説明

インクジェット記録方法および記録物

【課題】記録媒体に良好な光輝性および耐擦過性を有する画像を形成することができるインクジェット記録方法を提供すること。
【解決手段】本発明にかかるインクジェット記録方法は、光輝性顔料を含むインク組成物を用いて、細孔を有する記録媒体に記録を行うインクジェット記録方法であって、前記光輝性顔料の平均粒子径が1nm以上100nm以下であり、前記記録媒体の前記細孔の平均開口径は、3nm以上200nm以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット記録方法および記録物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、印刷物上に光輝性を有する塗膜を形成するためには、真鍮、アルミニウム微粒子等から作成された金粉、銀粉を顔料に用いた印刷インキや金属箔を用いた箔押し印刷、金属箔を用いた熱転写方式等が用いられている。
【0003】
しかしながら、金粉、銀粉を用いた印刷インキによる塗膜は、使用される金属粉の粒子径が10μmから30μmと大きく、つや消し調の光輝性は得られるが、鏡面光沢を得ることは難しかった。また、金属箔を使用する箔押し又は熱転写方式では、印刷媒体に接着剤を塗布し、その上に平滑な金属箔を押し付け、記録媒体と金属箔を密着させ加熱し、金属箔と記録媒体を熱融着させるといった方法をとる。そのため、比較的良好な光沢は得られるが、製造工程が多くなり製造工程中で圧力や熱が加わるため、記録媒体に関して、熱や変形に強い記録媒体などに限られるという制限があった。
【0004】
近年、印刷におけるインクジェットの応用例が数多く見受けられ、その中の一つとして、メタリック印刷がある。例えば、特許文献1には、平板状の形状を有するアルミニウム粒子を含む分散液、およびインク組成物が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−174712号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、インクジェットによってアルミニウム粒子を付着させる方法では、印刷面の光沢を維持する等の目的で、当該粒子に耐水性や耐候性を付与する必要があった。また、光沢度を高めるために、粒子径の大きいアルミニウム粒子を選択すると、印刷により付着されたアルミニウム粒子の耐擦過性が不足する場合があり、また、当該粒子を分散させたインク組成物において、分散安定性が不十分となる場合があった。
【0007】
本発明者らは、化学的安定性の良好な光輝性顔料を用いて、インクジェットによって光輝性画像を形成することを検討した結果、特定の粒子径を有する光輝性顔料を用いることで、インクにおける良好な分散性、並びに、形成された画像における良好な光輝性および耐擦過性を満足させることができることを見出した。
【0008】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、そのいくつかの態様にかかる目的の一つは、記録媒体に良好な光輝性および耐擦過性を有する画像を形成することができるインクジェット記録方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の態様または適用例として実現することができる。
【0010】
[適用例1]
本発明にかかるインクジェット記録方法の一態様は、光輝性顔料を含むインク組成物を用いて、細孔を有する記録媒体に記録を行うインクジェット記録方法であって、前記光輝性顔料の平均粒子径が1nm以上100nm以下であり、前記記録媒体の前記細孔の平均開口径は、3nm以上200nm以下である。
【0011】
本適用例のインクジェット記録方法によれば、記録媒体に光輝性を有し、良好な耐擦過性を有する画像を記録することができる。
【0012】
なお、本明細書において、光輝性顔料の平均粒子径とは、体積基準の平均粒子径を指す。体積基準の平均粒子径は、例えば、動的光散乱法を原理としたレーザー回折式粒度分布測定装置を用いて測定されることができる。

[適用例2]
適用例1において、前記記録媒体の前記細孔の平均開口径は、18nm以上100nm以下であってもよい。
【0013】
本適用例のインクジェット記録方法によれば、形成される画像の光輝性および耐擦過性をさらに高めることができる。
【0014】
[適用例3]
適用例1または適用例2において、前記光輝性顔料の平均粒子径が3nm以上80nm以下であってもよい。
【0015】
[適用例4]
適用例1ないし適用例3のいずれか一例において、前記細孔が、前記光輝性顔料の平均粒子径の0.01倍以上10倍以下である平均開口径を有してもよい。
【0016】
本適用例のインクジェット記録方法によれば、形成される画像の光輝性および耐擦過性をさらに高めることができる。
【0017】
[適用例5]
適用例1ないし適用例4のいずれか一例において、前記細孔が、前記光輝性顔料の平均粒子径の0.1倍以上5倍以下である平均開口径を有してもよい。
【0018】
[適用例6]
適用例1ないし適用例5のいずれか一例において、前記細孔が、前記光輝性顔料の平均粒子径の1倍以上5倍以下である平均開口径を有してもよい。
【0019】
[適用例7]
本発明にかかる記録物の一態様は、適用例1ないし適用例6のいずれか一例に記載のインクジェット記録方法によって記録されたものである。
【0020】
本適用例の記録物は、光輝性および耐擦過性の良好な画像が形成されている。
【0021】
[適用例8]
本発明にかかる記録物の一態様は、適用例1ないし適用例6のいずれか一例に記載のインクジェット記録方法によってJIS Z 8741(1997)に基づく鏡面光沢度が200以上である画像が形成されたものである。
【0022】
本適用例の記録物は、光輝性および耐擦過性の良好な画像が形成されている。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態について説明する。なお以下の実施形態は、本発明の一例を説明するものである。そのため、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、要旨を変更しない範囲で実施される各種の変形例も含む。なお、以下の実施形態で説明される構成の全てが本発明の必須構成要件であるとは限らない。
【0024】
1.インク組成物
本実施形態のインク組成物は、光輝性顔料を含有する。
【0025】
1.1.光輝性顔料
本実施形態のインク組成物に含有される光輝性顔料としては、媒体に付着されたときに光輝性を呈しうるものであれば特に限定されないが、例えば、アルミニウム、銀、金、白金、ニッケル、クロム、錫、亜鉛、インジウム、チタン、および銅からなる群より選択される1種または2種以上の合金や、パール光沢を有するパール顔料を挙げることができる。パール顔料の代表例としては、二酸化チタン被覆雲母、魚鱗箔、酸塩化ビスマス等の真珠光沢や干渉光沢を有する顔料が挙げられる。また、光輝性顔料は、水との反応を抑制するための表面処理が施されていてもよい。インク組成物が、光輝性顔料を含むことにより、優れた光輝性を有する画像を形成することができる。
【0026】
本実施形態のインク組成物では、光輝性顔料として、銀またはアルミニウムを用いることがより好ましい。これらは、各種金属の中でも白色度の高い金属であるため、他色のインクと重ね合わせることにより、金色、銅色等の様々な金属色を表現することができる。
【0027】
光輝性顔料は、平均粒子径R1が1nm以上100nmのものが使用される。光輝性顔料の平均粒子径R1が前記範囲にあれば、記録媒体に付着されたときに、良好な光輝性を呈することができる。また、光輝性顔料の平均粒子径R1が、1nm以上100nm以下であれば、一般的な記録媒体の平均開口径R2との比(R2/R1)を調節しやすく、付着された場合の光輝性に加えて、記録された画像の耐擦過性を得やすい。
【0028】
また、光輝性顔料の平均粒子径R1は、3nm以上80nm以下であることがより好ましい。光輝性顔料の平均粒子径R1が、3nm以上80nm以下であることにより、インク組成物を用いて形成される画像の光沢感(高級感)および耐擦性を特に優れたものとすることができる。またこの場合、インクジェット方式によるインク組成物の吐出安定性(着弾位置精度、吐出量の安定性等)を特に優れたものとすることができ、長期間にわたって所望の画質の画像をより良好に形成することができる。
【0029】
なお、本明細書では、「平均粒子径」とは、特に断りのない限り、体積基準の平均粒子径のことを指すものとする。平均粒子径は、レーザー回折散乱法を測定原理とする粒度分布測定装置により測定することができる。レーザー回折式粒度分布測定装置として、例えば、動的光散乱法を測定原理とする粒度分布計(例えば、「マイクロトラックUPA」、「ナノトラックUPA」、両者とも日機装株式会社製)を用いることができる。
【0030】
また、本明細書において、光輝性とは、例えば、得られる画像の鏡面光沢度(日本工業規格(JIS)Z8741を参照。)によって特徴付けられる性質のことを指す。例えば、光輝性の種類としては、光を鏡面反射するような光輝性や、いわゆるマット調の光輝性などがあり、それぞれ、例えば、鏡面光沢度の高低によって特徴付けることができる。
【0031】
インク組成物における光輝性顔料の含有率は、0.5質量%以上30質量%以下が好ましく、5.0質量%以上15質量%以下がより好ましい。光輝性顔料の含有率が前記範囲であることにより、インク組成物のインクジェット方式による吐出安定性、インク組成物の保存安定性を特に優れたものとすることができる。また、光輝性顔料の含有率が前記範囲であることにより、印刷物とされたときの印刷媒体上での光輝性顔料の密度(単位面積当たりの含有量)が低い場合から高い場合まで、広い密度の範囲で、良好な画質(光輝性)、耐擦性を実現することができる。このため、例えば、インク組成物を用いて得られる印刷物が、光輝性顔料の密度が異なる領域を有する場合であっても、印刷物の画質を優れたものとすることができる。
【0032】
以下、光輝性顔料の好ましい態様の一例としての銀粒子について述べる。本実施形態のインク組成物に光輝性顔料として、銀粒子が含有される場合には、銀粒子は、例えば以下のような銀粒子水分散液として供給される。なお、銀粒子は、必ずしも水分散液の性状で供給されなくてもよく、分散性が確保できる限り、粉体の性状で供給されてもよい。
【0033】
銀粒子水分散液は、銀粒子および水を含む。本実施形態の銀粒子水分散液に含まれる銀粒子は、銀を主成分とする粒子である。銀粒子は、例えば、副成分として、他の金属、酸素、炭素等を含んでも良い。銀粒子における銀の純度としては、例えば、50%以上とすることができる。銀粒子は、銀と他の金属の合金であってもよい。また、銀粒子水分散液中の銀粒子は、コロイド(粒子コロイド)の状態で存在していてもよい。銀粒子がコロイド状態で分散している場合は、さらに分散性が良好となり、例えば、銀粒子水分散液、およびこれをインク組成物に配合した場合の保存安定性の向上に寄与することができる。
【0034】
銀粒子水分散液の製造方法の一例を以下に記す。以下の製造方法は、銀コロイド粒子分散液の製造方法の一例であるが、本実施形態で使用しうる銀粒子としては、これに限定されない。
【0035】
以下に例示する銀粒子の製造方法は、少なくともビニルピロリドンのポリマーと多価アルコールとを含む第1溶液を用意する第1溶液用意工程と、金属銀に還元することが可能な銀前駆体が溶媒に溶解した第2溶液を用意する第2溶液用意工程と、第1溶液を所定の温度に加熱する第1溶液加熱工程と、加熱した第1溶液と第2溶液とを混合し混合液を得る混合工程と、混合液を所定の温度で一定時間保持する反応進行工程と、反応が進行した混合液から銀粒子(銀コロイド粒子)を取り出し、水系分散媒に分散する分散工程とを有している。
【0036】
まずビニルピロリドンのポリマーと多価アルコールとを含む第1溶液を用意する。
【0037】
第1溶液に含まれるビニルピロリドンのポリマーの機能の一つとしては、本例の製造方法により製造される銀粒子の表面に吸着することにより、銀粒子の凝集を防止し、銀コロイド粒子を形成することが挙げられる。
【0038】
使用するビニルピロリドンのポリマーには、ビニルピロリドンの単独重合体(ポリビニルピロリドン)、ビニルピロリドンの共重合体が含まれてもよい。ビニルピロリドンの共重合体としては、例えば、ビニルピロリドンとα−オレフィンとの共重合体、ビニルピロリドンと酢酸ビニルとの共重合体、ビニルピロリドンとジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートとの共重合体、ビニルピロリドンと(メタ)アクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロライドとの共重合体、ビニルピロリドンとビニルカプロラクタムジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートとの共重合体、ビニルピロリドンとスチレンとの共重合体、ビニルピロリドンと(メタ)アクリル酸との共重合体等が挙げられる。
【0039】
ビニルピロリドンのポリマーとしてポリビニルピロリドンを用いる場合、ポリビニルピロリドンの重量平均分子量は、3000以上60000以下であることが好ましい。
【0040】
多価アルコールは、第2溶液中に含まれる銀前駆体を銀に還元する機能を有する化合物である。多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、グリセロール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、トリエタノールアミン、トリヒドロキシメチルアミノメタン等が挙げられる。
【0041】
上記のようなビニルピロリドンのポリマーを上記多価アルコールに溶解させることにより、第1溶液を用意する。なお、第1溶液中には、多価アルコールとは別に、第2溶液中の銀前駆体を還元する還元剤が含まれていてもよい。このような還元剤としては、例えば、ヒドラジンおよびその誘導体;ヒドロキシルアミンおよびその誘導体;メタノール、エタノール等の一価のアルコール;ホルムアルデヒド、ギ酸、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒドおよびこれらのアンモニウム塩等のアルデヒド;次亜リン酸塩;亜硫酸塩;テトラヒドロ・ホウ酸塩(例えば、Li、Na、Kのテトラヒドロホウ酸塩);水素化アルミニウムリチウム(LiAlH);水素化ホウ素ナトリウム(NaBH);ヒドロキノン、アルキル置換したヒドロキノン、カテコールおよびピロガロール等のポリヒドロキシベンゼン;フェニレンジアミンおよびその誘導体;アミノフェノールおよびその誘導体;アスコルビン酸、クエン酸、アスコルビン酸ケタール等のカルボン酸およびその誘導体;3−ピラゾリドンおよびその誘導体;ヒドロキシテトロン酸、ヒドロキシテトロン酸アミドおよびその誘導体;ビス・ナフトール類およびその誘導体;スルホンアミドフェノールおよびその誘導体;Li、NaおよびK等が挙げられる。これらの中でも、ギ酸アンモニウム塩、ギ酸、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、アスコルビン酸、クエン酸、水素化ホウ素ナトリウム、水素化アルミニウムリチウム、トリエチル水素化ホウ素リチウムを用いることが好ましく、ギ酸アンモニウム塩を用いることがより好ましい。
【0042】
次に、銀に還元することが可能な銀前駆体が溶媒に溶解した第2溶液を用意する。
【0043】
銀前駆体とは、上述した多価アルコールや還元剤によって還元することにより、銀を生成する化合物である。
【0044】
このような銀前駆体としては、例えば、銀の、酸化物、水酸化物(水和した酸化物を含む)、硝酸塩、亜硝酸塩、硫酸塩、ハロゲン化物(例えばフッ化物、塩化物、臭化物およびヨウ化物)、炭酸塩、リン酸塩、アジ化物、ホウ酸塩(フルオロホウ酸塩、ピラゾリルホウ酸塩等を含む)、スルホン酸塩、カルボン酸塩(例えば、ギ酸塩、酢酸塩、プロピオン酸塩、シュウ酸エステルおよびクエン酸塩)、置換されたカルボン酸塩(トリフルオロアセテート等のハロゲン化カルボン酸塩、ヒドロキシカルボン酸塩、アミノカルボン酸塩等を含む)、ヘキサクロロ白金酸塩、テトラクロロ金酸塩、タングステン酸塩等の銀の無機および有機酸塩等、銀アルコキシド、銀錯体等が挙げられる。
【0045】
溶媒としては、上述した銀前駆体が溶解するものであれば特に限定されず、例えば、上記第1溶液用意工程で説明した多価アルコール、脂肪族、脂環式、芳香族のアルコール類、エーテルアルコール類、アミノアルコール類等を用いることができる。
【0046】
上記のような銀前駆体を溶媒に溶解させることにより、第2溶液を得る。
【0047】
次に、第1溶液と第2溶液とを混合し、反応を行う。
【0048】
混合の温度は、100℃以上140℃以下であることが好ましく、101℃以上130℃以下であることがより好ましく、115℃以上125℃以下であることがさらに好ましい。これにより銀前駆体をより効率よく還元することができるとともに、形成される銀粒子の表面にビニルピロリドンを効率よく吸着させることができる。そして、一定時間加熱し、銀前駆体の還元反応を進行させる。加熱時間(反応時間)は、加熱温度にもよるが、30分以上180分以下であることが好ましく、30分以上120分以下であることがより好ましく、60分以上120分以下であることがさらに好ましい。これにより、銀前駆体をより確実に還元することができるとともに、形成される銀粒子の表面にビニルピロリドンをより効果的に吸着させることができる。
【0049】
その後、形成された銀粒子(銀コロイド粒子)を濾過や遠心分離等によって分離し、分離した銀粒子を水系分散媒に所望の濃度で分散させる。このようにして、銀粒子、銀粒子水分散液、または、銀コロイド水分散液を得ることができる。
【0050】
銀粒子水分散液には、上記以外の物質が含まれてもよい。例えば、製造後に残存した化合物、すなわち、アルコール類、分散剤、還元剤、塩類、フェノール類、アミン類、各種のポリマー類などが含まれていてもよい。これらの成分は、水以外の成分として、固形分と称することがある。
【0051】
以上例示した銀粒子水分散液は、本実施形態のインク組成物に配合される光輝性顔料として、銀粒子を選択する場合に、原料として好適に用いることができる。また、上記例示した銀粒子水分散液は、溶媒としてのベースが水であるため、容易にインク組成物に適用することができる。また、インク組成物には、複数種の光輝性顔料が配合されてもよい。
【0052】
1.2.水
本実施形態のインク組成物には、水が含有されていてもよい。インク組成物に用いられる水は、例えば、イオン交換水、限外ろ過水、逆浸透水、蒸留水などの純水または超純水などである。なお、光輝性顔料の分散の妨げにならない程度であれば、水中にはイオン等の改質剤や不純物が存在してもよい。
【0053】
本実施形態のインク組成物における水を含有させる場合の含有量は、光輝性顔料の分散が維持できる範囲で限定されないが、インク組成物の全量に対して50質量%以上95質量%以下であることが好ましい。インク組成物における水の含有量が、この範囲内であると、光輝性顔料の分散性がより良好となり、保存安定性をさらに高めることができる。また、上述の銀粒子水分散液を用いてインク組成物に銀粒子(光輝性顔料)を配合する場合には、インク組成物における水とは、銀粒子水分散液の水と、必要に応じて新たに配合される水の合計のことを指す。
【0054】
なお、水の含有量が50質量%以上95質量%以下であるということは、水以外の成分の含有量が5質量%以上50質量%以下であることを示している。本明細書では、水以外の成分のことを固形分と称することがあり、水の含有量が50質量%以上95質量%以下であるということは、インク組成物における固形分の濃度が5質量%以上50質量%以下であることを指している。
【0055】
1.3.その他の成分
本実施形態のインク組成物は、上述の光輝性顔料を含有し、光輝性顔料が分散された構造を有している。本実施形態のインク組成物は、必要に応じて、界面活性剤、多価アルコール、pH調整剤、樹脂類、色材等の添加剤を含有してもよい。
【0056】
界面活性剤としては、例えばアセチレングリコール系界面活性剤またはポリシロキサン系界面活性剤が挙げられる。これらの界面活性剤は、被記録面への濡れ性を高め、インクの浸透性を向上させる効果がある。アセチレングリコール系界面活性剤としては、例えば、2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール、3,6−ジメチル−4−オクチン−3,6−ジオール、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール、2,4−ジメチル−5−ヘキシン−3−オール等が挙げられる。また、アセチレングリコール系界面活性剤は、市販品を利用することもでき、例えばオルフィンE1010、STG、Y(以上、日信化学株式会社製)、サーフィノール104、82、465、485、TG(以上、Air Products and Chemicals Inc.製)が挙げられる。ポリシロキサン系界面活性剤としては、市販品を利用することができ、例えばBYK−347、BYK−348(ビックケミー・ジャパン株式会社製)等が挙げられる。さらに、本実施形態のインク組成物には、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、両性界面活性剤等のその他の界面活性剤を添加してもよい。
【0057】
多価アルコールとしては、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,2−ヘプタンジオール、1,2−オクタンジオールなどの炭素数が4以上8以下の1,2−アルカンジオール、1,2,6−ヘキサントリオール、チオグリコール、ヘキシレングリコール、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン等が挙げられる。これらの多価アルコールは、本実施形態のインク組成物をインクジェット記録装置に適用した場合に、インク組成物の乾燥を防止し、インクジェット記録ヘッド部分における目詰まりを防止する効果がある。
【0058】
これらのうち、特に、アルカンジオールは、記録媒体などの被記録面への濡れ性を高めてインクの浸透性を高める作用が強く好ましい。このようなアルカンジオールとしては、炭素数が6以上8以下の1,2−ヘキサンジオール、1,2−ヘプタンジオール、1,2−オクタンジオールは、記録媒体への浸透性が特に高いためより好ましい。
【0059】
pH調整剤としては、特に制限されず、例えばリン酸二水素カリウム、リン酸水素二ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カリウム、アンモニア、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム等が挙げられる。
【0060】
樹脂類としては、例えば、アクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸、メタクリル酸エステル、アクリロニトリル、シアノアクリレート、アクリルアミド、オレフィン、スチレン、酢酸ビニル、塩化ビニル、ビニルアルコール、ビニルエーテル、ビニルピロリドン、ビニルピリジン、ビニルカルバゾール、ビニルイミダゾール、塩化ビニリデンの単独重合体もしくは共重合体、ウレタン樹脂、フッ素樹脂、天然樹脂等が挙げられる。なお、共重合体は、ランダム共重合体、ブロック共重合体、交互共重合体、グラフト共重合体のいずれの形態でも用いることができる。これらの樹脂類は、光輝性顔料を記録媒体上に強固に定着させるために添加されることができる。
【0061】
色材としては、光輝性顔料以外の顔料および染料が挙げられ、通常のインクに使用することのできる色材を特に制限なく用いることができる。インク組成物に色材を含有させる場合には、例えば、記録媒体に塗布されたときに形成される画像に、光輝性とともに色彩を付与することができる。
【0062】
本実施形態のインク組成物に使用可能な染料としては、直接染料、酸性染料、食用染料、塩基性染料、反応性染料、分散染料、建染染料、可溶性建染染料、反応分散染料、など通常インクジェット記録に使用される各種染料を使用することができる。
【0063】
本実施形態のインク組成物に使用可能な顔料としては、無機顔料、有機顔料を挙げることができる。
【0064】
無機顔料としては、例えば。カーボンブラックを使用することができる。また、有機顔料としては、例えば、アゾ顔料、多環式顔料、染料キレート、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラックなどを使用することができる。顔料の色としては、黒色、イエロー、マゼンダ、シアンなどが挙げられる。本実施形態のインク組成物に色材を含有させる場合、色材を複数含有するものであっても良い。例えば、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの基本4色に加えて、それぞれの色毎に同系列の濃色や淡色を加えることができる。すなわち、マゼンタに加えて淡色のライトマゼンタ、濃色のレッド、シアンに加えて淡色のライトシアン、濃色のブルー、ブラックに加えて淡色であるグレイ、ライトブラック、濃色であるマットブラックを含有させることが例示できる。
【0065】
本実施形態のインク組成物に顔料を含有させる際には、顔料はその平均粒径が10〜200nmの範囲にあるものが好ましく、より好ましくは50〜150nm程度のものである。本実施形態のインク組成物に色材を含有させる場合は、色材の添加量は、0.1〜25質量%程度の範囲が好ましく、より好ましくは0.5〜15質量%程度の範囲である。
【0066】
また、インク組成物に顔料を含有させる場合には、当該顔料を分散させるための顔料分散剤をさらに添加してもよい。好ましい分散剤としては、顔料分散液を調製するのに慣用されている分散剤、例えば高分子分散剤を使用することができる。このような分散剤としては、通常のインクにおいて用いられている任意の分散剤を用いることができる。インク組成物に顔料分散剤を含有させる場合の含有量としては、インク組成物中の色材の含有量に対して、5〜200質量%、好ましくは30〜120質量%であり、分散すべき色材によって適宜選択するとよい。
【0067】
また、本実施形態のインク組成物は、水溶性ロジンなどの定着剤、安息香酸ナトリウムなどの防黴剤・防腐剤、アロハネート類などの酸化防止剤、湿潤剤、紫外線吸収剤、キレート剤、酸素吸収剤、防腐剤、防かび剤などの添加剤を含有させることができる。これらの添加剤は、1種単独で用いることもできるし2種以上組み合わせて用いることもできる。
【0068】
1.4.作用効果等
本実施形態のインク組成物は、インクジェット記録装置によって、記録媒体に対して吐出され、塗布されることができる。そして、記録媒体に付着されたときに、良好な光輝性を呈することができる。
【0069】
なお、本実施形態のインク組成物の用途は、特に限定されるものではなく、筆記具、スタンプ、記録計、ペンプロッター、インクジェット記録装置等に適用することができる。また、用途が、インクジェット記録方式の印刷である場合、インク組成物の20℃における粘度は、好ましくは2〜10mPa・sであり、より好ましくは3〜5mPa・sである。インク組成物の20℃における粘度が前記範囲内にあると、ノズルからインク組成物が適量吐出され、インク組成物の飛行曲がりや飛散を一層低減することができるため、インクジェット記録装置に好適に使用することができる。
【0070】
2.インクジェット記録方法
本実施形態のインクジェット記録方法は、インクジェット式記録ヘッドによって、上述のインク組成物を吐出させ、被記録面に細孔を有する記録媒体に付着させることを含み、記録媒体の細孔の平均開口径R2が、インク組成物中の光輝性顔料の平均粒子径R1の0.1倍以上5倍以下であることを特徴としている。以下の実施形態では、インクジェット記録装置を用いて、記録媒体上にインク組成物を吐出し、記録媒体上に付着させてドット群を形成するものを例示する。
【0071】
2.1.インクジェット式記録ヘッド
インクジェット記録装置の記録方式としては、例えば、ノズルとノズルの前方に置いた加速電極の間に強電界を印加し、ノズルからインクを液滴状で連続的に噴射させ、インク滴が偏向電極間を飛翔する間に印刷情報信号を偏光電極に与えて記録する方式またはインク滴を偏向することなく印刷情報信号に対応して噴射させる方式(静電吸引方式)、小型ポンプでインク液に圧力を加え、ノズルを水晶振動子等で機械的に振動させることにより、強制的にインク滴を噴射させる方式、インク液に圧電素子で圧力と印刷情報信号を同時に加え、インク滴を噴射・記録させる方式(ピエゾ方式)、インク液を印刷情報信号にしたがって微小電極で加熱発泡させ、インク滴を噴射・記録させる方式(サーマルジェット方式)等が挙げられる。
【0072】
本実施形態で用いるインクジェット記録装置としては、上記のインクジェット式記録ヘッド、本体、トレイ、ヘッド駆動機構、キャリッジなどを備えたものを例示できる。インクジェット式記録ヘッドには、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラックの少なくとも4色のインクセットを収容するインクカートリッジを備えて、フルカラー印刷ができるように構成されてもよい。本実施形態では、これらのインクカートリッジの少なくとも1つに、上述のインク組成物を充填し設置する。また、それ以外のカートリッジには、通常のインクなどが充填されてもよい。インクジェット記録装置は、内部に専用のコントロールボード等を備えており、インクジェット式記録ヘッドのインクの吐出タイミングおよびヘッド駆動機構の走査を制御することができる。
【0073】
2.2.記録媒体
本実施形態で用いる記録媒体としてはインクジェット記録装置によってインク組成物の液滴を塗布することができ、当該インク組成物が塗布される面(被記録面)に細孔を有するものを用いる。
【0074】
記録媒体の被記録面における細孔とは、走査型電子顕微鏡(SEM)等により、記録媒体の被記録面を観察したときに観察される凹部または穴のことを指す。細孔は記録媒体の内部まで連通しているような穴(連通路)を含み、また記録媒体の表面の凹凸の凹部を含む。記録媒体の被記録面側からSEM観察した場合の細孔の開口径(円相当径)は、例えば、1nm以上1μm以下である。
【0075】
記録媒体の種類は、被塗布面に細孔を有するかぎり特に限定されない。本実施形態のインクジェット記録方法に用いられる記録媒体としては、例えば、紙、多孔性フィルム、布等の吸収性記録媒体が挙げられる。また、プラスチック等のインク吸収性を有さない基材の場合には、被塗布面にインク受容層やインク吸収層が形成された記録媒体を挙げることができる。このようなインク受容層の材質としては、特に制限はなく、例えば、シリカ、コロイダルシリカ、アルミナ、高分子材料などで形成されることができる。インク受容層に用いられる高分子材料としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、澱粉、水溶性セルロース誘導体、アクリルシリコン系樹脂、ウレタン樹脂等を主成分として用いることができる。
【0076】
記録媒体は、グロス系、マット系、ダル系のいずれであってもよい。記録媒体の具体例としては、例えば、コート紙、アート紙、キャストコート紙等の表面加工紙、および、インク受容層が形成された塩化ビニルシートやPETフィルム等のプラスチックフィルムなどを挙げることができる。
【0077】
細孔の平均開口径R2は、例えば、記録媒体の被記録面をSEMにて観察した場合に、観察される穴(凹部)の円相当径(直径)を測定して求められる。具体的には、まず、視野内に少なくとも20個の細孔が観察されるSEM像を得る。次に、当該SEM像の細孔の周囲におけるコントラストの中間値をしきい値として、細孔の周囲(輪郭)を確定する。そして、輪郭に囲まれた部分の面積を計測し、これと同じ面積を有する円(相当円)の直径(円相当径)を求める。そして、同一視野において、20個の細孔を無作為に選んで各細孔の円相当径を求め、細孔の大きさの上位5つと下位5つを除外した10個の細孔の円相当径を求め算術平均することで事前開口型を得る。その後上述の作業を記録媒体の他の箇所で4回行いそれぞれの事前開口型を得てそれらを再度算術平均することで、細孔の平均開口径R2を求めることができる。また、SEM像からの細孔の輪郭の抽出や、コントラストの中間値の計測、円相当径の計測などは、一般的な画像処理装置等によって行われてもよい。測定に使用されるSEMについては特に限定されないが、例えば日立製作所製のS3600、S4700、S4800、S5200等がある。
【0078】
2.3.記録媒体の細孔および光輝性顔料の大きさの関係
本実施形態のインクジェット記録方法では、記録媒体の細孔の平均開口径R2が、インク組成物に含有される光輝性顔料の平均粒子径R1の0.01倍以上10倍以下(0.01≦(R2/R1)≦10)となるように、光輝性顔料および記録媒体が選択されることが好ましい。これにより、記録媒体上に良好な光輝性および耐擦過性を有する画像を記録することができる。また、記録媒体の細孔の平均開口径R2が、インク組成物に含有される光輝性顔料の平均粒子径R1の0.1倍以上5倍以下(0.1≦(R2/R1)≦5)となるように、光輝性顔料および記録媒体を選択すると、記録媒体上に形成される画像の耐擦過性をさらに高めることができる。また、記録媒体の細孔の平均開口径R2が、インク組成物に含有される光輝性顔料の平均粒子径R1の1倍以上5倍以下(1≦(R2/R1)≦5)であれば一層好ましい。
【0079】
本実施形態のインクジェット記録方法においては、上記のように光輝性顔料および記録媒体が選択されるが、インク組成物に含まれる光輝性顔料の平均粒子径R1に応じて、上記範囲の平均開口径R2の細孔を有する記録媒体を選択してもよいし、記録媒体の細孔の平均開口径R2に応じて、上記範囲の平均粒子径R1を有する光輝性顔料を選択してもよい。
【0080】
記録媒体の細孔の平均開口径R2は、例えば、上記例示した記録媒体のインク吸収層の種類やグレードによって選択されることができる。また、インク組成物に含有される光輝性顔料の平均粒子径R1は、例えば、市販品の選択や、光輝性顔料が上記例示した銀粒子である場合には、銀粒子水分散液の製造条件を変化させることによって調節することができる。
【0081】
本実施形態のインクジェット記録方法では、細孔の平均開口径R2が3nm以上200nm以下の記録媒体が選択される。細孔の平均開口径R2は、18nm以上100nm以下であることがさらに好ましい。このような記録媒体を用いれば、形成される画像の光輝性、耐擦過性をさらに向上させることができる。
【0082】
なお、記録媒体上に形成される画像の光輝性を十分に発現させるとともに耐擦過性が向上する理由としては、記録媒体の細孔の平均開口径R2が光輝性顔料の平均粒子径R1の比が適切な範囲になっていることが一因となっていると考えられる。すなわち、光輝性顔料が粒子径に分布を有しており、光輝性顔料のうち比較的小さい粒子が記録媒体の細孔にはまりこむ、または細孔を塞ぐ等により、画像の表面の平坦性および画像の記録媒体への密着性を発現しているものと考えられる。したがって、本実施形態のインクジェット記録方法では、顔料および細孔の両者の大きさのバランスがとれた状態となっていることに起因していると考えられる。特に、記録媒体の細孔の平均開口径R2が光輝性顔料の平均粒子径R1の0.01倍以上10倍以下(0.01≦(R2/R1)≦10)となるように選択されると、画像の表面の平坦性および画像の記録媒体への密着性をさらに向上させることができるものと考えられる。
【0083】
記録媒体に形成された画像の光輝性は、日本工業規格(JIS)Z8741:1997「鏡面光沢度−測定方法」の方法に従って評価することができる。光沢度は、例えば、画像の形成された面に対して、例えば、20°、45°、60°、75°および85°の入射角で光を入射させ、その反射角の方向に光検出器を設置して光の強度を測定した結果に基づいて算出されることができる。このような測定が可能な装置としては、例えば、コニカミノルタ株式会社製MULTI GLOSS 268、日本電色工業株式会社製GlossMeter型番VGP5000などがある。なお、(JIS)Z8741:1997に基づく鏡面光沢度は200以上であるのが好ましく、より好ましくは300以上、一層好ましくは400以上、最も好ましくは500以上である。
【0084】
記録媒体に形成された画像の耐擦過性は、爪や指によって擦って画像の変化を観察する方法や、日本工業規格(JIS)Z0801:1995「染色堅ろう度試験方法通則」を応用した方法により評価することができる。
【0085】
3.実験例
以下、実験例によって本発明をより具体的に説明するが、これらは本発明の範囲を限定するものではない。
【0086】
3.1.光輝性顔料
実験例のインク組成物は、光輝性顔料として銀粒子を用いた。実験例では、銀粒子は2種の銀粒子水分散液を用いた。銀粒子水分散液Aおよび銀粒子水分散液Bは、上記実施形態で例示した手法に従って、以下のように調製した。
【0087】
まず、ポリビニルピロリドン(PVP)(重量平均分子量10000)を70℃の条件下で15時間加熱して、その後室温で冷却をした。そのPVP1000gを、エチレングリコール溶液500mlに添加してPVP溶液を調整した。別の容器にエチレングリコールを500ml入れ、硝酸銀128gを加えて電磁攪拌器で十分に攪拌をして硝酸銀溶液を調整した。PVP溶液を120℃の条件下でオーバーヘッドミキサーを用いて攪拌しつつ、硝酸銀溶液を添加して約80分間加熱して反応を進行させた。そして、その後室温で冷却をさせた。得られた溶液を遠心分離機で2200rpmの条件下で10分間遠心分離を行った。その後、分離が出来た銀粒子を取り出して、余分なPVPを除去するためエタノール溶液500mlに添加した。そして、さらに遠心分離を行い、銀粒子を取り出した。さらに、取り出した銀粒子を真空乾燥機で35℃、1.3Paの条件下で乾燥させた。そして、得られた銀粒子を純水に3時間攪拌することにより再分散させて、固形分率20%の分散液を調製し、銀粒子水分散液Aとした。
【0088】
また、PVP溶液を120℃の条件下でオーバーヘッドミキサーを用いて攪拌しつつ、硝酸銀溶液を添加して約10時間加熱して反応を進行させた以外は、同様にして銀粒子水分散液Bを調製した。
【0089】
3.2.インク組成物
各実験例に用いたインク組成物は、上記銀粒子水分散液AまたはBを用いて調製した。具体的には、各インク組成物は、銀粒子水分散液を10質量%、グリセリンを10質量%、トリメチロールプロパンを5質量%、1,2−ヘキサンジオールを3質量%、ポリシロキサン系界面活性剤(BYK−348(ビックケミー・ジャパン株式会社製))を1質量%、トリエタノールアミンを3質量%、および残分としてイオン交換水を68質量%、混合し、十分に攪拌して調整した。各実験例に用いた銀粒子水分散液の種類は、実験例1−10についてはA、実験例11−20についてはBとした。
【0090】
実験例に用いたインク組成物について、銀粒子の平均粒子径を求めた。その結果、銀粒子水分散液A用いた実験例1−10における銀粒子の平均粒子径は20nmであった。また、銀粒子水分散液Bを用いた実験例11−20における銀粒子の平均粒子径は50nmであった。なお、銀粒子の平均粒子径は「マイクロトラックUPA」(日機装株式会社製)を用い、測定条件は、屈折率を0.2−3.9i、溶媒(水)の屈折率を1.333、測定粒子形状を球形、とした。
【0091】
【表1】

【0092】
3.3.記録媒体
被記録面の平均開口径の異なる記録媒体を準備した。各記録媒体は下記の樹脂被覆紙の一方の面(酸化チタン含有樹脂側)に、下記の塗工液を、乾燥後の厚みが38μmとなるようにバーコーターを用いて塗布し乾燥させて形成した。
【0093】
樹脂被覆紙は、晒クラフトパルプ(広葉樹)LBKP(50部)と晒サルファイトパルプ(広葉樹)LBSP(50部)のパルプ配合からなり、厚み192μm、JIS−P8125で規定する剛性1.26である原紙の一方の面(インク受容層塗設側)に、低密度ポリエチレン(70部)と高密度ポリエチレン(20部)と酸化チタン(10部)とからなる樹脂組成物を、乾燥後の厚みが30μmとなるように塗布し、該原紙の他方の面(インク受容層非塗設側)に、高密度ポリエチレン(50部)と低密度ポリエチレン(50部)とからなる樹脂組成物を、乾燥後の厚みが34μmとなるように塗布して製造した。
【0094】
塗工液は、コロイダルシリカ(スノーテックス:日産化学工業株式会社製:型番は表1に記載)を60質量部、バインダー(株式会社クラレ製、PVA217、ケン化度88モル%、平均重合度1700)を20質量部、定着剤(日東紡株式会社製、PAS−A−1)を4質量部、架橋剤として、チタンラクテート(松本製薬工業株式会社製、TC−400)を0.2質量部、および水を200重量部からなる溶液を用いた。
【0095】
各実験例に使用した記録媒体において用いたコロイダルシリカの型番は、表1に記載した。実験例1および実験例11の記録媒体は、塗工液を塗布しないで使用した。表1に示したとおり、塗工液に配合されたコロイダルシリカの平均一次粒子径が異なる結果、各実験例における記録媒体の平均開口径が異なっている。表1には、コロイダルシリカの平均一次粒子径を併記した。各記録媒体の光沢度は、コニカミノルタ社製、MULTI GLOSS 268型光沢計を用いて、JIS Z 8741(1997)に基づく方法で、入射角60°における各記録媒体の光沢度を表1に記載した。
【0096】
また、記録媒体の被記録面の細孔の平均開口径は、次のように計測した。各記録媒体の被記録面に白金パラジウムを約2nm蒸着して導電処理を施した。その後各記録媒体を、SEM(日立製作所製:S4700)に導入して、各記録媒体の被記録面のSEM像を得た。当該SEM像には、20〜40個の細孔が観察されるように、倍率を調節した。得られたSEM像の細孔を、抽出して評価した。具体的には、20〜40個の細孔から、20個の細孔を無作為に選んで各細孔の円相当径を求め、細孔の大きさの上位5つと下位5つを除外した10個の細孔の円相当径を求め、10個の円相当径を算術平均することで事前開口型を得た。その後上述の作業を記録媒体の他の箇所で4回行いそれぞれの事前開口型を得て、それらを再度算術平均することで、平均開口径とした。各記録媒体の細孔の平均開口径は、表1に併記した。
【0097】
3.4.評価試料の作成
各実験例の記録物は、インクジェット記録装置として、インクジェットプリンター型式PX−G930(セイコーエプソン株式会社製)を用いて作成した。各実験例のインク組成物を、該プリンターの専用カートリッジのブラックインク室に充填し、これを該プリンターに装着して印刷することによって作製した。
【0098】
いずれの試料においても、印刷条件として、用紙選択を写真用紙光沢に設定し、色補正なし、フォト−1440dpi、単方向印刷に設定して印刷した。画像は、均一なベタ画像とし、dutyが100%となるようにした。
【0099】
3.5.評価方法
得られた各実験例の試料につき、光沢度および耐擦過性を評価した。
【0100】
光沢度は、コニカミノルタ社製、MULTI GLOSS 268型光沢計を用いて、JIS Z 8741(1997)に基づく方法で、入射角20°、60°および85°の光沢度を測定した。表1には、入射角60°での測定結果を記載した。光沢性の評価は、入射角60°における値が、500以上であればSとし、350以上500未満であればAとし、200以上350未満であればBとし、50以上200未満であればCとし、および50未満であればDとして、表1に記載した。
【0101】
他方、耐擦過性は、被記録面の記録部位を爪または指によって擦ることによって評価した。爪で強く擦っても銀粒子が剥がれない場合をA、銀粒子が指で擦っても剥がれないが、爪で擦ると剥がれる場合をB、銀粒子が指で強く擦ると剥がれる場合をC、および銀粒子が指で擦ると剥がれる場合をDとし、結果を表1に記載した。
【0102】
また、銀粒子の平均粒子径R1と、記録媒体の平均開口径R2との比(R2/R1)を表1に併記した。
【0103】
3.6.評価結果
表1をみると、銀粒子の平均粒子径R1と、記録媒体の平均開口径R2との比(R2/R1)の値が、小さくなるほど光沢度が高くなる傾向があった。一方、R2/R1の値が大きくなるほど耐擦過性が高くなった。そして、光沢度および耐擦過性のバランスとしては、R2/R1の値が0.01〜10の範囲において良好であり、0.1〜5において優れ、1〜5において特に優れていた。なお、各実験例において、インクジェットプリンターに目詰まり等は生じなかった。これらの結果から、実験例のインク組成物は、分散性が良好であり、かつ、記録媒体に付着されたときに良好な光輝性および耐擦過性を発現できることが判明した。また、実験例のインクジェット記録方法によれば、記録媒体の細孔の平均開口径R2が銀粒子の平均粒子径R1の0.01倍以上10倍以下とすることにより、光沢性および耐擦過性を両立させることができることが判明した。
【0104】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、さらに種々の変形が可能である。例えば、本発明は、実施形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法および結果が同一の構成、あるいは目的および効果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成または同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光輝性顔料を含むインク組成物を用いて、細孔を有する記録媒体に記録を行うインクジェット記録方法であって、
前記光輝性顔料の平均粒子径が1nm以上100nm以下であり、
前記記録媒体の前記細孔の平均開口径は、3nm以上200nm以下である、インクジェット記録方法。
【請求項2】
請求項1において、
前記記録媒体の前記細孔の平均開口径は、18nm以上100nm以下である、インクジェット記録方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2において、
前記光輝性顔料の平均粒子径が3nm以上80nm以下である、インクジェット記録方法。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれか一項において、
前記細孔が、前記光輝性顔料の平均粒子径の0.01倍以上10倍以下である平均開口径を有する、インクジェット記録方法。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれか一項において、
前記細孔が、前記光輝性顔料の平均粒子径の0.1倍以上5倍以下である平均開口径を有する、インクジェット記録方法。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれか一項において、
前記細孔が、前記光輝性顔料の平均粒子径の1倍以上5倍以下である平均開口径を有する、インクジェット記録方法。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6のいずれか一項に記載のインクジェット記録方法によって記録された記録物。
【請求項8】
請求項1ないし請求項6のいずれか一項に記載のインクジェット記録方法によってJIS Z 8741(1997)に基づく鏡面光沢度が200以上である画像が形成された記録物。

【公開番号】特開2012−161959(P2012−161959A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−23012(P2011−23012)
【出願日】平成23年2月4日(2011.2.4)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】