塗工、乾燥し、下塗り紙を得た。
【0048】
[実施例1]
50℃に加熱したアルミナ水和物分散液(触媒化成(株)製AS−3:商品名、以下、AS−3と記す)に、調製例1で得られた高分子エマルジョン1を、AS−3/高分子エマルジョン1=100/16(乾燥質量比)となる割合で添加、混合し塗工液1を作成した。
調製例5で得られた下塗り紙上に、上記塗工液1を50℃に加熱したバーコーターで塗工した後、該塗工層が湿潤状態で表面温度が95℃の鏡面ドラムに圧着し、乾燥後、剥離させ、光沢タイプのインクジェット用記録媒体を得た。このときの塗工液1の塗工量は固形分重量で、10g/m2 であった。このインクジェット用記録用紙の評価結果を表1に示した。
【0049】
[実施例2]
実施例1の高分子エマルジョン1の代わりに調製例2で得られた高分子エマルジョン2を用いる以外は実施例1と同様の方法で記録媒体を得た。このときの塗工量は固形分重量で、10g/m2 であった。このインクジェット用記録用紙の評価結果を表1に示した。
[実施例3]
調製例5で得られた下塗り紙上に、実施例1と同様にして得られた塗工液1を50℃に加熱したバーコーターで塗工した後、該塗工層表面に5℃の冷風を15秒間吹きつけた後、該塗工層が湿潤状態で表面温度が95℃の鏡面ドラムに圧着し、乾燥後、剥離させ、光沢タイプのインクジェット用記録媒体を得た。このときの塗工液1の塗工量は固形分重量で、10g/m2 であった。このインクジェット用記録用紙の評価結果を表1に示した。
【0050】
[実施例4]
50℃に加熱したAS−3に、調製例1で得られた高分子エマルジョン1を、AS−3/高分子エマルジョン1=100/16(乾燥質量比)となる割合で添加、混合し、これに調製例4で得られたポリセミカルバジド化合物(PSC)を、PSC/高分子エマルジョン1=3/100(乾燥質量比)となる割合で混合し塗工液2を作成した。
調製例5で得られた下塗り紙上に、50℃に加熱した上記塗工液2を、50℃に加熱したバーコーターで塗工した後、該塗工層表面に5℃の冷風を15秒間吹きつけた後、該塗工層が湿潤状態で表面温度が95℃の鏡面ドラムに圧着し、乾燥後、剥離させ、光沢タイプのインクジェット用記録媒体を得た。このときの塗工液2の塗工量は固形分重量で、10g/m2 であった。このインクジェット用記録用紙の評価結果を表1に示した。
【0051】
[比較例1]
AS−3に、AS−3/ホウ酸/ホウ砂=100/3/0.5(乾燥質量比)となる割合で、ホウ酸およびホウ砂を各々5%溶解した水溶液を加え混合した後、50℃に加熱し、ポリビニルアルコール((株)クラレ製クラレポバールPVA235:商品名、以下、PVA235と記す)5%水溶液を、AS−3/PVA235=100/16(乾燥質量比)となる割合で添加、混合し塗工液3を作成した。
調製例5で得られた下塗り紙上に、上記塗工液3を50℃に加熱したバーコーターで塗工した後、該塗工層表面に5℃の冷風を15秒間吹きつけた後、該塗工層が湿潤状態で表面温度が95℃の鏡面ドラムに圧着し、乾燥後、離型させ、インクジェット用記録媒体を得た。このときの塗工液3の塗工量は固形分重量で、10g/m2 であった。このインクジェット用記録用紙の評価結果を表1に示した。
[比較例2]
実施例1の高分子エマルジョン1の代わりに調製例3で得られた高分子エマルジョン3を用いる以外は実施例1と同様の方法で記録媒体を得た。このときの塗工量は固形分重量で、10g/m2 であった。このインクジェット用記録用紙の評価結果を表1に示した。
【0052】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明をもちいれば、インク吸収性、表面光沢、耐擦過性、画質に優れたインクジェット用記録媒体を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
感温点以下の温度領域では親水性を示し、感温点を超える温度領域では疎水性を示す高分子化合物(A)を含有する高分子エマルジョン及びアルミナ水和物を含有することを特徴とするインクジェット記録媒体製造用塗工液。
【請求項2】
前記アルミナ水和物が擬ベーマイトであることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録媒体製造用塗工液。
【請求項3】
前記高分子化合物(A)がカチオン基を含有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のインクジェット記録媒体製造用塗工液。
【請求項4】
前記高分子化合物(A)がカルボキシル基を含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のインクジェット記録媒体製造用塗工液。
【請求項5】
支持体上に1層以上の塗工層を設けたインクジェット記録媒体の製造方法であって、該塗工層の少なくとも1層の形成方法が、請求項1〜4のいずれか一項に記載の塗工液を、高分子化合物(A)の感温点を超える温度で支持体上に塗工後、キャスト仕上げを行なうことを特徴とする上記インクジェット記録媒体の製造方法。
【請求項6】
支持体上に1層以上の塗工層を設けたインクジェット記録媒体の製造方法であって、該塗工層の少なくとも1層の形成方法が、請求項1〜4のいずれか一項に記載の塗工液を、高分子化合物(A)の感温点を超える温度で支持体上に塗工後、キャスト仕上げ前に、感温点以下の温度まで冷却する工程を含むことを特徴とする請求項5に記載の製造方法。
【請求項7】
支持体上に1層以上の塗工層を設けたインクジェット記録媒体において、該塗工層の少なくとも1層が、請求項5または請求項6に記載の製造方法によって製造されたものであることを特徴とする上記インクジェット記録媒体。