説明

インクジェット記録用インク組成物、及びこれを用いた再生被記録媒体の製造方法

【課題】消色を短時間で行うことができ、得られる記録物の品質を向上させ、かつ、水性溶媒系のみならず非水性溶媒系にも適用可能な、消色性に優れ、実質的に紙の使用量を減らせるインクジェット記録用インク組成物を提供する。
【解決手段】フェノール性水酸基を有するトリフェニルメタン誘導体などのアリールメタン系色素、及びトリフェニルスルホニウム化合物及びジフェニルヨードニウム化合物などの光酸発生剤を含む、インクジェット記録用インク組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット記録用インク組成物、及びこれを用いた再生被記録媒体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、環境保護やコストの点から、消去可能なインクを用いて紙に情報を記録し、このインクを消去して白紙状態に戻した紙を再使用することにより、実質的な紙の使用量を減らす技術が注目されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、電子供与性呈色性有機化合物としてフルオラン化合物、電子受容性化合物として炭素数3乃至18の直鎖又は側鎖アルキル基を有する特定のアルコキシフェノール化合物、及び変色温度調節化合物としてステアリン酸ブチルを含有する感温変色性インクジェット記録用インクが開示されている。さらに、当該インクを用いて記録用紙に印字して得られる記録物は、25℃で消色状態にあり、15℃以下に冷却すると発色状態となり、18℃以上に加温すると再び消色することも開示されている。
【0004】
例えば、特許文献2には、呈色性化合物として2−アニリノ−3−メチル−6−(N−エチル−p−トルイジノ)フルオラン、顕色剤として2,4,4’−トリヒドロキシベンゾフェノン、及び消去剤としてヘコゲニンを含有するインクが開示されている。さらに、当該インクを用いて印字した紙を200℃に設定されたサーマルバーで加熱して、消色することも開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−172535号公報
【特許文献2】特開平10−88046号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記の特許文献1及び2に開示された技術はいずれも、フルオラン化合物(ロイコ体)と顕色剤(電子受容性化合物)との複合体、及び消去剤(変色温度調整剤)を用いて加熱する(加温を含む。以下同じ)。そして、これにより顕色剤と消去剤との間で複合体形成反応が起こる結果、フルオラン化合物と顕色剤とが解離して記録物を消色させるというものである。この場合、消色の際に熱エネルギーを要するため、記録物を加熱する必要がある。そのため、記録物に熱が伝達するまでにかなりの時間を要することから、消色に多大な時間がかかり、消色過程が非効率であるためコスト高になるという問題が生じる。
【0007】
また、被記録面に樹脂層が塗布されている写真用紙などの記録物の場合、記録物における表面及び裏面の間の熱膨張率が互いに異なるため、加熱中に記録物がカールしてしまう問題が生じる。さらに、上記特許文献1に開示された記録用紙(記録物)を商品として流通させた場合、例えば倉庫保管時に、この記録物の温度が40℃程度になることがあり、これにより消色してしまうという問題が生じる。
【0008】
また、上記特許文献1に開示の変色温度調整剤や上記特許文献2に開示の消去剤は、電子供与性呈色性有機化合物(呈色性化合物)から分離しておく必要があるため、インクにおいて水性溶媒の使用が必須となる。そのため、上記の特許文献1及び2に開示された技術は、非水性溶媒系インクに対して適用できず、非吸収性の被記録媒体に対して適用するためには別途乾燥機が必要となることから、装置が大型化したり、要求されるエネルギーが増大したりするという問題が生じる。
【0009】
このように、上記の特許文献1及び2に開示された技術は、消色過程が非効率でコスト高であり、フルオラン系染料を用いて記録した記録物の品質に劣り、かつ、非吸収性の被記録媒体を記録対象とする非水性溶媒系インクに対して適用しようとすると装置が大型化し必要なエネルギーが増大するといった問題が生じる。
【0010】
そこで、本発明は、消色を短時間で行うことができ、得られる記録物の品質を向上させ、かつ、水性溶媒系のみならず非水性溶媒系にも適用可能な、消色性に優れたインクジェット記録用インク組成物を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは上記課題を解決するため鋭意検討したところ、熱エネルギーの付与による記録物の消去方法は、上記の問題が生じることを知見した。そこで、熱エネルギーに代替可能な、上記の問題を生じない手段を検討したところ、紫外線エネルギーを利用することに想到した。
【0012】
一方、紫外線エネルギーの付与による記録物の消去方法は、熱エネルギーを付与せずに呈色性化合物から顕色剤を解離させることが困難となるため、不都合が生じる。そこで、紫外線エネルギーを利用して、色素を消色させる手段を鋭意検討したところ、フルオラン系染料などのアリールメタン系色素と光酸発生剤とを併用することにより、上記のような不都合が生じないことを見出した。
【0013】
具体的にいうと、上記アリールメタン系色素は、酸化還元反応により可逆的に着色したり消色したりする有機色素であり、還元型のものは無色であり酸化型のものは有色である。このうち、還元型(無色)のものを特にロイコ体という。
【0014】
ここで、消色の原理を説明する。光酸発生剤に紫外線を照射すると、紫外線の照射後に発生する酸が、拡散により僅かな時間で酸化型のアリールメタン系色素(発色体)と反応する。これにより当該色素が還元されて、無色体であるアリールメタン系色素のロイコ体となる。
【0015】
このように、紫外線を利用することにより、紫外線の照射直後に発生する酸が色素と反応するため、加熱による熱伝導と比べて、消色をはるかに短時間で行うことができる。
【0016】
また、消色目的で記録物に対し熱エネルギーを付与することがないため、記録物がカールすることなく、かつ、商品として流通させた場合に気温などの環境変化の影響も受けにくくなる。
【0017】
さらに、消色の際に、上記特許文献1に開示の変色温度調整剤及び上記特許文献2に開示の消去剤を使用する必要がないため、水性溶媒のみならず非水性溶媒(例えば有機溶媒)も使用可能であり、別途乾燥機を設けることなく非吸収性の被記録媒体にも記録でき、これにより装置の大型化や要求されるエネルギーの増大を回避できる。
【0018】
以上のことから、アリールメタン系色素と、紫外線を吸収することで反応する光酸発生剤と、を含むインクジェット記録用インク組成物により、上記の問題を解決できることを見出し、本発明を完成した。
【0019】
即ち、本発明は下記のとおりである。
[1]
アリールメタン系色素及び光酸発生剤を含む、インクジェット記録用インク組成物。
[2]
前記アリールメタン系色素がトリフェニルメタン誘導体である、[1]に記載のインクジェット記録用インク組成物。
[3]
前記アリールメタン系色素がフェノール性水酸基を有する、[1]又は[2]に記載のインクジェット記録用インク組成物。
[4]
前記光酸発生剤が、トリフェニルスルホニウム化合物及びジフェニルヨードニウム化合物のうち少なくともいずれかを含む、[1]〜[3]のいずれかに記載のインクジェット記録用インク組成物。
[5]
グリセリン、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、及びトリメチロールプロパンからなる群から選ばれる1種以上をさらに含む、[1]〜[4]のいずれかに記載のインクジェット記録用インク組成物。
[6]
水性インク又は非水性インクである、[1]〜[5]のいずれかに記載のインクジェット記録用インク組成物。
[7]
前記非水性インクが、溶媒としてγ−ブチロラクトンを含む、[1]〜[6]のいずれかに記載のインクジェット記録用インク組成物。
[8]
[1]〜[7]のいずれかに記載のインクジェット記録用インク組成物を被記録媒体上に記録して得られた記録物から、紫外線照射により前記インクジェット記録用インク組成物を消色し、再利用可能な被記録媒体を製造する、再生被記録媒体の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に制限されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0021】
[インクジェット記録用インク組成物]
本発明の一実施形態に係るインクジェット記録用インク組成物は、アリールメタン系色素及び光酸発生剤を必須に含む。以下、当該インクジェット記録用インク組成物に含まれるか、又は所望により含まれ得る成分(添加剤)を説明する。
【0022】
〔アリールメタン系色素〕
アリールメタン系色素及びその作用や機能については、上述のとおりである。
【0023】
アリールメタン系色素を構成するアリールメタン系化合物として、以下に限定されないが、例えば、トリフェニルメタン系化合物、フルオラン系化合物、フルオレン系化合物、フタリド系化合物、インドリルアザフタリド等のアザフタリド系化合物、ローダミンラクタム系化合物、ローダミンラクトン系化合物、並びにクロメノインドール及びピロロチアジン等の非ラクトン系化合物などが挙げられる。
なお、上記の分類は、非特許文献(松居正樹、外24名、「機能性色素の合成と応用技術」、シーエムシー出版、2007年10月、第1編、第6章)における分類法に拠っている。
【0024】
上記トリフェニルメタン系化合物(トリフェニルメタン誘導体)として、以下に限定されないが、例えば、3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)−6−ジメチルアミノフタリド[別名:クリスタルバイオレットラクトン(Crystal Violet Lactone:CVL)]、3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)フタリド[別名:マラカイトグリーンラクトン(Malachite Green Lactone:MGL)]、4,4’,4”−トリ〔N,N−ジ(3−スルホプロピル)アミノ〕トリフェニルメタン六ナトリウム塩、ビス〔4−(N−エチル−N−(3−スルホプロピル)アミノ−2−メトキシフェニル)〕〔4−(N,N−ジエチルアミノ)フェニル〕メタン二ナトリウム塩、ビス〔4−(N−エチル−N−(3−スルホプロピル)アミノフェニル)〕〔4−(N,N−ジエチルアミノ)フェニル〕メタン二ナトリウム塩、ビス〔4−(N−エチル−N−(2−ヒドロキシ−3−スルホプロピル)アミノ−2−メチルフェニル)〕〔4−(N,N−ジエチルアミノ)フェニル〕メタン二ナトリウム塩、ビス〔4−(N−エチル−N−(3−スルホプロピル)アミノ−2−メトキシフェニル)〕〔4−(N,N−ジメチルアミノ)フェニル〕メタン二ナトリウム塩、ビス〔4−(N−エチル−N−(3−スルホプロピル)アミノフェニル)〕〔4−(N,N−ジメチルアミノ)フェニル〕メタン二ナトリウム塩、ビス〔4−(N−エチル−N−(2−ヒドロキシ−3−スルホプロピル)アミノ−2−メチルフェニル)〕〔4−(N,N−ジメチルアミノ)フェニル〕メタン二ナトリウム塩、ビス〔4−(N−エチル−N−(3−スルホプロピル)アミノフェニル)〕(4−クロロフェニル)メタン二ナトリウム塩、ビス〔4−(N−エチル−N−(3−スルホプロピル)アミノフェニル)〕(4−ヒドロキシフェニル)メタン二ナトリウム塩、ビス〔4−(N−エチル−N−(3−スルホプロピル)アミノフェニル)〕(2−スルホフェニル)メタン三ナトリウム塩、及び3,3’−ビス(p−ヒドロキシフェニル)フタリドが挙げられる。
【0025】
上記フルオラン系化合物として、以下に限定されないが、例えば、2−クロロ−6−ジエチルアミノフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジブチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジペンチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N−メチル−N−シクロヘキシルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N−エチル−N−イソペンチルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N−エチル−N−イソブチルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−[N−エチル−N−(3−エトキシプロピル)アミノ]−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N−エチル−N−ヘキシルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N−メチル−N−プロピルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N−エチル−N−テトラヒドロフリルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−(p−クロロアニリノ)フルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−(p−フルオロアニリノ)フルオラン、3−[N−エチル−N−(p−トリル)アミノ]−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−(p−トルイジノ)フルオラン、3−ジエチルアミノ−7−(o−クロロアニリノ)フルオラン、3−ジブチルアミノ−7−(o−クロロアニリノ)フルオラン、3−ジエチルアミノ−7−(o−フルオロアニリノ)フルオラン、3−ジブチルアミノ−7−(o−フルオロアニリノ)フルオラン、3−ジエチルアミノ−7−(3,4−ジクロロアニリノ)フルオラン、3−ピロリジノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−クロロ−7−エトキシエチルアミノフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−クロロ−7−アニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−クロロフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−メチルフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−オクチルフルオラン、3−[N−エチル−N−(p−トリル)アミノ]−6−メチル−7−フェネチルフルオラン、及び2’−メチル−6’−(N−p−トリル−N−エチルアミノ)スピロ[イソベンゾフラン−1(3H),9’−[9H]キサンテン]−3−オン[別名:6−(エチルメチルアミノ)−2−メチルフルオラン]等が挙げられる。
【0026】
上記フルオレン系化合物として、以下に限定されないが、例えば、3,6−ビス(ジメチルアミノ)フルオレンスピロ(9,3’)−6’−ジメチルアミノフタリド、3,6−ビス(ジメチルアミノ)フルオレンスピロ(9,3’)−6’−ピロリジノフタリド、3−ジメチルアミノ−6−ジエチルアミノフルオレンスピロ(9,3’)−6’−ピロリジノフタリド等が挙げられる。
【0027】
上記フタリド系化合物として、以下に限定されないが、例えば、3,3−ビス(1−n−ブチル−2−メチル−3−インドリル)フタリド、3−(p−ジメチルアミノフェニル)−3−(1,2−ジメチルアミノインドール−3−イル)フタリド、3−(p−ジメチルアミノフェニル)−3−(2−メチルインドール−3−イル)フタリド、3−(p−ジメチルアミノフェニル)−3−(2−フェニルインドール−3−イル)フタリド、3,3−ビス(1,2−ジメチルインドール−3−イル)−5−ジメチルアミノフタリド、3,3−ビス(1,2−ジメチルインドール−3−イル)−6−ジメチルアミノフタリド、3,3−ビス(9−エチルカルバゾール−3−イル)−5−ジメチルアミノフタリド、3,3−(2−フェニルインドール−3−イル)−5−ジメチルアミノフタリド、3−(p−ジメチルアミノフェニル)−3−(1−メチルピロール−2−イル)−6−ジメチルアミノフタリド等が挙げられる。
【0028】
上記アザフタリド系化合物として、以下に限定されないが、例えば、3,3−ビス(4−ジエチルアミノ−2−エトキシフェニル)−4−アザフタリド、3−(4−ジエチルアミノ−2−エトキシフェニル)−3−[4−(N−エチル−N−フェニルアミノ)−2−エトキシフェニル]−4−アザフタリド、3−(4−ジエチルアミノ−2−エトキシフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−4−アザフタリド、3−(4−ジエチルアミノ−2−エトキシフェニル)−3−(1−n−オクチル−2−メチルインドール−3−イル)−4−アザフタリド等が挙げられる。
【0029】
上記ローダミンラクタム系化合物として、以下に限定されないが、例えば、ローダミン−β−アニリノラクタム、ローダミン−(o−クロロアニリノ)ラクタム、ローダミン−(p−ニトロアニリノ)ラクタム、ローダミン−β−(p−クロロアニリノ)ラクタム、ローダミン−β−(o−クロロアミノラクタム)等が挙げられる。
【0030】
上記ローダミンラクトン系化合物として、以下に限定されないが、例えば、ローダミン−β−ラクトン等が挙げられる。
【0031】
また、上記非ラクトン系化合物として、以下に限定されないが、例えば、3,6−ビス(ジメチルアミノ)−3’−メチル−スピロ〔フルオレン−9,6’−6’H−クロメノ(4,3−b)インドール〕及び3,6−ビス(ジエチルアミノ)−3’−メチル−スピロ〔フルオレン−9,6’−6’H−クロメノ(4,3−b)インドール〕等のクロメノインドール等が挙げられる。
【0032】
上記で列挙したアリールメタン系化合物の中でも、消色性が良好となるため、トリフェニルメタン系化合物(トリフェニルメタン誘導体)が好ましい。上記で列挙したトリフェニルメタン誘導体の中でも、3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)−6−ジメチルアミノフタリド[別名:クリスタルバイオレットラクトン(CVL)]、3,3’−ビス(p−ヒドロキシフェニル)フタリドが好ましい。
【0033】
また、上記で列挙したアリールメタン系化合物のうち、更に良好な消色性が得られるため、フェノール性水酸基を有する化合物も好ましい。中でも、2’−メチル−6’−(N−p−トリル−N−エチルアミノ)スピロ[イソベンゾフラン−1(3H),9’−[9H]キサンテン]−3−オンが好ましい。
なお、フェノール性水酸基とは、ベンゼン環などの芳香族炭化水素に結合した水酸基である。
【0034】
また、アリールメタン系色素として市販品を用いてもよい。市販品としては、例えば、クリスタルバイオレットラクトン(東京化成工業社(Tokyo Chemical Industry Co., Ltd.)製商品名、クリスタルバイオレットラクトン(CVL))、B−63(山本化成社(Yamamoto Chemicals,Inc.)製商品名、3−(4−ジエチルアミノ−2−エトキシフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−4−アザフタリド)、PSD−HR(日本曹達社(Nippon Soda Co., Ltd.)製商品名、2−クロロ−6−ジエチルアミノフルオラン)、RED−40(山本化成社製商品名、3,3−ビス(1−n−ブチル−2−メチル−3−インドリル)フタリド)、フェノールフタレイン(関西機器製作所(KANSAIKIKI)社製)、及び感圧色素RED520(山田化学社製、3−[エチル(p−トリル)アミノ]−7−メチルフルオラン)が挙げられる。
【0035】
アリールメタン系色素は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0036】
アリールメタン系色素は、インクジェット記録用インク組成物の総質量(100質量%)に対して、0.5〜10質量%が好ましく、1〜5質量%がより好ましい。含有量が上記範囲内であると、良好な画像発色性及び消色性が得られる。
【0037】
〔光酸発生剤〕
光酸発生剤及びその作用や機能については、上述のとおりである。要するに、光酸発生剤は、紫外線などの光が照射されることにより、酸を発生する添加剤である。
【0038】
光酸発生剤としては、以下に限定されないが、例えば、スルホニウム化合物(例えばトリフェニルスルホニウム化合物)、ヨードニウム化合物(例えばジフェニルヨードニウム化合物)、及びジアゾニウム塩などのオニウム塩、スルホニル化合物(例えば、スルホニルジアゾメタン化合物、ビススルホニル化合物)、ジスルホン化合物、スルホネート化合物(例えば芳香族スルホネート化合物)、グリオキシム化合物、スルファミド化合物、キノンジアジド化合物、及び有機ハロゲン化物などの化合物(誘導体)が挙げられる。
これらの中でも、良好な消色性が得られるため、光酸発生剤が、トリフェニルスルホニウム化合物及びジフェニルヨードニウム化合物のうち少なくともいずれかを含むことが好ましい。
【0039】
上記トリフェニルスルホニウム化合物の具体例として、以下に限定されないが、トリフェニルスルホニウムクロライド、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアルセネート、トリフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート(トリフルオロメタンスルホン酸トリフェニルスルホニウム)、p−トルエンスルホン酸トリフェニルスルホニウム、ノナフルオロブタンスルホン酸トリフェニルスルホニウム、ブタンスルホン酸トリフェニルスルホニウム、及びトリフェニルスルホニウムトリフレートが挙げられる。
【0040】
上記ジフェニルヨードニウム化合物の具体例として、以下に限定されないが、ジフェニルヨードニウムトリフレート、トリフルオロメタンスルホン酸ジフェニルヨードニウム、p−トルエンスルホン酸ジフェニルヨードニウム、トリフルオロメタンスルホン酸(p−tert−ブトキシフェニル)フェニルヨードニウム、及びp−トルエンスルホン酸(p−tert−ブトキシフェニル)フェニルヨードニウムが挙げられる。
【0041】
これら以外のオニウム塩の具体例としては、トリフルオロメタンスルホン酸(p−tert−ブトキシフェニル)ジフェニルスルホニウム、トリフルオロメタンスルホン酸ビス(p−tert−ブトキシフェニル)フェニルスルホニウム、トリフルオロメタンスルホン酸トリス(p−tert−ブトキシフェニル)スルホニウム、p−トルエンスルホン酸(p−tert−ブトキシフェニル)ジフェニルスルホニウム、p−トルエンスルホン酸ビス(p−tert−ブトキシフェニル)フェニルスルホニウム、p−トルエンスルホン酸トリス(p−tert−ブトキシフェニル)スルホニウム、トリフルオロメタンスルホン酸トリメチルスルホニウム、p−トルエンスルホン酸トリメチルスルホニウム、トリフルオロメタンスルホン酸シクロヘキシルメチル(2−オキソシクロヘキシル)スルホニウム、p−トルエンスルホン酸シクロヘキシルメチル(2−オキソシクロヘキシル)スルホニウム、トリフルオロメタンスルホン酸ジメチルフェニルスルホニウム、p−トルエンスルホン酸ジメチルフェニルスルホニウム、トリフルオロメタンスルホン酸ジシクロヘキシルフェニルスルホニウム、p−トルエンスルホン酸ジシクロヘキシルフェニルスルホニウム、トリフルオロメタンスルホン酸トリナフチルスルホニウム、トリフルオロメタンスルホン酸シクロヘキシルメチル(2−オキソシクロヘキシル)スルホニウム、トリフルオロメタンスルホン酸(2−ノルボニル)メチル(2−オキソシクロヘキシル)スルホニウム、エチレンビス[メチル(2−オキソシクロペンチル)スルホニウムトリフルオロメタンスルホナート]、及び下記式(1)で表されるトリアリールスルホニウム塩が挙げられる。
【0042】
【化1】

(上記式中、Yは、PF6、SbF6、又はリン系アニオンを表す。)
【0043】
また、上記以外の光酸発生剤の具体例として、以下に限定されないが、ジフェニルスルホニルジアゾメタン、ビス(ベンゼンスルホニル)ジアゾメタン、ビス(p−トルエンスルホニル)ジアゾメタン、ビス(キシレンスルホニル)ジアゾメタン、ビス(シクロヘキシルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(シクロペンチルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(n−ブチルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(イソブチルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(sec−ブチルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(n−プロピルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(イソプロピルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(tert−ブチルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(n−アミルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(イソアミルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(sec−アミルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(tert−アミルスルホニル)ジアゾメタン、1−シクロヘキシルスルホニル−1−(tert−ブチルスルホニル)ジアゾメタン、1−シクロヘキシルスルホニル−1−(tert−アミルスルホニル)ジアゾメタン、及び1−tert−アミルスルホニル−1−(tert−ブチルスルホニル)ジアゾメタン等のスルホニルジアゾメタン化合物、並びに、ビスナフチルスルホニルメタン、ビストリフルオロメチルスルホニルメタン、ビスメチルスルホニルメタン、ビスエチルスルホニルメタン、ビスプロピルスルホニルメタン、ビスイソプロピルスルホニルメタン、ビス−p−トルエンスルホニルメタン、及びビスベンゼンスルホニルメタン等のビススルホニル化合物、並びに、ジフェニルスルホニルメタン等の上記以外のスルホニル化合物、並びに、2−シクロヘキシルカルボニル−2−(p−トルエンスルホニル)プロパン、2−イソプロピルカルボニル−2−(p−トルエンスルホニル)プロパン等のβ−ケトスルホン誘導体、ジフェニルジスルホン、及びジシクロヘキシルジスルホン等のジスルホン化合物、並びに、2,3,4,4−テトラヒドロキシベンゾフェノン−4−ナフトキノンジアジドスルホネート、p−トルエンスルホン酸2,6−ジニトロベンジル、p−トルエンスルホン酸2,4−ジニトロベンジル、1,2,3−トリス(メタンスルホニルオキシ)ベンゼン、1,2,3−トリス(トリフルオロメタンスルホニルオキシ)ベンゼン、1,2,3−トリス(p−トルエンスルホニルオキシ)ベンゼン、N−ヒドロキシスクシンイミドメチルスルホン酸エステル、N−ヒドロキシスクシンイミドトリフルオロメチルスルホン酸エステル、N−ヒドロキシスクシンイミドエチルスルホン酸エステル、N−ヒドロキシスクシンイミドプロピルスルホン酸エステル、N−ヒドロキシスクシンイミドイソプロピルスルホン酸エステル、N−ヒドロキシスクシンイミドペンチルスルホン酸エステル、N−ヒドロキシスクシンイミドオクチルスルホン酸エステル、N−ヒドロキシスクシンイミド−p−トルエンスルホン酸エステル、N−ヒドロキシスクシンイミド−p−アニシルスルホン酸エステル、N−ヒドロキシスクシンイミド−2−クロロエチルスルホン酸エステル、N−ヒドロキシスクシンイミドベンゼンスルホン酸エステル、N−ヒドロキシスクシンイミド−2,4,6−トリメチルフェニルスルホン酸エステル、N−ヒドロキシスクシンイミドナフチルスルホン酸エステル、N−ヒドロキシ−2−フェニルスクシンイミドメチルスルホン酸エステル、N−ヒドロキシマレイミドメチルスルホン酸エステル、N−ヒドロキシマレイミドエチルスルホン酸エステル、N−ヒドロキシ−2−フェニルマレイミドメチルスルホン酸エステル、N−ヒドロキシグルタルイミドメチルスルホン酸エステル、N−ヒドロキシグルタルイミドフェニルスルホン酸エステル、N−ヒドロキシフタルイミドメチルスルホン酸エステル、N−ヒドロキシフタルイミドフェニルスルホン酸エステル、N−ヒドロキシフタルイミドトリフルオロメタンスルホン酸エステル、N−ヒドロキシフタルイミド−p−トルエンスルホン酸エステル、N−ヒドロキシ−1,8−ナフタルイミドメチルスルホン酸エステル、N−ヒドロキシ−1,8−ナフタルイミドフェニルスルホン酸エステル、N−ヒドロキシ−5−ノルボルネン−2,3−ジカルボキシイミドメチルスルホン酸エステル、N−ヒドロキシ−5−ノルボルネン−2,3−ジカルボキシイミドトリフルオロメタンスルホン酸エステル、N−ヒドロキシ−5−ノルボルネン−2,3−ジカルボキシイミド−p−トルエンスルホン酸エステル等のスルホネート化合物、並びに、ビス−o−(p−トルエンスルホニル)−α−ジメチルグリオキシム、ビス−o−(p−トルエンスルホニル)−α−ジフェニルグリオキシム、ビス−o−(p−トルエンスルホニル)−α−ジシクロヘキシルグリオキシム、ビス−o−(p−トルエンスルホニル)−2,3−ペンタンジオングリオキシム、ビス−o−(p−トルエンスルホニル)−2−メチル−3,4−ペンタンジオングリオキシム、ビス−o−(n−ブタンスルホニル)−α−ジメチルグリオキシム、ビス−o−(n−ブタンスルホニル)−α−ジフェニルグリオキシム、ビス−o−(n−ブタンスルホニル)−α−ジシクロヘキシルグリオキシム、ビス−o−(n−ブタンスルホニル)−2,3−ペンタンジオングリオキシム、ビス−o−(n−ブタンスルホニル)−2−メチル−3,4−ペンタンジオングリオキシム、ビス−o−(メタンスルホニル)−α−ジメチルグリオキシム、ビス−o−(トリフルオロメタンスルホニル)−α−ジメチルグリオキシム、ビス−o−(1,1,1−トリフルオロエタンスルホニル)−α−ジメチルグリオキシム、ビス−o−(tert−ブタンスルホニル)−α−ジメチルグリオキシム、ビス−o−(パーフルオロオクタンスルホニル)−α−ジメチルグリオキシム、ビス−o−(シクロヘキサンスルホニル)−α−ジメチルグリオキシム、ビス−o−(ベンゼンスルホニル)−α−ジメチルグリオキシム、ビス−o−(p−フルオロベンゼンスルホニル)−α−ジメチルグリオキシム、ビス−o−(p−tert−ブチルベンゼンスルホニル)−α−ジメチルグリオキシム、ビス−o−(キシレンスルホニル)−α−ジメチルグリオキシム、及びビス−o−(カンファースルホニル)−α−ジメチルグリオキシム等のグリオキシム化合物が挙げられる。
【0044】
上記光酸発生剤の市販品として、例えば、WPAG−145(ビス(シクロヘキシルスルフォニル)ジアゾメタン)、WPAG−170(ビス(t−ブチルスルホニル)ジアゾメタン)、WPAG−199(ビス(p−トルエンスルホニル)ジアゾメタン)、WPAG−281(トリフェニルスルホニウム トリフルオロメタンスルホネート)、WPAG−336(ジフェニル−4−メチルフェニルスルホニウム トリフルオロメタンスルホネート)、WPAG−367(ジフェニル−2,4,6−トリメチルフェニルスルホニウム p−トルエンスルホネート)(以上、和光純薬工業社(Wako Pure Chemical Industries, Ltd.)製商品名)、CPI−100P、CPI−101A、CPI−200K、CPI−210S(いずれも上記式(1)で表されるトリアリールスルホニウム塩、以上サンアプロ社(San-Apro Ltd.)製商品名)等が挙げられる。
【0045】
光酸発生剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0046】
光酸発生剤は、インクジェット記録用インク組成物の総質量(100質量%)に対して、0.5〜10質量%が好ましく、1〜3質量%がより好ましい。含有量が上記範囲内であると、良好な消色性が得られる。
【0047】
他方、インク組成物に塩基化合物が含まれている場合、光酸発生剤の含有量は、塩基化合物の総モル量に対して、1モル当量以上が好ましく、3モル当量以上がより好ましい。含有量が上記範囲内であると、良好な発色性が得られる。なお、含有量の上限は、インク組成物に含まれる他の成分の含有量に応じて決まるため、特に制限されない。上記の塩基化合物としては、例えば、アンモニア及び水酸化カリウム等の無機塩基、並びにトリエタノールアミン及びトリイソプロパノールアミン等の有機塩基が挙げられる。
【0048】
〔界面活性剤〕
インクジェット記録用インク組成物は、界面活性剤を含んでもよい。当該界面活性剤としては、陽イオン性、陰イオン性、両性、及び非イオン性のいずれも使用可能である。
【0049】
非イオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン2級アルコールエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル(例えばエマルゲン911)、ポリオキシエチレンステロールエーテル、ポリオキシエチレンラノリン誘導体、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル(例えばニューポールPE−62)、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンヒマシ油、硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、脂肪酸モノグリセリド、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、脂肪酸アルカノールアミド、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、ポリオキシエチレンアルキルアミン、アルキルアミンオキサイド、アセチレングリコール、アセチレンアルコール等が挙げられる。
【0050】
これらの中でも、本実施形態のインクジェット記録用インク組成物は、界面活性剤としてアセチレングリコール系界面活性剤及びアセチレンアルコール系界面活性剤の少なくともいずれかを含むことが好ましく、アセチレングリコール系界面活性剤を含むことがより好ましい。これにより、インクジェット記録用インク組成物が水性インクである場合、これに含まれる水性溶媒が被記録媒体へ浸透しやすくなるため、種々の被記録媒体に対して滲みの少ない画像を形成できる。
【0051】
アセチレングリコール系界面活性剤の市販品として、特に限定されないが、サーフィノール 104、82、465、485、104PG50、及びTG(以上商品名、Air Products and Chemicals. Inc.より入手可能)、並びにオルフィンSTG及びオルフィンE1010(以上商品名、日信化学社(Nissin Chemical Industry Co., Ltd.)製)が挙げられる。また、アセチレンアルコール系界面活性剤として、特に限定されないが、例えばサーフィノール61(商品名、Air Products and Chemicals. Inc.より入手可能)が挙げられる。
【0052】
これらの界面活性剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0053】
これらのアセチレングリコール系界面活性剤及びアセチレンアルコール系界面活性剤のうち少なくともいずれかは、インクジェット記録用インク組成物の総質量(100質量%)に対して、0.1〜1質量%が好ましい。含有量が上記範囲内であると、画像鮮鋭性に優れる。
【0054】
〔湿潤剤(保湿剤)〕
インクジェット記録用インク組成物は、湿潤剤(保湿剤)として高沸点(例えば100℃以上)の水溶性有機溶剤をさらに含んでもよい。
【0055】
上記の水溶性有機溶剤としては、グリセリン、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、N−メチルピロリドン、2−ピロリドン、1,5−ペンタジオール、1,4−ブタンジオール、1,3−プロパンジオール、ポリエチレングリコール、チオジグリコール、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、トリメチロールプロパン、1,4−シクロペンタンジオール等が挙げられる。
【0056】
これらの中でも、上記インクジェット記録用インク組成物は、吐出安定性に優れたり酸による消色効果が得られやすくなったりするため、沸点が200℃以上の多価アルコールとして、グリセリン、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、及びトリメチロールプロパンからなる群から選ばれる1種以上をさらに含むことが好ましい。
【0057】
湿潤剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0058】
インクジェット記録用インク組成物に上記の水溶性有機溶剤を添加することにより、開放状態、即ち室温でインクが空気に触れている状態で放置しても、流動性と再分散性とを長時間維持できるインクジェット記録用インクを得ることができる。さらに、このような記録液は、インクジェットプリンターを用いての印字中又は印字中断後の再起動時に、インクジェットノズルの目詰まりが生じにくくなるため、インクジェットノズルからの優れた吐出安定性を有するインクジェット記録用インク組成物が得られる。
【0059】
湿潤剤の含有量は、インクジェット記録用インク組成物の総質量(100質量%)に対して、2〜25質量%が好ましい。含有量が上記範囲内であると、吐出安定性に優れる。
【0060】
〔湿潤剤以外の有機溶剤〕
インクジェット記録用インク組成物は、上記湿潤剤(保湿剤)以外の有機溶剤を含んでもよい。当該有機溶剤としては、特に限定されないが、好ましくは極性有機溶媒を用いることができる。上記極性有機溶媒として、以下に限定されないが、例えば、アルコール類(例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、ブチルアルコール、イソプロピルアルコール、フッ化アルコール)、ケトン類(例えば、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、ラクトン)、カルボン酸エステル類(例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル)、及びエーテル類(例えば、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、アルキレングリコールエーテル)が挙げられる。これらの有機溶剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0061】
これらの中でも、上記有機溶剤は、アルキレングリコールエーテル及びラクトンのうち少なくともいずれかを含むことが好ましく、アルキレングリコールジエーテル、アルキレングリコールモノエーテル、及びラクトンからなる群より選択される一種以上を含むことがより好ましい。
【0062】
上記アルキレングリコールモノエーテルとしては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチエレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、テトラエチレングリコールモノエチルエーテル、テトラエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテルが挙げられる。
【0063】
上記アルキレングリコールジエーテルとしては、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジブチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジエチルエーテル、テトラエチレングリコールジブチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテルが挙げられる。
【0064】
上記ラクトンとしては、γ−ブチロラクトン、δ−バレロラクトン、ε−カプロラクトンが挙げられる。中でも、上記非水性インクは、含まれる固形分を効果的に溶解させることができるため、溶媒としてγ−ブチロラクトンを含むことが好ましい。
【0065】
上記の有機溶剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0066】
また、上記の有機溶剤の含有量は、インクの総質量(100質量%)に対して、1〜20質量%が好ましい。含有量が上記範囲内であると、普通紙への鮮鋭な印字品質が得られる。
【0067】
〔pH調整剤〕
インクジェット記録用インク組成物は、pH調整剤を含んでもよい。当該pH調整剤として、具体的には水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸リチウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウム、シュウ酸ナトリウム、シュウ酸カリウム、シュウ酸リチウム、ホウ酸ナトリウム、四ホウ酸ナトリウム、フタル酸水素カリウム、及び酒石酸水素カリウムなどのアルカリ金属塩類;アンモニア;並びに、メチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン塩酸塩、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、トリイソプロペノールアミン、ブチルジエタノールアミン、モルホリン、及びプロパノールアミン(例えばトリイソプロパノールアミン)等のアミン類などが挙げられる。
【0068】
pH調整剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0069】
pH調整剤のインクジェット記録用インク組成物に占める含有量は、インクのpHに依存するため、特に制限されない。なお、インクジェット記録用インク組成物のpHは、良好な吐出安定性が得られるため、7〜9が好ましい。
【0070】
〔水〕
インクジェット記録用インク組成物は、溶媒として水を含んでもよい。水としては、イオン交換水、限外濾過水、逆浸透水、蒸留水等の純水、又は超純水を用いることができる。
【0071】
本実施形態のインクジェット記録用インク組成物は、水性インク又は非水性インクのいずれであってもよい。なお、水又は水系有機溶媒を主溶媒として含有するインクは、上記水性インクに相当する。ここでいう「主溶媒」とは、インク中のあらゆる溶媒のうち最も含有量の多い溶媒成分をいう。また、本明細書における「水系有機溶媒」とは、水と水溶性有機溶剤との混合溶媒を意味する。他方、水を実質的に含まず有機溶剤を主溶媒として含有するインクは、上記非水性インクに相当する。
なお、この非水性インクは、上記水性インクとともに溶媒系のインクに分類され、紫外線硬化型インク及びソリッドインクといった無溶媒系のインクとは異なるものである。
【0072】
このように、本実施形態によれば、消色を短時間で行うことができ、得られる記録物の品質を向上させ、かつ、水性溶媒系のみならず非水性溶媒系にも適用可能な、発色性及び消色性のいずれにも優れたインクジェット記録用インク組成物を提供することができる。
【0073】
[再生被記録媒体の製造方法]
本発明の一実施形態に係る再生被記録媒体の製造方法は、上記実施形態の発色性及び消色性のいずれにも優れたインクジェット記録用インク組成物を、記録物から消去(消色)することにより、再利用可能な高品質の被記録媒体を製造するものである。具体的には、上記インクジェット記録用インク組成物を被記録媒体上に記録して得られた記録物から、紫外線照射により当該インクジェット記録用インク組成物を消色し、再利用可能な被記録媒体を製造するというものである。
【0074】
上述したように、本実施形態の製造方法における消色プロセスは、上記特許文献1及び2における熱エネルギーの使用とは異なり、紫外線エネルギーを使用することを特徴とする。また、本実施形態の製造方法における消色の原理は、上記特許文献1及び2における消色剤を用いた加熱による顕色剤の溶解とは異なり、酸化型のアリールメタン系色素の紫外線照射による還元反応に拠ることを特徴とする。
【0075】
本実施形態における被記録媒体は、上記のようにインクジェット記録用インク組成物が水性インク及び非水性インクのいずれであってもよいため、吸収性の被記録媒体であってもよく、非吸収性の被記録媒体であってもよい。
【0076】
上記吸収性の被記録媒体としては、以下に限定されないが、例えば、水性インクの浸透性が高い電子写真用紙などの普通紙、インクジェット用紙(シリカ粒子やアルミナ粒子から構成されたインク吸収層、あるいは、ポリビニルアルコール(PVA)やポリビニルピロリドン(PVP)等の親水性ポリマーから構成されたインク吸収層を備えたインクジェット専用紙)から、水性インクの浸透性が比較的低い一般のオフセット印刷に用いられるアート紙、コート紙、キャスト紙等が挙げられる。
【0077】
上記非吸収性の被記録媒体としては、以下に限定されないが、例えば、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のプラスチック類のフィルムやプレート、鉄、銀、銅、アルミニウム等の金属類のプレート、又はそれら各種金属を蒸着により製造した金属プレートやプラスチック製のフィルム、ステンレスや真鋳等の合金のプレート等が挙げられる。
【0078】
また、紫外線の照射源として、水銀ランプ等のランプ、発光ダイオード(LED)、レーザーダイオード(LD)等が挙げられる。中でも好ましくは、良好な消色性及び装置簡便性が得られるため、水銀ランプ又はLEDである。
【0079】
水銀ランプの照射条件として、積算照度は100mJ/cm2以上であることが好ましい。一方、UV−LEDの照射条件として、照射波長は350〜400nmの範囲であることが好ましく、積算照度は200mJ/cm2以上であることが好ましい。これらの照射時間は、適宜調節すればよい。
【0080】
このように、本実施形態によれば、消色を短時間で行うことができ、得られる記録物の品質を向上させ、かつ、水性溶媒系のみならず非水性溶媒系にも適用可能な、消色性に優れた再生被記録媒体の製造方法を提供することができる。また、当該製造方法によれば、従来の加熱ではなく紫外線照射により、消色反応を行うことができる。さらに、当該製造方法によれば、上述の従来技術に比してはるかに高速で消色反応を行うことができる。
【0081】
特に、本実施形態の製造方法により再生された被記録媒体は、商品として流通させた場合に気温などの環境変化の影響を受けにくくなる。そのため、本実施形態の製造方法の対象となる記録物は、物流の際に使用され、現状廃棄せざるを得ず問題となっている表示タグ等であってもよい。
【実施例】
【0082】
以下、本発明の実施形態を実施例及び比較例によってさらに具体的に説明するが、本実施形態はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0083】
[使用材料]
〔色材〕
・色素1(フェノールフタレイン〔商品名〕、関西機器製作所社製、3,3’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フタリド)
・色素2(クリスタルバイオレットラクトン〔商品名〕、東京化成工業社製、3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)−6−ジメチルアミノフタリド)
・色素3(感圧色素RED520〔商品名〕、山田化学社製、2’−メチル−6’−(N−p−トリル−N−エチルアミノ)スピロ[イソベンゾフラン−1(3H),9’−[9H]キサンテン]−3−オン)
・C.I.Reactive Red 180(Duasyn Brilliant Red F3B−SF Liquid〔商品名〕、Clariant社製、1−ヒドロキシ−2−[[1−スルホ−7−[(2−ヒドロキシエチル)スルホニル]−2−ナフタレニル]アゾ]−8−(ベンゾイルアミノ)−3,6−ナフタレンジスルホン酸トリナトリウム、化学式:C29203Na3144
〔光酸発生剤〕
・光酸発生剤1(WPAG−281〔商品名〕、和光純薬社製)
・光酸発生剤2(CPI−210S〔商品名〕、サンアプロ社製)
〔界面活性剤〕
・オルフィンE1010(日信化学社製商品名、アセチレングリコール系界面活性剤、以下「E1010」と略記する。)
〔湿潤剤〕
・グリセリン
・トリエチレングリコールモノブチルエーテル(以下「TEGmBE」と略記する。)
・2−ピロリドン(以下「2−Py」と略記する。)
・トリエチレングリコール(以下「TEG」と略記する。)
〔pH調整剤〕
・トリイソプロパノールアミン(以下「TIPA」と略記する。)
〔溶媒〕
・水
・γ−ブチロラクトン(以下「GBL」と略記する。)
下記表1に記載された上記各成分を、表1に記載の組成(単位:質量%)となるように添加し、これを高速水冷式撹拌機により撹拌することにより、各インクを調製した。
【0084】
[消色性評価]
インクジェットプリンター(PM−G800〔商品名〕、セイコーエプソン社(Seiko Epson Corporation)製)を用いて、上記で調製した各インクを吐出し、普通紙(Xerox 4200〔商品名〕、Xerox社製)に2cm×2cm四方の正方形状にベタ印刷を行った(Duty100%)。
当該印字物に、紫外線(UV)照射機(RX FireFly UV Light Systems〔商品名〕、Phoseon社製)を用いて、照射波長395nm、出力1.5W/cm2のUV−LEDを2秒間照射した。
消色性は、印字濃度残存率を算出することにより評価した。印字濃度残存率を算出するための数式を以下に示す。
印字濃度残存率(%)=(照射後の印字濃度)/(照射前の印字濃度)×100
上記数式中、印字濃度は測色機(i1〔商品名〕、x-rite社製)を用いて測定した。評価基準は以下のとおりである。AからDまでが製品としての品質上許容される範囲である。
A:印字濃度残存率が10%未満(○)、
B:印字濃度残存率が10%以上20%未満(○△)、
C:印字濃度残存率が20%以上30%未満(△)、
D:印字濃度残存率が30%以上40%未満(△×)、
E:印字濃度残存率が40%を超えた(×)。
結果を下記表1に示す。なお、表1中、空欄部は無添加であることを表す。
【0085】
【表1】

【0086】
表1より、アリールメタン系色素及び光酸発生剤を含むインクジェット記録用インク組成物は、水性インク、非水性インクのいずれを問わず、消色性に優れることが分かった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アリールメタン系色素及び光酸発生剤を含む、インクジェット記録用インク組成物。
【請求項2】
前記アリールメタン系色素がトリフェニルメタン誘導体である、請求項1に記載のインクジェット記録用インク組成物。
【請求項3】
前記アリールメタン系色素がフェノール性水酸基を有する、請求項1又は2に記載のインクジェット記録用インク組成物。
【請求項4】
前記光酸発生剤が、トリフェニルスルホニウム化合物及びジフェニルヨードニウム化合物のうち少なくともいずれかを含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載のインクジェット記録用インク組成物。
【請求項5】
グリセリン、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、及びトリメチロールプロパンからなる群から選ばれる1種以上をさらに含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載のインクジェット記録用インク組成物。
【請求項6】
水性インク又は非水性インクである、請求項1〜5のいずれか1項に記載のインクジェット記録用インク組成物。
【請求項7】
前記非水性インクが、溶媒としてγ−ブチロラクトンを含む、請求項1〜6のいずれか1項に記載のインクジェット記録用インク組成物。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載のインクジェット記録用インク組成物を被記録媒体上に記録して得られた記録物から、紫外線照射により前記インクジェット記録用インク組成物を消色し、再利用可能な被記録媒体を製造する、再生被記録媒体の製造方法。

【公開番号】特開2012−131937(P2012−131937A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−286518(P2010−286518)
【出願日】平成22年12月22日(2010.12.22)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】