説明

インクジェット記録用シート

【目的】 長期に保存された記録用紙であっても画像の解像度、均一性にすぐれたインクジェット記録用シートを提供する。
【構成】 支持体の少なくとも一方の側にインク受容層を設けてなるインクジェット記録用シートにおいて、該支持体がフィルム又は紙の両面を樹脂で被覆された樹脂被覆紙であり、前記インク受像層がゼラチン及び下記化合物から選ばれる少なくとも一種の化合物を含有することを特徴とするインクジェット記録用シート。
(a)フェノール系化合物(b)チアゾリン系化合物(c)トリアジン系化合物(d)モルホリン系化合物(e)イミダゾール系化合物(f)グアニジン系化合物(g)ベンツトリアゾール系化合物

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は水性インクを用いたインクジェット記録用シートに関し、詳しくはゼラチンを含むインクジェット記録用シートの長期保存後の画質の劣化を防止する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、パーソナルコンピュータの普及に伴い、インクジェット記録方式のプリンターが急速に普及している。特に高画質が要求される印刷分野やデザイン部門においてその利用が注目されている。
【0003】インクジェット記録方式に使用される記録用シートとしては、従来、通常の紙やインクジェット記録用紙と称される支持体上にインク受容層(以下、インク吸収層とも言う)を設けた記録用シートが使用されてきた。しかしながら、これらの記録シートを用いた場合、インクのにじみが多い、光沢性が低いなど、高解像度、高光沢が求められる前記分野では使用できうるものではなかった。
【0004】更に、OHP(オーバーヘッドプロジェクター)用の原稿として透明支持体を用いても多孔質インク吸収層が光透過性を悪化させるという問題があった。
【0005】これらの問題点を解決するため、光透過性が高く、水性インク受容性に優れたインク吸収層としてゼラチンを用いる事が提案されている。例えば特開昭59−255131号公報において高インク吸収層としてゼラチンを使用する事が開示され、特開昭62−263084号公報では特定pHのゼラチンから形成された受容層が開示されている。又特開平1−146784号公報には酸処理ゼラチンとフッ素系界面活性剤との併用使用が開示され、同6−64306号公報では塗布したゼラチンを一旦ゲル状態にした後、コールドドライ法により乾燥させて得られる記録シートが提案されている。
【0006】確かにこれらゼラチンを用いた受容層はインクの吸収特性に優れ、光透過性も高いがゼラチンを受容層に用いた記録用紙を長期に亘り開放状態で放置されると画像が斑になり易く、画像の解像度が低下する事が判明した。
【0007】画像の解像度を改良する方法としては特開平1−146784号公報記載の酸処理ゼラチンとフッ素系界面活性剤との併用技術があり、特公平3−72460号公報、特開平4−37576号公報にはインク受容層を2層又は多層構成にする方法あるいは水溶性ポリマー、例えばポリビニルピロリドン類を使用する方法も知られているが、これらの技術は経時保存されてない条件での画像の解像度の改良であって、ゼラチンを受容層に用いた記録紙を長期に亘り開封状態で放置された場合に発生する画像が斑になり易い事に対しては全く前記方法は何の効果も示さない。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】従って本発明の目的は、長期に保存された記録用紙であっても画像の解像度、均一性にすぐれたインクジェット記録用シートの提供にある。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明の目的は以下の構成により達成される。
【0010】1.支持体の少なくとも一方の側にインク受容層を設けてなるインクジェット記録用シートにおいて、該支持体がフィルム又は紙の両面を樹脂で被覆された樹脂被覆紙であり、前記インク受像層がゼラチン及び下記化合物から選ばれる少なくとも一種の化合物を含有することを特徴とするインクジェット記録用シート。
【0011】(a)フェノール系化合物(b)チアゾリン系化合物(c)トリアジン系化合物(d)モルホリン系化合物(e)イミダゾール系化合物(f)グアニジン系化合物(g)ベンツトリアゾール系化合物2.前記インク受容層がゼラチン及び、フェノール系化合物又はチアゾリン系化合物から選ばれる少なくとも一種の化合物を含有することを特徴とする前記1項記載のインクジェット記録用シート。
【0012】3.前記インク受容層がポリマーを含有する事を特徴とする前記1又は2項記載のインクジェット記録用シート。
【0013】4.前記ポリマーがポリビニルピロリドン類、ポリビニルアルコール類又はメタアクリル酸/アクリル酸共重合体である事を特徴とする前記1,2又は3項記載のインクジェット記録用シート。
【0014】5.前記ポリマーのゼラチンに対する添加比率(重量比)が1:20〜2:1である事を特徴とする前記1,2,3又は4項記載のインクジェット記録用シート。
【0015】6.前記インク受容層の膜面pHが3〜10である事を特徴とする前記1,2,3,4又は5項記載のインクジェット記録用シート。
【0016】以下、本発明について詳細に述べる。
【0017】本発明においては、インクジェット記録用シートのインク受容層に用いるバインダとしてはゼラチンが用いられる。
【0018】ゼラチンとしては、動物のコラーゲンを原料としたゼラチンであれば何れもでも使用できるが、豚皮、牛革、牛骨を原料としたコラーゲンを原料としたゼラチンが好ましい。更にゼラチンの種類としては特に制限はないが、石灰処理ゼラチン、酸処理ゼラチン、ゼラチン誘導体(例えば特公昭38−4854号、同39−5514号、同40−12237号、同42−26345号、米国特許2,525,753号、同2,594,293号、同2,614,928号、同2,763,639号、同3,118,766号、同3,132,945号、同3,186,846号、同3,312,553号、英国特許861,414号、同103,189号等に記載のゼラチン誘導体)を単独またはそれらを組み合わせて用いることができる。
【0019】本発明の係るゼラチンのゼリー強度(PAGI法、ブルーム式ゼリー強度計による)としては、150g以上、特に200〜300gであることが好ましい。
【0020】本発明においては、インク受容層に含まれるゼラチンの塗布量としては、固形分として3〜50g/mが好ましく、さらに好ましくは5〜30g/mである。インク受容層が3g/m未満ではインクの受容性が劣り、印字後インクが受容層から溢れてしまう。更に、50g/mを越えて多い場合には、インクの受容性は向上するがひび割れ、カール等で問題が発生する。
【0021】本発明においては、インクの受容性やドット再現性を向上させる目的でゼラチンとともに以下のポリマーを併用することが好ましい。併用されるポリマーとしては例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルピリジニウムハライド、各種変性ポリビニルアルコール等のビニルホルマールおよびその誘導体(特開昭60−145879号、同60−220750号、同61−143177号、同61−235182号、同61−235183号、同61−237681号、同61−261089号参照)、ポリアクリルアミド、ポリジメチルアクリルアミド、ポリジメチルアミノアクリレート、ポリアクリル酸ソーダ、アクリル酸メタクリル酸共重合体塩、ポリメタクリル酸ソーダ、アクリル酸ビニルアルコール共重合体塩等のアクリル基を含むポリマー(特開昭60−168651号、同62−9988号等に記載)、澱粉、酸化澱粉、カルボキシル澱粉、ジアルデヒド澱粉、カチオン化澱粉、デキストリン、アルギン酸ソーダ、アラビアゴム、カゼイン、プルラン、デキストラン、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等の天然高分子材料またはその誘導体(特開昭59−174382号、同60−262685号、同61−143177号、同61−181679号、同61−193879号、同61−287782号等に記載)、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリビニルエーテル、ポリグリセリン、マレイン酸アルキルビニルエーテル共重合体、マレイン酸−N−ビニルピロール共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリエチレンイミン等の合成ポリマー(特開昭61−32787号、同61−237680号、同61−277483号等に記載)等を挙げることができる。これらのポリマーのうち好ましくはポリビニルピロリドン類、ポリビニルアルコール類、及び、メタクリル酸/アクリル酸系共重合体およびその塩である。
【0022】特に好ましくは、画像の解像度、均一性に優れしかも長期に保存されても画像の解像度に影響を与えない平均分子量10万〜50万のポリビニルピロリドン類、分子量2〜7万のポリビニルアルコール類、下記一般式(I)で示されるモノマー単位を含有するメタクリル酸/アクリル酸系共重合体及びその塩である。
【0023】
【化1】


【0024】式中、R1は水素原子又はメチル基、R2は水素原子又は1価の塩、又は炭素数1〜18のアルキル基又はアルケニル基を表す。
【0025】前記一般式(I)のモノマー単位を含有する重合体として具体的化合物例を下記に示す。
【0026】
【化2】


【0027】
【化3】


【0028】構造式中、n,mおよびpは各々モノマー単位のモル比率を表す。
【0029】本発明においてポリマーのゼラチンに対する添加比率(重量)は1:20〜2:1であり好ましくは1:10〜1:1である事がインクの受容性やドット再現性の上からも好ましい。
【0030】本発明においてゼラチンと共に使用される化合物はフェノール系化合物、チアゾリン系化合物、トリアジン系化合物、モルホリン系化合物、イミダゾール系化合物、グアニジン系化合物及びベンツトリアゾール系化合物である。特に低分子量のフェノール系化合物及びチアゾリン系化合物は長期保存後に出力した場合の画像の斑の発生を防止する上で有効であり、しかもゼラチン系で効果が高い。
【0031】具体的な化合物としてはオルトフェニルフェノールおよびその塩(カリウム、ナトリウム)、2−オクチル−4−イソチアゾリン、ベンツイソチアゾリン−3−オン、2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、2−チオメチル−4−エチルアミノ−6−(1,2−ジメチルプロピルアミノ)−s−トリアジン、ヘキサヒドロ−1,3,5−トリス(2−ヒドロキシエチル)−s−トリアジン、4−(2−ニトロブチル)モルホリン4−(3−ニトロブチル)モルホリン、2−(4−チアゾリル)ベンツイミダゾール、ドデシルグアニジン塩酸塩、ベンツトリアゾールが挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0032】本発明の(a)〜(g)の化合物は記録用紙1m2当たり0.01〜5.0gである。0.01g未満は本発明の効果がほとんどなく5.0gを超えると経時に逆にオイルアウト等の問題が生じ好ましくない。
【0033】本発明において、インク受容層は、耐水性、ドット再現性を向上させる目的で適当な硬膜剤で硬膜することができる。硬膜剤の具体的な例としては、ホルムアルデヒド、グルタルアルデヒドの如きアルデヒド系化合物、ジアセチル、クロルペンタンジオンの如きケトン化合物、ビス(2−クロロエチル尿素)、2−ヒドロキシ−4,6−ジクロロ−1,3,5−トリアジン、米国特許3,288,775号記載の如き反応性のハロゲンを有する化合物、ジビニルスルホン、米国特許3,635,718号記載の如き反応性のオレフィンをもつ化合物、米国特許2,732,316号記載のN−メチロール化合物、米国特許3,103,437号記載の如きイソシアナート類、米国特許3,017,280号、同2,983,611号記載の如きアジリジン化合物類、米国特許3,100,704号記載の如きカルボジイミド系化合物類、米国特許3,091,537号記載の如きエポキシ化合物、ムコクロル酸の如きハロゲンカルボキシアルデヒド類、ジヒドロキシジオキサンの如きジオキサン誘導体、クロム明ばん、カリ明ばん、硫酸ジルコニウムの如き無機硬膜剤等があり、これらを1種または2種以上組み合わせて用いることができる。硬膜剤の添加量はインク受容量を構成するバインダー100gに対して0.01g〜10gが好ましく、より好ましくは0.1〜5gである。しかし、本発明を実施する態様としては硬膜剤を使用しない事である。
【0034】すなわち硬膜剤があると本発明の効果が小さくなり、しかも硬膜が経時で変わる為インク吸収性や画像の解像度が使用する時間によつて変わるという問題があり、好ましくない。
【0035】本発明において、更に、インク受容層には界面活性剤、バインダの他、無機顔料、着色染料、着色顔料、インク染料の定着剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、顔料の分散剤、消泡剤、レベリング剤、蛍光増白剤、粘度安定剤、pH調節剤などの公知の各種添加剤を添加することができる。
【0036】本発明におけるインク受容層塗液の塗布方法としては、通常用いられている塗布方法(例えば、カーテン方式、エクストルージョン式、エアナイフ方式、ロールコーティング方式、ロッドバーコーティング方式等)が用いられる。
【0037】本発明において、インク受容層は単層構成でも多層構成でもよい。多層構成の例としては、特開昭57−89954号、同60−224578号、同61−12388号等に記載されたものが挙げられる。例えば、特開昭61−12388号に記載のインク透過層を本発明のインク受容層の上に更に受けてもよい。
【0038】本発明においてインク受容層は支持体の少なくとも片面に設けられているが本発明の好ましい実施態様としてはインク受容層とは異なったバック層と呼ばれる層を設けることである。バック層を設けることで温湿度変化による記録紙のカーリングや面同氏のくっつき等が防止できる。
【0039】又本発明のインク受容層の膜面のpHは3〜10が好ましく、特に好ましくは4〜8である。pHが3より低いと光沢感が失われpHが10を超えると未プリント部の白地性が経時で劣化する。
【0040】本発明において用いられる支持体としては、透明な支持体でも不透明な支持体でも使用目的に応じて用いることができる。
【0041】透明な支持体としては、従来公知のものがいずれも使用でき、例えば、ポリエステル樹脂、セルロースアセテート樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリ塩化ビニール樹脂、ポリイミド樹脂、セロファン、セルロイドなどのフィルムがある。これらの中で支持体の剛性、透明性の観点からポリエステル樹脂、特にポリエチレンテレフタレートフィルムが好ましい。このような透明支持体はその厚さが約10〜200μm程度のものが好ましく、更に好ましくは50〜150μm程度のものである。
【0042】不透明支持体としては樹脂被覆紙、顔料入り不透明フィルム、発泡フィルム等の従来公知のものがいずれも使用できるが、光沢性、平滑性の観点から樹脂被覆紙、各種フィルムが好ましく、手触り感、高級感から樹脂被覆紙、ポリオレフィン樹脂被覆紙、ポリエステル系のフィルムがより好ましい。
【0043】好ましく用いられる樹脂被覆紙を構成する原紙は、特に制限はなく、一般に用いられている紙が使用できるが、より好ましくは例えば写真用支持体に用いられているような平滑な原紙が好ましい。原紙を構成するパルプとしては天然パルプ、再生パルプ、合成パルプ等を1種もしくは2種以上混合して用いられる。この原紙には一般に製紙で用いられているサイズ剤、紙力増強剤、填料、帯電防止剤、蛍光増白剤、染料等のの添加剤が配合される。
【0044】さらに、表面サイズ剤、表面紙力剤、蛍光増白剤、帯電防止剤、染料、アンカー剤等が表面に塗布されていてもよい。
【0045】また、厚紙の厚みに関しては特に制限はないが、紙を抄造中または抄造後カレンダー等にて圧力を印加して圧縮するなどした表面平滑性の良いものが好ましく、その秤量は30〜250g/mが好ましい。
【0046】樹脂被覆紙の樹脂としては、ポリオレフィン樹脂や電子線で硬化する樹脂を用いることができる。ポリオレフィン樹脂としては、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリペンテンなどのオレフィンのホモポリマーまたはエチレン−プロピレン共重合体などのオレフィンの2つ以上からなる共重合体およびこれらの混合物であり、各種の密度、溶融粘度指数(メルトインデックス)のものを単独にあるいはそれらを混合して使用できる。
【0047】また、樹脂被覆紙の樹脂中には、酸化チタン、酸化亜鉛、タルク、炭酸カルシウムなどの白色顔料、ステアリン酸アミド、アラキジン酸アミドなどの脂肪酸アミド、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸マグネシウムなどの脂肪酸金属塩、イルガノックス1010、イルガノックス1076などの酸化防止剤、コバルトブルー、群青、セシリアンブルー、フタロシアニンブルーなどのブルーの顔料や染料、コバルトバイオレット、ファストバイオレット、マンガン紫などのマゼンタの顔料や染料、蛍光増白剤、紫外線吸収剤などの各種の添加剤を適宜組み合わせて加えるのが好ましい。
【0048】本発明において好ましく用いられる支持体である樹脂被覆紙は、走行する原紙上にポリオレフィン樹脂の場合は、加熱溶融した樹脂を流延する、いわゆる押出しコーティング法により製造され、その両面が樹脂により被覆される。また、電子線により硬化する樹脂の場合は、グラビアコーター、ブレードコーターなど一般に用いられるコーターにより樹脂を塗布した後、電子線を照射し、樹脂を硬化させて被覆する。また、樹脂を原紙に被覆する前に、原紙にコロナ放電処理、火炎処理などの活性化処理を施すことが好ましい。支持体のインク受容層が塗布される面(表面)は、その用途に応じて光沢面、マット面などを有し、特に光沢面が優位に用いられる。裏面に樹脂を被覆する必要はないが、カール防止の点から樹脂被覆したほうが好ましい。裏面は通常無光沢面であり、表面あるいは必要に応じて表裏両面にもコロナ放電処理、火炎処理などの活性処理を施すことができる。また、被覆樹脂層の厚みとしては特に制限はないが、一般に5〜50μmの厚みに表面または表裏両面にコーティングされる。
【0049】本発明で言う水性インクとは、下記の着色剤、液媒体、その他の添加剤からなる記録液体である。着色剤としては、直接染料、酸性染料、塩基性染料、反応性染料或いは食品用色素等の水溶性染料が挙げられる。
【0050】水性インクの溶媒としては、水及び水溶性の各種有機溶剤、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、イソブチルアルコール等の炭素数1〜4のアルキルアルコール類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド類;アセトン、ジアセトンアルコール等のケトン又はケトンアルコール類;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコール類;エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2,6−ヘキサントリオール、チオジグリコール、ヘキシレングリコール、ジエトチレングリコール等のアルキレン基が2〜6個のアルキレングリコール類;グリセリン、エチレングリコールメチルエーテル、ジエチレングリコールメチル(又はエチル)エーテル、トリエチレングリコール、モノメチルエーテル等の多価アルコールの低級アルキルエーテル類、2H−ピロリジノン等のピロリジノン類、1−メチル−2−ピロリドン、2−ピロリドン等のピロリドン類等が挙げられる。これらの多くの水溶性有機溶剤の中でも、ジエチレングリコール等の多価アルコール、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル等の多価アルコールの低級アルキルエーテル、ピロリドン類が好ましい。
【0051】本発明においてインクの溶媒はインクヘッドノズルの目詰り防止の観点から水と前記有機溶媒の混合溶媒を用いることが好ましいが、この時、水と有機溶媒の混合比率は重量比で1/9〜9/1が好ましく、より好ましくは4/6〜9/1である。
【0052】その他の添加剤としては、例えば、PH調節剤、金属封鎖剤、防カビ剤、粘度調整剤、表面張力調整剤、湿潤剤、界面活性剤及び防錆剤等が挙げられる。
【0053】
【実施例】以下、実施例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお以下の記載において、「部」は重量部を意味する。
実施例1樹脂被覆紙(坪量100gの基紙の表面に低密度ポリエチレン(70部)と高密度ポリエチレン(20部)からなる樹脂組成物を20g/m2塗布し、裏面に低密度ポリエチレン(50部)と高密度ポリエチレン(50部)からなる樹脂組成物を20g/m2塗布したもの)の表面に、下記組成のインク受容層塗液を乾燥後の膜重量が10g/m2となるようにバーコート法により塗布した後、乾燥させてインクジェット記録用シート試料を得た。
【0054】
〈インク受容層用塗液組成〉 石灰処理ゼラチン(ブルーム強度;250g) 49.7重量部 PVP−K90(BASF社) 49重量部 添加剤(表1記載) 1重量部 界面活性剤(メガファックスF−120) 0.3重量部*塗布液の固形分濃度8%(wt/vol)
塗布液pH:NaOH5%水溶液を用いて7.5に調整した尚、この時の各インクの組成は以下の通りである。
【0055】
Y:ダイレントイエロー50(CI.29025) 6部 ジエチレングリコール 47部 水 47部M:キシレンレッドB(CI.45100) 6部 ジエチレングリコール 47部 水 47部C:ライトグリーンSF イエロイッシュ 6部 ジエチレングリコール 47部 水 47部次に得られた試料の一部をインクジェットプリンタ(MJC−700V2C、エプソン社製)を用いて、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブルー(B)、グリーン(G)、レッド(R)、ブラック(K)の各色をプリントし、均一画像部のムラ及び光沢性について観察、評価し、その試料を冷暗所で保存した。この試料を(A)とする。
【0056】次に試料の残りを30℃−55%RHの環境下で1ケ月間保存し、上記と同様の評価を行った。この試料を(B)とする。
【0057】評価方法を下記に示す。
【0058】〈均一画像部のムラ,マダラ:B,G,R,Kの各色を最大濃度にプリントし、この最大濃度部の均一性を目視で評価した〉評価基準 ◎:肉眼ではマダラ,ムラが全く認められず、均一である○:マダラ,ムラが若干存在するが、凝視しなければ認識できない△:1目でマダラやムラの存在が確認できるが、実用上は許容できる×:マダラ,ムラが顕著であり、実用上問題である。
【0059】〈光沢性:Kの均一画像部を目視にて観察し、この光沢度を判定した〉評価基準 ○:問題なく優れている△:僅かに光沢が失われているが、実用上問題がない×:光沢が失われ、実用できない
【0060】
【表1】


【0061】表1の結果から明らかな様に本発明の添加剤を用いる事で長期に試料を保存した後印刷した場合でも画像部の均一性の劣化や光沢性の劣化は認められず、良好な結果を得た。特にオルトフェニルフェノール,イソチアゾリン系が良好である事が判る。
【0062】実施例2実施例1のインク受容層用塗液組成において試料No1−2,1−6で使用された添加剤を表2の様に変化させて実施例1と同様の評価を行った。ただし保存期間は2ケ月とした。
【0063】結果は表2に示す。
【0064】
【表2】


【0065】表2より明らかな様に添加剤の量が0.005g又は6.0gである場合経時で若干劣化する傾向にあり、0.02,0.20,4.0の場合は経時でほとんど劣化しないことが判る。
【0066】実施例3実施例1においてインク受容層用塗液組成のPVP−K90を表3の様に変化させた以外は実施例1と同様の評価を行った。
【0067】結果は表3に示す。なお添加剤として5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンを使用し添加量は0.1g/m2とした。
【0068】
【表3】


【0069】表3より明らかな様にポリマーを併用することで画像の均一性を高く維持し、しかも劣化しないことが判る。
【0070】実施例4実施例3の試料No3−5において膜面pHを表4になる様に塗布液pHを調整した以外は実施例3と同様の評価を行った。
【0071】結果は表4に示す。
【0072】
【表4】


【0073】膜面pHを4.0から8.0にすることで画像の均一性及び光沢性が良好でありしかも経時でも劣化しない事が判る。
【0074】
【発明の効果】本発明の構成により画像の均一性及び光沢性が良好であり、さらに経時でも劣化しないインクジェット記録用シートが得られた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 支持体の少なくとも一方の側にインク受容層を設けてなるインクジェット記録用シートにおいて、該支持体がフィルム又は紙の両面を樹脂で被覆された樹脂被覆紙であり、前記インク受像層がゼラチン及び下記化合物から選ばれる少なくとも一種の化合物を含有することを特徴とするインクジェット記録用シート。
(a)フェノール系化合物(b)チアゾリン系化合物(c)トリアジン系化合物(d)モルホリン系化合物(e)イミダゾール系化合物(f)グアニジン系化合物(g)ベンツトリアゾール系化合物
【請求項2】 前記インク受容層がゼラチン及び、フェノール系化合物又はチアゾリン系化合物から選ばれる少なくとも一種の化合物を含有することを特徴とする請求項1記載のインクジェット記録用シート。
【請求項3】 前記インク受容層がポリマーを含有する事を特徴とする請求項1又は2記載のインクジェット記録用シート。
【請求項4】 前記ポリマーがポリビニルピロリドン類、ポリビニルアルコール類又はメタクリル酸/アクリル酸共重合体である事を特徴とする請求項1,2又は3記載のインクジェット記録用シート。
【請求項5】 前記ポリマーのゼラチンに対する添加比率(重量比)が1:20〜2:1である事を特徴とする請求項1,2,3又は4記載のインクジェット記録用シート。
【請求項6】 前記インク受容層の膜面pHが3〜10である事を特徴とする請求項1,2,3,4又は5記載のインクジェット記録用シート。