説明

インクジェット記録液及びインクジェット画像形成装置

【課題】高速で、画像濃度が高く、フェザリングやブリーディング、ビーディングの少ない高画質な画像を得ることができ、吐出安定性にも優れたインクジェット記録液およびそれを用いた画像形成装置を提供する。
【解決手段】記録用紙14はpH制御手段12によってpH調整剤を塗布される。記録ヘッド13から吐出されるインクジェット記録液は、水と、着色剤と、ホウ素化合物と、該ホウ素化合物と特定のpH領域において架橋する高分子とを含み、ホウ素化合物と高分子とが架橋しないpHになるようにpH調整されている。記録用紙14のpHは、高分子がホウ素化合物によって架橋されてインクのゲル化・増粘が起こる値に調整される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクを吐出させて画像を形成するインクジェット画像形成装置、該インクジェット画像形成装置に用いられるインクジェット記録液に関する
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録では、数十μmといった微細なノズルからインクを吐出するため、インクの目詰まり等の問題からインクの着色剤として溶解性の高い染料が用いられてきた。
染料インクは発色性に優れており、写真プリントにおいて銀塩写真に匹敵する画質を得ることができるが、その反面、耐水性・耐光性・耐ガス性など画像保存性に劣る欠点を有している。この欠点を補うため、インクの着色剤として顔料の利用が進められ、工業用の大判プリンタから、現在ではパーソナル市場やオフィス市場のプリンタにも搭載されている。
記録紙にカラー画像を印字する際には、2色重ね部分等の色境界でのにじみ(以下、「ブリーディング」という)を押さえるために、インクに界面活性剤などを添加することによりインクの紙への浸透性を高めることが行われている(特許文献1参照)。
【0003】
インクの紙への浸透性を高めることにより色境界でのにじみは低減できるが、その反面、記録紙を形成するセルロース繊維に沿って浸透するので文字や細線の印字周辺部ににじみ(以下「フェザリング」という)が発生しやすくなる。
ブリーディングとフェザリングの防止を両立させるため、黒文字の印字にのみ浸透性の低いインクを使用する等の工夫がなされているが、その場合には、黒色インクの乾燥性が悪く高速印字が困難であるという問題が残る。
特許文献2には、被記録材上に予めカルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル等のポリマー溶液を噴射し、次いでそのポリマー溶液が付着した部分にインクを吐出して印字するインクジェット記録方法が提案されている。
しかしながら、これらのポリマー溶液ではフェザリングは抑えられず、また耐水性も改善されなかった。
【0004】
特許文献3には、インクジェット記録ヘッドを用いて画像を形成する装置であって、インクを吸収する吸水性樹脂粒子を被記録材に塗布する手段と、インクを被記録材に塗布された吸水性樹脂粒子上に吐出させる手段と、前記吸水性樹脂粒子を被記録材に定着させる手段とを有する画像形成装置が提案されている。
しかしながら、吸水性樹脂粒子は吸湿しやすく、装置内あるいは保管時に吸湿により塊状となり、被記録材に吸水性樹脂粉体を均一に塗布することが困難になるなどの不具合を生じやすい。
また、インク中の着色剤を不溶化する化合物を含む被記録材の前処理液を被記録材上にインクジェット方法により付着した後にその被記録材の前処理液が付着した部分にインクを吐出して画像形成するインクジェット記録方法が特許文献4、特許文献5または特許文献6等に開示されている。これらの方法では、色境界にじみとフェザリングの両者がある程度の水準で改善される。
しかしながらこれらの方法では、前処理液を安定して吐出せしめるために、前処理液の粘度を低くする必要があり、よって着色剤を不溶化せしめる化合物を低濃度にせざるをえなかった。このような前処理液で十分な画質改善効果を得るためには、前処理液を比較的多量に付与しなければならず、水分を含む液体を多量に被記録材に付与するため、被記録材のカールやコックリングが発生しやすかった。
【0005】
特許文献7には、シリコーンオイルなどのシリコーン化合物とカチオン性化合物とを少なくとも含有した無色の液体組成物を被記録材に塗布した後、アニオン性成分を含有するインクをインクジェット記録方式により被記録材に付着させる画像形成方法が開示されている。
しかしながら、シリコーン化合物が付着した被記録材部分はインクの浸透性が著しく低いため画像部の乾燥が遅いという問題があった。
特許文献8では、インクの浸透性や濡れ性を改善するため、着色剤を不溶化する化合物および所定の界面活性剤を含有する画像記録促進液を被記録材に対して付与した後、インクをインクジェット記録方式により被記録材に付着させることにより画像を形成する方法が提案されている。
この方法によれば、画像記録促進液中の界面活性剤がインクの被記録材に対する浸透性や濡れ性を改善するため、画像の乾燥性が向上し高速記録に対応が可能となるものの、着色材を不溶化せしめる成分量が少ないため、ブリーディングやフェザリングの防止効果が不十分であり、更なる改善が求められていた。
【0006】
特許文献9、10には、インク非浸透性の中間転写体上にインクジェット記録方法によりインク像を形成し、その後インク像を中間転写体から被記録材に転写する中間転写方式と呼ばれる方法が提案されている。
これらの特許文献に記載されている中間転写方式では、記録ヘッドを記録紙から離して配置することができ、紙粉の付着による記録ヘッドのノズルの目詰まりを抑制することができる。また、記録ヘッドと記録紙のギャップを常に一定に保つのは困難であるが、記録ヘッドと中間転写体の場合は一定に保つことができ、また、紙種対応性がよく、従って信頼性の高い方式と言える。
しかしながら、高い転写率を得るための離型性の良い中間転写体材料ではブリーディングや隣接液滴の集合(以下「ビーディング」という)が激しく、画像品質が低下するという問題点があった。
【0007】
特許文献11等には、特許文献9、10に記載された方法を改良するものとして、インクを中間転写体上に吐出してインク像を形成した後、中間転写体上でインクの大半の水分を蒸発させて、濃縮したインクを紙等の被記録材に転写する方法が開示されている。
この方法では、一旦、中間転写体上に良好な画像が形成されれば、一般に使用されている、所謂、普通紙上でも良好な画像品質を得ることができる。
しかしながら、常温ではインクの濃縮に時間を要するため、中間転写体を加熱してインク中の溶媒の蒸発を促進する必要があり、大きなエネルギーを必要とする問題があった。
【0008】
特許文献12、特許文献13等には、中間転写体の表面にポリアクリル酸などの吸水性樹脂粒子の層を設けて、中間転写体に付与されるインク中の水分を吸収した後に、吸水性樹脂粒子ごと被記録材に転写する方法が開示されている。
この方法は、普通紙上でも良好な画像品質を得ることができるが、前述の特許文献3と同様に、保管時の吸湿により吸水性樹脂粒子が塊状となり、中間転写体上に均一に塗布することが困難になるなどの問題がある。
特許文献14では、多糖類高分子と光分解性金属錯体を含有したインクを吐出し、吐出されたインクに紫外線を照射してインクを増粘させる方法が提案されている。
この方法によれば、紫外線照射による増粘によりブリーディングやフェザリングの防止に効果があるが、紫外線光の吸収量にばらつきが出てしまうため、増粘効果にムラができてしまう。また紫外線照射装置が効果であるため、コスト面での問題もある。
特許文献15では、多価金属イオンが含有されている錯体化合物を含み、多価金属イオンが実質的に不活性になるようなpHであるインクと、多価金属イオンを活性化させるpHである液体を、記録媒体上で混合させることでインク中の色材を凝集させ、画像にじみを抑える方法が提案されている。
この方法によれば、色材が凝集することでにじみを抑えることができるが、色材同士が固まってしまうことで画像濃度が下がるという問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述のように、従来においては、高画質かつ高速、高信頼で記録するために、種々の提案がなされているが、それぞれ問題を抱えている。
【0010】
本発明は、上記のような現状に鑑みてなされたもので、高速で、画像濃度が高く、フェザリングやブリーディング、ビーディングの少ない高画質な画像を得ることができ、吐出安定性にも優れたインクジェット記録液およびそれを用いた画像形成装置の提供を、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、水と、着色剤と、ホウ素化合物と、該ホウ素化合物と特定のpH領域において架橋する高分子とを含み、前記ホウ素化合物と前記高分子とが架橋しないpHになるようにpH調整されたことを特徴とするインクジェット記録液である。
【0012】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のインクジェット記録液において、前記ホウ素化合物がホウ酸もしくはその塩又はホウ砂から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする。
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載のインクジェット記録液において、前記高分子が、ヒドロキシル基を有する水溶性高分子であることを特徴とする。
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3の何れか1つに記載のインクジェット記録液において、pHが7以下であることを特徴とする。
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4の何れか1つに記載のインクジェット記録液において、前記着色剤が非イオン性分散剤、またはスルホン酸塩系分散剤で分散されている顔料、またはスルホン酸塩を有する染料のいずれかであることを特徴とする。
【0013】
請求項6に記載の発明は、インクジェット画像形成装置において、請求項1〜5の何れか1つに記載のインクジェット記録液を画像信号に応じて記録ヘッドから吐出して被記録材に画像形成することを特徴とする。
請求項7に記載の発明は、請求項6に記載のインクジェット画像形成装置において、被記録材に画像形成した後、圧力によりインクの定着性を向上させるための圧力印加手段を有していることを特徴とする。
請求項8に記載の発明は、請求項6に記載のインクジェット画像形成装置において、前記記録ヘッドに対向して配置され、非吸水性の表面を有する中間転写体を備え、前記中間転写体に一時的に画像形成した後、該中間転写体上の画像を被記録材に転写することを特徴とする。
請求項9に記載の発明は、請求項6〜8の何れか1つに記載のインクジェット画像形成装置において、前記被記録材の表面、または前記中間転写体の表面のpHを制御できるpH制御手段を有していることを特徴とする。
請求項10に記載の発明は、請求項8に記載のインクジェット画像形成装置において、前記インクジェット記録液が電解質成分を含み、前記記録ヘッドと前記中間転写体との間に電圧を印加する電圧印加手段を有し、画像形成時に前記記録ヘッドから吐出された直後の前記インクジェット記録液の形状が、前記記録ヘッドと前記中間転写体とのギャップを一時的にブリッジ可能な液柱であり、前記インクジェット記録液に含まれる水を電気分解することにより前記記録ヘッドから吐出された前記インクジェット記録液のpHを前記中間転写体上で変化させ、前記中間転写体上の画像を前記被記録材に転写する転写手段を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、高速で、画像濃度が高く、フェザリングやブリーディング、ビーディングの少ない高画質な画像を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態に係るインクジェット画像形成装置の概要構成図である。
【図2】他の実施形態に係るインクジェット画像形成装置の概要構成図である。
【図3】図2で示した実施形態における画像形成のメカニズムを説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を図を参照して説明する。
まず、インク組成物について説明する。本発明によるインクジェット記録液は、水と、着色剤と、ホウ素化合物と、該ホウ素化合物と特定のpH領域において架橋する高分子と、pH調整のためのpH調整剤とから構成される。
[着色剤]
本発明に用いる着色剤成分の具体例としては、例えば、カラーインデックスにおいて酸性染料、直接性染料、食用染料に分類される染料を挙げることができる。より具体的には、酸性染料および食用染料として、 C.I.アシッドイエロー 17、23、42、44、79、142 C.I.アシッドレッド 1、8、13、14、18、26、27、35、37、42、52、82、87、89、92、97、106、111、114、115、134、186、249、254、289 C.I.アシッドブルー 9、29、45、92、249 C.I.アシッドブラック 1、2、7、24、26、94 C.I.フードイエロー 3、4 C.I.フードレッド 7、9、14 C.I.フードブラック 1、2等がある。直接性染料として、 C.I.ダイレクトイエロー 1、12、24、26、33、44、50、86、120、132、142、144 C.I.ダイレクトレッド 1、4、9、13、17、20、28、31、39、80、81、83、89、225、227 C.I.ダイレクトオレンジ 26、29、62、102 C.I.ダイレクトブルー 1、2、6、15、22、25、71、76、79、86、87、90、98、163、165、199、202 C.I.ダイレクトブラック 19、22、32、38、51、56、71、74、75、77、154、168、171 等がある。反応性染料としてC.I.リアクティブ.ブラック3、4、7、11、12、17、C.I.リアクティブ.イエロー1、5、11、13、14、20、21、22、25、40、47、51、55、65、67、C.I.リアクティブ.レッド1、14、17、25、26、32、37、44、46、55、60、66、74、79、96、97、C.I.リアクティブ.ブルー1、2、7、14、15、23、32、35、38、41、63、80、95等があり、溶解性の高さ、色調の良好さ、本発明における方法で記録した場合の耐水性の良さから、好ましく用いることができる。
【0017】
または、無機顔料、有機顔料といった顔料を使用することができる。無機顔料としては、酸化チタン、酸化亜鉛、硫酸バリウムなどの白色顔料や酸化鉄などの黒色顔料などを用いることが出来る。有機顔料としては、アゾ顔料(アゾレーキ、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料などを含む)、多環式顔料(例えば、フタロシアニン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサジン顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフラロン顔料など)、染料キレート(例えば、塩基性染料型キレート、酸性染料型キレートなど)、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラックなどを使用できる。また、コンタクト法、ファーネス法、サーマル法などの公知の方法によって製造されたカーボンブラックを使用することができる。より具体的には、カラー用としては、C.I.ピグメントイエロー1(ファストイエローG)、3、12(ジスアゾイエローAAA)、13、14、17、24、34、35、37、42(黄色酸化鉄)、53、55、81、83(ジスアゾイエローHR)、95、97、98、100、101、104、408、109、110、117、120、138、153、C.I.ピグメントオレンジ5、13、16、17、36、43、51、C.I.ピグメントレッド1、2、3、5、17、22(ブリリアントファーストスカレット)、23、31、38、48:2(パーマネントレッド2B(Ba))、48:2(パーマネントレッド2B(Ca))、48:3(パーマネントレッド2B(Sr))、48:4(パーマネントレッド2B(Mn))、49:1、52:2、53:1、57:1(ブリリアントカーミン6B)、60:1、63:1、63:2、64:1、81(ローダミン6Gレーキ)、83、88、101(ベンガラ)、104、105、106、108(カドミウムレッド)、112、114、122(キナクリドンマゼンタ)、123、146、149、166、168、170、172、177、178、179、185、190、193、209、219、C.I.ピグメントバイオレット1(ローダミンレーキ)、3、5:1、16、19、23、38、C.I.ピグメントブルー1、2、15(フタロシアニンブルーR)、15:1、15:2、15:3(フタロシアニンブルーE)、16、17:1、56、60、63、C.I.ピグメントグリーン1、4、7、8、10、17、18、36等がある。
顔料の粒径に特に制限は無いが、最大個数換算で最大頻度が20〜150nmの粒径の顔料インクを用いることが好ましい。粒径が150nmを超えると、記録液としての顔料分散安定性が悪くなるばかりでなく、記録液の吐出安定性も劣化し、画像濃度などの画像品質も低くなり好ましくない。粒径が20nm未満では、記録液の保存安定性、プリンタでの噴射特性は安定し高い画像品質も得られるが、そのように細かな粒径にまで分散せしめるのは、分散操作や、分級操作が複雑となり、経済的に記録液を製造することが困難となる。
【0018】
本発明に用いる非イオン性分散剤の具体例としては、アルキルグリコシド、アルキルポリグルコシド、脂肪酸ソルビタンエステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、アルキルモノグリセリルエーテル、脂肪酸ジエタノールアミドなどが挙げられる。
本発明に用いるスルホン酸塩系分散剤の具体例としては、ドデシルスルホン酸およびその塩、デシルスルホン酸およびその塩、またそのようなアルキルスルホン酸およびその塩、ラウリル硫酸塩、オレイル硫酸塩などのアルキル硫酸エルテル類、ドデシルベンゼンスルホン酸およびその塩、ラウリルベンゼンスルホン酸およびその塩、またそのようなアルキルベンゼンスルホン酸とその塩、ジオクチルスルホ琥珀酸およびその塩、ジヘキシルスルホ琥珀酸およびその塩、またそのようなジアルキルスルホ琥珀酸およびその塩、ナフチルスルホン酸およびその塩、またそのような芳香族アニオン系界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテルスルホン酸塩、フッ素化アルキルスルホン酸およびその塩等のフッ素系アニオン性界面活性剤などが挙げられる。
【0019】
本発明のインクジェット記録液に係るインク組成物は、水を主な液媒体として使用するが、インクを所望の物性にするため、あるいはインクの乾燥による記録ヘッドのノズルの詰まりを防止するため、後述の水溶性有機溶媒を保湿剤成分として使用することが好ましい。
水溶性有機溶媒の具体例としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−へキサンジオール、1,2,6−へキサントリオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,3−ブタントリオール、ペトリオール等の多価アルコール類、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等の多価アルコールアルキルエーテル類、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル等の多価アルコールアリールエーテル類、N−メチル−2−ピロリドン、N−ヒドロキシエチル−2−ピロリドン、2−ピロリドン、1,3−ジメチルイミダゾリジノン、ε−カプロラクタム等の含窒素複素環化合物、ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド類、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン等のアミン類、ジメチルスルホキシド、スルホラン、チオジエタノール等の含硫黄化合物類、プロピレンカーボネート、炭酸エチレン、γ−ブチロラクトン等である。
【0020】
また、その他の保湿成分として、ソルビトール等の糖アルコール、ヒアルロン酸等の多糖類、ポリエチレングリコール等の高分子、また、尿素、乳酸、クエン酸塩、アミノ酸系といった天然保湿成分も用いることができる。これらの溶媒は、水とともに単独もしくは複数混合して用いられる。これらの水溶性有機溶媒の含有量は特に制限はないが、好ましくはインク全体の1〜60重量%、更に好ましくは5〜30重量%の範囲で用いる。
【0021】
[ホウ素化合物]
本発明に用いるホウ素化合物は、ホウ酸、ホウ酸塩(例えば、オルトホウ酸塩、InBO3、ScBO3、YBO3、LaBO3、Mg3(BO3)2、Co3(BO3)2、二ホウ酸塩(例えば、Mg2B2O5、Co2B2O5)、メタホウ酸塩(例えば、LiBO2、Ca(BO2)2、NaBO2、KBO2)、四ホウ酸塩(例えば、Na2B4O7・10H2O(ホウ砂))、五ホウ酸塩(例えば、KB5O8・4H2O、Ca2B6O11・7H2O、CsB5O5)等を挙げることができる。高分子の架橋という観点からホウ酸もしくはその塩又はホウ砂が特に好ましく用いられる。これらは、1種単独でもしくは2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0022】
[架橋する高分子]
本発明の架橋構造物としては、水酸基を有する親水性高分子物質をホウ酸イオンによって架橋したものが特に優れている。
高分子物質としてはローカストビーンガム、グアーガム、ペクチン、カラギーナン、ジェランガム等の多糖類、又は、ポリビニルアルコール及びその誘導体等の水酸基を有する合成高分子物質が挙げられる。これらの高分子物質は単独あるいは複数組み合わせて用いられる。
前記高分子の平均重量分子量としては特に制限がないが、記録液が効果的にゲル化・増粘を起こすためには平均重量分子量が大きい必要がある。ただし、大きすぎると架橋していない状態での粘度も高くなってしまい、吐出安定性に影響がある。そのため、2万以上200万以下の範囲のものが好ましい。インク組成物中のpH応答性ポリマー濃度としては、0.01重量%以上10%以下の範囲が好ましく、0.1重量%以上5重量%以下がより好ましい。
【0023】
水の電気分解によりpH勾配を形成させる(請求項10)には、インクのイオン伝導性を上げるための電解質成分を添加する必要がある。
インクに添加する電解質成分として、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化リチウム、塩化ルビジウム、臭化ナトリウム、ヨウ化ナトリウム、硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硝酸ナトリウム、亜硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、リン酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、などの無機アルカリ金属塩、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、シュウ酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、クエン酸水素ナトリウム、クエン酸カリウム、クエン酸水素カリウムなどの有機アルカリ金属塩、塩化アンモニウム、硝酸アンモニウム、硫酸アンモニウム、塩化テトラメチルアンモニウム、硝酸テトラメチルアンモニウム、塩化コリンなどの有機アンモニウム塩などが挙げられる。
【0024】
2価以上の多価金属塩は着色剤やpH応答性ポリマーの分散・溶解性を損ねるので、1価の金属塩であることが好ましい。特に電解質成分として第四級アンモニウム塩を添加するの好ましい。第四級アンモニウムイオンは中心元素に結合したアルキル基によって電荷分散しており、着色剤や高分子との相互作用が小さく安定に存在する。
また、水とのクラスターを形成しにくく、着色剤や高分子の分散・溶解に必要な水和水を奪うことも少ない。単位分子量あたりの導電率(モルイオン伝導率)は分子量の小さい化合物が高く、四級アンモニウム塩のなかで特にテトラメチルアンモニウム塩が好ましい。また、カウンターイオンとして塩化物イオン、硝酸イオン、硫酸イオン等があるが、塩化物イオンはアノードで電極反応を起こして塩素を発生する恐れがある。そのため、不活性な硝酸イオンや硫酸イオンが好ましい。
【0025】
酸性pH調整剤としては、ホウ酸、炭酸、塩酸、硝酸、硫酸、酢酸、塩化アンモニウム等を用いることができる。アルカリ性pH調整剤としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属元素の水酸化物、水酸化アンモニウム、四級アンモニウム水酸化物、四級ホスホニウム水酸化物、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属の炭酸塩、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアミン類を用いることができる。
その他、必要に応じてpH緩衝剤、粘度調整剤、防腐剤、酸化防止剤、防錆剤等の添加剤を用いても構わない。
【0026】
インク組成物の物性の好適な範囲は、表面張力が10〜60mN/m、好ましくは20〜50mN/m、粘度が1〜20mPa・s、好ましく2〜8mPa・s、請求項10に関しては導電率が0.1〜10S/m、好ましくは1〜5S/mである。また、前記ホウ素化合物と前記高分子が架橋しないという観点から記録液のpHは7以下であることが好ましい。
【0027】
次に中間転写体(請求項8〜10)について説明する。
中間転写体は、アルミニウム製の支持体と表面層として導電性シリコーンゴムからなるものが用いられるが、支持体であるアルミニウム、表面層である導電性シリコーンゴムはこれに限ったものではない。支持体は良導電性で機械的強度がある必要があり好適には金属やその合金が用いられる。また、表面層は、導電性・撥水性が高く平滑な弾性材料であればよい。
導電性は、中間転写体と記録ヘッドに電圧を印加して通電させるのに必要な機能である。導電性を必要としない構成では、表面層に導電性を付与する材料は不要である。
【0028】
撥水性は、インクが中間転写体の表面層から紙へ転写する時の転写しやすさの指標となり、撥水性が高いほど転写率が良い。しかしその反面、インクの保持が困難でビーディングの原因となる。弾性は、転写の際に必要な機能で、中間転写体の表面層が紙の繊維に沿って変形することで接触面積が向上し高い転写率が達成できる。
低い圧力で転写するにはある程度柔らかい表面層材料を選択しなければならない。これらの機能を満たす材料として、例えば、フルオロシリコーンゴム、フェニルシリコーンゴム、フッ素ゴム、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、ニトリルブタジエンゴム、イソプレンゴムなどのゴム材料にカーボンブラックやカーボンナノチューブ、金や銀などの金属微粒子を混入させた導電性ゴムを用いればよい。
【0029】
導電性を上げるためには導電性微粒子を増やすことが考えられるが、表面の導電性微粒子の密度が高いと撥水性低下の要因となる。導電性は、支持体と表面層の膜厚方向に対して有していれば良く、面方向には絶縁の異方導電性であっても良い。導電性微粒子の大きさは、画像を構成する20〜50μm程度のドットより十分小さい必要があり、0.1μm以下であれば問題ない。また、撥水性を上げるためシリコーンオイルを含浸させたものでも構わないし、表面層は単層構造、多層構造のどちらでも構わない。バルク物性と表面物性は以下のものが好ましい。
導電性ゴムの体積抵抗率は10Ω・cm以下、好ましくは10Ω・cm以下である。撥水性は水の後退接触角が60°以上、好ましくは80°以上であり、硬度はJIS−Aで60以下、好ましくは40以下である。また、表面層の厚みは0.1〜1mm程度がよく、0.2〜0.6mmが好適である。
【0030】
中間転写体と記録ヘッドに電圧を印加して通電させる構成(請求項10)の場合、記録ヘッドは、少なくとも、インクが吐出する穴のあいたノズル板が導電性である必要があり、ニッケルなどが用いられる。
記録ヘッドと中間転写体とのギャップ距離は、50〜300μm、好ましくは100〜200μmである。200μm以上だと、インクの種類や吐出方法によっては、ブリッジする前にインクの表面張力により液柱がノズル近傍で分断して通常の液滴化が起きてしまう。
従って、記録ヘッドと中間転写体とのブリッジが不可能となる。一方、50μm以下だとそのギャップを保つことが困難となる。
【0031】
[pH制御手段]
次にpH制御手段について説明する。
pH制御手段は、被記録材表面や中間転写体表面のpHを、記録液の高分子がホウ素化合物によって架橋されてインクのゲル化・増粘が起こるように調整するためのものであり、pH調整剤を塗布する化学的処理が好ましい。
塗布方法は、ローラ塗布、ブレード塗布、ワイヤーバー塗布、インクジェット等によるミスト塗布など何れの場合であっても良い。アルカリ性のpH調整剤として、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属元素の水酸化物、水酸化アンモニウム、四級アンモニウム水酸化物、四級ホスホニウム水酸化物、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属の炭酸塩、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアミン類を用いることができる。
【0032】
図1は、本発明の一実施形態(被記録材に直接画像形成する方式)に係るインクジェット画像形成装置の概略図である。
給紙トレイ(図示せず)に収納された被記録材としての記録用紙14は、送り出しローラ(図示せず)、搬送ローラ(図示せず)、レジストローラ対を通り(図示せず)、pH制御手段12によってpH調整剤を塗布される。これにより記録用紙14のpHはアルカリ性となる。
本発明のインクジェット記録液は、記録ヘッド13内では高分子がホウ素化合物によって架橋されておらず、流動性がある状態になっている。
記録用紙14のpHは、高分子がホウ素化合物によって架橋されてインクのゲル化・増粘が起こる値に調整される。
pH調整された記録用紙14上に記録液が着弾すると、架橋された高分子の内部に着色剤が水に分散ないし溶解している状態で取り込まれるため、記録液の流動性が著しく低下し、フェザリングやブリーディング、ビーディングの少ない高画質な画像を得ることができる。
ただし、記録用紙14が中性紙であり、記録液が記録用紙に付与された段階で記録液のゲル化・増粘が起こる場合には、記録用紙のpH調整手段は行わなくともよい。
【0033】
水性インクジェット記録液に含まれる着色剤は、非イオン性分散剤、スルホン酸塩系分散剤(低分子界面活性剤や高分子分散剤)で分散されているノニオン性顔料またはアニオン性顔料またはスルホン酸塩を有する染料である。
カルボン酸塩系やアミン塩系では、pHにより着色剤の凝集が起きてしまう可能性がある。顔料分散剤もしくは染料が非イオン性またはスルホン酸塩系であることによって、顔料分散剤もしくは染料のプロトンの解離度が変化しないため、記録液のpH変化を低刺激で起こすことができ、インクのゲル化・増粘が容易になる。
これにより、滲み、混色、コックリングといったインクジェット記録の課題を抑制することができる。
【0034】
pH制御手段12により、記録用紙14のpHを調整後、記録ヘッド13で記録用紙14上に各色(ここでは4色)を印字して画像を形成する。
記録ヘッド13は、イエロー用記録ヘッド13Y、シアン用記録ヘッド13C、マゼンタ用記録ヘッド13M、ブラック用記録ヘッド13Bkから構成されている。
図示しないが、本実施形態に係るインクジェット画像形成装置は、その他に、記録ヘッド13にインクを供給する供給手段と供給流路(図示せず)、インクカートリッジ(図示せず)、記録ヘッドの制御基板(図示せず)等を有している。インクカートリッジには、上述したインク組成物のインクジェット記録液が収容されている。
記録ヘッド13の用紙搬送方向下流側には、圧力印加手段としての加圧ローラ対15が配置されている。画像形成の後工程に圧力印加手段を設けることで、増粘/ゲル化したインクの被記録材への定着性を向上させることができる。また、画像形成部を平滑にすることで光沢性を高めた記録物の提供が可能となる。
記録ヘッド13で記録用紙14上に画像を形成して、加圧ローラ対15で記録用紙14に圧力をかけてインクの定着性、平滑性を向上させる。
その後、記録用紙14は搬送ローラ対(図示せず)により排紙トレイ(図示せず)に排紙される。
【0035】
図2は、本発明の他の実施形態(中間転写方式)に係るインクジェット画像形成装置の概略図である。
給紙トレイ(図示せず)に収納された記録用紙24は、送り出しローラ(図示せず)、搬送ローラ(図示せず)、レジストローラ対を通り(図示せず)、所定のタイミングでドラム状の中間転写体21と、加圧ローラ25との間に転写ニップに進入する。
中間転写体21上に画像を形成する記録ヘッド23は、イエロー用ラインヘッド23Y、シアン用ラインヘッド23C、マゼンタ用ラインヘッド23M、ブラック用ラインヘッド23Bkから構成されている。
記録ヘッド23の中間転写体回転方向上流側には、画像転写後の中間転写体21の表面をクリーニングするクリーニングユニット22が配置されている。
その他、本実施形態に係るインクジェット画像形成装置は、ライン型の記録ヘッド23にインクを供給する供給手段と供給流路(図示せず)、インクカートリッジ(図示せず)、ラインヘッドの制御基板(図示せず)、電圧印加手段33(図3参照)等を有している。
【0036】
中間転写体21に形成された記録液ドット(画像)は、加圧ローラ25で記録用紙24に圧力をかけて記録用紙24と中間転写体21とを密着させることで記録用紙側に転写される。
その後、搬送ローラ対(図示せず)により排紙トレイ(図示せず)に排紙される。クリーニングユニット22とライン型記録ヘッド23の間に、別途、pH制御手段を設けても構わない。この場合には電圧印加手段33は不要である。
【0037】
図3に基づいて、本実施形態における画像形成のメカニズムを説明する。
記録ヘッド23のノズル板32から中間転写体21の表面層31までの距離は100μmで、ノズル35の径は25μm、インクドット34bの径は50μm程度、液柱34aの径は10μm程度である。
ノズル35からインクを吐出後、液柱34aが中間転写体21の表面層31に着弾してブリッジすると、電極界面での電気二重層形成に相当する非ファラデー電流と水の電気分解に起因したファラデー電流が発生する。
数十〜数百Vでは水の電気分解の反応抵抗はほぼ無視できるほど小さくインクの溶液抵抗が支配的となる。ノズル近傍で液柱が分断してブリッジ状態が終わるのは数μs〜数十μsで、この時間とファラデー電流の積が通電電荷量であり、この値が大きいほど水素イオン発生量(及び水酸化物イオン発生量)が増える。
水素イオン(または水酸化物イオン)は中間転写体21の電極界面から発生するので、中間転写体21の表面のpH勾配(インクのゲル化・増粘が起こるpH値への変化)によって生じるインク増粘部34cは中間転写体21の表面に多く存在することになる。インク増粘部34cの存在により、表面張力でドットが大きくなったり位置がずれたりといったビーディングの問題は抑制される。
【0038】
具体的には、中間転写体側が陰極、記録ヘッド側が陽極となるように電圧を印加すると、中間転写体とインクとの界面で(1)式のような電気化学反応により水酸化物イオンが発生し局所的にpHが増加する。これにより本発明のインク組成物は増粘/ゲル化して、中間転写体上での画像不良を改善することが可能となる。
記録ヘッド側:2H2O→4H++O2+4e− (1)
中間転写体側:4H2O+4e−→2H2+4OH− (2)
しかしながら、記録ヘッド−中間転写体のインク組成物によるブリッジ形成時間は非常に短く(数〜数十μ秒)、導電率が10〜200mS/m程度の一般的なインクではpH変化を起こすのに十分な水素イオン量(水酸化物イオン量)は得られない。
導電率が低いと、電極界面での電気二重層を形成する非ファラデー電流が発生するのみで終わってしまう場合もある。そこで、インク組成物に電解質成分を添加することで、律速となっているイオン伝導を上げて水素イオン(及び水酸化物イオン)発生量を増やすことで、短時間の反応でもpH変化を起こしやすくしている。
【0039】
被記録材へ直接、画像形成させるのではなく、非吸水性の中間転写体21へ一時的に画像形成させて、それを被記録材へ転写させる転写方式とすることで、紙粉によるヘッドのノズル目詰まりを低減することができる。また、普通紙のような凸凹な面ではなく中間転写体は平滑な面であるため位置精度が高く、そのため、記録ヘッドと中間転写体とのギャップを通常の1/10以下に配置することが可能で、着弾位置精度が高く、サテライトの影響を排除することできるため、高画質の記録物の提供が可能となる。
非吸水性の中間転写体上では、通常の低粘度インクの場合、ビーディングやブリーディングが激しいが、上記本発明に係るインクを用いて、かつインクのpHを制御できるpH制御手段を設けることで、インクの増粘/ゲル化により、ビーディングやブリーディングを抑制した記録物の提供が可能となる。
【0040】
[実施例1]
カーボンブラック(ケッチェンブラックEC−600JD、ケッチェン・ブラック・インターナショナル製)と、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムが4:1になるように混合し、水を添加し、ビーズミルで分散させて顔料濃度が20%のブラック分散液を得た。
この分散液20%、尿素15%、2−ピロリドン15%、ホウ酸0.2%、ポリビニルアルコール(分子量1000)3%、水46.8%となるように混合し、pHを5.5に調整することで得たものを記録液1とした。
記録液1においてホウ酸の代わりに水を混合したものを参考液とした。
図2で示したようなライン型記録ヘッド23Y、23C、23M、23Bk、ドラム状ないしローラ状の中間転写体21、加圧ローラ25、クリーニングユニット22を一式とした評価装置を用意した。
中間転写体の支持体は直径20mm、長さ250mmのアルミ素管で、外周に体積抵抗率が500Ω・cmの導電性シリコーンゴム層を0.2mmの厚みで形成したものであり、時計回り方向に200mm/sで回転駆動させている。
【0041】
加圧ローラは、荷重20kgf/cmで中間転写体に押し当てられており、中間転写体の駆動の連れまわりで反時計回りに回転している。
中間転写体の表面から約100μm離間させて、ノズル板が金属で構成されるライン型記録ヘッド(市販インクジェットプリンタGX5000、リコー製)を配置した。
また、ライン型記録ヘッドのノズル板と中間転写体のドラム素管との間に十分な電流を供給可能な電源を接続した(図示せず)。
また、圧電素子駆動手段(図示せず)により中間転写体表面には任意のパターンのインクドットを形成することができる。インクドットは、中間転写体と加圧ローラとの間に記録用紙(type6200)を通紙することで普通紙表面に転写させる。
ライン型記録ヘッドにより、中間転写体表面の移動方向と直交方向(副走査方向)に約1インチ幅の連続した帯状領域に、主走査方向300dpi、副走査方向300dpiのブラックインク網点を形成した。
一点あたり10pLとなるように圧電素子駆動手段を調整した。ここで、吐出時に流れる電流を計測した。記録用紙上のブリーディング、ビーディング、フェザリングを評価した。ブラックインクは記録液および参考液を用いた。
【0042】
[実施例2]
図1で示したような記録ヘッド13Y、13C、13M、13Bk、送り出しローラ(図示せず)、搬送ローラ対(図示せず)、レジストローラ対を通り(図示せず)、pH制御手段12、加圧ローラ対15を一式とした評価装置を用意した。
記録ヘッド及び記録用紙14は実施例1と同様のものを用いた。pH制御手段12を用いて記録用紙14にpH調整剤(0.01規定の水酸化ナトリウム水溶液)を塗布し、記録ヘッド13で記録用紙上に画像を形成した後、加圧ローラ対15で記録用紙14に圧力をかけた。
記録用紙上のブリーディング、ビーディング、フェザリングを評価した。ブラックインクは記録液および参考液を用いた。
【0043】
[実施例3]
実施例2においてpH制御手段12を除いたものを用い同様の評価を行った。
[比較例]
実施例1においてノズル板と中間転写体の間の電源(電圧印加手段)を除いたものを用い同様の評価を行った。
ブリーディング、ビーディング、フェザリングの評価を○、△、×の三段階で行った結果を表1に示す。
【0044】
【表1】

【0045】
表1から明らかなように、本発明に係るインクジェット記録液としての記録液1を用いたものは実施例1および実施例2においてブリーディング、ビーディング、フェザリングが起きなかった。実施例3においてはビーディングが起こらず、ブリーディングとフェザリングが若干見受けられた。比較例においてはブリーディング、ビーディング、フェザリング共に起こっていた。
参考液を用いたものは記録液1を用いたものに比べてブリーディング、ビーディング、フェザリングを起こしていた。
【符号の説明】
【0046】
12 pH制御手段
13、23 記録ヘッド
14 被記録材としての記録用紙
15 圧力印加手段としての加圧ローラ
21 中間転写体
33 電圧印加手段
【先行技術文献】
【特許文献】
【0047】
【特許文献1】特開昭55−65269号公報
【特許文献2】特開昭56−89595号公報
【特許文献3】特開平5−96720号公報
【特許文献4】特開昭64−63185号公報
【特許文献5】特開平8−20159号公報
【特許文献6】特開平8−20161号公報
【特許文献7】特開平8−142500号公報
【特許文献8】特開平10−250216号公報
【特許文献9】米国特許第4538156号明細書
【特許文献10】米国特許第5099256号明細書
【特許文献11】特開昭62−92849号公報
【特許文献12】特開平11−188858号公報
【特許文献13】特開2000−343808号公報
【特許文献14】特開2000−108494号公報
【特許文献15】特開2005−1259号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水と、着色剤と、ホウ素化合物と、該ホウ素化合物と特定のpH領域において架橋する高分子とを含み、前記ホウ素化合物と前記高分子とが架橋しないpHになるようにpH調整されたインクジェット記録液。
【請求項2】
請求項1に記載のインクジェット記録液において、
前記ホウ素化合物がホウ酸もしくはその塩又はホウ砂から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とするインクジェット記録液。
【請求項3】
請求項2に記載のインクジェット記録液において、
前記高分子が、ヒドロキシル基を有する水溶性高分子であることを特徴とするインクジェット記録液。
【請求項4】
請求項1〜3の何れか1つに記載のインクジェット記録液において、
pHが7以下であることを特徴とするインクジェット記録液。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか1つに記載のインクジェット記録液において、
前記着色剤が非イオン性分散剤、またはスルホン酸塩系分散剤で分散されている顔料、またはスルホン酸塩を有する染料のいずれかであることを特徴とするインクジェット記録液。
【請求項6】
請求項1〜5の何れか1つに記載のインクジェット記録液を画像信号に応じて記録ヘッドから吐出して被記録材に画像形成するインクジェット画像形成装置。
【請求項7】
請求項6に記載のインクジェット画像形成装置において、
被記録材に画像形成した後、圧力によりインクの定着性を向上させるための圧力印加手段を有していることを特徴とするインクジェット画像形成装置。
【請求項8】
請求項6に記載のインクジェット画像形成装置において、
前記記録ヘッドに対向して配置され、非吸水性の表面を有する中間転写体を備え、前記中間転写体に一時的に画像形成した後、該中間転写体上の画像を被記録材に転写することを特徴とするインクジェット画像形成装置。
【請求項9】
請求項6〜8の何れか1つに記載のインクジェット画像形成装置において、
前記被記録材の表面、または前記中間転写体の表面のpHを制御できるpH制御手段を有していることを特徴とするインクジェット画像形成装置。
【請求項10】
請求項8に記載のインクジェット画像形成装置において、
前記インクジェット記録液が電解質成分を含み、前記記録ヘッドと前記中間転写体との間に電圧を印加する電圧印加手段を有し、画像形成時に前記記録ヘッドから吐出された直後の前記インクジェット記録液の形状が、前記記録ヘッドと前記中間転写体とのギャップを一時的にブリッジ可能な液柱であり、前記インクジェット記録液に含まれる水を電気分解することにより前記記録ヘッドから吐出された前記インクジェット記録液のpHを前記中間転写体上で変化させ、前記中間転写体上の画像を前記被記録材に転写する転写手段を有することを特徴とするインクジェット画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−111867(P2012−111867A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−262665(P2010−262665)
【出願日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】