説明

インクジェット記録用インク−記録用メディアセット及びインクジェット記録方法

【課題】インク吸収性に乏しいメディアに対して画像濃度に優れ、また低定着性、コックリング等も解決した高画質な記録物を得る。
【解決手段】水、水溶性有機溶剤、界面活性剤及び着色剤を少なくとも含有するインクジェット記録用インクであって、水溶性有機溶剤として、下記式(I)で示されるアミド化合物を少なくとも含有するインクジェット記録用インクと、記録用メディアが、支持体と該支持体の少なくとも一方の面に塗工層を有してなり、23℃50%RHにて動的走査吸液計で測定した接触時間100msにおける純水の塗工層への転移量が2〜35ml/m2、かつ接触時間400msにおける純水の塗工層への転移量が3〜40ml/m2である記録用メディアとで構成されることを特徴とするインクジェット記録用インクメディアセット。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はインクジェット記録用インク−記録用メディアセット及びインクジェット記録方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録は、被記録材を比較的選ばない、優れた記録方法として知られており、記録装置、記録方法、記録材料などについて研究開発が盛んに行われてきている。
近年、インクジェット記録用インクに着色剤として顔料を用いた顔料インクが提案されている。前記顔料インクは、普通紙に印字した時には、着色剤として染料を用いた染料インクと比べて画像濃度や耐水性、耐侯性に優れ、滲みの少ない画像が得られるものの、塗工層を有する、特にインク吸収性に乏しい記録用メディアに印字した時には発色性や光沢性が不十分であったり、印字後のインクの乾燥に時間がかかることで、画像の定着性が劣るなどの問題点があった。
【0003】
この様な問題点を解決するために、特許文献1では、液体吸収能力の小さな印刷用塗工紙に印刷しても乾燥速度に問題がなく、鮮明で商業・出版印刷物に近い画像が得られる記録用インクについて記載されている。しかしながら、前記液体吸収能力の小さな印刷用塗工紙に印刷したインクジェット印刷物においては低定着性、高カールなどの問題が生じてしまう。
【0004】
特許文献2には、フィルムを基材とするインクジェット記録媒体にインクジェット用水性インクで印刷しても高品位画像が形成されるインクジェット記録用メディア−記録用インクの構成が開示されている。しかし、前記記録用メディアは透気度の高い、即ちインク吸収性の高いフィルムに限定し、その上に形成されるインク受容層から、インクジェット記録用インク中に含まれる特に乾燥性に影響を与える水溶性有機溶剤を、選択的にフィルムを通して裏面に形成された溶媒吸収層に速やかに吸収させることによって高品位画像を得るものとしており、メディアの種類を比較的限定せずに高品位画像を得ることができる本発明の構成とは別のものである。
【0005】
このように、前記記録用メディア上での画像濃度に優れ、前記記録用メディアに印刷したインクジェット印刷物において問題となっていた低定着性、コックリングなども解決した高画質な記録物を得ることは困難であった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、インクジェット記録装置を用いて、主にインク吸収性に乏しい記録用メディアに対して、画像濃度に優れ、また前記記録用メディアに印刷したインクジェット印刷物において問題となっていた低定着性、コックリングなども解決した高画質な記録物を得ることが可能なインクジェット記録用インク−記録用メディアセット及びインクジェット記録方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、前記した従来技術の課題を解決すべく鋭意検討した結果、インク吸収性に乏しい記録用メディアにも好適に用いられるインクの特性を見出して本発明に至った。即ち、本発明におけるインクジェット記録用インクは、水、水溶性有機溶剤、界面活性剤及び着色剤を少なくとも含有するインクジェット記録用インクにおいて、水溶性有機溶剤として、下記一般式(I)で示されるアミド化合物を少なくとも含有することを特徴とする。
【0008】
【化1】

【0009】
前記アミド化合物を用いることでインクの低粘度化が可能となり、更にはインク中の溶媒蒸発を低減することで、インクジェット記録装置ノズル内でのインクの粘度上昇が抑えられ、吐出時の信頼性を確保できる。また、前記アミド化合物は、記録用メディアに含まれる定着樹脂成分に対する溶解性が高いことから、前記アミド化合物を用いたインクは前記インク吸収性に乏しい記録用メディアに対しても浸透性が促進され、本発明の課題である低定着性、コックリングなどが解決する。即ち本発明は以下の構成を採用する。
【0010】
(1)水、水溶性有機溶剤、界面活性剤及び着色剤を少なくとも含有するインクジェット記録用インクにであって、水溶性有機溶剤として、下記一般式(I)で示されるアミド化合物を少なくとも含有することを特徴とするインクジェット記録用インクと、
記録用メディアが、支持体と前記支持体の少なくとも一方の面に塗工層を有してなり、23℃50%RHにて動的走査吸液計で測定した接触時間100msにおける純水の前記塗工層を有してなる記録用メディアへの転移量が2〜35ml/m2、かつ接触時間400msにおける純水の前記塗工層を有してなる記録用メディアへの転移量が3〜40ml/m2である記録用メディアとで構成されることを特徴とするインクジェット記録用インク−記録用メディアセット。
【0011】
【化1】

(2)前記一般式(I)で示されるアミド化合物の前記インクジェット記録用インク中の含有量が、1〜50質量%であることを特徴とする上記(1)に記載のインクジェット記録用インク−記録用メディアセット。
(3)前記着色剤が、表面に少なくとも1種の親水基を有し、分散剤の不存在下で水分散性を示す自己分散型の顔料を含むことを特徴とする上記(1)又は(2)に記載のインクジェット記録用インク−記録用メディアセット。
(4)前記着色剤が顔料と、顔料分散体と、高分子分散安定化剤とを水に分散した顔料分散体であることを特徴とする上記(1)又は(2)に記載のインクジェット記録用インク−記録用メディアセット。
(5)前記着色剤が、顔料を含有する水不溶性ビニルポリマー微粒子を水に分散させたポリマーエマルジョンを含むことを特徴とする上記(1)又は(2)に記載のインクジェット記録用インク−記録用メディアセット。
(6)前記インクジェット記録用インクが、シアンインク、マゼンタインク、イエローインク及びブラックインクから選択される少なくとも1種である上記(1)乃至(5)のいずれかに記載のインクジェット記録用インク−記録用メディアセット。
(7)少なくとも一方の面に塗工層を有する記録用メディアにインクジェット記録用インクを吐出して画像を記録するインクジェット記録方法であって、
該記録用メディアとして、23℃50%RHにて動的走査吸液計で測定した接触時間100msにおける純水の前記塗工層を有してなる記録用メディアへの転移量が2〜35ml/m2、かつ接触時間400msにおける純水の前記塗工層を有してなる記録メディアへの転移量が3〜40ml/m2である記録用メディアを用い、
該インクジェット記録用インクとして、水、水溶性有機溶剤、界面活性剤及び着色剤を少なくとも含有するインクジェット記録用インクであって、水溶性有機溶剤として、下記一般式(I)で示されるアミド化合物を少なくとも含有するインクジェット記録用インクを用いることを特徴とするインクジェット記録方法。
【化1】

なお、上記の「RH」とは、相対湿度(Relative Humidity)のことであり、空気中に含まれる水蒸気の量と、その温度の空気が含み得る水蒸気の最大量との比率を意味する。
【発明の効果】
【0012】
以下の詳細且つ具体的な説明より明らかなように、本発明によると、従来における諸問題を解決でき、インク吸収性に乏しい記録用メディアに対する画像品質に優れ、かつ本発明の課題である低定着性、コックリングなどが解決したインクジェット記録用インク−記録用メディアセット、及びインクジェット記録方法の提供が可能となる。
即ち、本発明によれば、インク吸収性に乏しい記録用メディアに対する画像品質、特に、画像濃度、耐水性、耐光性等の画像堅牢性に優れ、更に特に、画像濃度、乾燥性に優れた画像が得られ、低定着性、コックリングなどが解決するという極めて優れた効果が発揮される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】インクカートリッジを示す概略図である。
【図2】図1のインクカートリッジの変形例を示す概略図である。
【図3】インクカートリッジ装填部のカバーを開いた状態のインクジェット記録装置の斜視図である。
【図4】図3のインクジェット記録装置の全体構成を説明する断面図である。
【図5】インクジェットヘッドを示す概略拡大図である。
【図6】吐出装置の維持装置を含むサブシステム例の要部平面説明図である。
【図7】図6のシステムの模式的概略構成図である。
【図8】図6のシステムの右側面説明図である。
【図9】記録装置における空吐出受け部例の正面断面図である。
【図10】図9の側面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明に用いられるインクジェット記録用インクは、水、水溶性有機溶剤、界面活性剤及び着色剤を少なくとも含有し、更に必要に応じてその他の成分を含有してなる。
【0015】
−水溶性有機溶剤(湿潤剤)−
本発明に用いられるインクジェット記録用インクには、水溶性有機溶剤として、少なくとも下記一般式(I)で示されるアミド化合物を含有し、必要応じて下記に記載する水溶性有機溶剤を混合して用いることにより、本発明の課題を解決できる。
【0016】
【化1】

【0017】
上記一般式(I)のアミド化合物は、沸点が216℃と高く、温度23℃、相対湿度80%環境中の平衡水分量も39.2wt%と高く、しかも液粘度が25℃環境で1.48mPa・sと非常に低いという性質を有する。さらに、水溶性有機溶剤及び水に非常に溶解し易いので、インクジェット記録用インクの低粘度化が可能となり、インクジェット記録用インクに用いる水溶性有機溶剤としては非常に好ましい。上記一般式(I)のアミド化合物を含有させたインクジェット記録用インクは、保存安定性、吐出安定性が良好なインクとなり、且つ、インク吐出装置の維持装置に優しいインクとなる。
【0018】
前記インクジェット記録用インク中における上記一般式(I)のアミド化合物の含有量は、1〜50質量%が好ましく、2〜40質量%がより好ましい。前記含有量が1質量%未満であると、インクの低粘度化に効果がなく吐出安定性低下および維持装置での廃インク固着に厳しい状態になる。また、50質量%を超えると、紙面上での乾燥性に劣り、更に普通紙上の文字品位が低下することがある。
【0019】
また、上記一般式(I)のアミド化合物と混合して使用される水溶性有機溶剤としては、温度23℃、相対湿度80%環境中の平衡水分量が30wt%以上である多価アルコールを少なくとも1種類以上を含み、例えば前記のように、平衡水分量及び沸点がかなり高い湿潤剤A(湿潤剤Aは、温度23℃、相対湿度80%環境中の平衡水分量が30wt%以上、沸点が250℃以上のもの。湿潤剤Aの平衡水分量は、40wt%以上であることが好ましい)、および、平衡水分量は高いが沸点が比較低い湿潤剤B(湿潤剤Bは、温度23℃、相対湿度80%での平衡水分量が30wt%以上で、沸点が140℃〜250℃のもの)を含有することが好ましい。
【0020】
該多価アルコール中、常圧で沸点が250℃を越える湿潤剤Aとしては、1,2,3−ブタントリオール(bp175℃/33hPa、38wt%)、1,2,4−ブタントリオール(bp190−191℃/24hPa、41wt%)、グリセリン(bp290℃、49wt%)、ジグリセリン(bp270℃/20hPa、38wt%)、トリエチレングリコール(bp285℃、39wt%)、テトラエチレングリコール(bp324−330℃、37wt%)等が挙げられ、沸点が140〜250℃の湿潤剤Bとしてはジエチレングリコール(bp245℃、43wt%)、1,3−ブタンジオール(bp203−204℃、35wt%)等が挙げられる。
【0021】
これら湿潤剤A、湿潤剤Bは、いずれも、温度23℃、相対湿度80%環境中の平衡水分量が30wt%以上の吸湿性が高い材料であり、ただ、湿潤剤Bは、湿潤剤Aよりも、蒸発性が比較的高いことも事実である。
特に好ましくはグリセリン、1,3-ブタンジオールからなる群から選択されたものが挙げられる。
【0022】
湿潤剤Aと湿潤剤Bの組合せを用いる場合、湿潤剤Aと湿潤剤Bとの含有量比B/A(質量比)は、後述するその余の湿潤剤Cの量や浸透剤等の他の添加剤の種類や量にも少なからず依存するので、一概に云えないが、例えば10/90〜90/10の範囲であることが好ましい。
【0023】
本発明における、平衡水分量は、塩化カリウム/塩化ナトリウム飽和水溶液を用いデシケーター内の温湿度を温度23±1℃、相対湿度80±3%に保ち、このデシケーター内に各水溶性有機溶剤を1gずつ秤量したシャーレを保管し、飽和する水分量を求めたものである。
飽和水分量(%)=(有機溶剤に吸収した水分量/有機溶剤+有機溶剤に吸収した水分量)×100
上記多価アルコールを水溶性有機溶剤全体の50wt%以上用いた場合が吐出安定性確保やインク吐出装置の維持装置での廃インク固着防止に優れている。
【0024】
本発明に用いられるインクジェット記録用インクには、上記湿潤剤A、B以外にも、必要に応じて湿潤剤A、Bの一部に代えて、または湿潤剤A、Bに加えて、その余の湿潤剤C(その余の湿潤剤Cは、例えば典型的には、温度23℃、相対湿度80%での平衡水分量が30wt%未満のもの)を併用することができる。
【0025】
該湿潤剤Cとしては、例えば、多価アルコール類、多価アルコールアルキルエーテル類、多価アルコールアリールエーテル類、含窒素複素環化合物、アミド類、アミン類、含硫黄化合物類、プロピレンカーボネート、炭酸エチレン、その他の湿潤剤、などが挙げられる。
前記多価アルコール類としては、例えば、ジプロピレングリコール(bp232℃)、1,5−ペンタンジオール(bp242℃)、3−メチル−1,3−ブタンジオール(bp203℃)、プロピレングリコール(bp187℃)、2−メチル−2,4−ペンタンジオール(bp197℃)、エチレングリコール(bp196−198℃)、トリプロピレングリコール(bp267℃)、ヘキシレングリコール(bp197℃)、ポリエチレングリコール(粘調液体〜固体)、ポリプロピレングリコール(bp187℃)、1,6−ヘキサンジオール(bp253−260℃)、1,2,6−ヘキサントリオール(bp178℃)、トリメチロールエタン(固体、mp199−201℃)、トリメチロールプロパン(固体、mp61℃)などが挙げられる。
【0026】
前記多価アルコールアルキルエーテル類としては、例えば、エチレングリコールモノエチルエーテル(bp135℃)、エチレングリコールモノブチルエーテル(bp171℃)、ジエチレングリコールモノメチルエーテル(bp194℃)、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(bp197℃)、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(bp231℃)、エチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル(bp229℃)、プロピレングリコールモノエチルエーテル(bp132℃)などが挙げられる。
前記多価アルコールアリールエーテル類としては、例えば、エチレングリコールモノフェニルエーテル(bp237℃)、エチレングリコールモノベンジルエーテルなどが挙げられる。
【0027】
前記含窒素複素環化合物としては、例えば、2−ピロリドン(bp250℃、mp25.5℃、47〜48wt%)、N−メチル−2−ピロリドン(bp202℃)、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン(bp226℃)、ε−カプロラクタム(bp270℃)、γ−ブチロラクトン(bp204−205℃)などが挙げられる。
前記アミド類としては、例えば、ホルムアミド(bp210℃)、N−メチルホルムアミド(bp199−201℃)、N,N−ジメチルホルムアミド(bp153℃)、N,N−ジエチルホルムアミド(bp176−177℃)などが挙げられる。
【0028】
前記アミン類としては、例えば、モノエタノールアミン(bp170℃)、ジエタノールアミン(bp268℃)、トリエタノールアミン(bp360℃)、N,N−ジメチルモノエタノールアミン(bp139℃)、N−メチルジエタノールアミン(bp243℃)、N−メチルエタノールアミン(bp159℃)、N−フェニルエタノールアミン(bp282−287℃)、3−アミノプロピルジエチルアミン(bp169℃)などが挙げられる。
前記含硫黄化合物類としては、例えば、ジメチルスルホキシド(bp139℃)、スルホラン(bp285℃)、チオジグリコール(bp282℃)などが挙げられる。
【0029】
その他の固体湿潤剤としては、糖類などが好ましい。
該糖類の例としては、単糖類、二糖類、オリゴ糖類(三糖類、四糖類を含む)、多糖類、などが挙げられる。具体的には、グルコース、マンノース、フルクトース、リボース、キシロース、アラビノース、ガラクトース、マルトース、セロビオース、ラクトース、スクロース、トレハロース、マルトトリオース、などが挙げられる。
ここで、多糖類とは広義の糖を意味し、α−シクロデキストリン、セルロースなど自然界に広く存在する物質を含む意味に用いることとする。
【0030】
また、これらの糖類の誘導体としては、前記した糖類の還元糖(例えば、糖アルコール(一般式:HOCH2(CHOH)nCH2OH(ただし、nは2〜5の整数を表す)で表わされる。)、酸化糖(例えば、アルドン酸、ウロン酸など)、アミノ酸、チオ酸などが挙げられる。
これらの中でも、糖アルコールが好ましく、具体例としてはマルチトール、ソルビットなどが挙げられる。
【0031】
顔料と前記湿潤剤との質量比は、ヘッドからのインク吐出安定性に非常に影響があり、さらにインク吐出装置の維持装置での廃インク固着防止にも影響がある。
顔料固形分が高いのに湿潤剤の配合量が少ないとノズルのインクメニスカス付近の水分蒸発が進み吐出不良をもたらすことがある。
【0032】
一般式(I)のアミド化合物及び前記湿潤剤A、B、Cを含む水溶性有機溶剤は、前記インクジェット記録用インク中における含有量が20〜60質量%であることが好ましく、20〜50質量%であることがより好ましい。前記含有量が20質量%未満であると、吐出安定性低下および維持装置での廃インク固着に厳しい状態になる。また、前記含有量が60質量%を超えると、インクジェット記録用インクの粘度が非常に高くなりインク吐出装置で吐出し難くなる。また、紙面上での乾燥性に劣ることがある。
【0033】
また、普通紙画像品質向上のため、平衡水分量が30wt%以上の多価アルコール以外の湿潤剤として、沸点240℃未満且つ平衡水分量が30wt%未満の湿潤剤C1(湿潤剤C1は、前記湿潤剤Cのうち、温度23℃、相対湿度80%での平衡水分量が30wt%未満で、沸点が240℃未満の水溶性有機溶剤)を適度な割合で入れることが好ましい。
前記の水溶性有機溶剤の使用量としては、湿潤剤全体の50wt%未満であることが吐出安定性確保やインク吐出装置の維持装置での廃インク固着防止などの点で好ましい。
【0034】
−着色剤−
前記着色剤としては、耐候性の面から主として顔料が用いられるが、色調調整の目的で同時に染料を、耐候性を劣化させない範囲内で含有しても構わない。
また、顔料も特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、黒色用のもの、カラー用のもの、などが挙げられる。
これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0035】
無機顔料としては、酸化チタン及び酸化鉄、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、バリウムイエロー、カドミウムレッド、クロムイエローに加え、コンタクト法、ファーネス法、サーマル法などの公知の方法によって製造されたカーボンブラックを使用することができる。
【0036】
有機顔料としては、アゾ顔料(アゾレーキ、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料などを含む)、多環式顔料(例えば、フタロシアニン顔料、ぺリレン顔料、ぺリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサジン顔料、インジゴ顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフラロン顔料など)、染料キレート(例えば、塩基性染料型キレート、酸性染料型キレートなど)、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラックなどを使用できる。
これらの顔料のうち、特に、水と親和性の良いものが好ましく用いられる。
【0037】
上記顔料において、より好ましく用いられる顔料の具体例としては、黒色用としては、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等のカーボンブラック(C.I.ピグメントブラック7)類、または銅、鉄(C.I.ピグメントブラック11)、酸化チタン等の金属類、アニリンブラック(C.I.ピグメントブラック1)等の有機顔料が挙げられる。
【0038】
さらに、カラー用としては、例えば、C.I.ピグメントイエロー1、3、12、13、14、17、24、34、35、37、42(黄色酸化鉄)、53、55、74、81、83、95、97、98、100、101、104、408、109、110、117、120、128、138、150、151、153、183、C.I.ピグメントオレンジ5、13、16、17、36、43、51、C.I.ピグメントレッド1、2、3、5、17、22、23、31、38、48:2、48:2(パーマネントレッド2B(Ca))、48:3、48:4、49:1、52:2、53:1、57:1(ブリリアントカーミン6B)、60:1、63:1、63:2、64:1、81、83、88、101(べんがら)、104、105、106、108(カドミウムレッド)、112、114、122(キナクリドンマゼンタ)、123、146、149、166、168、170、172、177、178、179、185、190、193、209、219、C.I.ピグメントバイオレット1(ローダミンレーキ)、3、5:1、16、19、23、38、C.I.ピグメントブルー1、2、15、15:1、15:2、15:3(フタロシアニンブルー)、16、17:1、56、60、63、C.I.ピグメントグリーン1、4、7、8、10、17、18、36等が挙げられる。
【0039】
着色剤が顔料である場合の特に好ましい形態としては、以下の第1〜第3の形態が挙げられる。
1)第1形態では、前記着色剤は、表面に少なくとも1種の親水基を有し、分散剤の不存在下で水分散性を示す顔料(以下、「自己分散性顔料」と称することもある)を含有する。
2)第2形態では、前記水に分散する着色剤は、顔料、顔料分散剤及び高分子分散安定化剤を含有する顔料分散体であり、前記高分子分散安定化剤が、下記構造式(II)で表されるα−オレフィン−無水マレイン酸共重合体、スチレン−(メタ)アクリル共重合体、水溶性ポリウレタン樹脂及び水溶性ポリエステル樹脂から選択される少なくとも1種である。
【0040】
【化2】

前記構造式(II)において、Rは炭素数6〜30、好ましくは12〜22、更に好ましくは18〜22のアルキル基を示し、nは整数を示す。
本発明においては、上記構造式(II)で表される化合物であって、Rの値が異なる化合物からなる混合物を、構造式(II)で示されるα?オレフィン?無水マレイン酸共重合体として用いることが可能である。
【0041】
3)第3形態では、前記着色剤は、ポリマー微粒子に水不溶乃至水難溶性の色材を含有させてなるポリマーエマルジョン(色材を含有させたポリマー微粒子の水分散物)を含有する。
【0042】
前記第1形態の自己分散性顔料は、顔料の表面に少なくとも1種の親水基が直接もしくは他の原子団を介して結合するように表面改質されたものである。該表面改質は、顔料の表面に、ある特定の官能基(スルホン基やカルボキシル基等の官能基)を化学的に結合させるか、あるいは、次亜ハロゲン酸又はその塩の少なくともいずれかを用いて湿式酸化処理するなどの方法が用いられる。これらの中でも、顔料の表面にカルボキシル基が結合され、水中に分散している形態が特に好ましい。
このように顔料が表面改質され、カルボキシル基が結合しているため、分散安定性が向上するばかりではなく、高品位な印字品質が得られるとともに、印字後の記録用メディアの耐水性がより向上する。
【0043】
また、この第1形態の自己分散性顔料を含有するインクは乾燥後の再分散性に優れるため、長期間印字を休止し、インクジェットヘッドノズル付近のインク水分が蒸発した場合も目詰まりを起こさず、簡単なクリーニング動作で容易に良好な印字が行える。
前記自己分散性顔料の体積平均粒径(D50)は、インク中において0.01〜0.16μmが好ましい。
【0044】
例えば、自己分散型カーボンブラックとしては、イオン性を有するものが好ましく、アニオン性に帯電したものやカチオン性に帯電したものが好適である。
前記アニオン性親水基としては、例えば、−COOM、−SO3M、−PO3HM、−PO32、−SO2NH2、−SO2NHCOR(ただし、Mは、水素原子、アルカリ金属、アンモニウム又は有機アンモニウムを表す。Rは、炭素原子数1〜12のアルキル基、置換基を有してもよいフェニル基又は置換基を有してもよいナフチル基を表す)等が挙げられる。これらの中でも、−COOM、−SO3Mがカラー顔料表面に結合されたものを用いることが好ましい。
【0045】
また、前記親水基中における「M」は、アルカリ金属としては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、等が挙げられる。また、前記有機アンモニウムとしては、例えば、モノ乃至トリメチルアンモニウム、モノ乃至トリエチルアンモニウム、モノ乃至トリメタノールアンモニウムが挙げられる。
【0046】
前記アニオン性に帯電したカラー顔料を得る方法としては、カラー顔料表面に−COONaを導入する方法として、例えば、カラー顔料を次亜塩素酸ソーダで酸化処理する方法、スルホン化による方法、ジアゾニウム塩を反応させる方法が挙げられる。
【0047】
前記カチオン性親水基としては、例えば、第4級アンモニウム基が好ましく、下記に挙げる第4級アンモニウム基がより好ましく、本発明においては、これらのいずれかがカーボンブラック表面に結合されたものが色材として好適である。
【0048】
【化3】

【0049】
前記親水基が結合されたカチオン性の自己分散型カーボンブラックを製造する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、下記構造式で表されるN−エチルピリジル基を結合させる方法として、カーボンブラックを3−アミノ−N−エチルピリジウムブロマイドで処理する方法が挙げられる。
【0050】
【化4】

【0051】
前記親水基は、他の原子団を介してカーボンブラックの表面に結合されていてもよい。他の原子団としては、例えば、炭素原子数1〜12のアルキル基、置換基を有してもよいフェニル基又は置換基を有してもよいナフチル基が挙げられる。
上記した親水基が他の原子団を介してカーボンブラックの表面に結合する場合の具体例としては、例えば、−C24COOM(ただし、Mは、アルカリ金属、又は第4級アンモニウムを表す)、−PhSO3M(ただし、Phはフェニル基を表す。Mは、アルカリ金属、又は第4級アンモニウムを表す)、−C510NH3等が挙げられる。
【0052】
また、第2形態では、前記水に分散する着色剤は、無機顔料、有機顔料、及び複合顔料等の顔料と、顔料分散剤と、高分子分散安定化剤とを含有する顔料分散体であり、前記高分子分散安定化剤が、下記構造式(II)で表されるα−オレフィン−無水マレイン酸共重合体、スチレン−(メタ)アクリル共重合体、水溶性ポリウレタン樹脂及び水溶性ポリエステル樹脂から選択される少なくとも1種である。
【0053】
【化2】

前記構造式(II)において、Rは炭素数6〜30、好ましくは12〜22、更に好ましくは18〜22のアルキル基を示し、nは整数を示す。
【0054】
前記高分子分散安定化剤は、顔料分散剤によって、水中で均一に微分散した顔料分散体の分散状態を安定に保つために有効な材料である。
前記構造式(II)で表されるα−オレフィン無水マレイン酸共重合体、スチレン−(メタ)アクリル共重合体、水溶性ポリウレタン樹脂及び水溶性ポリエステル樹脂は、常温においては固体であり、冷水には殆ど溶けないものである。しかし、前記共重合体及び前記樹脂の酸価と当量以上(好ましくは、酸価の1.0〜1.5倍)のアルカリ溶液又はアルカリ水溶液に溶解して用いた場合に分散安定化剤としての効果が発現する。
【0055】
また、前記共重合体及び前記樹脂をアルカリ溶液又はアルカリ水溶液で溶解するには、加熱撹拌すると容易に溶解できる。
しかし、前記α−オレフィン−無水マレイン酸共重合体におけるオレフィン鎖が長い場合は比較的溶け難く、不溶物が残る場合があるが、適当なフィルター等で不溶物を除いて用いれば、高分子分散安定化剤としての効果は損なわれない。
【0056】
前記アルカリ溶液又はアルカリ水溶液における塩基としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等のアルカリ金属の水酸化物;アンモニア、トリエチルアミン、モルホリン等の塩基性物質;トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、2−アミノ−2−エチル−1,3−プロパンジオール、コリン等のアルコールアミンなどが挙げられる。
【0057】
前記構造式(II)で表されるα−オレフィン−無水マレイン酸共重合体としては、適宜合成したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。該市販品としては、T−YP112、T−YP115、T−YP114、T−YP116(いずれも星光PMC社製)などが挙げられる。
【0058】
前記スチレン−(メタ)アクリル共重合体としては、適宜合成したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。該市販品としては、例えば、JC−05(星光PMC株式会社製)、ARUFON UC−3900、ARUFON UC−3910、ARUFON UC−3920(東亞合成株式会社製)などが挙げられる。
【0059】
前記水溶性ポリウレタン樹脂としては、適宜合成したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。該市販品としては、例えば、タケラックW−5025、タケラックW−6010、タケラックW−5661(三井武田ケミカル株式会社製)などが挙げられる。
【0060】
前記水溶性ポリエステル樹脂としては、適宜合成したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。該市販品としては、例えば、ニチゴポリエスターW−0030、ニチゴポリエスターW−0005S30WO、ニチゴポリエスターWR−961(日本合成化学工業株式会社製)、ペスレジンA−210、ペスレジンA−520(高松油脂株式会社製)などが挙げられる。
【0061】
前記高分子分散安定化剤の酸価は、40〜400mgKOH/gが好ましく、60〜350mgKOH/gがより好ましい。前記酸価が40mgKOH/g未満であると、アルカリ溶液の溶解性が劣ることがあり、400mgKOH/gを超えると、顔料の粘度が高くなり吐出を悪化させ易くなったり、顔料分散体の分散安定性が低下し易くなることがある。
【0062】
前記高分子分散安定化剤の質量平均分子量は、20,000以下が好ましく、5,000〜20,000がより好ましい。前記質量平均分子量が5,000未満であると、顔料分散体の分散安定性が低下することがあり、20,000を超えると、アルカリ溶液の溶解性が劣ったり、粘度が高くなってしまうことがある。
【0063】
前記高分子分散安定化剤の含有量は、前記顔料100質量部に対し1〜100質量部(固形分換算)が好ましく、5〜50質量部がより好ましい。前記高分子分散安定化剤の含有量が1質量部未満であると、分散安定化の効果がなくなることがあり、100質量部を超えると、インク粘度が高くなってノズルからの吐出性を悪化させ易くなったり、経済性が劣ることがある。
【0064】
<顔料分散剤>
前記第2形態では、前記着色剤が顔料分散剤を含有することが好ましい。
前記顔料分散剤としては、アニオン系界面活性剤及びHLB値10〜20のノニオン系界面活性剤のいずれかが好適である。
【0065】
前記アニオン系界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩(例えばNH4,Na,Ca等)、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩(例えばNH4,Na,Ca等)、ジアルキルサクシネートスルホン酸Na塩、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物Na塩、ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル硫酸エステル塩(例えばNH4、Na等)、ラウリル酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルサルフェート塩、オレイン酸塩などが挙げられる。
これらの中でも、ジオクチルスルホコハク酸Na塩、ポリオキシエチレンスチレンフェニルエーテルスルホン酸NH4塩が特に好ましい。
【0066】
前記HLB値10〜20のノニオン系界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミド、アセチレングリコールなどが挙げられる。
これらの中でも、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレン-β-ナフチルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート、ポリオキシエチレンスチレンフェニルエーテルが特に好ましい。
【0067】
前記顔料分散剤の含有量は、前記顔料100質量部に対し1〜100質量部が好ましく、10〜50質量部がより好ましい。
前記顔料分散剤の含有量が少ないと、充分に顔料を微細化することができず、多すぎると顔料に吸着していない過剰成分がインク物性に影響を与え、画像滲みや、耐水性、耐擦性の劣化を招くことになる。
【0068】
前記顔料分散剤によって水中に均一に微分散した顔料分散体は、水系媒体中に上記の顔料分散剤を溶解させ、次に、上記の顔料を加えて充分に湿潤させた後、ホモジナイザーによる高速撹拌、ビーズミルやボールミルのようなボールを用いた分散機、ロールミルのような剪断力を用いた混練分散機、超音波分散機等を用いる方法で作製することができる。
ただし、このような混練分散工程の後には粗大粒子が含まれていることが多く、インクジェットノズルや供給経路の目詰まりの原因となるため、フィルターや遠心分離器を用いて粒径1μm以上の粒子を除去する必要がある。
【0069】
前記顔料分散体の平均粒子径(D50)はインク中において150nm以下が好ましく、100nm以下がより好ましい。前記平均粒子径(D50)が150nmを超えると、急激に吐出安定性が低下し、ノズル詰まりやインクの曲がりが発生し易くなる。また、平均粒子径(D50)が100nm以下であれば、吐出安定性が向上し更に画像の彩度も向上する。
【0070】
また、第3形態の水分散性着色剤としては、上記顔料に加え、ポリマー微粒子に顔料を含有させたポリマーエマルジョンを使用することが好ましい。ポリマー微粒子に顔料を含有させたポリマーエマルジョンとは、ポリマー微粒子中に顔料を封入したもの、又はポリマー微粒子の表面に顔料を吸着させたものである。この場合、全ての顔料が封入又は吸着している必要はなく、本発明の効果が損なわれない範囲で該顔料がエマルジョン中に分散していてもよい。
【0071】
ポリマーエマルジョンを形成するポリマー(ポリマー微粒子におけるポリマー)としてはビニル系ポリマー、ポリエステル系ポリマー、及びポリウレタン系ポリマー等が挙げられるが、特に好ましく用いられるポリマーはビニル系ポリマー及びポリエステル系ポリマーであり、特開2000−53897号公報、特開2001−139849号公報に開示されているポリマーを使用することができる。
【0072】
前記着色剤の前記記録用インクにおける含有量は、固形分で2〜15質量%が好ましく、3〜12質量%がより好ましい。前記含有量が2質量%未満であると、インクの発色性及び画像濃度が低くなってしまうことがあり、15質量%を超えると、インクが増粘して吐出性が悪くなってしまうことがあり、更に経済的にも好ましくない。
【0073】
−界面活性剤−
前記界面活性剤として、着色剤の種類や湿潤剤の組み合わせによって分散安定性を損なわず、表面張力が低く、浸透性、レベリング性の高いものが好ましく、アニオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤及びフッ素系界面活性剤から選択される少なくとも1種が好適である。これらの中でも、シリコーン系界面活性剤及びフッ素系界面活性剤が特に好ましい。
これら界面活性剤は、1種を単独、又は2種以上を混合して用いることができる。
【0074】
前記フッ素系界面活性剤としては、フッ素置換した炭素数が2〜16であるものが好ましく、フッ素置換した炭素数が4〜16であるものがより好ましい。前記フッ素置換した炭素数が2未満であると、フッ素の効果が得られないことがあり、16を超えると、インク保存性などの問題が生じることがある。
【0075】
前記フッ素系界面活性剤としては、例えば、パーフルオロアルキルスルホン酸化合物、パーフルオロアルキルカルボン酸化合物、パーフルオロアルキルリン酸エステル化合物、パーフルオロアルキルエチレンオキサイド付加物、及びパーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物、などが挙げられる。
これらの中でも、パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物は起泡性が少なく、特に好ましい。さらに好ましくは、下記構造式(III)で表されるフッ素系界面活性剤である。
【0076】
【化5】

ただし、前記構造式(III)中、mは0〜10の整数を表す。また、nは1〜40の整数を表す。
【0077】
前記パーフルオロアルキルスルホン酸化合物としては、例えば、パーフルオロアルキルスルホン酸、パーフルオロアルキルスルホン酸塩、などが挙げられる。 前記パーフルオロアルキルカルボン酸化合物としては、例えば、パーフルオロアルキルカルボン酸、パーフルオロアルキルカルボン酸塩、などが挙げられる。
前記パーフルオロアルキルリン酸エステル化合物としては、例えば、パーフルオロアルキルリン酸エステル、パーフルオロアルキルリン酸エステルの塩、などが挙げられる。
【0078】
前記パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物としては、パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー、パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマーの硫酸エステル塩、パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマーの塩、などが挙げられる。
【0079】
これらフッ素系界面活性剤における塩の対イオンとしては、Li、Na、K、NH4、NH3CH2CH2OH、NH2(CH2CH2OH)2、NH(CH2CH2OH)3のイオンなどが挙げられる。
【0080】
前記フッ素系界面活性剤としては、適宜合成したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。
該市販品としては、例えば、サーフロンS−111、S−112、S−113、S−121、S−131、S−132、S−141、S−145(いずれも、旭硝子株式会社製);フルラードFC−93、FC−95、FC−98、FC−129、FC−135、FC−170C、FC−430、FC−431(いずれも、住友スリーエム株式会社製);メガファックF−470、F−1405、F−474(いずれも、大日本インキ化学工業株式会社製);ゾニール(Zonyl)TBS、FSP、FSA、FSN−100、FSN、FSO−100、FSO、FS−300、UR(いずれも、DuPont社製);FT−110、FT−250、FT−251、FT−400S、FT−150、FT−400SW(いずれも、株式会社ネオス社製)、ポリフォックスPF−151N(オムノバ社製)などが挙げられ、これらの中でも、良好な印字品質、特に発色性、紙に対する均染性が著しく向上する点から、DuPont社製のFS−300、株式会社ネオス製のFT−110、FT−250、FT−251、FT−400S、FT−150、FT−400SW及びオムノバ社製のポリフォックスPF−151Nが特に好ましい。
【0081】
前記フッ素系界面活性剤の具体例としては、下記構造式で表されるものが好適である。
(1)アニオン系フッ素系界面活性剤
【0082】
【化6】

ただし、前記構造式中、Rfは、下記構造式で表されるフッ素含有疎水基の混合物を表す。また、Aは、−SO3X、−COOX、又は−PO3X(ただし、Xは対カチオンであり、具体的には、水素原子、Li、Na、K、NH4、NH3CH2CH2OH、NH2(CH2CH2OH)2、又はNH(CH2CH2OH)3が挙げられる)を表す。
【0083】
【化7】

【0084】
【化8】

ただし、前記構造式中、Rf’は下記構造式で表されるフッ素含有基を表す。Xは、上記と同じ意味を表す。また、nは1又は2の整数、mは2−nを表す。
【0085】
【化9】

ただし、前記構造式中、nは3〜10の整数を表す。
【0086】
【化10】

ただし、前記構造式中、Rf’及びXは、上記と同じ意味を表す。
【0087】
【化11】

ただし、前記構造式中、Rf’及びXは、上記と同じ意味を表す。
【0088】
(2)ノニオン系フッ素系界面活性剤
【化12】

ただし、前記構造式中、Rfは、上記と同じ意味を表す。また、nは5〜20の整数を表す。
【0089】
【化13】

ただし、前記構造式中、Rf’は、上記と同じ意味を表す。また、nは1〜40の整数を表す。
【0090】
(3)両性フッ素系界面活性剤
【化14】

ただし、前記構造式中、Rfは、上記と同じ意味を表す。
【0091】
(4)オリゴマー型フッ素系界面活性剤
【化15】

ただし、前記構造式中、Rf”は、下記構造式で表されるフッ素含有基を表す。また、nは0〜10の整数を表す。Xは、上記と同じ意味を表す。
【0092】
【化16】

ただし、前記構造式中、nは1〜4の整数を表す。
【0093】
【化17】

ただし、前記構造式中、Rf”は、上記と同じ意味を表す。また、lは0〜10の整数、mは0〜10の整数、nは0〜10の整数をそれぞれ表す。
【0094】
前記シリコーン系界面活性剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、高pHでも分解しないものが好ましく、例えば、側鎖変性ポリジメチルシロキサン、両末端変性ポリジメチルシロキサン、片末端変性ポリジメチルシロキサン、側鎖両末端変性ポリジメチルシロキサンなどが挙げられ、変性基としてポリオキシエチレン基、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン基を有するポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤が水系界面活性剤として良好な性質を示すので特に好ましい。
このような界面活性剤としては、適宜合成したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。該市販品としては、例えば、ビックケミー株式会社、信越シリコーン株式会社、東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社などから容易に入手できる。
【0095】
前記ポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、下記構造式で表されるポリアルキレンオキシド構造をジメチルポリシロキサンのSi部側鎖に導入した化合物、などが挙げられる。
【0096】
【化18】

ただし、前記構造式中、m、n、a、及びbは整数を表す。また、R及びR’はアルキル基、アルキレン基を表す。
【0097】
前記ポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤としては、市販品を用いることができ、例えば、KF−618、KF−642、KF−643(いずれも、信越化学工業株式会社製)、などが挙げられる。
【0098】
前記アニオン系界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸塩、ラウリル酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルサルフェートの塩、などが挙げられる。
【0099】
前記ノニオン系界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシプロピレンポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミド、などが挙げられる。
【0100】
前記界面活性剤の前記記録用インク中における含有量は、0.01〜3.0質量%が好ましく、0.5〜2質量%がより好ましい。前記含有量が0.01質量%未満であると、界面活性剤を添加した効果が無くなることがあり、3.0質量%を超えると、記録用メディアへの浸透性が必要以上に高くなり、画像濃度の低下や裏抜けが発生することがある。
【0101】
−浸透剤−
本発明に用いられる記録用インクは、浸透剤として、炭素数8〜11のポリオール化合物又はグリコールエーテル化合物を少なくとも1種を含有することが好ましい。
浸透剤は、前記湿潤剤は別のものであり、浸透剤も湿潤性が全くない訳ではないが、前記湿潤剤よりも比較的少ないので、非湿潤剤性ものということができるが、ここで、非湿潤剤性とはこのような意味である。
これらは、25℃の水中において0.2〜5.0質量%の間の溶解度を有するものが好ましい。
これらの中でも、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール[溶解度:4.2%(25℃)]、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール[溶解度:2.0%(25℃)]が特に好ましい。
【0102】
その他のポリオール化合物として、脂肪族ジオールとしては、例えば、2−エチル−2−メチル−1,3−プロパンジオール、3,3−ジメチル−1,2−ブタンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−2−プロピル−1,3−プロパンジオール、2,4−ジメチル−2,4−ペンタンジオール、2,5−ジメチル−2,5−ヘキサンジオール、5−ヘキセン−1,2−ジオールなどが挙げられる。
【0103】
その他の併用できる浸透剤としては、インク中に溶解し、所望の物性に調整できるものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、ジエチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノアリルエーテル、ジエチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールクロロフェニルエーテル等の多価アルコールのアルキル及びアリールエーテル類、エタノール等の低級アルコール類、などが挙げられる。
【0104】
前記浸透剤の前記記録用インクにおける含有量は、0.1〜4.0質量%が好ましい。前記含有量が0.1質量%未満であると、速乾性が得られず滲んだ画像となることがあり、4.0質量%を超えると、着色剤の分散安定性が損なわれ、ノズルが目詰まりしやすくなったり、また記録用メディアへの浸透性が必要以上に高くなり、画像濃度の低下や裏抜けが発生することがある。
【0105】
−水分散性樹脂−
前記水分散性樹脂としては、造膜性(画像形成性)に優れ、かつ高撥水性、高耐水性、高耐候性を備えて、高耐水性で高画像濃度(高発色性)の画像記録に有用である。
例えば、縮合系合成樹脂、付加系合成樹脂、天然高分子化合物などが挙げられる。
【0106】
前記縮合系合成樹脂としては、例えば、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリ(メタ)アクリル樹脂、アクリル-シリコーン樹脂、フッ素系樹脂などが挙げられる。
前記付加系合成樹脂としては、例えば、ポリオレフィン樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリビニルエステル系樹脂、ポリアクリル酸系樹脂、不飽和カルボン酸系樹脂などが挙げられる。
前記天然高分子化合物としては、例えば、セルロース類、ロジン類、天然ゴムなどが挙げられる。
この中でも、特にポリウレタン樹脂微粒子、アクリル−シリコーン樹脂微粒子及びフッ素系樹脂微粒子が好ましい。
また、前記水分散性樹脂を2種類以上併用することは全く問題ない。
【0107】
前記フッ素系樹脂としては、フルオロオレフィン単位を有するフッ素系樹脂微粒子が好ましく、これらの中でも、フルオロオレフィン単位及びビニルエーテル単位から構成されるフッ素含有ビニルエーテル系樹脂微粒子が特に好ましい。
【0108】
前記フルオロオレフィン単位としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば−CF2CF2−、−CF2CF(CF3)−、−CF2CFCl−などが挙げられる。
前記ビニルエーテル単位としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、下記構造式で表される化合物などが挙げられる。
【0109】
【化19】

【0110】
前記フルオロオレフィン単位及びビニルエーテル単位から構成されるフッ素含有ビニルエーテル系樹脂微粒子としては、上記フルオロオレフィン単位とビニルエーテル単位が交互に共重合してなる交互共重合体が好ましい。
【0111】
このようなフッ素系樹脂微粒子としては、適宜合成したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。該市販品としては、例えば、大日本インキ化学工業株式会社製のフルオネートFEM−500、FEM−600、ディックガードF−52S、F−90、F−90M、F−90N,アクアフランTE−5A;旭硝子株式会社製のルミフロンFE4300、FE4500、FE4400、アサヒガードAG−7105、AG−950、AG−7600、AG−7000、AG−1100などが挙げられる。
【0112】
前記水分散性樹脂は、ホモポリマーとして使用されてもよく、また、コポリマーして使用して複合系樹脂として用いてもよく、単相構造型及びコアシェル型、パワーフィード型エマルジョンのいずれのものも使用できる。
【0113】
前記水分散性樹脂としては、樹脂自身が親水基を持ち自己分散性を持つもの、樹脂自身は分散性を持たず界面活性剤や親水基をもつ樹脂にて分散性を付与したものが使用できる。これらの中でも、ポリエステル樹脂やポリウレタン樹脂のアイオノマーや不飽和単量体の乳化及び懸濁重合によって得られた樹脂粒子のエマルジョンが最適である。
【0114】
不飽和単量体の乳化重合の場合には、不飽和単量体、重合開始剤、界面活性剤、連鎖移動剤、キレート剤、及びpH調整剤などを添加した水にて反応させ樹脂エマルジョンを得るため、容易に水分散性樹脂を得ることができ、樹脂構成を容易に替えやすいため目的の性質を作りやすい。
【0115】
前記不飽和単量体としては、例えば、不飽和カルボン酸類、単官能又は多官能の(メタ)アクリル酸エステル単量体類、(メタ)アクリル酸アミド単量体類、芳香族ビニル単量体類、ビニルシアノ化合物単量体類、ビニル単量体類、アリル化合物単量体類、オレフィン単量体類、ジエン単量体類、不飽和炭素を持つオリゴマー類などを単独及び複数組み合わせて用いることができる。
これらの単量体を組み合わせることで柔軟に性質を改質することが可能であり、オリゴマー型重合開始剤を用いて重合反応、グラフト反応を行うことで樹脂の特性を改質することもできる。
【0116】
前記不飽和カルボン酸類としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、フマール酸、マレイン酸等が挙げられる。
【0117】
前記単官能の(メタ)アクリル酸エステル単量体類としては、例えば、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、n−アミルメタクリレート、イソアミルメタクリレート、n−ヘキシルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、オクチルメタクリレート、デシルメタクリレート、ドデシルメタクリレート、オクタデシルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、フェニルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート、メタクリロキシエチルトリメチルアンモニウム塩、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、メチルアクリレート、エチルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、n−アミルアクリレート、イソアミルアクリレート、n−へキシルアクリレート、2−エチルへキシルアクリレート、オクチルアクリレート、デシルアクリレート、ドデシルアクリレート、オクタデシルアクリレート、シクロへキシルアクリレート、フェニルアクリレート、ベンジルアクリレート、グリシジルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、ジメチルアミノエチルアクリレート、アクリロキシエチルトリメチルアンモニウム塩、などが挙げられる。
【0118】
前記多官能の(メタ)アクリル酸エステル単量体類としては、例えば、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブチレングリコールジメタクリレート、1,4−ブチレングリコールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ジプロピレングリコールジメタクリレート、ポリプロピレングリコールジメタクリレート、ポリブチレングリコールジメタクリレート、2,2'−ビス(4−メタクリロキシジエトキシフェニル)プロパン、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールエタントリメタクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、1,3−ブチレングリコールジアクリレート、1,4−ブチレングリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、1,9−ノナンジオールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、2,2'−ビス(4−アクリロキシプロピロキシフェニル)プロパン、2,2'−ビス(4−アクリロキシジエトキシフェニル)プロパントリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、テトラメチロールメタントリアクリレート、ジトリメチロールテトラアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、などが挙げられる。 前記(メタ)アクリル酸アミド単量体類としては、例えば、アクリルアミド、メタクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、メチレンビスアクリルアミド、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸等が挙げられる。
【0119】
前記芳香族ビニル単量体類としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、4−t−ブチルスチレン、クロルスチレン、ビニルアニソール、ビニルナフタレン、ジビニルベンゼン等が挙げられる。
前記ビニルシアノ化合物単量体類としては、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等が挙げられる。
【0120】
前記ビニル単量体類としては、例えば、酢酸ビニル、塩化ビニリデン、塩化ビニル、ビニルエーテル、ビニルケトン、ビニルピロリドン、ビニルスルホン酸又はその塩、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等が挙げられる。
前記アリル化合物単量体類としては、例えば、アリルスルホン酸その塩、アリルアミン、アリルクロライド、ジアリルアミン、ジアリルジメチルアンモニウム塩等が挙げられる。
【0121】
前記オレフィン単量体類としては、例えば、エチレン、プロピレン等が挙げられる。
前記ジエン単量体類としては、例えば、ブタジエン、クロロプレン等が挙げられる。
前記不飽和炭素を持つオリゴマー類としては、例えば、メタクリロイル基を持つスチレンオリゴマー、メタクリロイル基を持つスチレン−アクリロニトリルオリゴマー、メタクリロイル基を持つメチルメタクリレートオリゴマー、メタクリロイル基を持つジメチルシロキサンオリゴマー、アクリロイル基を持つポリエステルオリゴマー等が挙げられる。
【0122】
前記水分散性樹脂は、強アルカリ性、強酸性下では分散破壊や加水分解などの分子鎖の断裂が引き起こされるため、pHは4〜12が好ましく、特に水分散着色剤との混和性の点からpHは6〜11がより好ましく、7〜9が更に好ましい。
【0123】
前記水分散性樹脂の平均粒径(D50)は、分散液の粘度と関係しており、組成が同じものでは粒径が小さくなるほど同一固形分での粘度が大きくなる。
インク化した時に過剰な高粘度にならないためにも水分散性樹脂の平均粒子径(D50)は50nm以上が好ましい。また、粒径が数十μmになるとインクジェットヘッドのノズル口より大きくなるため使用できない。ノズル口より小さくとも粒子径の大きな粒子がインク中に存在すると吐出性を悪化させる。そこで、インク吐出性を阻害させないために平均粒子径(D50)は200nm以下がより好ましく、150nm以下が更に好ましい。
【0124】
また、前記水分散性樹脂は、前記水分散着色剤を紙面に定着させる働きを有し、常温で被膜化して色材の定着性を向上させることが好ましい。そのため、前記水分散性樹脂の最低造膜温度(MFT)は30℃以下であることが好ましい。
【0125】
また、前記水分散性樹脂のガラス転移温度が−40℃以下になると樹脂皮膜の粘稠性が強くなり印字物にタックが生じるため、ガラス転移温度が−30℃以上の水分散性樹脂であることが好ましい。
前記水分散性樹脂の前記記録用インクにおける含有量は、固形分で1〜15質量%が好ましく、2〜7質量%がより好ましい。ここで、前記着色剤、着色剤中の顔料、及び前記水分散性樹脂の固形分含有量は、例えば、インク中から着色剤と水分散性樹脂分のみを分離する方法により測定することができる。
【0126】
また、着色剤として顔料を用いている場合には、熱質量分析により質量減少率を評価することで着色剤と水分散性樹脂との比率を測定できる。
また、着色剤の分子構造が明らかな場合には、顔料や染料ではNMRを用いて着色剤の固形分量を定量することが可能であり、重金属原子、分子骨格に含まれる無機顔料、含金有機顔料、含金染料では蛍光X線分析を用いることで着色剤の固形分量を定量することが可能である。
そして、本発明に用いられるインクは、水分量が通常50wt%より多く、樹脂と顔料の総量が通常3wt%より多いことから、溶媒蒸発率は、通常50〜97wt%となる。
【0127】
−その他の成分−
前記その他の成分としては、特に制限はなく、必要に応じて適宜選択することができ、例えば、pH調整剤、防腐防黴剤、キレート試薬、防錆剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、酸素吸収剤、光安定化剤、などが挙げられる。
【0128】
前記pH調整剤としては、調合される記録用インクに悪影響を及ぼさずにpHを7〜11に調整できるものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、アルコールアミン類、アルカリ金属元素の水酸化物、アンモニウムの水酸化物、ホスホニウム水酸化物、アルカリ金属の炭酸塩、などが挙げられる。
前記pHが7未満及び11を超えるとインクジェットのヘッドやインク供給ユニットを溶かし出す量が大きく、インクの変質や漏洩、吐出不良などの不具合が生じることがある。
【0129】
前記アルコールアミン類としては、例えば、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、2−アミノ−2−エチル−1,3プロパンジオール等が挙げられる。
前記アルカリ金属元素の水酸化物としては、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどが挙げられる。
前記アンモニウムの水酸化物としては、例えば、水酸化アンモニウム、第4級アンモニウム水酸化物、第4級ホスホニウム水酸化物などが挙げられる。
前記アルカリ金属の炭酸塩としては、例えば、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等が挙げられる。
【0130】
前記防腐防黴剤としては、例えば、デヒドロ酢酸ナトリウム、ソルビン酸ナトリウム、2−ピリジンチオール−1−オキサイドナトリウム、安息香酸ナトリウム、ペンタクロロフェノールナトリウム、等が挙げられる。
前記キレート試薬としては、例えば、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム、ニトリロ三酢酸ナトリウム、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸ナトリウム、ジエチレントリアミン五酢酸ナトリウム、ウラミル二酢酸ナトリウム等がある。
前記防錆剤としては、例えば、酸性亜硫酸塩、チオ硫酸ナトリウム、チオジグリコール酸アンモン、ジイソプロピルアンモニウムニトライト、四硝酸ペンタエリスリトール、ジシクロヘキシルアンモニウムニトライトなどが挙げられる。
【0131】
前記酸化防止剤としては、例えば、フェノール系酸化防止剤(ヒンダードフェノール系酸化防止剤を含む)、アミン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、などが挙げられる。
前記フェノール系酸化防止剤(ヒンダードフェノール系酸化防止剤を含む)としては、例えば、ブチル化ヒドロキシアニソール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−エチルフェノール、ステアリル−β−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、3,9−ビス[1,1−ジメチル−2−[β−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ]エチル]2,4,8,10−テトライキサスピロ[5,5]ウンデカン、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、テトラキス[メチレン−3−(3’,5’−ジ−tert−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、などが挙げられる。
【0132】
前記アミン系酸化防止剤としては、例えば、フェニル−β−ナフチルアミン、α−ナフチルアミン、N,N’−ジ−sec−ブチル−p−フェニレンジアミン、フェノチアジン、N,N’−ジフェニル−p−フェニレンジアミン、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール、2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、2,4−ジメチル−6−tert−ブチル−フェノール、ブチルヒドロキシアニソール、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、テトラキス[メチレン−3(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ジヒドロキフェニル)プロピオネート]メタン、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ブタン、等が挙げられる。
【0133】
前記硫黄系酸化防止剤としては、例えば、ジラウリル3,3’−チオジプロピオネート、ジステアリルチオジプロピオネート、ラウリルステアリルチオジプロピオネート、ジミリスチル3,3’−チオジプロピオネート、ジステアリルβ,β’−チオジプロピオネート、2−メルカプトベンゾイミダゾール、ジラウリルサルファイド等が挙げられる。
前記リン系酸化防止剤としては、トリフェニルフォスファイト、オクタデシルフォスファイト、トリイソデシルフォスファイト、トリラウリルトリチオフォスファイト、トリノニルフェニルフォスファイト、等が挙げられる。
【0134】
前記紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、サリチレート系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤、ニッケル錯塩系紫外線吸収剤、などが挙げられる。
前記ベンゾフェノン系紫外線吸収剤としては、例えば、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−ドデシルオキシベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、等が挙げられる。
【0135】
前記ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、例えば、2−(2’−ヒドロキシ−5’−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−4’−オクトキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−tert−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、等が挙げられる。
前記サリチレート系紫外線吸収剤としては、例えば、フェニルサリチレート、p−tert−ブチルフェニルサリチレート、p−オクチルフェニルサリチレート、等が挙げられる。
【0136】
前記シアノアクリレート系紫外線吸収剤としては、例えば、エチル−2−シアノ−3,3’−ジフェニルアクリレート、メチル−2−シアノ−3−メチル−3−(p−メトキシフェニル)アクリレート、ブチル−2−シアノ−3−メチル−3−(p−メトキシフェニル)アクリレート、等が挙げられる。
前記ニッケル錯塩系紫外線吸収剤としては、例えば、ニッケルビス(オクチルフェニル)サルファイド、2,2’−チオビス(4−tert−オクチルフェレート)−n−ブチルアミンニッケル(II)、2,2’−チオビス(4−tert−オクチルフェレート)−2−エチルヘキシルアミンニッケル(II)、2,2’−チオビス(4−tert−オクチルフェレート)トリエタノールアミンニッケル(II)、等が挙げられる。
【0137】
本発明に用いられるインクジェット記録用インクは、着色剤、水溶性有機溶剤(湿潤剤)、界面活性剤、及び水、更に必要に応じて、浸透剤、水分散性樹脂等、他の成分を水性媒体中に分散又は溶解し、更に必要に応じて攪拌混合して製造する。
前記分散は、例えば、サンドミル、ホモジナイザー、ボールミル、ペイントシャイカー、超音波分散機等により行うことができ、攪拌混合は通常の攪拌羽を用いた攪拌機、マグネチックスターラー、高速の分散機等で行うことができる。
【0138】
前記インクジェット記録用インクの物性としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、粘度、表面張力等が以下の範囲であることが好ましい。
前記記録用インクの25℃での粘度は3〜20mPa・sが好ましい。前記インク粘度が3mPa・s以上とすることによって、印字濃度や文字品位を向上させる効果が得られる。一方、インク粘度を20mPa・s以下に抑えることで、吐出性を確保することができる。
ここで、前記粘度は、例えば、粘度計(RL−550、東機産業株式会社製)を使用して、25℃で測定することができる。
【0139】
前記記録用インクの表面張力としては、25℃で、35mN/m以下が好ましく、32mN/m以下がより好ましい。前記表面張力が、35mN/mを超えると、記録用メディア上のインクのレベリングが起こり難く、乾燥時間の長時間化を招くことがある。
【0140】
本発明に用いられるインクジェット記録用インクの着色としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックなどが挙げられる。
これらの着色を2種以上併用したインクセットを使用して記録を行うと、多色画像を形成することができ、全色併用したインクセットを使用して記録を行うと、フルカラー画像を形成することができる。
【0141】
本発明に用いられるインクジェット記録用インクは、インクジェットヘッドとして、インク流路内のインクを加圧する圧力発生手段として圧電素子を用いてインク流路の壁面を形成する振動板を変形させてインク流路内容積を変化させてインク滴を吐出させるいわゆるピエゾ型のもの(特開平2−51734号公報参照)、あるいは、発熱抵抗体を用いてインク流路内でインクを加熱して気泡を発生させるいわゆるサーマル型のもの(特開昭61−59911号公報参照)、インク流路の壁面を形成する振動板と電極とを対向配置し、振動板と電極との間に発生させる静電力によって振動板を変形させることで、インク流路内容積を変化させてインク滴を吐出させる静電型のもの(特開平6−71882号公報参照)などのいずれのインクジェットヘッドを搭載するプリンタにも良好に使用できる。
【0142】
本発明に用いられるインクジェット記録用インクは、インクジェット記録用インク、万年筆、ボールペン、マジックペン、サインペンなどの各種分野において好適に使用することができるが、特に、インクジェット記録方式による画像形成装置(プリンタ等)において好適に使用することができ、例えば、印字又は印字前後に被記録用紙及び前記記録用インクを50〜200℃で加熱し、印字定着を促進する機能を有するプリンタ等に使用することもでき、以下の本発明のインクジェット記録用インク−記録用メディアセット、インクジェット記録方法に特に好適に使用することができる。
【0143】
(インクジェット記録用インク−記録用メディアセット)
本発明のインクメディアセットは、前記インクジェット記録用インクと、記録用メディアとを組み合わせてなる。
<記録用メディア>
記録用メディアは、支持体と前記支持体の少なくとも一方の面に塗工層を有してなり、23℃、50%RHにて動的走査吸液計で測定した接触時間100msにおける純水の前記塗工層を有してなる記録用メディアへの転移量が2〜35ml/m2、かつ接触時間400msにおける純水の前記記録用メディアへの転移量が3〜40ml/m2である記録用メディアが好適に用いられる。
また、前記塗工層を有してなる記録用メディアへの純水の転移量が上記範囲内にあれば、他に特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、光沢紙、特殊紙、布、フィルム、OHPシート、汎用印刷用紙などが好適に使用可能である。
【0144】
前記接触時間100msでの純水の転移量が少なすぎると、ビーディング(濃度ムラ)が発生しやすくなることがあり、多すぎると、記録後のインクドット径が所望の径よりも小さくなりすぎることがある。このため、本発明における記録用メディアは、23℃、50%RHにて動的走査吸液計で測定した接触時間100msにおける純水の前記塗工層を有してなる記録用メディアへの転移量が2〜35ml/m2であることを特徴とし、2〜25ml/m2であることが好ましく、2〜10ml/m2であることがより好ましい。
【0145】
また、前記接触時間400msでの純水の転移量が少なすぎると、乾燥性が不十分であるため、拍車痕が発生しやすくなることがあり、多すぎると、乾燥後の画像部の光沢が低くなりやすくなることがある。このため、本発明における記録用メディアは、23℃、50%RHにて動的走査吸液計で測定した接触時間400msにおける純水の前記塗工層を有してなる記録用メディアへの転移量が3〜45ml/m2であることを特徴とし、3〜25ml/m2であることが好ましく、3〜10ml/m2であることがより好ましい。
【0146】
−支持体−
前記支持体としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、木材繊維主体の紙、木材繊維及び合成繊維を主体とした不織布のようなシート状物質などが挙げられる。
【0147】
前記紙としては、特に制限はなく、公知のものの中から目的に応じて適宜選択することができ、例えば、木材パルプ、古紙パルプなどが用いられる。
前記木材パルプとしては、例えば、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)、NBSP、LBSP、GP、TMPなどが挙げられる。
前記古紙パルプの原料としては、財団法人古紙再生促進センターの古紙標準品質規格表に示されている、上白、罫白、クリーム白、カード、特白、中白、模造、色白、ケント、白アート、特上切、別上切、新聞、雑誌などが挙げられる。
【0148】
具体的には、情報関連用紙である非塗工コンピュータ用紙、感熱紙、感圧紙等のプリンタ用紙;PPC用紙等のOA古紙;アート紙、コート紙、微塗工紙、マット紙等の塗工紙;上質紙、色上質、ノート、便箋、包装紙、ファンシーペーパー、中質紙、新聞用紙、更紙、スーパー掛け紙、模造紙、純白ロール紙、ミルクカートン等の非塗工紙、などの紙や板紙の古紙で、化学パルプ紙、高歩留りパルプ含有紙などが挙げられる。
これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0149】
前記古紙パルプは、一般的に、以下の4工程の組み合わせから製造される。
(1)離解は、古紙をパルパーにて機械力と薬品で処理して繊維状にほぐし、印刷インキを繊維より剥離する。
(2)除塵は、古紙に含まれる異物(プラスチックなど)及びゴミをスクリーン、クリーナー等により除去する。
(3)脱墨は、繊維より界面活性剤を用いて剥離された印刷インキをフローテーション法、又は洗浄法で系外に除去する。
(4)漂白は、酸化作用や還元作用を用いて、繊維の白色度を高める。
前記古紙パルプを混合する場合、全パルプ中の古紙パルプの混合比率は、記録後のカール対策から40%以下が好ましい。
【0150】
前記支持体に使用される内添填料としては、例えば、白色顔料として従来公知の顔料が用いられる。
前記白色顔料としては、例えば、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、カオリン、クレー、タルク、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、炭酸亜鉛、サチンホワイト、珪酸アルミニウム、ケイソウ土、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、合成シリカ、水酸化アルミニウム、アルミナ、リトポン、ゼオライト、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム等のような白色無機顔料;スチレン系プラスチックピグメント、アクリル系プラスチックピグメント、ポリエチレン、マイクロカプセル、尿素樹脂、メラミン樹脂等のような有機顔料、などが挙げられる。
これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0151】
前記支持体を抄造する際に使用される内添サイズ剤としては、例えば、中性抄紙に用いられる中性ロジン系サイズ剤、アルケニル無水コハク酸(ASA)、アルキルケテンダイマー(AKD)、石油樹脂系サイズ剤などが挙げられる。
これらの中でも、中性ロジンサイズ剤又はアルケニル無水コハク酸が特に好適である。
前記アルキルケテンダイマーは、そのサイズ効果が高いことから添加量は少なくて済むが、記録用紙(メディア)表面の摩擦係数が下がり滑りやすくなるため、インクジェット記録時の搬送性の点からは好ましくない場合がある。
【0152】
前記支持体の厚みは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、50〜300μmが好ましい。
また、支持体の坪量は、45〜290g/m2が好ましい。
【0153】
−塗工層−
前記塗工層は、顔料及びバインダー(結着剤)を含有してなり、更に必要に応じて、界面活性剤、その他の成分を含有してなる。
【0154】
前記顔料としては、無機顔料、もしくは無機顔料と有機顔料を併用したものを用いることができる。
前記無機顔料としては、例えば、カオリン、タルク、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、亜硫酸カルシウム、非晶質シリカ、チタンホワイト、炭酸マグネシウム、二酸化チタン、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化亜鉛、クロライトなどが挙げられる。
これらの中でも、カオリンは光沢発現性に優れており、オフセット印刷用の用紙に近い風合いとすることができる点から特に好ましい。
【0155】
前記カオリンには、デラミネーテッドカオリン、焼成カオリン、表面改質等によるエンジニアードカオリン等があるが、光沢発現性を考慮すると、粒子径が2μm以下の割合が80質量%以上の粒子径分布を有するカオリンが、カオリン全体の50質量%以上を占めていることが好ましい。
【0156】
前記カオリンの添加量は、前記バインダー100質量部に対し50質量部以上が好ましい。前記添加量が50質量部未満であると、光沢度において十分な効果が得られないことがある。前記添加量の上限は特に制限はないが、カオリンの流動性、特に高せん断力下での増粘性を考慮すると、塗工適性の点から、90質量部以下がより好ましい。
【0157】
前記有機顔料としては、例えば、スチレン−アクリル共重合体粒子、スチレン−ブタジエン共重合体粒子、ポリスチレン粒子、ポリエチレン粒子等の水溶性ディスパージョンがある。これら有機顔料は2種以上が混合されてもよい。
【0158】
前記有機顔料は、光沢発現性に優れていることと、その比重が無機顔料と比べて小さいことから、嵩高く、高光沢で、表面被覆性の良好な塗工層を得ることができる。
前記有機顔料の添加量は、前記塗工層の全顔料100質量部に対し2〜20質量部が好ましい。前記添加量が2質量部未満であると、前記効果がなく、20質量部を超えると、塗工液の流動性が悪化し、塗工操業性の低下に繋がることと、コスト面からも経済的ではない。
【0159】
前記有機顔料には、その形態において、密実型、中空型、ドーナツ型等があるが、光沢発現性、表面被覆性及び塗工液の流動性のバランスを鑑み、平均粒子径(D50)は0.2〜3.0μmが好ましく、より好ましくは空隙率40%以上の中空型が採用される。
【0160】
前記バインダーとしては、水性樹脂を使用するのが好ましい。
前記水性樹脂としては、水溶性樹脂及び水分散性樹脂の少なくともいずれかを好適に用いられる。
【0161】
前記水溶性樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリビニルアルコール、アニオン変性ポリビニルアルコール、カチオン変性ポリビニルアルコール、アセタール変性ポリビニルアルコール等のポリビニルアルコールの変性物;ポリウレタン;ポリビニルピロリドン及びポリビニルピロリドンと酢酸ビニルの共重合体、ビニルピロリドンとジメチルアミノエチル・メタクリル酸の共重合体、四級化したビニルピロリドンとジメチルアミノエチル・メタクリル酸の共重合体、ビニルピロリドンとメタクリルアミドプロピル塩化トリメチルアンモニウムの共重合体等のポリビニルピロリドンの変性物;カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等のセルロース;カチオン化ヒドロキシエチルセルロース等のセルロースの変性物;ポリエステル、ポリアクリル酸(エステル)、メラミン樹脂、又はこれらの変性物、ポリエステルとポリウレタンの共重合体等の合成樹脂;ポリ(メタ)アクリル酸、ポリ(メタ)アクリルアミド、酸化澱粉、燐酸エステル化澱粉、自家変性澱粉、カチオン化澱粉、又は各種変性澱粉、ポリエチレンオキサイド、ポリアクリル酸ソーダ、アルギン酸ソーダ、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、インク吸収性の観点から、ポリビニルアルコール、カチオン変性ポリビニルアルコール、アセタール変性ポリビニルアルコール、ポリエステル、ポリウレタン、ポリエステルとポリウレタンの共重合体、などが特に好ましい。
【0162】
前記水分散性樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリ酢酸ビニル、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリスチレン、スチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、(メタ)アクリル酸エステル系重合体、酢酸ビニル−(メタ)アクリル酸(エステル)共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、ポリビニルエーテル、シリコーン−アクリル系共重合体、などが挙げられる。また、メチロール化メラミン、メチロール化尿素、メチロール化ヒドロキシプロピレン尿素、イソシアネート等の架橋剤を含有してよいし、N−メチロールアクリルアミドなどの単位を含む共重合体で自己架橋性を持つものでもよい。
これら水性樹脂の複数を同時に用いることも可能である。
【0163】
前記水性樹脂の添加量は、前記顔料100質量部に対し、2〜100質量部が好ましく、3〜50質量部がより好ましい。前記水性樹脂の添加量は記録用メディアの吸液特性が所望の範囲に入るように決定される。
【0164】
前記着色剤として水分散性の着色剤を使用する場合には、塗工層にカチオン性有機化合物は必ずしも配合する必要はないが、塗工層に配合されるカチオン性有機化合物は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択使用することができる。
【0165】
塗工層に配合されるカチオン性有機化合物としては、例えば、水溶性インク中の直接染料や酸性染料中のスルホン酸基、カルボキシル基、アミノ基等と反応して不溶な塩を形成する1級〜3級アミン、4級アンモニウム塩のモノマー、オリゴマー、ポリマーなどが挙げられ、これらの中でも、オリゴマー又はポリマーが好ましい。
【0166】
前記カチオン性有機化合物としては、例えば、ジメチルアミン・エピクロルヒドリン重縮合物、ジメチルアミン・アンモニア・エピクロルヒドリン縮合物、ポリ(メタクリル酸トリメチルアミノエチル・メチル硫酸塩)、ジアリルアミン塩酸塩・アクリルアミド共重合物、ポリ(ジアリルアミン塩酸塩・二酸化イオウ)、ポリアリルアミン塩酸塩、ポリ(アリルアミン塩酸塩・ジアリルアミン塩酸塩)、アクリルアミド・ジアリルアミン共重合物、ポリビニルアミン共重合物、ジシアンジアミド、ジシアンジアミド・塩化アンモニウム・尿素・ホルムアルデヒド縮合物、ポリアルキレンポリアミン・ジシアンジアミドアンモニウム塩縮合物、ジメチルジアリルアンモニウムクロライド、ポリジアリルメチルアミン塩酸塩、ポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロライド)、ポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロライド・二酸化イオウ)、ポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロライド・ジアリルアミン塩酸塩誘導体)、アクリルアミド・ジアリルジメチルアンモニウムクロライド共重合物、アクリル酸塩・アクリルアミド・ジアリルアミン塩酸塩共重合物、ポリエチレンイミン、アクリルアミンポリマー等のエチレンイミン誘導体、ポリエチレンイミンアルキレンオキサイド変性物、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0167】
これらの中でも、ジメチルアミン・エピクロルヒドリン重縮合物、ポリアリルアミン塩酸塩等の低分子量のカチオン性有機化合物と他の比較的高分子量のカチオン性有機化合物、例えば、ポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロライド)等とを組み合わせて使用するのが好ましい。
併用により、単独使用の場合よりも画像濃度を向上させ、フェザリングが更に低減される。
【0168】
前記カチオン性有機化合物のコロイド滴定法(ポリビニル硫酸カリウム、トルイジンブルー使用)によるカチオン当量は3〜8meq/gが好ましい。前記カチオン当量がこの範囲であれば上記乾燥付着量の範囲で良好な結果が得られる。
ここで、前記コロイド滴定法によるカチオン当量の測定に当たっては、カチオン性有機化合物を固形分0.1質量%となるように蒸留水で希釈し、pH調整は行わないものとする。
【0169】
前記カチオン性有機化合物の乾燥付着量は0.3〜2.0g/m2が好ましい。前記カチオン性有機化合物の乾燥付着量が0.3g/m2より低いと、充分な画像濃度向上やフェザリング低減の効果が得られないことがある。
【0170】
前記塗工層に必要に応じて含有される界面活性剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、アニオン活性剤、カチオン活性剤、両性活性剤、非イオン活性剤のいずれも使用することができる。これらの中でも、非イオン活性剤が特に好ましい。前記界面活性剤を添加することにより、画像の耐水性が向上するとともに、画像濃度が高くなり、ブリーディングが改善される。
【0171】
前記非イオン活性剤としては、例えば、高級アルコールエチレンオキサイド付加物、アルキルフェノールエチレンオキサイド付加物、脂肪酸エチレンオキサイド付加物、多価アルコール脂肪酸エステルエチレンオキサイド付加物、高級脂肪族アミンエチレンオキサイド付加物、脂肪酸アミドエチレンオキサイド付加物、油脂のエチレンオキサイド付加物、ポリプロピレングリコールエチレンオキサイド付加物、グリセロールの脂肪酸エステル、ペンタエリスリトールの脂肪酸エステル、ソルビトール及びソルビタンの脂肪酸エステル、ショ糖の脂肪酸エステル、多価アルコールのアルキルエーテル、アルカノールアミン類の脂肪酸アミド等が挙られる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0172】
前記多価アルコールとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、グリセロール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリット、ソルビトール、ショ糖などが挙げられる。
また、エチレンオキサイド付加物については、水溶性を維持できる範囲で、エチレンオキサイドの一部をプロピレンオキサイドあるいはブチレンオキサイド等のアルキレンオキサイドに置換したものも有効である。置換率は50%以下が好ましい。
【0173】
前記非イオン活性剤のHLB(親水性/親油性比)は4〜15が好ましく、7〜13がより好ましい。
前記界面活性剤の添加量は、前記カチオン性有機化合物100質量部に対し、0〜10質量部が好ましく、0.1〜1.0質量部がより好ましい。
【0174】
前記塗工層には、本発明の目的及び効果を損なわない範囲で、更に必要に応じて、その他の成分を添加することができる。該その他の成分としては、アルミナ粉末、pH調整剤、防腐剤、酸化防止剤等の添加剤が挙げられる。
【0175】
前記塗工層の形成方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、前記支持体上に塗工層液を含浸又は塗布する方法により行うことができる。
前記塗工層液の含浸又は塗布方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、コンベンショナルサイズプレス、ゲートロールサイズプレス、フィルムトランスファーサイズプレス、ブレードコーター、ロッドコーター、エアーナイフコーター、カーテンコーターなど各種塗工機で塗工することも可能であるが、コストの点から、抄紙機に設置されているコンベンショナルサイズプレス、ゲートロールサイズプレス、フィルムトランスファーサイズプレスなどで含浸又は付着させ、オンマシンで仕上げてもよい。
【0176】
前記塗工層液の付着量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、固形分で、0.5〜20g/m2が好ましく、1〜15g/m2がより好ましい。
前記含浸又は塗布の後、必要に応じて乾燥させてもよく、この場合の乾燥の温度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、100〜250℃程度が好ましい。
【0177】
前記記録用メディアは、更に支持体の裏面にバック層、支持体と塗工層との間、また、支持体とバック層間にその他の層を形成してもよく、塗工層上に保護層を設けることもできる。これらの各層は単層であっても複数層であってもよい。
【0178】
前記記録用メディアとしては、インクジェット記録用メディアの他、市販の汎用印刷用紙、オフセット印刷用塗工紙、グラビア印刷用塗工紙などを使用することができる。
市販の印刷用塗工紙とは、キャストコート紙、いわゆるアート紙(A0サイズ、A1サイズ)、A2サイズコート紙、A3サイズコート紙、B2サイズコート紙、軽量コート紙、微塗工紙といった商業印刷・出版印刷に用いられている塗工紙のことであり、オフセット印刷、グラビア印刷等に用いられるものである。 具体的には、オーロラコート(日本製紙株式会社製)、PODグロスコート(王子製紙株式会社製)などが挙げられる。
【0179】
(インクカートリッジ)
インクカートリッジは、本発明に用いられる前記インクジェット記録用インクを容器中に収容してなり、更に必要に応じて適宜選択したその他の部材等を有してなる。
前記容器としては、特に制限はなく、目的に応じてその形状、構造、大きさ、材質等を適宜選択することができ、例えば、アルミニウムラミネートフィルム、樹脂フィルム等で形成されたインク袋などを少なくとも有するもの、などが好適に挙げられる。
【0180】
次に、インクカートリッジについて、図1及び図2を参照して説明する。
ここで、図1はインクカートリッジを示す概略図であり、図2は図1のインクカートリッジの変形例を示す概略図である。
図1に示すように、インク注入口(242)から前記インクジェット記録用インクがインク袋(241)内に充填され、排気した後、該インク注入口(242)は融着により閉じられる。使用時には、ゴム部材からなるインク排出口(243)に、図3で後述するインクジェット記録装置本体(101)の針が刺されて、前記インクが装置本体(101)に供給される。
【0181】
インク袋(241)は、透気性のないアルミニウムラミネートフィルム等の包装部材により形成されている。このインク袋(241)は、図2に示すように、通常、プラスチックス製のカートリッジケース(244)内に収容され、各種インクジェット記録装置に着脱可能に装着して用いられるようになっている。
【0182】
インクカートリッジ(201)は、本発明に用いられる前記インクジェット記録用インク(インクセット)を収容し、各種インクジェット記録装置に着脱可能に装着して用いることができ、また、後述するインクジェット記録装置に着脱可能に装着して用いるのが特に好ましい。
【0183】
(インクジェット記録方法及びインクジェット記録装置)
本発明のインクジェット記録方法は、少なくとも一方の面に塗工層を有する記録用メディアにインクジェット記録用インクを吐出して画像を記録するインクジェット記録方法であって、該記録用メディアとして、23℃50%RHにて動的走査吸液計で測定した接触時間100msにおける純水の前記塗工層を有してなる記録用メディアへの転移量が2〜35ml/m2、かつ接触時間400msにおける純水の前記塗工層を有してなる記録用メディアへの転移量が3〜40ml/m2である記録用メディアを用い、該インクジェット記録用インクとして、水、水溶性有機溶剤、界面活性剤及び着色剤を少なくとも含有するインクジェット記録用インクであって、水溶性有機溶剤として、下記一般式(I)で示されるアミド化合物を少なくとも含有するインクジェット記録用インクを用いることを特徴とする。
【0184】
【化1】

【0185】
そして、前記インクジェット記録用インクによって前記記録用メディアに画像等を形成する方法としては、インク飛翔工程を少なくとも含み、更に必要に応じて適宜選択したその他の工程、例えば、刺激発生工程、制御工程等を含む方法が好ましい。
かかる記録方法を実現するインクジェット記録装置としては、インク飛翔手段を少なくとも有してなり、更に必要に応じて適宜選択したその他の手段、例えば、刺激発生手段、制御手段等を有してなる装置が好ましい。
【0186】
上記のように、本発明のインクジェット記録方法は、前記インクジェット記録装置により好適に実施することができ、前記インク飛翔工程は前記インク飛翔手段により好適に行うことができる。また、前記その他の工程は、前記その他の手段により好適に行うことができる。
【0187】
−インク飛翔工程及びインク飛翔手段−
前記インク飛翔工程は、前記記録用インクに、刺激(エネルギー)を印加し、該記録用インクを飛翔させて記録用メディアに画像を形成する工程である。
前記インク飛翔手段は、前記記録用インクに、刺激(エネルギー)を印加し、該記録用インクを飛翔させて記録用メディアに画像を形成する手段である。該インク飛翔手段としては、特に制限はなく、例えば、インク吐出用の各種のノズル、などが挙げられる。
【0188】
前記装置においては、前記インクジェットヘッドの液室部、流体抵抗部、振動板、及びノズル部材の少なくとも一部がシリコーン及びニッケルの少なくともいずれかを含む材料から形成されることが好ましい。
また、前記インクジェットノズルのノズル直径は、30μm以下が好ましく、1〜20μmがより好ましい。
【0189】
前記刺激(エネルギー)は、例えば、前記刺激発生手段により発生させることができ、該刺激としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、熱(温度)、圧力、振動及び光などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、熱、圧力が好適に挙げられる。
【0190】
なお、前記刺激発生手段としては、例えば、加熱装置、加圧装置、圧電素子、振動発生装置、超音波発振器、ライト、などが挙げられ、具体的には、例えば、圧電素子等の圧電アクチュエータ、発熱抵抗体等の電気熱変換素子を用いて液体の膜沸騰による相変化を利用するサーマルアクチュエータ、温度変化による金属相変化を用いる形状記憶合金アクチュエータ、静電力を用いる静電アクチュエータ等、などが挙げられる。
【0191】
前記記録用インクの飛翔の態様としては、特に制限はなく、前記刺激の種類等応じて異なり、例えば、前記刺激が「熱」の場合、記録ヘッド内の前記記録用インクに対し、記録信号に対応した熱エネルギーを例えばサーマルヘッド等を用いて付与し、該熱エネルギーにより前記記録用インクに気泡を発生させ、該気泡の圧力により、該記録ヘッドのノズル孔から該記録用インクを液滴として吐出噴射させる方法、などが挙げられる。
【0192】
また、前記刺激が「圧力」の場合、例えば記録ヘッド内のインク流路内にある圧力室と呼ばれる位置に接着された圧電素子に電圧を印加することにより、圧電素子が撓み、圧力室の容積が縮小して、前記記録ヘッドのノズル孔から該記録用インクを液滴として吐出噴射させる方法、などが挙げられる。
【0193】
前記飛翔させる前記記録用インクの液滴は、その大きさとしては、例えば、3×10-15〜40×10-153(3〜40pL)とするのが好ましく、その吐出噴射の速さとしては5〜20m/sとするのが好ましく、その駆動周波数としては1kHz以上とするのが好ましく、その解像度としては300dpi以上とするのが好ましい。
なお、前記制御手段としては、前記各手段の動きを制御することができる限り特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、シークエンサー、コンピュータ等の機器が挙げられる。
【0194】
ここで、シリアル型インクジェット記録装置により、本発明のインクジェット記録方法を実施する一態様について、図面を参照しながら説明する。
図3に示すインクジェット記録装置は、装置本体(101)と、装置本体(101)に用紙を装填するための給紙トレイ(102)と、装置本体(101)に装填され画像が形成(記録)された用紙をストックするための排紙トレイ(103)と、インクカートリッジ装填部(104)とを有する。インクカートリッジ装填部(104)の上面には、操作キーや表示器などの操作部(105)が配置されている。インクカートリッジ装填部(104)は、インクカートリッジ(201)の脱着を行うための開閉可能な前カバー(115)を有している。
【0195】
装置本体(101)内には、図4及び図5に示すように、図示を省略している左右の側板に横架したガイド部材であるガイドロッド(131)とステー(132)とでキャリッジ(133)を主走査方向に摺動自在に保持し、主走査モータ(不図示)によって図5で矢示方向に移動走査する。キャリッジ(133)には、イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(Bk)の各色の記録用インク滴を吐出する4個のインクジェット記録用ヘッドからなる記録ヘッド(134)を複数のインク吐出口を主走査方向と交叉する方向に配列し、インク滴吐出方向を下方に向けて装着している。
【0196】
記録ヘッド(134)を構成するインクジェット記録用ヘッドとしては、圧電素子などの圧電アクチュエータ、発熱抵抗体などの電気熱変換素子を用いて液体の膜沸騰による相変化を利用するサーマルアクチュエータ、温度変化による金属相変化を用いる形状記憶合金アクチュエータ、静電力を用いる静電アクチュエータなどインクを吐出するためのエネルギー発生手段として備えたものなどを使用できる。
【0197】
また、キャリッジ(133)には、記録ヘッド(134)に各色のインクを供給するための各色のサブタンク(135)を搭載している。サブタンク(135)には、図示しない記録用インク供給チューブを介して、インクカートリッジ装填部(104)に装填されたインクカートリッジ(201)から前記記録用インクが供給されて補充される。
【0198】
一方、給紙トレイ(102)の用紙積載部(圧板)(141)上に積載した用紙(142)を給紙するための給紙部として、用紙積載部(141)から用紙(142)を1枚ずつ分離給送する半月コロ(給紙コロ143)、及び給紙コロ(143)に対向し、摩擦係数の大きな材質からなる分離パッド(144)を備え、この分離パッド(144)は給紙コロ(143)側に付勢されている。
【0199】
この給紙部から給紙された用紙(142)を記録ヘッド(134)の下方側で搬送するための搬送部として、用紙(142)を静電吸着して搬送するための搬送ベルト(151)と、給紙部からガイド(145)を介して送られる用紙(142)を搬送ベルト(151)との間で挟んで搬送するためのカウンタローラ(152)と、略鉛直上方に送られる用紙(142)を略90°方向転換させて搬送ベルト(151)上に倣わせるための搬送ガイド(153)と、押さえ部材(154)で搬送ベルト(151)側に付勢された先端加圧コロ(155)とが備えられる。また、搬送ベルト(151)表面を帯電させるための帯電手段である帯電ローラ(156)が備えられている。
【0200】
搬送ベルト(151)は、無端状ベルトであり、搬送ローラ(157)とテンションローラ(158)との間に張架されて、ベルト搬送方向に周回可能である。この搬送ベルト(151)は、例えば、抵抗制御を行っていない厚み40μm程度の樹脂材、例えば、テトラフルオロエチレンとエチレンの共重合体(ETFE)で形成した用紙吸着面となる表層と、この表層と同材質でカーボンによる抵抗制御を行った裏層(中抵抗層、アース層)とを有している。
【0201】
搬送ベルト(151)の裏側には、記録ヘッド(134)による印写領域に対応してガイド部材(161)が配置されている。なお、記録ヘッド(134)で記録された用紙(142)を排紙するための排紙部として、搬送ベルト(151)から用紙(142)を分離するための分離爪(171)と、排紙ローラ(172)及び排紙コロ(173)とが備えられており、排紙ローラ(172)の下方に排紙トレイ(103)が配されている。
【0202】
装置本体(101)の背面部には、両面給紙ユニット(181)が着脱自在に装着されている。両面給紙ユニット(181)は、搬送ベルト(151)の逆方向回転で戻される用紙(142)を取り込んで反転させて再度カウンタローラ(152)と搬送ベルト(151)との間に給紙する。
なお、両面給紙ユニット(181)の上面には手差し給紙部(182)が設けられている。 このインクジェット記録装置においては、給紙部から用紙(142)が1枚ずつ分離給紙され、略鉛直上方に給紙された用紙(142)は、ガイド(145)で案内され、搬送ベルト(151)とカウンタローラ(152)との間に挟まれて搬送される。
【0203】
更に先端を搬送ガイド(153)で案内されて先端加圧コロ(155)で搬送ベルト(151)に押し付けられ、略90°搬送方向を転換される。このとき、帯電ローラ(156)によって搬送ベルト(157)が帯電されており、用紙(142)は、搬送ベルト(151)に静電吸着されて搬送される。そこで、キャリッジ(133)を移動させながら画像信号に応じて記録ヘッド(134)を駆動することにより、停止している用紙(142)にインク滴を吐出して1行分を記録し、用紙(142)を所定量搬送後、次行の記録を行う。
【0204】
記録終了信号又は用紙(142)の後端が記録領域に到達した信号を受けることにより、記録動作を終了して、用紙(142)を排紙トレイ(103)に排紙する。そして、サブタンク(135)内の記録用インクの残量ニヤエンドが検知されると、インクカートリッジ(201)から所要量の記録用インクがサブタンク(135)に補給される。
【0205】
このインクジェット記録装置においては、インクカートリッジ(201)中の記録用インクを使い切ったときには、インクカートリッジ(201)における筐体を分解して内部のインク袋(241)だけを交換することができる。
また、インクカートリッジ(201)は、縦置きで前面装填構成としても、安定した記録用インクの供給を行うことができる。
したがって、装置本体(101)の上方が塞がって設置されているような場合、例えば、ラック内に収納する場合、あるいは装置本体(101)の上面に物が置かれているような場合でも、インクカートリッジ(201)の交換を容易に行うことができる。
【0206】
ここで、前記吐出装置の維持装置を含むサブシステム(91)の構成例について図6ないし図8を参照して説明する。図6は同システムの要部平面説明図、図7は同システムの模式的概略構成図、図8は図6の右側面説明図である。
このサブシステムのフレーム(維持装置フレーム)(111)には、キャップ保持機構である2つのキャップホルダ(112A)、(112B)と、清浄化手段としての弾性体を含むワイピング部材であるワイパーブレード(93)と、キャリッジロック(115)とがそれぞれ昇降可能(上下動可能)に保持されている。
【0207】
また、ワイパーブレード(93)とキャップホルダ(112A)との間には空吐出受け(94)が配置され、ワイパーブレード(93)のクリーニングを行なうために、フレーム(111)の外側からワイパーブレード(93)を空吐出受け(94)の清掃部材であるワイパークリーナ(95)側に押し付けるための清掃部材であるクリーナコロ(96)を含むクリーナ手段であるワイパークリーナ(118)が揺動可能に保持されている。
【0208】
キャップホルダ(112A)、(112B)(区別しないときは「キャップホルダ(112)」という。)には、それぞれ、2つの記録ヘッドのノズル面をそれぞれキャッピングする2つのキャップ(92a)と(92b)、キャップ(92c)と(92d)を保持している。
ここで、印字領域に最も近い側のキャップホルダ(112A)に保持したキャップ(92a)には可撓性チューブ(119)を介して吸引手段であるチュービングポンプ(吸引ポンプ)(120)を接続し、その他のキャップ(92b)、(92c)、(92d)はチュービングポンプ(120)を接続していない。すなわち、キャップ(92a)のみを吸引(回復)及び保湿用キャップ(以下単に「吸引用キャップ」という。)とし、その他のキャップ(92b)、(92c)、(92d)はいずれも単なる保湿用キャップとしている。
したがって、記録ヘッドの回復動作を行うときには、回復動作を行う記録ヘッドを吸引用キャップ(92a)によってキャッピング可能な位置に選択的に移動させる。
【0209】
また、これらのキャップホルダ(112A)、(112B)の下方にはフレーム(111)に回転自在に支持したカム軸(121)を配置し、このカム軸(121)には、キャップホルダ(112A)、(112B)を昇降させるためのキャップカム(122A)、(122B)と、ワイパーブレード(93)を昇降させるためのワイパーカム(124)、キャリッジロック(115)をキャリッジロックアーム(117)を介して昇降させるためのキャリッジロックカム(125)と、空吐出受け(94)内で空吐出される液滴がかかる空吐出着弾部材である回転体としてのコロ(126)と、ワイパークリーナ(118)を揺動させるためのクリーナカム(128)をそれぞれ設けている。
ここで、キャップ(92)はキャップカム(122A)、(122B)により昇降させられる。
【0210】
ワイパーブレード(93)はワイパーカム(124)により昇降させられ、下降時にワイパークリーナ(118)が進出して、このワイパークリーナ(118)のクリーナコロ(96)と空吐出受け(94)のワイパークリーナ(95)とに挟まれながら下降することで、ワイパーブレード(93)に付着したインクが空吐出受け(94)内に掻き落とされる。
【0211】
キャリッジロック(115)は図示しない圧縮バネによって上方(ロック方向)に付勢されて、キャリッジロックカム(125)で駆動されるキャリッジロックアーム(117)を介して昇降させられる。そして、チュービングポンプ(120)及びカム軸(121)を回転駆動するために、モータ(131)の回転をモータ軸(131a)に設けたモータギヤ(132)に、チュービングポンプ(120)のポンプ軸(120a)に設けたポンプギヤ(133)を噛み合わせ、更にこのポンプギヤ(133)と一体の中間ギヤ(134)に中間ギヤ(135)を介して一方向クラッチ(137)付きの中間ギヤ(136)を噛み合わせ、この中間ギヤ(136)と同軸の中間ギヤ(138)に中間ギヤ(139)を介してカム軸(121)に固定したカムギヤ(140)を噛み合わせている。
なお、クラッチ(137)付きの中間ギヤ(136)、(138)の回転軸である中間軸(141)はフレーム(111)にて回転可能に保持している。
【0212】
また、カム軸(121)にはホームポジションを検出するためのホームポジションセンサ用カム(142)を設け、このサブシステム(91)に設けた図示しないホームポジションセンサにてキャップ(92)が最下端に来たときにホームポジションレバー(不図示)を作動させ、センサが開状態になってモータ(131)(ポンプ(120)以外)のホームポジションを検知する。
なお、電源オン時には、キャップ(92)(キャップホルダ112)の位置に関係なく上下(昇降)し、移動開始までは位置検出を行わず、キャップ(92)のホーム位置(上昇途中)を検知した後に、定められた量を移動して最下端へ移動する。
その後、キャリッジが左右に移動して位置検知後キャップ位置に戻り、記録ヘッド(34)がキャッピングされる。
【0213】
次に、空吐出受け部について図9及び図10を参照して説明する。なお、図9は空吐出受け部の正面断面説明図、図10は同じく側面説明図である。
空吐出受け部(200)は、空吐出受け(94)と、空吐出受け(94)の下側に位置し、カム軸(121)に設けた空吐出着弾部材であるコロ(203)と、ワイパークリーナ(95)の内面に付着した記録液を掻き寄せるための掻き落し機構(204)を構成する掻き落とし部材(204A)、(204B)と、回転体であるコロ(203)に付着した記録液を掻き落とすための掻き落とし部材(205)とを備え、この空吐出受け(94)の下方には吸収体(207)を含む廃液タンク(206)が配置される。
ここで、空吐出受け(94)のワイパークリーナ(95)内面に付着した記録液を掻き寄せるための掻き落とし機構(204)は、掻き落とし部材(204A)、(204B)の下端部をホルダ(201)の下端部に設けた支軸(210)で揺動可能に支持し、これらの掻き落とし部材(204A)、(204B)は連結部材(211)で互いに遊びを持って連結している。
【0214】
そして、カム軸(121)に設けた空吐出着弾部材である回転体としてのコロ(203)の側面に、コロ(203)の回転によって掻き落とし部材(204A)、(204B)に当接可能なピン部材(212)、(212)を設けている。掻き落とし部材(204A)、(204B)は、先端部(204a)をワイパークリーナ(95)の傾斜表面に倣うように傾斜させている。
また、掻き落とし部材(204A)、(204B)の空吐出受け(94)の内壁面と対向する側には揺動時の接触面積を小さくするための凸部(204b)を設けている。
【0215】
このように構成したので、ワイパーブレード(93)のクリーニングを行なったときにワイパークリーナ(95)にワイパーブレード(93)から除去された記録液が付着する。
ここで、カム軸(121)が回転することによって、図10でコロ(203)が矢示E方向に回転すると、コロ(203)のピン部材(212)が掻き落とし部材(204A)、(204B)に当接するので、掻き落とし部材(204A)、(204B)が図10で矢示F、G方向に往復移動する(実線示の位置と破線図示の位置の間)ことになる。
【0216】
この掻き落とし部材(204A)、(204B)の往復移動によって、ワイパークリーナ(95)に付着した記録液が掻き落とし部材(204A)、(204B)の先端部(204a)で1箇所或いは数箇所に掻き寄せられ(集められ)、記録液の塊りが大きくなって、記録液は空吐出受け(94)の内壁面に沿って自重で流れ、下方の廃液タンク(206)に落下する。
すなわち、ワイパーブレード(93)に付着した記録液をワイパークリーナ(95)に押しつけて取り除くワイパークリーニング機構を採用した場合、単に押し付けてワイパーブレード(93)を移動しただけでは、ワイパークリーナ(95)先端に記録液が残ってしまうことになる。
【0217】
特に、使用する記録液の粘度が高いと、ワイパークリーナ(95)先端部に記録液が残り、次回のクリーニング時にワイパーブレード(93)に付着している記録液を取り除くことができなくなることがある。
そこで、粘度の高い記録液を使用した場合でも、ワイパークリーナ(95)に付着した記録液を1カ所あるいは数カ所に集める(寄せる)ことで、ワイパークリーナ(95)に接している面に対する記録液の滴体積が大きくなるため、ワイパークリーナ(95)との接触面から落下(流れ)し易くなり、次回のワイパーブレード(93)のクリーニングを清浄な状態で行なうことができるようになり、ワイパーブレード(93)のクリーニング性が向上する。
【0218】
実験によると、記録液の25℃における粘度が5mPa・s以上になると、クリーナ先端で記録液が留まることが多くなり、次回のクリーニング時にブレードから記録液を除去する性能が低下することが確認された。
そこで、上述した掻き落とし部材(204A)、(204B)を備えたところ、効果的に記録液が下方に流れることを確認できた。
しかも、この掻き落とし機構(204)においては、掻き落とし部材(204A)、(204B)をカム軸(121)に設けた空吐出着弾部材であるコロ(203)の回転によって行なっているので、構成が簡単になる。
【0219】
また、この空吐出受け(94)においては、内部にカム軸(121)で回転される空吐出着弾部材であるコロ(203)を配置しているので、空吐出された液滴のミストの速度を和らげられ、或いはコロ(203)に付着回収されることになる。
これにより、記録液ミストの飛散が防止される。
そして、このコロ(203)に付着した記録液を掻き落とす掻き落とし部材(205)を設けているので、コロ(203)に付着した記録液は掻き落とし部材(205)で掻き落とされて、自重で下方の廃液タンク(206)に落下する。
【0220】
このように、コロ(203)に付着する記録液を掻き落とす部材をコロ(203)の下側で、廃液受け部(廃液タンク)の上方に配置することによって、簡単な構成で低コストにコロに付着した記録液を除去して廃液処理することができる。
なお、キャリッジが走査するシリアル型(シャトル型)インクジェット記録装置に適用した例で説明したが、ライン型ヘッドを備えたライン型インクジェット記録装置にも同様に適用することができる。
また、前記インクジェット記録装置及びインクジェット記録方法は、インクジェット記録方式による各種記録に適用することができ、例えば、インクジェット記録用プリンタ、ファクシミリ装置、複写装置、プリンタ/ファックス/コピア複合機、などに特に好適に適用することができる。
【0221】
(インク記録物)
前記インクジェット記録装置及びインクジェット記録方法により記録されたインク記録物は、記録用メディア上に、前記記録用インクを用いて形成された画像を有してなる。
また、インク記録物は、本発明の前記インクメディアセットにおける記録用メディア上に、前記インクメディアセットにおける記録用インクを用いて形成された画像を有してなる。
【0222】
前記記録用メディアとしては、支持体と前記支持体の少なくとも一方の面に塗工層を有してなり、23℃50%RHにて動的走査吸液計で測定した接触時間100msにおける純水の前記塗工層を有してなる記録用メディアへの転移量が2〜35ml/m2、かつ接触時間400msにおける純水の前記塗工層を有してなる記録メディアへの転移量が3〜40ml/m2である記録用メディアが好適に用いられる。また、前記塗工層を有してなる記録メディアへの純水の転移量が上記範囲内にあれば、他に特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、光沢紙、特殊紙、布、フィルム、OHPシート、汎用印刷紙などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記インク記録物は、高画質で滲みがなく、経時安定性に優れ、各種の印字乃至画像の記録された資料等として各種用途に好適に使用することができる。
【実施例】
【0223】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0224】
(調製例1)
−水溶性高分子化合物水溶液Aの調製−
・構造式(II)で表されるα−オレフィン−無水マレイン酸共重合体(星光PMC株式会社製、T−YP112、オレフィン鎖(R):炭素数20〜24(構造式(II)のRが炭素数18〜22のアルキル基に相当する化合物)、酸価190mgKOH/g、重量平均分子量=10,000) 10.0 質量部
【0225】
・1規定のLiOH水溶液(構造式(1)で表されるα−オレフィン−無水マレイン酸共重合体の酸価の1.2倍量) 17.34質量部
・イオン交換水 72.66質量部
上記混合物を撹拌機で加熱撹拌して、上記構造式(1)で表されるα−オレフィン−無水マレイン酸共重合体を溶解し、微量の不溶物を平均孔径5μmのフィルターで濾過し、水溶性高分子化合物水溶液Aを調製した。
【0226】
(調製例2)
−表面処理ブラック顔料分散液の調製−
CTAB比表面積が150m2/g、DBP吸油量が100ml/100gのカーボンブラック90gを、2.5規定の硫酸ナトリウム溶液3,000mlに添加し、温度60℃、速度300rpmで攪拌し、10時間反応させて酸化処理を行った。
この反応液を濾過し、濾別したカーボンブラックを水酸化ナトリウム溶液で中和し、限外濾過を行った。
【0227】
得られたカーボンブラックを水洗し、乾燥させて、固形分30質量%となるよう純水中に分散させ、充分に撹拌してブラック顔料分散液を得た。
このブラック顔料分散液における顔料分散体の平均粒子径(D50)を測定したところ103nmであった。なお、平均粒子径(D50)の測定は、粒度分布測定装置(日機装株式会社製、ナノトラックUPA−EX150)を用いた。
【0228】
(調製例3)
−マゼンタ顔料含有ポリマー微粒子分散液の調製−
<ポリマー溶液Aの調製>
機械式攪拌機、温度計、窒素ガス導入管、還流管、及び滴下ロートを備えた1Lのフラスコ内を充分に窒素ガス置換した後、スチレン11.2g、アクリル酸2.8g、ラウリルメタクリレート12.0g、ポリエチレングリコールメタクリレート4.0g、スチレンマクロマー4.0g、及びメルカプトエタノール0.4gを混合し、65℃に昇温した。次に、スチレン100.8g、アクリル酸25.2g、ラウリルメタクリレート108.0g、ポリエチレングリコールメタクリレート36.0g、ヒドロキシルエチルメタクリレート60.0g、スチレンマクロマー36.0g、メルカプトエタノール3.6g、アゾビスメチルバレロニトリル2.4g、及びメチルエチルケトン18gの混合溶液を2.5時間かけて、フラスコ内に滴下した。
【0229】
滴下後、アゾビスメチルバレロニトリル0.8g及びメチルエチルケトン18gの混合溶液を0.5時間かけて、フラスコ内に滴下した。65℃で1時間熟成した後、アゾビスメチルバレロニトリル0.8gを添加し、更に1時間熟成した。
反応終了後、フラスコ内にメチルエチルケトン364gを添加し、濃度が50質量%のポリマー溶液Aを800g得た。
【0230】
<顔料含有ポリマー微粒子分散液の調製>
ポリマー溶液Aを28gと、C.I.ピグメントレッド122を42g、1mol/Lの水酸化カリウム水溶液13.6g、メチルエチルケトン20g、及びイオン交換水13.6gを十分に攪拌した後、ロールミルを用いて混練した。
得られたペーストを純水200gに投入し、充分に攪拌した後、エバポレータ用いてメチルエチルケトン及び水を留去し、更に粗大粒子を除くためにこの分散液を平均孔径5.0μmのポリビニリデンフロライドメンブランフィルターにて加圧濾過し、顔料15質量%含有、固形分20質量%のマゼンタ顔料含有ポリマー微粒子分散液を得た。
【0231】
得られたマゼンタ顔料含有ポリマー微粒子分散液におけるポリマー微粒子の平均粒子径(D50)を測定したところ127nmであった。なお、平均粒子径(D50)の測定は、粒度分布測定装置(日機装株式会社製、ナノトラックUPA−EX150)を用いた。
【0232】
(調製例4)
−シアン顔料含有ポリマー微粒子分散液の調製−
調製例3において、顔料としてのC.I.ピグメントレッド122をフタロシアニン顔料(C.I.ピグメントブルー15:3)に変更した以外は、調製例3と同様にして、シアン顔料含有ポリマー微粒子分散液を調製した。
得られたシアン顔料含有ポリマー微粒子分散液におけるポリマー微粒子について、粒度分布測定装置(日機装株式会社製、ナノトラックUPA−EX150)で測定した平均粒子径(D50)は93nmであった。
【0233】
(調製例5)
−イエロー顔料含有ポリマー微粒子分散液の調製−
調製例3において、顔料としてのC.I.ピグメントレッド122をモノアゾイエロー顔料(C.I.ピグメントイエロー74)に変更した以外は、調製例3と同様にして、イエロー顔料含有ポリマー微粒子分散液を調製した。
得られたイエロー顔料含有ポリマー微粒子分散液におけるポリマー微粒子について、粒度分布測定装置(日機装株式会社製、ナノトラックUPA−EX150)で測定した平均粒子径(D50)は76nmであった。
【0234】
(調製例6)
−カーボンブラック顔料含有ポリマー微粒子分散液の調製−
製造例3において、顔料としてのC.I.ピグメントレッド122をカーボンブラック(デグサ社製、FW100)に変更した以外は、調製例3と同様にして、カーボンブラック顔料含有ポリマー微粒子分散液を調製した。
得られたカーボンブラック顔料含有ポリマー微粒子分散液におけるポリマー微粒子について、粒度分布測定装置(日機装株式会社製、ナノトラックUPA−EX150)で測定した平均粒子径(D50)は104nmであった。
【0235】
(調製例7)
−イエロー顔料界面活性剤分散液の調製−
・モノアゾイエロー顔料
(C.I.ピグメントイエロー74、大日精化工業株式会社製) 30.0質量部
・ポリオキシエチレンスチレンフェニルエーテル(ノニオン系界面活性剤、第一工業製薬株式会社製、ノイゲンEA−177、HLB値=15.7) 10.0質量部
・イオン交換水 60.0質量部
【0236】
まず、上記界面活性剤をイオン交換水に溶解し、上記顔料を混合して充分に湿潤したところで、湿式分散機(ダイノーミル KDL A型、WAB社製)に直径0.5mmのジルコニアビーズを充填し、2,000rpmで2時間分散を行い、一次顔料分散体を得た。
次に、一次顔料分散体に水溶性高分子化合物水溶液として、水溶性ポリウレタン樹脂(タケラックW−5661、三井武田ケミカル株式会社製、有効成分35.2質量%、酸価40mgKOH/g、分子量18,000)を4.26質量部添加し、充分に撹拌してイエロー顔料界面活性剤分散液を得た。
【0237】
得られたイエロー顔料界面活性剤分散液における顔料分散体の平均粒子径(D50)を測定したところ62nmであった。なお、平均粒子径(D50)の測定は、粒度分布測定装置(日機装株式会社製、ナノトラックUPA−EX150)を用いた。
【0238】
(実施例1〜7)及び(比較例1〜5)
−記録用インクの作製−
各記録用インクの製造は、以下の手順で行った。
まず、下記表1に示す、水溶性有機溶剤(湿潤剤)、浸透剤、界面活性剤、防カビ剤、及び水を混合し、1時間攪拌を行い均一に混合した。この混合液に対して水分散性樹脂を添加して1時間撹拌し、顔料分散液、消泡剤を添加し、1時間攪拌した。
この分散液を平均孔径5.0μmのポリビニリデンフロライドメンブランフィルターにて加圧濾過し、粗大粒子やごみを除去して、実施例1〜7及び比較例1、2の各記録用インクを作製した。
【0239】
【表1】

【0240】
表1中の略号などは下記の意味を表す。
*1)アクリル−シリコーン樹脂エマルジョン:
昭和高分子株式会社製、ポリゾールROY6312、固形分37.2質量%、平均粒子径171nm、最低造膜温度(MFT)=20℃
*2)ポリウレタンエマルジョン:
DIC社製、ハイドランAPX-101H、固形分45質量%、平均粒子径160nm、最低造膜温度(MFT)=20℃
*3)ゾニールFS−300:
ポリオキシエチレンパーフロロアルキルエーテル(Dupont社製、成分40質量%)
*4)KF−643:
ポリエーテル変性シリコーン化合物(信越化学工業社製、成分100質量%)
*5)Proxel GXL:
1,2−benzisothiazolin−3−oneを主成分とした防カビ剤(アビシア社製、成分20質量%、ジプロピレングリコール含有)
*6)KM−72F:
自己乳化型シリコーン消泡剤(信越シリコーン株式会社製、成分100質量%)
*7)グロス紙1:
PODグロスコート紙<100>(下記<記録用紙(2)>参照)
*8)グロス紙2:
オーロラコート(日本製紙)(下記<記録用紙(1)>参照)
*9)普通紙:
マイペーパー(下記<記録用紙(3)>参照)
【0241】
(記録用メディア)
記録用メディアとして以下のものを使用した。
<記録用紙(1)>
商品名:オーロラコート
(坪量=104.7g/m2、日本製紙株式会社製)
<記録用紙(2)>
商品名:PODグロスコート紙<100>
(坪量=100g/m2、王子製紙株式会社製)
<記録用紙(3)>
商品名:マイペーパー
(坪量=67g/m、株式会社リコー社製)
【0242】
<動的走査吸液計による純水の転移量の測定>
上記の記録用紙(1)〜(3)を使用して、塗工層を塗布した面への純水の転移量を測定した。純水の転移量の測定には動的走査吸液計(協和精工株式会社製のK350シリーズD型)を使用した。
測定結果を下記表2に示す。
【0243】
【表2】

【0244】
次に、以下に示す評価方法にて、実施例1〜7及び比較例1、2の各インクジェット記録用インクを評価した。結果を表1に示す。
【0245】
−印写評価の準備−
温度23±0.5℃、50±5%RHに調整された環境下、インクジェットプリンタ(IPSiO GXe5500、株式会社リコー製)を用い、インクの吐出量が均しくなるようにピエゾ素子の駆動電圧を変動させ、記録用メディアに同じ付着量のインクが付くように設定を行った。
【0246】
<画像濃度>
Microsoft Word2000にて作成した64point文字「■」の記載のあるチャートをMyPaper(株式会社リコー製)に打ち出し、印字面の「■」部をX−Rite939にて測色した。
印字モードはプリンタ添付のドライバで普通紙のユーザー設定より「普通紙−標準はやい」モードを「色補正なし」と改変したモードを使用した。
【0247】
<スミア定着性>
印字後3時間以上経過した後、クロックメータ(東洋精機社製)に装着した白綿布(東洋精機社製)で印字したベタ画像部を10往復させ、白綿布に付着したインクの汚れを目視で観察し、下記基準により評価した。
ランク5・・・汚れが全くない
ランク4・・・汚れがわずかにある
ランク3・・・汚れがあるが、実用上問題なし
ランク2・・・汚れがやや顕著に認められる
ランク1・・・汚れが顕著に認められる
【0248】
<拍車痕の評価>
各画像プリントの拍車痕の程度を目視で観察し、下記基準により評価した。
〔評価基準〕
◎:全く認められない。
○:かすかに認められる。
×:甚だしい拍車痕が認められる。
【0249】
<ビーディング>
各画像プリントのグリーンべた画像部のビーディングの程度を目視で観察し、下記基準
により評価した。
〔評価基準〕
◎:ビーディングの発生無く均一な印刷である。
○:かすかにビーディングの発生が認められる。
×:明確にビーディングの発生が認められる。
【0250】
<光沢度>
Microsoft Word2000(Microsoft社製)を用いて作成したベタ画像部を出力後、アトラス社製光沢度計Micro−Gross60°を用いて、60°光沢を測定した。
<コックリングの発生>
コックリングの発生の確認は、Microsoft Word2000(Microsoft社製)を用いて、全体をベタ画像で埋めるようなチャートを作成し、出力後の紙のカール具合にて、下記基準により評価を行った。
〔評価基準〕
○:以後の排紙に問題ない。
×:両端が巻き上がり、排紙に干渉する。
【0251】
以上のように、本発明は、主にインク吸収性に乏しい、例えば安価で入手可能な一般の商業印刷向け光沢コート紙などの記録用メディアに対して、画像濃度および画像光沢性に優れ、また前記記録用メディアに印刷したインクジェット印刷物において問題となっていた低定着性、コックリングなども解決した高画質な記録物を得ることを特徴とするインクジェット記録用インク−記録用メディアセットの提供を目的とし、これを解決したものである。そして、ノズルからの吐出安定性が良好であり、高品位な画像形成が可能であり、インクカートリッジ、インク記録物、インクジェット記録装置及びインクジェット記録方法に好適に用いることができる。
【産業上の利用可能性】
【0252】
本発明のインクジェット記録用インク−記録用メディアセット及びインクジェット記録方法は、インクジェット記録方式による各種記録に適用することができ、例えば、インクジェット記録用プリンタ、ファクシミリ装置、複写装置、プリンタ/ファックス/コピア複合機、などに特に好適に適用することができる。
【符号の説明】
【0253】
[図1〜図5]
101 装置本体
102 給紙トレイ
103 排紙トレイ
104 インクカートリッジ装填部
105 操作部
111 上カバー
112 前面
115 前カバー
131 ガイドロッド
132 ステー
133 キャリッジ
134 記録ヘッド
135 サブタンク
141 用紙積載部
142 用紙
143 給紙コロ
144 分離パッド
145 ガイド
151 搬送ベルト
152 カウンタローラ
153 搬送ガイド
154 押さえ部材
155 先端加圧コロ
156 帯電ローラ
157 搬送ローラ
158 テンションローラ
161 ガイド部材
171 分離爪
172 排紙ローラ
173 排紙コロ
181 両面給紙ユニット
182 手差し給紙部
201 インクカートリッジ
241 インク袋
242 インク注入口
243 インク排出口
244 カートリッジケース
【0254】
[図6〜図10について]
91 サブシステム
92 キャップ
92a 吸引用キャップ
92b キャップ
92c キャップ
92d キャップ
93 ワイパーブレード
94 空吐出受け
95 ワイパークリーナー
96 クリーナーコロ
111 フレーム
112 キャップホルダ
112A キャップホルダ
112B キャップホルダ
115 キャリッジロック
117 キャリッジロックアーム
118 ワイパークリーナー
119 可撓性チューブ
120 チュービングポンプ(吸引ポンプ)
120a ポンプ軸
121 カム軸
122A キャップカム
122B キャップカム
124 ワイパーカム
125 キャリッジロックカム
126 空吐出着弾部材(回転体コロ)
128 クリーナーカム
131 モーター
131a モーター軸
132 モーターギヤ
133 ポンプギヤ
134 中間ギヤ
135 中間ギヤ
136 中間ギヤ
137 一方向クラッチ
138 中間ギヤ
139 中間ギヤ
140 カムギヤ
141 中間軸
142 ホームポジションセンサ用カム
200 空吐出受け部
203 空吐出着弾部材(回転体コロ)
204 記録液掻き落し機構
204A 掻き落とし部材
204B 掻き落とし部材
204a 掻き落とし部材先端部
204b 凸部
205 掻き落とし部材
206 廃液タンク
207 吸収体
210 支軸
211 連結部材
212 ピン部材
【先行技術文献】
【特許文献】
【0255】
【特許文献1】特開2008−101192号公報
【特許文献2】特開2001−096902号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水、水溶性有機溶剤、界面活性剤及び着色剤を少なくとも含有するインクジェット記録用インクであって、水溶性有機溶剤として、下記一般式(I)で示されるアミド化合物を少なくとも含有することを特徴とするインクジェット記録用インクと、
記録用メディアが、支持体と前記支持体の少なくとも一方の面に塗工層を有してなり、23℃50%RHにて動的走査吸液計で測定した接触時間100msにおける純水の前記塗工層を有してなる記録用メディアへの転移量が2〜35ml/m2、かつ接触時間400msにおける純水の前記塗工層を有してなる記録メディアへの転移量が3〜40ml/m2である記録用メディアとで構成されることを特徴とするインクジェット記録用インク−記録用メディアセット。
【化1】

【請求項2】
前記一般式(I)で示されるアミド化合物の前記インクジェット記録用インク中の含有量が、1〜50質量%であることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録用インク−記録用メディアセット。
【請求項3】
前記着色剤が、表面に少なくとも1種の親水基を有し、分散剤の不存在下で水分散性を示す自己分散型の顔料を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載のインクジェット記録用インク−記録用メディアセット。
【請求項4】
前記着色剤が、顔料と、顔料分散剤と、高分子分散安定化剤とを水に分散した顔料分散体であることを特徴とする請求項1又は2に記載のインクジェット記録用インク−記録用メディアセット。
【請求項5】
前記着色剤が、顔料を含有する水不溶性ビニルポリマー微粒子を水に分散させたポリマーエマルジョンを含むことを特徴とする請求項1又は2に記載のインクジェット記録用インク−記録用メディアセット。
【請求項6】
前記インクジェット記録用インクが、シアンインク、マゼンタインク、イエローインク及びブラックインクから選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載のインクジェット記録用インク−記録用メディアセット。
【請求項7】
少なくとも一方の面に塗工層を有する記録用メディアにインクジェット記録用インクを吐出して画像を記録するインクジェット記録方法であって、
該記録用メディアとして、23℃50%RHにて動的走査吸液計で測定した接触時間100msにおける純水の前記塗工層を有してなる記録用メディアへの転移量が2〜35ml/m2、かつ接触時間400msにおける純水の前記塗工層を有してなる記録用メディアへの転移量が3〜40ml/m2である記録用メディアを用い、
該インクジェット記録用インクとして、水、水溶性有機溶剤、界面活性剤及び着色剤を少なくとも含有するインクジェット記録用インクであって、水溶性有機溶剤として、下記一般式(I)で示されるアミド化合物を少なくとも含有するインクジェット記録用インクを用いることを特徴とするインクジェット記録方法。
【化1】


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−31990(P2013−31990A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−240933(P2011−240933)
【出願日】平成23年11月2日(2011.11.2)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】