説明

インクジェット記録方法、インクジェット記録装置、及びインクジェット記録物

【課題】インク吸収性やインクとの濡れ性の異なる様々な記録媒体を用いた場合にも種々の記録媒体間での画像均一性が高く、インク滲みが効果的に抑制され、液滴間の混合に起因する線幅の不均一や色ムラ等の発生を抑制できるとともに、インク画素密度の高い高濃度表現(ベタ)の部分においても表面凹凸が少なく表面散乱の少ない高光学濃度の表現ができ、同時に微細文字や解像度が高い高精細な部分の表現も可能となる高画質な画像形成を行えるようにしたインクジェット記録方法およびインクジェット記録装置を提供すること。
【解決手段】記録媒体上に形成されたエネルギー線硬化性の液層にエネルギー線硬化性インクを供給した後に、該被記録媒体上に形成されたエネルギー線硬化性の液層とそこに供給された該インクを硬化させて画像形成するインクジェット記録方法であって、前記記録媒体上に形成した2以上の表面張力の異なる分布パターンを有する前記エネルギー線硬化性液層にインクを吐出することを特徴とするインクジェット記録方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット記録方法、インクジェット記録装置、及びインクジェット記録物に関し、複写機、プリンタ等のインクジェット方式を用いた画像形成装置に使うことができ、特にインクジェット方式を用いたプリンタ、高速の業務用プリンタ、プラスチックフィルムへの印字装置、ラベル印字装置などに応用できる改良されたインクジェット記録方法、インクジェット記録装置、及びインクジェット記録物に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録技術は、加圧オンデマンド方式や荷電制御方式などを用い、インクを微小ノズルを通して液滴化し、画像情報に応じて紙等の記録媒体に付着させる技術である。このようなインクジェット記録技術は、プリンタ、ファクシミリ及び複写装置のような画像形成装置に好適に用いられている。インクジェット記録技術は、記録媒体に直接インクを付着させ画像を形成できるため、電子写真記録のような感光体を用いた間接記録に比べ、簡便な装置構成で記録ができ、今後記録媒体への画像記録方式として更なる発展が期待されている。
【0003】
このようなインクジェット記録方法は、低騒音のプリント方式であり、画像信号に応じて、インクを、紙、布及びプラスチックシート等の被プリント材(記録媒体)上に直接吐出して文字や画像等をプリントする方式(直接吐出方式)が主流である。また、インクジェット記録方法は、プリントの際に版を必要としないので、少部数でも効率的な印刷物が作成できるため、産業用途からも期待されている印刷方式である。産業用途に用いるには、様々な記録媒体に画像形成しなければならないが、現在主流の直接吐出方式ではこれを満足することができていない。
【0004】
すなわち、直接吐出方式によるインクジェット記録には記録媒体の影響を受け易いという制限がある。
具体的には、記録媒体のインク吸収性の違いや、インクに対する濡れ性の違いによって、印字ドットの広がり方、滲み方、隣のドットとのつながり方が変化するため、画像品質が記録媒体の影響を受けやすく、さまざまな記録媒体に安定した画像を形成することは難しい。
例えば、紙などのインク吸収性の記録媒体に対してはインクが紙に着滴して数ミリ秒以内に記録媒体内に浸透し、その際に紙の繊維などに沿って浸透が進むためインクの滲みや、異なる色のインクの混色などが生じ、高画質な画像形成の妨げとなることがある。
【0005】
そのため、従来より各種の対策が提案されているが、それらは、未だ充分に満足できるものとはいい難い。例えば、インクジェット記録方法およびインクジェット記録装置 富士フイルム 記録媒体上に光硬化性の前処理剤を半硬化させた後、インクジェット方式により光硬化性のインクを吐出して画像を形成する方法と装置に関連する技術が多数提案(例えば、特許文献1の特開2008−105382号公報参照)。これらの発明では、インクを吐出する前に下塗り層を半硬化させている。半硬化させることで過度なインク滴の広がりを防止するものであるが、しかし、この半硬化状態を作り出す硬化の条件は難しく、完全に硬化したり、ほとんど硬化しないなどのムラが発生し、このムラによってインク滴の広がりに差が生じてしまうという問題がある。
【0006】
また、特許文献2の特開2004−42548号公報には、インクとしてエネルギー線硬化型インクを適用し、被記録媒体上に吐出したエネルギー線硬化型色インクのドットにそれぞれの吐出タイミングに合わせてエネルギー線を照射し、増粘させて隣接するドットが互いに混合しない程度にプレ硬化させ、その後さらにエネルギー線を照射して本硬化させるインクジェット記録方法が提案されている。この方法で滲みは抑制されるが、種々の被記録媒体間での画像が異なってしまう問題は残っている。
【0007】
特許文献3の特開2004−244624号公報には、活性エネルギー線で硬化可能なカチオン重合性成分を含有するインクを、インクジェット記録ヘッドから記録媒体に吐出、着弾した後、活性エネルギー線を照射して硬化させて画像を形成するインクジェット記録方法において、該インクの表面張力1の値をAmN/m、該活性エネルギー線の照射により硬化したインクの表面張力2の値をBmN/mとした時、A≦Bの条件を満たすことにより、形成した画像の滲み耐性、濃度均一性及び平滑性に優れた高精細画像が得られるインクジェット記録方法を提供するとしている。しかし、単に1つの前処理液のそれも色インクとの相対的な表面張力差を定義しただけのものでは、多種多様な画像の各種属性を一度に満足させることが難しい。
【0008】
一方、フィルム等のインクを吸収しない記録媒体に対しては、浸透による乾燥ができないため、溶剤の揮発によって乾燥するインクや相変化によって固化するインクや光重合反応硬化性のインクなどが用いられるが、記録媒体へのぬれ易さによって、形成される画像ドットの形状や面積が異なる点が高画質な画像を安定して形成する際の問題となる。
例えば、インクが濡れ難い表面を有するフィルムへの印字(ベタ)では先に着弾したインク滴が後に着弾したインク滴に引き寄せられてしまう(ビーディング)現象を起こしやすく、ベタ画像などインクドットを密に形成する場合など、一様な画像を得ることが難しくなる。
記録媒体に表面処理を施すことにより、インクに濡れやすくすることも可能であるが、逆に濡れやすくなるとドットが滲みやすく、画素が拡張して、ベタ画像の形成には適するが、微細で高精細な表現ができなくなるという問題がある。
【0009】
そこで、特許文献4の特開2008−246837号公報には、被記録媒体上に、下塗り液を付与する下塗り液付与工程と、白色顔料を含む白インクを付与する白インク付与工程と、付与された前記下塗り液及び前記白インクを半硬化させる硬化工程と、半硬化された前記下塗り液及び前記白インク上に、活性エネルギー線の照射により硬化可能なインクを吐出して画像を記録する記録工程と、を含むインクジェット記録方法が記載されており、また、特許文献5の特開2004−42525号公報記載の技術は、透明または半透明な非吸収性被記録媒体上に、放射線硬化型白色インクを下塗り層として均一に塗設し、放射線照射により固化あるいは増粘させた後に、放射線硬化型色インクセットを用いたインクジェット記録を行うことにより、色インクの視認性、滲み、種々の被記録媒体間での画像が異なってしまう問題を改良するとしている。が、液滴間の混合に起因する線幅の不均一や色ムラ等の解消には不十分である。
【0010】
インクを重ね打ちすると濃いベタ画像を形成できそうであるが、インク厚みが厚くなり、一般の反応性インクの印字では表面の凹凸が大きくなり、乱反射によって、光学濃度が低下してしまう。
【0011】
インク滴を小滴として、ドット数を増やすことによってベタ画像表現と高精細な画像表現を両立しようという方法もあるが、高速印字を行うと、ノズルから吐出された小滴は、紙搬送によって生じる風の影響を受けやすくなり、着滴位置が不安定になり、高精細な画像形成が難しくなる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
このように、様々な記録媒体への画像記録において、高濃度のベタ画像と微細で高精細な画像表現を両立することが難しく、これが本発明で解決しようとする課題である。
より具体的には、インク吸収性やインクとの濡れ性の異なる様々な記録媒体を用いた場合にも種々の記録媒体間での画像均一性が高く、インク滲みが効果的に抑制され、液滴間の混合に起因する線幅の不均一や色ムラ等の発生を抑制できるとともに、インク画素密度の高い高濃度表現(ベタ)の部分においても表面凹凸が少なく表面散乱の少ない高光学濃度の表現ができ、同時に微細文字や解像度が高い高精細な部分の表現も可能となる高画質な画像形成を行えるようにしたインクジェット記録方法およびインクジェット記録装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題は、つぎの(1)〜(14)のインクジェット記録方法、インクジェット記録装置、及びインクジェット記録物により解決される。
(1)記録媒体上に形成されたエネルギー線硬化性の液層にエネルギー線硬化性インクを供給した後に、該被記録媒体上に形成されたエネルギー線硬化性の液層とそこに供給された該インクを硬化させて画像形成するインクジェット記録方法であって、前記記録媒体上に形成した2以上の表面張力の異なる分布パターンを有する前記エネルギー線硬化性液層にインクを吐出することを特徴とするインクジェット記録方法。
(2)記録媒体上に形成されたエネルギー線硬化液層がインクより高表面張力の液層領域と、インクと同等かこれより低表面張力の液層領域とからなることを特徴とする前記第(1)項に記載のインクジェット記録方法。
(3)高解像表現画像を要する領域に、表面張力がインクと同等かこれより低いエネルギー線硬化性液層を形成し、そこにインクを吐出することを特徴とする前記第(1)項又は第(2)項に記載のインクジェット記録方法。
(4)中間調画像形成領域に、表面張力がインクと同等かこれより低いエネルギー線硬化性液層を形成し、そこにインクを吐出することを特徴とする前記第(1)項乃至第(3)項のいずれかに記載のインクジェット記録方法。
(5)ベタ画像形成領域に、表面張力がインクより高いエネルギー線硬化性液層を形成することを特徴とする前記第(1)項乃至第(4)項のいずれかに記載のインクジェット記録方法。
(6)ベタ画像を形成する領域の輪郭部に、ベタ印字部より表面張力が低いエネルギー線硬化液層を形成することを特徴とする前記第(1)項乃至第(5)項のいずれかに記載のインクジェット記録方法。
(7)記録媒体上に、インクより高表面張力のエネルギー線硬化性液を供給する工程と、その結果形成された高表面張力のエネルギー線硬化性液層の領域の一部に、低表面張力のエネルギー線硬化液層を形成する工程と、そこにインクを吐出して印字する工程と、エネルギー線照射する工程を有する前記第(1)項乃至第(6)項のいずれかに記載のインクジェット記録方法。
(8)記録媒体上に、インクより高表面張力のエネルギー線硬化性液を供給する工程と、その部分に界面活性剤含有液を供給する工程と、そこにインクを吐出して印字する工程と、エネルギー線照射する工程を有する前記第(1)項乃至第(7)項のいずれかに記載のインクジェット記録方法。
(9)記録媒体上に、インクより高粘度で、かつ、インクより高表面張力のエネルギー線硬化性液を供給する工程と、その部分に界面活性剤含有液を供給する工程と、そこにインクを吐出して印字する工程と、エネルギー線照射する工程を有する前記第(1)項乃至第(8)項のいずれかに記載のインクジェット記録方法。
(10)記録媒体上での粘度が吐出時より大きくなる高表面張力のエネルギー線硬化性液をインクジェットヘッドを利用して塗布する工程と、その一部に界面活性剤含有液を滴下する工程と、そこにインクを吐出して印字する工程と、エネルギー線照射する工程を有する前記第(1)項乃至第(9)項のいずれかに記載のインクジェット記録方法。
(11)記録媒体上での粘度が吐出時より大きくなる高表面張力のエネルギー線硬化性液をインクジェットヘッドを利用して塗布する工程と、それ以外の部分に界面活性剤含有液を滴下する工程と、そこにインクを吐出して印字する工程と、エネルギー線照射する工程を有する前記第(1)項乃至第(9)項のいずれかに記載のインクジェット記録方法。
(12)記録媒体上に、少なくとも2種の表面張力の異なるエネルギー線硬化性液を付与して表面張力の異なる分布パターンを有するエネルギー線硬化性液層を形成するエネルギー線硬化性液層形成手段と、前記記録媒体上に形成されたエネルギー線硬化性液層上に、エネルギー線硬化性インクを吐出するインク吐出手段と、前記エネルギー線硬化性液層及び前記エネルギー線硬化性インクに、エネルギー線を照射し硬化させて、画像を形成する硬化手段と、を有することを特徴とするインクジェット記録装置。
(13)インク吐出手段が、ノズルヘッドを含む前記第(12)項に記載のインクジェット記録装置。
(14)記録媒体上に、少なくとも2種の表面張力の異なるエネルギー線硬化性液を付与して表面張力の異なる分布パターンを有するエネルギー線硬化性液層を形成するエネルギー線硬化性液層形成工程と、前記記録媒体上に形成されたエネルギー線硬化性液層上に、エネルギー線硬化性インクを吐出するインク吐出工程と、前記エネルギー線硬化性液層及び前記エネルギー線硬化性インクに、エネルギー線を照射し硬化させて、画像を形成する硬化工程とを含むインクジェット記録方法により形成されることを特徴とするインクジェット記録物。
【発明の効果】
【0014】
以下の詳細かつ具体的な説明から理解されるように、本発明のインクジェット記録方法、インクジェット記録装置によれば、インク吸収性やインクとの濡れ性の異なる様々な記録媒体を用いた場合にも種々の記録媒体間での画像均一性が高く、インク滲みが効果的に抑制され、液滴間の混合に起因する線幅の不均一や色ムラ等の発生を抑制できるとともに、インク画素密度の高い高濃度表現(ベタ)の部分においても表面凹凸が少なく表面散乱の少ない高光学濃度の表現ができ、同時に微細文字や解像度が高い高精細な部分の表現も可能となる高画質な画像形成を行えるようになるという極めて優れた効果が奏される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施例により形成された画像の顕微鏡写真の拡大図である。
【図2】本発明により、抜けのないベタ部と同時にきれいな輪郭を形成する方法例を説明する図である。
【図3】高表面張力液の供給領域を、C液又は表面活性剤含有液を用いて低表面張力化する方法の1例を模式的に示す図である。
【図4】高表面張力液の供給領域を、C液又は表面活性剤含有液を用いて低表面張力化する他の方法例を模式的に示す図である。
【図5】高表面張力液の供給領域を、C液又は表面活性剤含有液を用いて低表面張力化する更に他の方法例を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を詳細に説明する。
はじめに、理解を容易にするため、本発明の要諦思想について説明すると、本発明では、画像のドット密度や求められる精細さに応じて、記録媒体上に表面張力をパターン化したエネルギー硬化性液層を形成することによって、そこに打ち込んだインクドットの精細性や広がりをコントロールして、豊かな画像表現を可能にすることができる。
これは、以下の2つの現象を利用することがポイントである。
【0017】
(I)エネルギー硬化性インクAを記録媒体上のインクより低表面張力のエネルギー線硬化性液層Bに吐出するとインク滴はエネルギー線硬化性液層中にその滴の一部、又は全体が入り込み、その状態でエネルギー照射によって硬化させると高精細画像に適した輪郭が滑らかで直径が小さなインクドットが得られる。
【0018】
このインクドットは色の異なるインクドットと重なっても滲んだり、隣のインクドット色が流れだしたりせず、美しい画素ドットを形成することができる。
インクがぬれ易い記録媒体に直接、複数のインクジェットヘッドから多色印字すると印字から硬化のタイミングの差でドットの広がり方が異なり、ドットの大きさが変化してしまうが、低表面張力のエネルギー線硬化性液層中に入ったインクドットは直接印字より広がり方が緩やかになるので、各色のヘッド位置によって硬化のタイミングがずれた場合にも、直径のそろったドットを形成することができる。
【0019】
(II)一方、高表面張力のエネルギー線硬化液層CにインクAを吐出すると、インクは記録媒体上のエネルギー線硬化性液層中に入りこまず、層上に瞬時に薄く広がるのでより少ないインク量で効果的にベタ画像を形成することができる。
本発明は(I)及び(II)の現象を利用するものであり、画像の精細さやベタ部分などに応じて、メディア上に表面張力の異なるパターンを形成することによって、そこに吐出したインク滴の広がりを制御して、同じドットの滴量で高解像とベタの豊かな表現を実現できる点が優れている。
ところで本発明において、硬化前のエネルギー線硬化性液層(液層領域)の静的表面張力は、エネルギー線硬化性液の静的表面張力と異なるところがない。換言すれば、各液層領域の表面張力がそれぞれのエネルギー硬化性液の静的表面張力値とほぼ等しい間に、エネルギー硬化性インクを吐出することが望ましい。後ほど詳述する実施例では、例えば、3つのエネルギー線硬化性の液層(液層領域)の表面張力の測定値でなく、3種類のエネルギー硬化性液の表面張力の測定値が示されているのは、このような理由による。
【0020】
本発明に係る画像形成方法は、記録媒体上に、高表面張力のエネルギー線硬化性液を供給して高表面張力のエネルギー線硬化性液層の領域を形成し、前記高表面張力のエネルギー線硬化性液層の領域の少なくとも1部に又は前記高表面張力のエネルギー線硬化性液層の領域と異なる位置に、低表面張力のエネルギー線硬化性液の領域を形成し、そして、この位置にインクドットを着弾させることを包含する。どのような手段により高表面張力のエネルギー線硬化性液を供給するかは本発明の本質的な問題ではないが、塗布、ベタ印刷、ノズルヘッドによる供給等であることができる。
また、低表面張力のエネルギー線硬化性液領域の形成をどのような手段により行なうかも、本発明の本質的な問題ではないが、塗布、ノズルヘッドによる供給等に加えて、前記高表面張力のエネルギー線硬化性液層の領域の一部に界面活性剤を供給することにより、その部分を低表面張力化することができる等の理由、及び、仮に低表面張力のエネルギー線硬化性液層の領域(の一部)に高表面張力のエネルギー線硬化性液を後から供給すると両者の混合がより顕著になる等の理由により、高表面張力のエネルギー線硬化性液の領域形成を先に行うことが好ましい。
【0021】
本発明に係る画像形成方法の一例について説明すると、記録媒体供給部から、記録媒体が供給されエネルギー線硬化性液の付与部に搬送され、記録媒体表面にインクより高表面張力のエネルギー線硬化性液B層が形成される。その上に低表面張力液吐出部で画像パターンに応じて低表面張力液Cが吐出され、その後、インク滴を吐出するインク吐出部から画像パターンに応じてインクAを吐出する。
その後各液を硬化させる波長領域のエネルギー線を照射する硬化手段により、記録媒体上の液層およびインク記録パターンが硬化させられる。
【0022】
ここで、記録媒体上に層状に形成された2種類の液層の表面張力値は以下の関係である。
エネルギー線硬化性液Bの静的表面張力 > エネルギー線硬化性インクAの静的表面張力
エネルギー線硬化性インクA、B、Cの静的表面張力についてさらに詳細に説明すると、エネルギー線硬化性液B層の表面張力は30mN/mより大きいことが望ましく、35〜45mN/mであることがより好ましい。低表面張力液Cの表面張力は30mN/m以下であることが望ましく、20〜25mN/mであることがより好ましい。エネルギー線硬化性インクAの表面張力はインクB、Cの静的表面張力の間にあることが好ましく、25〜35mN/mであることがより好ましい。
また、これら3種のエネルギー線硬化性液の粘度(25℃)についても説明すると、硬化性インクAは10〜10000mPa・sの粘度のものであることが好ましく、硬化性インクBは10〜100mPa・sの粘度のものであることが好ましく、硬化性インクCは10〜60mPa・sの粘度のものであることが好ましい。
さらに、記録媒体について、具体的に例を挙げて具体的に説明すると、インク吸収性及びインクとの濡れ性の異なる様々な記録媒体を用いることができ、具体的には例えば、
易浸透性の各種普通紙として、リコー社製 リコーマイペーパ、など一般の各種普通紙を難浸透性の各種コート紙として、王子製紙製 PODグロスコート100、 ミラーコート、 OKトップコート、ルミアートグロスなど、一般の各種コート紙を用いることができ、非浸透性の各種フィルムとして、東レ製 ルミラーE20(マット)、 ルミラーX20(グロス)など、一般の各種フィルムを、用いることができる。
このような方法で画像を形成することで、高濃度のベタ画像と微細で高精細な画像表現を両立することが可能となる。本発明の記録方法による画像は、上記説明から理解できるように、画像ベタ部部分と高精細部分とで画素ドットサイズとドットの3次元形状が異なる。
【0023】
<<エネルギー線硬化性インク>>
前記エネルギー線硬化性インクとしては、エネルギー線を吸収することにより硬化するものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、ビヒクル、及び着色剤を含有し、更に必要に応じて、レベリング剤、反応促進剤、反応禁止剤、増感剤等のその他の成分を含有してなる。
なお、前記エネルギー線硬化性インクとしては、着色剤を含まないクリアインク、黒、シアン、マゼンタ、イエロー等の色材を含んだ有色インクを主に使用するが、ホワイト等の他、諧調表現を豊かにする薄色インクを併用することも可能である。例えば、B液として、白色液を用い、C液として透明液を用いることで、メディアの反射率によらず、高コントラストの画像を得ることが可能になる。
また、前記(8)項〜(11)項記載のように、本発明は、「界面活性剤含有液を使用するインクジェット記録方法」を包含するが、この界面活性剤含有液の組成(構成成分)、各構成成分の含有量について、例を挙げて具体的に説明すると、例えば、重合性化合物(ジオキソランアクリレート)(85質量%)、反応開始剤(イルガキュア379)(5質量%)、界面活性剤(BYK3510)(10質量%)を好適に用いることができる。
【0024】
−ビヒクル−
前記ビヒクルは、重合性化合物、及び光開始剤を含む。
前記重合性化合物としては、例えば、カチオン重合性化合物、ラジカル重合性化合物、光硬化性樹脂モノマーなどが挙げられる。これらは少なくとも1種を混合して用いることができる。これらはいずれも記録媒体への濡れ性が良好で広範囲の各種被着体物質に対し密着性に優れる。
このほか、レベリング剤や反応促進剤、反応禁止剤、増感剤などの添加剤を含んでもよい。エネルギー線硬化型インクは、重合性化合物として、ラジカル重合性化合物を含むラジカル重合系インクとカチオン重合性化合物を含むカチオン重合系インクとに大別されるが、その両系のインクがそれぞれ適用可能であり、その混合系を用いても良い。
本発明の装置では、前処理剤として色材を含まないクリアインクを使用し、有色インクとして黒、シアン、マゼンタ、イエローなどの色材を含んだものを主に使用するが、ホワイトなどの他、諧調表現を豊かにする薄色インクを併用することも適用可能である。
【0025】
本発明において、カチオン重合型インクに用いるエポキシ化合物としては、例えばビスフェノールA型エポキシ、ビスフェノールBA型エポキシ、ビスフェノールF型エポキシ、ビスフェノールAD型エポキシ、フェノールノボラック型エポキシ、クレゾールノボラック型エポキシ、脂環式エポキシ、フルオレン系エポキシ、ナフタレン系エポキシ、グリシジルエステル化合物、グリシジルアミン化合物、複素環式エポキシ、αオレフィンエポキシ等を挙げることができる。
【0026】
特に脂環式エポキシ化合物は、粘度が低く且つ硬化速度が速く本発明のカチオン重合型インク組成物に好適に適用できる。例えば、3,4−エポキシシクロヘキセニルメチル−3’、4’−エポキシシクロヘキセンカルボキシレート及びこのε−カプロラクトン変成物、ビス−(3,4エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、1,2:8,9ジエポキシリモネン、ビニルシクロヘキセンモノオキサイド1,2−エポキシ−4−ビニルシクロヘキサンが好適に使用できる。
【0027】
本発明において、カチオン重合型インクに用いるオキセタン化合物としては、インクに要求される特性に応じて適宜選択すれば良く、特に基材への密着性が特に重要となる場合は3−エチル−3−(フェノキシメチル)オキタセンが好適に使用できる。
【0028】
本発明において、カチオン重合型インクは、必要に応じてビニルエーテル化合物を混合することができる。好適に添加できるビニルエーテルとして例えば、2−エチルヘキシルビニルエーテル、ブタンジオール−1,4−ジビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、ジプロピレングリコールジビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、ヒドロキシエチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、メチルビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、ビニル4−ヒドロキシブチルエーテル、ビニルシクロヘキシルエーテル、ビニルプロピオネート、ビニルカルバゾール、ビニルビロリドン等が挙げられる。
【0029】
本発明において、カチオン重合型インクの反応性成分として、必要に応じてプロペニルエーテル及びブテニルエーテルを配合できる。例えば1−ドデシル−1−プロペニルエーテル、1−ドデシル−1−ブテニルエーテル、1−ブテノキシメチル−2−ノルボネン、1−4−ジ(1−ブテノキシ)ブタン、1,10−ジ(1−ブテノキシ)デカン、1,4−ジ(1−ブテノキシメチル)シクロヘキサン、ジエチレングリコールジ(1−ブテニル)エーテル、1,2,3−トリ(1−ブテノキシ)プロパン、プロペニルエーテルプロピレンカーボネート等が好適に適用できる。
【0030】
本発明において、カチオン重合型インクに適用できるカチオン重合開始剤は、紫外線等のエネルギー線を受けることにより重合を開始させる物質を生成する化合物であれば良く、オニウム塩であるアリールスルフォニウム塩やアリールヨウドニウム塩が好適に使用できる。さらに必要に応じて、N−ビニルカルバゾール、チオキサントン化合物、9,10−ジブトキシアントラセン等のアントラセン化合物等の光増感剤を併用できる。
【0031】
本発明におけるラジカル重合型インクの成分は、ラジカル重合開始剤から発生する開始種により重合反応を起こさせる各種公知のラジカル重合性のモノマーが好ましい。ラジカル重合性モノマーとしては、(メタ)アクリレート類、(メタ)アクリルアミド類、芳香族ビニル類、ビニルエーテル類及び内部二重結合を有する化合物(マレイン酸など)等が挙げられる。以下、単官能の重合性化合物、及び多官能の重合性化合物を詳細に例示する。
【0032】
単官能の(メタ)アクリレート類の具体例として、ヘキシル(メタ)アクリレート、2‐エチルヘキシル(メタ)アクリレート、tert−オクチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、4−n−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ボルニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシルジグリコール(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、2−クロロエチル(メタ)アクリレート、4−ブロモブチル(メタ)アクリレート、シアノエチル(メタ)アクリレート、ブトシキメチル(メタ)アクリレート、3−メトキシブチル(メタ)アクリレート、アルコキシメチル(メタ)アクリレート、アルコキシエチル(メタ)アクリレート、2−(2−メトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、2−(2−ブトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、2,2,2−トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、1H,1H,2H,2H−パーフルオロデシル(メタ)アクリレート、4‐ブチルフェニル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、2,4,5−テトラメチルフェニル(メタ)アクリレート、4−クロロフェニル(メタ)アクリレート、フェノキシメチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、グリシジロキシブチル(メタ)アクリレート、グリシジロキシエチル(メタ)アクリレート、グリシジロキシプロピル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、トリメトキシシリルプロピル(メタ)アクリレート、トリメチルシリルプロピル(メタ)アクリレート、ポリエチレンオキシドモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、オリゴエチレンオキシドモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、ポリエチレンオキシド(メタ)アクリレート、オリゴエチレンオキシド(メタ)アクリレート、オリゴエチレンオキシドモノアルキルエーテル(メタ)アクリレート、ポリエチレンオキシドモノアルキルエーテル(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレンオキシドモノアルキルエーテル(メタ)アクリレート、オリゴプロピレンオキシドモノアルキルエーテル(メタ)アクリレート、2−メタクリロイロキシエチルコハク酸、2−メタクリロイロキシヘキサヒドロフタル酸、2−メタクリロイロキシエチル−2−ヒドロキシプロピルフタレート、ブトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、トリフロロエチル(メタ)アクリレート、パーフロロオクチルエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、EO変性フェノール(メタ)アクリレート、EO変性クレゾール(メタ)アクリレート、EO変性ノニルフェノール(メタ)アクリレート、PO変性ノニルフェノール(メタ)アクリレート、EO変性−2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0033】
本発明に用いるラジカル重合型インクに使用できる単官能の(メタ)アクリルアミド類の例としては、(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−プロピル(メタ)アクリルアミド、N−n−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−t−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルモルフォリン等が挙げられる。
【0034】
本発明に用いるラジカル重合型インクに使用できる単官能の前記芳香族ビニル類の具体例としては、スチレン、メチルスチレン、ジメチルスチレン、トリメチルスチレン、エチルスチレン、イソプロピルスチレン、クロルメチルスチレン、メトキシスチレン、アセトキシスチレン、クロルスチレン、ジクロルスチレン、ブロムスチレン、ビニル安息香酸メチルエステル、3−メチルスチレン、4−メチルスチレン、3−エチルスチレン、4−エチルスチレン、3−プロピルスチレン、4−プロピルスチレン、3−ブチルスチレン、4−ブチルスチレン、3−ヘキシルスチレン、4−ヘキシルスチレン、3−オクチルスチレン、4−オクチルスチレン、3−(2−エチルヘキシル)スチレン、4−(2−エチルヘキシル)スチレン、アリルスチレン、イソプロペニルスチレン、ブテニルスチレン、オクテニルスチレン、4−t−ブトキシカルボニルスチレン、4−メトキシスチレン、4−t−ブトキシスチレン等が挙げられる。
【0035】
本発明に用いるラジカル重合型インクに使用できる単官能ビニルエーテルの例として、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、t−ブチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、n−ノニルビニルエーテル、ラウリルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、シクロヘキシルメチルビニルエーテル、4−メチルシクロヘキシルメチルビニルエーテル、ベンジルビニルエーテル、ジシクロペンテニルビニルエーテル、2−ジシクロペンテノキシエチルビニルエーテル、メトキシエチルビニルエーテル、エトキシエチルビニルエーテル、ブトキシエチルビニルエーテル、メトキシエトキシエチルビニルエーテル、エトキシエトキシエチルビニルエーテル、メトキシポリエチレングリコールビニルエーテル、テトラヒドロフルフリルビニルエーテル、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、2−ヒドロキシプロピルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、4−ヒドロキシメチルシクロヘキシルメチルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、ポリエチレングリコールビニルエーテル、クロルエチルビニルエーテル、クロルブチルビニルエーテル、クロルエトキシエチルビニルエーテル、フェニルエチルビニルエーテル、フェノキシポリエチレングリコールビニルエーテル等が挙げられる。
【0036】
二官能の(メタ)アクリレートの具体例として、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、2,4−ジメチル−1,5−ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、ブチルエチルプロパンジオール(メタ)アクリレート、エトキシ化シクロヘキサンメタノールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングルコールジ(メタ)アクリレート、オリゴエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、2−エチル−2−ブチル−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、EO変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールFポリエトキシジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、オリゴプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、2−エチル−2−ブチルプロパンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0037】
三官能の(メタ)アクリレートの具体例として、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンのアルキレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリス((メタ)アクリロイルオキシプロピル)エーテル、イソシアヌル酸アルキレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、プロピオン酸ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリス((メタ)アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、ヒドロキシピバルアルデヒド変性ジメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ソルビトールトリ(メタ)アクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エトキシ化グリセリントリ(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
【0038】
本発明に用いるラジカル重合型インクに使用できる多官能ビニルエーテルの例として、エチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、ポリエチレングリコールジビニルエーテル、プロピレングリコールジビニルエーテル、ブチレングリコールジビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテル、ビスフェノールAアルキレンオキサイドジビニルエーテル、ビスフェノールFアルキレンオキサイドジビニルエーテルなどのジビニルエーテル類;トリメチロールエタントリビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル、ジトリメチロールプロパンテトラビニルエーテル、グリセリントリビニルエーテル、ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、ジペンタエリスリトールペンタビニルエーテル、ジペンタエリスリトールヘキサビニルエーテル、エチレンオキサイド付加トリメチロールプロパントリビニルエーテル、プロピレンオキサイド付加トリメチロールプロパントリビニルエーテル、エチレンオキサイド付加ジトリメチロールプロパンテトラビニルエーテル、プロピレンオキサイド付加ジトリメチロールプロパンテトラビニルエーテル、エチレンオキサイド付加ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、プロピレンオキサイド付加ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、エチレンオキサイド付加ジペンタエリスリトールヘキサビニルエーテル、プロピレンオキサイド付加ジペンタエリスリトールヘキサビニルエーテルなどの多官能ビニルエーテル類等が挙げられる。
【0039】
ビニルエーテル化合物としては、ジ又はトリビニルエーテル化合物が、硬化性、被記録媒体との密着性、形成された画像の表面硬度などの観点から好ましく、特にジビニルエーテル化合物が好ましい。
【0040】
本発明に用いることができる着色剤は特に制限はなく、公知の水溶性染料、油溶性染料及び顔料等から適宜選択して用いることができる。その中でも非水溶性媒体に均一に分散、溶解しやすい油溶性染料、顔料が好ましい。
【0041】
具体的にはインク組成物中、光硬化性樹脂モノマーは10〜70重量パーセントを占めるが、有効なものとしては、分子構造中にラジカル重合可能な不飽和二重結合を有する比較的低粘度の樹脂モノマーで、例えば、単官能基の2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート(EHA)、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート(HEA)、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート(HPA)、カプロラクトン変性テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、イソボニル(メタ)アクリレート、3−メトキシブチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、2−フェノキシエチル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、カプロラクトン(メタ)アクリレート、エトキシ化ノニルフェノール(メタ)アクリレート、二官能基のトリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールヒドロキシピバリン酸エステルジ(メタ)アクリレート(MANDA)およびヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールエステルジ(メタ)アクリレート(HPNDA)、1.3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート(BGDA)、1.4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート(BUDA)、1.6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート(HDDA)、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート(DEGDA)、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート(NPGDA)、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート(TPGDA)、カプロラクトン変性ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールエステルジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化オペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、エトキシ変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール200ジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール400ジ(メタ)アクリレート、多官能基のトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート(TMPTA)、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート(PETA)、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート(DPHA)、トリアリルイソシアネート、ε−カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールの(メタ)アクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロポキシ化グリセリルトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタ(メタ)アクリレートエステル等が好ましい。
【0042】
具体的には、KAYARAD TC−110S、KAYARAD R−128H、KAYARAD R−526、KAYARAD NPGDA、KAYARAD PEG400DA、KAYARAD MANDA、KAYARAD R−167、KAYARAD HX−220、KAYARAD HX−620、KAYARAD R−551、KAYARAD R−712、KAYARAD R−604、KAYARAD R−684、KAYARAD GPO、KAYARAD TMPTA、KAYARAD THE−330、KAYARAD TPA−320、KAYARADTPA−330、KAYARAD PET−30、KAYARAD RP−1040、KAYARAD T−1420、KAYARAD DPHA、KAYARAD DPHA−2C、KAYARAD D−310、KAYARAD D−330、KAYARAD DPCA−20、KAYARADDPCA−30、KAYARAD DPCA−60、KAYARAD DPCA−120、KAYARAD DN−0075、KAYARAD DN−2475、KAYAMER PM−2、KAYAMER PM−21、KSシリーズHDDA,TPGDA,TMPTA,SRシリーズ256、257、285、335、339A、395、440、495、504、111、212、213、230、259、268、272、344、349、601、602、610、9003、368、415、444、454、492、499、502、9020、9035、295、355、399E494、9041203、208、242、313、604、205、206、209、210、214、231E239、248、252、297、348、365C、480、9036、350(日本化薬製)、ビームセット770(荒川化学製)等が使用できる。
【0043】
ビヒクルはこれらの中から選ばれる少なくとも1種、または2種以上を混合して用いることができる。これらはいずれも記録媒体へのぬれ性が良好で広範囲の各種被着体物質に対し密着性に優れる。
【0044】
更に、低粘度化および高速化のために水および溶剤を添加しても良い。インク組成物の構成成分をいずれも良く溶解させ、印字後は速やかに蒸発するものであればいずれの溶剤でも良い。このために使用する溶剤は、ケトンおよび/またはアルコールを主溶剤とするのが好ましく、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メタノール、エタノール、イソプロパノール等を単独又は混合さらに水との混合溶剤として使用するのが好ましい。
【0045】
光開始剤としては、ビヒクル総量中0.01重量パーセントから10重量パーセント含まれる。例えば、ベンゾインエーテル系、アセトフェノン系,ベンゾフェノン系、ベンゾフェノン、チオキサントン系、その他アシルホスフィンオキサイド、メチルフェニルグリオキシレート等の特殊グループがあり、ベンゾインアルキルエーテル、ベンジルメチルケタール、ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、p−イソプロピル−α−ヒドロキシイソブチルフェノン、1,1−ジクロロアセトフェノン、2−クロロチオキサントン等が選ばれる。
光開始助剤としては、トリエタノールアミン、2−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、重合性3級アミン等が挙げられる。
【0046】
具体的には、バイキュア10、30、55(ストウファー)、KAYACURE BP−100、KAYACURE BMS、KAYACURE DETX−S、KAYACURE CTX、KAYACURE 2−EAQ、KAYACURE DMBI、KAYACURE EPA(日本化薬)、イルガキュア651、184、907、369(チバガイギ)、ダロキュア1173、1116、953、2959、2273、1664(メルク)、サンドレ1000(サンド)、カウンタキュアCTX、カウンタキュアBMS,、カウンタキュアITX、カウンタキュアPDO、カウンタキュアBEA、DMB(ワードブレンキンソップ)、サンキュアーIP、BTTP(日本油脂)等が望ましい。その他、光開始剤含有タイプの光硬化型樹脂を使用しても良い。
着色剤としては上記ビヒクルに良分散して耐候性に優れた顔料が望ましい。特に限定されるわけではないが、本発明には例えばカラーインデックスに記載される下記の番号の有機又は無機顔料が使用できる。
【0047】
赤あるいはマゼンタ顔料としては、Pigment Red 3、5、19、22、31、38、43、48:1、48:2、48:3、48:4、48:5、49:1、53:1、57:1、57:2、58:4、63:1、81、81:1、81:2、81:3、81:4、88、104、108、112、122、123、144、146、149、166、168、169、170、177、178、179、184、185、208、216、226、257、Pigment Violet 3、19、23、29、30、37、50、88、Pigment Orange 13、16、20、36、青またはシアン顔料としては、pigment Blue 1、15、15:1、15:2、15:3、15:4、15:6、16、17−1、22、27、28、29、36、60、緑顔料としては、Pigment Green 7、26、36、50、黄顔料としては、Pigment Yellow 1、3、12、13、14、17、34、35、37、55、74、81、83、93、94,95、97、108、109、110、137、138、139、153、154、155、157、166、167、168、180、185、193、黒顔料としては、Pigment Black 7、28、26などが目的に応じて使用できる。
【0048】
具体的に商品名を示すと、例えば、クロモファインイエロー2080、5900、5930、AF−1300、2700L、クロモファインオレンジ3700L、6730、クロモファインスカーレット6750、クロモファインマゼンタ6880、6886、6891N、6790、6887、クロモファインバイオレット RE、クロモファインレッド6820、6830、クロモファインブルーHS−3、5187、5108、5197、5085N、SR−5020、5026、5050、4920、4927、4937、4824、4933GN−EP、4940、4973、5205、5208、5214、5221、5000P、クロモファイングリーン2GN、2GO、2G−550D、5310、5370、6830、クロモファインブラックA−1103、セイカファストエロー10GH、A−3、2035、2054、2200、2270、2300、2400(B)、2500、2600、ZAY−260、2700(B)、2770、セイカファストレッド8040、C405(F)、CA120、LR−116、1531B、8060R、1547、ZAW−262、1537B、GY、4R−4016、3820、3891、ZA−215、セイカファストカーミン6B1476T−7、1483LT、3840、3870、セイカファストボルドー10B−430、セイカライトローズR40、セイカライトバイオレットB800、7805、セイカファストマルーン460N、セイカファストオレンジ900、2900、セイカライトブルーC718、A612、シアニンブルー4933M、4933GN−EP、4940、4973(大日精化工業製)、KET Yellow 401、402、403、404、405、406、416、424、KET Orange 501、KET Red 301、302、303、304、305、306、307、308、309、310、336、337、338、346、KET Blue 101、102、103、104、105、106、111、118、124、KET Green 201(大日本インキ化学製)、Colortex Yellow 301、314、315、316、P−624、314、U10GN、U3GN、UNN、UA−414、U263、Finecol Yellow T−13、T−05、Pigment Yellow1705、Colortex Orange 202、Colortex Red101、103、115、116、D3B、P−625、102、H−1024、105C、UFN、UCN、UBN、U3BN、URN、UGN、UG276、U456、U457、105C、USN、Colortex Maroon601、Colortex BrownB610N、Colortex Violet600、Pigment Red 122、Colortex Blue516、517、518、519、A818、P−908、510、Colortex Green402、403、Colortex Black 702、U905(山陽色素製)、Lionol Yellow1405G、Lionol Blue FG7330、FG7350、FG7400G、FG7405G、ES、ESP−S(東洋インキ製)、Toner Magenta E02、Permanent RubinF6B、Toner Yellow HG、Permanent Yellow GG−02、Hostapeam BlueB2G(ヘキストインダストリ製)、カーボンブラック#2600、#2400、#2350、#2200、#1000、#990、#980、#970、#960、#950、#850、MCF88、#750、#650、MA600、MA7、MA8、MA11、MA100、MA100R、MA77、#52、#50、#47、#45、#45L、#40、#33、#32、#30、#25、#20、#10、#5、#44、CF9、(三菱化学製)などが挙げられる。
顔料の添加量は1〜20重量部が適量である。0.1重量部未満では画像品質が低下し、20重量部より多いとインク粘度特性に悪影響を与える。また、色の調整等で2種類以上の着色剤を適時混合して使用できる。
【0049】
本発明のインク組成物に更に機能性を発現するため、各種の増感剤、光安定化剤、表面処理剤、界面活性剤、粘度低下剤、酸化防止剤、老化防止剤、架橋促進剤、重合禁止剤、可塑剤、防腐剤、pH調整剤、消泡剤、保湿剤、分散剤、染料等を混合することができる。
【0050】
上記したビヒクル、着色剤及びその他の成分の混合、分散にはビーズミル、ホモジナイザが最適であるが周知の各種の粉砕又は分散装置が特に制限なく使用できる。
【0051】
硬化手段として用いるエネルギー線光源としては、紫外線などのエネルギー線を照射するものであり、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、熱陰極管、冷陰極管、LED等が適用可能である。UV照射ランプにおいては熱が発生し、被記録体が変形してしまう可能性があるため、冷却機構、例えば、コールドミラー、コールドフィルター、ワーク冷却等が具備されていると望ましい。
【0052】
また、メタルハライドは、波長領域が広いため光源として有効である。メタルハライドはPb、Sn、Feなどの金属のハロゲン化物が用いられ、光開始剤の吸収スペクトルに合わせて選択できる。硬化に有効であるランプであれば、特に制限なく使用できる。
【実施例】
【0053】
以下、本発明の実施例を、図面を参照しつつ、詳細に説明するが、この実施例は、本発明の理解を容易にするためのものであって、本発明を制限するためのものではない。
本発明の効果を確認するために下記の条件でインクドット画像を形成し、そのドット径を測定して評価した。
【0054】
<静的表面張力の測定>
測定器として協和界面科学製, AUTOMATIC SUPERFACE TENSIONMETER CBVP−Z を用い、Wilhelmy法にて測定した。Wilhelmy法とは、測定子(白金プレート)が液体の表面に触れた際に発生する測定子を液中に引き込もうとする力を読み取ることによって、表面張力を測定する方法である。温度25℃にて測定した。
【0055】
<粘度の測定>
測定器として東機産業製 回転式粘度計 RE−80Lを用い、測定条件としては、ロータ:標準 1o34’ x R24、サンプル量:1.2ml、測定時間:3min
温度:25℃ 回転数:50rpm にて測定した。
【0056】
<高表面張力のエネルギー線硬化性液Bの調製>
光硬化性樹脂モノマー(カプロラクタン変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、日本化薬株式会社製、KAYARAD DPCA60)27質量%に反応開始剤(イルガキュア379、BASF社製)を3質量%添加して、高表面張力のエネルギー線硬化性液Bを調製した。高表面張力のエネルギー線硬化性液Bの静的表面張力は38mN/m、粘度(25℃)は1222mPa・sであった。
つぎに、高表面張力のエネルギー線硬化性液Bの組成(構成成分)、各構成成分の含有量について、例を挙げて具体的に説明すると、例えば、光硬化性樹脂モノマー(カプロラクタン変性ジペンタエリスルトールヘキサアクリレート)(97質量%)、反応開始剤(イルガキュア379)(3質量%)を好適に用いることができる。
また、低表面張力のエネルギー線硬化性液Cの組成(構成成分)、各構成成分の含有量について、例を挙げて具体的に説明すると、例えば、重合性化合物(東レ社製、ビスコート#1000)(27質量%)、重合性化合物(ジオキソランアクリレート)(63質量%)、反応開始剤(イルガキュア379)(9質量%)、界面活性剤(ビックケミー社製 BYK3510)(1質量%)を公的に用いることができる。
【0057】
<低表面張力のエネルギー線硬化性液Cの調製>
重合性化合物(大阪有機化学工業株式会社製、ビスコートV#1000)の27質量%、及びジオキソランアクリレート(大阪有機化学工業株式会社製、MEDOL10)の63質量%(≒3:7の質量比)混合液に、反応開始剤(イルガキュア379、BASF社製)を10質量%と、界面活性剤(ビックケミー社製、BYK3510)を1質量%加えて、低表面張力のエネルギー線硬化性液Cを調製した。低表面張力のエネルギー線硬化性液Cの静的表面張力は22mN/m、粘度(25℃)は21.8mPa・sであった。
【0058】
−色素含有インクA−
色素含有インクAとしては、前記低表面張力のエネルギー線硬化性液Cにカーボンブラック(#5B 三菱化学製)を3質量%分散した静的表面張力22mN/mの液を用いた。色素含有インクAの粘度(25℃)は39.6mPa・sであった。
【0059】
[実施例1]
高表面張力のエネルギー線硬化性液Bを、厚み100μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(東レ株式会社製、ルミラーE20)に、セレクトローラ(松尾産業株式会社製、OSP−02)で、厚み2μm相当の薄層を形成できるように塗布した。
高表面張力のエネルギー線硬化性液B層上に、リコープリンティングシステム株式会社製Gen4ヘッド2個を使用した印字装置にて30m/s、8pLのインク滴を吐出できるように温度及び波形を調整し、印字装置の第1ヘッドから、低表面張力のエネルギー線硬化性液Cを印字領域の左半分に300dpiで吐出した。その後、印字装置の第2ヘッドから色素含有インクAを印字領域全域に300dpiで吐出し、UV照射システム(Integration Technology社製、Sub Zero 085 Aバルブ)を用いて、波長 365nmにおける平均照度 約560mW/cmの照射条件で、0.18秒間、高表面張力のエネルギー線硬化性液B層、低表面張力のエネルギー線硬化性液C層、及び色素含有インクAを硬化させて、画像を形成した。
【0060】
<評価>
得られた画像を、顕微鏡で観察し、評価した。結果を図1に示す。図1の結果から、エネルギー硬化性インクAは、高表面張力のエネルギー線硬化液B層に吐出すると、高表面張力のエネルギー線硬化液B層上に瞬時に薄く広がるので、より少ないインク量で効果的にベタ画像を形成することができることが分かった。
また、図1の結果から、エネルギー硬化性インクAは、低表面張力のエネルギー線硬化性液C層に吐出すると、インク滴はエネルギー線硬化性液C層中にその液滴の一部又は全体が入り込み、その状態でエネルギー照射して硬化させると高精細画像に適した輪郭が滑らかでかつ直径が小さなインクドットが得られることが分かった。
また、3種類の液の静的表面張力の関係が、低表面張力のエネルギー線硬化性液C≦色素含有インクA<高表面張力のエネルギー線硬化性液Bであり、高表面張力のエネルギー線硬化性液Bの静的表面張力が30mN/m以上であることが好ましいことが分かった。
【0061】
−中間調画像形成−
薄い色調表現を要する画像部分には、中間調画像形成領域に表面張力がインクと同等かこれより低いエネルギー線硬化性液層を形成し、そこにインクを吐出すると良い。
図1の結果から、エネルギー硬化性インクAは、低表面張力のエネルギー線硬化性液C層に吐出すると、インク滴はエネルギー線硬化性液C層中にその液滴の一部又は全体が入り込み、その状態でエネルギー照射して硬化させると輪郭が滑らかでかつ直径が小さなインクドットが得られることが分かっているので、ドット密度が密でない中間調画像を美しく表現するのに適している。
【0062】
−抜けのないベタ部と同時にきれいな輪郭の形成−
濃い色調表現を要するベタ画像を形成する領域の輪郭部にベタ印字部より表面張力が低いエネルギー線硬化液層を形成することによって、均質で埋まり具合の良好なベタ部と同時に滑らかでくっきりとした輪郭とを得ることができ、高画質の応用幅をひろげることができる。
図1の結果からエネルギー硬化性インクAは、高表面張力のエネルギー線硬化液B層に吐出すると、高表面張力のエネルギー線硬化液B層上に瞬時に薄く広がるので、より少ないインク量で効果的にベタ画像を形成することができ、抜けの少ないベタ画像を形成するのに適している。しかし、各インク滴が広く広がるため、ベタ領域の輪郭が変形したり、ぼやけたりしやすくなり精彩な表現が難しい。
【0063】
そこで、図2に示すように、高表面張力のエネルギー線硬化液B層上のベタ輪郭部を形成する部分に表面張力の低いエネルギー線硬化性液C層に吐出し、同じ位置にエネルギー硬化性インクAを吐出することによって、インク滴はエネルギー線硬化性液C層中にその液滴の一部又は全体が入り込み、その状態で、その内側のB層にエネルギー硬化性インクAを吐出してからエネルギー照射して硬化させると高精細画像に適した輪郭が滑らかで、かつ輪郭の内側のベタ部は抜けのないきれいなベタを形成することができる。
【0064】
−界面活性剤含有液を供給する工程を含む記録方法1−
図3にその1例が示されるように、記録媒体上にインクより高粘度で、かつ、インクより高表面張力のエネルギー線硬化性液Bを塗布する工程と、その部分に界面活性剤含有液を滴下する工程と、そこにインクを吐出して印字する工程と、エネルギー線照射する工程を施すことにより、前記(8)項に記載の本発明のインクジェット記録法を遂行することができる。
【0065】
−界面活性剤含有液を供給する工程を含む記録方法2及び3−
また、前記(9)項に記載の本発明のインクジェット記録方法は、図4にその1例が示されるように、記録媒体上での粘度が吐出時より大きくなる高表面張力のエネルギー線硬化性液をインクジェットヘッドを利用して塗布する工程と、その一部に界面活性剤含有液を滴下する工程と、そこにインクを吐出して印字する工程と、エネルギー線照射する工程により、遂行することができる。
さらに、前記(10)項に記載の本発明のインクジェット記録方法は、図4に示すように、記録媒体上での粘度が吐出時より大きくなる高表面張力のエネルギー線硬化性液をインクジェットヘッドを利用して塗布する工程と、それ以外の部分に界面活性剤含有液滴下する工程と、そこにインクを吐出して印字する工程と、エネルギー線照射する工程を有する。高表面張力のエネルギー線硬化性液としては、室温で固化し、加熱時に粘度低下してインクジェットヘッドから吐出可能となるインク、例えば、ワックス成分含有のエネルギー硬化性液などが有用である。また、水性の高表面張力エネルギー線硬化性液として、室温でゲル化するゼラチン等のゲル化剤を含有する液を用いることも有効である。
【0066】
−界面活性剤含有液を供給する工程を含む記録方法4−
また、前記(10)項に記載の本発明のインクジェット記録方法は、図4に示すように、記録媒体上での粘度が吐出時より大きくなる高表面張力のエネルギー線硬化性液をインクジェットヘッドを利用して塗布する工程と、それ以外の部分に界面活性剤含有液滴下する工程と、そこにインクを吐出して印字する工程と、エネルギー線照射する工程を有するインクジェット記録方法であり、高表面張力のエネルギー線硬化性液としては、室温で固化し、加熱時に粘度低下してインクジェットヘッドから吐出可能となるインク、例えば、ワックス成分含有のエネルギー硬化性液などが有用である。また、水性の高表面張力エネルギー線硬化性液として、室温でゲル化するゼラチン等のゲル化剤を含有する液を用いることも有効である。
【0067】
−界面活性剤含有液を供給する工程を含む記録方法5−
また、前記(11)項に記載の本発明のインクジェット記録方法を実行するための、高表面張力液を塗布する手段と、狙った位置に低表面張力液を着弾させ、これと同位置にインクドットを着弾させることができるノズルヘッドを備えたインクジェット記録装置構成の略図を図3と図4に示した。また、図2に着弾液滴位置の例を示しており、これら装置により、当該インクジェット記録方法が好適裡に実行できることは、当業者が容易に理解されよう。
【0068】
図5に示されるインクジェット記録方法は、前記(11)項に記載された記録方法、すなわち、記録媒体上での粘度が吐出時より大きくなる高表面張力のエネルギー線硬化性液をインクジェットヘッドを利用して塗布する工程と、それ以外の部分に界面活性剤含有液を滴下する工程と、そこにインクを吐出して印字する工程と、エネルギー線照射する工程を有することを更なる特徴とする前記(1)〜(9)項のいずれかに記載のインクジェット記録方法の1例を示したものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0069】
【特許文献1】特開2008−105382号公報
【特許文献2】特開2004−42548号公報
【特許文献3】特開2004−244624号公報
【特許文献4】特開2008−246837号公報
【特許文献5】特開2004−42525号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体上に形成されたエネルギー線硬化性の液層にエネルギー線硬化性インクを供給した後に、該被記録媒体上に形成されたエネルギー線硬化性の液層とそこに供給された該インクを硬化させて画像形成するインクジェット記録方法であって、前記記録媒体上に形成した2以上の表面張力の異なる分布パターンを有する前記エネルギー線硬化性液層にインクを吐出することを特徴とするインクジェット記録方法。
【請求項2】
記録媒体上に形成されたエネルギー線硬化液層がインクより高表面張力の液層領域と、インクと同等かこれより低表面張力の液層領域とからなることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録方法。
【請求項3】
高解像表現画像を要する領域に、表面張力がインクと同等かこれより低いエネルギー線硬化性液層を形成し、そこにインクを吐出することを特徴とする請求項1又は2に記載のインクジェット記録方法。
【請求項4】
中間調画像形成領域に、表面張力がインクと同等かこれより低いエネルギー線硬化性液層を形成し、そこにインクを吐出することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のインクジェット記録方法。
【請求項5】
ベタ画像形成領域に、表面張力がインクより高いエネルギー線硬化性液層を形成することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のインクジェット記録方法。
【請求項6】
ベタ画像を形成する領域の輪郭部に、ベタ印字部より表面張力が低いエネルギー線硬化液層を形成することを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載のインクジェット記録方法。
【請求項7】
記録媒体上に、インクより高表面張力のエネルギー線硬化性液を供給する工程と、その結果形成された高表面張力のエネルギー線硬化性液層の領域の一部に、低表面張力のエネルギー線硬化液層を形成する工程と、そこにインクを吐出して印字する工程と、エネルギー線照射する工程を有する請求項1乃至6のいずれかに記載のインクジェット記録方法。
【請求項8】
記録媒体上に、インクより高表面張力のエネルギー線硬化性液を供給する工程と、その部分に界面活性剤含有液を供給する工程と、そこにインクを吐出して印字する工程と、エネルギー線照射する工程を有する請求項1乃至7のいずれかに記載のインクジェット記録方法。
【請求項9】
記録媒体上に、インクより高粘度で、かつ、インクより高表面張力のエネルギー線硬化性液を供給する工程と、その部分に界面活性剤含有液を供給する工程と、そこにインクを吐出して印字する工程と、エネルギー線照射する工程を有する請求項1乃至8のいずれかに記載のインクジェット記録方法。
【請求項10】
記録媒体上での粘度が吐出時より大きくなる高表面張力のエネルギー線硬化性液をインクジェットヘッドを利用して塗布する工程と、その一部に界面活性剤含有液を滴下する工程と、そこにインクを吐出して印字する工程と、エネルギー線照射する工程を有する請求項1乃至9のいずれかに記載のインクジェット記録方法。
【請求項11】
記録媒体上での粘度が吐出時より大きくなる高表面張力のエネルギー線硬化性液をインクジェットヘッドを利用して塗布する工程と、それ以外の部分に界面活性剤含有液を滴下する工程と、そこにインクを吐出して印字する工程と、エネルギー線照射する工程を有する請求項1乃至9のいずれかに記載のインクジェット記録方法。
【請求項12】
記録媒体上に、少なくとも2種の表面張力の異なるエネルギー線硬化性液を付与して表面張力の異なる分布パターンを有するエネルギー線硬化性液層を形成するエネルギー線硬化性液層形成手段と、前記記録媒体上に形成されたエネルギー線硬化性液層上に、エネルギー線硬化性インクを吐出するインク吐出手段と、前記エネルギー線硬化性液層及び前記エネルギー線硬化性インクに、エネルギー線を照射し硬化させて、画像を形成する硬化手段と、を有することを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項13】
インク吐出手段が、ノズルヘッドを含む請求項12に記載のインクジェット記録装置。
【請求項14】
記録媒体上に、少なくとも2種の表面張力の異なるエネルギー線硬化性液を付与して表面張力の異なる分布パターンを有するエネルギー線硬化性液層を形成するエネルギー線硬化性液層形成工程と、前記記録媒体上に形成されたエネルギー線硬化性液層上に、エネルギー線硬化性インクを吐出するインク吐出工程と、前記エネルギー線硬化性液層及び前記エネルギー線硬化性インクに、エネルギー線を照射し硬化させて、画像を形成する硬化工程とを含むインクジェット記録方法により形成されることを特徴とするインクジェット記録物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−214030(P2012−214030A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−64965(P2012−64965)
【出願日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】