説明

インクジェット記録方法

【課題】耐マーカー性に優れているとともに高画像濃度の画像を形成することのできる、顔料インクを用いたインクジェット記録方法を提供する。
【解決手段】インクジェット用インクと反応液を用いるインクジェット記録方法である。反応液を記録媒体に付与する第一の工程と、第一の工程後に、インクジェット用インクを記録媒体に付与する第二の工程と、を有し、反応液は、インクジェット用インクの流動性を低下させる成分を含み、インクジェット用インクは、顔料と、水性媒体と、アルキルケテンダイマー、アルケニルコハク酸無水物、及びアルキルコハク酸無水物からなる群より選択される少なくとも一種の化合物と、を含むことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はインクジェット記録方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録に用いるインクとして、粒子状の顔料(顔料粒子)を色材として含有する顔料インクが知られている。顔料インクを用いて形成された画像は、染料インクを用いて形成された画像に比して耐マーカー性が低い傾向にある。顔料インクを用いて画像形成する場合、顔料は、その形状が粒子状であるために記録媒体の内部に浸透しにくい。 このため、記録媒体の表面に顔料粒子が留まりやすい。したがって、指で擦る等の外力が記録媒体表面にかかると、顔料粒子が脱離して画像が剥がれてしまう場合がある。
【0003】
特許文献1には、顔料インクで形成された画像の耐マーカー性を向上させるために、水不溶性ビニルポリマーを含有するインクと、カチオン性ポリマーを含む反応液とを用いる技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−84116号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の技術により形成された画像であっても、その耐マーカー性は必ずしも十分であるとはいえなかった。なお、顔料は染料に比べて発色性が低い傾向にあることが知られている。このため、顔料インクを用いて形成される画像の濃度は、染料インクを用いて形成される画像の濃度に比して低くなる傾向にある。顔料インクを用いて形成される画像の濃度を高めるためには、形成される画像中の顔料粒子を記録媒体の表面近傍に存在させることが求められる。すなわち、顔料インクを用いて形成される画像の耐マーカー性と画像濃度との間には、トレードオフの関係が存在する。
【0006】
本発明は、このような従来技術の有する問題点に鑑みてなされたものである。すなわち、本発明の課題とするところは、耐マーカー性に優れているとともに高画像濃度の画像を形成することのできる、顔料インクを用いたインクジェット記録方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題は、以下に示す本発明によって達成される。すなわち、本発明は、インクジェット用インクと反応液を用いるインクジェット記録方法であって、前記反応液を記録媒体に付与する第一の工程と、前記第一の工程後に、前記インクジェット用インクを前記記録媒体に付与する第二の工程と、を有し、前記反応液は、前記インクジェット用インクの流動性を低下させる成分を含み、前記インクジェット用インクは、顔料と、水性媒体と、アルキルケテンダイマー、アルケニルコハク酸無水物、及びアルキルコハク酸無水物からなる群より選択される少なくとも一種の化合物と、を含むことを特徴とするインクジェット記録方法である。
【発明の効果】
【0008】
本発明のインクジェット記録方法によれば、顔料インクを用いながらも、耐マーカー性に優れているとともに高画像濃度の画像を形成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(1)インクジェット記録方法
(第一の工程)
第一の工程は、例えばインクジェット方式によって、反応液を記録媒体に付与する工程である。反応液には、インクジェット用インクの流動性を低下させる成分が含まれている。インクジェット方式によって付与される反応液の液滴(反応液滴)の大きさは1〜40pLであることが好ましい。反応液滴の吐出速度は5〜20m/sであることが好ましい。また、インクジェット方式によって反応液を吐出するための記録ヘッドの駆動周波数は、1kHz以上であることが好ましい。なお、記録ヘッドの解像度は300dpi以上であることが好ましい。
【0010】
(第二の工程)
第二の工程は、第一の工程後に、例えばインクジェット方式によって、インクジェット用インク(以下、単に「インク」又は「着色インク」とも記す)を記録媒体に付与する工程である。インクには、顔料と、水性媒体と、アルキルケテンダイマー、アルケニルコハク酸無水物、及びアルキルコハク酸無水物からなる群より選択される少なくとも一種の化合物とが含まれている。インクは、記録媒体の少なくとも一部の領域において、先に付与された反応液と接触するように付与されることが好ましい。インクジェット方式によって付与されるインクの液滴(インク液滴)の大きさは1〜40pLであることが好ましい。 インク液滴の吐出速度は5〜20m/sであることが好ましい。また、インクジェット方式によってインクを吐出するための記録ヘッドの駆動周波数は、1kHz以上であることが好ましい。なお、記録ヘッドの解像度は300dpi以上であることが好ましい。
【0011】
(インクジェット記録方法)
インクジェット方式としては、ピエゾ方式をはじめとする周知の方式のいずれであっても採用することができる。なかでも、熱エネルギーを利用してインク中又は反応液中に気泡を生じさせ、生じた気泡の圧力によってインク又は反応液を吐出する方式が最も好ましい。上述したように、本発明においては、記録媒体に反応液を付与した後にインクを付与する。但し、記録媒体へのインク液滴の着弾が、記録媒体への反応液滴の着弾に先んじないようなタイミングで、反応液とインクが記録媒体上にほぼ同時に付与されてもよい。
【0012】
本発明のインクジェット記録方法に好適に用いられるインクジェット記録装置としては、フルマルチタイプのプリンタ、シリアルタイプのプリンタ等を挙げることができる。例えば、フルマルチタイプのプリンタを用いる場合、記録媒体の進行方向に対して、インクを吐出するヘッドを、反応液を吐出するヘッドの後方に配置することで、第一の工程の後に第二の工程を行うことができる。
【0013】
シリアルタイプのプリンタを用いる場合、ヘッド内のインク配置又はパス分割記録方法を用いることで、第一の工程の後に第二の工程を行うことができる。シリアルタイプのプリンタは、通常、複数種類のインクの吐出部が印字方向と垂直に配置されたヘッド構成を有する。このため、シリアルタイプのプリンタを用いる場合には、ヘッドにおける反応液とインクの配置の仕方と印字方向によって、同一走査内で吐出順序を決定することができる。なお、シリアルタイプのプリンタを用いる場合には、ヘッド走査の往方向と復方向とで、インクと反応液の吐出順序が逆転することになる。このため、本発明においては、各色のインクを左右対称にヘッドに配置することが好ましい。このように、各色の着色インクを左右対象にヘッドに配置するとともに、反応液を中心に配置することで、往方向と復方向のいずれの方向であっても、反応液の後にインクを吐出することができる。また、反応液をシリアルタイプのプリンタのヘッドの左右に配置してもよい。
【0014】
画像形成の方式には、同一領域に対して複数回ヘッドを走査させて印字するパス分割記録方式がある。このパス分割記録方式の場合、ヘッドにおけるインクの配置がいかなる場合であっても、第一の工程の後に第二の工程を行うことができる。具体的には、最初のパスで反応液を付与し、残りのパスで着色インクを付与する方法を挙げることができる。より具体的には、4回のパスで画像を形成する場合、1回目のパスで反応液を付与し、残り3回のパスでインクを付与すればよい。
【0015】
アルキルケテンダイマー(以下、「AKD」とも記す)、アルケニルコハク酸無水物(以下、「ASA」とも記す)、及びアルキルコハク酸無水物は、加水分解することで高い撥水性(疎水性)を有する加水分解物を生成する。このため、AKD等を含有するインクを用いて形成された画像の表面は、AKD等の加水分解物によって疎水性(撥水性)を示している。このため、本発明のインクジェット記録方法によって形成された画像は、水性マーカー等の水性成分を弾きやすく、耐マーカー性に優れている。
【0016】
記録媒体に付与されるアルキルケテンダイマー、アルケニルコハク酸無水物、及びアルキルコハク酸無水物の総量は、乾燥した場合の付与量として、0.5mg/mm2以上10mg/mm2以下であることが好ましい。また、1mg/mm2以上3mg/mm2以下であることがさらに好ましい。これらの化合物の総量が0.5mg/mm2未満であると、画像を疎水化する効果が発現しにくくなる傾向にある。一方、これらの化合物の総量が10mg/mm2超であると、画像を疎水化する効果が頭打ちになるとともに、インクの吐出安定性が低下する傾向にある。
【0017】
インク中のAKD等の成分の加水分解を促進させることにより、形成される画像の耐マーカー性をさらに向上させることができる。例えば、インクと反応液のpHをそれぞれ適切に調整することにより、形成される画像の耐マーカー性をさらに向上させることができる。これは、インクと反応液のpHを調整することで、AKD等がケトンへと速やかに加水分解されるようになるためであると考えられる。具体的には、インクのpHが5〜8であるとともに、反応液のpHが7〜12であり、反応液のpHがインクのpHよりも高く、インクのpHと反応液のpHの差が1以上であることが好ましい。また、インクのpHが5〜8であるとともに、反応液のpHが2〜5であり、反応液のpHがインクのpHよりも低く、インクのpHと反応液のpHの差が1以上であることがさらに好ましい。
【0018】
(2)インク
インクには、顔料と、水性媒体と、アルキルケテンダイマー、アルケニルコハク酸無水物、及びアルキルコハク酸無水物からなる群より選択される少なくとも一種の化合物とが含まれている。
【0019】
(顔料)
顔料の具体例としては、カーボンブラック等の無機顔料や有機顔料等を挙げることができる。顔料の含有量は、インク全量を基準として0.1質量%以上15.0質量%以下であることが好ましく、1.0質量%以上10.0質量%以下であることがさらに好ましい。インクには二種以上の顔料を含有させてもよい。また、インクには、色調の調整などのために、顔料とともに染料を含有させてもよい。なお、顔料は、イオン性基の作用により水性媒体中に分散されていることが好ましい。顔料を水性媒体中に分散させる方法としては、樹脂からなる分散剤を使用する方法がある。すなわち、樹脂分散型顔料を顔料として用いることができる。また、自己分散型顔料、マイクロカプセル型顔料等を顔料として用いることもできる。
【0020】
(樹脂分散型顔料)
顔料を水性媒体中に分散させるための分散剤としては、アクリル系樹脂、メタクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ウレタン系樹脂、アクリルアミド系樹脂、エポキシ系樹脂等を挙げることができる。これらの樹脂は、一種単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。分散剤の具体例としては、スチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体、及びこれらの塩;三級アミンモノマーと疎水性モノマーとの共重合物;三級アミンモノマーを4級化したものと疎水性モノマーとの共重合物等を挙げることができる。
【0021】
また、ウレタン系樹脂は、例えばポリオール、ジイソシアネート、鎖延長剤として機能する低分子ジオール、及びジアミン等を反応させることで得ることができる。水溶性ウレタン樹脂に含まれる親水性基又は親水性セグメントとしては、アミノ基、イミノ基等のカチオン性基;カルボキシル基、スルホン基、リン酸基等のアニオン性基;ヒドロキシル基、エーテル基等のノニオン性基等を挙げることができる。分散剤の重量平均分子量は1,000以上30,000以下であることが好ましく、3,000以上15,000以下であることが好ましい。また、分散剤の含有量は、インク全量を基準として0.1質量%以上15.0質量%以下であることが好ましい。
【0022】
(自己分散型顔料)
顔料として、顔料表面にイオン性基(アニオン性基)を結合させることによって、分散剤を用いることなく水性媒体中に分散させることができる、いわゆる自己分散型顔料を用いることができる。このような自己分散型顔料の一例として、自己分散型カーボンブラックを挙げることができる。さらに、自己分散型カーボンブラックの具体例として、アニオン性基がカーボンブラック粒子の表面に結合したアニオン性カーボンブラックを挙げることができる。
【0023】
また、アニオン性カーボンブラックの具体例としては、カーボンブラック粒子の表面に、−COOM、−SO3M、−PO3HM、及び−PO32からなる群より選択される少なくとも一種のアニオン性基を結合させたものを挙げることができる。なお、式中のMは、それぞれ独立に水素原子、アルカリ金属、アンモニウム、又は有機アンモニウム基を示す。
【0024】
これらのアニオン性基(親水性基)は、カーボンブラック粒子の表面に直接結合させてもよい。あるいは、カーボンブラック粒子の表面に、所定の原子団(−R−)を介在させて、親水性基を間接的に結合させてもよい。所定の原子団(−R−)の具体例としては、炭素原子数1〜12の直鎖又は分岐のアルキレン基、置換又は未置換のフェニレン基、置換又は未置換のナフチレン基等を挙げることができる。なお、フェニレン基やナフチレン基に導入されることのある置換基としては、例えば、炭素数1〜6の直鎖又は分岐のアルキル基等を挙げることができる。また、所定の原子団(−R−)と親水性基の組み合わせとしては、例えば、−C24COOM、−Ph−SO3M、−Ph−COOM(Phはフェニル基である)等を挙げることができる。
【0025】
(マイクロカプセル型顔料)
顔料として、樹脂などで顔料をマイクロカプセル化した、いわゆるマイクロカプセル型顔料を用いることができる。通常、マイクロカプセルは、水性媒体に対する分散性を本質的に有する。但し、さらに分散安定性を高めるために、前述の分散剤を使用してもよい。 なお、マイクロカプセル型顔料は、公知の方法で調製したものを用いることができる。
【0026】
(水性媒体)
水性媒体としては、水、又は水と水溶性有機溶剤との混合溶媒を用いることができる。なかでも、水と水溶性有機溶剤との混合溶媒を用いることが好ましい。水としては、脱イオン水(イオン交換水)を用いることが好ましい。水の含有量は、インク全量を基準として50.0質量%以上95.0質量%以下であることが好ましい。また、水溶性有機溶剤の含有量は、インク全量を基準として1.0質量%以上30.0質量%以下であることが好ましい。
【0027】
水溶性有機溶剤の具体例としては、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール等の炭素数1〜4のアルキルアルコール類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド類;アセトン、ジアセトンアルコール等のケトン又はケトアルコール類;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコール類;エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、トリエチレングリコール、ヘキシレングリコール、ジエチレングリコール等のアルキレン基が2〜6個の炭素原子を有するアルキレングリコール類;ポリエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のアルキルエーテルアセテート;グリセリン;エチレングリコールモノメチル(又はエチル)エーテル、ジエチレングリコールメチル(又はエチル)エーテル、トリエチレングリコールモノメチル(又はエチル)エーテル等の多価アルコールのアルキルエーテル類;トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン等の多価アルコール;N−メチル−2−ピロリドン;2−ピロリドン;1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等を挙げることができる。これらの水溶性有機溶剤は、一種単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。これらの水溶性有機溶剤の中から、インクの乾燥を抑制する効果を有するものを選択してインクに含有させることが特に好ましい。
【0028】
(アルキルケテンダイマー)
アルキルケテンダイマーの種類は特に限定されないが、炭素数8〜30の脂肪酸を出発原料とする混合アルキルケテンダイマーであることが好ましい。出発原料となる脂肪酸の炭素数が8未満であると、得られるアルキルケテンダイマーの疎水性が小さくなるので、撥水効果が得られにくくなる傾向にある。
【0029】
アルキルケテンダイマーは、水性分散液の状態で用いることが実用上好ましい。すなわち、水中に分散されたアルキルケテンダイマーを用いることが好ましい。アルキルケテンダイマーの水性分散液を調製する方法は特に制限されない。具体的な調製方法としては、高圧ホモジナイザー等を用いてアルキルケテンダイマーを乳化する高圧乳化法;反転乳化法等を挙げることができる。アルキルケテンダイマーの水性分散液を調製する際には、必要に応じて、カチオン化澱粉等のカチオン性保護コロイド、ノニオン性保護コロイド、アニオン性保護コロイド等を使用してもよい。また、アニオン性乳化剤、ノニオン性乳化剤、カチオン性界面活性剤を使用してもよい。これらのコロイドや乳化剤等は、それぞれ一種単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。また、アルキルケテンダイマーのアルキル基に官能基を化学的に修飾した、分散剤を用いなくとも水に分散可能なアルキルケテンダイマーを用いてもよい。
【0030】
(アルケニルコハク酸無水物及びアルキルコハク酸無水物)
アルケニルコハク酸無水物(ASA)及びアルキルコハク酸無水物の種類は特に限定されない。但し、アルケニルコハク酸無水物のアルケニル基、及びアルキルコハク酸無水物のアルキル基は、いずれも炭素数8〜22であることが好ましく、炭素数16〜18であることがさらに好ましい。これらの基の炭素数が8未満であると、アルケニルコハク酸無水物及びアルキルコハク酸無水物疎水性が小さくなるので、撥水効果が得られにくくなる傾向にある。一方、これらの基の炭素数が22超であると、インク中におけるアルケニルコハク酸無水物及びアルキルコハク酸無水物の分散安定性が低下する場合がある。
【0031】
アルケニルコハク酸無水物やアルキルコハク酸無水物も、アルキルケテンダイマーと同様に、水性分散液の状態で用いることが実用上好ましい。これらの化合物の水性分散液の具体的な調製方法としては、これらの化合物を水に加えた後に、ユニバーサルホモジナイザー、ホモミキサー、超音波乳化機、家庭用ミキサー、又はホモジナイザー等の乳化装置を使用して乳化させる方法を挙げることができる。なお、乳化させる際には乳化剤を用いることが好ましい。乳化剤の具体例としては、カチオン化澱粉、カチオン性ポリアクリルアミド、アニオン性ポリアクリルアミド、両性のポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール、ゼラチン等の高分子乳化剤;アニオン性、ノニオン性、カチオン性、両性の低分子界面活性剤等を挙げることができる。これらの乳化剤は、一種単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。また、アルケニル基やアルキル基に官能基を化学的に修飾した、分散剤を用いなくとも水に分散可能なアルケニルコハク酸無水物やアルキルコハク酸無水物を用いてもよい。
【0032】
アルキルケテンダイマー、アルケニルコハク酸無水物、及びアルキルコハク酸無水物の合計の含有量は、インク全量を基準として0.1質量%以上5質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以上1質量%以下であることがさらに好ましい。
【0033】
(樹脂エマルション)
インクには、樹脂エマルションを含有させることが好ましい。樹脂エマルションを含有するインクを用いると、画像を構成する顔料同士が結着し、形成される画像の耐マーカー性をさらに向上させることができる。樹脂エマルションの具体例としては、アクリル系樹脂、メタクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ウレタン系樹脂、アクリルアミド系樹脂、エポキシ系樹脂等のエマルションを挙げることができる。なお、これらの樹脂の混合系エマルションを用いてもよい。これらの樹脂エマルションのなかでも、スチレン−アクリル酸系共重合体、スチレン−アクリル酸系共重合体、スチレン−マレイン酸系共重合体、スチレン−メタクリル酸系共重合体の樹脂エマルションが好ましい。
【0034】
ウレタン系樹脂は、例えばポリオール、ジイソシアネート、鎖延長剤として機能する低分子ジオール、及びジアミン等を反応させることで得ることができる。なお、ポリオールは、ポリエーテル系のポリオール、ポリエステル系のポリオール、及びポリカーボネート系のポリオールに大別される。ポリエーテル系のポリオールの具体例としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、及びこれらの共重合体等を挙げることができる。ポリエステル系のポリオールの具体例としては、ポリ(エチレンアジペート)、ポリ(ジエチレンアジペート)、ポリ(プロピレンアジペート)、ポリ(ヘキサメチレンアジペート)、ポリ−ε−カプロラクトン、及びこれらの共重合体等を挙げることができる。また、ポリカーボネート系のポリオールの具体例としては、ポリ(ヘキサメチレンカーボネート)等を挙げることができる。
【0035】
ジイソシアネートの具体例としては、トリレンジイソシアネート(TDI)、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、ナフタレン−1,5−ジイソシアネート(NDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、水素化MDI、イソホロンジイソシアネート(IPDI)等を挙げることができる。また、三官能性イソシアネートや変性イソシアネートを用いてもよい。
【0036】
鎖延長剤として機能する低分子ジオールの具体例としては、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ジメチロールプロピオン酸等を挙げることができる。また、鎖延長剤として機能するジアミンの具体例としては、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、キシリレンジアミン、イソホロンジアミン、アジピン酸ジヒドラジド等を挙げることができる。また、ウレタン系樹脂を得るに際しては、1,1,1−トリメチロールプロパン、1,2,6−ヘキサントリオール等の三官能性の架橋剤を用いてもよい。
【0037】
ウレタン系樹脂として、親水性基又は親水性セグメントを含む水溶性ウレタン樹脂を用いることもできる。親水性基及び親水性セグメントの具体例としては、アミノ基、イミノ基等のカチオン性基;カルボキシル基、スルホン基、リン酸基等のアニオン性基;ヒドロキシル基、エーテル基等のノニオン性基等を挙げることができる。
【0038】
樹脂エマルションを構成する樹脂は、疎水性部分と親水性部分とを併せ持った樹脂であることが好ましい。疎水性部分としては、例えば、アルキル基、シクロアルキル基、芳香族環、又は未中和基等を有する繰り返し単位を挙げることができる。なお、未中和基とは、中和剤により中和され得る基を意味する。未中和基の具体例としては、カルボン酸基、スルホン酸基等の酸基;アルカリ性基を挙げることができる。また、親水性部分としては、例えば、ヒドロキシル基、アミノ基、アミド基、又は中和基を有する繰り返し単位を挙げることができる。なお、中和基とは、上記の未中和基が中和された基を意味する。中和基としてはイオン基が好ましい。未中和基及び中和基は、いずれもアニオン性基であることが好ましい。特に、未中和基はカルボン酸基であることが好ましく、中和基はカルボン酸アニオン基(カルボン酸塩の基)であることが好ましい。カルボン酸塩としては、カルボン酸リチウム塩、カルボン酸ナトリウム塩、カルボン酸カリウム塩、カルボン酸アンモニウム塩等を挙げることができる。樹脂エマルションを構成する樹脂が上記の構造を有すると、疎水性部分は樹脂粒子(エマルション粒子)の内部に存在して水から隔離されることになる。一方、樹脂粒子の表面には親水性部分が存在することになる。このような樹脂粒子は水によく馴染むので、水中で安定的に分散して樹脂エマルションを構成することができる。
【0039】
(その他の成分)
インクには、必要に応じて、これまで述べてきた成分以外の成分として、尿素やエチレン尿素などの含窒素化合物、界面活性剤、消泡剤、防錆剤、防腐剤、防黴剤、酸化防止剤、還元防止剤、蒸発促進剤、キレート化剤等の種々の添加剤を含有させてもよい。
【0040】
(3)反応液
反応液には、インクの流動性を低下させる成分が含まれている。このような成分を反応液に含有させることで、形成される画像の耐マーカー性を高めつつ、同時に画像濃度を向上させることが可能となる。このようなインクの流動性を低下させる成分としては、インクの凝集剤を好適に用いることができる。すなわち、本発明で用いられる反応液には、凝集剤が含有されることが好ましい。
【0041】
(凝集剤)
凝集剤の種類は、インクに含まれる成分と凝集反応を生起しうるものであれば特に限定されないが、イオン性有機化合物又は水溶性金属化合物が好適に用いられる。なお、凝集力を強くするために、多価イオンを生じうる化合物を凝集剤として用いることが好ましい。イオン性有機化合物としては、カチオン性ポリマー、カチオン性界面活性剤、アニオン性ポリマー、及びアニオン性界面活性剤等を好適に用いることができる。
【0042】
カチオン性ポリマーとしては、ポリアリルアミン、ジアルキルアリルアンモニウムクロリド重合物、変性ポリビニルアルコールジアルキルアンモニウム塩重合物、ジアルキルジアリルアンモニウム塩重合物等の第4級アンモニウム塩型のカチオン性高分子化合物が好ましい。カチオン性界面活性剤の具体例としては、フッ素系界面活性剤のパーフルオロアルキル基含有トリメチルアンモニウム塩、パーフルオロアルケニル基含有4級アンモニウム塩、カチオン性澱粉、塩化ベンザルコニウム等を挙げることができる。
【0043】
アニオン性ポリマーとしては、カルボン酸基やスルホン酸基を有するアニオン性高分子化合物が好ましい。このようなアニオン性ポリマーの具体例としては、ポリアクリル酸、スチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体、ポリスチレンスルホン酸、ポリメタリルスルホン酸、及びこれらの塩等を挙げることができる。アニオン性界面活性剤としては、カルボン酸塩型、硫酸エステル型、スルホン酸塩型、燐酸エステル型等、一般的なものを用いることができる。
【0044】
水溶性金属化合物としては、水溶性多価金属塩化合物を好適に用いることができる。水溶性多価金属塩化合物の具体例としては、硫酸マグネシウム、硫酸アルミニウム、硫酸マンガン、硫酸ニッケル、硫酸鉄(II)、硫酸銅(II)、硫酸亜鉛、硝酸鉄(II)、硝酸鉄(III)、硝酸コバルト、硝酸ストロンチウム、硝酸マグネシウム、硝酸銅(II)、硝酸ニッケル(II)、硝酸鉛(II)、硝酸マンガン(II)、塩化ニッケル(II)、塩化カルシウム、塩化スズ(II)、塩化ストロンチウム、塩化バリウム、塩化マグネシウム等を挙げることができる。
【0045】
凝集剤の含有量は、反応液の全量を基準として1.0質量%以上15.0質量%以下であることが好ましく、3.0質量%以上10.0質量%以下であることが好ましい。
【0046】
(水性媒体)
反応液には、水と水溶性有機溶剤との混合溶媒である水性媒体が含有されることが好ましい。水としては、脱イオン水(イオン交換水)を用いることが好ましい。水の含有量は、反応液の全量を基準として50.0質量%以上95.0質量%以下であることが好ましい。また、水溶性有機溶剤の含有量は、反応液の全量を基準として1.0質量%以上30.0質量%以下であることが好ましい。
【0047】
水溶性有機溶剤の具体例としては、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール等の炭素数1〜4のアルキルアルコール類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド類;アセトン、ジアセトンアルコール等のケトン又はケトアルコール類;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコール類;エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、トリエチレングリコール、ヘキシレングリコール、ジエチレングリコール等のアルキレン基が2〜6個の炭素原子を有するアルキレングリコール類;ポリエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のアルキルエーテルアセテート;グリセリン;エチレングリコールモノメチル(又はエチル)エーテル、ジエチレングリコールメチル(又はエチル)エーテル、トリエチレングリコールモノメチル(又はエチル)エーテル等の多価アルコールのアルキルエーテル類;トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン等の多価アルコール;N−メチル−2−ピロリドン;2−ピロリドン;1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等を挙げることができる。これらの水溶性有機溶剤は、一種単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0048】
インクと反応液の組み合わせ(インクセット)としては、インクと反応液との接触により生成する顔料凝集物の凝集粒径が大きくなるような組み合わせが好ましい。具体的には、インクと反応液を2:1の体積比で混合した混合物に、21.4W/cm2の強度で50秒間超音波を照射した場合に、総粒子体積に占める10μm以下の粒子の合計の体積割合が20%以下となる顔料分散体と凝集剤の組み合わせが好ましい。このような要件を満たすインクセットを用いることで、形成される画像の耐マーカー性をさらに向上させることができる。
【0049】
上記の要件(総粒子体積に占める10μm以下の粒子の合計の体積割合)は、例えば、インク及び/又は反応液に水溶性樹脂が一定割合以上で含有されていることで実現される。具体的には、(1)水溶性樹脂としてスチレン−アクリル酸ランダムコポリマーを4質量%以上含むインクと、凝集剤としてカチオン性の水溶性多価金属塩化合物である硝酸カルシウムを5質量%以上含む反応液とを用いればよい。また、(2)水溶性樹脂としてウレタン系樹脂を2質量%以上含むインクと、凝集剤としてカチオン性の水溶性多価金属塩化合物である硝酸カルシウムを5質量%以上含む反応液とを用いてもよい。さらに、(3)水性シリコーン系樹脂又はフッ素系樹脂を2質量%以上含むインクと、凝集剤としてカチオン性の水溶性多価金属塩化合物である硝酸カルシウムを5質量%以上含む反応液とを用いてもよい。また、これら(1)〜(3)の具体例の反応液に含まれる凝集剤を、2質量%以上のカチオン性樹脂に代えても同様の効果を得ることができる。
【実施例】
【0050】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0051】
(1)顔料分散体の調製
(顔料分散体(1))
機械的攪拌装置を備えた500mLナスフラスコを超音波発生装置の槽内に入れた。このナスフラスコに、スチレン−アクリル酸ランダムコポリマー(St−AA樹脂、星光PMC製、酸価:98mgKOH/g、固形分濃度:20質量%)6g、及びテトラヒドロフラン50mLを入れ、超音波をかけながらよく攪拌した。別の容器に、カーボンブラックFW18(デグサ製、DBP吸油量:161mL/100g、一次粒径:15nm)6gを入れ、テトラヒドロフラン50mLを添加した。顔料(カーボンブラック)表面が溶媒で十分濡れるまで遊星式攪拌機(クラボウ製)にて混合した後、ナスフラスコ中に添加してよく混合した。
【0052】
水酸化カリウム水溶液を、St−AA樹脂の中和率が100%となるように滴下注入して転相させた後、60分間プレミキシングを行った。その後、ナノマイザ(商品名「NM2−L200AR」、吉田機械興業製)を用いて2時間分散を行った。ロータリエバポレータを用いてテトラヒドロフランを留去した後、濃度調整を行って顔料濃度6質量%の顔料分散体(1)(分散粒径:81nm)を得た。顔料分散体中の顔料(カーボンブラック)の分散粒径(体積平均粒子径)は、粒度分布測定装置(商品名「マイクロトラックUPA150−EX」、日機装製)を使用して測定した。なお、顔料分散体をイオン交換水で希釈した後、超音波洗浄器を使用して分散処理し、サンプル濃度指数を0.04として分散粒径を測定した。以降、本明細書における「分散粒径」とは、特に断りのない限り、上記の測定方法により測定された「体積平均粒子径」を意味する。
【0053】
(顔料分散体(2))
St−AA樹脂の量を3gとしたこと以外は、前述の顔料分散体(1)の場合と同様にして、顔料濃度6%の顔料分散体(2)(分散粒径:81nm)を得た。
【0054】
(顔料分散体(3))
St−AA樹脂に代えて、水性ウレタン系樹脂(商品名「SF830」、星光PMC製)6gを用いたこと以外は、前述の顔料分散体(1)の場合と同様にして、顔料濃度6%の顔料分散体(3)(分散粒径:79nm)を得た。
【0055】
(顔料分散体(4))
カーボンブラック(表面積:230m2/g、DBP吸油量:70mL/100g)10g、3−アミノ−N−エチルピリジニウムブロマイド3.06g、及び水72gをよく混合した後、硝酸1.62gを滴下し、70℃で攪拌した。数分後、水5gに亜硝酸ナトリウム1.07gを溶かした溶液を加え、さらに1時間攪拌してスラリーを得た。得られたスラリーを濾紙(商品名「東洋濾紙No.2」、アドバンティス製)で濾過した後、顔料粒子を十分に水洗した。110℃のオーブンで乾燥した後、水を添加して顔料濃度10質量%の分散体を調製した。強塩基性のイオン交換樹脂(商品名「ダイアイオンSA−10A」、日本錬水製)10gと、調製した分散体100gとを混合して2時間攪拌し、顔料粒子表面のピリジニウム基をOH型へとイオン交換した。その後、ポア径100μmのメッシュフィルターを用いてイオン交換樹脂と分散体を分離し、酢酸で分散体をpH5に調整して顔料分散体(4)を得た。
【0056】
(2)AKD分散体の調製
ミキサー(商品名「ミルサー」、Iwatani製)の容器に、AKD48.8gと、非イオン性乳化剤であるポリビニルアルコール40gを入れ、30秒間攪拌した。純水163.9gを加えてさらに30秒間攪拌し、AKD濃度15質量%のAKD分散体を得た。
【0057】
(3)ASA分散体の調製
ミキサー(商品名「ミルサー」、Iwatani製)の容器に、ASA(商品名「AS1532、星光PMC製)48.8gと、乳化剤(商品名「SP1800」、星光PMC製)40gを入れて30秒間攪拌し、ASA濃度15質量%のASA分散体を得た。
【0058】
(4)着色インク(インク1〜11)の調製
表1−1及び1−2に示す各成分を混合して均一に攪拌した後、1N水酸化カリウムを用いて所望のpHとなるように調整して分散液を得た。平均孔径2.0μmのPVDFフィルターを用いて得られた分散液を加圧ろ過し、粗大粒子やごみを除去してインク1〜11を得た。
【0059】

【0060】

【0061】
(5)反応液(反応液1〜7)の調製
表2に示す各成分を混合して均一に攪拌した後、1N水酸化カリウム水溶液又は1N塩酸を用いて所望のpHとなるように調整して分散液を得た。平均孔径2.0μmのPVDFフィルターを用いて分散液を加圧ろ過し、粗大粒子やごみを除去して反応液1〜7を得た。
【0062】

【0063】
(6)画像形成(実施例1〜12、比較例1〜6)
熱エネルギーの作用により着色インクを吐出させるインクジェット記録装置を使用し、表3に示すインクと反応液の組み合わせで記録媒体上に画像形成(印字)を行って印字物を得た。インクは100%Dutyにて記録媒体上に付与し、反応液は50%Dutyにて記録媒体上に付与した。記録媒体としては、A4サイズの普通紙(商品名「GF500」、キヤノン製)を用いた。また、インクジェット記録装置としては、1ドット当たりの吐出量が4.5pL、記録密度が1200×1200dpi、駆動条件が駆動周波数10kHzである装置を使用した。
【0064】

【0065】
(7)測定及び評価
(凝集粒径の測定)
表3に示す組み合わせでインクと反応液を体積比2:1で混合し、1分間攪拌して混合液を調製した。粒径測定装置(商品名「LA−950」、堀場製作所製)に調製した混合液を投入し、超音波(強度21.4W/cm2)を50秒間照射した後、混合液に含まれる粒子の粒径を測定した。そして、体積平均粒子径での粒度分布から、総粒子体積に占める10μm以下の粒子の体積割合を算出した。結果を表4に示す。
【0066】
(耐マーカー性の評価)
擦過性評価装置(商品名「HEIDON」、新東科学製)と、マーカーペン(商品名「プロパス 黄色」、三菱鉛筆製)を使用し、室温で乾燥させた印字物の印字部の同じ場所を、連続3回マーカーペンで擦過した。なお、擦過の条件は、荷重:300g、擦過速度:3.0m/minとした。擦過後、非印字部の汚れと印字部の剥がれを観察し、以下の基準に従って耐マーカー性を評価した。評価結果を表4に示す。
【0067】
[耐マーカー性の評価基準]
◎:3回の擦過で非印字部の汚れ及び印字部の剥がれが全くない。
○:2回の擦過まで非印字部の汚れ及び印字部の剥がれが全くない。
△:1回の擦過まで非印字部の汚れ及び印字部の剥がれが全くない。
×:1回の擦過で非印字部の汚れ又は印字部の剥がれが認められる。
【0068】
(画像濃度の評価)
グレタグ濃度計(グレタグマクベス製)を使用して印字部の光学濃度(O.D.値)を測定し、以下の基準に従って画像濃度を評価した。評価結果を表4に示す。
【0069】
[画像濃度の評価基準]
○:O.D.値が1.4以上。
×:O.D.値が1.4未満。
【0070】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクジェット用インクと反応液を用いるインクジェット記録方法であって、
前記反応液を記録媒体に付与する第一の工程と、
前記第一の工程後に、前記インクジェット用インクを前記記録媒体に付与する第二の工程と、を有し、
前記反応液は、前記インクジェット用インクの流動性を低下させる成分を含み、
前記インクジェット用インクは、顔料と、水性媒体と、アルキルケテンダイマー、アルケニルコハク酸無水物、及びアルキルコハク酸無水物からなる群より選択される少なくとも一種の化合物と、を含むことを特徴とするインクジェット記録方法。
【請求項2】
前記インクジェット用インクのpHが5〜8であるとともに、前記反応液のpHが7〜12であり、
前記反応液のpHが前記インクジェット用インクのpHよりも高く、
前記インクジェット用インクのpHと前記反応液のpHの差が1以上である請求項1に記載のインクジェット記録方法。
【請求項3】
前記インクジェット用インクのpHが5〜8であるとともに、前記反応液のpHが2〜5であり、
前記反応液のpHが前記インクジェット用インクのpHよりも低く、
前記インクジェット用インクのpHと前記反応液のpHの差が1以上である請求項1に記載のインクジェット記録方法。
【請求項4】
前記インクジェット用インクの流動性を低下させる成分が、アニオン性ポリマー又は水溶性多価金属塩化合物である請求項1〜3のいずれか一項に記載のインクジェット記録方法。

【公開番号】特開2013−979(P2013−979A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−134377(P2011−134377)
【出願日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】