説明

インクジェット記録用インクおよびインクジェット記録方法

【目的】 印字品質に優れ、高周波駆動条件下においても吐出安定性に優れ、また、インクジェット記録用インク及び記録方法を提供する。
【構成】 少なくとも水、水溶性染料と5〜20重量%の多価アルコールの低級アルキルエーテル、0.1〜3重量%のアセチレングリコール及び/またはアセチレングリコール誘導体を含むインクであって、0.001〜1.0重量%のベンゾトリアゾールを含むことを特徴とする。さらに、本インクをインク吸収体に含浸させたインク容器から供給し、ノズル面に撥水処理を施したノズルオリフィスから吐出させて記録を行うことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明はカラー印字においても高印字品質を満足し、吐出安定性を改良したインクジェット記録用インクに関し、さらにインクジェット記録方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、インクジェット記録方法に用いるインクとしては染料を水に溶解させたインクが主流を占めている。(以下水性インクと称する。)水性インクは、各種の水溶性染料を水に溶解、必要に応じて各種添加剤を添加して用いられている。しかし、従来の水性インクでは印字後の乾燥が遅く、また、普通紙に対する印字品質も十分満足出来るものでは無かった。特にカラー画像は一般にイエロー、マゼンタ、シアン及黒の各色から形成されるため、このドットをインクジェット記録方式で形成しようとするとき、異なる色同士の領域が接する部分で混色したり、他の色の領域に流れ出してしまい、カラー画像の劣化を起こしてしまう。従って鮮明なカラー画像を得るために、次の様な提案がなされている。例えば、特開昭63−233881号公報にはジエチレングリコールモノブチルエーテルまたはトリエチレングリコールモノブチルエーテルまたはこの混合物を10重量%以上含み、かつ水を20重量%含むインクを特定量以下の吐出量で用いることによって乾燥時間が著しく短くできるため隣接するドット間の混色や、流れ出しを発生させない高画質のカラー画像を実現できることが開示されている。また、米国特許第5196056号明細書にはジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングルコールモノブチルエーテル、アセチレングリコールのエチレンオキサイド付加化合物を含むことで、カラー印字におけるにじみだしを改良できることが開示されている。
【0003】しかし、これらのインクはヘッドのノズル面で広がりやすく、濡れ曲がりを発生したり、水を主成分にしているインクであるため、ノズル面でのインクの増粘や、乾燥によってインクの吐出安定性が非常に悪いという欠点を持っていた。さらに、多価アルコールの低級アルキルエーテルはヘッド、インク容器の材料を溶解、膨潤したり、添加剤の抽出性(以下侵食性と言う)が高いため、インクに異物が発生したり、インクの物性、特に表面張力や濡れ性に大きな影響を及ぼしており、表面張力が低くなりすぎてメニスカスの回復が遅れ高速応答性を劣化させていた。特にインクをウレタンフォームのような吸収体に含浸させるインク容器でヘッドに供給し吐出させる場合、吸収体からの溶出物がインクの特性に大きな影響を与えていた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明はこれらの課題を解決するもので、その目的とするところは、速乾性に優れ、高品位なカラー画像を実現しかつ、高速駆動条件で吐出安定性を満足するインクジェット記録用インクを提供することに有る。さらにウレタンフォームの様なインク吸収体にインクを含浸させたインク容器から供給するインクジェット記録方法であって、高品位な印字を実現し、吐出安定性を満足する記録方法を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明のインクジェット記録用インクは以下の構成を特徴とする。少なくとも水溶性染料と5〜20重量%の多価アルコールの低級アルキルエーテルと0.1〜3重量%のアセチレングリコール及び/またはアセチレングリコール誘導体を含むインクであって、0.001〜1.0重量%のベンゾトリアゾールを含むことを特徴としている。また、このインクをインク吸収体に含浸させたインク容器より供給し、ノズル面に撥水処理を施したノズルオリフィスから吐出させて記録を行うことを特徴とする記録方法である。
【0006】多価アルコールの低級アルキルエーテルは速乾性を改良し、にじみや混色の無い高画質の印字品質を実現する為に添加する。多価アルコールの低級アルキルエーテルの添加量は、5重量%より少ないとカラー画像におけるにじみ出し、混色を改良出来ず、20重量%より多いと、粘度が高くなったり、染料の溶解性が小さいためインクとしての信頼性が劣化する。また、侵食性が高くなり異物発生等によって信頼性が満足できない。従って、好ましい添加量は7〜15重量%で有る。また好ましいアルキルエーテルとしてはブチルエーテルが好ましく、更に好ましくはジエチレングリコール、トリエチレングリコールのブチルエーテルで有る。
【0007】更にインクにアセチレングリコール及び/またはアセチレングリコール誘導体を添加することによって、紙によって印字品質に差のない高品位なカラー記録を実現できる。アセチレングリコールは、一般的には次式に示す構造式で表される物質でn+mが0のものであり、誘導体とは、n+mが30以下のエチレンオキサイド付加化合物をいう。
【0008】
【化1】


【0009】上記構造を有するアセチレングリコールで商品化されている物としてはサーフィノール440、サーフィノール465、サーフィノール82、サーフィノールTG(製造元:Air Product and Chemicals、Inc.、販売元:日信化学工業株式会社)がある。添加量は0.1重量%より少ないとにじみ混色の改良が出来無い紙が有り、3重量%より多いと溶解性が悪く、また粘度が高くなり、インクジェット記録に不適になる。好ましい添加量は0.5〜2重量%である。
【0010】上記インクにベンゾトリアゾールを添加することによって高画質を損なうことなく吐出安定性を改良できる。添加量は0.001重量%より少ないと吐出安定性を満足できる効果が得られず、1.0重量%より多いと溶解性が悪くインクとしての保存性に劣る。添加量として、好ましくは、0.005〜0.5重量%、更に好ましくは0.01〜0.1重量%で有る。
【0011】本発明のインクををさらに説明する。本発明に用いられる水溶性染料は直接染料、酸性染料、食用染料、塩基性染料、反応性染料、分散性染料が挙げられる。特に好ましいものはC.I.ダイレクトレッド2、4、9、23、26、31、39、62、63、72、75、76、79、80、81、83、84、89、92、95、111、173、184、207、211、212、214、218、221、223、224、225、226、227、232、233、240、241、242、243、247、C.I.ダイレクトバイオレット7、9、47、48、51、66、90、93、94、95、98、100、101、C.I.ダイレクトイエロー8、9、11、12、27、28、29、33、35、39、41、44、50、53、58、59、68、86、87、93、95、96、98、100、106、108、109、110、130、132、142、144、161、163、C.I.ダイレクトブルー1、10、15、22、25、55、67、68、71、76、77、78、80、84、86、87、90、98、106、108、109、151、156、158、159、160、168、189、192、193、194、199、200、201、202、203、207、211、213、214、218、225、229、236、237、244、248、249、251、252、264、270、280、288、289、291、C.I.ダイレクトブラック9、17、19、22、32、51、56、62、69、77、80、91、94、97、108、112、113、114、117、118、121、122、125、132、146、154、166、168、173、199、C.I.アシッドレッド35、42、52、57、62、80、82、111、114、118、119、127、128、131、143、151、154、158、249、254、257、261、263、266、289、299、301、305、336、337、361、396、397、C.I.アシッドバイオレット5、34、43、47、48、90、103、126、C.I.アシッドイエロー17、19、23、25、39、40、42、44、49、50、61、64、76、79、110、127、135、143、151、159、169、174、190、195、196、197、199、218、219、222、227、C.I.アシッドブルー9、25、40、41、62、72、76、78、80、82、92、106、112、113、120、127:1、129、138、143、175、181、205、207、220、221、230、232、247、258、260、264、271、277、278、279、280、288、290、326、C.I.アシッドブラック7、24、29、48、52:1、172、C.I.リアクティブレッド3、13、17、19、21、22、23、24、29、35、37、40、41、43、45、49、55、C.I.リアクティブバイオレット1、3、4、5、6、7、8、9、16、17、22、23、24、26、27、33、34、C.I.リアクティブイエロー2、3、13、14、15、17、18、23、24、25、26、27、29、35、37、41、42、C.I.リアクティブブルー2、3、5、8、10、13、14、15、17、18、19、21、25、26、27、28、29、38、C.I.リアクティブブラック4、5、8、14、21、23、26、31、32、34、C.I.ベーシックレッド12、13、14、15、18、22、23、24、25、27、29、35、36、38、39、45、46、C.I.ベーシックバイオレット1、2、3、7、10、15、16、20、21、25、27、28、35、37、39、40、48、C.I.ベーシックイエロー1、2、4、11、13、14、15、19、21、23、24、25、28、29、32、36、39、40、C.I.ベーシックブルー1、3、5、7、9、22、26、41、45、46、47、54、57、60、62、65、66、69、71、C.I.ベーシックブラック8、等が挙げられる。これらの添加量は染料の種類、溶媒成分の種類、要求特性等によって決定されるがインク全重量に対し、0.2〜7重量%、好ましくは0.5〜5重量%の範囲で添加するのがよい。
【0012】本発明には更に目詰まりを防止するために湿潤剤を添加する。湿潤剤としては、グリセリン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ヘキシレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,3プロパンジオール、1,5ペンタンジオール等の高沸点低揮発性の多価アルコール類が用いられ、その他N−メチル2−ピロリドン、1,3ジメチルイミダゾリジノン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等の含窒素有機溶剤、尿素、糖等の固体で吸湿性の高い添加剤等も用いることが出来る。添加量は4〜30重量%が望ましく、好ましくは7〜20重量%で有る。
【0013】本発明のインクジェット記録用インクの成分は上記の通りであるがその他従来公知の水溶性有機溶剤、各種の分散剤、粘度調整剤、蛍光増白剤等を必要に応じて添加することができる。それらの例を以下に示す。メタノール、エタノール、プロパノール等の炭素数1−4のアルキルアルコール等の有機溶剤、セルロース類、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、水溶性樹脂等の水溶性の天然あるいは合成高分子物を粘度調整剤として、更に、緩衝液によるpH調整剤、防カビ剤等を挙げることができる。
【0014】また、記録液を帯電するタイプのインクジェット記録方法に使用される記録液を調合する為には、塩化リチウム、塩化アンモニウム、塩化ナトリウムの無機塩類等の比抵抗調整剤が添加される。
【0015】尚、熱エネルギーの作用によって記録液を吐出させるタイプのインクジェット記録方法に適応する場合には、熱的な物性値(蒸発熱、沸点、融点、比熱、熱膨張係数、熱伝導率等)が調整されることもある。
【0016】本発明のインクジェット記録用インクは、上記の如き成分を混合し溶解させた後、不純物などを濾過して得られる。
【0017】またインク物性としてはヘッドからの安定吐出、ヘッドへの安定インク供給を確保する為に、50mPa・s以下であることが望ましく、さらに望ましくは20mPa・s以下が良い。
【0018】本発明のインクはインクをインク吸収体に含浸させて供給するタイプのインク容器からヘッドに供給する場合、特に効果がある。このようなインク容器はインクジェットプリンタの小型化の為にキャリッジに乗せるタイプのインク容器として既に商品化が進んでいる。一般的には多孔質のフォームを容器に圧縮して固定しその中にインクを含浸させ保持させるものである。インク吸収体に用いるフォームはウレタンフォームが汎用性の高いものである。ウレタンフォームは、ポリエーテル系ポリオールとポリイソシアネートを触媒、発泡剤、整泡剤、およびその他の助剤の存在下に反応させて得られるものであり、多くの添加剤、未反応物を含んでいる。さらにインクとウレタンフォームの接触面積は非常に大きくインクヘ何らかの溶出が発生し、そのためにインクの濡れ性、表面張力が変化する。特に、グリコールエーテルはフォームに対する侵食性も大きく、インク容器から供給されるインクは泡立ちが大きく、泡消えが遅くなったり、液性が変化したり、紙や、各種部材に対する接触角も変化する。この溶出物の影響は特にノズルの濡れを不均一にしたり、濡れ曲がりを誘発し、吐出安定性を劣化させることが確認されているが、本発明のベンゾトリアゾール添加インクによって解決できる。
【0019】また、このインクをノズル面に撥水処理を施したヘッドを用いて記録を行う場合特に、撥水処理効果を損なうことなく、常に高画質のカラー記録と、連続吐出安定性を満足できる記録方法を実現することができる。即ち、ノズル面に撥水処理を施したヘッドを用いたとき多価アルコールの低級アルキルエーテル、アセチレングリコール及び/またはアセチレングリコールの誘導体を含む従来のインクでは撥水性を持続できなかったが、本インクを使用することによって、撥水処理の本来の効果を得ることができる。
【0020】撥水処理は、フッ素系高分子をコーティングしたり、ニッケル−フッ素系高分子の共析メッキ等によって実施できる。
【0021】
【実施例】本発明のインクジェット記録用インク及びインクジェット記録方法について以下に説明する。
【0022】まず、本発明のインクの実施例を示す。組成比の数値の単位は、すべてwt%である。
【0023】実施例1(ブラックインクB) <組成比>・C.I.タ゛イレクトフ゛ラック 154 5・トリエチレンク゛リコールモノフ゛チルエーテル(TEG-mBE) 10・シ゛エチレンク゛リコール 8・サーフィノール465 0.8・Proxel XL-2:防腐剤(ZENECA(株)製) 0.3・ヘ゛ンソ゛トリアソ゛ール:腐食防止剤 0.005(関東化学(株)製)
・超純水 75.895計 100(イエローインクY) <組成比>・C.I.タ゛イレクトイエロー 132 2・トリエチレンク゛リコールモノフ゛チルエーテル(TEG-mBE) 10・シ゛エチレンク゛リコール 18・サーフィノール465 0.8・Proxel XL-2:防腐剤(ZENECA(株)製) 0.3・ヘ゛ンソ゛トリアソ゛ール:腐食防止剤 0.005(関東化学(株)製)
・超純水 68.895計 100(マゼンタインクM) <組成比>・C.I.アシット゛レット゛ 289 2・トリエチレンク゛リコールモノフ゛チルエーテル(TEG-mBE) 10・シ゛エチレンク゛リコール 19・サーフィノール465 0.8・Proxel XL-2:防腐剤(ZENECA(株)製) 0.3・ヘ゛ンソ゛トリアソ゛ール:腐食防止剤 0.005(関東化学(株)製)
・超純水 67.895計 100(シアンインクC) <組成比>・C.I.タ゛イレクトフ゛ルー 199 3.5・トリエチレンク゛リコールモノフ゛チルエーテル(TEG-mBE) 10・シ゛エチレンク゛リコール 15・サーフィノール465 0.8・Proxel XL-2:防腐剤(ZENECA(株)製) 0.3・ヘ゛ンソ゛トリアソ゛ール:腐食防止剤 0.005(関東化学(株)製)
・超純水 70.395計 100実施例2〜実施例5本発明の実施例2〜実施例5のインクの組成を表1に示す。
【0024】
【表1】


【0025】実施例6〜実施例9本発明の実施例6〜実施例9のインクの組成を表2に示す。
【0026】
【表2】


【0027】次に本発明の比較例について説明する。
【0028】比較例1〜比較例3のインク組成を表3に示す。
【0029】
【表3】


【0030】比較例1は、実施例2の組成でベンゾトリアゾールを添加しないインクである。
【0031】比較例2は、実施例3の組成でベンゾトリアゾールの添加量が1.5重量%のインクである。
【0032】比較例3は、実施例4の組成でベンゾトリアゾールの添加量が0.0005重量%のインクである。
【0033】上記インクの各成分を混合して60℃で2時間攪拌した後、0.8μm径のメンブランフィルタを用い、2kg/cm2 の圧力で加圧濾過し、インクを得た。
【0034】次に本発明の記録方法に用いるヘッド及びインク容器について説明する。本発明に用いるヘッドのノズルプレートはSUSの80μmにノズル穴を設け、さらにニッケル−ポリテトラフルオロエチレンの共析メッキを施したノズルプレートである。
【0035】さらにヘッドにインクを供給するインク容器は、ポリエーテル系のポリオールとイソシアネートを反応させてえられるウレタンフォームを1.6倍の圧縮率でポリスチレンで形成する容器に圧入し、インクを充填、含浸させてたものである。
【0036】インクジェット記録は吐出ノズル径30μm、圧電素子駆動電圧20V、駆動周波数5.5kHz、解像度360ドット/インチ、インク吐出量0.05μgに調整した試作48ノズルインクジェット評価機を用いて、PPC用紙(ゼロックス社登録商標PPC用紙、リコー社登録商標RICOPY6200)、再生紙(本州製紙登録商標やまゆり)、ボンド紙(ミード社登録商標ギルバートボンド25%コットン紙)、上質紙(王子製紙登録商標OK上質紙L)に1ライン塗りつぶし(以下ベタ印字と称する)、アルファベット文字等を印字した。
【0037】評価項目A.混色印字評価任意のインクを用いたベタ印字に続けてそのすぐ下に接するように他のインクを用いたベタ印字をした際の隣接した境界部を目視により観察する。
【0038】評価結果は、次のように分類した。
【0039】・印字品質に紙による差はほとんど無く、混色にじみ、ひげが観察されない ・・・◎・印字品質に紙による差が多少見られるが、混色にじみ、ひげは気にならない ・・・○・印字品質に紙による差があり、紙によっては、混色にじみ、ひげが観察される ・・・△・印字品質に紙による差が有り、どの紙においても混色にじみ、ひげが観察される・・・×B.吐出安定性評価B1.連続吐出安定性評価常温での連続印字中のドット抜けおよびインクの飛び散りの有無を観察し、10回以上発生するまでの時間を調査する。
【0040】評価結果は、次のように分類した。
【0041】・48時間以上ドット抜けまたはインクの飛び散りが10回発生しない ・・・◎・24〜48時間の内にドット抜けまたはインクの飛び散りが10回発生する ・・・○・1〜24時間の内にドット抜けまたはインクの飛び散りが10回発生する ・・・△・1時間以内にドット抜けまたはインクの飛び散りが10回以上発生する ・・・×B2.高速応答性評価駆動周波数を10kHzとし、C1と同様の評価を行う。
【0042】評価結果の分類は、C1に準じる。
【0043】B3.間欠印字吐出安定性評価1ライン印字を行った後、一定時間印字を休止し、次の1ドット目がドット抜けまたは飛行曲がりを起こすまでの時間を測定する。
【0044】評価結果は、次のように分類した。
【0045】・30秒以上ドット抜けまたは飛行曲がりが観察されない ・・・◎・20〜30秒の内にドット抜けまたは飛行曲がりが観察される ・・・○・5〜20秒の内にドット抜けまたは飛行曲がりが観察される ・・・△・5秒未満にドット抜けまたは飛行曲がりが観察される ・・・×C.撥水処理の持続性評価ニッケル−ポリテトラフルオロエチレンの共析メッキを施したノズルプレートを、インクに40℃で15日間どぶ漬けする。共析メッキ面の浸漬前後の接触角を測定する。接触角の測定は静的接触角形CA−D(協和界面科学(株))を用いて30秒後の値をデータとし、放置前の値から放置後の値を差引した。
【0046】評価結果は次のように分類した。
【0047】
・放置前後の接触角の差が5度以内 ・・・◎・放置前後の接触角の差が10度以内 ・・・○・放置前後の接触角の差が10度を越える・・・×D.インクの保存安定性インクをガラス容器にいれ、密閉し、60℃及び、−30℃の環境に7日間放置し放置前後の物性、及び異物の発生を確認した。
【0048】評価結果は次のように分類した。
【0049】・放置前後で物性の変化、及び、異物の発生が無い。 ・・・○・放置前後で物性の変化、または異物の発生がある。 ・・・×各インクの評価結果を表4に示す。
【0050】
【表4】


【0051】各評価項目の評価結果によれば、実施例1〜実施例9のインク組成物は印字品質、吐出安定性および撥水処理の持続性、インクの保存安定性に優れていた。
【0052】比較例1〜比較例3についても実施例と同様にA〜Dの評価を行ったところ、印字品質、吐出安定性、撥水処理持続性、インク保存安定性のいずれかにおいて十分な結果が得られなかった。
【0053】
【発明の効果】以上説明したように、本発明のインク組成物によれば、インクジェット記録方法に用いるインクとして、印字品質、吐出安定性および撥水処理の持続性、インクの保存性に優れた効果を有する。また、本発明のインクをウレタンフォームに含浸させたインク容器から撥水処理を施したヘッドに供給しても、ノズルの撥水性を損なうこと無く、常に飛行曲がりの無い吐出安定性に優れた印字を実現することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 少なくとも水溶性染料と5〜20重量%の多価アルコールの低級アルキルエーテル、0.1〜3重量アセチレングリコール及/またはアセチレングリコール誘導体を含むインクであって、0.001〜1.0重量%のベンゾトリアゾールを含むことを特徴とするインクジェット記録用インク。
【請求項2】 多価アルコールの低級アルキルエーテルがブチルエーテルであることを特徴とする請求項1記載のインクジェット記録用インク。
【請求項3】 ベンゾトリアゾールの添加量が0.005〜0.5重量%で有ることを特徴とする請求項1記載のインクジェット記録用インク。
【請求項4】 少なくとも水溶性染料、5〜20重量%の多価アルコールの低級アルキルエーテル、0.1〜3重量アセチレングリコール及/またはアセチレングリコール誘導体、0.001〜1.0重量%のベンゾトリアゾールを含む記録用インクをインク吸収体に含浸させたインク容器から供給し、ノズル面に撥水処理を施したノズルオリフィスから吐出させて記録を行うことを特徴とするインクジェット記録方法。
【請求項5】 撥水処理がニッケル-フッ素系高分子の共析メッキであることを特徴とする請求項4記載のインクジェット記録方法。
【請求項6】 前記インク吸収体がウレタンフォームであることを特徴とする請求項4記載のインクジェット記録方法。