説明

インクジェット記録方法

【課題】非吸収性記録媒体や微吸収性記録媒体に対し、均質で違和感のない光沢が得られるインクジェット記録方法を提供する。
【解決手段】粘度が10〜10mPa・s、ゲル化温度が40〜80℃で、記録媒体の温度差により、形成する画像光沢度が35以上変化するゲル化剤含有の活性光線硬化型インクジェットインクを用い、ゲル化温度Tgel+10℃以上、+40℃未満にインクを加熱して、条件1または条件2で画像形成するインクジェット記録方法。条件1:光沢度が69〜100の記録媒体を、インクのTgel−30℃以上、−10℃未満で加熱して画像形成。条件2:光沢度が10〜69の記録媒体を、インクのTgel−10℃以上、−5.0℃未満に加熱して画像形成。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゲル化剤および活性光線硬化性組成物を含有する活性光線硬化型インクジェットインクを用いたインクジェット記録方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、紫外線や電子線などの活性エネルギー線により硬化する特性を備えた活性光線硬化型組成物は、プラスチック、紙、木工あるいは無機質等の塗料、接着剤、印刷インキ、印刷回路基板、電気絶縁関係等、様々な用途で実用化されている。
【0003】
また、これらの重合性組成物を使用したインクジェット用インクシステムとしては、活性光線、具体的には紫外線で硬化する紫外線硬化型インクジェットインクがあるが、この紫外線硬化型インクジェットインクを用いたインクジェット方式は、インク吸収性に乏しい記録媒体に対しても高い耐擦過性と密着性を備えた画像を形成することができる観点から、近年注目されつつある。
【0004】
しかしながら、これら紫外線硬化型インクジェットインクを用いたインクジェットシステムによる画像形成方法では、インクジェット記録ヘッドとして、ライン記録ヘッドを用いたシングルパス記録方式や、少数パスの高速シリアル方式といった高速記録を行う場合、隣り合うドット同士の合一を十分に抑制することできず、画質の劣化を招くことがあった。また、カラー画像を記録する場合には、色材の異なるドット間で色混じりが発生し、画質が低下する問題もあった。
【0005】
さらに、インクジェット方式の様々な用途において、印刷された画像の光沢と基材の非印刷領域(未印字部)の光沢を密接に合わせ、未印字部との光沢差を小さくすることが、違和感の少ない画像を得る観点から望ましい。特に、商業印刷の分野では、印刷紙面の光沢と印字面の光沢が異なると光沢違和感として感じられるため、紙種によって印字領域の光沢と非印刷領域の光沢を密接に合わせる必要がある。しかしながら上記方式では、インクの硬化後に画像がある程度の厚みを有するため、紙種の表面形状に追従することが出来ず、紙種によらずインクで形成された画像面はグロス、またはマットの光沢を示し、印刷領域の光沢と非印刷領域の光沢を密接に合わせることができず、光沢違和感が生じる問題があった。
【0006】
上記画質劣化の課題を解決する方法として、インク中にゲル化剤を含有し、温度により固液相転移する特徴を持つ活性光線硬化型インクジェットインクを用いて、インク滴が着弾すると同時にインク滴を固化させることで、インク滴同士の合一を防止して画質劣化を防ぐ技術が開示されている。
【0007】
例えば、特許文献1においては、ゲル化剤と硬化性モノマーを含有するインクジェットインクを用いて画像を形成する方法が開示されている。しかしながら、開示されているゲル化剤の種類やその添加量で構成されたゲルインクを用いて画像記録を行うと、迅速なゲル化によりインク滴同士の合一を防止して画質劣化を防ぐことはできるが、この特許文献1に記載のインクでは、50℃以下の記録温度において1.0×10〜1.0×10mPa・sという極めて高粘度のインクジェットインクであり、普通紙への浸透も抑制するほどの固化力を有しているため、中間転写方式を用いない限りは、ドット固化力が強すぎることに起因する極端な光沢低下を生じ、紙種によらず常に印刷領域はマット調の質感を生じるという問題を抱えている。よって、特許文献1に開示されているインクジェットインクを高光沢な基材に印字すると、印刷部の光沢と非印刷部の光沢の違和感が生じる課題は解決することができないのが現状である。
【0008】
一方、特許文献2においては、チキソトロピック性の硬化性ゲルインクを用いて、吐出時のインク温度と記録媒体の温度の差が30℃以上となるように記録する印字方法が開示されているが、この提案されている方法は、硬化性向上を目指したものであり、記録媒体の光沢に対する形成する印刷部の光沢の調整方法については一切記載や示唆はなされていない。また、活性光線硬化型インクジェットインクのゲル化温度が高い場合や、ゲル化後のインクが硬くなる場合は、同様に前記温度範囲において、ドット固化力が強すぎることに起因する光沢低下が観測される場合があった。
【0009】
また、特許文献3においては、硬化性相変化インクを用いて印刷領域の光沢と非印刷領域の光沢差を減らす技術が開示されているが、具体的な形成する画像の光沢を制御する技術に関しては一切記載がなされていない。
【0010】
また、特許文献4においては、ゲル化剤を含有したオーバーコート液を記録媒体に着弾した後から紫外線を照射するまでの間に、相転移温度とほぼ同じもしくはそれ以上の温度に加熱し、画像光沢を上げる試みが記載されているが、オーバーコート液の場合は問題ないが、画像形成している色材入りのゲル化剤含有インクで同様の操作を行った場合には、色混じりなどの画質低下につながり問題となっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2009−041015号公報
【特許文献2】特表2009−510184号公報
【特許文献3】特開2009−132919号公報
【特許文献4】特開2010−106275号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、その目的は、フィルム、貼合紙などの非吸収性記録媒体や、コート紙などの微吸収性記録媒体に記録した際に、高精細で、かつ印刷領域の光沢と基材の非印刷領域の光沢を密接に合わせ、画像全体で均質で違和感のない光沢が得られる活性光線硬化型インクジェットインクを用いたインクジェット記録方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の上記目的は、以下の構成により達成される。
【0014】
1.色材、光重合性化合物及び光重合開始剤と、ゲル化剤を1.0質量%以上、10質量%以下含有する活性光線硬化型インクジェットインクを用い、記録媒体上に画像を形成するインクジェット記録方法において、該活性光線硬化型インクジェットインクは、30℃における粘度が10mPa・s以上、10mPa・s以下で、ゲル化温度Tgelが40℃以上、80℃以下で、かつ記録媒体の温度T1(該活性光線硬化型インクジェットインクのゲル化温度Tgel−20℃)で形成した画像の60度鏡面光沢度をG1とし、記録媒体の温度T2(該活性光線硬化型インクジェットインクのゲル化温度Tgel−5℃)で形成した画像の60度鏡面光沢度をG2とした時、60度鏡面光沢度差(G1−G2)が35以上であり、かつ該活性光線硬化型インクジェットインクをゲル化温度Tgel+10℃以上、ゲル化温度Tgel+40℃未満に加熱して、下記条件1または条件2で画像形成することを特徴とするインクジェット記録方法。
【0015】
条件1:60度鏡面光沢度が69以上、100以下の記録媒体を用い、該記録媒体の表面温度Tsを、該活性光線硬化型インクジェットインクのゲル化温度Tgel−30℃以上、ゲル化温度Tgel−10℃未満に制御して画像形成する。
【0016】
条件2:60度鏡面光沢度が10以上、69未満の記録媒体を用い、該記録媒体の表面温度Tsを、該活性光線硬化型インクジェットインクのゲル化温度Tgel−10℃以上、ゲル化温度Tgel−5.0℃未満の温度範囲に制御して画像形成する。
【0017】
2.前記条件1及び条件2のいずれも満たす条件で画像形成することを特徴とする前記1に記載のインクジェット記録方法。
【0018】
3.前記条件2が下記条件2Aと条件2Bであり、前記条件1、該条件2Aまたは条件2Bで画像形成することを特徴とする前記1または2に記載のインクジェット記録方法。
【0019】
条件2A:60度鏡面光沢度が55以上、69未満の記録媒体を用い、該記録媒体の表面温度Tsを、該活性光線硬化型インクジェットインクのゲル化温度Tgel−10℃以上、ゲル化温度Tgel−7.5℃未満の温度範囲に制御して画像形成する。
【0020】
条件2B:60度鏡面光沢度が10以上、55未満の記録媒体を用い、該記録媒体の表面温度Tsを、該活性光線硬化型インクジェットインクのゲル化温度Tgel−7.5℃以上、ゲル化温度Tgel−5.0℃未満の温度範囲に制御して画像形成する。
【0021】
4.前記ゲル化剤が、脂肪酸エステルまたは脂肪族ケトンであることを特徴とする前記1から3のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
【0022】
5.前記ゲル化剤が、ステアリン酸ステアリル、ステアリン酸バチル、パルミチン酸セチルまたはペンタトリアコンタン−18−オン(ステアロン)であることを特徴とする前記1から4のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
【0023】
6.活性光線硬化型インクジェットインクのゲル化温度Tgelが、45℃以上、65℃以下であることを特徴とする前記1から5のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
【0024】
7.前記活性光線硬化型インクジェットインクにおけるゲル化剤の含有量が、2.0質量%以上、7.0質量%以下であることを特徴とする前記1から6のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
【0025】
8.前記活性光線硬化型インクジェットインクのインクジェット記録ヘッド内における粘度を、3mPa・s以上、20mPa・s未満として出射することを特徴とする前記1から7のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
【0026】
9.前記記録媒体が、塗工層を有する微吸収性記録媒体であることを特徴とする前記1から8のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
【0027】
10.シングルパス方式で画像印字することを特徴とする前記1から9のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
【発明の効果】
【0028】
本発明により、フィルム、貼合紙などの非吸収性記録媒体や、コート紙などの微吸収性記録媒体に記録した際に、高精細で、かつ印刷領域の光沢と基材の非印刷領域の光沢を密接に合わせ、画像全体で均質で違和感のない光沢が得られる活性光線硬化型インクジェットインクを用いたインクジェット記録方法を提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】記録媒体の温度を変えて印字した画像の顕微鏡表面観察写真である。
【図2】代表的なインクの記録媒体の印字温度と形成画像の光沢度の関係の一例を示すグラフである。
【図3】シングルパス記録方式のインクジェット記録装置である。
【図4】シリアル記録方式のインクジェット記録装置である。
【図5】実施例で用いたインク2〜4の記録媒体の印字温度と形成画像の光沢度の関係の示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。
【0031】
本発明者は、上記課題に鑑み鋭意検討を行った結果、色材、光重合性化合物及び光重合開始剤と、ゲル化剤を1.0質量%以上、10質量%以下含有する活性光線硬化型インクジェットインクを用い、記録媒体上に画像を形成するインクジェット記録方法において、該活性光線硬化型インクジェットインクは、30℃における粘度が10mPa・s以上、10mPa・s以下で、ゲル化温度Tgelが40℃以上、80℃以下で、かつ記録媒体の温度T1(該活性光線硬化型インクジェットインクのゲル化温度Tgel−20℃)で形成した画像の60度鏡面光沢度をG1とし、記録媒体の温度T2(該活性光線硬化型インクジェットインクのゲル化温度Tgel−5℃)で形成した画像の60度鏡面光沢度をG2とした時、60度鏡面光沢度差(G1−G2)が35以上であり、かつ該活性光線硬化型インクジェットインクをゲル化温度Tgel+10℃以上、ゲル化温度Tgel+40℃未満に加熱して、前記条件1または条件2で画像形成することを特徴とするインクジェット記録方法により、フィルム、貼合紙などの非吸収性記録媒体や、コート紙などの微吸収性記録媒体に記録した際に、高精細で、かつ印刷領域の光沢と基材の非印刷領域の光沢を密接に合わせ、画像全体で均質で違和感のない光沢が得られる活性光線硬化型インクジェットインクを用いたインクジェット記録方法を実現できることを見出し、本発明に至った次第である。
【0032】
以下、本発明のインクジェット記録方法の詳細について説明する。
【0033】
本発明は、色材、光重合性化合物、光重合開始剤及びゲル化剤を含有する活性光線硬化型インクジェットインク(以下、活性光線硬化型インクあるいは単にインクともいう)のインク物性(粘度及びゲル化温度)と、印字に適用する記録媒体の種類と、印字時の記録媒体の温度を適切な範囲に制御することにより、形成する印刷領域における形成画像の光沢を任意に制御し、高画質を保ちつつ自然で、違和感(光沢差)のない画像光沢を達成できる画期的な活性光線硬化型インクジェットインクを用いたインクジェット記録方法である。
【0034】
本発明のインクジェット記録方法で使用する活性光線硬化型インクジェットインクは、ゲル化剤を1.0質量%以上、10質量%以下含有していることを一つの特徴としており、温度により可逆的にゾルゲル相転移する特性を備えている。
【0035】
本発明でいうゾルゲル相転移とは、高温では流動性を持つ溶液状態であるが、ゲル化温度以下に冷却することによりインク液全体がゲル化し流動性を失った状態に変化し、逆に低温で流動性を失った状態であるが、ゾル化温度以上に加熱することで、流動性を持つ液体状態に戻る現象をいう。
【0036】
本発明でいうゲル化とは、ラメラ構造、非共有結合や水素結合により形成される高分子網目、物理的な凝集状態によって形成される高分子網目、微粒子の凝集構造などの相互作用、析出した微結晶の相互作用などにより、物質が独立した運動を失って集合した構造を指しており、急激な粘度上昇や弾性増加を伴って固化した、または半固化した、または増粘した状態のことを指す。また、ゾル化とは、上記ゲル化により形成された相互作用が解消されて、流動性を持つ液体状態に変化した状態の事を意味する。また、本発明でいうゾル化温度とは、ゲル化したインクを加温していく際に、ゾル化により流動性が発現する温度であり、ゲル化温度とは、ゾル状態にあるインクを冷却していく際に、ゲル化して流動性が低下する際の温度を指す。
【0037】
ゾルゲル相転移する本発明に係る活性光線硬化型インクは、高温では液体状態であるため、インクジェット記録ヘッドによる安定した吐出が可能となる。この高温状態の活性光線硬化型インクを用いて記録すると、インク滴が記録媒体に着弾した後、温度差により自然冷却されることで速やかにインクがゲル化して固化し、結果として隣り合うドット同士の合一を防いで画質劣化を防止できる。しかし、インク滴の固化力が強い場合には、ドット同士が孤立することで画像部に凹凸が生じ、極端な光沢低下を生じるため、基材種によらずマット調の画像を形成するために、高光沢の基材に印刷した際には光沢不均質感を招く場合があった。発明者らが鋭意検討した結果、インク滴の固化力、インクのゲル化温度、および記録媒体の光沢度と記録媒体の温度を、本発明の範囲にすることで、インク滴同士の合一を防止して画質劣化を防ぐことができ、さらに基材種の光沢に合わせて最も自然な光沢感が得られる画像を組み合わせることができることを見出した。
【0038】
この理由について、発明者らは次のように考えている。
【0039】
記録媒体にインク滴が着弾した後、隣り合うインク滴が着弾する前にインクが固化すると、光沢低下や画像部の不自然なキラキラ感が発生する。一方で隣り合うインク滴が着弾して合一した後時間を経てから固化すると、液滴同士が寄り合うため極端な画質劣化につながる。発明者らが鋭意検討した結果、インクの着弾時の粘度を制御することで液の合一が防止でき、かつ隣り合うインク滴が適度にレベリングして自然な光沢感を得られることが分かった。
【0040】
更には、本発明のインクジェット記録方法では、記録媒体の表面温度を制御することで、ゲル化後のインク液滴の粘度を制御することを一つの特徴とする。インク着弾時の粘度は、記録媒体の表面温度、ゲル化剤の構造、ゲル化剤の添加量に依存する。すなわち、ゲル化剤を0.1質量%以上、10質量%未満含有し、30℃における粘度が10mPa・s以上、10mPa・s未満であるインクを用いることで、上記記録媒体の温度範囲における粘度制御が可能となり、画質と自然な光沢が両立できる観点から好ましい。
【0041】
その理由としては、以下のように推測している。30℃における粘度が10mPa・s以上のインクであれば、インク液滴の合一を防止するに十分な粘度であり、上記温度範囲で画質の劣化を防止することができる。また、30℃における粘度が10mPa・s未満のインクであれば、ゲル化後の粘度が過度に高くなく、かつ冷却過程で大きく粘度が増加を抑制することができることにより、ドットの凹凸に起因する表面凹凸の発生を抑制し、光沢低下を防止することができる。一方、本発明に係るインクは、ゲル化後に適度な粘性を持った粘性ゲルとなるため、冷却過程である程度ドットが合一し、適度にレベリングすることで、高画質と高光沢を両立している。
【0042】
本発明のインクジェット記録方法においては、本発明に係る活性光線硬化型インクジェットインクを、ゲル化温度Tgel+10℃以上、ゲル化温度Tgel+40℃未満の温度範囲に加熱して、インクジェット記録ヘッドより記録媒体上に吐出することが特徴の一つである。上記で規定する範囲に活性光線硬化型インクジェットインクの温度を制御することにより、ゲル化剤を含有する活性光線硬化型インクジェットインクであっても、安定に吐出することができる。
【0043】
また、本発明のインクジェット記録方法における技術的な特徴点としては、適用する記録媒体の光沢度に関係して、記録媒体の加熱温度を制御して画像形成することを特徴とするものである。
【0044】
すなわち、下記の条件1または条件2で規定する特性を備えた記録媒体を適用することにより、記録媒体の非印字部の光沢度と、形成するゲル化剤を含む本発明に係るインクの光沢度を近接させることにより、印字部と非印字部との光沢差を縮小し、自然で違和感のない画像を形成することができる。
【0045】
条件1:60度鏡面光沢度が69以上、100以下の記録媒体を用い、該記録媒体を、該活性光線硬化型インクジェットインクのゲル化温度Tgel−20℃以上、ゲル化温度Tgel−10℃未満の温度範囲に加熱して画像形成を行う。
【0046】
条件2:60度鏡面光沢度が10以上、69未満の記録媒体を用い、該記録媒体を、該活性光線硬化型インクジェットインクのゲル化温度Tgel−10℃以上、ゲル化温度Tgel−5.0℃未満の温度範囲に加熱して画像形成を行う。
【0047】
すなわち、本発明に係る活性光線硬化型インクジェットインクは、記録媒体の温度T1(該活性光線硬化型インクジェットインクのゲル化温度Tgel−20℃)で形成した画像の60度鏡面光沢度をG1とし、記録媒体の温度T2(該活性光線硬化型インクジェットインクのゲル化温度Tgel−5℃)で形成した画像の60度鏡面光沢度をG2とした時、60度鏡面光沢度差(G1−G2)が35以上であるとの特性を備えたインクであり、光沢度の高い記録媒体を使用する際には、記録媒体の加熱温度を低く設定し、短時間でゲル化させることにより、高光沢な画像を形成する。一方、低光沢の記録媒体を用いる場合には、より高温度に記録媒体を加熱し、緩やかにゲル化させることにより、低光沢の画像を形成し、それぞれ記録媒体の未印字部との光沢差の少ない画像を形成する方法である。
【0048】
本発明でいう60度鏡面光沢度とは、JIS−Z−8741で規定された測定方法に則り測定した値である。本発明に係る60度鏡面光沢度の測定に用いることのできる装置は、例えば、精密光沢計GM−26D、True Gross GM−26DPRO、変角光沢計GM−3D(以上、村上色彩技術研究所製)、変角光沢度計VGS−10001DP(日本電色工業社製)、デジタル変角光沢計(スガ試験機株式会社)等を挙げることができる。本発明においては、変角光沢度計PG−1M、VGS−10001DP(日本電色工業社製)を用いて測定した値を適用する。
【0049】
更に、本発明においては、条件2としては、より詳細な条件を設定することが好ましく、下記の条件2A及び条件2Bを用いることが、より適正な条件を設定できる観点から好ましい。
【0050】
条件2A:60度鏡面光沢度が55以上、69未満の記録媒体を用い、該記録媒体を、該活性光線硬化型インクジェットインクのゲル化温度Tgel−10℃以上、ゲル化温度Tgel−7.5℃未満の温度範囲に加熱して画像形成を行う。
【0051】
条件2B:60度鏡面光沢度が10以上、55未満の記録媒体を用い、該記録媒体を、該活性光線硬化型インクジェットインクのゲル化温度Tgel−7.5℃以上、ゲル化温度Tgel−5.0℃未満の温度範囲に加熱して画像形成を行う。
【0052】
本発明のインクジェット記録方法においては、記録媒体の表面温度を制御することで、ゲル化後の本発明に係るインクが形成する表面形状を制御するものであり、ゲルが形成する表面形状は、記録媒体の表面温度Ts、ゲル化剤の構造、ゲル化剤の添加量に依存する。
【0053】
本発明のインクジェット記録方法の技術的な特徴点について、図を交えて更に説明する。
【0054】
活性光線硬化型インクジェットインクのゲル化温度Tgelと記録媒体の表面温度Tsの差は、冷却過程のゲル化速度の差であり、TgelとTsの差が大きい時にはゲル化剤を含有したインクが記録媒体上に着弾した時に急激に冷却され、逆にTgelとTsの差が小さい時にはゲル化剤を含有したインクが記録媒体上に着弾した時に徐々に冷却される。一般的に、結晶化速度が速い時、すなわち、TgelとTsの差が大きい時には微結晶が生成し、TgelとTsの差が小さい時、すなわち結晶化速度が遅い時には結晶成長が起きて結晶が粗大化することが知られている。
【0055】
図1は、ゲル化温度Tgelと記録媒体の表面温度Tsの差による形成画像の表面状態の一例を示す光学顕微鏡写真である。
【0056】
図1の(a)に示す写真は、ゲル化温度Tgelと記録媒体の表面温度Tsの差が大きい時に形成される画像の表面形状で、平滑で光沢の高い画像が形成される。
【0057】
一方、図1(b)に示す写真は、ゲル化温度Tgelと記録媒体の表面温度Tsの差が小さい時に形成される画像の表面形状で、ゲル形成過程に生じた粗大な凹凸が生じ、低光沢の画像が形成される。この結果から、ゲル化後のゲルが形成する表面形状の違いが印字領域の光沢を変化させていることは明らかである。
【0058】
この様な特性を備えたゲル化剤を含む活性光線硬化型インクジェットインクの記録媒体の温度に対する形成される画像の光沢度の関係を、更に図を用いて具体的に説明する。
【0059】
図2は、ゲル化剤を含む活性光線硬化型インクジェットインクを用い、記録媒体の温度に対する形成された画像の光沢の関係の一例を示すグラフである。
【0060】
図2では、ゲル化剤としてステアリン酸ステアリルを含有するゲル化温度Tgelが53℃の活性光線硬化型インクジェットインク(具体的なインク組成は、後述の実施例1に記載のインク1である)を用い、記録媒体の表面温度を30℃から48℃まで変化させて形成した印字画像の光沢度を示すグラフで、横軸に記録媒体の表面温度Tsを、縦軸に形成した印字画像の60度光沢を示してある。
【0061】
図2に示すように、活性光線硬化型インクジェットインクのゲル化温度Tgel(53℃)より、10℃を越える低い温度領域(図2では30℃以上、43℃未満の領域)、すなわちより急激に冷却されて画像形成される領域では、光沢度として69以上の光沢の高い画像が形成される。これに対し、インクのゲル化温度Tgel(53℃)−5〜−10℃の範囲にある記録媒体に形成した画像は、光沢が69未満の相対的に低い光沢を備えた画像が形成される特性を有していることがわかる。
【0062】
また、図2で示す活性光線硬化型インクジェットインクでは、記録媒体の温度T1(該活性光線硬化型インクジェットインクのゲル化温度Tgel−20℃)で形成した画像の60度鏡面光沢度G1は79であり、記録媒体の温度T2(該活性光線硬化型インクジェットインクのゲル化温度Tgel−5℃)で形成した画像の60度鏡面光沢度G2は32であり、60度鏡面光沢度差(Δ光沢度=G1−G2)が47であるインクである。
【0063】
上記のような記録媒体の表面温度Tgに連動して光沢が変化する特性を備えた活性光線硬化型インクジェットインクを用いた画像形成においては、図2に示すプロファイルより、適用する記録媒体の未印字部の60度光沢の値(詳細は、後述する)に一致するように記録媒体の表面温度Tgを適宜設定することにより、記録媒体の未印字部と形成画像との光沢を近似させることができ、画像全体で均質で違和感のない光沢を備えた画像をえることができる。本発明のインクジェット記録方法に従えば、単一の活性光線硬化型インクジェットインクを用いて、幅広い光沢を有する様々な記録媒体に対し、光沢差の少なく、光沢均質感を備えた画像を得ることができる。
【0064】
なお、本発明でいう光沢均質感とは、目視で画像上の微視的一部の光沢が不均質になった状態が見られず、画像全面、特にベタ印字部の光沢と非印字領域の光沢が均質になった状態を指す、または絶対的な光沢値、例えば、60度正反射光沢値で表わされる数値で、印字領域と非印字領域の差が小さいことのどちらを指しても良い。
【0065】
以下、本発明で使用される活性光線硬化型インクジェットインクの詳細な構成について説明する。
【0066】
《ゲル化剤》
本発明に係るインクにおいては、ゲル化剤をインク全質量に対し、1.0質量%以上、10質量%以下含有することを特徴とする。
【0067】
本発明でいうゲル化とは、前述の通り、ラメラ構造、非共有結合や水素結合により形成される高分子網目、物理的な凝集状態によって形成される高分子網目、微粒子の凝集構造などの相互作用、析出した微結晶の相互作用などにより、物質が独立した運動を失って集合した構造を指しており、急激な粘度上昇や弾性増加を伴って固化、半固化、あるいは粘度が増加した状態のことをいう。
【0068】
一般に、ゲル化剤としては、加熱により流動性のある溶液(ゾルと呼ばれる場合もある)となり、冷却すると元のゲル状態に戻る熱可逆性ゲルと、一旦ゲル化してしまえば、その後加熱しても、ふたたび溶液(ゾル状態)には戻らない熱不可逆性ゲルとがある。本発明に係るゲル化剤によって形成されるゲルは、インクジェット記録ヘッド内における目詰まり防止の観点からは、前者の熱可逆性ゲルであることが好ましい。
【0069】
本発明に係る活性光線硬化型インクにおいては、インクのゲル化温度Tgel(相転移温度)が、40℃以上、80℃以下であることを特徴の1つとし、好ましくは45℃以上、65℃以下である。インクのゲル化温度Tgelが40℃以上であれば、記録ヘッドからインク液滴を吐出する際に、印字環境温度に影響されることなく安定した出射性を得ることができ、また80℃以下であれば、インクジェット記録装置を過度の高温に加熱する必要がなく、インクジェット記録装置のヘッドやインク供給系の部材への負荷を低減することができる。
【0070】
本発明でいうインクのゲル化温度Tgelとは、インクが流動性のある溶液状態から急激に粘度が変化してゲル状態に転移するときの温度のことをいい、ゲル転移温度、ゲル溶解温度、相転移温度、ゾル−ゲル相転移温度、ゲル化点と称される用語と同義である。
【0071】
本発明に係る活性光線硬化型インクのゲル化温度Tgel並びにインク粘度(複素粘度)は、各種レオメータ(例えばコーンプレートを使用したストレス制御型レオメータ、PhysicaMCRシリーズ、Anton Paar社製)を用いて、本発明に係る活性光線硬化型インクの動的粘弾性の温度変化を測定することにより得ることができる。ゾル化温度、ゲル化温度は、昇温/降温速度により変化する性質があるため、本発明では以下の条件で測定したデータを用いた。
【0072】
本発明に係る活性光線硬化型インクのゲル化温度Tgelは、動的粘弾性の温度変化を測定した際に、貯蔵弾性率G′が100mPa以上となる温度であり、インクの30℃における粘度は、測定温度;30℃、昇温/降温速度;0.1℃/s、歪み;5%、角周波数;10radian/sの条件で、動的粘弾性の温度変化を測定して得られた複素粘度の値を指す。また、貯蔵弾性率G′、G″は、昇温/降温速度;0.1℃/s、歪み;5%、角周波数;10radian/sで、動的粘弾性の温度変化を測定した。本発明において、TにおけるG′の値は、動的粘弾性の降温測定で得られた値を使用するが、昇温測定で得られた値を用いても構わない。
【0073】
本発明で好ましく用いられるゲル化剤の具体例としては、例えば、特開2005−126507号や特開2005−255821号や特開2010−111790号の各公報に記載の低分子オイルゲル化剤や、N−ラウロイル−L−グルタミン酸ジブチルアミド、N−2エチルヘキサノイル−L−グルタミン酸ジブチルアミドなどのアミド化合物(味の素ファインテクノより入手可能)や、1,3:2,4−ビス−O−ベンジリデン−D−グルシトール(商品名:ゲルオールD、新日本理化より入手可能)などのジベンジリデンソルビトール類や、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ペトロラクタムなどの石油系ワックスや、キャンデリラワックス、カルナウバワックス、ライスワックス、木ロウ、ホホバ油、ホホバ固体ロウ、ホホバエステルなどの植物系ワックスや、ミツロウ、ラノリン、鯨ロウなどの動物系ワックスや、モンタンワックス、水素化ワックスなどの鉱物系ワックスや、硬化ヒマシ油または硬化ヒマシ油誘導体や、モンタンワックス誘導体,パラフィンワックス誘導体,マイクロクリスタリンワックス誘導体またはポリエチレンワックス誘導体などの変性ワックスや、ベヘン酸、アラキジン酸、ステアリン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸、ラウリン酸、オレイン酸、エルカ酸などの高級脂肪酸や、ステアリルアルコ−ル、ベヘニルアルコ−ルなどの高級アルコ−ルや、12−ヒドロキシステアリン酸などのヒドロキシステアリン酸や、12−ヒドロキシステアリン酸誘導体や、ラウリン酸アミド、ステアリン酸アミド、ベヘン酸アミド、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、リシノ−ル酸アミド、12−ヒドロキシステアリン酸アミドなどの脂肪酸アミド(例えば、ニッカアマイドシリーズ;日本化成社製や、ITOWAXシリーズ;伊藤製油社製や、FATTYAMIDシリーズ;花王社製)や、N−ステアリルステアリン酸アミド、N−オレイルパルミチン酸アミドなどのN−置換脂肪酸アミドや、N,N′−エチレンビスステアリルアミド、N,N′−エチレンビス12−ヒドロキシステアリルアミド、N,N′−キシリレンビスステアリルアミドなどの特殊脂肪酸アミドや、ドデシルアミン、テトラデシルアミンまたはオクタデシルアミンなどの高級アミンや、ステアリン酸ステアリル、ステアリン酸バチル、パルミチン酸セチル、パルミチン酸オレイユ、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコ−ル脂肪酸エステル、エチレングリコ−ル脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステルなどの脂肪酸エステル化合物(例えば、EMALLEXシリーズ;日本エマルジョン社製や、リケマールシリーズ;理研ビタミン社製や、ポエムシリーズ;理研ビタミン社製)や、ショ糖ステアリン酸、ショ糖パルミチン酸などのショ糖脂肪酸エステル(例えば、リョートーシュガーエステルシリーズ;三菱化学フーズ社製)や、ペンタトリアコンタン−18−オン(ステアロン)などの脂肪族ケトン(例えば、カオーワックスT1;花王社製)や、ポリエチレンワックス、α−オレフィン無水マレイン酸共重合体ワックスなどの合成ワックスや、重合性ワックス(UNILINシリーズ;Baker−Petrolite社製)や、ダイマー酸、ダイマージオール(PRIPORシリーズ;CRODA社製)などが挙げられる。また、上記のゲル化剤は、単独で用いてもよいし、2種以上混合して用いてもよい。
【0074】
本発明に係るゲル化剤としては、上記各化合物の中でも、脂肪酸、脂肪酸誘導体あるいは脂肪族ケトンが好ましく、より好ましくはステアリン酸ステアリル、ステアリン酸バチル、パルミチン酸セチルまたはペンタトリアコンタン−18−オン(ステアロン)である。
【0075】
本発明に係るインクでは、ゲル化剤を含有することにより、インクジェット記録ヘッドより吐出された後、記録媒体上に着弾すると直ちにゲル状態となり、ドット同士の混じり合いやドットの合一が抑制され、高速印字時の高画質形成が可能となり、その後、活性光線の照射により、光硬化性化合物を硬化することにより記録媒体上に定着され強固な画像膜を形成する。また、ゲル化温度の異なる2種以上のゲル化剤を添加することで、結晶の成長、生成する結晶の大きさを制御し、ゲルの表面形態を制御することで任意の光沢を得ることも可能である。ゲル化剤の含有量としては、インク全質量の1.0質量%以上、10質量%以下であることを特徴とするが、2.0質量%以上、7.0質量%以下であることがより好ましい。ゲル化剤の含有量を1.0質量%以上とすることで、ゲル形成が十分にされて、ドットの合一による画質の劣化を抑制でき、かつゲル形成によるインク液滴の増粘によって光ラジカル硬化系で用いた場合には酸素阻害による光硬化性を低減することができ、また、10質量%以下とすることで、活性光線照射後の未硬化成分による硬化膜の劣化、インクジェット射出性の劣化を低減できる。
【0076】
《光重合性化合物》
本発明に係る活性光線硬化型インクにおいては、ゲル化剤、色材、光重合開始剤と共に、活性光線で硬化する光重合性化合物(以下、活性光線硬化型組成物ともいう)を含有することを特徴とする。
【0077】
以下、本発明に用いられる光重合性化合物について説明する。
【0078】
本発明でいう活性光線とは、例えば、電子線、紫外線、α線、γ線、エックス線等が挙げられるが、人体への危険性や、取り扱いが容易で、工業的にもその利用が普及している紫外線または電子線が好ましい。本発明では特に紫外線が好ましい。
【0079】
本発明において、活性光線の照射により架橋または重合する光重合性化合物としては、特に制限なく用いることができるが、中でもカチオン重合性化合物またはラジカル重合性化合物を用いることが好ましい。
【0080】
(カチオン重合性化合物)
カチオン重合性モノマーとしては、従来公知のカチオン重合性の各種モノマーが使用できる。代表的なカチオン重合性モノマーとしては、例えば、特開平6−9714号、特開2001−31892号、特開2001−40068号、特開2001−55507号、特開2001−310938号、特開2001−310937号、特開2001−220526号の各公報に例示されているエポキシ化合物、ビニルエーテル化合物、オキセタン化合物などが挙げられる。
【0081】
本発明においては、インク硬化の際に、記録媒体の収縮を抑える目的で、光重合性化合物としては、少なくとも1種のオキセタン化合物と、エポキシ化合物及びビニルエーテル化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物とを含有することが好ましい。
【0082】
はじめに、エポキシ化合物について説明する。
【0083】
芳香族エポキシドとして好ましいものは、少なくとも1個の芳香族核を有する多価フェノールあるいはそのアルキレンオキサイド付加体とエピクロルヒドリンとの反応によって製造されるジまたはポリグリシジルエーテルであり、例えばビスフェノールAあるいはそのアルキレンオキサイド付加体のジまたはポリグリシジルエーテル、水素添加ビスフェノールAあるいはそのアルキレンオキサイド付加体のジまたはポリグリシジルエーテル、ならびにノボラック型エポキシ樹脂等が挙げられる。ここでアルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイドおよびプロピレンオキサイド等が挙げられる。
【0084】
脂環式エポキシドとしては、少なくとも1個のシクロヘキセンまたはシクロペンテン環等のシクロアルカン環を有する化合物を、過酸化水素、過酸等の適当な酸化剤でエポキシ化することにより得られる、シクロヘキセンオキサイドまたはシクロペンテンオキサイド含有化合物が好ましい。
【0085】
脂肪族エポキシドの好ましいものとしては、脂肪族多価アルコールあるいはそのアルキレンオキサイド付加体のジまたはポリグリシジルエーテル等があり、その代表例としては、エチレングリコールのジグリシジルエーテル、プロピレングリコールのジグリシジルエーテルまたは1,6−ヘキサンジオールのジグリシジルエーテル等のアルキレングリコールのジグリシジルエーテル、グリセリンあるいはそのアルキレンオキサイド付加体のジまたはトリグリシジルエーテル等の多価アルコールのポリグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールあるいはそのアルキレンオキサイド付加体のジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールあるいはそのアルキレンオキサイド付加体のジグリシジルエーテル等のポリアルキレングリコールのジグリシジルエーテル等が挙げられる。ここでアルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイドおよびプロピレンオキサイド等が挙げられる。
【0086】
これらのエポキシドのうち、速硬化性を考慮すると、芳香族エポキシドおよび脂環式エポキシドが好ましく、特に脂環式エポキシドが好ましい。本発明では、上記エポキシドの1種を単独で使用してもよいが、2種以上を適宜組み合わせて使用してもよい。
【0087】
次いで、ビニルエーテル化合物について説明する。
【0088】
ビニルエーテル化合物としては、例えば、エチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、プロピレングリコールジビニルエーテル、ジプロピレングリコールジビニルエーテル、ブタンジオールジビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル等のジ又はトリビニルエーテル化合物、エチルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、イソプロペニルエーテル−o−プロピレンカーボネート、ドデシルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル等のモノビニルエーテル化合物等が挙げられる。
【0089】
これらのビニルエーテル化合物のうち、硬化性、密着性、表面硬度を考慮すると、ジ又はトリビニルエーテル化合物が好ましく、特にジビニルエーテル化合物が好ましい。本発明では、上記ビニルエーテル化合物の1種を単独で使用してもよいが、2種以上を適宜組み合わせて使用してもよい。
【0090】
次いで、オキセタン化合物について説明する。
【0091】
本発明でいうオキセタン化合物は、オキセタン環を有する化合物のことであり、特開2001−220526号公報、特開2001−310937号公報に記載されているような公知のあらゆるオキセタン化合物を使用できる。
【0092】
本発明で用いることのできるオキセタン化合物において、オキセタン環を5個以上有する化合物を使用すると、インク組成物の粘度が高くなるため、取扱いが困難になること、またインク組成物のガラス転移温度が高くなるため、得られる硬化物の粘着性が十分でなくなることがある。本発明で使用するオキセタン環を有する化合物は、オキセタン環を1〜4個有する化合物が好ましい。
【0093】
本発明で好ましく用いることのできるオキセタン環を有する化合物としては、特開2005−255821号公報の段落番号(0089)に記載されている一般式(1)で表される化合物、同じく同公報の段落番号(0092)に記載されている一般式(2)で表される化合物、段落番号(0107)に記載されている一般式(7)で表される化合物、段落番号(0109)に記載されている一般式(8)で表される化合物、段落番号(0166)に記載されている一般式(9)で表される化合物等を挙げることができる。
【0094】
具体的には、同号公報の段落番号(0104)〜(0119)に記載されている例示化合物1〜6及び段落番号(0121)に記載されている各化合物を挙げることができる。
【0095】
(ラジカル重合性化合物)
次いで、ラジカル重合性化合物について説明する。
【0096】
ラジカル重合性化合物としては、従来公知のラジカル重合性の各種モノマーが使用できる。代表的なラジカル重合性モノマーとしては、例えば、特開平7−159983号、特公平7−31399号、特開平8−224982号、特開平10−863号の各公報に記載されているカチオン重合性の光硬化性樹脂が知られており、最近では可視光以上の長波長域に増感された光カチオン重合性の光硬化性樹脂が、例えば、特開平6−43633号公報、特開平8−324137公報等に公開されている。
【0097】
ラジカル重合性化合物は、ラジカル重合可能なエチレン性不飽和結合を有する化合物であり、分子中にラジカル重合可能なエチレン性不飽和結合を少なくとも1つ有する化合物であればどの様なものでもよく、モノマー、オリゴマー、ポリマー等の化学形態をもつものが含まれる。ラジカル重合性化合物は1種のみ用いてもよく、また目的とする特性を向上するために任意の比率で2種以上を併用してもよい。
【0098】
ラジカル重合可能なエチレン性不飽和結合を有する化合物の例としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸等の不飽和カルボン酸及びそれらの塩、エステル、ウレタン、アミドや無水物、アクリロニトリル、スチレン、更に種々の不飽和ポリエステル、不飽和ポリエーテル、不飽和ポリアミド、不飽和ウレタン等のラジカル重合性化合物が挙げられる。
【0099】
本発明に適用可能なラジカル重合性化合物としては、公知のあらゆる(メタ)アクリレートモノマー及び/またはオリゴマーを挙げることができる。本発明でいう「および/または」は、モノマーであっても、オリゴマーであっても良く、更に両方を含んでも良いことを意味する。また、以下に述べる事項に関しても同様である。
【0100】
(メタ)アクリレート基を有する化合物としては、例えば、イソアミルアクリレート、ステアリルアクリレート、ラウリルアクリレート、オクチルアクリレート、デシルアクリレート、イソミルスチルアクリレート、イソステアリルアクリレート、2−エチルヘキシル−ジグリコールアクリレート、2−ヒドロキシブチルアクリレート、2−アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸、ブトキシエチルアクリレート、エトキシジエチレングリコールアクリレート、メトキシジエチレングリコールアクリレート、メトキシポリエチレングリコールアクリレート、メトキシプロピレングリコールアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、イソボルニルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート、2−アクリロイロキシエチルコハク酸、2−アクリロイロキシエチルフタル酸、2−アクリロイロキシエチル−2−ヒドロキシエチル−フタル酸、ラクトン変性可撓性アクリレート、t−ブチルシクロヘキシルアクリレート等の単官能モノマー、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,9−ノナンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ジメチロール−トリシクロデカンジアクリレート、ビスフェノールAのPO付加物ジアクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジアクリレート、ポリテトラメチレングリコールジアクリレート等の2官能モノマー、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、グリセリンプロポキシトリアクリレート、カプロラクトン変性トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールエトキシテトラアクリレート、カプロラクタム変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等の三官能以上の多官能モノマーが挙げられる。この他、重合性のオリゴマー類も、モノマー同様に配合可能である。重合性オリゴマーとしては、エポキシアクリレート、脂肪族ウレタンアクリレート、芳香族ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、直鎖アクリルオリゴマー等が挙げられる。
【0101】
更に具体的には、山下晋三編、「架橋剤ハンドブック」、(1981年大成社);加藤清視編、「UV・EB硬化ハンドブック(原料編)」(185年、高分子刊行会);ラドテック研究会編、「UV・EB硬化技術の応用と市場」、79ページ、(1989年、シーエムシー);滝山栄一郎著、「ポリエステル樹脂ハンドブック」、(1988年、日刊工業新聞社)等に記載の市販品もしくは業界で公知のラジカル重合性ないし架橋性のモノマーオリゴマー及びポリマーを用いることができる。
【0102】
なお、感作性、皮膚刺激性、眼刺激性、変異原性、毒性などの観点から、上記モノマーの中でも、特に、イソアミルアクリレート、ステアリルアクリレート、ラウリルアクリレート、オクチルアクリレート、デシルアクリレート、イソミルスチルアクリレート、イソステアリルアクリレート、エトキシジエチレングリコールアクリレート、メトキシポリエチレングリコールアクリレート、メトキシプロピレングリコールアクリレート、イソボルニルアクリレート、ラクトン変性可とう性アクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、グリセリンプロポキシトリアクリレート、カウプロラクトン変性トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールエトキシテトラアクリレート、カプロラクタム変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートが好ましい。
【0103】
更に、これらの中でも、ステアリルアクリレート、ラウリルアクリレート、イソステアリルアクリレート、エトキシジエチレングリコールアクリレート、イソボルニルアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、グリセリンプロポキシトリアクリレート、カウプロラクトン変性トリメチロールプロパントリアクリレート、カプロラクタム変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートが特に好ましい。
【0104】
本発明においては、重合性化合物としてビニルエーテルモノマー及び/又はオリゴマーと、(メタ)アクリレートモノマー及び/又はオリゴマーを併用しても構わない。ビニルエーテルモノマーとしては、例えば、エチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、プロピレングリコールジビニルエーテル、ジプロピレングリコールジビニルエーテル、ブタンジオールジビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル等のジ又はトリビニルエーテル化合物、エチルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、イソプロペニルエーテル−o−プロピレンカーボネート、ドデシルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル等のモノビニルエーテル化合物等が挙げられる。ビニルエーテルオリゴマーを用いる場合は、分子量が300〜1000で、エステル基を分子内に2〜3個持つ2官能のビニルエーテル化合物が好ましく、例えば、ALDRICH社のVEctomerシリーズとして入手可能な化合物、VEctomer4010、VEctomer4020、VEctomer4040、VEctomer4060、VEctomer5015などが好ましく挙げられるが、この限りではない。
【0105】
また、本発明においては、重合性化合物として各種ビニルエーテル化合物とマレイミド化合物を併用して用いることも可能である。マレイミド化合物としては、例えば、N−メチルマレイミド、N−プロピルマレイミド、N−ヘキシルマレイミド、N−ラウリルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N,N′−メチレンビスマレイミド、ポリプロピレングリコール−ビス(3−マレイミドプロピル)エーテル、テトラエチレングリコール−ビス(3−マレイミドプロピル)エーテル、ビス(2−マレイミドエチル)カーボネート、N,N′−(4,4′−ジフェニルメタン)ビスマレイミド、N,N′−2,4−トリレンビスマレイミド、あるいは、特開平11−124403号公報に開示されているマレイミドカルボン酸と種々のポリオール類とのエステル化合物である多官能マレイミド化合物などが挙げられるが、この限りではない。
【0106】
上記カチオン重合性化合物及びラジカル重合性化合物の添加量は、インク全質量に対し、1.0〜97質量%であり、好ましくは30〜95質量%である。
【0107】
《インクの各構成要素》
次いで、本発明に係る活性光線硬化型インクについて、上記項目を除いた各構成要素について説明する。
【0108】
〔色材〕
本発明に係る活性光線硬化型インクにおいては、活性光線硬化型インクを構成する色材としては、染料あるいは顔料を制限なく用いることができるが、インク成分に対し良好な分散安定性を有し、かつ耐候性に優れた顔料を用いることが好ましい。
【0109】
(顔料)
顔料としては、特に限定されるわけではないが、本発明には、例えば、カラーインデックスに記載される下記の番号の有機又は無機顔料が使用できる。
【0110】
赤或いはマゼンタ顔料としては、例えば、Pigment Red 3、5、19、22、31、38、43、48:1、48:2、48:3、48:4、48:5、49:1、53:1、57:1、57:2、58:4、63:1、81、81:1、81:2、81:3、81:4、88、104、108、112、122、123、144、146、149、166、168、169、170、177、178、179、184、185、208、216、226、257、Pigment Violet 3、19、23、29、30、37、50、88、Pigment Orange 13、16、20、36、
青又はシアン顔料としては、例えば、Pigment Blue 1、15、15:1、15:2、15:3、15:4、15:6、16、17−1、22、27、28、29、36、60、
緑顔料としては、例えば、Pigment Green 7、26、36、50、
黄顔料としては、例えば、Pigment Yellow 1、3、12、13、14、17、34、35、37、55、74、81、83、93、94,95、97、108、109、110、137、138、139、153、154、155、157、166、167、168、180、185、193、
黒顔料としては、例えば、Pigment Black 7、28、26、などが目的に応じて使用できる。
【0111】
具体的に商品名を示すと、例えば、クロモファインイエロー2080、5900、5930、AF−1300、2700L、クロモファインオレンジ3700L、6730、クロモファインスカーレット6750、クロモファインマゼンタ6880、6886、6891N、6790、6887、クロモファインバイオレットRE、クロモファインレッド6820、6830、クロモファインブルーHS−3、5187、5108、5197、5085N、SR−5020、5026、5050、4920、4927、4937、4824、4933GN−EP、4940、4973、5205、5208、5214、5221、5000P、クロモファイングリーン2GN、2GO、2G−550D、5310、5370、6830、クロモファインブラックA−1103、セイカファストエロー10GH、A−3、2035、2054、2200、2270、2300、2400(B)、2500、2600、ZAY−260、2700(B)、2770、セイカファストレッド8040、C405(F)、CA120、LR−116、1531B、8060R、1547、ZAW−262、1537B、GY、4R−4016、3820、3891、ZA−215、セイカファストカーミン6B1476T−7、1483LT、3840、3870、セイカファストボルドー10B−430、セイカライトローズR40、セイカライトバイオレットB800、7805、セイカファストマルーン460N、セイカファストオレンジ900、2900、セイカライトブルーC718、A612、シアニンブルー4933M、4933GN−EP、4940、4973(以上、大日精化工業製)、KET Yellow 401、402、403、404、405、406、416、424、KET Orange 501、KET Red 301、302、303、304、305、306、307、308、309、310、336、337、338、346、KET Blue 101、102、103、104、105、106、111、118、124、KET Green 201(以上、大日本インキ化学製)、Colortex Yellow 301、314、315、316、P−624、314、U10GN、U3GN、UNN、UA−414、U263、Finecol Yellow T−13、T−05、Pigment Yellow1705、Colortex Orange 202、Colortex Red101、103、115、116、D3B、P−625、102、H−1024、105C、UFN、UCN、UBN、U3BN、URN、UGN、UG276、U456、U457、105C、USN、Colortex Maroon601、Colortex BrownB610N、Colortex Violet600、Pigment Red 122、Colortex Blue516、517、518、519、A818、P−908、510、Colortex Green402、403、Colortex Black 702、U905(以上、山陽色素製)、Lionol Yellow1405G、Lionol Blue FG7330、FG7350、FG7400G、FG7405G、ES、ESP−S(以上、東洋インキ製)、Toner Magenta E02、Permanent RubinF6B、Toner Yellow HG、Permanent Yellow GG−02、Hostapeam BlueB2G(以上、ヘキストインダストリ製)、Novoperm P−HG、Hostaperm Pink E、Hostaperm Blue B2G(以上、クラリアント製)、カーボンブラック#2600、#2400、#2350、#2200、#1000、#990、#980、#970、#960、#950、#850、MCF88、#750、#650、MA600、MA7、MA8、MA11、MA100、MA100R、MA77、#52、#50、#47、#45、#45L、#40、#33、#32、#30、#25、#20、#10、#5、#44、CF9(以上、三菱化学製)などが挙げられる。
【0112】
〈顔料の分散〉
上記顔料の分散には、例えば、ボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミル、アジテータ、ヘンシェルミキサ、コロイドミル、超音波ホモジナイザー、パールミル、湿式ジェットミル、ペイントシェーカー等を用いることができる。
【0113】
〈顔料分散剤〉
また、顔料の分散を行う際に、顔料分散剤を添加することも可能である。顔料分散剤としては、高分子分散剤を用いることが好ましく、高分子分散剤としては、例えば、Avecia社のSolsperseシリーズや、味の素ファインテクノ社のPBシリーズが挙げられる。更には、下記のものが挙げられる。
【0114】
顔料分散剤としては、水酸基含有カルボン酸エステル、長鎖ポリアミノアマイドと高分子量酸エステルの塩、高分子量ポリカルボン酸の塩、長鎖ポリアミノアマイドと極性酸エステルの塩、高分子量不飽和酸エステル、高分子共重合物、変性ポリウレタン、変性ポリアクリレート、ポリエーテルエステル型アニオン系活性剤、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物塩、芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物塩、ポリオキシエチレンアルキル燐酸エステル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ステアリルアミンアセテート、顔料誘導体等を挙げることができる。
【0115】
具体例としては、BYK Chemie社製「Anti−Terra−U(ポリアミノアマイド燐酸塩)」、「Anti−Terra−203/204(高分子量ポリカルボン酸塩)」、「Disperbyk−101(ポリアミノアマイド燐酸塩と酸エステル)、107(水酸基含有カルボン酸エステル)、110(酸基を含む共重合物)、130(ポリアマイド)、161、162、163、164、165、166、170(高分子共重合物)」、「400」、「Bykumen」(高分子量不飽和酸エステル)、「BYK−P104、P105(高分子量不飽和酸ポリカルボン酸)」、「P104S、240S(高分子量不飽和酸ポリカルボン酸とシリコン系)」、「Lactimon(長鎖アミンと不飽和酸ポリカルボン酸とシリコン)」が挙げられる。
【0116】
また、Efka CHEMICALS社製「エフカ44、46、47、48、49、54、63、64、65、66、71、701、764、766」、「エフカポリマー100(変性ポリアクリレート)、150(脂肪族系変性ポリマー)、400、401、402、403、450、451、452、453(変性ポリアクリレート)、745(銅フタロシアニン系)」;共栄化学社製「フローレンTG−710(ウレタンオリゴマー)」、「フローノンSH−290、SP−1000」、「ポリフローNo.50E、No.300(アクリル系共重合物)」;楠本化成社製「ディスパロンKS−860、873SN、874(高分子分散剤)、#2150(脂肪族多価カルボン酸)、#7004(ポリエーテルエステル型)」等が挙げられる。
【0117】
更には、花王社製「デモールRN、N(ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物ナトリウム塩)、MS、C、SN−B(芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物ナトリウム塩)、EP」、「ホモゲノールL−18(ポリカルボン酸型高分子)」、「エマルゲン920、930、931、935、950、985(ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル)」、「アセタミン24(ココナッツアミンアセテート)、86(ステアリルアミンアセテート)」;ゼネカ社製「ソルスパーズ5000(フタロシアニンアンモニウム塩系)、13240、13940(ポリエステルアミン系)、17000(脂肪酸アミン系)、24000、32000」;日光ケミカル社製「ニッコールT106(ポリオキシエチレンソルビタンモノオレート)、MYS−IEX(ポリオキシエチレンモノステアレート)、Hexagline4−0(ヘキサグリセリルテトラオレート)」等が挙げられる。
【0118】
これらの顔料分散剤は、インク中に0.1〜20質量%の範囲で含有させることが好ましい。また、分散助剤として、各種顔料に応じたシナージストを用いることも可能である。これらの分散剤および分散助剤は、顔料100質量部に対し、1〜50質量部添加することが好ましい。分散媒体は、溶剤または重合性化合物を用いて行うが、本発明に係るインクでは、印字後に反応・硬化させるため、無溶剤であることが好ましい。溶剤が硬化画像に残ってしまうと、耐溶剤性の劣化、残留する溶剤のVOCの問題が生じる。よって、分散媒体は溶剤では無く重合性化合物、その中でも最も粘度の低いモノマーを選択することが分散適性上好ましい。
【0119】
顔料の分散は、顔料粒子の平均粒径を0.08〜0.5μmとすることが好ましく、最大粒径は0.3〜10μm、好ましくは0.3〜3μmとなるよう、顔料、分散剤、分散媒体の選定、分散条件、ろ過条件を適宜設定する。この粒径管理によって、記録ヘッドのノズルの詰まりを抑制し、インクの保存安定性、インク透明性および硬化感度を維持することができる。
【0120】
(染料)
また、本発明に係るインクにおいては、従来公知の染料、好ましくは油溶性染料を必要に応じて用いることができる。本発明で用いることのできる油溶性染料として、以下にその具体例を挙げるが、本発明はこれらにのみ限定されるものではない。
【0121】
〈マゼンタ染料〉
マゼンタ染料としては、下記の具体例を挙げることができる。
【0122】
MS Magenta VP、MS Magenta HM−1450、MS Magenta HSo−147(以上、三井東圧社製)、AIZENSOT Red−1、AIZEN SOT Red−2、AIZEN SOTRed−3、AIZEN SOT Pink−1、SPIRON Red GEH SPECIAL(以上、保土谷化学社製)、RESOLIN Red FB 200%、MACROLEX Red Violet R、MACROLEX ROT5B(以上、バイエルジャパン社製)、KAYASET Red B、KAYASET Red 130、KAYASET Red 802(以上、日本化薬社製)、PHLOXIN、ROSE BENGAL、ACID Red(以上、ダイワ化成社製)、HSR−31、DIARESIN Red K(以上、三菱化成社製)、Oil Red(BASFジャパン社製)。
【0123】
〈シアン染料〉
シアン染料としては、下記の具体例を挙げることができる。
【0124】
MS Cyan HM−1238、MS Cyan HSo−16、Cyan HSo−144、MS Cyan VPG(以上、三井東圧社製)、AIZEN SOT Blue−4(保土谷化学社製)、RESOLIN BR.Blue BGLN 200%、MACROLEX Blue RR、CERES Blue GN、SIRIUS SUPRATURQ.Blue Z−BGL、SIRIUS SUPRA TURQ.Blue FB−LL 330%(以上、バイエルジャパン社製)、KAYASET Blue FR、KAYASET Blue N、KAYASET Blue 814、Turq.Blue GL−5 200、Light Blue BGL−5 200(以上、日本化薬社製)、DAIWA Blue 7000、Oleosol Fast Blue GL(以上、ダイワ化成社製)、DIARESIN Blue P(三菱化成社製)、SUDAN Blue 670、NEOPEN Blue 808、ZAPON Blue 806(以上、BASFジャパン社製)。
【0125】
〈イエロー染料〉
イエロー染料としては、下記の具体例を挙げることができる。
【0126】
MS Yellow HSm−41、Yellow KX−7、Yellow EX−27(三井東圧)、AIZEN SOT Yellow−1、AIZEN SOT YelloW−3、AIZEN SOT Yellow−6(以上、保土谷化学社製)、MACROLEX Yellow 6G、MACROLEX FLUOR.Yellow 10GN(以上、バイエルジャパン社製)、KAYASET Yellow SF−G、KAYASET Yellow2G、KAYASET Yellow A−G、KAYASET Yellow E−G(以上、日本化薬社製)、DAIWA Yellow 330HB(ダイワ化成社製)、HSY−68(三菱化成社製)、SUDAN Yellow 146、NEOPEN Yellow 075(以上、BASFジャパン社製)。
【0127】
〈ブラック染料〉
ブラック染料としては、下記の具体例を挙げることができる。
【0128】
MS Black VPC(三井東圧社製)、AIZEN SOT Black−1、AIZEN SOT Black−5(以上、保土谷化学社製)、RESORIN Black GSN 200%、RESOLIN BlackBS(以上、バイエルジャパン社製)、KAYASET Black A−N(日本化薬社製)、DAIWA Black MSC(ダイワ化成社製)、HSB−202(三菱化成社製)、NEPTUNE Black X60、NEOPEN Black X58(以上、BASFジャパン社製)等である。
【0129】
顔料あるいは油溶性染料の添加量は、インク全質量に対し0.1〜20質量%が好ましく、更に好ましくは0.4〜10質量%である。0.1質量%以上であれば、良好な画像品質を得ることができ、20質量%以下であれば、インク出射における適正なインク粘度を得ることができる。又、色の調整等で2種類以上の着色剤を適時混合して使用できる。
【0130】
〔光重合開始剤〕
本発明に係る活性光線硬化型インクにおいては、少なくとも1種の光重合開始剤を含有する。本発明に適用可能な光重合開始剤は、分子内結合開裂型と分子内水素引き抜き型の2種に大別できる。
【0131】
分子内結合開裂型の光重合開始剤としては、例えば、ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、ベンジルジメチルケタール、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、1−ヒドロキシシクロヘキシル−フェニルケトン、2−メチル−2−モルホリノ(4−チオメチルフェニル)プロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノンの如きアセトフェノン系;ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテルの如きベンゾイン類;2,4,6−トリメチルベンゾインジフェニルホスフィンオキシドの如きアシルホスフィンオキシド系;ベンジル、メチルフェニルグリオキシエステル、などが挙げられる。
【0132】
一方、分子内水素引き抜き型の光重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル−4−フェニルベンゾフェノン、4,4′−ジクロロベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4′−メチル−ジフェニルサルファイド、アクリル化ベンゾフェノン、3,3′,4,4′−テトラ(t−ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3′−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノンの如きベンゾフェノン系;2−イソプロピルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントンの如きチオキサントン系;ミヒラ−ケトン、4,4′−ジエチルアミノベンゾフェノンの如きアミノベンゾフェノン系;10−ブチル−2−クロロアクリドン、2−エチルアンスラキノン、9,10−フェナンスレンキノン、カンファーキノン、などが挙げられる。
【0133】
光重合開始剤を使用する場合の配合量は、インク全質量に対し0.01〜10質量%の範囲が好ましい。
【0134】
また、ラジカル重合開始剤としては、特公昭59−1281号、特公昭61−9621号、及び特開昭60−60104号等の各公報記載のトリアジン誘導体、特開昭59−1504号及び特開昭61−243807号等の各公報に記載の有機過酸化物、特公昭43−23684号、特公昭44−6413号、特公昭44−6413号及び特公昭47−1604号等の各公報並びに米国特許第3,567,453号明細書に記載のジアゾニウム化合物、米国特許第2,848,328号、同第2,852,379号及び同2,940,853号各明細書に記載の有機アジド化合物、特公昭36−22062号、特公昭37−13109号、特公昭38−18015号、特公昭45−9610号等の各公報に記載のオルト−キノンジアジド類、特公昭55−39162号、特開昭59−14023号等の各公報及び「マクロモレキュルス(Macromolecules)、第10巻、第1307頁(1977年)に記載の各種オニウム化合物、特開昭59−142205号公報に記載のアゾ化合物、特開平1−54440号公報、ヨーロッパ特許第109,851号、ヨーロッパ特許第126,712号等の各明細書、「ジャーナル・オブ・イメージング・サイエンス」(J.Imag.Sci.)」、第30巻、第174頁(1986年)に記載の金属アレン錯体、特許第2711491号及び特許第2803454号明細書に記載の(オキソ)スルホニウム有機ホウ素錯体、特開昭61−151197号公報に記載のチタノセン類、「コーディネーション・ケミストリー・レビュー(Coordination Chemistry Review)」、第84巻、第85〜第277頁(1988年)及び特開平2−182701号公報に記載のルテニウム等の遷移金属を含有する遷移金属錯体、特開平3−209477号公報に記載の2,4,5−トリアリールイミダゾール二量体、四臭化炭素や特開昭59−107344号公報記載の有機ハロゲン化合物等が挙げられる。これらの重合開始剤はラジカル重合可能なエチレン不飽和結合を有する化合物100質量部に対して0.01から10質量部の範囲で含有されるのが好ましい。
【0135】
また、本発明に係るインクにおいては、光重合開始剤として、光酸発生剤も用いることができる。
【0136】
光酸発生剤としては、例えば、化学増幅型フォトレジストや光カチオン重合に利用される化合物が用いられる(有機エレクトロニクス材料研究会編、「イメージング用有機材料」、ぶんしん出版(1993年)、187〜192ページ参照)。本発明に好適な化合物の例を以下に挙げる。
【0137】
第1に、ジアゾニウム、アンモニウム、ヨードニウム、スルホニウム、ホスホニウムなどの芳香族オニウム化合物のB(C、PF、AsF、SbF、CFSO塩を挙げることができる。
【0138】
本発明で用いることのできるオニウム化合物の具体的な例としては、特開2005−255821号公報の段落番号(0132)に記載されている化合物を挙げることができる。
【0139】
第2に挙げられる、スルホン酸を発生するスルホン化物の具体的な化合物としては、特開2005−255821号公報の段落番号(0136)に記載されている化合物を挙げることができる。
【0140】
第3に、ハロゲン化水素を光発生するハロゲン化物も用いることができ、その具体的な化合物としては、特開2005−255821号公報の段落番号(0138)に記載されている化合物を挙げることができる。
【0141】
第4に、特開2005−255821号公報の段落番号(0140)に記載されている鉄アレン錯体を挙げることができる。
【0142】
〔その他の添加剤〕
本発明に係る活性光線硬化型インクには、上記説明した以外に様々な添加剤を用いることができる。例えば、界面活性剤、レベリング添加剤、マット剤、膜物性を調整するためのポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、ゴム系樹脂、ワックス類を添加することができる。また、保存安定性を改良する目的で公知のあらゆる塩基性化合物を用いることができるが、代表的なものとして、塩基性アルカリ金属化合物、塩基性アルカリ土類金属化合物、アミンなどの塩基性有機化合物などが挙げられる。
【0143】
《記録媒体》
本発明に係る活性光線硬化型インクを用いた本発明のインクジェット記録方法に用いることのできる記録媒体としては、本発明に係る条件1または条件2を満たす特性を有する記録媒体であれば、特に制限はなく、コピー等で使用されている普通紙、アート紙等の紙製の基材、通常の非コート紙、基紙の両面を樹脂等で被覆したコート紙、各種貼合紙、合成紙などの他、いわゆる軟包装に用いられる各種非吸収性のプラスチックおよびそのフィルムを用いることができ、各種プラスチックフィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、延伸ポリスチレン(OPS)、延伸ポリプロピレン(OPP)、延伸ナイロン(ONy)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエチレン(PE)、トリアセチルセルロース(TAC)フィルムを挙げることができる。その他のプラスチックとしては、ポリカーボネート(PP)、アクリル樹脂、ABS樹脂、ポリアセタール、PVA、ゴム類などが使用できる。また、金属類やガラス類にも適用可能である。
【0144】
本発明のインクジェット記録方法においては、特に、記録媒体として、塗工層を有する微吸収性記録媒体を用いることが好ましい。
【0145】
本発明でいう塗工層を有する微吸収性記録媒体とは、具体的には、印刷用塗工紙である。印刷用塗工紙とは、印刷でしばしば用いられる塗工紙であり、一般的には上質紙や中質紙を原紙とし、紙の表面に白土等の顔料を塗布した後、平滑性を高めるためにカレンダー処理をかけて作製される。このような処理により、白色度や平滑性、印刷インクの受理性、あるいは網点再現性、印刷光沢、印刷不透明度などが向上する。塗工量により、アート紙、コート紙、軽量コート紙等の分類があり、また、紙の光沢によりグロス系、ダル系、マット系等に分類される。
【0146】
アート紙は、塗工量が片面20g/m前後の塗工紙であり、一般的には、紙表面に顔料を塗工した後、カレンダー処理をかけて作製される。特アート、並アート、マット(艶消し)アート、片アート(片面塗工)、両アート(両面塗工)などの種類があり、具体的には、OK金藤N、サテン金藤N、SA金藤、ウルトラサテン金藤N、OKウルトラアクアサテン、OK金藤片面、Nアートポスト、NK特両面アート、雷鳥スーパーアートN、雷鳥スーパーアートMN、雷鳥アートN、雷鳥ダルアートN、ハイマッキンレーアート、ハイマッキンレーマット、ハイマッキンレーピュアダルアート、ハイマッキンレースーパーダル、ハイマッキンレーマットエレガンス、ハイマッキンレーディープマット等がある。
【0147】
コート紙は、塗工量が片面10g/m前後の塗工紙であり、一般的には、抄紙機の途中に設けた塗工装置で加工して作製される。コート量がアート紙より少なく、平滑度はやや落ちるものの廉価、軽量という利点がある。また、軽量コートや微塗工紙というコート量のさらに少ない種類の塗工紙も存在する。これらのコート紙の具体例として、PODグロスコート、OKトップコート+、OKトップコートS、オーロラコート、ミューコート、ミューホワイト、雷鳥コートN、ユトリロコート、パールコート、ホワイトパールコート、PODマットコート、ニューエイジ、ニューエイジW、OKトップコートマットN、OKロイヤルコート、OKトップコートダル、Zコート、シルバーダイヤ、ユーライト、ネプチューン、ミューマット、ホワイトミューマット、雷鳥マットコートN、ユトリログロスマット、ニューVマット、ホワイトニューVマット等が挙げられる。
【0148】
本発明のインクジェット記録方法においては、ゲル化剤を含有する活性光線硬化型インクを用いて画像形成を行う際には、適用する記録媒体としては、下記条件1または条件2を満たす記録媒体を用いることを特徴とする。
【0149】
すなわち、条件1としては、60度鏡面光沢度が69以上、100以下の記録媒体を用い、活性光線硬化型インクジェットインクのゲル化温度Tgel−20℃以上、Tgel−10℃未満の温度範囲に記録媒体を加熱して画像形成を行う方法であり、条件2は、60度鏡面光沢度が10以上、69未満の記録媒体を用い、活性光線硬化型インクジェットインクのゲル化温度Tgel−10℃以上、Tgel−5.0℃未満の温度範囲に記録媒体を加熱して画像形成を行う方法である。条件2としては、更に好ましくは、条件2Aとして、60度鏡面光沢度が55以上、69未満の記録媒体を用い、活性光線硬化型インクジェットインクのゲル化温度Tgel−10℃以上、Tgel−7.5℃未満の温度範囲に記録媒体を加熱して画像形成を行う方法であり、条件2Bとして、60度鏡面光沢度が10以上、55未満の記録媒体を用い、活性光線硬化型インクジェットインクのゲル化温度Tgel−7.5℃以上、Tgel−5.0℃未満の温度範囲に記録媒体を加熱して画像形成を行う方法である。
【0150】
以下に、本発明に適用可能な代表的な記録媒体の光沢度を、表1に示す。
【0151】
【表1】

【0152】
上記表1に記載の各記録媒体において、光沢度分類が1の記録媒体は、条件1に適用し、光沢度分類が2Aの記録媒体を条件2または条件2Aに適用し、光沢度分類が2Bの記録媒体は、条件2または条件2Bに適用する。
【0153】
《インクジェット記録方法》
次いで、本発明のインクジェット記録方法について説明する。
【0154】
〔インクの吐出条件〕
本発明のインクジェット記録方法では、本発明に係る活性光線硬化型インクを、インクジェット記録ヘッド内で、該活性光線硬化型インクのゲル化温度Tgel+10℃以上、ゲル化温度Tgel+40℃未満の温度範囲で加熱することを特徴の一つとする。記録ヘッド内のインクの温度をゲル化温度Tgel+10℃以上にすることで、記録ヘッド内もしくはノズル表面でインクがゲル化することなく良好な射出性が得られる。また、記録ヘッド内のインクの温度をゲル化温度Tgel+40℃未満とすることで、記録ヘッドに対する負荷を小さくでき、特にピエゾ素子を用いた記録ヘッドの性能低下を引き起こしにくい。また、インクジェット記録ヘッドを保温し、インクの粘度として3mPa・s以上、20mPa・s未満として出射することが、吐出安定性の観点から好ましい。
【0155】
〔記録媒体の調温〕
本発明のインクジェット記録方法では、記録媒体の表面温度を条件1または条件2で規定する温度範囲に調温することを特徴とする。
【0156】
記録媒体の調温手段としては、例えば、記録媒体を固定する搬送台、もしくは固定用のドラムに予め冷却装置および加熱装置を取り付けて、記録媒体を裏面から調温する方法や、冷風や温風を記録媒体に吹き付けて調温する方法や、冷媒やヒーターを装置上の記録媒体固定位置の上面に取り付けて加熱ローラーなどで調温する方式や、IRレーザーなどを照射して非接触で調温する方式や、インクジェット記録前に予め記録媒体を調温しておく方式などが挙げられるが、面内温度差を均一にし、且つ温度変化に対する堅牢性を高める必要性があることから、記録媒体を裏面から調温する方式が好ましい。調温方法としては、例えば、ペルチェ素子を取り付ける方式や、ヒーターを取り付ける方式や、冷媒・冷却水を循環させる方式などが好ましく用いられる。
【0157】
〔インク着弾後の総インク膜厚〕
本発明のインクジェット記録方法では、記録媒体上にインクが着弾し、活性光線を照射して硬化した後の総インク膜厚が2〜25μmであることが好ましい。尚、ここで「総インク膜厚」とは記録媒体に描画されたインクの膜厚の最大値を意味し、単色でも、それ以外の2色重ね(2次色)、3色重ね、4色重ね(白インクベース)のインクジェット記録方式で記録を行った場合でも総インク膜厚の意味するところは同様である。
【0158】
〔インクの吐出液滴量〕
また本発明のインクジェット記録方法では、記録ヘッドの各ノズルより吐出するインク液滴量を記録画像に合わせて適宜変化させることが可能であるが、高精細画像を形成する場合は1pl〜10plの範囲であることが好ましい。
【0159】
〔画像形成後の活性光線照射条件〕
本発明のインクジェット記録方法においては、活性光線の照射条件として、画像が形成されてから10秒以内に活性光線が照射されることが好ましく、より好ましくは0.001秒〜5秒であり、更に好ましくは0.01秒〜2秒である。また、活性光線の照射を2段階に分ける方式も、インク硬化の際に起こる記録媒体の収縮を抑えられるため好ましい。
【0160】
活性光線の照射方法としては、全ての画像が描画されてから活性光線を照射する事が好ましい。すなわちライン記録方式のインクジェット記録装置であれば、図3に示すように全ての記録ヘッド2の後方に活性光線照射装置4を取り付け、画像が完成されてから活性光線を照射することが好ましく、シリアル記録方式のインクジェット記録装置であれば、図4に示すように各パスにおいて画像が完成されてから活性光線を照射することが好ましい。画像が完成する前に活性光線を照射する場合、例えば、ライン記録方式であれば色間に光源を置く場合や、シリアル記録方式であれば、ドットを間引いて描画し、パス毎に活性光線を照射する場合は、硬化膜上でインク滴が弾かれて画質が乱れ、光沢均質感が低下する場合があった。
【0161】
〔電子線照射〕
活性光線として電子線を用いる場合の照射方法としては、例えば、スキャニング方式、カーテンビーム方式、ブロードビーム方式などがあるが、処理能力の観点からカーテンビーム方式が好ましい。
【0162】
電子線照射の加速電圧は、30〜250kVの範囲に設定することにより硬化皮膜の形成が可能であるが、より低い被照射線量で同等な硬化性が得られる30〜100kVに設定するのが好ましい。また、電子線照射の加速電圧を30〜100kVの範囲に設定した場合には、電子線の被照射線量を通常より低い値とし、高エネルギー効率による省エネルギー化と、印字速度の高速化による生産効率向と上を図ることも可能である。加速電圧が100〜250kVの通常の電子線照射では、電子線照射量としては30〜100kGyであることが好ましく、より好ましくは30〜60kGyである。
【0163】
本発明で用いることのできる電子線照射手段としては、例えば、日新ハイボルテージ(株)製の「キュアトロンEBC−200−20−30」、AIT(株)製の「Min−EB」等を挙げることができる。
【0164】
〔紫外線照射〕
活性光線として紫外線を用いる場合、その紫外線照射光源としては、例えば、蛍光管(低圧水銀ランプ、殺菌灯)、冷陰極管、紫外レーザー、数100Paから1MPaまでの動作圧力を有する低圧、中圧、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、LEDなどが挙げられるが、硬化性の観点から高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、LEDなどの照度100mW/cm以上の高照度なUV光を発光可能な光源が好ましい。中でも消費電力の少ないLEDが好ましいが、この限りでない。
【0165】
〔インクジェット記録装置〕
次いで、本発明のインクジェット記録方法で用いることのできるインクジェット記録装置について、紫外線照射方式の装置を一例として説明する。
【0166】
以下、本発明で用いることのできる記録装置について、図面を適宜参照しながら説明する。尚、図面の記録装置はあくまでも本発明で好ましく用いることのできる記録装置の一態様であり、本発明はこの図面に限定されない。
【0167】
本発明の構成がより有効となる、シングルパス記録方式の画像形成方法について説明する。
【0168】
図3にインクジェット記録装置の要部の構成の一例を示す。図3の(a)はその側面図であり、図3の(b)はその上面図である。
【0169】
図3で示したインクジェット記録装置は、シングルパス記録方式と呼ばれており、ヘッドキャリッジ2に各色インクの記録ヘッド1を記録媒体3の全幅をカバーするようにして、複数個、固定配置しており、記録媒体がそれら固定されたヘッドキャリッジ下を搬送されることで画像を形成する。
【0170】
記録媒体3の搬送方向に対して、色毎に用いられる記録ヘッド2の個数は、用いるヘッドのノズル密度と印字する際の解像度によって変わってくる。例えば、液滴量2pl、ノズル密度360dpiのヘッドを用いて、1440dpiの解像度の画像を形成したい場合には、記録媒体搬送方向に対して、記録ヘッドを4個使用してずらして配置することで1440×1440dpiの画像の形成が可能となる。液滴量6pl・ノズル密度360dpiのヘッドを用いて、720×720dpiの解像度の画像を形成したい場合には、記録ヘッドを2個使用してずらして配置することで720dpiの画像の形成が可能となる。本発明でいうdpiとは、2.54cm当たりのドット数を表す。
【0171】
ヘッドキャリッジ下流側には、メタルハライドランプあるいはLEDランプといった紫外線照射装置4が記録媒体の全幅をカバーするように配置され、画像が形成された後速やかに該ランプにより紫外線が照射され画像が完全に定着される。
【0172】
尚、図3では、例えば、LEDランプ(浜松ホトニクス社製385nm)を用いている。
【0173】
また、記録媒体の下部には温度制御装置5が取り付けられており、記録媒体の温度を本発明に係る温度に適宜調整できる。
【0174】
本発明においては、液滴量0.5〜4.0plの小液滴で吐出し画像形成することが、高精細な画像を形成するのに好ましい。
【0175】
次いで、シリアル記録方式のインクジェット記録方式について説明する。図4にインクジェット記録装置の要部の構成の一例を示す。
【0176】
図4で示したインクジェット記録装置はシリアル記録方式と呼ばれており、ヘッドキャリッジ2に各色インクの記録ヘッド1が複数個、固定配置しており、該ヘッドキャリッジがガイド6に沿って左右に移動しながら画像を記録し、パス毎に記録媒体3が搬送方向に送られることで画像を形成する。
【0177】
画像を形成する際のパス数は特に限定されておらず、例えば、8パス、4パスといったマルチパスでドットを間引いて描画することも可能であるが、高速プリントを想定した場合はシングルパスで画像を形成することが好ましい。
【0178】
色毎に用いられる記録ヘッドの個数は、用いるヘッドのノズル密度と印字する際の解像度、および記録時のパス数によって変わってくる。例えば、液滴量2pl・ノズル密度360dpiのヘッドを用いて、1440dpiの解像度の画像を形成したい場合には、シングルパスで記録する場合は、記録媒体搬送方向に対して、記録ヘッドを4個使用してずらして配置することで1440×1440dpiの画像の形成が可能となり、4パス以上のマルチパスで画像を形成する場合は、記録ヘッドを1個使用して、パス毎に画素をずらして記録することで画像の形成が可能となる。
【0179】
ヘッドキャリッジ下流側には、メタルハライドランプあるいはLEDランプなどの紫外線照射装置4が記録媒体3の全幅をカバーするように配置され、画像が形成された後速やかに該ランプにより紫外線が照射され画像が完全に定着される。
【0180】
尚、図4では、例えば、LEDランプ(浜松ホトニクス社製385nm)を用いている。
【0181】
また、記録媒体3の下部には温度制御装置5が取り付けられており、記録媒体3の温度を本発明に係る温度に適宜調製できる。
【実施例】
【0182】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例において「部」あるいは「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量部」あるいは「質量%」を表す。
【0183】
実施例1
《顔料分散液の調製》
以下の各添加剤を順次混合、分散して、シアン顔料を21質量%含有する顔料分散液1を調製した。
【0184】
以下の各化合物をステンレスビーカーに入れ、65℃のホットプレート上で加熱しながら1時間かけて加熱、攪拌して溶解した。
【0185】
顔料分散剤:アジスパーPB824(味の素ファインテクノ社製) 9部
重合性化合物:APG−200(トリプロピレングリコールジアクリレート、新中村化学社製) 70部
重合禁止剤:Irgastab UV10(BASFジャパン社製) 0.02部
次いで、上記溶液を室温まで冷却した後、この溶液に下記シアン顔料1を21部加えて、直径0.5mmのジルコニアビーズ200gと共にガラス瓶に入れ密栓し、ペイントシェーカーにて8時間分散処理した後、ジルコニアビーズを除去して、顔料分散液1を調製した。
【0186】
シアン顔料1:Pigment Blue 15:4 (大日精化製、クロモファインブルー6332JC)
《インクの調製》
〔インク1の調製〕
下記の各添加剤を順次混合し、80℃に加熱して攪拌した後、得られた溶液を、加熱下で#3000の金属メッシュフィルターでろ過し、冷却して、インク1を調製した。
【0187】
重合性化合物:SR344(ポリエチレングリコール#400ジアクリレート、SARTOMER社製) 34.8部
重合性化合物:Photomer4172(5EO変性ペンタエリスリトールテトラアクリレート、Cognis社製) 10.0部
重合性化合物:SR454(3EO変性トリメチロールプロパントリアクリレート、SARTOMER社製) 25.0部
重合禁止剤:Irgastab UV10(BASFジャパン社製) 0.1部
光重合開始剤:TPO(フォスフィンオキサイド、DAROCURE TPO、BASFジャパン社製) 3.0部
光重合開始剤:Irgacure369(α−アミノアルキルフェノン、BASFジャパン社製) 3.0部
開始剤助剤:ITX(イソプロピルチオキサントン、Speedcure ITX、Lambson社製) 2.0部
開始剤助剤:EDB(アミン助剤、Speedcure EDB、Lambson社製) 3.0部
界面活性剤:KF−352(ポリエーテル変性シリコンオイル、信越化学工業社製)
0.05部
顔料分散液1 19.0部
〔インク2の調製〕
下記の各添加剤を順次混合し、80℃に加熱して攪拌した後、得られた溶液を、加熱下で#3000の金属メッシュフィルターでろ過し、冷却して、インク2を調製した。
【0188】
重合性化合物:SR344(ポリエチレングリコール#400ジアクリレート、SARTOMER社製) 31.8部
重合性化合物:Photomer4172(5EO変性ペンタエリスリトールテトラアクリレート、Cognis社製) 10.0部
重合性化合物:SR454(3EO変性トリメチロールプロパントリアクリレート、SARTOMER社製) 25.0部
重合禁止剤:Irgastab UV10(BASFジャパン社製) 0.1部
重合開始剤:TPO(フォスフィンオキサイド、DAROCURE TPO、BASFジャパン社製) 3.0部
重合開始剤:Irgacure369(α−アミノアルキルフェノン、BASFジャパン社製) 3.0部
開始剤助剤:ITX(イソプロピルチオキサントン、Speedcure ITX、Lambson社製) 2.0部
開始剤助剤:EDB(アミン助剤、Speedcure EDB、Lambson社製) 3.0部
界面活性剤:KF−352(ポリエーテル変性シリコンオイル、信越化学工業社製)
0.05部
顔料分散液1 19.0部
ゲル化剤:ステアリン酸ステアリル 3.0部
〔インク3〜6の調製〕
上記インク2の調製において、ゲル化剤の種類と添加量を、表2に記載の様に変更した以外は同様にして、インク3〜6を調製した。なお、ゲル化剤の添加量が3.0部から増減する場合には、重合性化合物であるSR344の添加量を、総量が100部となるように適宜調整した。
【0189】
表2に略称で記載した各化合物の詳細は、以下の通りである。
【0190】
〈重合性化合物〉
SR344:サートマー SR344、ポリエチレングリコール#400ジアクリレート、SARTOMER社製
P4172:Photomer4172、5EO変性ペンタエリスリトールテトラアクリレート、Cognis社製
SR454:サートマー SR454、3EO変性トリメチロールプロパントリアクリレート、SARTOMER社製
〈重合禁止剤〉
UV10:Irgastab UV10、BASFジャパン社製
〈重合開始剤〉
TPO:フォスフィンオキサイド、DAROCURE TPO、BASFジャパン社製
I369:Irgacure369、α−アミノアルキルフェノン、BASFジャパン社製
〈開始剤助剤〉
ITX:イソプロピルチオキサントン、Speedcure ITX、Lambson社製
EDB:アミン助剤、Speedcure EDB、Lambson社製
〈界面活性剤〉
KF−352:ポリエーテル変性シリコンオイル、信越化学工業社製
〈ゲル化剤〉
GEL1:ステアリン酸ステアリル(エキセパールSS、花王社製)
GEL2:パルミチン酸セチル(アムレプスPC、高級アルコール工業社製)
GEL3:ステアリン酸バチル(ニッコールGM−18SV、日光ケミカルズ社製)
GEL4:ステアロン(ペンタトリアコンタン−18−オン、カオーワックスT1、花王社製)
GEL5:Nステアリルステアリン酸アマイド(ニッカアマイドS、日本化成社製)
〔インク物性の測定〕
上記方法にて調製したインク1〜6について、コーンプレートを使用したストレス制御型レオメータであるPhysicaMCRシリーズ(Anton Paar社製)を用いて、インクのゲル化温度及び30℃におけるインク粘度(複素粘度)を測定した。
【0191】
ゲル化温度(Tgel)は、動的粘弾性の温度変化を測定した際に貯蔵弾性率G′が100mPa以上となる時の温度として測定した。なお、貯蔵弾性率G′は、昇温/降温速度0.1℃/s、歪み5%、角周波数10radian/sの条件で測定した。
【0192】
また、インクの30℃における粘度は、測定温度30℃、歪み5%、角周波数10radian/sで動的粘弾性の温度変化を測定し、得られた複素粘度をインクの粘度とした。得られた結果を表2に示す。
【0193】
また、表2に記載のG1−G2は、記録媒体としてコート紙(OKトップコート、王子製紙社製、坪量105g/m、60度鏡面光沢度:75)を用い、記録媒体の温度T1(該活性光線硬化型インクジェットインクのゲル化温度Tgel−20℃)で形成した画像の60度鏡面光沢度をG1とし、記録媒体の温度T2(該活性光線硬化型インクジェットインクのゲル化温度Tgel−5℃)で形成した画像の60度鏡面光沢度をG2とした時、60度鏡面光沢度差(G1−G2)である。なお、記録媒体の60度鏡面光沢度は、JIS−Z−8741で規定された測定方法に則り、変角光沢度計PG−1M(日本電色工業社製)を用いて測定した。
【0194】
【表2】

【0195】
《インクジェット画像の形成》
図3に示したピエゾ型インクジェット記録ヘッドを備えたシングルパス記録方式(ラインヘッド方式)のインクジェット記録装置のCのヘッドキャリッジを使用して、シアン単色の画像評価を行った。インクジェット記録ヘッドに、インク1〜6をそれぞれ装填し、下記の記録媒体を用い、表3に記載のインクと、記録媒体の種類及び記録媒体の加熱温度との組み合わせで構成される記録方法1〜14で、2cm×2cmの面積でドット率を0%、10%、20%、30%、50%、70%、100%と変化させた濃度階調パッチ画像を形成した。なお、ドット率とは、出力データのピクセル濃度を意味する。
【0196】
(使用した記録媒体の種類と、60度鏡面光沢度)
記録媒体1:ポリエチレンテレフタレート製フィルム(白ペット、マルウ接着社製、60度鏡面光沢度:91)
記録媒体2:キャスコート紙(ミラーコートプラチナ、王子製紙社製、坪量110g/m、60度鏡面光沢度:91)
記録媒体3:アート紙(OK金藤、王子製紙社製、坪量105g/m、60度鏡面光沢度:78)
記録媒体4:コート紙(OKトップコート、王子製紙社製、坪量105g/m、60度鏡面光沢度:75)
記録媒体5:微塗工紙(OKエバーグリーン、王子製紙社製、坪量105g/m、60度鏡面光沢度:60)
記録媒体6:微塗工紙(OKマーノス、王子製紙社製、坪量105g/m、60度鏡面光沢度:45)
記録媒体7:コート紙(マットコート紙、OKトップコートマット、王子製紙社製、坪量105g/m、60度鏡面光沢度:27)
なお、上記各記録媒体の60度鏡面光沢度は、JIS−Z−8741で規定された測定方法に則り、変角光沢度計PG−1M(日本電色工業社製)を用いて測定した。
【0197】
(インクジェットプリンター条件)
インク供給系は、インクタンク、供給パイプ、記録ヘッド直前の前室インクタンク、フィルター付き配管、ピエゾヘッドからなり、前室タンクから記録ヘッド部分まで断熱して、各インクをゲル化温度Tgel+30℃に加温した。また、ピエゾヘッドもヒーターを内蔵させ、記録ヘッド内のインク温度を、インクのゲル化温度Tgel+30℃に加熱した。ピエゾヘッドはノズル径20μm、ノズル数512ノズル(256ノズル×2列、千鳥配列、1列のノズルピッチ360dpi)で、各々1滴の液滴量が2.5plとなる条件で、液滴速度約6m/secで出射させて、1440dpi×1440dpiの記録解像度で印字した。記録速度は400mm/sで記録した。また各記録媒体は、温度制御装置の温度を調温することで表3、4に記載の温度に調温した。画像が形成された後、記録装置の下流部に配置したLEDランプ(浜松ホトニクス社製385nm、記録媒体とランプの距離2mm、最大出力3800mW/cm(浜松ホトニクス社製 紫外線積算光量計:C9536−02で測定))により紫外線を照射してインクを硬化した。また、上記の画像形成は、23℃、55%RHの環境下で行った。なお、本発明でいうdpiとは、2.54cm当たりのドット数を表す。
【0198】
《インク特性の評価:印字する記録媒体温度と、形成画像の光沢度の測定》
上記調製した各インクについて、図2に示したように、記録媒体としてコート紙(OKトップコート、王子製紙社製、坪量105g/m、60度鏡面光沢度:75)を使用し、上記インクジェット画像の形成で用いたインクジェットプリンターより、コート紙の表面温度をそれぞれのインクのTgelに対し−35〜−5℃の範囲で変化させながら、厚さ10μmのシアンベタ画像を形成した。
【0199】
次いで、形成したシアンベタ画像の60度鏡面光沢を、変角光沢度計PG−1M(日本電色工業社製)を用いて測定し、縦軸がシアンベタ画像の光沢度、横軸が記録媒体の表面温度をプロットしたグラフをそれぞれ作成した。
【0200】
図5に代表的なインクとして、ゲル化剤としてステアリン酸ステアリルを用いたインク2(Tgel=53℃)、ゲル化剤としてパルミチン酸セチルを用いたインク3(Tgel=48℃)、ゲル化剤としてステアリン酸バチルを用いたインク4(Tgel=48℃)の光沢度VS記録媒体の表面温度特性値を示す。なお、ゲル化剤を含まないインク1は、記録媒体温度にかかわらず、形成される画像の光沢は、84〜88の範囲であった。また、ゲル化剤としてステアロンを用いたインク5(Tgel=72℃)は、インク2と同様のプロファイルを示した。すなわち、インク2のプロファイルをTgelの差である19℃分だけ高温側にシフトさせた特性であった。また、ゲル化剤としてNステアリルステアリン酸アマイドを用いたインク6(Tgel=92℃)は、形成したマゼンタベタ画像の光沢度は、全て26〜28の範囲であった。
【0201】
なお、記録媒体として、記録媒体4:コート紙(OKトップコート、王子製紙社製、坪量105g/m、60度鏡面光沢度:75)に代えて、上記記録媒体1〜3、5〜7を用いて同様の測定をした結果、上記と同一の光沢度を有する画像が得られた。
【0202】
《形成画像の評価》
(光沢均一性の評価)
上記方法により、形成した2cm×2cmの面積でドット率を20%、50%、70%、100%と変化させた濃度階調パッチ画像について、形成画像部と記録媒体の未印字部(白地部)との光沢感、光沢差を目視観察し、下記の基準に従って光沢均一性の評価を行った。
【0203】
◎:全てのドット率の画像において、濃度階調パッチ画像と記録媒体の未印字部との光沢差が、全く認められない
○:全てのドット率の画像で、濃度階調パッチ画像と記録媒体の未印字部との光沢差が、ほぼ認められない
△:一部のドット率の画像で、やや濃度階調パッチ画像と記録媒体の未印字部との光沢差が認められるが、実用上許容される範囲の品質である
×:全てのドット率の画像で、濃度階調パッチ画像と記録媒体の未印字部との光沢差が認めら、違和感のある画像である
××:全てのドット率の画像で、濃度階調パッチ画像と記録媒体の未印字部とで強い光沢差が認めら、実用に耐えない画像である
以上により得られた評価結果を表3に示す。
【0204】
【表3】

【0205】
表3の結果より明らかなように、本発明に係る活性光線硬化型インクを用いて、本発明で規定するインクジェット記録方法により画像を形成することで、比較例に対し、光沢の異なる各種記録媒体を用いても、光沢均一性のある画像が、全ての記録媒体において得られることが分かる。
【0206】
実施例2
上記実施例1において、前室タンクから記録ヘッド部分、及びピエゾヘッドにおける各インクの加熱温度を、それぞれのインクのゲル化温度Tgelに該当する温度、Tgel+5℃、Tgel+10℃、Tgel+20℃、Tgel+35℃、Tgel+39℃、Tgel+42℃、Tgel+50℃の条件として、実施例1に記載の方法の評価を行った結果、インクの加熱温度をTgel+10℃、Tgel+20℃、Tgel+35℃、Tgel+39℃とした水準において、良好な画像光沢性と優れた出射安定性を得ることができた。
【符号の説明】
【0207】
1 記録ヘッド
2 ヘッドキャリッジ
3 記録媒体
4 紫外線照射装置
5 温度制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
色材、光重合性化合物及び光重合開始剤と、ゲル化剤を1.0質量%以上、10質量%以下含有する活性光線硬化型インクジェットインクを用い、記録媒体上に画像を形成するインクジェット記録方法において、該活性光線硬化型インクジェットインクは、30℃における粘度が10mPa・s以上、10mPa・s以下で、ゲル化温度Tgelが40℃以上、80℃以下で、かつ記録媒体の温度T1(該活性光線硬化型インクジェットインクのゲル化温度Tgel−20℃)で形成した画像の60度鏡面光沢度をG1とし、記録媒体の温度T2(該活性光線硬化型インクジェットインクのゲル化温度Tgel−5℃)で形成した画像の60度鏡面光沢度をG2とした時、60度鏡面光沢度差(G1−G2)が35以上であり、かつ該活性光線硬化型インクジェットインクをゲル化温度Tgel+10℃以上、ゲル化温度Tgel+40℃未満に加熱して、下記条件1または条件2で画像形成することを特徴とするインクジェット記録方法。
条件1:60度鏡面光沢度が69以上、100以下の記録媒体を用い、該記録媒体の表面温度Tsを、該活性光線硬化型インクジェットインクのゲル化温度Tgel−30℃以上、ゲル化温度Tgel−10℃未満に制御して画像形成する。
条件2:60度鏡面光沢度が10以上、69未満の記録媒体を用い、該記録媒体の表面温度Tsを、該活性光線硬化型インクジェットインクのゲル化温度Tgel−10℃以上、ゲル化温度Tgel−5.0℃未満の温度範囲に制御して画像形成する。
【請求項2】
前記条件1及び条件2のいずれも満たす条件で画像形成することを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録方法。
【請求項3】
前記条件2が下記条件2Aと条件2Bであり、前記条件1、該条件2Aまたは条件2Bで画像形成することを特徴とする請求項1または2に記載のインクジェット記録方法。
条件2A:60度鏡面光沢度が55以上、69未満の記録媒体を用い、該記録媒体の表面温度Tsを、該活性光線硬化型インクジェットインクのゲル化温度Tgel−10℃以上、ゲル化温度Tgel−7.5℃未満の温度範囲に制御して画像形成する。
条件2B:60度鏡面光沢度が10以上、55未満の記録媒体を用い、該記録媒体の表面温度Tsを、該活性光線硬化型インクジェットインクのゲル化温度Tgel−7.5℃以上、ゲル化温度Tgel−5.0℃未満の温度範囲に制御して画像形成する。
【請求項4】
前記ゲル化剤が、脂肪酸エステルまたは脂肪族ケトンであることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
【請求項5】
前記ゲル化剤が、ステアリン酸ステアリル、ステアリン酸バチル、パルミチン酸セチルまたはペンタトリアコンタン−18−オン(ステアロン)であることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
【請求項6】
活性光線硬化型インクジェットインクのゲル化温度Tgelが、45℃以上、65℃以下であることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
【請求項7】
前記活性光線硬化型インクジェットインクにおけるゲル化剤の含有量が、2.0質量%以上、7.0質量%以下であることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
【請求項8】
前記活性光線硬化型インクジェットインクのインクジェット記録ヘッド内における粘度を、3mPa・s以上、20mPa・s未満として出射することを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
【請求項9】
前記記録媒体が、塗工層を有する微吸収性記録媒体であることを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
【請求項10】
シングルパス方式で画像印字することを特徴とする請求項1から9のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−240240(P2012−240240A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−110110(P2011−110110)
【出願日】平成23年5月17日(2011.5.17)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】