説明

インクジェット記録用シート

【課題】 従来のインクジェット記録用シートに基本的に要求される画像品質を維持しながら、生分解性を有し、且つ画像のにじみが抑制されたインクジェット記録用シートを提供する。
【解決手段】 基材の少なくとも一方の面にインク受理層を設けてなり、該基材が生分解性を有するものであり、該インク受理層が(A)ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライドおよび(B)ジメチルアミンとエピクロロヒドリンとの重合物を含有し、結着剤として(C)生分解性樹脂を含有した層であるインクジェット記録用シートである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はインクジェット記録用シートに関し、さらに詳しくは、優れた画像品質を維持しながら、生分解性を有し、且つ画像のにじみが抑制されたインクジェット記録用シートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
印画方式の一つとして、インクジェット記録方式は、高画質のフルカラー画像が容易に得られること、高速化が容易なこと、ランニングコストが低いこと等の利点により、コンピュータ用プリンター、カラー複写機等、多岐にわたる分野で急速に普及しつつある。そのため、インクジェット記録用シートに対して、適度な画像濃度、画像がにじまないこと、表面強度などの印画品質が要求されている。
【0003】
一方、ワープロ、パソコン等の普及にともなってこれらに使用される情報記録用紙の廃棄量が増加し問題になってきている。近年、環境問題において問題とされる廃棄物のうち、その多くをプラスチック製品が占めており、特に半永久的に分解しない特性から極めて処理困難な素材とされているが、特に高品位用途に利用されるインクジェット記録媒体は、プラスチック基材もしくは紙基材上にプラスチックをコーティングした基材が用いられるため、埋め立て廃棄されたとき、通常のプラスチックと同様に長年にわたって存在し続けることが問題となっている。
【0004】
これに対し、支持体として紙基材に脂肪族ポリエステルがコーティングされたものを用いことが提案されている(例えば特許文献1参照)。この支持体は生分解性が大きく、環境に対する影響という面では進歩したものである。しかしながら、画像品質が不十分であり、特に画像がにじんでしまうという問題がある。
【特許文献1】特開平11−198522号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、以上のような状況下で、従来のインクジェット記録用シートに基本的に要求される画像品質を維持しながら、生分解性を有し、且つ画像のにじみが抑制されたインクジェット記録用シートを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、前記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、インク受理層にポリジアリルジメチルアンモニウムクロライドおよびジメチルアミンとエピクロロヒドリンとの重合物を含有させ、生分解性樹脂を含有する結着剤を用いることにより、生分解性を有しながら、画像のにじみが抑制されるインクジェット記録用シートが得られることを見出した。すなわち、画像のにじみの問題に対しては、インク受理層にカチオン性物質を含有させることが知られているが、通常のカチオン性物質の添加では解決できず、特にポリジアリルジメチルアンモニウムクロライドおよびジメチルアミンとエピクロロヒドリンとの重合物を含有させることにより、画像のにじみを抑制する性能に非常に優れたものとなることが分かった。本発明は、かかる知見に基づいて完成したものである。
【0007】
すなわち、本発明は、以下のインクジェット記録用シートを提供するものである。
(1) 基材の少なくとも一方の面にインク受理層を設けてなり、該基材が生分解性を有するものであり、該インク受理層が(A)ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライドおよび(B)ジメチルアミンとエピクロロヒドリンとの重合物を含有し、結着剤として(C)生分解性樹脂を含有した層であることを特徴とするインクジェット記録用シート。
(2) (C)生分解性樹脂が、生分解性ポリエステルである(1)のインクジェット記録用シート。
(3) 生分解性ポリエステルが、脂肪族ポリエステルである(2)のインクジェット記録用シート。
(4) インク受理層中の固形分含有量として、(A)ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライドが2〜10質量%、(B)ジメチルアミンとエピクロロヒドリンとの重合物が0.5〜7質量%である(1)〜(3)いずれかのインクジェット記録用シート。
(5) インク受理層中の結着剤が(C)生分解性樹脂を50質量%以上含有するものである(1)〜(4)いずれかのインクジェット記録用シート。
【発明の効果】
【0008】
本発明では、基材として生分解性を有するものを用い、且つインク受理層において比較的大きい割合を占める結着剤に生分解性樹脂を含有したものを用いることにより、生分解性が大きいものが得られる。従って、本発明のインクジェット記録用シートは、使用後に廃棄物として地中に埋められた場合に分解され易く、環境に対する負荷が小さい。
また、インク受理層に(A)ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライドおよび(B)ジメチルアミンとエピクロロヒドリンとの重合物を含有させることにより、画像のにじみを抑制する性能が非常に優れたものとなり、染料タイプ、顔料タイプのいずれのインクを用いた場合でも画像の滲みを抑制できる。
更に本発明のインクジェット記録用シートは、画像濃度、色の再現性、インク受理層の濡れた状態での耐擦過性等の基本的に要求される品質に於いて極めて良好である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明のインクジェット記録用シートは、基材の少なくとも一方の面にインク受理層を設けてなり、該基材が生分解性を有するものである。
本発明のインクジェット記録用シートにおける基材は、生分解性を有するものであればよく、特に限定されるものではなく、生分解性プラスチックフィルム、紙、布、不織布等の種々のものが使用可能である。
本発明において「生分解性」とは、自然界に存在する微生物によって分解される性質をいう。
本発明において基材に用いられる生分解性プラスチックフィルムを形成する生分解性プラスチックは、このような特性を有して、かつ大気雰囲気中で実用上問題のない耐久性を持つプラスチックであり、特に限定されないが、好適に用いられるものとしては、ポリ乳酸、デンプン+変性ポリビニルアルコール混合体、ポリブチレンサクシネート/アジペート共重合体、ポリカプロラクトン、ポリヒドロキシブチレート/バリレート共重合体等が挙げられる。特に、分解の速さと強度の点から、ポリ乳酸が好適である。また、必要に応じ、強度向上等の目的で、生分解性を損なわない範囲で他のプラスチックを添加することもできる。
【0010】
また、紙としては、天然パルプを主体とするものなど、生分解性を有するものであれば特に限定されず、上質紙、中質紙、パルプ紙、クラフト紙、アート紙、コート紙、キャストコート紙などを用いることができる。
布、不織布としては、天然繊維を主体とするものなど、生分解性を有するものであれば特に限定されない。例えば、綿を主体とするもの等が挙げられる。また、不織布の中でも、特に、結着剤を用いないで形成されたものは生分解性が大きく、好適である。このような不織布としては、日清紡績社製の商品名「オイコス AP21201500」などが挙げられる。
【0011】
基材は、単層構造でも多層構造でもよい。多層構造を形成する方法としては、例えば、接着剤を介して層同士を貼り合せる方法、複数の押し出し機から複数の原料を押し出し合流させて製膜する、いわゆる共押出方法、フィルムの上に押出機から直接フィルムを押し出しながら貼り合わせて積層するいわゆる押し出しラミネート方法など、何れの公知方法を用いることができる。
【0012】
基材のインク受理層を設ける面には、インク受理層等との密着性や濡れ性を向上させるなどの目的で、所望により、酸化法や凹凸法などにより表面処理を施すことができる。上記酸化法としては、例えばコロナ放電処理、熱風処理などが挙げられ、また、凹凸法としては、例えばサンドブラスト法、溶剤処理法などが挙げられる。これらの表面処理法は基材の種類に応じて適宜選択されるが、一般にはコロナ放電処理法が効果および操作性などの面から好ましく用いられる。また、基材とインク受理層とに接するアンカーコート層を設ける、いわゆる易接着処理を施すこともできる。
【0013】
本発明のインクジェット記録用シートにおけるインク受理層は、填料、結着剤及びその他の添加剤からなる層である。
填料(フィラー)としては、有機、無機の制限はなく、シリカ、炭酸カルシウム、タルク、クレー、けいそう土、ポリスチレン、ポリメタクリレート、酸化チタン、焼成カオリン、含水マグネシウムシリケートなどが使用できる。これらは単独、又は混合して使用できる。
填料として、特に、シリカを用いると、画像品質やインク吸収性が向上し、好適である。シリカを用いる場合、その細孔容積の分布曲線に於いて、0.8〜1.3ml/gの範囲と1.5〜1.9ml/gの範囲の両方にピークを有するものとするのが好ましい。このためには、例えば、市販のシリカの中で細孔容積が0.8〜1.3ml/gの範囲のものと、1.5〜1.9ml/gの範囲のものを選択して混合して用いることも可能である。シリカをこのようにして用いると、インク吸収性とインク受理層の強度を両立させることができる。
【0014】
填料のインク受理層中の固形分含有量は、45〜70質量%であることが好ましく、50〜65質量%であることがより好ましい。70質量%以下とすることによりインク受理層の強度が優れたものとなり、45質量%以上とすることにより、インク吸収性が優れたものとなる。
【0015】
本発明においては、インク受理層における結着剤(バインダー)として(C)生分解性樹脂を含有するものが用いられる。
(C)成分の生分解性樹脂としては、特に限定されず、微生物産成系生分解性材料であるポリヒドロキシブチレート、ヒドロキシブチレート/バリレート共重合体、化学合成系生分解性材料であるポリブチレンサクシネート/カーボネート混合物、ポリ乳酸、乳酸系共重合ポリエステル、ポリカプロラクトン、ポリブチレンアジペート、ポリビニルアルコール、脂肪族ポリエステル、天然高分子系生分解性材料である酢酸セルロース、でんぷん、キトサン、セルロース等が挙げられる。これらを単独で、または混合して使用することができる。ポリ乳酸、乳酸系共重合ポリエステルなどの生分解性ポリエステルは安価で好適であり、特に脂肪族ポリエステルを用いると高品質画像が得られる。
また、生分解性ポリエステルとポリビニルアルコールを混合して用いると、画像品質、生分解性、インク受理層の強度を高い水準に維持し易いので好ましい。
【0016】
結着剤は、生分解性を有する樹脂のみを用いればよいが、必要に応じて本発明の効果を損なわない範囲で、他の結着剤を混合して用いても良い。その場合、使用できる結着剤としては、例えば、ポリビニルブチラール、ゼラチン、ポリビニルアセタール、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリエステル、アクリル系樹脂、ポリウレタン、塩素化ポリプロピレン、ポリバーサチック酸ビニル、これらの共重合物、スチレン−アクリル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、スチレン−ブタジエンゴム等が挙げられる。
但し、他の結着剤の使用量は、全結着剤中の固形分含有量として、生分解性を有する樹脂が50質量%以上であるようにすることが好ましく、90質量%以上であるようにすることがより好ましい。
【0017】
インク受理層中の結着剤の含有量は、インク受理層中の固形分として、15〜40質量%であることが好ましく、20〜35質量%であることがより好ましい。40質量%以下であることによりインク吸収性が優れたものとなり、15質量%以上であることによりインク受理層の強度が優れたものとなる。
【0018】
本発明においては、添加剤として、インク受理層にカチオン性物質である(A)ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライドおよび(B)ジメチルアミンとエピクロロヒドリンとの重合物を含有させる。
インク受理層の上記(A)成分と(B)成分の固形分含有量は、(A)ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライドが2〜10質量%、(B)ジメチルアミンとエピクロロヒドリンとの重合物が0.5〜7質量%であることが好ましく、(A)ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライドが4〜8質量%、(B)ジメチルアミンとエピクロロヒドリンとの重合物が2〜5質量%であることがより好ましい。(A)成分と(B)成分の含有量をこのような範囲とすることにより、画像濃度とにじみを抑制する性能がバランスし、高度な水準の優れた画像が得られる。
【0019】
インク受理層にカチオン性物質として、上記の(A)ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライドおよび(B)ジメチルアミンとエピクロロヒドリンとの重合物を含有させることによって優れた画像品質を得ることができるので、他のカチオン性物質を必ずしも含有させなくともよい。しかし、目的に応じ、他のカチオン性物質を混合させてもよい。他のカチオン性物質としては特に限定されず、ジシアンジアミド・ホルマリン重縮合物などのジシアン系のもの、ポリエチレンポリアミンなどのポリアミン系のもの、ポリアリルアミン塩などのポリカチオン系のものなど、公知のものから選択することができる。
【0020】
また、インク受理層に水溶性アルミニウム塩を含有させることが好ましい。これにより、耐水性、発色性、にじみの防止性能が向上する。使用可能な水溶性アルミニウム塩としては、塩基性乳酸アルミニウム、硫酸アルミニウムなどが挙げられる。
インク受理層中の水溶性アルミニウム塩の固形分含有量は、特に制限はないが、1〜5質量%の範囲が好ましい。水溶性アルミニウム塩の含有量が上記範囲内にあれば、前記効果がより向上すると共に、インク受理層の濡れた状態での耐擦過性も向上する。
さらに、インク受理層に水和アルミニウム酸化物を含有させることが好ましい。これにより、インク受理層の耐水性、にじみの防止性能、発色性が向上する。
インク受理層中の水和アルミニウム酸化物の固形分含有量は、特に制限はないが、0.5〜8質量%の範囲が好ましい。水和アルミニウム酸化物の含有量が上記範囲にあれば、前記効果がより向上すると共に、インク受理層の濡れた状態での耐擦過性も向上する。
【0021】
なお、インク受理層には、本発明の目的が損なわれない範囲で、必要に応じ、上記の添加剤(カチオン性物質、水溶性アルミニウム塩、水和アルミニウム酸化物)の他に、消泡剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、蛍光増白剤、防腐剤、顔料分散剤、増粘剤などの各種添加剤を含有させることができる。これらは、インク受理層形成用の塗工液に含有させて塗工することができる。
インク受理層の厚さ(乾燥後)は35〜50μmであることが好ましい。50μm以下であることにより、インク受理層の強度が優れたものとなり、35μm以上であることにより、インク吸収性が優れたものとなる。
【0022】
本発明のインクジェット記録用シートは、前記の如き、(A)ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライドおよび(B)ジメチルアミンとエピクロロヒドリンとの重合物を含有し、結着剤として(C)生分解性樹脂を含有するインク受理層(以下、「本発明のインク受理層」ということがある)を、基材上の少なくとも一方の面に、少なくとも1層以上有するものである。本発明のインク受理層は、基材の片面に設けてもよいし、両面に設けてもよく、基材の片面に2層以上設けてもよい。たとえば、基材の片面に本発明のインク受理層を、1層で設けたときと同じ層厚みになるように2層重ねると、インク受理層のひび割れを防止しやすくできる。
【0023】
また、本発明のインク受理層以外のインク受理層を併用してもよい。例えば本発明のインク受理層の効果を損なわないような、本発明のインク受理層以外のインク受理層を設けることもできる。一例として、本発明のインク受理層と基材との間に、填料が酸化チタンであるインク受理層を設け、インクジェット記録用シートの隠蔽性を高めることが挙げられる。更にまた、基材の本発明のインク受理層を有する面と反対の面に、他のインク受理層を設けることもできる。
本発明のインクジェット記録用シートにはインク受理以外の目的の層も設けてもよく、例えば、インク受理層と基材との間に密着力を向上させる目的でアンカーコート層を設けたり、隠蔽性を向上させる目的で不透明度が高い層を設けたり、紫外線吸収層やカール防止のための層を設ける場合が挙げられる。
【0024】
インク受理層やアンカーコート層などは、必要な成分を分散させたり溶解させた塗工液を塗工して乾燥させることなどによって形成することができる。塗工は、リバースロールコート、エアナイフコート、グラビアコート、ブレードコート、コンマコート、ワイヤーバーコート等の従来公知の種々の方法を用いることが可能である。
本発明のインクジェット記録用シートに印画するために用いるインクは、特に限定されないが、特に、水性のインクが適する。水性の顔料タイプと染料タイプのいずれのインクでも非常に優れた画像品質を得ることができる。
【実施例】
【0025】
次に、本発明を実施例によりさらに詳しく説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。
なお、実施例における性能評価において、印画には、キヤノン社製の染料タイプのインクジェットプリンター(機種名BJ F9000)およびヒューレットパッカード社製の顔料タイプのインクジェットプリンター(機種名DJ5000CP)を使用し、インクはそれぞれの純正インクを使用した。
インクジェット記録用シートの性能は、以下に示す方法に従って評価した。
【0026】
(1)にじみ
画像は、色として、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラック、ライトシアン、ライトマゼンタを用い、ISO高精細カラーディジタル標準画像N3Aの画像を印画した。
プリンターの設定は、インクジェットプリンター(機種名BJ F9000)では「高品位モード」、インクジェットプリンター(機種名DJ5000CP)では「ユポ ゴウセイシ モード」とした。
得られた画像は、目視でにじみの具合を観察し、次のように評価した。
○…にじみが無く、画像として好ましい。
×…にじみが有り、画像として好ましくない。
【0027】
(2)画像濃度
(a)シアン、(b)マゼンタ、(c)イエロー、(d)シアン、マゼンタ、イエローの混色の黒の4種類のインクのベタ画像を印画し、マクベス濃度計RD−918を用いて、反射濃度を測定した。 なお、プリンター設定は上記のにじみの場合と同様とした。
【0028】
(3)インク受理層の濡れた状態での耐擦過性(濡れ摩擦)
十分に濡れた綿棒で荷重が100gになるように、インクジェット記録用シートの表面をインク受理層が脱離するまで擦り、それに要した回数を調べた。ただし、1往復(片道約50mm)を1回とカウントし、つぎのように評価した。
○…20往復以上。
×…20往復未満。
【0029】
実施例1
基材として、厚さ250μmのポリ乳酸系フィルム〔三井化学社製、商品名:LACEAフィルム、生分解性〕を用い、基材の一方の面に、下記(A)のアンカーコート層用塗工液を乾燥後の厚みが5μmになるように塗工し、乾燥処理後、このアンカーコート層上に、下記(B)のインク受理層用塗工液を乾燥後の厚みが45μmになるように塗工し、さらに乾燥処理することによりインク受理層を設け、インクジェット記録用シートを作製した。
得られたインクジェット記録用シートの性能評価結果を第1表に示す。
なお、第1表において使用プリンターの「BJ」はキヤノン社製の染料タイプのインクジェットプリンター(機種名BJ F9000)、「DJ」はヒューレットパッカード社製の顔料タイプのインクジェットプリンター(機種名DJ5000CP)を示す。
【0030】
(A)アンカーコート層用塗工液:下記成分の均一混合液
・アクリル樹脂〔BASFディスパージョン社製、商品名:アクロナールYJ−6221D、固形分濃度49質量%、アニオン性〕60.00質量部
・炭酸カルシウム〔白石中央研究所社製、商品名:カルライトSA、固形分濃度100質量%、アラゴナイト質〕10.00質量部
・水30.00質量部
【0031】
(B)インク受理層用塗工液:下記成分の均一混合液
(a) 填料(フィラー)
・シリカ〔水澤化学工業社製、商品名:ミズカシルP−50、固形分濃度100質量%、細孔容積1.1ml/g〕16.75質量部
・シリカ〔水澤化学工業社製、商品名:ミズカシルP−78D、固形分濃度100質量%、細孔容積1.7ml/g〕16.75質量部
(b) 結着剤(バインダー)
・脂肪族ポリエステル〔昭和高分子社製、商品名:ビオノーレエマルジョンEM−53 0、固形分濃度53.8質量%、生分解性〕12.19質量部
・シラノール変性ポリビニルアルコール〔クラレ社製、商品名:クラレRポリマー R−1130、固形分濃度100質量%、生分解性〕9.84質量部
(c) 添加剤
・ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド〔センカ社製、商品名:パピオゲンP−113、固形分濃度42質量%〕8.12質量部
・ジメチルアミンとエピクロロヒドリンとの重合物〔日華化学社製、商品名:ネオフィックスRE、固形分濃度40質量%〕3.67質量部
・塩基性乳酸アルミニウム〔多木化学社製、商品名:タキセラムM−160L、固形分濃度25質量%〕7.98質量部
・水和アルミニウム酸化物〔日産化学工業社製、商品名:アルミナゾル200、固形分濃度10質量%〕5.20質量部
・界面活性剤〔日信化学工業社製、商品名:オルフィン PD−001、固形分濃度85質量%〕0.63質量部
・蛍光増白剤〔バイエル社製、商品名:BLANKOPHOR UW liquid、固形分濃度:100質量%〕0.38質量部
・消泡剤〔サンノプコ社製、商品名:SNデフォーマー480、固形分濃度100質量%〕0.04質量部
(d) 水 154.16質量部
【0032】
比較例1
実施例1のインク受理層用塗工液において、ジメチルアミンとエピクロロヒドリンとの重合物〔ネオフィックスRE〕を用いずに、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド〔パピオゲンP−113〕を3.50質量部増やして11.62質量部とした。他は実施例1と同様な操作を行い、インクジェット記録用シートを作製した。
得られたインクジェット記録用シートの評価結果を第1表に示す。
【0033】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材の少なくとも一方の面にインク受理層を設けてなり、該基材が生分解性を有するものであり、該インク受理層が(A)ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライドおよび(B)ジメチルアミンとエピクロロヒドリンとの重合物を含有し、結着剤として(C)生分解性樹脂を含有した層であることを特徴とするインクジェット記録用シート。
【請求項2】
(C)生分解性樹脂が、生分解性ポリエステルである請求項1に記載のインクジェット記録用シート。
【請求項3】
生分解性ポリエステルが、脂肪族ポリエステルである請求項2に記載のインクジェット記録用シート。
【請求項4】
インク受理層中の固形分含有量として、(A)ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライドが2〜10質量%、(B)ジメチルアミンとエピクロロヒドリンとの重合物が0.5〜7質量%である請求項1〜3のいずれかに記載のインクジェット記録用シート。
【請求項5】
インク受理層中の結着剤が(C)生分解性樹脂を50質量%以上含有するものである請求項1〜4のいずれかに記載のインクジェット記録用シート。