説明

インクジェット記録用インクセット及びインクジェット記録方法

【課題】生産性に優れ、得られた硬化膜の延伸性に優れ、かつ、色相に優れ粒状性が低減された高画質の画像が得られるインクジェット記録用インクセットを提供すること。
【解決手段】少なくとも1対の同じ色相を有する濃色インク及び淡色インクを含有し、前記濃色インク及び前記淡色インクがいずれも(成分A)ラジカル重合性化合物、(成分B)光重合開始剤、及び、(成分C)顔料、を含むインク組成物であり、前記ラジカル重合性化合物として、単官能モノマー及び多官能モノマーを含有し、前記濃色インク中の単官能モノマー/多官能モノマーの重量比(X)と前記淡色インク中の単官能モノマー/多官能モノマーの重量比(Y)が、X>Yの関係を満たすことを特徴とするインクジェット記録用インクセット。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット記録用インクセット及びインクジェット記録方法に関する。
【背景技術】
【0002】
画像データ信号に基づき、紙などの被記録媒体に画像を形成する画像記録方法として、電子写真方式、昇華型及び溶融型熱転写方式、インクジェット方式などがある。
インクジェット方式は、印刷装置が安価であり、かつ、印刷時に版を必要とせず、必要とされる画像部のみにインク組成物を吐出し被記録媒体上に直接画像形成を行うため、インク組成物を効率良く使用でき、特に小ロット生産の場合にランニングコストが安い。さらに、騒音が少なく、画像記録方式として優れており、近年注目を浴びている。
中でも、紫外線などの放射線の照射により硬化可能なインクジェット記録用インク組成物(放射線硬化型インクジェット記録用インク組成物)は、紫外線などの放射線の照射によりインク組成物の成分の大部分が硬化するため、溶剤系インク組成物と比べて乾燥性に優れ、また、画像がにじみにくいことから、種々の被記録媒体に印字できる点で優れている。
かかるインクジェット記録方法においてインク組成物に紫外線などの放射線を照射する方法としては、これまでに種々の方法が提案されている(例えば特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−208190号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、生産性(硬化感度)に優れ、得られた硬化膜の延伸性に優れ、かつ、色相に優れ粒状性が低減された高画質の画像が得られるインクジェット記録用インクセットを提供することである。更に、本発明の他の課題は、前記インクジェット記録用インクセットを用いるインクジェット記録方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題は以下の手段(1)及び(10)により解決された。好ましい実施態様(2)〜(9)と共に列記する。
(1)少なくとも1対の同じ色相を有する濃色インク及び淡色インクを含有し、前記濃色インク及び前記淡色インクがいずれも(成分A)ラジカル重合性化合物、(成分B)光重合開始剤、及び、(成分C)顔料、を含むインク組成物であり、前記ラジカル重合性化合物として、単官能モノマー及び多官能モノマーを含有し、前記濃色インク中の単官能モノマー/多官能モノマーの重量比(X)と前記淡色インク中の単官能モノマー/多官能モノマーの重量比(Y)が、X>Yの関係を満たすことを特徴とするインクジェット記録用インクセット、
(2)X/Yが1.2以上5以下である、(1)に記載のインクジェット記録用インクセット、
(3)前記インク組成物が、(成分B)光重合開始剤として、(成分B−1)チオキサントン系光重合開始剤を含む、(1)又は(2)に記載のインクジェット記録用インクセット、
(4)前記濃色インク中のチオキサントン系光重合開始剤の濃度が前記淡色インク中のチオキサントン系光重合開始剤の濃度より大きい、(3)に記載のインクジェット記録用インクセット、
(5)前記濃色インク及び前記淡色インクがいずれも、(成分B)光重合開始剤として、さらに(成分B−2)α−アミノアルキルフェノン化合物及び/又は(成分B−3)アシルフォスフィン化合物を含む、(3)又は(4)に記載のインクジェット記録用インクセット、
(6)前記濃色インク中の(成分C)顔料の濃度が、前記淡色インク中の(成分C)顔料の濃度の3倍以上である、(1)〜(5)のいずれか1つに記載のインクジェット記録用インクセット、
(7)前記単官能モノマーとしてN−ビニルカプロラクタムを含有する、(1)〜(6)のいずれか1つに記載のインクジェット用インクセット、
(8)前記多官能モノマーとしてアルキレンオキシド基を有する(メタ)アクリレートを含有する、(1)〜(7)のいずれか1つに記載のインクジェット記録用インクセット、
(9)380nm以上420nmの波長領域に発光ピーク波長を有するLED硬化用である、(1)〜(8)のいずれか1つに記載のインクジェット記録用インクセット、
(10)(1)〜(8)のいずれか1つに記載のインクジェット記録用インクセットにより印刷する工程、及び、380nm以上420nmの波長領域に発光ピーク波長を有するLEDによりインクを硬化する工程を含むことを特徴とする、インクジェット記録方法。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、生産性(硬化感度)に優れ、得られた硬化膜の延伸性に優れ、かつ、色相に優れ粒状性が低減された高画質の画像が得られるインクジェット記録用インクセットを提供することができた。
【発明を実施するための形態】
【0007】
(1)インクジェット記録用インクセット
本発明のインクジェット記録用インクセットは、少なくとも1対の同じ色相を有する濃色インク及び淡色インクを含有し、前記濃色インク及び前記淡色インクがいずれも(成分A)ラジカル重合性化合物、(成分B)光重合開始剤、及び、(成分C)顔料、を含むインク組成物であり、前記ラジカル重合性化合物として、単官能モノマー及び多官能モノマーを含有し、前記濃色インク中の単官能モノマー/多官能モノマーの重量比(X)と前記淡色インク中の単官能モノマー/多官能モノマーの重量比(Y)が、X>Yの関係を満たすことを特徴とする。
硬化膜の色相は、開始剤又はそれらの分解物により変化してしまうことがあり、その影響は淡色インクを使用する場合により顕著になる。上記の関係を満たすことにより、硬化性を損なわずに淡色インク中の開始剤量を削減することができる。また上記の濃淡インクを併用することにより、優れた延伸性及び粒状性を確保することができる。
以下に本発明を詳細に説明する。
【0008】
(インク組成物)
まず、本発明のインクジェット記録用インクセットを構成するインク組成物について説明する。
本発明のインクジェット記録用インクセットを構成するインク組成物は、少なくとも1対の同じ色相を有する濃色インク及び淡色インクを含有する。ここで、「同じ色相」とは、多色のインクジェット記録をする際に使用されるインク組成物の色相が同じであることを意味する。すなわち、シアン(C)、マゼンタ(M)、及びイエロー(Y)よりなる減色法3原色インクの色相、オレンジ、グリーン、バイオレットなどの特色インクの色相、又は無彩色である黒色(B)インクの色相が同じであることを意味し、実質的に同色であればよい。また、濃色の黒色インクと実質的に無彩色の灰色インクとが1対であってもよい。白色インクは、同じ色相を有する1対のインク組成物の対象とはならない。
濃色インクと淡色インクにより構成される1対のインク組成物の色相は、画像を形成する際に、粒状性が目立つCMYBから選ばれることが好ましく、この中でも粒状性が特に顕著となるC及び/又はMであることがより好ましい。
本発明のインクセットは、同じ色相を有し、顔料濃度の異なる濃色インク及び淡色インクの少なくとも2種を1対として含有する。濃度の異なる3種以上のインク組成物を含有してもよい。
また、1対の濃色インク及び淡色インクを構成しない色相のインクであっても、通常の濃度のインク組成物を含むインクジェット記録用インクセットが好ましく使用される。特にフルカラーの画像を形成するためには、CMYBの4色を含むインクセットであることが好ましい。
【0009】
同色の前記濃色インク及び前記淡色インクは、いずれもラジカル重合性化合物を含有する。前記ラジカル重合性化合物は、重合開始ラジカルにより連鎖的に付加重合する化合物である。ラジカル重合性化合物は、分子量が1,000以下(「低分子」ともいう。)のモノマーと1,000を超える(「高分子」ともいう。)オリゴマー・ポリマーに大別され、また、前者はラジカル重合性基が1分子内に1つしか存在しない単官能モノマーと、ラジカル重合性基が1分子内に2つ以上存在する多官能モノマーとに大別される。また、重合性モノマーの分子量は、750以下であることが好ましい。従って、「単官能モノマー」とは、ラジカル重合性基を分子内に1つしか有しない低分子化合物をいい、多官能モノマーとは、ラジカル重合性基を分子内に2つ以上有する低分子化合物をいう。
本発明に使用するインク組成物は、前記ラジカル重合性化合物として、低分子の単官能モノマー、及び、低分子の多官能モノマーを必須成分として含有する。単官能モノマーと多官能モノマーの合計は、ラジカル重合性化合物の80重量%以上であることが好ましく、90重量%であることがより好ましい。
【0010】
本発明に使用するインク組成物は、任意成分として、ラジカル重合性のオリゴマー又はポリマーを含有することが好ましく、多官能のオリゴマーを含有することがより好ましい。ここで、「オリゴマー」とは、分子量が1,000を超え、10,000以下の化合物をいう。
単官能モノマー及び多官能モノマーの具体例は、後に詳しく説明する。
【0011】
前記濃色インク中の単官能モノマー/多官能モノマーの重量比(X)と前記淡色インク中の単官能モノマー/多官能モノマーの重量比(Y)が、X>Yの関係を満たす。
また、X/Yは、1.2以上であることが好ましく、1.2以上5以下であることがより好ましい。
【0012】
(成分A)ラジカル重合性化合物
本発明のインクジェット記録用インクセットに含有されるインク組成物は、重合性化合物(以下、「成分A」ともいう。)を含有する。成分Aは、ラジカル重合性単官能モノマー(「成分Am」ともいう。)及び多官能モノマー(「成分Ap」ともいう。)を含有する。
上記単官能モノマーは、好ましくはエチレン性不飽和基を分子内に1つのみ有し、分子量が1,000以下のモノマーの中から任意に選択できる。単官能モノマー(成分Am)には、環状の無水マレイン酸、非環状の(メタ)アクリル酸エステルが含まれる。成分Amとして、(成分Am1)N−ビニル化合物、(成分Am2)芳香族基を有する単官能(メタ)アクリレート化合物、が好ましく例示できる。
【0013】
インク組成物中におけるラジカル重合性化合物の総含有量は、インク組成物の全重量に対して(「インク組成物中」又は「インク中」と同義である。)40〜98重量%であることが好ましく、50〜95重量%であることがより好ましい。
以下、単官能モノマー及び多官能モノマーについて説明する。
【0014】
(成分Am)ラジカル重合性単官能モノマー
本発明のインク組成物は、ラジカル重合性単官能モノマー(以下、単に「単官能モノマー」ともいい、「成分Am」とも標記する。)を含有する。この単官能ラジカル重合性モノマーは、エチレン性不飽和結合を分子内に1つのみ有する化合物であることが好ましい。
単官能モノマーは、1種のみを用いてもよく、また、目的とする特性を達成するために任意の比率で2種以上を併用してもよい。
【0015】
成分Amとしては、アクリレート類、メタクリレート類、ビニルオキシ化合物、N−ビニル化合物、エチレン性不飽和カルボン酸化合物、アクリルアミド類及びメタクリルアミド類よりなる群より選択された単官能モノマーを含有することが好ましく、アクリレート類、メタクリレート類、N−ビニル基を有する環状化合物、エチレン性不飽和カルボン酸化合物、及び、アクリルアミド類及びメタクリルアミド類よりなる群から選ばれた単官能モノマーを含有することがより好ましい。なお、「アクリレート」、「メタクリレート」の双方あるいはいずれかを指す場合「(メタ)アクリレート」と記載し、また、「アクリル」、「メタクリル」の双方あるいはいずれかを指す場合「(メタ)アクリル」と、記載することがある。
【0016】
(N−ビニル基を有し、環状構造を有する基を有する化合物)
本発明において、成分Am(ラジカル重合性単官能モノマー)として、N−ビニル基を有し、環状構造を有する基を有する化合物を使用することが好ましい。中でも、N−ビニルカルバゾール、1−ビニルイミダゾール、N−ビニルラクタム類を使用することが好ましく、N−ビニルラクタム類を使用することが更に好ましい。
本発明に用いることができるN−ビニルラクタム類の好ましい例として、下記式(Am1)で表される化合物が挙げられる。
【0017】
【化1】

【0018】
式(Am1)中、nは2〜6の整数を表し、インク組成物が硬化した後の柔軟性、支持体との密着性、及び、原材料の入手性の観点から、nは3〜5の整数であることが好ましく、nが3又は5であることがより好ましく、nが5である、すなわちN−ビニルカプロラクタムであることが特に好ましい。N−ビニルカプロラクタムは安全性に優れ、汎用的で比較的安価に入手でき、特に良好なインク硬化性、及び硬化膜の支持体への密着性が得られるので好ましい。
【0019】
また、前記N−ビニルラクタム類は、ラクタム環上にアルキル基、アリール基等の置換基を有していてもよく、飽和又は不飽和環構造を連結していてもよい。
前記N−ビニルラクタム類は、インク組成物中に1種のみ含有されていてもよく、複数種含有されていてもよい。
本発明のインク組成物は、N−ビニルラクタム類を、インク中に、5〜40重量%含有することが好ましく、15〜35重量%含有することがより好ましい。
【0020】
(成分Am2)芳香族基を有する単官能(メタ)アクリレート化合物
本発明に用いることができる他の単官能モノマーとして下記式(Am2)で表される芳香族基を有する単官能(メタ)アクリレート化合物が挙げられる。
【0021】
【化2】

【0022】
前記式(Am2)において、R1は水素原子、又は、メチル基を表す。
式(Am2)におけるX1は、式(Am2)に示すエチレン性不飽和二重結合に、カルボニル基の炭素原子で結合した(−C(O)O−)又は(−C(O)NH−)を含む二価の連結基を表し、この二価の連結基は、更にエーテル結合(−O−)、エステル結合(−C(O)O−若しくは−OC(O)−)、アミド結合(−C(O)NH−若しくは−NHC(O)−)、カルボニル結合(−C(O)−)、分岐を有していてもよい炭素数20以下のアルキレン基、又は、これらを組み合わせた基が結合してもよい。
前記二価の連結基は、−C(O)O−、−C(O)NH−、又は、−C(O)O−若しくは−C(O)NH−とエーテル結合、エステル結合若しくは炭素数20以下のアルキレン基、これらを2以上組み合わせた基とを連結した基であることがより好ましい。
式(Am2)におけるR2は、エチレン性不飽和基を有しない、少なくとも1つ以上の環状構造を有する基であり、単環芳香族基及び/又は多環芳香族基を含む芳香族基、並びに、シクロアルカン骨格、アダマンタン骨格及びノルボルナン骨格を有する脂環式炭化水素基を表す。また、前記の芳香族基及び脂環炭化水素基の環状構造には、O、N、S等のヘテロ原子を含んでいてもよい。
【0023】
式(Am2)においてR2で表される芳香族基として好ましいものは、単環芳香族であるフェニル基のほか、2〜4つの環を有する多環芳香族基が例示できる。
前記多環芳香族基として具体的には、ナフチル基、アントリル基、1H−インデニル基、9H−フルオレニル基、1H−フェナレニル基、フェナントレニル基、トリフェニレニル基、ピレニル基、ナフタセニル基、テトラフェンイル基、ビフェニレニル基、as−インダセニル基、s−インダセニル基、アセナフチレニル基、フルオランテニル基、アセフェナントリレニル基、アセアントリレニル基、クリセニル基、プレイアデニル基等が好ましく挙げられる。
【0024】
これらの芳香族基は、O、N、S等のヘテロ原子を含む芳香族複素環基であってもよい。具体的には、フリル基、チエニル基、1H−ピロリル基、2H−ピロリル基、1H−ピラゾリル基、1H−イミダゾリル基、イソオキサゾリル基、イソチアゾリル基、ピリジル基、ピリダジニル基、ピリミジニル基、ピラジニル基、トリアゾイル基、テトラゾイル基等の単環芳香族複素環基が挙げられる。
また、チアントレニル基、ベンゾフラニル基、イソベンゾフラニル基、クロメニル基、イソクロメニル基、キサンテニル基、フェノキサチイニル基、インドリジニル基、イソインドリル基、インドリル基、インダゾリル基、プリニル基、キノリジニル基、イソキノリル基、キノリル基、フタラジニル基、ナフチリジニル基、キノキサリニル基、キナゾリニル基、シンノリニル基、プテリジニル基、カルバゾリル基、β−カルボリイル基、フェナントリジニル基、アクリジニル基、ペリミジニル基、フェナントロリニル基、フェナジニル基、フェノチアジニル基、フェノキサジニル基、ピロリジニル(pyrrolizinyl)基等の多環芳香族複素環基が挙げられる。
前記芳香族基は、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、アミノ基、メルカプト基、シロキサン基、炭素数30以下の炭化水素基等の置換基を1又は2以上有していてもよい。例えば無水フタル酸や無水フタルイミドのように芳香族基が有する2以上の置換基でO、N、S等のヘテロ原子を含む環状構造を形成してもよい。
【0025】
また、式(Am2)におけるR2は、脂環式炭化水素基でもよい。また、O、N、Sなどのヘテロ原子を含む脂環式炭化水素基を有する基でもよい。
脂環式炭化水素基は、3〜12員環のシクロアルカン類又はこれらのシクロアルカン類が2以上縮合した環構造を有する基でもよい。これらの中でも、シクロヘキシル基、シクロペンチル基、シクロヘプチル基、イソボロニル基、ノルボルニル基、アダマンチル基、ジシクロペンタニル基、ジシクロペンテニル基、トリシクロデカニル基等が好ましく例示できる。
前記O、N、Sなどのヘテロ原子を含む脂環式炭化水素基は、具体的には、テトラヒドロフリル基、ピロリジニル(pyrrolidinyl)基、ピラゾリジニル基、イミダゾリジニル基、イソオキサゾリジニル基、ピラニル基、チオピラニル基、イソチアゾリジニル基、ピペリジニル基、ピペラジニル基、モルフォリノ基、チオモルフォリノ基などが例示できる。
これらの脂環式炭化水素基及びヘテロ単環を有する脂環式炭化水素基は、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、アミノ基、メルカプト基、シロキサン基、更に置換基を有していてもよい総炭素数30以下の炭化水素基若しくはO、N、S等のヘテロ原子を含む複素環基、又は、二価の置換基としてオキシ基(=O)であることが好ましい。
【0026】
また、式(Am2)のR2は、下記式(I)に示すアダマンタン骨格を有する基又は式(II)に示すノルボルナン骨格を有する脂環式炭化水素基でもよい。
【0027】
【化3】

【0028】
式(I)又は式(II)におけるR3及びR4は、それぞれ独立に置換基を表し、各脂環式炭化水素構造上の任意の位置で結合することができる。また、q個存在するR3、及び、r個存在するR4はそれぞれ同じであっても、異なっていてもよい。
q個存在するR3、及び、r個存在するR4は、それぞれ独立に一価又は多価の置換基であってもよく、一価の置換基として水素原子、ヒドロキシル基、置換若しくは無置換のアミノ基、メルカプト基、シロキサン基、更に置換基を有していてもよい総炭素数30以下の炭化水素基若しくは複素環基、又は、二価の置換基としてオキシ基(=O)であることが好ましい。
3の置換数qは0〜5の整数を表し、また、R4の置換数rは0〜5の整数を表す。
また、式(I)におけるアダマンタン骨格中の一炭素原子をカルボニル結合(−C(O)−)及び/又はエステル結合(−C(O)O−)で置換してもよく、式(II)におけるノルボルナン骨格中の一炭素原子をエーテル結合(−O−)及び/又はエステル結合(−C(O)O−)で置換してもよい。
【0029】
式(II)に示すノルボルナン骨格は、式(III)に示すような環状炭化水素構造を有していてもよい。式(III)におけるnは、環状炭化水素構造を表し、その両端はノルボルナン骨格の任意の位置で置換していてもよく、単環構造であっても、多環構造であってもよく、また、前記環状炭化水素構造として炭化水素結合以外に、カルボニル結合(−C(O)−)及び/又はエステル結合(−C(O)O−)を含んでいてもよい。
【0030】
【化4】

【0031】
前記式(III)で表される環状構造としては、式(IV)、式(V)又は式(VI)で表される構造であることが好ましい。
【0032】
【化5】

【0033】
式(IV)、式(V)及び式(VI)中、R5、R6及びR7はそれぞれ独立に置換基を表し、s、t及びuはそれぞれ独立に0〜5の整数を表し、また、s個存在するR5、t個存在するR6、及び、u個存在するR7はそれぞれ同じであっても、異なっていてもよい。
式(Am2)のX1は、式(IV)、式(V)又は式(VI)における下記に示す各脂環式炭化水素構造上の任意の位置で結合することができる。
式(IV)、式(V)又は式(VI)におけるR5、R6及びR7はそれぞれ独立に置換基を表し、式(IV)、式(V)又は式(VI)における下記各脂環式炭化水素構造上の任意の位置で結合することができる。R5、R6及びR7における置換基は、式(I)〜式(III)のR3及びR4における置換基と同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0034】
【化6】

【0035】
本発明において、単官能ラジカル重合性モノマーとしては、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、ピリジニル基、テトラヒドロフルフリル基、ピペリジニル基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基、シクロヘプチル基、イソボロニル基、トリシクロデカニル基等の環状構造を有する基を有するものが好ましく挙げられる。
【0036】
本発明に用いることができる単官能モノマーとして、好ましくは、ノルボルニル(メタ)アクリレート、イソボロニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘプチル(メタ)アクリレート、シクロオクチル(メタ)アクリレート、シクロデシル(メタ)アクリレート、ジシクロデシル(メタ)アクリレート、トリメチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、4−t−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、アクリロイルモルフォリン、2−ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド(EO)変性クレゾール(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性テトラヒドロフルフリルアクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールベンゾエート(メタ)アクリレート、パラクミルフェノキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、N−フタルイミドエチル(メタ)アクリレート、ペンタメチルピペリジル(メタ)アクリレート、テトラメチルピペリジル(メタ)アクリレート、N−シクロヘキシルアクリルアミド、N−(1,1−ジメチル−2−フェニル)エチルアクリルアミド、N−ジフェニルメチルアクリルアミド、N−フタルイミドメチルアクリルアミド、N−(1,1’−ジメチル−3−(1,2,4−トリアゾール−1−イル))プロピルアクリルアミド、5−(メタ)アクリロイルオキシメチル−5−エチル−1,3−ジオキサシクロヘキサン、アクリル酸、メタクリル酸等を例示できる。これらの中でも、フェノキシエチル(メタ)アクリレート及びイソボロニル(メタ)アクリレートを好ましく例示できる。
【0037】
更に、本発明に用いることができる単官能モノマーの好ましい具体例を以下のM−1〜M−55に示す。
なお、下記例示化合物の一部において、炭化水素鎖を炭素(C)及び水素(H)の記号を省略した簡略構造式で記載する。また、Meはメチル基を表す。
【0038】
【化7】

【0039】
【化8】

【0040】
【化9】

【0041】
【化10】

【0042】
【化11】

【0043】
(成分Am3)式(Am3)で表される化合物
本発明のインク組成物は、(成分Am3)として式(Am3)で表される単官能モノマーを含有することが好ましい。
(成分Am3)式(Am3)で表される化合物を含有することにより、被記録媒体(特にポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート(PET)、アクリル樹脂)と画像との密着性に優れる。
【0044】
【化12】

(式(Am3)中、R1、R2及びR3はそれぞれ独立に、水素原子、メチル基、又は、エチル基を表し、X2は単結合、又は、二価の連結基を表す。)
【0045】
1としては、水素原子又はメチル基が好ましく、水素原子がより好ましい。
2及びR3としてはそれぞれ独立に、水素原子、メチル基、又は、エチル基が好ましく、水素原子がより好ましく、R2及びR3が共に水素原子であることが更に好ましい。
2における二価の連結基としては、本発明の効果を大きく損なうものでない限り特に制限はないが、二価の炭化水素基、又は、炭化水素基及びエーテル結合を組み合わせた二価の基であることが好ましく、二価の炭化水素基、ポリ(アルキレンオキシ)基、又は、ポリ(アルキレンオキシ)アルキル基であることがより好ましい。また、前記二価の連結基の炭素数は、1〜60であることが好ましく、1〜20であることがより好ましい。
2としては、単結合、二価の炭化水素基、又は、炭化水素基及びエーテル結合を組み合わせた二価の基であることが好ましく、炭素原子数1〜20の二価の炭化水素基であることがより好ましく、炭素数1〜8の二価の炭化水素基であることが更に好ましく、メチレン基であることが特に好ましい。
【0046】
以下に成分Am3の具体例を挙げるが、これらの化合物に限定されるものではない。なお、下記の具体例中、Rは水素原子、又は、メチル基を表す。
【0047】
【化13】

【0048】
これらの中でも、サイクリックトリメチロールプロパンフォーマル(メタ)アクリレートが好ましく、サイクリックトリメチロールプロパンフォーマルアクリレートが特に好ましい。
成分Am3は、市販品であってもよく、市販品の具体例としては、SR531(SARTOMER社製)が挙げられる。
【0049】
被記録媒体と画像との密着性、インク組成物の硬化性の観点から、成分Am3の含有量は、インク組成物の全重量に対して、1〜50重量%が好ましく、5〜40重量%がより好ましく、5〜35重量%が更に好ましい。
【0050】
成分Am1、成分Am2及び成分Am3以外の単官能モノマーを使用してもよく、具体例としては、イソアミル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソアミルスチル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシルジグリコール(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシプロピレングリコール(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイキシエチルコハク酸、2−(メタ)アクリロイキシエチル−2−ヒドロキシエチルフタル酸、t−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート等の単官能モノマーが挙げられる。
【0051】
更に、単官能モノマーとして、単官能ビニルオキシ化合物を用いることも好ましい。好適に用いられる単官能ビニルオキシ化合物としては、例えば、エチルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル等のモノビニルエーテル化合物等が挙げられる。
【0052】
また、(メタ)アクリルアミド化合物としては、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−シクロヘキシル(メタ)アクリルアミド、N−(1,1−ジメチル−2−フェニル)エチル(メタ)アクリルアミド、N−ジフェニルメチル(メタ)アクリルアミド、N−フタルイミドメチル(メタ)アクリルアミド、N−(1,1’−ジメチル−3−(1,2,4−トリアゾール−1−イル))プロピル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、ジアセトン(メタ)アクリルアミド等が例示できる。
不飽和カルボン酸類としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸、及び、これらの塩等が例示できる。
【0053】
また、具体的には、山下晋三編「架橋剤ハンドブック」(1981年、大成社);加藤清視編「UV・EB硬化ハンドブック(原料編)」(1985年、高分子刊行会);ラドテック研究会編「UV・EB硬化技術の応用と市場」79頁(1989年、シーエムシー);滝山栄一郎著「ポリエステル樹脂ハンドブック」(1988年、日刊工業新聞社)等に記載の市販品若しくは業界で公知のラジカル重合性のモノマーを用いることができる。
【0054】
これらの中でも、成分Amとしては、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、N−ビニルカプロラクタム、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、2−(2−エトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、及び、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミドが好ましく例示でき、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、N−ビニルカプロラクタム、及び、イソボルニル(メタ)アクリレートがより好ましく例示でき、フェノキシエチルアクリレート、及び、N−ビニルカプロラクタムが更に好ましく例示できる。
また、単官能ラジカル重合性モノマーの分子量は、80〜1,000であり、80〜750であることが好ましい。
単官能ラジカル重合性モノマーは、インク組成物中に1種のみ有していてもよく、複数種有していてもよい。
【0055】
本発明のインク組成物中における成分Amの合計含有量は、インク組成物の100重量部に対し、30〜98重量部であることが好ましく、40〜95重量部であることがより好ましく、50〜90重量部であることが更に好ましい。上記範囲であると、硬化性に優れ、また、粘度が適度である。
【0056】
(成分Ap)多官能モノマー
本発明に使用するインク組成物は、単官能モノマー(成分Am)に加えて、ラジカル重合性多官能モノマー(単に「多官能モノマー」ともいい、「成分Ap」とも標記する。)を含有する。成分Apは、成分Amと同じく、分子量が1,000以下の低分子であり、分子量が200〜750であることが好ましい。
【0057】
成分Apである多官能モノマーについて説明する。
本発明に用いることができる多官能モノマーとしては、アクリルオキシ基、メタクリルオキシ基、ビニルオキシ基、N−ビニル基、エチレン性不飽和カルボン酸残基、アクリルアミド基、及び、メタクリルアミド基よりなる群から選択されるエチレン性不飽和二重結合を有する基を2つ以上有する多官能ラジカル重合性モノマーを好ましく例示できる。多官能モノマーを含有することで、高い硬化膜強度を有するインク組成物が得られる。ただし、成形加工に適する硬化膜延伸性を保持する観点で、多官能モノマーがインク組成物全体に占める割合は、20重量%以下であることが好ましく、3〜15重量%であることがより好ましい。
多官能モノマーは、1種を単独で使用してもよく、2種以上を適宜組み合わせて使用してもよい。
【0058】
多官能モノマーとして具体的には、ビス(4−アクリロキシポリエトキシフェニル)プロパン、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールテトラアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、テトラメチロールメタントリアクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジアクリレート、変性グリセリントリアクリレート、変性ビスフェノールAジアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等が挙げられる。
【0059】
多官能モノマーとしてアルキレンオキシド基を有するポリ(メタ)アクリレートを含有することが好ましい。ここで、「ポリ(メタ)アクリレート」とは、分子内に(メタ)アクリル酸エステル残基を2以上有することを意味し、2〜4個の残基を有することが好ましく、2個の(メタ)アクリル酸エステル残基を有することがより好ましい。また、アルキレンオキシドとしては、エチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシドが好ましい。アルキレンオキシド基の付加モル数は、1〜10であり、1〜6であることが好ましい。この多官能モノマーは、グリコール類にアルキレンオキシドを付加して、(メタ)アクリル酸のポリエステルとすることにより得られる。
アルキレンオキシド基を有する(メタ)アクリレートの具体例には、ビスフェノールAのPO付加物ジアクリレート、ビスフェノールAのEO付加物ジアクリレート、プロポキシ化ネオペンチルグリコールジアクリレートが含まれる。
【0060】
(ラジカル重合性オリゴマー)
本発明のインク組成物は、成分Am及び成分Apの他に、任意成分として、ラジカル重合性オリゴマーを含有してもよく、また、含有することが好ましい。ここで、オリゴマーとは、既に述べたように、分子量が1,000を超えるラジカル重合性化合物であり、エチレン性不飽和基を複数含有することが好ましく、2〜4個含有する、多官能オリゴマーであることが好ましい。多官能オリゴマーは、有限個(一般的には5〜100個)の構成単位を有する付加重合体の分子末端又は分子側鎖にエチレン性不飽和基を有することが好ましく、重量平均分子量が1,000を超え10,000以下であることが好ましく、1,000〜5,000であることがより好ましい。
前記のラジカル重合性オリゴマーは、複数の(メタ)アクリロキシ基を有することが好ましい。
【0061】
任意成分としてのラジカル重合性オリゴマーとしては、いかなる単量体をその構成単位とするものでもよく、例えば、オレフィン系(エチレンオリゴマー、プロピレンオリゴマーブテンオリゴマー等)、ビニル系(スチレンオリゴマー、ビニルアルコールオリゴマー、ビニルピロリドンオリゴマーアクリレートオリゴマー、メタクリレートオリゴマー等)、ジエン系(ブタジエンオリゴマー、クロロプレンゴム、ペンタジエンオリゴマー等)、開環重合系(ジ−,トリ−,テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリエチルイミン等)、重付加系(オリゴエステルアクリレート、ポリアミドオリゴマー、ポリイソシアネートオリゴマー)、付加縮合オリゴマー(フェノール樹脂、アミノ樹脂、キシレン樹脂、ケトン樹脂等)等を挙げることができる。この中で、オリゴエステル(メタ)アクリレートが好ましく、その中では、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレートがより好ましく、ウレタン(メタ)アクリレートがさらに好ましい。
【0062】
ウレタン(メタ)アクリレートとしては、脂肪族ウレタン(メタ)アクリレート、芳香族ウレタン(メタ)アクリレートが好ましく挙げられるが、脂肪族ウレタン(メタ)アクリレートがより好ましく挙げられる。
また、ウレタン(メタ)アクリレートは、2〜4官能のウレタン(メタ)アクリレートであることが好ましく、2官能のウレタン(メタ)アクリレートであることがより好ましい。
ウレタン(メタ)アクリレートを含有することにより、被記録媒体への密着性に優れ、硬化性に優れるインク組成物が得られる。
ラジカル重合性オリゴマーの含有量は、インク組成物中、10重量%未満であることが好ましく、5重量%以下であることが好ましく、0〜5重量%であることが特に好ましい。
ラジカル重合性オリゴマーについて、オリゴマーハンドブック(吉川淳二監修、(株)化学工業日報社)も参照することができる。
【0063】
また、市販のラジカル重合性オリゴマーとしては、ウレタン(メタ)アクリレートとして、例えば、第一工業製薬(株)製のR1204、R1211、R1213、R1217、R1218、R1301、R1302、R1303、R1304、R1306、R1308、R1901、R1150等や、ダイセル・サイテック(株)製のEBECRYLシリーズ(例えば、EBECRYL230、270、4858、8402、8804、8807、8803、9260、1290、1290K、5129、4842、8210、210、4827、6700、4450、220)、新中村化学工業(株)製のNKオリゴU−4HA、U−6HA、U−15HA、U−108A、U200AX等、東亞合成(株)製のアロニックスM−1100、M−1200、M−1210、M−1310、M−1600、M−1960、サートマー・ジャパン(株)製のCN964等が挙げられる。
ポリエステル(メタ)アクリレートとして、例えば、ダイセル・サイテック(株)製のEBECRYLシリーズ(例えば、EBECRYL770、IRR467、81、84、83、80、675、800、810、812、1657、1810、IRR302、450、670、830、870、1830、1870、2870、IRR267、813、IRR483、811等)、東亞合成(株)製のアロニックスM−6100、M−6200、M−6250、M−6500、M−7100、M−8030、M−8060、M−8100、M−8530、M−8560、M−9050等が挙げられる。
また、エポキシ(メタ)アクリレートとして、例えば、ダイセル・サイテック(株)製のEBECRYLシリーズ(例えば、EBECRYL600、860、2958、3411、3600、3605、3700、3701、3703、3702、3708、RDX63182、6040等)等が挙げられる。
【0064】
(成分B)光重合開始剤
本発明のインク組成物は、(成分B)光重合開始剤を含有する。
本発明に用いることのできる重合開始剤は、外部エネルギーを吸収して重合開始種を生成する化合物である。重合を開始するために使用される外部エネルギーは、熱及び活性エネルギー線に大別され、それぞれ、熱重合開始剤及び光重合開始剤が使用される。活性エネルギー線としては、γ線、β線、電子線、紫外線、可視光線、赤外線が例示できる。
本発明で用いる光重合開始剤としては、ラジカル重合開始剤であることが好ましく、公知のラジカル光重合開始剤を使用することができる。
【0065】
本発明に用いることができるラジカル重合開始剤としては(a)芳香族ケトン類、(b)アシルホスフィン化合物、(c)芳香族オニウム塩化合物、(d)有機過酸化物、(e)チオ化合物、(f)ヘキサアリールビイミダゾール化合物、(g)ケトオキシムエステル化合物、(h)ボレート化合物、(i)アジニウム化合物、(j)メタロセン化合物、(k)活性エステル化合物、及び、(l)炭素ハロゲン結合を有する化合物等が挙げられる。これらのラジカル重合開始剤は、上記(a)〜(l)の化合物を単独若しくは組み合わせて使用してもよい。本発明におけるラジカル重合開始剤は1種単独又は2種以上の併用によって好適に用いられる。
【0066】
本発明のインク組成物は、(成分B)光重合開始剤を含有し、成分Bとして、(成分B−1)チオキサントン化合物を含み、前記チオキサントン化合物の含有量が、インク組成物の全重量に対し、0.03〜5.0重量%であることが好ましい。また、成分Bとして、さらに(成分B−2)α−アミノアルキルフェノン化合物及び/又は(成分B−3)アシルフォスフィン化合物を含むことが好ましい。また、成分B−2の含有量は、インク組成物の全重量に対し、1〜15重量%であることが好ましい。(成分B−3)アシルフォスフィン化合物の含有量は、インク組成物の全重量に対し、1〜15重量%であることが好ましい。
本発明における(成分B)光重合開始剤は、前記活性放射線等の外部エネルギーを吸収して重合開始種を生成する化合物だけでなく、特定の活性エネルギー線を吸収して重合開始剤の分解を促進させる化合物(いわゆる、増感剤)も含まれる。
(成分B)光重合開始剤は、成分Aがラジカル重合性化合物である点から、ラジカル重合開始剤であることが好ましい。
また、本発明のインク組成物は、硬化性及び硬化膜の色相の観点から、成分Bとして、(成分B−1)チオキサントン化合物、(成分B−2)α−アミノアルキルフェノン化合物、及び、(成分B−3)モノアシルホスフィン化合物を含有することがより好ましい。
【0067】
(成分B−1)チオキサントン化合物
本発明のインク組成物は、(成分B−1)チオキサントン化合物を、インク組成物の全重量に対し、0.03〜5.0重量%含有することが好ましい。
チオキサントン化合物は、式(b−1)で表される化合物であることが好ましい。
【0068】
【化14】

(式(b−1)中、R1〜R8はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、アルキルチオ基、アルキルアミノ基(一置換及び二置換の場合を含む。)、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシル基、カルボキシ基又はスルホ基を表す。)
【0069】
前記アルキル基、アルキルチオ基、アルキルアミノ基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アシルオキシ基、及び、アシル基におけるアルキル部分の炭素数は、1〜20であることが好ましく、1〜8であることがより好ましく、1〜4であることが更に好ましい。
1〜R8は、それぞれ隣接する2つが互いに連結して環を形成していてもよい。これらが環を形成する場合の環構造としては、5又は6員環の脂肪族環、芳香族環などが挙げられ、炭素原子以外の元素を含む複素環であってもよく、また、形成された環同士が更に組み合わさって2核環、例えば、縮合環を形成していてもよい。これらの環構造は置換基を更に有していてもよい。置換基としては、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、アルキルチオ基、アルキルアミノ基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシル基、カルボキシ基及びスルホ基が挙げられる。形成された環構造が複素環である場合のヘテロ原子の例としては、N、O、及びSを挙げることができる。
【0070】
チオキサントン化合物としては、チオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、4−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−ドデシルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、1−メトキシカルボニルチオキサントン、2−エトキシカルボニルチオキサントン、3−(2−メトキシエトキシカルボニル)チオキサントン、4−ブトキシカルボニルチオキサントン、3−ブトキシカルボニル−7−メチルチオキサントン、1−シアノ−3−クロロチオキサントン、1−エトキシカルボニル−3−クロロチオキサントン、1−エトキシカルボニル−3−エトキシチオキサントン、1−エトキシカルボニル−3−アミノチオキサントン、1−エトキシカルボニル−3−フェニルスルフリルチオキサントン、3,4−ジ[2−(2−メトキシエトキシ)エトキシカルボニル]チオキサントン、1−エトキシカルボニル−3−(1−メチル−1−モルホリノエチル)チオキサントン、2−メチル−6−ジメトキシメチルチオキサントン、2−メチル−6−(1,1−ジメトキシベンジル)チオキサントン、2−モルホリノメチルチオキサントン、2−メチル−6−モルホリノメチルチオキサントン、n−アリルチオキサントン−3,4−ジカルボキシミド、n−オクチルチオキサントン−3,4−ジカルボキシイミド、N−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)チオキサントン−3,4−ジカルボキシイミド、1−フェノキシチオキサントン、6−エトキシカルボニル−2−メトキシチオキサントン、6−エトキシカルボニル−2−メチルチオキサントン、チオキサントン−2−ポリエチレングリコールエステル、2−ヒドロキシ−3−(3,4−ジメチル−9−オキソ−9H−チオキサントン−2−イルオキシ)−N,N,N−トリメチル−1−プロパンアミニウムクロリドが例示できる。
これらの中でも、入手容易性や硬化性の観点から、2,4−ジエチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、及び、4−イソプロピルチオキサントンがより好ましく、2,4−ジエチルチオキサントンが特に好ましい。
【0071】
前記チオキサントン化合物の含有量は、インク組成物の全重量に対し、0.03〜5.0重量%であり、硬化膜の色相の観点からは、0.03〜3.0重量%であることが好ましく、0.05〜2.0重量%であることがより好ましく、また、硬化感度の観点からは、0.3重量%を超え5.0重量%以下であることが好ましく、0.4〜5.0重量%であることがより好ましい。
【0072】
(成分B−2)α−アミノアルキルフェノン化合物
本発明のインク組成物は、硬化性の観点から、(成分B−2)α−アミノアルキルフェノン化合物を更に含有することが好ましい。
成分B−2としては、式(b−2−1)で表される化合物であることが好ましい。
【0073】
【化15】

【0074】
式(b−3−1)中、R1、R2及びR3はそれぞれ独立に、ヒドロキシ基、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルコキシ基、又は、置換基を有していてもよいアミノ基を表し、Xは、水素原子、置換基を有していてもよいアミノ基、置換基を有していてもよいアルキルチオ基、又は置換基を有していてもよいアルキル基を表す。なお、R1、R2、R3及びXがアミノ基である場合の置換基は、互いに結合して複素環基を形成してもよい。置換基としては、炭素数1〜10のアルキル基が挙げられる。
【0075】
成分B−2は、式(b−2−2)又は式(b−2−3)で表される化合物であることが好ましい。
【0076】
【化16】

【0077】
式(b−2−2)中、R4、R5、R6及びR7はそれぞれ独立に、置換基を有していてもよいアルキル基を表し、R4とR5、及び、R6とR7の少なくともいずれかが互いに結合して複素環基を形成してもよい。式(b−2−2)におけるR1、R2、及び、置換基は、式(b−2−1)と同義である。
【0078】
【化17】

【0079】
式(b−2−3)中、R8は、置換基を有していてもよいアルキル基を表す。
式(b−2−3)におけるR1、R2、及び、置換基は、式(b−2−1)におけるR1、R2、及び、置換基と同義であり、式(b−2−3)におけるR4及びR5は、式(b−2−2)におけるR4及びR5と同義である。
前記複素環基としては、特に制限はなく、適宜選択することができるが、例えば、モルホリノ基が好ましい。
【0080】
α−アミノアルキルフェノン化合物としては、例えば、市販品として、IRGACURE 369(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)、IRGACURE 907(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)などが好適に挙げられる。
これらの中でも、α−アミノアルキルフェノン化合物は、2−[4−(メチルチオ)ベンゾイル]−2−(4−モルホリニル)プロパン(IRGACURE 907)であることが特に好ましい。
【0081】
硬化性の観点から、(成分B−2)α−アミノアルキルフェノン化合物の含有量は、インク組成物の全重量に対し、1〜15重量%が好ましく、1〜10重量%がより好ましく、1〜5重量%が更に好ましい。
【0082】
(成分B−3)アシルフォスフィン化合物
本発明のインク組成物は、(成分B−3)アシルフォスフィン化合物を含有することが好ましく、前記アシルフォスフィン化合物の含有量が、インク組成物の全重量に対し、1〜15重量%であることが好ましい。
また、本発明のインク組成物における(成分B−3)アシルフォスフィン化合物は、硬化膜の色相の観点から、モノアシルホスフィン化合物を含むことが好ましく、モノアシルホスフィン化合物のみであることがより好ましい。
(成分B−3)アシルフォスフィン化合物としては、特に制限はなく、公知のものを用いることができるが、特開2009−96985号公報の段落0080〜0098に記載のアシルフォスフィンオキサイド化合物が好ましく挙げられ、中でも、化合物の構造中に式(b−3−1)又は式(b−3−2)で表される構造を有するものが好ましい。
【0083】
【化18】

(式中、波線部分は他の構造との結合位置を表す。)
【0084】
特に、アシルフォスフィンオキサイド化合物としては、式(b−3−3)又は式(b−3−4)で表される化合物が特に好ましい。
【0085】
【化19】

(式(b−3−3)中、R6、R7及びR8はそれぞれ独立に、メチル基又はエチル基を置換基として有していてもよい芳香族炭化水素基を表す。)
【0086】
式(b−3−3)で表されるモノアシルフォスフィンオキサイド化合物としては、R6〜R8が、置換基としてメチル基を有していてもよいフェニル基であることが好ましく、R7及びR8がフェニル基であり、R6が1〜3個のメチル基を有するフェニル基であることがより好ましい。
中でも、式(b−3−3)で表されるモノアシルフォスフィンオキサイド化合物としては、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド(DAROCUR TPO:チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、LUCIRIN TPO:BASF社製)が好ましい。
【0087】
【化20】

(式(b−3−4)中、R9、R10及びR11はそれぞれ独立に、メチル基又はエチル基を置換基として有していてもよい芳香族炭化水素基を表す。)
【0088】
式(b−3−4)で表されるビスアシルフォスフィンオキサイド化合物としては、R9〜R11が、置換基としてメチル基を有していてもよいフェニル基であることが好ましく、R11がフェニル基であり、R9及びR10が1〜3個のメチル基を有するフェニル基であることがより好ましい。
中でも、式(b−3−4)で表されるビスアシルフォスフィンオキサイド化合物としては、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド(IRGACURE 819、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)が好ましい。
【0089】
本発明のインク組成物中における(成分B−3)アシルフォスフィン化合物の含有量は、硬化性の観点から、インク組成物の全重量に対し、1〜15重量%が好ましく、5〜15重量%がより好ましく、4〜8重量%が更に好ましい。
【0090】
<その他の重合開始剤>
本発明のインク組成物は、成分B−1〜成分B−3以外の他の重合開始剤を含有していてもよい。
その他の重合開始剤としては、例えば、芳香族ケトン類、芳香族オニウム塩化合物、有機過酸化物、チオ化合物、ヘキサアリールビイミダゾール化合物、ケトオキシムエステル化合物、ボレート化合物、アジニウム化合物、メタロセン化合物、活性エステル化合物、及び、炭素ハロゲン結合を有する化合物等が挙げられる。
前記他の重合開始剤としては、成分B−1〜成分B−3以外の公知の重合開始剤、好ましくはラジカル重合開始剤を用いることができ、例えば、特開2009−185186号公報の段落0090〜0116に記載されているものが挙げられる。
また、その他の重合開始剤として、チオクロマノン化合物を使用してもよく、特開2010−126644号公報の段落0064〜0068に記載されている化合物が例示できる。
【0091】
本発明のインク組成物中における(成分B)光重合開始剤の含有量は、硬化性及び硬化膜の色相の観点から、インク組成物の全重量に対し、1.5〜25重量%であることが好ましく、2〜20重量%であることがより好ましく、5〜18重量%であることが更に好ましく、5〜15重量%であることが特に好ましい。
また、本発明のインク組成物が、成分Bとして、(成分B−1)チオキサントン化合物、(成分B−2)α−アミノアルキルフェノン化合物、及び、(成分B−3)アシルフォスフィン化合物を含有する場合、硬化性及び硬化膜の色相の観点から、成分B−3の含有量(B1)、成分B−2の含有量(B2)及び成分B−3の含有量(B3)が(B2)+(B3)>(B1)の関係を満たすことが好ましい。
また、本発明のインク組成物が、成分Bとして、(成分B−3)アシルフォスフィン化合物、(成分B−2)α−アミノアルキルフェノン化合物、及び、(成分B−1)チオキサントン化合物を含有する場合、硬化性及び硬化膜の色相の観点から、成分B−1の含有量(B1)、成分B−2の含有量(B2)及び成分B−3の含有量(B3)が(B3)≧(B2)>(B1)の関係を満たすことが好ましい。
【0092】
(成分C)顔料
本発明において、インク組成物は(成分C)顔料を含有する。
顔料とは、一般に、種々溶媒(有機溶剤、水)に対して難溶の着色剤を意味し、インク組成物中に、その溶解度が1重量%以下のものを意味する。
本発明に用いることができる顔料としては、特に制限はなく、公知の顔料を用いることができる。本発明に用いることができる顔料は、活性放射線による硬化反応の感度を低下させないという観点からは、硬化反応である重合反応において重合禁止剤として機能しない化合物を選択することが好ましい。
【0093】
本発明に用いることができる顔料としては、特に限定されるわけではないが、例えばカラーインデックスに記載される下記の番号の有機又は無機顔料が使用できる。
赤又はマゼンタ顔料としては、Pigment Red 3,5,19,22,31,38,42,43,48:1,48:2,48:3,48:4,48:5,49:1,53:1,57:1,57:2,58:4,63:1,81,81:1,81:2,81:3,81:4,88,104,108,112,122,123,144,146,149,166,168,169,170,177,178,179,184,185,208,216,226,257、Pigment Violet 3,19,23,29,30,37,50,88、Pigment Orange 13,16,20,36、
青又はシアン顔料としては、Pigment Blue 1,15,15:1,15:2,15:3,15:4,15:6,16,17−1,22,27,28,29,36,60、
緑顔料としては、Pigment Green 7,26,36,50、
イエロー顔料としては、Pigment Yellow 1,3,12,13,14,17,34,35,37,55,74,81,83,93,94,95,97,108,109,110,120,137,138,139,153,154,155,157,166,167,168,180,185,193、
黒顔料としては、Pigment Black 7,28,26、
白色顔料としては、PigmentWhite 6,18,21
などが目的に応じて使用できる。
また、本発明に用いることができる顔料として具体的には、IRGALITTE BLUE GLVO(シアン顔料、チバ・スペシャルティー・ケミカルズ社製)、CINQUASIA MAGENTA RT−355 D(マゼンタ顔料、チバ・スペシャルティー・ケミカルズ社製)、NOVOPERM YELLOW H2G(イエロー顔料、クラリアント社製)、SPECIAL BLACK 250(ブラック顔料、チバ・スペシャルティー・ケミカルズ社製)、KRONOS2300(ホワイト顔料、KRONOS社製)、及び、タイペークCR60−2(ホワイト顔料、石原産業(株)製)等が好ましく例示できる。
【0094】
本発明に使用することができる顔料は、分散剤と混合して(成分A)ラジカル重合性化合物(重合性モノマー)に分散する、又は、重合性化合物と分散剤とを混合した後に顔料を分散することが好ましい。顔料の分散には、例えば、ボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミル、アジテータ、ヘンシェルミキサ、コロイドミル、超音波ホモジナイザー、パールミル、湿式ジェットミル、ペイントシェーカー等の各分散装置を用いることができる。
【0095】
顔料は、インク組成物の調製に際して、各成分と共に直接添加により配合してもよいが、分散性向上のため、あらかじめ溶剤又は本発明に使用するラジカル重合性化合物のような分散媒体に添加し、均一分散或いは溶解させた後、配合することもできる。
本発明において、溶剤が硬化画像に残留する場合の耐溶剤性の劣化並びに残留する溶剤のVOC(Volatile Organic Compound:揮発性有機化合物)の問題を避けるためにも、顔料は、重合性モノマーのような分散媒体に予め添加して、配合することが好ましい。なお、分散適性の観点のみを考慮した場合、顔料の添加に使用する重合性化合物(重合性モノマー)は、粘度の低いモノマーを選択することが好ましい。
【0096】
これらの顔料は、インク組成物の使用目的に応じて、1種又は2種以上を適宜選択して用いればよい。
【0097】
なお、インク組成物中において固体のまま存在する顔料を使用する際には、顔料粒子の平均粒径は、好ましくは0.005〜0.5μm、より好ましくは0.01〜0.45μm、更に好ましくは0.015〜0.4μmとなるよう、顔料、分散剤、分散媒体の選定、分散条件、ろ過条件を設定することが好ましい。この粒径管理によって、ヘッドノズルの詰まりを抑制し、インク組成物の保存安定性、透明性及び硬化感度を維持することができるので好ましい。
【0098】
同じ色相を有する濃色インク及び淡色インクとするために、両インクが実質的に同一の顔料を含有することが好ましい。淡色インク中の顔料含有量は、濃色インク中の顔料含有量の1〜80重量%であることが好ましく、2〜60重量%であることがより好ましく、3〜50重量%であることがさらに好ましく、5〜33重量%であることが特に好ましい。
少なくとも1対の同色の色相を有するインク組成物において、前記濃色インク中の顔料濃度が、前記淡色インク中の顔料濃度の3倍以上であるインクジェット用インクセットであることが好ましく、3〜100倍であることが好ましく、3〜50倍であることがより好ましく、3〜33倍であることがさらに好ましく、3〜20倍であることが特に好ましい。
【0099】
本発明において、濃色インク組成物中の顔料の含有量は、インク組成物全体の0.5〜20重量%であることが好ましく、1.0〜15重量%であることがより好ましく、1〜10重量%であることが更に好ましい。
インク組成物中における着色剤の含有量は、色、及び使用目的により適宜選択されるが、インク組成物全体の重量に対し、0.01〜30重量%であることが好ましい。
【0100】
(成分D)分散剤
インク組成物は、(成分D)分散剤を含有することが好ましい。特に顔料を使用する場合において、顔料をインク組成物中に安定に分散させるため、分散剤を含有することが好ましい。分散剤としては、高分子分散剤が好ましい。なお、本発明における「高分子分散剤」とは、重量平均分子量が1,000以上の分散剤を意味する。
【0101】
高分子分散剤としては、DISPERBYK−101、102、103、106、111、161、162、163、164、166、167、168、170、171、174、182(BYKケミー社製);EFKA4010、4046、4080、5010、5207、5244、6745、6750、7414、745、7462、7500、7570、7575、7580(エフカアディティブ社製);ディスパースエイド6、8、15、9100(サンノプコ(株)製);ソルスパース(SOLSPERSE)3000、5000、9000、12000、13240、13940、17000、22000、24000、26000、28000、32000、36000、39000、41000、71000などの各種ソルスパース分散剤(Noveon社製);アデカプルロニックL31、F38、L42、L44、L61、L64、F68、L72、P95、F77、P84、F87、P94、L101、P103、F108、L121、P−123((株)ADEKA製)、イオネットS−20(三洋化成工業(株)製);ディスパロン KS−860、873SN、874(高分子分散剤)、#2150(脂肪族多価カルボン酸)、#7004(ポリエーテルエステル型)(楠本化成(株)製)が挙げられる。
インク組成物中における分散剤の含有量は、使用目的により適宜選択されるが、インク組成物全体の重量に対し、0.05〜15重量%であることが好ましい。
【0102】
(成分E)アミン化合物
本発明のインク組成物は、硬化膜の色相の観点から、アミン化合物を含有することが好ましい。
本発明に用いることのできるアミン化合物としては、従来公知のアミン化合物であれば特に制限なく使用することができる。
また、アミン化合物は、分子内に1個のアミン部位を有する化合物であっても、分子内に2個以上のアミン部位を有する化合物であってもよく、また、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ハロゲン原子(−F、−Br、−Cl、−I)、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリーロキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アシル基、アシルオキシ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基等の置換基を有していてもよい。
【0103】
本発明に用いることのできるアミン化合物は、安全性の観点から、標準大気圧において沸点が120℃以上であることが好ましく、150℃以上であることがより好ましく、180℃以上であることがさらに好ましい。
【0104】
また、本発明に用いることのできるアミン化合物は、一級、二級及び三級のアミン化合物のいずれでもよいが、重合性化合物との副反応や変色反応の抑制の観点から、三級のアミン化合物、又は、ヒンダードアミン化合物を使用することが好ましい。
また、アミン化合物は、脂肪族アミン化合物であっても、芳香族アミン化合物であってもよいが、酸の捕捉能の観点から、脂肪族アミン化合物であることが好ましい。
更に、アミン化合物としては、前述したアミンオリゴマーも含まれる。ただし、本発明のインク組成物中の含有量においては、アミンオリゴマーが重合性基を有している場合は、アミン化合物としては扱わず、重合性化合物として扱うものとする。
【0105】
本発明に用いることができるアミン化合物の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
n−ヘキシルアミン、n−オクチルアミン、ジ−n−ブチルアミン、トリ−n−ヘキシルアミン、シクロヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン、3−(ジ−n−ブチルアミノ)プロピルアミン、3−アミノ−1−フェニルブタン、N−t−ブチルピロリジン、2,6−ジメチルピペリジン、デカヒドロキノリン、デカヒドロイソキノリン、トロピン、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリドン、1−(2−ピリジル)ピペラジン、N,N’−ジメチルピペラジン、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、4−ピロリジノピリジン、クミルアミン、3−ブトキシプロピルアミン、3−メチルチオプロピルアミン、ビス(3−アミノプロピル)エーテル、N,N−ジ−n−プロピルアニリン、N,N−ビス(3−アミノプロピル)メチルアミン、N−(3−アミノプロピル)モルホリン、N−ベンジル−2−メチル−1,3−プロパンジアミン、ヘキサメチレンテトラミン、ヘキサヒドロ−1,3,5−トリフェニル−1,3,5−トリアジン、1,4,7−トリメチル−1,4,7−トリアザシクロノナン、1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン、トリス(3−アミノプロピル)アミン、N,N−ジメチルアニリン、1−エチルピロール、2,5−ジメチルピロール、4−(ジメチルアミノ)ピリジン、2,6−ジクロロピリジン、2,6−ジアミノピリジン、2,6−ジメチル−4−ヒドロキシピリジン、2,6−ピリジンジカルボン酸ジエチル、2,4,6−トリメチルピリジン、4−ビニルピリジン、3−アセチルピリジン、2−ベンゾイルピリジン、ニコチン酸メチル、2,2’−ビピリジル、2,2’:6’,2’’−ターピリジン、キノリン、イソキノリン、8−キノリノール、アクリジン、5−アミノインドール、カルバゾール、フェナントリジン、9(10H)−アクリドン、1,6−ナフチリジン、1,8−ナフチリジン、1,10−フェナントロリン、キナクリドン、1H−ピロロ[2,3−b]ピリジン等が例示できる。
【0106】
本発明に用いることができるアミン化合物としては、ヒンダードアミン化合物が特に好ましく例示でき、分子内に求核部位を持たないヒンダードアミン化合物が最も好ましく例示できる。
【0107】
市販されている光安定剤のHALS(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)やサノール(三共(株)製)は、分子内に求核性部位であるエステル構造を持つため、本発明における特定構造を有するヒンダードアミン化合物には含まれない。
【0108】
成分Eとしては、下記式(e−1)で表される化合物が好ましく例示できる。
【0109】
【化21】

(式中、Rはそれぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を表し、nは1〜10の整数を表す。)
【0110】
式(e−1)におけるRとしては、水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基であることが好ましく、水素原子又はメチル基であることがより好ましい。
また、式(e−1)におけるRのうち、窒素原子に直接結合していない4つのRはそれぞれ独立に、炭素数1〜6のアルキル基であることが好ましい。
また、前記Rにおけるアルキル基は、直鎖アルキル基であっても、分岐アルキル基であってもよい。
式(e−1)におけるnは、4〜10の整数であることが好ましく、7〜9の整数であることがより好ましく、8であることが特に好ましい。
【0111】
本発明のインク組成物は、成分Eを1種のみ含有してもよく、2種以上を含有してもよい。
【0112】
また、上市されている成分Eとしては、CN371(アミン変性アクリレートオリゴマー、Sartomer社製)、CN550(アミン変性ポリエーテルアクリレートオリゴマー、Sartomer社製)、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート(Ciba Specialty Chemicals社より“Tinuvin 765”の名で、また三共(株)より“サノール LS−765”の名で販売されている。)、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート(Ciba Specialty Chemicals社“Tinuvin 770DF”の名で、また、三共(株)より“サノール LS−770”の名で販売されている。)が好ましく例示できる。
【0113】
本発明のインク組成物における(成分E)アミン化合物の添加量は、インク組成物の全重量に対し、0.01〜10重量%であることが好ましくが好ましく、0.1〜5重量%がより好ましい。上記範囲であると、感度に優れ、高画質な印刷物を得ることが可能なインク組成物を得ることができる。
【0114】
(成分F)重合禁止剤
本発明のインク組成物は、インク組成物の保存性の観点から、(成分F)重合禁止剤を含有することが好ましい。
重合禁止剤としては、例えば、ニトロソ系重合禁止剤や、ヒンダードアミン系重合禁止剤、ヒンダードフェノール系重合禁止剤、ハイドロキノン、ベンゾキノン、p−メトキシフェノール、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル(TEMPO)、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル(TEMPOL)、トリス(N−ニトロソ−N−フェニルヒドロキシルアミン)アルミニウム塩(クペロンAl)等が挙げられる。
重合禁止剤は、本発明のインク組成物全量に対し、200〜20,000ppm添加することが好ましい。
【0115】
<その他の成分>
本発明のインク組成物には、必要に応じて、紫外線吸収剤、酸化防止剤、褪色防止剤、導電性塩類、界面活性剤、塩基性化合物等を含んでいてもよい。これらは、特開2009−221416号公報に記載されているものが例示でき、本発明においても好適に使用できる。
また、本発明のインク組成物は、界面活性剤を含有していてもよいが、界面活性剤を含有しないか、又は、界面活性剤の含有量が、インク組成物の全重量に対し、0.05重量%以下であることが好ましく、界面活性剤を含有しないことがより好ましい。
【0116】
〔インク物性〕
本発明においては、吐出性を考慮し、25℃における粘度が40mPa・s以下であるインク組成物を使用することが好ましい。より好ましくは5〜40mPa・s、更に好ましくは7〜30mPa・sである。また、吐出温度(好ましくは25〜80℃、より好ましくは25〜50℃)における粘度が、3〜15mPa・sであることが好ましく、3〜13mPa・sであることがより好ましい。本発明のインク組成物は、粘度が上記範囲になるように適宜組成比を調整することが好ましい。室温での粘度を高く設定することにより、多孔質な被記録媒体を用いた場合でも、被記録媒体中へのインク組成物の浸透を回避し、未硬化モノマーの低減が可能となる。更にインク組成物の液滴着弾時のインク滲みを抑えることができ、その結果として画質が改善されるので好ましい。
【0117】
本発明のインク組成物の25℃における表面張力は、20〜35mN/mであることが好ましく、23〜33mN/mであることがより好ましい。ポリオレフィン、PET、コート紙、非コート紙など様々な被記録媒体へ記録する場合、滲み及び浸透の観点から、20mN/m以上が好ましく、濡れ性の点では、35mN/m以下が好ましい。
【0118】
(2)インクジェット記録方法、インクジェット記録装置及び印刷物
本発明のインク組成物は、インクジェット記録用として好適に用いることができる。
本発明のインクジェット記録方法は、本発明のインク組成物をインクジェット記録用として被記録媒体(支持体、記録材料等)上に吐出し、被記録媒体上に吐出されたインク組成物に活性放射線を照射し、インクを硬化して画像を形成する方法である。
【0119】
より具体的には、本発明のインクジェット記録方法は、(a1)本発明のインク組成物をインクジェット方式により吐出して被記録媒体上に画像を形成する画像形成工程、及び、(b1)得られた画像に活性放射線を照射して、前記インク組成物を硬化させて、前記被記録媒体上に硬化した画像を有する印刷物を得る硬化工程を含むことが好ましい。
本発明のインクジェット記録方法は、上記(a1)及び(b1)工程を含むことにより、被記録媒体上において硬化したインク組成物により画像が形成される。
また、本発明の印刷物は、本発明のインクジェット記録方法によって記録された印刷物である。
前記画像形成工程におけるインク組成物の1打滴あたりの吐出量は、3〜42pLの範囲であることが好ましい。
【0120】
本発明のインクジェット記録方法における(a1)工程には、以下に詳述するインクジェット記録装置を用いることができる。
【0121】
本発明において、被記録媒体としては、特に限定されず、支持体や記録材料として公知の被記録媒体を使用することができる。例えば、紙、プラスチック(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等)がラミネートされた紙、金属板(例えば、アルミニウム、亜鉛、銅等)、プラスチックフィルム(例えば、二酢酸セルロース、三酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酪酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、硝酸セルロース、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリビニルアセタール等)、上述した金属がラミネートされ又は蒸着された紙又はプラスチックフィルム等が挙げられる。また、本発明における被記録媒体として、非吸収性被記録媒体が好適に使用することができる。
【0122】
また、成形加工を行う場合には、被記録媒体として、支持体を用いることが好ましい。
本発明に用いることができる支持体は、特に限定はないが、下述する公知の被記録媒体を用いることができる。
支持体の材質として具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリブテン、オレフィン系熱可塑性エラストマー等のポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、テレフタル酸−イソフタル酸−エチレングリコール共重合体、テレフタル酸−エチレングリコール−1,4シクロヘキサンジメタノール共重合体、ポリエステル系熱可塑性エラストマー等のポリエステル樹脂、ナイロン6、ナイロン9、ナイロン6,6等のポリアミド樹脂、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリ三フッ化ビニリデン、エチレン−四フッ化エチレン共重合体、ポリ四フッ化エチレン等のフッ素系樹脂、アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリカーボネート樹脂等を例示できる。上記アクリル系樹脂は、例えば、ポリメチル(メタ)アクリレート、ポリエチル(メタ)アクリレート、ポリブチル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート−ブチル(メタ)アクリレート共重合体、エチル(メタ)アクリレート−ブチル(メタ)アクリレート共重合体、メチル(メタ)アクリレート−スチレン共重合体等の樹脂を1種単独又は2種以上の混合物で用いることができる。中でも、加飾印刷が容易なことや仕上がり成形物の諸耐性が優れている点でポリエチレンテレフタラート、ポリカーボネート樹脂やポリカーボネート樹脂に他樹脂をブレンドした樹脂のシートが好ましく用いられる。
支持体の形状としては、特に制限はないが、特に成形加工を行う場合、シート状であることが好ましい。
【0123】
また、支持体としては、上述したような熱可塑性樹脂のシート(熱可塑性樹脂シート)を好適に用いることができる。
熱可塑性樹脂シートの中から、高光沢領域、低光沢領域、及び、シート厚みの厚薄を付与するためのエンボス加工適性、更に、成形印刷物を加熱軟化させて真空成形等の成形加工を行う場合には該成形加工時の熱による成形適性とエンボス加工の耐久性(エンボス消失防止)との両立性等を考慮の上、適宜選定する。透明樹脂基材シートの層構成は、単層、あるいは異種の樹脂を2層以上積層した積層体のいずれでもよい。
【0124】
熱可塑性樹脂シート中には、必要に応じ適宜、添加剤を添加することができる。添加剤としては、表面光沢、融点等の熱的挙動に支障を来さない範囲で、各種添加剤を適量添加し得る。例えば、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系等の紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系ラジカル補捉剤等の光安定剤、シリコーン樹脂、ワックス等の滑剤、着色剤、可塑剤、熱安定剤、抗菌剤、防黴剤、帯電防止剤等である。
【0125】
本発明において支持体の厚み(積層体構成の場合は総厚)は、特に限定されないが、成形加工が可能な範囲の厚みの樹脂シートであることが好ましく、50〜2,000μmのものがより好ましく、100〜1,500μmのものが更に好ましく、150〜1,000μmのものが特に好ましい。
【0126】
本発明のインクジェット記録方法に用いられるインクジェット記録装置としては、特に制限はなく、目的とする解像度を達成しうる公知のインクジェット記録装置を任意に選択して使用することができる。即ち、市販品を含む公知のインクジェット記録装置であれば、いずれも、本発明のインクジェット記録方法の(a1)工程における被記録媒体(支持体)へのインク組成物の吐出を実施することができる。
本発明で用いることのできるインクジェット記録装置としては、例えば、インク供給系、温度センサー、活性放射線源を含む装置が挙げられる。
インク供給系は、例えば、本発明のインク組成物を含む元タンク、供給配管、インクジェットヘッド直前のインク組成物供給タンク、フィルター、ピエゾ型のインクジェットヘッドからなる。ピエゾ型のインクジェットヘッドは、好ましくは1〜100pL、より好ましくは3〜42pL、更に好ましくは8〜30pLのマルチサイズドットを、好ましくは320×320〜4,000×4,000dpi、より好ましくは400×400〜1,600×1,600dpi、更に好ましくは720×720dpiの解像度で吐出できるよう駆動することができる。なお、本発明でいうdpiとは、2.54cm当たりのドット数を表す。
【0127】
上述したように、本発明のインク組成物のような放射線硬化型インク組成物は、吐出されるインクを一定温度にすることが好ましいことから、インク組成物供給タンクからインクジェットヘッド部分までは、断熱及び加温を行うことができる。温度コントロールの方法としては、特に制約はないが、例えば、温度センサーを各配管部位に複数設け、インク組成物の流量、環境温度に応じた加熱制御をすることが好ましい。温度センサーは、インク組成物供給タンク及びインクジェットヘッドのノズル付近に設けることができる。また、加熱するヘッドユニットは、装置本体を外気からの温度の影響を受けないよう、熱的に遮断又は断熱されていることが好ましい。加熱に要するプリンター立上げ時間を短縮するため、あるいは、熱エネルギーのロスを低減するために、他部位との断熱を行うと共に、加熱ユニット全体の熱容量を小さくすることが好ましい。
【0128】
上記のインクジェット記録装置を用いて、本発明のインク組成物の吐出は、インク組成物を、好ましくは25〜80℃、より好ましくは25〜50℃に加熱して、インク組成物の粘度を、好ましくは3〜15mPa・s、より好ましくは3〜13mPa・sに下げた後に行うことが好ましい。特に、本発明のインク組成物として、25℃におけるインク組成物の粘度が50mPa・s以下であるものを用いると、良好に吐出が行えるので好ましい。この方法を用いることにより、高い吐出安定性を実現することができる。
本発明のインク組成物のような放射線硬化型インク組成物は、概して通常インクジェット記録用インク組成物で使用される水性インク組成物より粘度が高いため、吐出時の温度変動による粘度変動が大きい。インク組成物の粘度変動は、液滴サイズの変化及び液滴吐出速度の変化に対して大きな影響を与え、ひいては画質劣化を引き起こす。したがって、吐出時のインク組成物の温度はできるだけ一定に保つことが必要である。よって、本発明において、インクの温度の制御幅は、設定温度の±5℃であることが好ましく、設定温度の±2℃であることがより好ましく、設定温度±1℃であることが更に好ましい。
【0129】
次に、(b1)得られた画像に活性放射線を照射して、前記インク組成物を硬化させて、前記被記録媒体上に硬化した画像を有する印刷物を得る硬化工程について説明する。
被記録媒体上に吐出されたインク組成物は、活性放射線を照射することによって硬化する。これは、本発明のインク組成物に含まれる光重合開始剤が活性放射線の照射により分解して、ラジカルなどの重合開始種を発生し、その開始種の機能にラジカル重合性モノマーの重合反応が、生起、促進されるためである。このとき、インク組成物において重合開始剤と共に増感剤が存在すると、系中の増感剤が活性放射線を吸収して励起状態となり、重合開始剤と接触することによって重合開始剤の分解を促進させ、より高感度の硬化反応を達成させることができる。
【0130】
ここで、使用される活性放射線は、α線、γ線、電子線、X線、紫外線、可視光又は赤外光などが使用される。
【0131】
本発明のインク組成物の硬化には、紫外線を照射するための線源として、紫外線発光ダイオード(UV−LED)を使用することが好ましく、発光ピーク波長が300〜420nmの範囲である紫外線を発生する発光ダイオードを使用することがより好ましい。
UV−LEDとして、例えば、日亜化学工業(株)が、主放出スペクトルが365nmと420nmとの間の波長を有する紫色LEDを上市している。また、他の紫外LEDも、入手可能であり、異なる紫外線帯域の放射を照射することができる。
本発明のインク組成物の硬化に使用される紫外線の発光ピーク波長は、硬化性の観点から、増感剤の吸収特性にもよるが、300〜420nmであることが好ましく、350〜420nmがより好ましく、360〜420nmが更に好ましい。
【0132】
本発明のインク組成物は十分な感度を有するため、低出力の活性放射線であっても十分に硬化する。具体的には、被記録媒体表面における最高照度は、画質及び生産性の観点から、10〜2,000mW/cm2であることが好ましく、650〜1,500mW/cm2がより好ましく、700〜1,400mW/cm2が更に好ましい。
【0133】
本発明のインク組成物は、このような活性放射線に、好ましくは0.01〜120秒、より好ましくは0.01〜90秒、更に好ましくは0.01〜10秒照射されることが適当である。
また、本発明のインクジェット記録方法においては、インク組成物を吐出した後0.01〜10秒の間に、2,000mW/cm2以下の露光面照度で活性放射線を照射し、前記インク組成物を硬化させることが好ましい。
活性放射線の照射条件並びに基本的な照射方法は、特開昭60−132767号公報に開示されている。具体的には、インク組成物の吐出装置を含むヘッドユニットの両側に光源を設け、いわゆるシャトル方式でヘッドユニットと光源を走査することによって行われる。活性放射線の照射は、インク組成物の着弾後、一定時間(好ましくは0.01〜0.5秒、より好ましくは0.01〜0.3秒、更に好ましくは0.01〜0.15秒)をおいて行われることになる。このようにインク組成物の着弾から照射までの時間を極短時間に制御することにより、被記録媒体に着弾したインク組成物が硬化前に滲むことを防止するこが可能となる。また、多孔質な被記録媒体に対しても光源の届かない深部までインク組成物が浸透する前に露光することができるため、未反応モノマーの残留を抑えることができるので好ましい。
更に、駆動を伴わない別光源によって硬化を完了させてもよい。国際公開第99/54415号パンフレットでは、照射方法として、光ファイバーを用いた方法やコリメートされた光源をヘッドユニット側面に設けた鏡面に当て、記録部へUV光を照射する方法が開示されており、このような硬化方法もまた、本発明のインクジェット記録方法に適用することができる。
【0134】
上述したようなインクジェット記録方法を採用することにより、表面の濡れ性が異なる様々な被記録媒体(支持体)に対しても、着弾したインク組成物のドット径を一定に保つことができ、画質が向上する。なお、カラー画像を得るためには、明度の低い色から順に重ねていくことが好ましい。明度の低いインク組成物から順に重ねることにより、下部のインク組成物まで照射線が到達しやすくなり、良好な硬化感度、残留モノマーの低減、密着性の向上が期待できる。また、照射は、全色を吐出してまとめて露光することが可能だが、1色毎に露光するほうが、硬化促進の観点で好ましい。
このようにして、本発明のインク組成物は、活性放射線の照射により高感度で硬化することで、被記録媒体表面に画像を形成することができる。
【0135】
本発明のインクジェット記録方法には、ライトシアン、ライトマゼンタの淡色インク組成物とシアン、マゼンタ、ブラック、ホワイト、イエローの濃色インク組成物の計7色が少なくとも含まれるインクセットとしても使用することができ、その場合には、ホワイト→ライトシアン→ライトマゼンタ→イエロー→シアン→マゼンタ→ブラックの順で被記録媒体上に付与することが好ましい。
このようにして、本発明のインク組成物は、活性放射線の照射により高感度で硬化することで、被記録媒体表面に画像を形成することができる。
【0136】
本発明のインクセットを用いる場合、本発明の濃淡インク組成物を少なくとも1つ含み、本発明の濃淡インク組成物の色相以外の色相を有する通常の顔料濃度のインク組成物とを組み合わせたインクセットとすることが好ましい。色相の組み合わせに、特に制限はないが、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラック、ライトマゼンタ、及び、ライトシアンを含むインク組成物とすることが好ましい。
また、本発明のインクセットは、本発明のインクジェット記録方法に好適に用いることができる。
本発明のインク組成物を使用してフルカラー画像を得るためには、本発明のインクセットとして、少なくともイエロー、シアン、マゼンタ、及び、ブラックよりなる4色の濃色インク組成物を含むインクセットであることが好ましく、イエロー、シアン、マゼンタ、ブラック、ホワイトよりなる5色の濃色インク組成物を組み合わせたインクセットであることがより好ましく、イエロー、シアン、マゼンタ、ブラック、及び、ホワイトよりなる5色の濃色インク組成物と、ライトシアン、及び、ライトマゼンタよりなる2色のインク組成物とを組み合わせたインクセットであることが更に好ましい。
【実施例】
【0137】
以下に実施例及び比較例を示し、本発明をより具体的に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。なお、以下の記載における「部」とは、特に断りのない限り「重量部」を示し、「%」は「重量%」を示すものとする。
【0138】
(シアンミルベースの調製)
IRGALITTE BLUE GLVOを300重量部と、Actilane 421(プロポキシ化ネオペンチルグリコールジアクリレート)(Akcros社製)を600重量部と、Solsperse32000を100重量部とを撹拌混合し、顔料ミルベースを得た。なお、顔料ミルベースの調製は分散機モーターミルM50(アイガー社製)に入れて、直径0.65mmのジルコニアビーズを用い、周速9m/sで4時間分散を行った。
【0139】
(マゼンタミルベースの調製)
CINQUASIA MAGENTA RT−355 Dを300重量部と、Actilane 421を600重量部と、Solsperse32000を100重量部とを撹拌混合し、顔料ミルベースを得た。なお、顔料ミルベースの調製は分散機モーターミルM50(アイガー社製)に入れて、直径0.65mmのジルコニアビーズを用い、周速9m/sで10時間分散を行った。
【0140】
(実施例1〜10、及び、比較例1〜3)
<インク組成物の作製方法>
表1及び表2に記載の素材を混合、撹拌することで、各インク組成物を得た。なお、表中の数値は各成分の配合量(重量部)を表す。
【0141】
表中の各成分は、以下の通りである。
NVC:N−ビニルカプロラクタム(V−CAP、ISP社製)
PEA:フェノキシエチルアクリレート(SR339、Sartomer社製)
IBOA:イソボルニルアクリレート(SR506、Sartomer社製)
DPGDA:ジプロピレングリコールジアクリレート(SR508、Sartomer社製)
TMPTA:トリメチロールプロパントリアクリレート(SR351、Sartomer社製)
CN964A85:ウレタンアクリレートオリゴマー、平均官能基数2、サートマー・ジャパン(株)製
Irg907:2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン(IRGACURE 907、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)
Irg819:ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド(IRGACURE 819、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)
DETX:2,4−ジエチルチオキサントン(KAYACURE DETX、日本化薬(株)製)
ST−1:FIRSTCURE ST−1(重合禁止剤、Chem First社製)
Tinuvin770DF:セバシン酸ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)(TINUVIN770DF、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)
【0142】
<インクジェット記録方法>
ピエゾ型インクジェットノズルを有するインクジェット記録実験装置を用いて、被記録媒体への記録を行った。前記インクジェット記録装置は、計8つのインク供給系を有し、該インク供給系は、それぞれ各インク供給計で独立して元タンク、供給配管、インクジェットヘッド直前のインク供給タンク、フィルター、ピエゾ型のインクジェットヘッドから成る。作製したインクをインクタンクに充填し、インク供給タンクからインクジェットヘッド部分までを断熱及び加温を行った。
8つ有するピエゾ型のインクジェットヘッドは、並列に配列し、10〜30plのマルチサイズドットを600×400dpiの解像度で射出できるよう同時に駆動した。着弾後はUV光を露光面照度(被記録媒体面での最高照度)800mW/cm2に集光し、被記録媒体上にインク着弾した0.1秒〜0.3秒後に照射が始まるよう露光系、主走査速度及び射出周波数を調整した。また、画像に照射される積算光量を500mJ/cm2となるようにした。
紫外線ランプには、波長385nmの紫外線を発光する、紫外線発光ダイオード(日亜化学工業(株)製NC4U134)を使用した。
なお、本発明でいうdpiとは、2.54cm当たりのドット数を表す。被記録媒体として、ポリ塩化ビニル製のシートを用い画像を作成した。
【0143】
以下の評価は上記印刷方法に従い12μmのベタ膜を作製し、評価に用いた。
〔生産性(硬化感度)評価〕
印刷後の表面の色移りとべとつきが無くなる露光エネルギーによって生産性(硬化感度)を評価した。
印刷後の表面のべとつきの有無は触診で、色移りは印刷直後に普通紙(富士ゼロックス(株)製コピー用紙C2)を押し付け判断した。色移り、べとつきがないほど感度が高いと評価し、以下の基準により段階評価した。
◎:色移りなし、べとつきなし。
○:色移りなし、べとつきもほとんどなし。
×:色移りあり、べとつきあり。
【0144】
〔色相(黄ばみ)評価〕
上記印刷方法を用い、各色16階調のハーフトーン画像を作成し、中濃度部(40%)の色相測定を行った。ここで、色相の測定は、分光光度計(スペクトラアイ、グレタグマクベス社製)を用い、光源F8、視野角2度の条件でL***を測定した。チオキサントン化合物を含まないインクで作製したサンプルをΔE0と定義し以下の評価基準により評価した。
◎:ΔE<2 黄ばみがほとんど認識できない
○:2≦ΔE<3 黄ばみがわかるがあまり目立たない
×:ΔE≧3 黄ばみが目立つ
Dは視認できるレベルであり実用上問題がある。
なお、上記の黄ばみは、重合開始剤の長波側の吸収、又は、重合開始剤の分解・構造変化によって生じていると考えられる。
【0145】
〔粒状性評価〕
上記印刷方法を用い各色16階調のハーフトーン画像を作成し、ハイライト部分(10〜40%)の粒状性を評価した。評価は15人の一般評価者による目視評価を行い、以下の基準により判定した。
◎:画像にざらつき感が見られないと評価した人が12人以上
○:画像にざらつき感が見られないと評価した人が8人以上
×:画像にざらつき感が見られないと評価した人が7人以下
得られた評価結果を、インクの処方と共に表1及び2に示した。
【0146】
〔延伸性評価〕
支持体をFassonPE(Fasson社製ポリエチレンフイルム:膜厚100μm)を用いる以外は、硬化感度と同様にして、硬化膜を作成した。得られた硬化膜を軸長5cm×幅2.5cmにカットし、引っ張り試験機((株)島津製作所製)を用いて、速度30cm/minで延伸させ、硬化膜が破断する伸び率を測定した。初期長から2倍の長さまで伸びた状態を伸び率100%と定義した。
◎: 伸び率 120%以上
○: 伸び率 100%以上120%未満
×: 伸び率 100%未満
【0147】
【表1】

【0148】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1対の同じ色相を有する濃色インク及び淡色インクを含有し、
前記濃色インク及び前記淡色インクがいずれも(成分A)ラジカル重合性化合物、(成分B)光重合開始剤、及び、(成分C)顔料、を含むインク組成物であり、
前記ラジカル重合性化合物として、単官能モノマー及び多官能モノマーを含有し、
前記濃色インク中の単官能モノマー/多官能モノマーの重量比(X)と前記淡色インク中の単官能モノマー/多官能モノマーの重量比(Y)が、X>Yの関係を満たすことを特徴とする
インクジェット記録用インクセット。
【請求項2】
X/Yが1.2以上5以下である、請求項1に記載のインクジェット記録用インクセット。
【請求項3】
前記インク組成物が、(成分B)光重合開始剤として、(成分B−1)チオキサントン系光重合開始剤を含む、請求項1又は2に記載のインクジェット記録用インクセット。
【請求項4】
前記濃色インク中のチオキサントン系光重合開始剤の濃度が前記淡色インク中のチオキサントン系光重合開始剤の濃度より大きい、請求項3に記載のインクジェット記録用インクセット。
【請求項5】
前記濃色インク及び前記淡色インクがいずれも、(成分B)光重合開始剤として、さらに(成分B−2)α−アミノアルキルフェノン化合物及び/又は(成分B−3)アシルフォスフィン化合物を含む、請求項3又は4に記載のインクジェット記録用インクセット。
【請求項6】
前記濃色インク中の(成分C)顔料の濃度が、前記淡色インク中の(成分C)顔料の濃度の3倍以上である、請求項1〜5のいずれか1つに記載のインクジェット記録用インクセット。
【請求項7】
前記単官能モノマーとしてN−ビニルカプロラクタムを含有する、請求項1〜6のいずれか1つに記載のインクジェット記録用インクセット。
【請求項8】
前記多官能モノマーとしてアルキレンオキシド基を有する(メタ)アクリレートを含有する、請求項1〜7のいずれか1つに記載のインクジェット記録用インクセット。
【請求項9】
360nm以上420nmの波長領域に発光ピーク波長を有するLED硬化用である、請求項1〜8のいずれか1つに記載のインクジェット記録用インクセット。
【請求項10】
請求項1〜8のいずれか1つに記載のインクジェット記録用インクセットにより印刷する工程、及び、360nm以上420nmの波長領域に発光ピーク波長を有するLEDによりインクを硬化する工程を含むことを特徴とする、インクジェット記録方法。

【公開番号】特開2012−140490(P2012−140490A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−292299(P2010−292299)
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】