説明

インクジェット記録媒体

【課題】細線描画性と光沢度に優れるインクジェット記録媒体を提供する。
【解決手段】支持体と、前記支持体上に設けられるとともに第1の無機微粒子を含む第1のインク受容層と、前記第1のインク受容層上に接して設けられるとともに第2の無機微粒子を含む第2のインク受容層と、を有するインクジェット記録媒体であって、前記第1のインク受容層の細孔径分布におけるピーク径よりも、前記第2のインク受容層の細孔径分布におけるピーク径の方が小さく、かつ、前記支持体の第1のインク受容層および第2のインク受容層が設けられた面に対して垂直方向の断面における前記第1のインク受容層と第2のインク受容層との境界線の凹凸指数を1.5〜15.0とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、インクジェット記録方法は、多種の記録材料に記録可能なこと、ハード(装置)が比較的安価であること、コンパクトであること、静粛性に優れること等の点から広く利用されている。
それに伴い、インクジェットプリンターの高解像度化も図られ、近年ではいわゆる写真ライクな高画質画像が得られるようになってきている。高画質画像を得るためのインクジェット記録用の記録媒体に求められる特性としては、速乾性(インクの吸収速度)やドット均一性(滲み耐性)、粒状、色濃度、彩度、耐湿性、そのほか種々の性能を満たしていることが必要とされている。
【0003】
上記に関連して、基材上に、下塗層と、1次粒子の平均粒径が3〜40nmであって2次粒子の平均粒径が10〜400nmである非晶質シリカを含むキャスト層と、を設けたインクジェット記録用紙が開示され、光沢性に優れるとされている(例えば、特許文献1参照)。また、上層と下層の2層からなるインク受容層が設けられ、上層のインク受容層に含まれる無機微粒子の比表面積が、下層のインク受容層に含まれる無機微粒子の比表面積よりも小さいインクジェット記録媒体が開示され、インク吸収性に優れるとされている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−306616号公報
【特許文献2】特開2007−98644号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1または特許文献2に記載の発明では、細線描画性や、光沢度が充分とは言い難い場合があった。
本発明は、細線描画性と光沢度に優れるインクジェット記録媒体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するための具体的手段は以下の通りである。
<1> 支持体と、前記支持体上に設けられるとともに第1の無機微粒子を含む第1のインク受容層と、前記第1のインク受容層上に接して設けられるとともに第2の無機微粒子を含む第2のインク受容層と、を有するインクジェット記録媒体であって、前記第1のインク受容層の細孔径分布におけるピーク径よりも、前記第2のインク受容層の細孔径分布におけるピーク径の方が小さく、かつ、前記支持体の第1のインク受容層および第2のインク受容層が設けられた面に対して垂直方向である前記インクジェット記録媒体の断面における前記第1のインク受容層と第2のインク受容層との境界線の凹凸指数が1.5〜15.0であるインクジェット記録媒体。
<2> 前記境界線の凹凸指数は3.0〜10.0である前記<1>に記載のインクジェット記録媒体。
【0007】
<3> 前記第2のインク受容層は、ジエチレングリコール、トリエチレングリコールモノブチルエーテルおよび水を質量比が15/15/70(ジエチレングリコール/トリエチレングリコールモノブチルエーテル/水)となるように混合した液体を用い、J.TAPPI紙パルプ試験方法No.51−87に準じたブリストー法で、接触時間0.05秒で測定される浸透量A(ml/m)の、前記第2のインク受容層の平均膜厚B(μm)に対する比率(A/B)が3.0〜10.0である前記<1>または<2>に記載のインクジェット記録媒体。
【0008】
<4> 前記第2の無機微粒子は、1次粒子の平均粒子径が5nm〜30nmであって2次粒子の体積平均粒子径が0.05μm〜0.20μmである無定形シリカであって、前記第1の無機微粒子は、2次粒子の体積平均粒子径が0.30μm〜8.0μmである無定形シリカ、および、コロイダルシリカから選ばれる少なくとも一方である前記<1>〜<3>のいずれか1項に記載のインクジェット記録媒体。
<5> 前記第1のインク受容層および第2のインク受容層は、それぞれ水溶性樹脂を更に含む前記<1>〜<4>のいずれか1項に記載のインクジェット記録媒体。
【0009】
<6> 支持体上に、第1の無機微粒子を含む第1のインク受容層形成用塗布液と、第2の無機微粒子を含む第2のインク受容層形成用塗布液とを、支持体の側からこの順で積層されるように同時重層塗布して塗布層を形成して、第1のインク受容層および第2のインク受容層を形成する工程を含む、前記<1>〜<5>のいずれか1項に記載のインクジェット記録媒体の製造方法。
<7> 前記塗布層に、(1)前記同時重層塗布と同時に、又は(2)前記塗布層の乾燥途中であって該塗布層が減率乾燥を示す前に、塩基性化合物を含む塩基性溶液を付与する工程をさらに含む、前記<7>に記載のインクジェット記録媒体の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、細線描画性と光沢度に優れるインクジェット記録媒体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本実施例にかかるインクジェット記録媒体における第1のインク受容層と第2のインク受容層との境界線の長さの測定方法を示す模式図である。
【図2】本実施例にかかるインクジェット記録媒体における第1のインク受容層と第2のインク受容層との境界線の近似直線を示す模式図である。
【図3】本実施例にかかるインクジェット記録媒体における第1のインク受容層と第2のインク受容層との境界線の一例を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明のインクジェット記録媒体は、支持体と、前記支持体上に設けられるとともに第1の無機微粒子を含む第1のインク受容層と、前記第1のインク受容層上に接して設けられるとともに第2の無機微粒子を含む第2のインク受容層と、を有するインクジェット記録媒体であって、前記第1のインク受容層の細孔径分布におけるピーク径よりも、前記第2のインク受容層の細孔径分布におけるピーク径の方が小さく、かつ、前記支持体の第1のインク受容層および第2のインク受容層が設けられた面に対して垂直方向であるインクジェット記録媒体の断面における前記第1のインク受容層と第2のインク受容層との境界線の凹凸指数が1.5〜15.0である。
【0013】
インク受容層が、隣接する2層のインク受容層を含み、隣接するインク受容層の上層の細孔径分布におけるピーク径が、下層の細孔径分布におけるピーク径よりも小さく、かつ、隣接する2つのインク受容層の界面構造が凹凸状で複雑に入り組んでいることで、細線描画性と光沢度に優れる。これは例えば、上記構成のインク受容層では、インク吸収速度が向上することによるものと考えることができる。
【0014】
本発明においては、インク受容層を構成する第1のインク受容層と第2のインク受容層の細孔径分布におけるピーク径が、第2のインク受容層の方が小さくなっている。ここで「細孔径分布におけるピーク径」とは、インク受容層の細孔径分布を測定することで得られる細孔径分布曲線のピークに対応する細孔直径を意味する。
尚、本発明において細孔径分布の測定は、水銀圧入法を用いて行なわれる。具体的には、島津製作所製のオートポア等を用いて測定される。
【0015】
本発明において、第1のインク受容層および第2のインク受容層の細孔径分布は、それぞれ以下のようにして測定される。
第2のインク受容層が最表層の場合には、インクジェット記録媒体をそのまま用いて、また、第2のインク受容層の上にさらに他の層が形成されている場合には、該他の層を削り取って第2のインク受容層を露出させたものを用いて、水銀圧入法により細孔径分布(A)を測定する。
【0016】
次に第2のインク受容層(その上にさらに他の層がある場合には他の層も含めて)を削り取って第1のインク受容層を露出させたものを用いて、水銀圧入法により細孔径分布(B)を測定する。
さらに最表層から第1のインク受容層までを削り取ったものを用いて、水銀圧入法により細孔径分布(C)を測定する。
こうして得られる細孔径分布(A)から細孔径分布(B)を差し引いて得られる細孔径分布を第2のインク受容層の細孔径分布とする。また、細孔径分布(B)から細孔径分布(C)を差し引いて得られる細孔径分布を第1のインク受容層の細孔径分布とする。
尚、インクジェット記録媒体からインク受容層を構成する層を削り取るには、剃刀等を用いて行なう。具体的には、予め測定した第2のインク受容層の厚みを元に、膜厚を測定しながら、所定の膜厚を削り取ったことを確認して、第1のインク受容層を露出させた。
【0017】
本発明においては、インク受容層を構成する隣接する2つのインク受容層において、細孔径分布におけるピーク径が第1のインク受容層(以下、「下層」ということがある)に比べて第2のインク受容層(以下、「上層」ということがある)のほうが小さくなっている。
【0018】
また上層と下層の細孔径分布におけるピーク径の差としては、上層のほうが下層よりもピーク径が小さい限り特に制限はないが、インク吸収性の観点から、該ピーク径の差が0.015μm以上であることが好ましく、0.015μm以上4.5μm以下であることがより好ましく、0.05μm以上4.0μm以下であることがさらに好ましい。
【0019】
また前記上層と下層の細孔径分布におけるピーク径はそれぞれ、下層が0.010〜5.0μmであることが好ましく、0.010〜4.0μmであることがより好ましい。また上層が0.005〜0.20μmであることが好ましく、0.010〜0.15μmであることがより好ましい。
更に前記上層と下層の細孔径分布におけるピーク径は、下層が0.010〜5.0μmであって、上層が0.005〜0.20μmであって、その差が0.015μm以上であることが好ましく、下層が0.010〜4.0μmであって、上層が0.010〜0.15μmであって、その差が0.05μm以上4.0μm以下であることがより好ましい。
【0020】
インク受容層における細孔径分布は、インク受容層を構成する無機微粒子の体積平均粒子径、必要に応じて含まれる水溶性樹脂に対する無機微粒子の含有比率、インク受容層形成方法等を適宜選択することで制御することができる。
例えば、無機微粒子の体積平均粒子径を大きくすることで、また、水溶性樹脂に対する無機微粒子の含有比率を大きくすることで細孔径分布のピーク径を大きくすることができる。
【0021】
本発明におけるインク受容層は、第1のインク受容層と該第1のインク受容層上に隣接して設けられた第2のインク受容層とを含み、支持体の第1のインク受容層および第2のインク受容層が設けられた面に対して垂直な断面における第1のインク受容層と第2のインク受容層との境界線の凹凸指数が1.5〜15.0になっている。
すなわち、インクジェット記録媒体のインク受容層が設けられた面の法線方向に割断した際に現れる第1のインク受容層と第2のインク受容層の界面構造が平坦ではなく、複雑に入り組んだ凹凸状になっている。図3に本発明のインクジェット記録媒体における第1のインク受容層および第2のインク受容層の界面構造から抽出される境界線の一例を示す。
【0022】
本発明における凹凸指数は、具体的には以下のようにして算出される。インクジェット記録媒体を、インク受容層が設けられた面に垂直な面で切断し、第1のインク受容層および第2のインク受容層の界面が観察可能な断面サンプルを作製する。得られた断面サンプルを走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて観察して解像度0.01μm/ピクセルの断面画像を得る。得られた断面画像から画像解析ソフトウエアを用いて第1のインク受容層および第2のインク受容層の境界線を抽出する。この境界線の長さGと、境界線を直線近似した時の直線の長さFから、Fに対するGの比(G/F)として凹凸指数を算出する。なお、凹凸指数の算出は、境界線を直線近似した時の直線の長さが13.0μmの区間において行う。
【0023】
境界線の長さは次のようにして算出する。図1に模式的に示すように、境界線をビットマップで表示し、境界線のピクセルの中心2と、隣接する境界線のピクセルの中心2とを線分3で結び、この線分の長さをこの間の境界線の長さとする。境界線の隣接するピクセルすべてにおいて同様の操作を行い、得られた線分の長さの合計を境界線の長さGとする。
境界線を直線近似した時の直線4の長さは次のようにして算出する。図2の模式図に示すように、境界線のピクセルの中心をすべてX−Y座標にあてはめ、最小2乗法により得られた近似直線の長さとする。
【0024】
第1のインク受容層と第2のインク受容層の界面構造を凹凸指数が1.5〜15.0になるように形成する方法としては、例えば、支持体上に、第1のインク受容層形成用塗布液と、第2のインク受容層形成用塗布液とが、支持体側からこの順に積層されるように同時重層塗布して塗布層を形成したのち、これを乾燥して、第1のインク受容層および第2のインク受容層を形成する方法を挙げることができる。
これは例えば、支持体表面の微細な凹凸が、乾燥する前の第1のインク受容層および第2のインク受容層の界面構造に反映されるためと考えることができる。
【0025】
本発明のインクジェット記録媒体における第2のインク受容層は、ジエチレングリコール、トリエチレングリコールモノブチルエーテルおよび水を質量比が15/15/70(ジエチレングリコール/トリエチレングリコールモノブチルエーテル/水)となるように混合した液体を用い、JAPAN TAPPI紙パルプ試験方法No.51−87に準じたブリストー法で、接触時間0.05秒で測定される浸透量A(ml/m)の、前記第2のインク受容層の平均膜厚B(μm)に対する比率(A/B)が3.0〜10.0であることが好ましく、3.0〜8.0であることがより好ましい。
第2のインク受容層における平均膜厚当たりの特定溶媒に対する浸透量が前記範囲内であることで、細線描画性および光沢度がより効果的に向上する。
【0026】
本発明において第2のインク受容層における前記浸透量Aは、第2のインク受容層が最表面にある状態で測定される。すなわち第2のインク受容層が最表面層である場合にはそのままの状態で測定され、第2のインク受容層の上にさらに他の層が形成される場合には、該層を取り除いて第2のインク受容層を露出させた状態または該層を形成する前の状態で測定される。
他の層を取り除く方法については既述のとおりである。
【0027】
また第2のインク受容層の平均膜厚は、支持体のインク受容層が設けられた面に対して垂直な断面を電子顕微鏡(SEM)で観察することで測定される。具体的には、断面の電子顕微鏡画像を用いて、第2のインク受容層の膜厚を10点測定し、その算術平均として算出される。
【0028】
(無機微粒子)
前記第1のインク受容層および第2のインク受容層は、それぞれ無機微粒子の少なくとも1種を含む。無機微粒子は、インク受容層を形成した際に多孔質構造を形成し、インクの吸収性能を向上させる役割を持つ。
【0029】
無機微粒子としては、例えば、無定形シリカ(非晶質シリカともいう)、コロイダルシリカ、二酸化チタン、硫酸バリウム、珪酸カルシウム、ゼオライト、カオリナイト、ハロイサイト、雲母、タルク、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸カルシウム、ベーマイト、擬ベーマイト等が挙げられる。これらは、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0030】
無定形シリカは、通常はその製造法により湿式法粒子と乾式法(気相法)粒子とに大別される。湿式法では、ケイ酸塩の酸分解により活性シリカを生成し、これを適度に重合させ凝集沈降させて含水シリカを得る方法が主流であるのに対し、気相法では、ハロゲン化珪素の高温気相加水分解による方法(火炎加水分解法)、ケイ砂とコークスとを電気炉中でアークによって加熱還元気化し、これを空気で酸化する方法(アーク法)によって無水シリカを得る方法が主流である。本発明に好適に用いられる気相法シリカは、気相法によって得られた無水シリカ微粒子である。
【0031】
気相法シリカは、含水シリカと表面のシラノール基の密度、空孔の有無等に相違があることで異なった性質を示し、空隙率の高い三次元構造を形成するのに適している。この理由は明らかではないが、含水シリカでは微粒子表面におけるシラノール基の密度が5〜8個/nmで多く、シリカ微粒子が密に凝集(アグリゲート)し易い一方、気相法シリカの場合には、微粒子表面におけるシラノール基の密度が2〜3個/nmであり少ないことから疎な軟凝集(フロキュレート)となり、結果として空隙率の高い構造になるものと推定される。
【0032】
気相法シリカは、比表面積が特に大きいので、インクの吸収性、保持の効率が高く、また、屈折率が低いので、適切な粒子径まで分散を行なえばインク受容層に透明性を付与することができ、高い色濃度と良好な発色性が得られる。インク受容層が透明であることは、OHPなど透明性が必要とされる用途のみならず、フォト光沢紙等に適用する場合でも、高い色濃度と良好な発色性、光沢が得られる。
【0033】
本発明において、第1のインク受容層に含まれる第1の無機微粒子は、インク吸収性の観点から、無定形シリカまたはコロイダルシリカであることが好ましく、2次粒子の体積平均粒子径が0.30μm〜8.0μmである無定形シリカまたはコロイダルシリカであることがより好ましく、2次粒子の体積平均粒子径が、0.50μm〜8.0μmである無定形シリカまたはコロイダルシリカであることがさらに好ましい。
また第2のインク受容層に含まれる第2の無機微粒子は、インク吸収性の観点から、無定形シリカであることが好ましく、1次粒子の平均粒子径が5nm〜30nmであって2次粒子の体積平均粒子径が0.05μm〜0.20μmである無定形シリカであることがより好ましく、1次粒子の平均粒子径が5nm〜20nmであって2次粒子の体積平均粒子径が0.07μm〜0.18μmである無定形シリカであることがさらに好ましい。
【0034】
さらに第2の無機微粒子が1次粒子の平均粒子径が5nm〜30nmかつ2次粒子の体積平均粒子径が0.05μm〜0.20μmである無定形シリカであって、第1の無機微粒子が、2次粒子の体積平均粒子径が0.30μm〜8.0μmである無定形シリカまたはコロイダルシリカであることが好ましく、第2の無機微粒子が1次粒子の平均粒子径が5nm〜20nmかつ2次粒子の体積平均粒子径が0.07μm〜0.18μmである無定形シリカであって、第1の無機微粒子が、2次粒子の体積平均粒子径が0.50μm〜8.0μmである無定形シリカまたはコロイダルシリカであることがより好ましい。
かかる態様であることにより、細線描画性および光沢度がより効果的に向上する。
【0035】
また例えば、2次粒子の体積平均粒子径が0.30μm〜8.0μmである無定形シリカまたはコロイダルシリカを含む第1のインク受容層形成用塗布液と、1次粒子の平均粒子径が5nm〜30nmであって2次粒子の体積平均粒子径が0.05μm〜0.20μmである無定形シリカを含む第2のインク受容層形成用塗布液と、を用いて第1のインク受容層および第2のインク受容層を形成することにより、第1のインク受容層の細孔径分布におけるピーク径よりも、第2のインク受容層の細孔径分布におけるピーク径のほうが小さいインク受容層を形成することができる。
【0036】
無機微粒子の第1および第2のインク受容層中における含有量としては、それぞれ50質量%以上が好ましく、より好ましくは60質量%を超えた量である。無機微粒子の量が50質量%以上、更には60質量%を超えた範囲であると、更に良好な多孔質構造を形成することが可能であり、インク吸収性により優れたインクジェット記録媒体を作製することができる。
無機微粒子のインク受容層中における含有量は、インク受容層を形成する組成物中の水以外の固形成分に基づいて算出される量である。また無機微粒子の含有量は第1のインク受容層と第2のインク受容層とで同一であっても異なっていてもよい。
【0037】
尚、無定形シリカの1次粒子の平均粒子径は、透過型電子顕微鏡を用いて測定される1次粒子100個の算術平均として算出される。また、無定形シリカの2次粒子の体積平均粒子径およびコロイダルシリカの体積平均粒子径は、光散乱法を用いて測定される。
【0038】
(水溶性樹脂)
本発明における第1のインク受容層および第2のインク受容層は、それぞれ水溶性樹脂の少なくとも1種を含有することが好ましい。
水溶性樹脂としては、例えば、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルアセタール、セルロース系樹脂〔メチルセルロース(MC)、エチルセルロース(EC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、カルボキシメチルセルロース(CMC)等〕、キチン類、キトサン類、デンプン;エーテル結合を有する樹脂である、ポリプロピレンオキサイド(PPO)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルエーテル(PVE);アミド基又はアミド結合を有する樹脂であるポリアクリルアミド(PAAM)、ポリビニルピロリドン(PVP)、並びに、解離性基としてカルボキシル基を有する、ポリアクリル酸塩、マレイン酸樹脂、アルギン酸塩、ゼラチン類等が挙げられる。これらの水溶性樹脂は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0039】
中でも、ポリビニルアルコールが好ましい。ポリビニルアルコールと他の水溶性樹脂とを併用する場合、全水溶性樹脂中におけるポリビニルアルコールの含有量は、90質量%以上であることが好ましく、95質量%以上であることがさらに好ましい。
【0040】
ポリビニルアルコールとしては、ポリビニルアルコール(PVA)に加えて、カチオン変性ポリビニルアルコール、アニオン変性ポリビニルアルコール、シラノール変性ポリビニルアルコール、及びその他ポリビニルアルコールの誘導体が含まれる。
【0041】
PVAは、その構造単位に水酸基を有するが、この水酸基とシリカ微粒子表面のシラノール基とが水素結合を形成して、シリカ微粒子の2次粒子を鎖単位とする三次元網目構造を形成しやすくする。このように三次元網目構造が形成されることにより、空隙率の高い多孔質構造のインク受容層が形成されるものと考えられる。このように形成された多孔質のインク受容層は、毛細管現象によって急速にインクを吸収し、インク滲みの発生を抑えて真円性の良好なドットを形成することができる。
【0042】
水溶性樹脂のインク受容層中における含有量としては、該含有量の過少による、膜強度の低下や乾燥時のひび割れを防止するとともに、該含有量の過多により、該空隙が樹脂によって塞がれやすくなり、空隙率が減少することでインク吸収性が低下するのを防止する観点から、インク受容層の全固形分に対して、9〜40質量%が好ましく、12〜33質量%がさらに好ましい。
【0043】
水溶性樹脂は、インク受容層のひび割れ防止の観点から、数平均重合度が1800以上であるものが好ましく、2000以上であるものがより好ましい。中でも、光沢度や画像濃度の観点から、鹸化度88%以上のPVAが好ましく、鹸化度89〜97.5%のPVAがより好ましく、鹸化度91〜96%のPVAが特に好ましい。
【0044】
〜無機微粒子と水溶性樹脂との含有比〜
無機微粒子(例えば、無定形シリカ;p)と水溶性樹脂(例えば、PVA;b)との含有比〔PB比(p:b)、水溶性樹脂1質量部に対する無機微粒子の質量〕は、インク受容層の膜構造にも大きな影響を与える。すなわち、PB比が大きくなると、空隙率、細孔容積、表面積(単位質量当り)が大きくなる。具体的には、PB比(p:b)としては、該PB比が大きすぎることに起因する膜強度の低下や、乾燥時のひび割れを防止し、さらに、該PB比が小さすぎることによって、該空隙が水溶性樹脂によってふさがれやすくなり、空隙率が減少することでインク吸収性が低下するのを防止する観点から、1.5:1〜10:1が好ましい。
【0045】
(媒染剤)
本発明における第1のインク受容層および第2のインク受容層は、それぞれ媒染剤の少なくとも1種を含有することができる。
媒染剤としては、有機媒染剤及び無機媒染剤のいずれも用いることができる。有機媒染剤としては、第1級〜第3級アミノ基、又は第4級アンモニウム塩基をカチオン性基として含むポリマー媒染剤が好適である。また、カチオン性の非ポリマー媒染剤を用いてもよい。また、前記無機媒染剤としては、水溶性金属化合物などが好適である。
【0046】
前記ポリマー媒染剤としては、第1級〜第3級アミノ基及びその塩、又は第4級アンモニウム塩基を有する単量体(媒染モノマー)の単独重合体や、該媒染モノマーと他のモノマー(非媒染モノマー)との共重合体又は縮重合体として得られるものが好ましい。また、これらのポリマー媒染剤は、水溶性ポリマー、又は水分散性ラテックス粒子等のいずれの形態でも使用できる。
【0047】
前記媒染モノマーの具体例としては、特開2002−274024号公報の段落番号[0069]〜[0075]に記載されている化合物を挙げることができる。
【0048】
更に、ポリマー媒染剤として、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド、ポリメタクリロイルオキシエチル−β−ヒドロキシエチルジメチルアンモニウムクロライド、ポリアリルアミン塩酸塩、ポリアミド−ポリアミン樹脂、カチオン化澱粉、ジシアンジアミドホルマリン縮合物、ジメチル−2−ヒドロキシプロピルアンモニウム塩重合物等も好ましい。
【0049】
中でも、滲み抑制の観点から、カチオン性ポリウレタン、特開2004−167784号公報等に記載のカチオン性ポリアクリレートが好ましく、カチオン性ポリウレタンがより好ましい。カチオン性ポリウレタンとしては、市販品として例えば、第一工業製薬(株)製の「スーパーフレックス650」、「F−8564D」、「F−8570D」、日華化学(株)製の「ネオフィックスIJ−150」などを挙げることができる。
【0050】
ポリマー媒染剤の分子量としては、重量平均分子量で2000〜300000が好ましい。分子量が前記範囲内であると、耐水性及び耐経時滲みが向上する。
【0051】
また、前記無機媒染剤としては、水溶性多価金属化合物が好適である。
水溶性多価金属化合物としては、例えば、カルシウム、バリウム、マンガン、銅、コバルト、ニッケル、アルミニウム、鉄、亜鉛、ジルコニウム、クロム、タングステン、モリブデンから選ばれる金属の水溶性塩が挙げられる。なお、水溶性金属化合物の「水溶性」は、20℃の水に1質量%以上が溶解することをいう。
【0052】
水溶性金属化合物の中でも、3価以上の多価金属化合物が好ましく、アルミニウム化合物又は周期律表4A族金属(例えばジルコニウム、チタン)を含む化合物が好ましく、アルミニウム化合物がより好ましく、特に好ましくは水溶性アルミニウム化合物である。
【0053】
前記水溶性アルミニウム化合物としては、例えば、塩化アルミニウム又はその水和物(例:塩化アルミニウム六水和物)、硫酸アルミニウム又はその水和物、アンモニウムミョウバン、亜硫酸アルミニウム、チオ硫酸アルミニウム、硝酸アルミニウム九水和物、酢酸アルミニウム、乳酸アルミニウム、塩基性チオグリコール酸アルミニウム等が知られている。さらに、無機系の含アルミニウムカチオンポリマーである塩基性ポリ水酸化アルミニウム化合物(以下、「塩基性ポリ塩化アルミニウム」、「ポリ塩化アルミニウム」ともいう。)が知られており、好ましく用いられる。塩基性ポリ水酸化アルミニウム化合物とは、主成分が下記式1、式2又は式3で表され、例えば、[Al(OH)153+、[Al(OH)204+、[Al13(OH)345+、[Al21(OH)603+、等の、塩基性で高分子の多核縮合イオンを安定に含む水溶性のポリ水酸化アルミニウムである。
[Al(OH)Cl6−n ・・・式1
[Al(OH)AlCl ・・・式2
Al(OH)Cl(3n−m)〔0<m<3n〕・・・式3
これらは、多木化学(株)よりポリ塩化アルミニウム(PAC)の名称で水処理剤として、浅田化学(株)よりポリ水酸化アルミニウム(Paho)の名称で、また、(株)理研グリーンよりHAP−25の名称で、大明化学(株)よりアルファイン83の名称で、さらに他のメーカーからも同様の目的で上市されており、各種グレードの物が容易に入手できる。
【0054】
媒染剤のインク受容層中における含有量としては、インク受容層の全質量に対して、1〜20質量%が好ましく、3〜15質量%がより好ましい。媒染剤の含有量が前記範囲内であると、インクの吸収、透過が阻害されるのを効果的に防ぐことができる。インク受像層を、(1)インク受容層形成用の塗布液の塗布と同時、又は(2)該塗布によって形成された塗布層の乾燥途中であって該塗布層が減率乾燥を示す前、のいずれかのときに、前記塗布層に塩基性化合物を含む塩基性溶液を付与する方法(ウエット・オン・ウエット法)により形成する場合には、インク受容層形成用の塗布液中に含まれる媒染剤の量が、最終的に得られるインク受容層中に含まれる全媒染剤量の95質量%以上を占めることが好ましい。該塗布液中に含まれる媒染剤の量が前記範囲内であると、ブロンジングを効果的に防ぐことができる。
【0055】
(他の成分)
本発明におけるインク受容層は、上記成分以外に、硼素化合物等の架橋剤や、界面活性剤、有機溶剤などの他の成分を含有することができる。
【0056】
前記架橋剤としては、例えば、特開2006−321176号公報の段落番号[0125]〜[0129]に記載のものを挙げることができ、好ましい態様も同様である。
【0057】
前記界面活性剤としては、例えば、特開2006−321176号公報の段落番号[0149]〜[0154]に記載ものを挙げることができ、好ましい態様も同様である。
【0058】
前記有機溶剤としては、例えば、特開2006−321176号公報の段落番号[0155]に記載ものを挙げることができ、好ましい態様も同様である。
【0059】
さらに本発明におけるインク受容層は、必要に応じて、各種の紫外線吸収剤、酸化防止剤、一重項酸素クエンチャー等の褪色防止剤などのその他添加剤を含有することができる。なお、これらの添加剤の詳細については、特開2007−98657号公報の段落[0081]〜[0090]の記載を参照することができる。
【0060】
(支持体)
本発明のインクジェット記録媒体における支持体は、限定されるものではないが、より高い浸透量が得られる点で、水浸透性支持体が好ましい。
【0061】
本発明に用いることができる支持体としては、例えば、特開2009−73158号公報の段落番号[017]〜[026]に記載の支持体を挙げることができる。
【0062】
〜インクジェット記録媒体の製造方法〜
本発明のインクジェット記録媒体は、支持体上に、既述のインク受容層を形成することができる方法であれば、特に制限なくいずれの方法によって作製されてもよい。
【0063】
インク受容層を形成する受容層形成工程は、下記ウェット・オン・ウェット法によるほか、支持体上に、第1のインク受容層形成用塗布液および第2のインク受容層形成用塗布液を塗布して塗布層を形成する工程と、形成された塗布層を、前記塗布時の塗布液の温度に対して5℃以上低下するように冷却する工程と、冷却された塗布層を乾燥してインク受容層を形成する工程とを有する形態(セット乾燥法)により、インク受容層を形成することができる。
【0064】
塗布層を冷却する方法としては、塗布層が形成された支持体を0〜10℃に保たれた冷却ゾーンで5〜30秒間、冷却させる方法が好適である。冷却する工程においては、0〜10℃低下するように冷却することが好ましく、0〜5℃以上低下するように冷却することがより好ましい。塗布層の温度は、膜面の温度を測定することにより測定される。
【0065】
本発明のインクジェット記録媒体は、第1の無機微粒子を含む第1のインク受容層形成用塗布液と第2の無機微粒子を含む第2のインク受容層形成用塗布液とを、支持体の側からこの順に、支持体上に同時重層塗布し、(1)該塗布と同時、又は(2)該塗布によって形成された塗布層の乾燥途中であって該塗布層が減率乾燥を示す前、のいずれかのときに、前記塗布層に塩基性化合物を含む塩基性溶液を付与し(ウェット・オン・ウェット(Wet−On−Wet)法、以下、「WOW法」ということがある)、前記塗布液及び前記塩基性溶液の少なくとも一方に架橋剤を含ませて、架橋硬化されたインク受容層を形成する受容層形成工程を設けた方法により製造されたものであることが好ましい。
【0066】
インク受容層形成用塗布液に含有される成分、具体的には無機微粒子、水溶性樹脂、媒染剤、及び必要により架橋剤等の他の成分の詳細については、既述の通りである。
インク受容層形成用塗布液は、例えば、気相法シリカ(無機微粒子)とPVA(水溶性樹脂)と媒染剤とホウ酸(架橋剤)とノニオン性もしくは両性界面活性剤と高沸点有機溶剤とを含むものが挙げられ、この場合を一例に調製方法を示す。即ち、
まず水中に、気相法シリカを添加し、さらに媒染剤を加えた後、高圧ホモジナイザー、サンドミル等で分散する。その後、これにホウ酸を加え、PVA水溶液(例えば、気相法シリカの1/3程度の質量のPVAとなるように)を加え、さらにノニオン性もしくは両性界面活性剤及び高沸点有機溶剤を添加し、攪拌することで調製することができる。得られた塗布液は、均一ゾルであり、これを下記塗布方法で支持体上に塗布することにより、三次元網目構造を有する多孔質層を形成することができる。
【0067】
また、上記のようにホウ酸を薄めた後にPVAを加えることにより、PVAの部分的なゲル化を防止することができる。ホウ酸などの架橋剤は、インク受容層形成用塗布液に加えずあるいは加えると共に、後述の塩基性溶液に加えて付与してもよい。
【0068】
無機微粒子の分散に際しては、無機微粒子とともにカチオン性樹脂を添加しておき、無機微粒子がカチオン性樹脂で分散された形態が好ましい。
カチオン性樹脂には、特に制限はないが、水溶性又は水性エマルションタイプ等を好適に用いることができる。カチオン性樹脂としては、例えば、ジシアンジアミド−ホルマリン重縮合物に代表されるジシアン系カチオン樹脂、ジシアンアミド−ジエチレントリアミン重縮合物に代表されるポリアミン系カチオン樹脂、エピクロルヒドリン−ジメチルアミン付加重合物、ジメチルジアリルアンモニウムクロライド−SO共重合物、ジアリルアミン塩−SO共重合物、ジメチルジアリルアンモニウムクロライド重合物、アリルアミン塩の重合物、ジアルキルアミノエチル(メタ)アクリレート4級塩重合物、アクリルアミド−ジアリルアミン塩共重合体等のポリカチオン系カチオン樹脂などが挙げられ、ジメチルジアリルアンモニウムクロライド、モノメチルジアリルアンモニウムクロライド及びポリアミジンが好ましく、耐水性の点で、ジメチルジアリルアンモニウムクロライド、及びモノメチルジアリルアンモニウムクロライドが特に好ましい。カチオン性樹脂は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0069】
カチオン樹脂のインク受容層中における含有量は、無機微粒子100質量部に対して、1〜30質量部が好ましく、より好ましくは3〜20質量部である。カチオン樹脂の添加態様としては、粉砕分散前に少量添加して、所望の粒径になるまで粉砕分散した後、さらに添加してもよい。
【0070】
インク受容層形成用塗布液は、酸性溶液であることが好ましく、そのpHとしては5.0以下が好ましく、4.5以下がより好ましく、4.0以下が更に好ましい。pHは、媒染剤の種類や量を選定することで調整できる。また、有機又は無機の酸を添加して調整してもよい。pHが5.0以下であることにより、硼素化合物等の架橋剤による水溶性樹脂の架橋反応を抑制することができる。
【0071】
本発明においては、第1のインク受容層形成用塗布液と第2のインク受容層形成用塗布液とを同時重層塗布することが好ましい。
同時重層塗布は、例えば、エクストルージョンダイコーター、カーテンフローコーターを用いた塗布方法により行なえる。同時重層塗布の後、形成された塗布層は乾燥されるが、この場合の乾燥は一般に塗布層を40℃〜150℃で0.5分間〜10分間加熱することにより行なわれ、好ましくは40℃〜100℃で0.5〜5分間加熱することにより行なわれる。硼素化合物を用いる場合、60℃〜100℃で5分間〜20分間加熱することが好ましい。
【0072】
第1のインク受容層形成用塗布液および第2のインク受容層形成用塗布液の塗布量は、それぞれ10〜200g/mが好ましく、15〜180g/mがより好ましい。また第1のインク受容層形成用塗布液および第2のインク受容層形成用塗布液の合計塗布量は、10〜200g/mが好ましく、15〜180g/mがより好ましい。
【0073】
塩基性溶液は、pHが7.1以上の溶液であることが好ましく、pH7.5以上の溶液あることがより好ましい。pHが7.1以上であると、インク受容層の硬膜反応が良好になり、傷の発生が生じ難くなる。塩基性溶液のpHは、塩基性物質を添加することにより調整できる。塩基性物質としては、分子量700以下のアミン系化合物などが挙げられ、例えば、アンモニア、第一級アミン(エチルアミン等)、第二級アミン(ジメチルアミン等)、第三級アミン(N−エチル−N−メチルブチルアミン、トリエチルアミン等)、アルカリ金属やアルカリ土類金属の水酸化物及び/又はその塩(好ましくはアンモニウム塩)が挙げられる。また、その他のエチレンジアミン等の多価アミンを添加することもできる。
【0074】
塩基性物質の中でも、インク受容層の耐傷性、湿熱滲み、保存性などの性能向上の点で、アンモニア、分子量700以下の第一級〜第三級アミンから選択される少なくとも1種が好ましく、更にはアンモニア、分子量700以下のアンモニウム塩が好ましい。
【0075】
塩基性溶液は、前記インク受容層形成用塗布液に含有すると共にあるいは含有せずに、硼素化合物などの架橋剤を含んでもよい。また、塩基性溶液は、画像の耐水性、耐経時滲みの更なる向上を図るために、カチオン性媒染剤などの媒染剤成分を含有してもよい。架橋剤、媒染剤成分の詳細については、既述の通りである。
【0076】
「塗布層が減率乾燥を示す前」とは、通常は塗布液の塗布直後から数分間をさし、この間においては塗布された塗布層中の溶剤の含有量が時間に比例して減少する現象である恒率乾燥を示す。この恒率乾燥を示す時間については、化学工学便覧(pp.707〜712、丸善(株)発行、昭和55年10月25日)に記載されている。
【0077】
インク受容層形成用塗布液の塗布により形成された塗布層は、減率乾燥を示すようになるまで乾燥されるが、このときの乾燥は一般に40℃〜180℃で0.5分間〜10分間(好ましくは、0.5分間〜5分間)行なわれる。また、乾燥時間としては、当然塗布量により異なるが上記範囲が適当である。
【0078】
第1および第2のインク受容層形成用塗布液を塗布して形成した塗布層が、減率乾燥を示すようになる前に塩基性溶液を付与する方法としては、(i)塩基性溶液をインク受容層形成用塗布液により形成された塗布層上に更に塗布する方法、(ii)スプレー等の方法によって塩基性溶液を噴霧する方法、(iii)塩基性溶液中に、インク受容層形成用塗布液が塗布されて塗布層が形成された支持体を浸漬する方法、等が挙げられる。なお、方法(i)において塗布する方法としては、例えば、カーテンフローコーター、エクストルージョンダイコーター、エアードクターコーター、ブレードコーター、ロッドコーター、ナイフコーター、スクイズコーター、リバースロールコーター、バーコーター等の公知の塗布方法が挙げられる。中でも、エクストルージョンダイコーター、カーテンフローコーター等の既設の塗布層にコーターが接触しない方法が好ましい。
【0079】
塩基性溶液の付与量としては、0.1〜40g/mが好ましく、0.5〜30g/mがより好ましい。
【0080】
また、塩基性溶液の付与をインク受容層形成用塗布液の塗布と同時に行なう場合、インク受容層形成用塗布液及び塩基性溶液を、インク受容層形成用塗布液が支持体と接触する積層順にて支持体の上に同時重層塗布し、乾燥硬化させることができる。
【実施例】
【0081】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。尚、特に断りのない限り、「部」及び「%」は質量基準である。
【0082】
<実施例1>
−支持体の作製−
LBKP100部からなる木材パルプをダブルディスクリファイナーによりカナディアンフリーネス300mlまで叩解し、エポキシ化ベヘン酸アミド0.5部、アニオンポリアクリルアミド1.0部、ポリアミドポリアミンエピクロルヒドリン0.1部、カチオンポリアクリルアミド0.5部を、いずれもパルプに対する絶乾質量比で添加し、長網抄紙機により秤量し170g/mの原紙を抄造した。
【0083】
上記原紙の表面サイズを調整するため、ポリビニルアルコール4%水溶液に蛍光増白剤(住友化学工業(株)製の「Whitex BB」)を0.04%添加し、これを絶乾重量換算で0.5g/mとなる様に上記原紙に含浸させ、乾燥した後、更にキャレンダー処理を施して密度1.05g/cmに調整した基紙を得て、本実施例に用いる支持体とした。
【0084】
−インク受容層の形成−
(インク受容層形成用塗布液A−1の調製)
下記組成中のイオン交換水127.7kgにコロイダルシリカ(二次粒子径0.4μm、SiO濃度24%)を358.3kg混合し、これにシャロールDC−902Pを7.0kg混合し、超音波分散機((株)エスエムテー製)を用いて分散させた。得られたシリカ分散液の体積平均粒子径は0.4μmであった。
その後、60分間攪拌を行ない、撹拌しながらホウ酸水溶液(5%)を添加した。これに更に、下記組成中のポリビニルアルコール5%水溶液を攪拌しながら加え、さらにポリオキシエチレンラウリルエーテル水溶液(2%)とジエチレングリコールモノブチルエーテルとを加え、さらにイオン交換水を加えて全量を1000.0kgに調整することにより、インク受容層形成用塗布液A−1を調製した。なお、無機微粒子と水溶性樹脂との質量比(無機微粒子:水溶性樹脂)は、4.9:1であった。
【0085】
<インク受容層形成用塗布液A−1の組成>
・イオン交換水 ・・・127.7kg
・コロイダルシリカ ・・・358.3kg
(無機微粒子、SiO濃度24%)
(PL−20、扶桑化学工業(株)製)
・シャロールDC−902P (51.5%水溶液) ・・・7.0kg
(カチオン性樹脂、媒染剤、第一工業製薬(株)製)
・ZA−30 ・・・5.0kg
(媒染剤、酢酸ジルコニル、第一稀元素化学工業(株)製)
・ホウ酸水溶液(5%水溶液) ・・・63.0kg
・ポリビニルアルコールの5%水溶液 ・・・353.0kg
(JM−33、鹸化度94.3mol%、重合度3300、日本酢ビ・ポバール社製)
・ポリオキシエチレンラウリルエーテル ・・・52.0kg
(エマルゲン109Pの2%水溶液、花王(株)製;ノニオン系界面活性剤)
・ジエチレングリコールモノブチルエーテル ・・・3.0kg
(DEGmBE;高沸点有機溶剤)
・イオン交換水 ・・・全量が1000.0kgとなる残量
【0086】
(インク受容層形成用塗布液B−1の調製)
下記組成中のイオン交換水400kgに気相法シリカ微粒子(1次粒子の平均粒子径7nm)を86.0kg混合し、これにシャロールDC−902Pを7.0kg混合し、ナノマイザーLA31(ナノマイザー(株)製)を用いて、500kg/mの圧力で2回処理を行なった。得られたシリカ分散液の2次粒子の体積平均粒子径は0.12μmであった。
【0087】
その後、60分間攪拌を行ない、撹拌しながらホウ酸水溶液(5%)を添加した。これに更に、下記組成中のポリビニルアルコール5%水溶液を攪拌しながら加え、さらにポリオキシエチレンラウリルエーテル水溶液(2%)とジエチレングリコールモノブチルエーテルとを加え、さらにイオン交換水を加えて全量を1000.0kgに調整することにより、インク受容層形成用塗布液B−1を調製した。なお、無機微粒子と水溶性樹脂との質量比(無機微粒子:水溶性樹脂)は、4.9:1であった。
【0088】
<インク受容層形成用塗布液B−1の組成>
・イオン交換水 ・・・400.0kg
・気相法シリカ微粒子(無機微粒子) ・・・86.0kg
(AEROSIL300SF75、日本アエロジル(株)製)
・シャロールDC−902P (51.5%水溶液)・・・7.0kg
(カチオン性樹脂、媒染剤、第一工業製薬(株)製)
・ZA−30 ・・・5.0kg
(媒染剤、酢酸ジルコニル、第一稀元素化学工業(株)製)
・ホウ酸水溶液(5%水溶液) ・・・63.0kg
・ポリビニルアルコールの5%水溶液 ・・・353.0kg
(JM−33、鹸化度94.3mol%、重合度3300、日本酢ビ・ポバール社製)
・ポリオキシエチレンラウリルエーテル ・・・52.0kg
(エマルゲン109Pの2%水溶液、花王(株)製;ノニオン系界面活性剤)
・ジエチレングリコールモノブチルエーテル ・・・3.0kg
(DEGmBE;高沸点有機溶剤)
・イオン交換水 ・・・全量が1000.0kgとなる残量
【0089】
(インク受容層の形成)
上記で得られた支持体のオモテ面にコロナ放電処理を施し、このコロナ放電処理面に、前記インク受容層形成用塗布液A−1(下層用塗布液)120g/mと、前記インク受容層形成用塗布液B−1(上層用塗布液)40g/mと、を上層用塗布液が下層用塗布液上に積層するように、エクストルージョンダイコーターにて同時重層塗布し、塗布形成された塗布層を熱風乾燥機にて80℃(風速3〜8m/sec)で層の固形分濃度が20質量%になるまで乾燥させた。この間、インク受容層形成用塗布液A−1およびインク受容層形成用塗布液B−1により形成された塗布層は恒率乾燥を示した。その直後、この塗布層を下記組成の塩基性溶液に30秒浸漬し、塗布層上に塩基性溶液を湿潤塗布量15g/mで付着させた(減率乾燥前の塩基性溶液の付与、WOW法)。そして、さらに80℃下で10分間、乾燥させて、インク受容層を形成し、インクジェット記録媒体1を作製した。
【0090】
<塩基性溶液の組成>
・イオン交換水 ・・・ 70.0kg
・ホウ酸 ・・・ 0.65kg
・ポリオキシエチレンラウリルエーテル ・・・ 5.0kg
(ノニオン系界面活性剤;エマルゲン109Pの10%水溶液、花王(株)製)
・炭酸アンモニウム ・・・ pH7.3となる添加量
・イオン交換水 ・・・ 全量が100.0kgとなる残量
【0091】
<実施例2>
実施例1のインクジェット記録媒体1の作製において、インク受容層形成用塗布液A−1で用いたイオン交換水127.7kgを400.0kgに変更し、コロイダルシリカ(無機微粒子、SiO濃度24%、PL−20、扶桑化学工業(株)製)358.3kgの代わりに、二次粒径4μmの無定形シリカ(無機微粒子、水沢化学工業(株)製)86.0kgに変更したインク受容層形成用塗布液A−2を用いたこと以外は実施例1と同様にして、インクジェット記録媒体2を作製した。
【0092】
<実施例3>
〜インク受容層の形成〜
上記で得られた支持体のオモテ面にコロナ放電処理を施し、このコロナ放電処理面に、下記組成を有するインク受容層形成用塗布液A−3(下層用塗布液)100g/mと、前記インク受容層形成用塗布液B−3(上層用塗布液)34g/mと、を上層用塗布液が下層用塗布液上に積層するように、エクストルージョンダイコーターにて同時重層塗布し、5℃で20秒間、冷却した後、40℃・10%RHの条件で乾燥させた。このようなセット乾燥法により、支持体上にインク受容層が形成されたインクジェット記録媒体3を作製した。
【0093】
<インク受容層形成用塗布液A−3の組成>
・イオン交換水 ・・・127.7kg
・コロイダルシリカ ・・・358.3kg
(無機微粒子、SiO濃度24%、PL−20、扶桑化学工業(株)製)
・シャロールDC−902P(51.5%水溶液) ・・・ 7.0kg
(カチオン性樹脂、媒染剤、第一工業製薬(株)製)
・ホウ砂水溶液(6%液) ・・・ 80.0kg
・ポリビニルアルコールの7%水溶液 ・・・ 252.0kg
(JM−33、鹸化度94.3mol%、重合度3300、日本酢ビ・ポバール社製)
・ポリオキシエチレンラウリルエーテル ・・・ 5.0kg
(エマルゲン109Pの10%水溶液、花王(株)製;ノニオン系界面活性剤)
・ジエチレングリコールモノブチルエーテル ・・・ 3.0kg
(DEGmBE;高沸点有機溶剤)
・イオン交換水 ・・・ 全量が852.0kgとなる量
【0094】
<インク受容層形成用塗布液B−3の組成>
・イオン交換水 ・・・ 400.0kg
・気相法シリカ微粒子(無機微粒子) ・・・ 86.0kg
(AEROSIL300SF75、日本アエロジル(株)製)
・シャロールDC−902P(51.5%水溶液) ・・・ 7.0kg
(カチオン性樹脂、媒染剤、第一工業製薬(株)製)
・ホウ砂水溶液(6%液) ・・・ 80.0kg
・ポリビニルアルコールの7%水溶液 ・・・ 252.0kg
(JM−33、鹸化度94.3mol%、重合度3300、日本酢ビ・ポバール社製)
・ポリオキシエチレンラウリルエーテル ・・・ 5.0kg
(エマルゲン109Pの10%水溶液、花王(株)製;ノニオン系界面活性剤)
・ジエチレングリコールモノブチルエーテル ・・・ 3.0kg
(DEGmBE;高沸点有機溶剤)
・イオン交換水 ・・・ 全量が852.0kgとなる量
【0095】
<実施例4>
実施例1のインクジェット記録媒体1の作製において、インク受容層形成用塗布液A−1で用いたイオン交換水127.7kgを400.0kgに変更し、コロイダルシリカ(無機微粒子、SiO濃度24%)358.3kg(PL−20、扶桑化学工業(株)製)の代わりに、二次粒径8μmの無定形シリカ(無機微粒子)86.0kg(水沢化学工業(株)製)に変更したインク受容層形成用塗布液A−4を用いたこと以外は実施例1と同様にして、インクジェット記録媒体4を作製した。
【0096】
<実施例5>
実施例1のインクジェット記録媒体1の作製において、インク受容層形成用塗布液A−1(下層用塗布液)120g/mに代えて180g/m、インク受容層形成用塗布液B−1(上層用塗布液)40g/mに代えて30g/mをとして積層させたこと以外は実施例1と同様にして、インクジェット記録媒体5を作製した。
【0097】
<実施例6>
実施例1のインクジェット記録媒体1の作製において、インク受容層形成用塗布液A−1で用いたイオン交換水127.7kgを400.0kgに変更し、コロイダルシリカ(無機微粒子、SiO濃度24%)358.3kg(PL−20、扶桑化学工業(株)製)の代わりに、無定形シリカ(無機微粒子)86.0kg(AEROSIL 90G、日本アエロジル(株)製)に変更したインク受容層形成用塗布液A−6を用いたこと以外は実施例1と同様にして、インクジェット記録媒体6を作製した。
【0098】
<実施例7>
実施例1のインクジェット記録媒体1の作製において、受容層形成用塗布液A−1で用いたイオン交換水127.7kgを400.0kgに変更し、コロイダルシリカ(無機微粒子、SiO濃度24%)358.3kg(PL−20、扶桑化学工業(株)製)の代わりに、二次粒径12μmの無定形シリカ(無機微粒子)86.0kg(水沢化学工業(株)製)に変更したインク受容層形成用塗布液A−7を用いたこと以外は実施例1と同様にして、インクジェット記録媒体7を作製した。
【0099】
<比較例1>
実施例2におけるインク受容層形成において、上記で得られた支持体のオモテ面にコロナ放電処理を施し、このコロナ放電処理面に、インク受容層形成用塗布液A−2を40g/mの塗布量でエクストルージョンダイコーターにて塗布、
し、塗布形成された塗布層を熱風乾燥機にて80℃(風速3〜8m/sec)で層の固形分濃度が20質量%になるまで乾燥させた。この間、インク受容層形成用塗布液A−2により形成された塗布層は恒率乾燥を示した。その直後、この塗布層を実施例1の塩基性溶液に30秒浸漬し、塗布層上に塩基性溶液を湿潤塗布量15g/mで付着させた(減率乾燥前の塩基性溶液の付与、WOW法)。そして、さらに80℃下で10分間、乾燥させて、第1のインク受容層を形成した後、形成された第1のインク受容層上に、インク受容層形成用塗布液B−1を120g/mの塗布量でエクストルージョンダイコーターにて塗布し、塗布形成された塗布層を熱風乾燥機にて80℃(風速3〜8m/sec)で層の固形分濃度が20質量%になるまで乾燥させた。この間、インク受容層形成用塗布液B−1により形成された塗布層は恒率乾燥を示した。その直後、この塗布層を上記組成の塩基性溶液に30秒浸漬し、塗布層上に塩基性溶液を湿潤塗布量15g/mで付着させた(減率乾燥前の塩基性溶液の付与、WOW法)。そして、さらに80℃下で10分間、乾燥させて、インク受容層を形成し、インクジェット記録媒体C1を作製した。
【0100】
<比較例2>
実施例2において、インク受容層形成用塗布液A−2とインク受容層形成用塗布液B−1の積層順を逆にしたこと、すなわち、上層用塗布液としてインク受容層形成用塗布液A−2を用い、下層用塗布液としてのインク受容層形成用塗布液B−1を用いたこと以外は実施例1と同様にしてインクジェット記録媒体C2を作製した。
【0101】
<比較例3>
実施例1において、上層用塗布液および下層用塗布液として、ともにインク受容層形成用塗布液A−1を用いたこと以外は実施例1と同様にしてインクジェット記録媒体C3を作製した。
【0102】
−評価−
得られたインクジェット記録媒体について、下記の評価を行なった。評価結果を下記表1に示す。
尚、表1中、「1次粒径」は1次粒子の平均粒子径を意味し、「2次粒径」は、2次粒子の体積平均粒子径を意味する。また、「WOW」はインク受容層をWOW法で形成したことを、「セット乾燥」はインク受容層をセット乾燥法で形成したことを意味する。
【0103】
(細孔径分布)
得られたインクジェット記録媒体をそのまま用いて、水銀圧入法により細孔径分布(C)を測定した。次に第2のインク受容層を剃刀を用いて削り取って第1のインク受容層を露出させたものを用いて、水銀圧入法により細孔径分布(D)を測定した。さらにインクジェット記録媒体の作製に用いた支持体を用いて、水銀圧入法により細孔径分布(E)を測定した。
【0104】
得られた細孔径分布(C)から細孔径分布(D)を差し引いて第2のインク受容層の細孔径分布を得て、細孔径分布曲線のピークに対応する細孔直径として、第2のインク受容層の細孔径分布におけるピーク径を求めた。
【0105】
また、細孔径分布(D)から細孔径分布(E)を差し引いて第1のインク受容層の細孔径分布を得て、細孔径分布曲線のピークに対応する細孔直径として、第1のインク受容層の細孔径分布におけるピーク径を求めた。
尚、水銀圧入法による細孔径分布の測定は、島津製作所製 オートポアを用いて、通常の条件で行なった。
【0106】
(平均膜厚当たりの浸透量)
得られたインクジェット記録媒体について、ジエチレングリコール、トリエチレングリコールモノブチルエーテルおよび水を質量比が15/15/70(ジエチレングリコール/トリエチレングリコールモノブチルエーテル/水)となるように混合した液体を用い、JAPAN TAPPI紙パルプ試験方法No.51−87に準じたブリストー法で、接触時間0.05秒で測定される浸透量A(ml/m)を測定した。
【0107】
また、断面の電子顕微鏡画像を用いて、第2のインク受容層の膜厚を10点測定し、その算術平均として第2のインク受容層の平均膜厚B(μm)を求め、平均膜厚当たりの浸透量(A/B、浸透量/平均膜厚)を算出した。
【0108】
(凹凸指数)
得られたインクジェット記録媒体の断面をミクロトームにより切り出して測定用サンプルを得た。得られた測定用サンプルを、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて観察し、分解能0.01μm/ピクセルの画像データを得た。第1のインク受容層と第2のインク受容層の境界付近を、画像処理して境界線を抽出し、前記の方法により凹凸指数を算出した。
図3に、実施例1のインクジェット記録媒体1における抽出された境界線の一例を模式的に示す。
【0109】
(細線描画性1)
インクジェット記録媒体に、市販のインクジェットプリンター(セイコーエプソン(株)製、EP−801A)を用いて、レッド、グリーン、ブルーの各細線(線幅0.5mm)を印画した後、25倍のルーペで観察して、下記の評価基準に従って評価した。
〜評価基準〜
◎:細線に、滲みがなかった。
○:細線に、僅かに滲みが認められた。
△:細線に、滲みが認められた。
×:細線が、著しく滲んでいた。
【0110】
(細線描画性2)
インクジェット記録媒体に、市販のインクジェットプリンター(セイコーエプソン(株)製、EP−801A)を用いて、イエローベタに挟まれたレッド、グリーン、ブルーの各細線(線幅1.0mm)を印画した後、目視で観察し、下記の評価基準に従って評価した。
〜評価基準〜
◎:細線に、滲みがなかった。
○:細線に、僅かに滲みが認められた。
△:細線に、滲みが認められた。
×:細線が、著しく滲んでいた。
【0111】
(光沢度)
インクジェット記録媒体に、インクジェットプリンターEP−801A(セイコーエプソン(株)製)を用いて23℃、50%RHの環境下で黒ベタ画像を記録した。インク受像層の最表面における60°光沢度を、デジタル変角光沢度計(UGV−50DP、スガ試験機社製)で計測し、下記基準にしたがって評価した。
〜評価基準〜
◎:光沢度が30%以上
○:光沢度が20%以上30%未満
△:光沢度が10%以上20%未満
×:光沢度が10%未満
【0112】
【表1】

【0113】
表1から、本発明のインクジェット記録媒体においては、細線描画性と光沢度に優れることがわかる。
【符号の説明】
【0114】
1 : 境界線のピクセル
2 : 境界線のピクセル中心
3 : 隣接する境界線のピクセルのそれぞれの中心を結んだ線
4 : 最小二乗法で求まる近似直線
5 : 断面のSEM画像から抽出された第1のインク受容層と第2のインク受容層との境界線
6 : 境界線の近似直線


【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体と、前記支持体上に設けられるとともに第1の無機微粒子を含む第1のインク受容層と、前記第1のインク受容層上に接して設けられるとともに第2の無機微粒子を含む第2のインク受容層と、を有するインクジェット記録媒体であって、
前記第1のインク受容層の細孔径分布におけるピーク径よりも、前記第2のインク受容層の細孔径分布におけるピーク径の方が小さく、かつ、
前記支持体の第1のインク受容層および第2のインク受容層が設けられた面に対して垂直方向である前記インクジェット記録媒体の断面における前記第1のインク受容層と第2のインク受容層との境界線について、境界線の凹凸指数が1.5〜15.0であるインクジェット記録媒体。
【請求項2】
前記境界線の凹凸指数が3.0〜10.0である請求項1に記載のインクジェット記録媒体。
【請求項3】
前記第2のインク受容層は、ジエチレングリコール、トリエチレングリコールモノブチルエーテルおよび水を質量比が15/15/70(ジエチレングリコール/トリエチレングリコールモノブチルエーテル/水)となるように混合した液体を用い、J.TAPPI紙パルプ試験方法No.51−87に準じたブリストー法で、接触時間0.05秒で測定される浸透量A(ml/m)の、前記第2のインク受容層の平均膜厚B(μm)に対する比率(A/B)が3.0〜10.0である請求項1または請求項2に記載のインクジェット記録媒体。
【請求項4】
前記第2の無機微粒子は、1次粒子の平均粒子径が5nm〜30nmであって2次粒子の体積平均粒子径が0.05μm〜0.20μmである無定形シリカであって、
前記第1の無機微粒子は、2次粒子の体積平均粒子径が0.30μm〜8.0μmである無定形シリカ、および、コロイダルシリカから選ばれる少なくとも一方である請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のインクジェット記録媒体。
【請求項5】
前記第1のインク受容層および第2のインク受容層は、それぞれ水溶性樹脂を更に含む請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載のインクジェット記録媒体。
【請求項6】
支持体上に、第1無機微粒子を含む第1のインク受容層形成用塗布液と、第2の無機微粒子を含む第2のインク受容層形成用塗布液とを、支持体の側からこの順で積層されるように同時重層塗布して塗布層を形成し、第1のインク受容層および第2のインク受容層を形成する工程を含む、請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載のインクジェット記録媒体の製造方法。
【請求項7】
前記塗布層に、(1)前記同時重層塗布と同時に、又は(2)前記塗布層の乾燥途中であって前記塗布層が減率乾燥を示す前に、塩基性化合物を含む塩基性溶液を付与する工程をさらに含む、請求項6に記載のインクジェット記録媒体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−207173(P2011−207173A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−79608(P2010−79608)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】