説明

インクジェット記録用光沢紙

【課題】本発明の目的は、良好なインク吸収性及び銀塩写真並みの高光沢感を有し、光沢表面の耐傷性に極めて優れ、断裁時の紙粉量も少なく、かつ、リサイクル可能なインクジェット記録用光沢紙を提供することである。
【解決手段】本実施形態に係るインクジェット記録用光沢紙は、基材の少なくとも片面にインク受容層が設けられ、インク受容層の最表層上に光沢発現層がキャストコート法によって設けられたインクジェット記録用光沢紙において、インク受容層は、顔料のうち70質量%以上が湿式法シリカ及び乾式法シリカの両方又はいずれか一方であり、光沢発現層は、顔料のうち80質量%以上がコロイダルシリカであり、かつ、結着剤としてポリビニルアルコールを含有し、光沢発現層の塗工量が、固形分換算で2〜11g/mであり、(前記光沢発現層の塗工量)/(前記インク受容層の塗工量)の比が1を超えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、銀塩写真並みの光沢感を有し、光沢面の耐傷性が極めて優れており、かつ、断裁時の紙粉量が少ない、印字品質の高いインクジェット記録用光沢紙に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録方式は、インクの液滴を吐出し、記録紙上に付着させることによってドットを形成し、記録を行う方式である。近年、インクジェットプリンター、インク及び記録媒体の技術的進歩によって、印字品質の高い記録が可能になってきている。インクジェット記録媒体に求められる要素としては、
(a)インクの吸収・乾燥が速いこと
(b)印字濃度が高いこと
(c)ドットの広がり及びひげ状の滲みが無いこと
などが挙げられる。一般の普通紙でも一定以上のサイズ性があれば、滲みが少なく、ある程度の印字品質が期待できる。しかし、より高い印字品質を求める場合には、媒体上にインクジェットプリンターのインクに対して適性のあるインク受容層を各種基材に設けた専用の記録媒体が使用される。これらインクジェット記録媒体としては、紙又はフィルムを支持体として、顔料と結着剤とを主成分とする顔料塗工層又は顔料を含まない樹脂塗工層を表面に設けたものが多く使用される。
【0003】
インクジェット記録媒体は、更に表面状態からマット調媒体と光沢媒体とに分類される。銀塩写真により近い画像品質を要求する場合には、後者の光沢媒体が使用される。このような光沢媒体に要求される品質特性としては、光沢感が高いこと、インク乾燥速度が速いこと、印字濃度が高いこと、インクの溢れや滲みがないことなどが挙げられる。さらにインクジェット記録媒体は、インクジェット記録前又は記録後に紙小判断裁加工されることが多く、断裁加工時の紙粉が少ないことが求められる。
【0004】
光沢媒体の製法としては、インク吸収性及び乾燥性を維持しながら前記の各品質特性を維持するために、各種の方法が提案されているが、一般的な方法は、キャストコート法によってインク受容層を形成し表面に光沢を付与する方法と印画紙用基材上にインク受容層を形成する方法とがある。
【0005】
一般には、前者は、インク吸収性が後者に比べ制御しやすいが、ドット真円性、画像再現性、白紙部分の光沢感についての品質では後者に比べ劣っている。
【0006】
印画紙用基材は、一般にRC紙(レジンコート紙)といわれるように、紙の基材上にポリエチレンのフィルム層が形成されているためにインク受容層をその表面に形成した場合、フィルム面が平滑であることからインク受容層の表面も平滑で、光沢のある表面が形成しやすい。しかし、全体のコストは、インク吸収性をあげるために塗工量を多くする必要があり、また基材そのものが紙よりも高価であることから前者のキャストコート法による光沢媒体に比べ、高いものとなる。また、廃棄する場合には、複合素材であることからリサイクルができないといった問題もある。
【0007】
キャストコート法によるインクジェット記録用光沢紙は、前記問題点に対して有利であるが、前記したドット真円性、画像再現性、白紙部分の光沢感についての品質面での問題があり、これらの課題を解決するために各種の提案がなされている。
【0008】
表面の光沢性及びインク吸収性に係る課題を解決するための提案として、例えば、記録層表面の平均粗さ、光沢度及び記録紙の透気度を規定することによって表面の平滑性が高く、画質の高級感に優れると共に、インク吸収量や吸収速度の高いインクジェット記録用紙が提案されている(例えば、特許文献1を参照。)。
【0009】
また、記録層表面の亀裂の大きさ及び個数を規定することによって優れた光沢感及びインク吸収性を有するインクジェット記録用紙が提案されている(例えば、特許文献2を参照。)。
【0010】
さらに、光沢層の厚みを0.02〜4μmに規定することによって透明性、耐水性に優れ、且つ銀塩写真並の高い表面光沢度を有するインクジェット記録体が提案されている(例えば、特許文献3を参照。)。
【0011】
また、近年インク吸収速度が速く、銀塩写真並みの光沢感を有するインクジェットプリンター用の記録シートとして、アルミナ水和物を水溶性バインダーと混合して塗工した用紙が提案されている(例えば、特許文献4を参照。)。
【0012】
表面の光沢性及びインク吸収性に係る課題のほか、光沢表面の耐傷性についても様々な提案がなされている。例えば、光沢発現層の結着剤に使用されるポリビニルアルコールの平均重合度やケン化度を規定することによって耐傷性を改善する提案がある(例えば、特許文献5を参照。)。また、インク受容層表面の平滑性及び粗さを規定することによって耐傷性を改善する提案もある(例えば、特許文献6を参照)。
【0013】
一方、紙粉発生を防ぐ方法として、いくつかの方法が開示されている。例えば、紙支持体上に設けた下塗り層の接着剤含有量を多くすることによって紙粉発生を抑制する提案がある(例えば、特許文献7を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開平06−072017号公報
【特許文献2】特開平11−348416号公報
【特許文献3】特開2004−338100号公報
【特許文献4】特開平06−055829号公報
【特許文献5】特開2005−280012号公報
【特許文献6】特開2006−168046号公報
【特許文献7】特開2007−021751号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかし、特許文献2に記載の技術の場合、亀裂数が少なすぎると光沢感が増す一方インク吸収性が低下するという問題点もある。
【0016】
また、特許文献3に記載の技術では、光沢層の塗工量を少なくすることでインク吸収性向上には一定の効果があるが、表面耐傷性が必ずしも満足できるには至っていない。
【0017】
特許文献1〜4に記載のインクジェット記録用光沢紙は、光沢感が非常に優れているという特徴をもつが、光沢感に優れているが故に光沢表面に傷が入りやすいという欠点をもつ。例えば、葉書用途に使用する場合において、宛名面に郵便番号枠、切手貼り付け枠などの定型事項を印刷するときに、オフセット印刷機など印刷機の給紙部ガイドとの擦れ及び排紙部の吸引車との擦れによって、光沢層表面に傷がつきやすいという欠点がある。また、インクジェットプリンターで宛名を印刷するときに、光沢面と給紙ローラーとの接触によって傷がつきやすいという欠点も問題となる。
【0018】
インクジェット記録用光沢紙は、葉書など用途に応じた所定の寸法に判断裁加工して使用されるが、シリカ、アルミナなどの比表面積の大きな顔料又はポリビニルアルコールなどのバインダーは、多層化によって塗工層が厚くなると、塗工層の強度が低下するため、紙粉が発生しやすいという問題がある。また、塗工層を架橋することによって硬化した場合、この塗工層は脆くなるため、紙粉が発生しやすくなる。特許文献1〜4に記載のインクジェット記録用光沢紙は、この問題を解決するものではない。
【0019】
近年では前記のごとく、非光沢面への宛名印刷などの印刷工程及び紙小判断裁加工などの後加工工程における作業性の問題から、光沢表面の耐傷性及び紙小判断裁時に発生する紙粉量の減少に対する要求が次第に高くなってきているのが現状である。よって、インクジェット記録用光沢紙に求められる品質の要求レベルは、今後も次第に高くなっていくものであると容易に推察される。
【0020】
そこで、耐傷性及び紙粉の発生を改善するために、特許文献5〜7に記載の各技術が提案されているが、本発明者らによる光沢表面の耐傷性に関する研究結果から、特許文献5又は6の各提案内容では耐傷性を補うには十分でないとの結論に至った。また特許文献7に記載の技術では、全層の塗工量が高いため、紙粉の絶対的な脱落量が多くなってしまうという問題がある。
【0021】
前記従来技術を鑑みると、キャストコート法によって製造するインクジェット記録用光沢紙において、印画紙基材又はフィルム基材を用いて製造されたインクジェット記録媒体を超える画質と均一な光沢感を有し、かつ、非常に優れた作業性を併せもつインクジェット記録媒体は全くないのが現状である。
【0022】
そこで、本発明の目的は、キャストコート法によって製造されるインクジェット記録用光沢紙において、良好なインク吸収性をもちながら、銀塩写真並みの非常に良好な高光沢感を有し、光沢表面の耐傷性にも極めて優れ、更に紙小判断裁時の紙粉量も少なく、印画紙基材又はフィルム基材を用いて製造したインクジェット記録媒体に匹敵する画質と均一な光沢感を有し、かつ、リサイクル可能なインクジェット記録媒体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明に係るインクジェット記録用光沢紙は、基材の少なくとも片面に顔料を含有する1層以上のインク受容層が設けられ、該インク受容層の最表層上に顔料と結着剤とを含有する光沢発現層がキャストコート法によって設けられたインクジェット記録用光沢紙において、前記インク受容層は、顔料のうち70質量%以上が湿式法シリカ及び乾式法シリカの両方又はいずれか一方であり、前記光沢発現層は、顔料のうち80質量%以上がコロイダルシリカであり、かつ、前記結着剤としてポリビニルアルコールを含有し、前記光沢発現層の塗工量が、固形分換算で2〜11g/mであり、(前記光沢発現層の塗工量)/(前記インク受容層の塗工量)で表される固形分換算の比が1を超えることを特徴とする。
【0024】
本発明に係るインクジェット記録用光沢紙では、次に示すダイナミック硬度試験条件において、超微小硬度計による前記光沢発現層の負荷時ダイナミック硬度が5.0以上、かつ、除荷時ダイナミック硬度が20.0以上である形態を含む。本発明者らは、光沢発現層の表面の塑性変形度と耐傷性との関係を検討した結果、塑性変形度が小さい光沢発現層を有する光沢紙ほど耐傷性に優れることを見出した。
(ダイナミック硬度試験条件)
圧子:三角錐ダイヤモンド圧子(稜間角115度、圧子形状係数3.8584)
試験荷重:1.0mN
負荷速度:1.42mN/秒
【0025】
本発明に係るインクジェット記録用光沢紙では、JIS H 8686−2:1999「アルミニウム及びアルミニウム合金の陽極酸化皮膜の写像性試験方法−第2部:機器測定法」に準じ、光学くし幅2mm入反射角度60°の条件による前記光沢発現層の写像性が50%以上であることが好ましい。より光沢感に優れたインクジェット記録用光沢紙とすることができる。
【0026】
本発明に係るインクジェット記録用光沢紙では、前記光沢発現層を形成するキャストコート法が凝固法であり、かつ、凝固剤として硼素化合物を含有することが好ましい。より均一な光沢面質を得ることができる。
【0027】
本発明に係るインクジェット記録用光沢紙では、前記光沢発現層の表面pHが6.4以下であることが好ましい。白紙退色及び変色が少ないインクジェット記録用光沢紙とすることができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明は、キャストコート法で製造されたインクジェット記録用光沢紙でありながら、非常に良好な表面光沢感、インク吸収性及び優れた印字品質、並びに光沢発現層表面の耐傷性を高いレベルでバランスさせながら、かつ、断裁時の紙粉量が少ないインクジェット記録用光沢紙を提供することができる。特に、後加工の作業性の問題から、光沢発現層の表面の耐傷性及び紙粉発生量の低減についての要求は、益々レベルが上がっていくものと容易に推察されることから、本発明の有意性は大きいと考えられる。また、本発明に係るインクジェット記録用光沢紙は、紙を基材としていることから、フィルム層を有する印画紙基材に比べ、製造コストも低く、廃棄する場合にはリサイクル可能であり、資源の有効利用という観点からも好ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
次に、本発明について実施形態を示して詳細に説明するが、本発明はこれらの記載に限定して解釈されない。本発明の効果を奏する限り、実施形態は種々の変形をしてもよい。
【0030】
本実施形態に係るインクジェット記録用光沢紙は、基材の少なくとも片面に顔料を含有する1層以上のインク受容層が設けられ、該インク受容層の最表層上に顔料と結着剤とを含有する光沢発現層がキャストコート法によって設けられたインクジェット記録用光沢紙において、前記インク受容層は、顔料のうち70質量%以上が湿式法シリカ及び乾式法シリカの両方又はいずれか一方であり、前記光沢発現層は、顔料のうち80質量%以上がコロイダルシリカであり、かつ、前記結着剤としてポリビニルアルコールを含有し、前記光沢発現層の塗工量が、固形分換算で2〜11g/mであり、(前記光沢発現層の塗工量)/(前記インク受容層の塗工量)で表される固形分換算の比が1を超えるものである。
【0031】
光沢発現層の表面の耐傷性を予測するには、表面の微小硬さを測定することが必要である。本発明者らは、鋭意検討の結果、光沢発現層が擦られることによって発生する傷の大きさは微小硬さと相関を示すことを見出した。
【0032】
さらに、本発明者らが耐傷性改良について検討を進めた結果、塗工層表面の耐傷性は、その最表層の硬さだけでなく、その下層の硬さの影響を受けることが判明した。例えば、光沢発現層に衝撃が与えられた場合、それが強固な光沢発現層であっても、下層のインク受容層の硬さが不足する場合には、インク受容層が圧縮破壊されてしまう。結果として、光沢発現層表面も変形してしまう。特に、インク受容層では、主に湿式法シリカ又は乾式法シリカが使用されているが、これらはその凝集体構造のために、高いインク吸収能力がある一方、高い空隙構造を形成している。したがって、高いインク吸収性を実現しながら、耐傷性を改善するためには、強固な光沢発現層の塗工量を増加させて、下層の影響を最小限にすることが必要である。
【0033】
本実施形態に係るインクジェット記録用光沢紙では、超微小硬度計による前記光沢発現層の負荷時ダイナミック硬度が5.0以上、かつ、除荷時ダイナミック硬度が20.0以上である形態を含む。より好ましくは、負荷時ダイナミック硬度が10.0以上、かつ、除荷時ダイナミック硬度が30.0以上、特に好ましくは、負荷時ダイナミック硬度が12.0以上、かつ、除荷時ダイナミック硬度が35.0以上である。除荷時ダイナミック硬度が30.0以上であれば、光沢発現層がより塑性変形しにくくなるため好ましい。
【0034】
ここで、ダイナミック硬度は、金属材料の硬さ測定などに広く用いられているビッカース硬度、ヌープ硬度などの力を負荷してくぼみを作製し、くぼみの対角線長さから硬さを求めるという方式ではなく、圧子が試料にどれだけ侵入したかによって硬度を求める方式を採用している。試験力P(mN)、圧子の試料への侵入長さ(押し込み深さ)D(μm)としたとき、ダイナミック硬度DHは、次の式(数1)によって求める。
【0035】
(数1)DH=α×P÷D(α:圧子形状係数)
【0036】
このダイナミック硬度は、圧子を押し込んでいく過程の試験力と押し込み深さとから得られる硬さで、負荷時の場合は、試料の塑性変形だけでなく、弾性変形をも含んだ状態での強度特性といえる。また除荷時の場合は、塑性変形を示しており、ビッカース硬度、ヌープ硬度などとの相関もある。本実施形態では、ダイナミック硬度の測定には、超微小硬度計(DUH−201、島津製作所社製)を用いて行い、測定条件は、圧子として三角錐ダイヤモンド圧子(稜間角115度、圧子形状係数:3.8584)を用い、試験力を1.0mN、負荷速度を1.42mN/秒で測定を行った。本実施形態において、試験条件は、試験力0.2〜10.0mNの範囲内で実施するのが好ましい。試験力が0.2mN未満の場合は、得られる値の精度が低く、10.0mNより大きい場合は、実際に擦られる条件よりも過負荷になり、硬度値の差が判別しにくい。ここで、前記試験力を1.0mNにした理由は、硬度の差異が評価しやすいためである。
【0037】
インクジェット記録用光沢紙において、光沢発現層の顔料として、一般的に、コロイダルシリカ、湿式法シリカ、乾式法シリカ、アルミナ(α型結晶のアルミナ、θ型結晶のアルミナ、γ型結晶のアルミナなど)、アルミナ水和物(アルミナゾル、コロイダルアルミナ、擬ベーマイトなど)などが用いられる。本実施形態に係るインクジェット記録用光沢紙では、本発明の目的である耐傷性の改善を達成するために、光沢発現層に含有する顔料としてコロイダルシリカを用いることを必須とする。コロイダルシリカは、結着剤との結合力が高く、かつ、空隙の少ない構造を得ることができる。このように、製膜時に耐傷性の強い表面を形成できるため、塗工層の塑性変形を極小に抑えることが可能である。
【0038】
一方、湿式法シリカ、乾式法シリカ、アルミナ(α型結晶のアルミナ、θ型結晶のアルミナ、γ型結晶のアルミナなど)又はアルミナ水和物(アルミナゾル、コロイダルアルミナ、擬ベーマイトなど)は、その極めて高い比表面積性に由来するインク吸収の良さからインクジェット記録用光沢紙で一般的に使用される顔料であるが、多孔質性がある故に塑性変形が起こりやすく、高い耐傷性をもたせることが極めて困難である。
【0039】
前記の研究結果よって、顔料についての性質を鑑みると、本実施形態に係るインクジェット記録用光沢紙では、光沢発現層が、主顔料としてコロイダルシリカを含有する。これによって、耐傷性が真に優れたインクジェット記録用光沢紙とすることができる。コロイダルシリカは、球状若しくは球状に近い形状のもの又はパールネックレス状の凝集体形状のものを使用することが好ましい。耐傷性及び高光沢性の点から、球状若しくは球状に近い形状のものを使用することがより好ましい。なお、これらは単独又は併用して用いることができる。ここで、パールネックレス状コロイダルシリカとは、シリカ微粒子が真珠のネックレスのように環状に連結しているコロイダルシリカをいう。一方、シリカ微粒子が房状に凝集した房状コロイダルシリカ又はシリカ微粒子が細長く連結した鎖状コロイダルシリカは、インク吸収性の点で劣る場合がある。
【0040】
球状コロイダルシリカ及び凝集体形状のコロイダルシリカの一次粒子の平均粒子径は、10〜300nmが好ましく、より好ましくは、15〜200nmである。10nm未満では、塗工膜表面が脆くなり、かつ、摩擦係数が高くなるために耐傷性に劣る場合がある。また、粒子径が300nmを超える場合は、塗工膜の成膜性が良好すぎて顔料インクのインク吸収性に劣る場合がある。また、凝集体形状のコロイダルシリカの大きさ(長さ)は、50〜500nmであることが好ましく、より好ましくは、80〜400nmである。ここで、一次粒子の平均粒子径とは、BET比表面積測定法による平均粒子径のことであり、凝集体形状のコロイダルシリカの大きさ(長さ)は、レーザー回折/散乱方式の粒度測定器で測定したメジアン径のことをいう。
【0041】
コロイダルシリカには、アニオン性のものとカチオン性のものとがある。本実施形態では、いずれのコロイダルシリカも用いることができるが、アニオン性コロイダルシリカを用いることがより好ましい。光沢発現層表面の硬さが向上し、結果として耐傷性をより改善することができる。
【0042】
本実施形態においては、耐傷性並びにインクジェット記録したときのインク吸収性、発色性及び光沢感を損なわない範囲であれば、前記光沢発現層の顔料としてコロイダルシリカ以外に、湿式法シリカ、乾式法シリカ、アルミナ又はアルミナ水和物を併用してもよい。また、これら以外の他の顔料、例えば、水酸化アルミニウム、カオリン、タルク、炭酸カルシウム、二酸化チタン、クレー、酸化亜鉛などを併用することも可能である。
【0043】
コロイダルシリカの含有量は、光沢発現層中の全顔料において、乾燥質量で80質量%以上とする。より好ましくは、90質量%以上であり、特に好ましくは、100質量%である。80質量%未満では、耐傷性の悪化又はインクジェット印字したときにインク吸収性が悪化する。
【0044】
光沢発現層に含有される結着剤としては、ポリビニルアルコールを用いる。ポリビニルアルコールを含有することで、インク吸収性及び発色性に優れたものとなる。さらに、本発明者らの鋭意検討の結果、塗工層の塑性変形を極小に抑えるには、ポリビニルアルコールが最も効果がある樹脂であることが判明した。本実施形態において、ポリビニルアルコールには、そのケン化物又はその変性物も包含する。ポリビニルアルコールのケン化物は、ケン化度によって部分ケン化ポリビニルアルコール又は完全ケン化ポリビニルアルコールに分けられる。また、ポリビニルアルコール変性物は、例えば、アニオン基変性ポリビニルアルコール、カチオン基変性ポリビニルアルコール、カルボキシル基変性ポリビニルアルコール、スルホン基変性ポリビニルアルコール、シラノール基変性ポリビニルアルコールが挙げられる。この中で、部分ケン化ポリビニルアルコール又はシラノール基変性ポリビニルアルコールを用いることがより好ましい。後述するキャストコート処理で用いる凝固剤として硼素化合物を用いる場合に凝固性が良好となる。
【0045】
本実施形態では、本発明の効果を損なわない範囲において、ポリビニルアルコール以外の結着剤を併用することができる。併用することができる結着剤としては、ポリビニルアセタール、酸化澱粉、エーテル化澱粉、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カゼイン、ゼラチン、大豆タンパク、ポリエチレンイミド系樹脂、ポリビニルピロヒドリン系樹脂、ポリアクリル酸又はその共重合体、無水マレイン酸共重合体、アクリルアミド系樹脂、アクリル酸エステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリビニルブチラール系樹脂、アルキッド樹脂、エポキシ系樹脂、エピクロルヒドリン系樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体、メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体、アクリル酸エステル、メタアクリル酸エステルの重合体又は共重合体などのアクリル系重合体ラテックス類、エチレン−酢酸ビニル共重合体などのビニル系重合体ラテックス類、コロイダルシリカとアクリルとの共重合体樹脂、コロイダルシリカとスチレン−アクリルとの共重合体樹脂などの樹脂類を例示することができる。
【0046】
結着剤の添加量は、インクジェット記録媒体の印字適性、インク受容層の強度及び塗料液性を考慮して決定される。通常、光沢発現層中の全顔料質量100質量部に対して乾燥質量で、1〜60質量部の範囲で添加される。好ましくは、5〜50質量部程度の範囲で添加される。1質量部未満であると塗工層強度が低下する場合がある。60質量部を超えるとインク吸収性が低下する場合がある。
【0047】
ポリビニルアルコールの含有量は、光沢発現層中の全結着剤において、乾燥質量で5質量%以上であることが好ましい。より好ましくは、10質量%以上である。5質量%未満では、インク吸収性及び発色性に劣る場合がある。また、光沢発現層の塑性変形を十分に抑えることができない場合がある。
【0048】
光沢発現層には、インクジェット記録用インクを定着させるためのカチオン性ポリマーを添加することが好ましい。また更に、離型剤、分散剤、増粘剤、防腐剤、消泡剤、着色染料、着色顔料、蛍光増白剤、耐水化剤、レベリング剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤などの助剤を適宜選定して添加することができる。
【0049】
光沢発現層は、前記顔料、結着剤など光沢発現層に含有される各種成分を配合し、適当な固形分濃度に調整した光沢発現層用塗工液を塗工後、キャストコート法によって設ける。光沢発現層用塗工液の塗工方式は、本実施形態では限定されず、エアーナイフ、ロールコーター、リバースロールコータ−、バーコーター、コンマコーター、ブレードコーターなど公知の塗工機を用いることができる。塗工量は、固形分換算で2〜11g/mとする。より好ましくは3〜10g/mであり、特に好ましくは5〜8g/mである。塗工量が11g/mを超えると、紙小判断裁時の紙粉の発生が酷くなり、塗工量が2g/m未満の場合には表面硬さが劣る。
【0050】
光沢発現層は、公知のキャストコート法によって形成する。キャストコート法には、ウエット法、凝固法、リウエット法が知られており、本実施形態においては、凝固法であることが好ましい。凝固法は、光沢発現層を塗布し湿潤状態にあるうちに凝固液を塗布して凝固処理してキャストドラムに圧接する方法である。ここで、凝固液とは、凝固剤の水溶液をいう。凝固剤は、光沢発現層の結着剤成分と効果的に凝固する物を選定することが重要である。本実施形態においては、硼素化合物を選択することが好ましい。より好ましくは、硼酸ナトリウム若しくは硼酸のいずれか一方又はその両方を用いる。より均一な光沢面を得ることができる。また、凝固剤の濃度は、0.1質量%以上とすることが好ましい。0.1質量%未満の場合には、凝固力が不足する場合がある。より好ましくは、0.5質量%以上である。さらに、1.0質量%以上とすることで、凝固力がより強くなり、耐傷性をより良化することができるため、特に好ましい。なお、凝固液の濃度の上限値は、作業性及びコストの点から10.0質量%とすることが好ましい。
【0051】
さらに、凝固液には、インクを定着させるためのカチオン性ポリマーを添加することも可能である。カチオン性高分子の添加量は、凝固液に含有する凝固剤100質量部に対して、乾燥質量で1〜1000質量部であることが好ましい。より好ましくは、10〜800質量部である。
【0052】
また、光沢発現層の塗工から凝固液を塗布するまでの時間、凝固液を塗布してキャストドラムに到達するまでの時間、キャストドラム温度、圧着するときの圧力又はライン速度を調整することによって、光沢発現層の光沢度をより高めることができる。これらの諸条件については、使用する設備、塗布液に応じて最適条件を求めることで適正化する必要がある。
【0053】
凝固剤の成分若しくは凝固剤のpHのいずれか一方又はその両方によっては、乾燥後の光沢発現層の表面pHが影響を与える場合がある。光沢発現層の表面pHが6.4以下に調整することが、白紙退色及び変色が少なくなる点で好ましい。さらに好ましくは、表面pHが6.0以下である。なお、光沢発現層の表面pHの下限値は、画像鮮明性の点から3.0とすることが好ましい。
【0054】
また、キャスト処理後にマシンカレンダー、ソフトカレンダー、スーパーカレンダーなどのカレンダー処理を行ってもよいし、カール調整のため、裏面に水、カール調整剤などを塗布したり、加湿したりしてカール調整を行うこともできる。
【0055】
本実施形態に係るインクジェット記録用光沢紙では、JIS H 8686−2:1999「アルミニウム及びアルミニウム合金の陽極酸化皮膜の写像性試験方法−第2部:機器測定法」に準じ、光学くし幅2mm入反射角度60°の条件による前記光沢発現層の写像性が50%以上であることが好ましい。より好ましくは、60%以上である。写像性が60%以上であれば、更に優れた光沢感を有するといえる。ここで、入反射角度を当該JIS記載の45゜を60゜と変更した理由は、光沢感の差異を評価しやすいためである。
【0056】
本実施形態のインクジェット記録用光沢紙は、光沢発現層の下に1層以上のインク受容層を設ける。インク受容層は、主成分として顔料と結着剤とを含有する。
【0057】
インク受容層に用いる顔料は、湿式法シリカ及び乾式法シリカの両方又はいずれか一方とする。湿式法シリカ及び乾式法シリカは、インク吸収性及び発色性に優れているため、良好な画像鮮明性を実現することができる。
【0058】
湿式法シリカは、沈降(沈殿)法シリカとゲル法シリカに類別されるが、一般的にケイ酸ナトリウムと鉱酸(通常は硫酸)との中和反応によって合成される。本実施形態では、湿式法シリカの種類は問わないが、インク吸収性の点で、ゲル法シリカがより好ましい。
【0059】
乾式法シリカは、気相法シリカ又はヒュームドシリカとも呼ばれ、一般的には火炎加水分解法によって製造される。具体的には四塩化ケイ素などの揮発性シラン化合物の酸水素炎中における気相加水分解によって製造され、火炎の温度、酸素と水素の供給比率、原料の四塩化ケイ素供給などの条件を変更することによって得られる。
【0060】
湿式法シリカ及び乾式法シリカの両方又はいずれか一方の含有量は、インク受容層中の全顔料のうち乾燥質量で70質量%以上とする。より好ましくは、80質量%以上であり、特に好ましくは、90質量%である。70質量%未満では、インクジェット印字したときにインク吸収性に劣り、良好な画像鮮明性を得ることができない。
【0061】
また、インクジェット記録したときのインク吸収性及び発色性を損なわない範囲であれば、公知の白色顔料を1種以上併用することができる。公知の白色顔料は、例えば、カオリン、タルク、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、硫酸亜鉛、炭酸亜鉛、珪酸カルシウム、珪酸アルミニウム、珪酸マグネシウム、珪藻土、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、サチンホワイト、コロイダルシリカ、アルミナなどの白色無機顔料であり、アクリル、スチレン、エチレン、塩化ビニル、ナイロンなどの有機顔料である。
【0062】
インク受容層に用いる結着剤としては、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、酸化澱粉、エーテル化澱粉、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カゼイン、ゼラチン、大豆タンパク、ポリエチレンイミド系樹脂、ポリビニルピロヒドリン系樹脂、ポリアクリル酸若しくはその共重合体、無水マレイン酸共重合体、アクリルアミド系樹脂、アクリル酸エステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリビニルブチラール系樹脂、アルキッド樹脂、エポキシ系樹脂、エピクロルヒドリン系樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体、メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体、アクリル酸エステル、メタアクリル酸エステルの重合体又は共重合体などのアクリル系重合体ラテックス類、エチレン−酢酸ビニル共重合体などのビニル系重合体ラテックス類の樹脂類が例示され、単独又は併用して用いることができる。結着剤の使用量は、インクジェット記録媒体の印字適性、インク受容層の強度及び塗料液性を考慮して決定される。通常、インク受容層中の全顔料乾燥質量100質量部に対して、1〜200質量部の範囲で添加される。好ましくは、5〜100質量部程度の範囲で添加される。1質量部未満であると塗工層強度が低下する場合がある。200質量部を超えるとインク吸収性が低下する場合がある。
【0063】
インク受容層には、顔料及び結着剤以外にカチオン性ポリマーを添加することが好ましい。カチオン性ポリマーは、インク中に使用されている染料中のアニオン性の成分と反応し水に不溶な塩を形成するため、インクをインク受容層に、より強固に定着させ、結果として耐水性が向上する効果を奏する。このようなカチオン性ポリマーとしては、ポリエチレンイミン、エピクロルヒドリン変性ポリアルキルアミン、ポリアミン、ポリアミンポリアミドエピクロルヒドリン、ジメチルアミンアンモニアエピクロルヒドリン、ポリビニルベンジルトリメチルアンモニウムハライド、ポリジアクリルジメチルアンモニウムハライド、ポリジメチルアミノエチルメタクリレート塩酸塩、ポリビニルピリジウムハライド、カチオン性ポリアクリルアミド、カチオン性ポリスチレン共重合体、ジアリルジメチルアンモニウムクロライド重合物、ジアリルジメチルアンモニウムクロライド二酸化硫黄共重合物、ジアリルジメチルアンモニウムクロライドアミド共重合物、ジシアンジアミドホルマリン重縮合物、ジシアンジアミドジエチレントリアミン重縮合物、ポリアリルアミン、ポリアリルアミン塩酸塩、ポリアクリルアミド系樹脂、ポリアミドエポキシ樹脂、メラミン樹脂酸コロイド、尿素系樹脂、カチオン変性ポリビニルアルコール、アミノ酸型両性界面活性剤、ベタイン型化合物、その他第4級アンモニウム塩類などが例示できる。添加量は、特に限定されないが、インク受容層中の全顔料100質量部に対し乾燥質量で1〜50質量部の範囲で使用することが好ましい。好ましくは、5〜40質量部程度の範囲で添加する。1質量部未満であると、印画部の耐水性が低下する場合がある。50質量部を超えると、インク吸収性が劣る場合がある。
【0064】
インク受容層には、その他の助剤として、必要に応じて消泡剤、潤滑剤、分散剤、湿潤剤、蛍光増白剤、着色染料、着色顔料、増粘剤、防腐剤、耐水化剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤などを添加できる。
【0065】
インク受容層は、前記顔料、結着剤、添加剤などインク受容層に含有される各種成分を配合し、適当な固形分濃度に調整したインク受容層用途工液を塗工後、乾燥して設けることができる。インク受容層を形成する塗工液の塗工方式は、本実施形態では限定されず、エアーナイフ、ロールコーター、バーコーター、コンマコーター、ブレードコーターなど公知の塗工機を用いることができる。塗工量は、2〜11g/mとすることが好ましい。より好ましくは、3〜10g/mであり、特に好ましくは、5〜8g/mである。2g/m未満では、インク吸収性に劣る場合があり、11g/mを超えると、紙小判断裁時に発生する紙粉量が多くなる場合がある。また、コスト面でも不利となる。なお、光沢発現層の塗工量が下限値の2g/mのときには、インク受容層の塗工液は、1.8g/m以上2.0g/m未満とすることが好ましい。また、インク受容層は、インク受容層用塗工液を1段塗工、2段塗工又は3段塗工以上で設けることができる。2段塗工以上の場合には、各種機能性付与を目的に、1段目と2段目の塗工液の処方を異なるものとしてよい。
【0066】
インク受容層は、空隙が大きいことから塑性変形しやすい。そのため、表面硬度の高い光沢発現層の塗工量を多くすることが必要である。本発明者らの鋭意なる検討から、(前記光沢発現層の塗工量)/(前記インク受容層の塗工量)で表される固形分換算の比が1.0を超えることで、耐傷性を実用的なレベルに維持できることが判明した。(前記光沢発現層の塗工量)/(前記インク受容層の塗工量)で表される固形分換算の比は、より好ましくは1.1以上、特に好ましくは1.2とする。(前記光沢発現層の塗工量)/(前記インク受容層の塗工量)で表される固形分換算の比が1.0以下では、光沢発現層に衝撃が与えられたときの下層に設けられたインク受容層の塑性変形の影響が大きくなり、結果として、耐傷性に劣る。ただし、当該比率の上限値は、断裁紙粉の点から4.0とすることが好ましい。
【0067】
塗工後の乾燥方式としては、熱風乾燥、赤外乾燥、ドラム乾燥などが挙げられるが、本実施形態においては特に限定されるものではない。
【0068】
また、インク受理層の表面の平滑性を制御する目的で、必要に応じてキャレンダー処理を行ってもよい。キャレンダーは、スーパーキャレンダー、マシンキャレンダー、ソフトキャレンダーなどが挙げられるが、本実施形態においては特に限定されない。
【0069】
本実施形態に係るインクジェット記録用光沢紙では、光沢発現層をキャスト処理で形成することから、全体として透気性を有していることが好ましい。インク受容層形成後の光沢発現層形成用基紙の透気抵抗度(JIS P 8117:1998「紙及び板紙−透気度及び透気抵抗度試験方法(中間領域)−ガーレー法」に従って測定)が、5〜200秒であることが好ましい。より好ましくは、10〜150秒である。
【0070】
本実施形態に係るインクジェット記録用光沢紙では、インク受容層及び光沢発現層を基材の少なくとも片面に設ける。インク受容層及び光沢発現層を基材の片面だけに設けることによって、片面印刷用の光沢紙としてもよいし、又は両面に設けることによって、両面印刷用の光沢紙とすることもできる。また、インクジェット記録用葉書の用紙として使用する場合には、片面だけをインク受容層及び光沢発現層を設けた光沢面とし、他方の面を非光沢面とすることで、当該光沢面を通信面とし、一方の面をオフセット印刷適性及び筆記性をもつ非光沢面を宛名面とすることが好ましい。
【0071】
本発明で使用する基材としては、通常の上質紙、中質紙、白板紙などの紙基材を用いる。紙基材の原紙に用いられるパルプとしては、広葉樹漂白サルファイトパルプ(LBSP)、広葉樹漂白クラフトパルプ(LBKP)、針葉樹漂白サルファイトパルプ(NBSP)、針葉樹漂白クラフトパルプ(NBKP)、脱墨パルプなどの木材パルプが有利に用いられる。また、必要に応じて、木材パルプ以外に、非木材パルプ、合成パルプ又は合成繊維を用いてもよい。燃料としてリサイクルされる場合を考慮すると、原料パルプとしては塩素含有量の少ないECF(Elemental Chlorine Free)パルプ又はTCF(Totally Chlorine Free)パルプの使用が望ましい。
【0072】
前記パルプは、適切な叩解度を有するパルプスラリーとする。各層のパルプの叩解度は、本実施形態では、限定されるものではないが、カナダ標準ろ水度(フリーネス)(JIS P 8121:1995「パルプのろ水度試験方法」)で、350〜600mlCSFとすることが好ましい。より好ましくは、400〜580mlCSFである。350mlCSF未満では、パルプの繊維間結合が強くなるため空隙率が減少し、透気抵抗度の増加及びインク吸収性の低下が生じる傾向がある。600mlCSFを超えると、基材の強度が低下し、ギロチン断裁時に紙粉が発生しやすくなる。
【0073】
前記パルプスラリーには、填料を含有させることが好ましい。填料の種類は、本実施形態では特に限定されないが、水和珪酸、ホワイトカーボン、タルク、カオリン、クレー、炭酸カルシウム、酸化チタン、アルミノケイ酸塩、焼成クレー、合成樹脂填料などの公知の填料を併用することができる。紙基材中の填料の含有率は、不透明性と紙力との観点から、乾燥質量で1〜15質量%とすることが好ましい。より好ましくは、2〜12質量%である。填料の含有率が1質量%未満では、所望の不透明性を得ることができない場合がある。填料の含有率が15質量%を超えると、紙力が不足する場合があり、更には、断裁時の紙粉及び毛羽立ちが多くなる場合がある。
【0074】
さらに、前記パルプスラリーには、紙力増強剤を含有させることが好ましい。紙力増強剤は、本実施形態では特に限定されないが、カチオン化澱粉、両性澱粉、グラフト化澱粉、ポリアクリルアミド、ポリアミドポリアミン−エピクロルヒドリン樹脂、メラミン樹脂、尿素ホルムアルデヒド樹脂などの公知の紙力増強剤を併用することができる。紙基材中の紙力増強剤の含有率は、乾燥質量で0.1〜2.5質量%とすることが好ましい。より好ましくは、0.2〜2.0質量%である。
【0075】
前記パルプスラリーには、本発明の効果を損なわない程度に分散剤、サイズ剤、定着剤などの諸助剤を必要に応じて添加することが可能である。さらに、必要であればpH調節剤、染料、有色顔料又は蛍光増白剤を添加することが可能である。
【0076】
所定のフリーネスに叩解され、調製されたパルプスラリーは、長網抄紙機、ツインワイヤー抄紙機、円網抄紙機などの公知の抄紙機を用いて単層又は多層で抄造される。
【0077】
抄造した紙匹の片面又は両面には、キャストコート時における塗工液の過度の浸透を抑えるために、澱粉、ポリビニルアルコールなどの水溶性高分子を含有するサイズ液を塗布することが好ましい。サイズ液をタブサイズ、サイズプレス、ゲートロールコーター、フィルムトランスファーコーターなど公知の塗布機で塗布し、紙基材とすることができる。また、これらはオンマシン又はオフマシンで塗布することが可能である。
【0078】
紙基材の厚さは、本実施形態では特に限定されないが、100〜360μmであることが好ましい。より好ましくは、120〜340μmである。また、坪量は、100〜300g/mであることが好ましく、より好ましくは、120〜280g/mである。
【0079】
このようにして製造された紙基材に直接インク受容層を設けてもよいが、本実施形態では、紙基材の表面を平滑化する目的で、予めマシンカレンダー、ソフトカレンダー、ラスターなどの処理を施すのが好ましい。
【実施例】
【0080】
次に、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。また、例中の「部」、「%」は、特に断らない限りそれぞれ「質量部」、「質量%」を示す。
【0081】
(実施例1)
(紙基材の形成)
カナダ標準ろ水度500mlCSFに叩解したLBKP100.0部に対して、内添填料としてタルク(Tライト83、太平タルク社製)5.0部を添加した。さらに、硫酸バンド3.0部と、ロジンサイズ剤(AL−120、星光PMC社製)0.25部と、カチオン化澱粉(マーメイドC−50、敷島スターチ社製)1.0部とを添加し、パルプスラリーを調製した。該パルプスラリーを長網抄紙機で抄造し、紙匹を得た。その後、サイズ液として酸化澱粉(MS#3800、日本食品加工社製)を前記紙匹の両面に乾燥塗布量が片面当たり1.5g/mとなるようにサイズプレスで塗布し、シリンダードライヤーで乾燥した。その後、スチールカレンダーを用いて線圧40kg/cm、25℃、2ニップ1パスの条件で表面処理を行い、坪量180g/mの上質紙を紙基材とした。
【0082】
(インク受容層の形成)
得られた紙基材の片面に、顔料として合成シリカ(SYLOJET P409、湿式法シリカ、グレースデビソン社製)80.0部と、水酸化アルミニウム(ハイジライトH−42M、昭和電工社製)20.0部と、結着剤としてポリビニルアルコール(PVA117、クラレ社製)10.0部と、エチレン−酢酸ビニル(ポリゾールEVA AD−10、昭和高分子社製)30.0部と、カチオン性ポリマー(パピオゲンP−105、センカ社製)10.0部とを配合し、工業用水で固形分濃度22%に調整したインク受容層用塗工液を得た。続いて、エアーナイフコーターで絶乾塗工量9g/mとなるように塗工・乾燥してインク受容層を形成した。インク受容層形成後の光沢発現層形成用基紙の透気抵抗度(JIS P 8117:1998)は、70秒であった。
【0083】
(光沢発現層の形成)
顔料として球状コロイダルシリカ(SYLOJET 4000C、カチオン性、平均一次粒子径30〜40nm、グレースデビソン社製)90.0部と、乾式法シリカ(レオロシールQS−30、トクヤマ社製)10.0部と、結着剤としてスチレン−アクリル樹脂エマルジョン(モビニール880、ニチゴーモビニール社製)4.0部と、ポリビニルアルコール(PVA−235、クラレ社製)10.0部と、カチオンポリマー(スミレーズレジン1001、住友化学工業社製)10.0部と、離型剤としてポリエチレンエマルジョン(SNコート287、サンノプコ社製)1.0部とを配合し、工業用水で固形分濃度20%に調整した光沢発現層用塗工液を得た。この塗工液を前記インク受容層の上にエアーナイフコーターで絶乾塗工量10g/mとなるように前記基紙のインク受容層形成面に塗工し、次いで、凝固剤として硼酸ナトリウムを1%及び硼酸を1%含む水溶液を凝固液(凝固液の濃度は2%)として絶乾塗布量1.0g/mとなるように光沢発現層用塗工液の塗工面上に塗布して凝固処理を行った後、得られた塗工層表面が湿潤状態にあるうちに表面温度105℃のキャストドラムに圧着し、インクジェット記録用光沢紙を作製した。
【0084】
(実施例2)
実施例1において光沢発現層用塗工液で用いる顔料を、球状コロイダルシリカ(SYLOJET 4000C、グレースデビソン社製)100部とした以外は、実施例1に準じて実施例2のインクジェット記録用光沢紙を作製した。
【0085】
(実施例3)
実施例1において光沢発現層用塗工液を、顔料として球状コロイダルシリカ(カタロイドSI−80P、アニオン性、平均一次粒子径78nm、触媒化成工業社製)100部と、結着剤としてポリビニルアルコール(PVA−235、クラレ社製)10.0部と、離型剤としてポリエチレンエマルジョン(SNコート287、サンノプコ社製)1.0部とを配合し、工業用水で固形分濃度17%とし、更に、凝固液を、凝固剤として硼酸ナトリウムを1%、硼酸を1%及びカチオンポリマー(スミレーズレジン1001、住友化学工業社製)を2%含む水溶液とした以外は、実施例1に準じて実施例3のインクジェット記録用光沢紙を作製した。
【0086】
(実施例4)
実施例1において光沢発現層用塗工液で用いる顔料を、パールネックレス状コロイダルシリカ(スノーテックスPS−MO、カチオン性、平均一次粒子径18〜25nm、平均二次粒子径80〜150nm、日産化学工業社製)100部とした以外は、実施例1に準じて実施例4のインクジェット記録用光沢紙を作製した。
【0087】
(実施例5)
実施例1において光沢発現層用塗工液で用いる結着剤を、シラノール変性ポリビニルアルコール(PVA−R1130、クラレ社製)10.0部とした以外は、実施例1に準じて実施例5のインクジェット記録用光沢紙を作製した。
【0088】
(実施例6)
実施例1においてインク受容層用塗工液で用いる顔料を、合成シリカ(SYLOJET P409、湿式法シリカ、グレースデビソン社製)100部とした以外は、実施例1に準じて実施例6のインクジェット記録用光沢紙を作製した。
【0089】
(実施例7)
実施例1においてインク受容層用塗工液で用いる顔料を、合成シリカ(レオロシールQS−30、乾式法シリカ、トクヤマ社製)100部とした以外は、実施例1に準じて実施例7のインクジェット記録用光沢紙を作製した。
【0090】
(実施例8)
実施例1において、光沢発現層の絶乾塗工量を6g/mとし、インク受容層の絶乾塗工量を4g/mとした以外は、実施例1に準じて実施例8のインクジェット記録用光沢紙を作製した。
【0091】
(実施例9)
実施例1において、光沢発現層の絶乾塗工量を11g/mとし、インク受容層の絶乾塗工量を9g/mとした以外は、実施例1に準じて実施例9のインクジェット記録用光沢紙を作製した。
【0092】
(実施例10)
実施例1において光沢発現層用塗工液で用いる顔料を、球状コロイダルシリカ(SYLOJET 4000C、グレースデビソン社製)80.0部と、乾式法シリカ(レオロシールQS−30、トクヤマ社製)20.0部とした以外は、実施例1に準じて実施例10のインクジェット記録用光沢紙を作製した。
【0093】
(実施例11)
実施例1においてインク受容層用塗工液で用いる顔料を、合成シリカ(SYLOJET P409、湿式法シリカ、グレースデビソン社製)70.0部と、水酸化アルミニウム(ハイジライトH−42M、昭和電工社製)30.0部とした以外は、実施例1に準じて実施例11のインクジェット記録用光沢紙を作製した。
【0094】
(実施例12)
実施例1においてインク受容層用塗工液で用いる顔料を、合成シリカ(レオロシールQS−30、乾式法シリカ、トクヤマ社製)70.0部と、水酸化アルミニウム(ハイジライトH−42M、昭和電工社製)30.0部とした以外は、実施例1に準じて実施例12のインクジェット記録用光沢紙を作製した。
【0095】
(比較例1)
実施例1において光沢発現層用塗工液で用いる顔料を、球状コロイダルシリカ(SYLOJET 4000C、グレースデビソン社製)70.0部と、乾式法シリカ(レオロシールQS−30:トクヤマ社製)30.0部とした以外は、実施例1に準じて比較例1のインクジェット記録用光沢紙を作製した。
【0096】
(比較例2)
実施例1においてインク受容層用塗工液で用いる顔料を、合成シリカ(SYLOJET P409、グレースデビソン社製)50.0部と、水酸化アルミニウム(ハイジライトH−42M、昭和電工社製)50.0部とした以外は、実施例1に準じて比較例2のインクジェット記録用光沢紙を作製した。
【0097】
(比較例3)
実施例1において光沢発現層の絶乾塗工量を20g/mとし、インク受容層の絶乾塗工量を10g/mとした以外は、実施例1に準じて比較例3のインクジェット記録用光沢紙を作製した。
【0098】
(比較例4)
実施例1において光沢発現層の絶乾塗工量を7g/mとし、インク受容層の絶乾塗工量を10g/mとした以外は、実施例1に準じて比較例4のインクジェット記録用光沢紙を作製した。
【0099】
(比較例5)
実施例1において光沢発現層の絶乾塗工量を12g/mとし、インク受容層の絶乾塗工量を9g/mとした以外は、実施例1に準じて比較例5のインクジェット記録用光沢紙を作製した。
【0100】
得られたインクジェット記録用光沢紙について、次の試験を実施し、結果を表1に示した。
【0101】
(1)光沢発現層表面のダイナミック硬度(ダイナミック硬度(負荷時)及び(除荷時))
得られたインクジェット記録用光沢紙の光沢発現層表面のダイナミック硬度を測定した。ダイナミック硬度は、超微小硬度計(DUH−201、島津製作所社製)を使用し、次の条件で測定を行った。また、ダイナミック硬度は、負荷時又は除荷時の押し込み深さから、次の計算式よって求めた。
使用圧子:三角錐ダイヤモンド圧子(稜間角115度、圧子形状係数:3.8584)
試験力:1.00mN
負荷速度:1.42mN/秒
ダイナミック硬度の計算:DH=α×P÷D(DH:ダイナミック硬度、P:試験力(mN)、D:圧子の試料表面への押し込み深さ(μm)、α:圧子形状係数)
【0102】
(2)光沢発現層表面の写像性(写像性)
得られたインクジェット記録用光沢紙の光沢発現層表面の鏡面性を評価するために写像性を測定した。写像性は、JIS H 8686−2に準じて、光学くし幅2mmにて入反射角度60°とし、写像性測定器(ICM−1T、スガ試験機社製)にて測定した。評価としては、次のとおりである。
写像性が50%以上:反射した像が鮮明に写り、光沢感に優れ、実用できる。
写像性が50%未満:反射した像が不鮮明に写り、光沢感に劣り、光沢紙として実用上問題がある。
【0103】
(3)画像鮮明性
ISO標準画像(ISO/JIS−SCID高精細カラーデジタル標準画像データ、画像の名称:ポートレート、画像の識別番号:N1)をセイコーエプソン社製インクジェットプリンター「PM−900C」を用い、得られたインクジェット記録用光沢紙に印字した。印字した画像を目視によって評価した。
◎:記録画像が非常に鮮明でコントラストがはっきりしており、実用できる。
○:記録画像が鮮明でコントラストがはっきりしており、実用できる。
△:記録画像が鮮明であるがコントラストがはっきりしなく、色が沈んでおり、実用上問題がある。
×:記録画像が不鮮明で、色が沈んでおり、実用上不可。
【0104】
(4)インク吸収性
セイコーエプソン社製インクジェットプリンター「PM−900C」を用い、CMYKの各インク並びにRGB(Red−Green−Blue)のベタ(100%濃度)及び文字を得られたインクジェット記録用光沢紙に印字した。ベタ部の各色の境界及び文字の滲みの程度を目視によって評価した。
◎:境界がくっきりして滲みが全く無く、文字が鮮明であり、実用できる。
○:境界の滲みが目立たず、文字が鮮明であり、実用できる。
△:境界の滲みが目立ち、文字が不鮮明で実用上問題がある。
×:境界の滲みがひどく、文字が判別できなくなり実用上不可。
【0105】
(5)光沢発現層表面の耐傷性
得られたインクジェット記録用光沢紙(菊判(636mm×939mm))20枚を、オフセット印刷機(LITHRON40、KOMORI社製)にセットして、擦り傷の出やすい高速印刷速度(8500枚/時)で裏面側の印刷を行ったときに発生した、光沢発現層表面の擦り傷の度合いを目視評価した。
◎:擦り傷が全く無く良好であり、実用できる。
○:擦り傷が僅かに認められるが目立たず、実用できる。
△:擦り傷が明らかに認められ、実用上問題がある。
×:擦り傷が著しく認められ、実用上不可。
【0106】
(6)断裁時の紙粉の発生量(紙粉の発生量)
得られたインクジェット記録用光沢紙(A4サイズ)を20枚重ねてカッター(電動断裁機No.709、ライオン事務機社製)で断裁し、発生した紙粉の量を目視評価した。
◎:紙粉はほとんど発生せず、実用できる。
○:紙粉は少し発生するが、実用できる。
△:紙粉の発生があり、実用上問題がある。
×:紙粉が多量に発生し、実用上不可。
【0107】
(7)光沢発現層の表面pH
紙質検査用pH計(MPC、共立理化学研究所社製)を用いて、得られたインクジェット記録用光沢紙の光沢発現層表面の表面pHを測定した。
【0108】
【表1】

【0109】
表1から明らかなように、実施例1〜12は、インク受容層は、顔料のうち70質量%以上が湿式法シリカ及び乾式法シリカの両方又はいずれか一方であり、光沢発現層は、顔料のうち80質量%以上がコロイダルシリカであり、かつ、前記結着剤としてポリビニルアルコールを含有し、光沢発現層の塗工量が、固形分換算で2〜11g/mであり、(前記光沢発現層の塗工量)/(前記インク受容層の塗工量)で表される固形分換算の比が1を超えており、いずれも、印字性能と光沢感に優れ、紙粉の発生も少なく、かつ、光沢発現層表面の耐傷性に優れ、インクジェット記録用光沢紙として実用レベルであった。
【0110】
さらに、実施例1〜8は、いずれも試験力1.0mN、負荷速度1.42mN/秒の測定条件下で三角錐ダイヤモンド圧子(稜間角115度、圧子形状係数3.8584)を用いたときの超微小硬度計による光沢発現層表面のダイナミック硬度が負荷時で5.0以上、除荷時で20.0以上を有していた。これらは、より実用に適したものであった。
【0111】
実施例9は、光沢発現層の塗工層が11g/mであり、画像鮮明性の効果、インク吸収性及び耐傷性に優れていたものの、紙粉量が、実施例1〜8と比べて若干多く、実用下限レベルであった。実施例10は、光沢発現層の顔料のうち、コロイダルシリカの含有量が80質量%であり、耐傷性が実用下限レベルであった。実施例11は、インク受容層中の顔料のうち、湿式法シリカが70質量%であり、インク吸収性が実用下限レベルであった。実施例12は、インク受容層中の顔料のうち、乾式法シリカが70質量%であり、インク吸収性が実用下限レベルであった。
【0112】
比較例1は、光沢発現層で用いる顔料としてコロイダルシリカ含有量が少なすぎたため、光沢表面の耐傷性に劣った。比較例2は、インク受容層で用いる顔料として湿式法シリカの量が少なすぎたため、インク吸収性に劣った。比較例3及び5は、光沢発現層の塗工量が多すぎたため、紙粉量が実用上問題あるレベルになった。比較例4は、光沢発現層よりもインク受容層の塗工量が多かったため、耐傷性が実用上問題あるレベルになった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材の少なくとも片面に顔料を含有する1層以上のインク受容層が設けられ、該インク受容層の最表層上に顔料と結着剤とを含有する光沢発現層がキャストコート法によって設けられたインクジェット記録用光沢紙において、
前記インク受容層は、顔料のうち70質量%以上が湿式法シリカ及び乾式法シリカの両方又はいずれか一方であり、
前記光沢発現層は、顔料のうち80質量%以上がコロイダルシリカであり、かつ、前記結着剤としてポリビニルアルコールを含有し、
前記光沢発現層の塗工量が、固形分換算で2〜11g/mであり、
(前記光沢発現層の塗工量)/(前記インク受容層の塗工量)で表される固形分換算の比が1を超えることを特徴とするインクジェット記録用光沢紙。
【請求項2】
次に示すダイナミック硬度試験条件において、超微小硬度計による前記光沢発現層の負荷時ダイナミック硬度が5.0以上、かつ、除荷時ダイナミック硬度が20.0以上であることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録用光沢紙。
(ダイナミック硬度試験条件)
圧子:三角錐ダイヤモンド圧子(稜間角115度、圧子形状係数3.8584)
試験荷重:1.0mN
負荷速度:1.42mN/秒
【請求項3】
JIS H 8686−2:1999「アルミニウム及びアルミニウム合金の陽極酸化皮膜の写像性試験方法−第2部:機器測定法」に準じ、光学くし幅2mm入反射角度60°の条件による前記光沢発現層の写像性が50%以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載のインクジェット記録用光沢紙。
【請求項4】
前記光沢発現層を形成するキャストコート法が凝固法であり、かつ、凝固剤として硼素化合物を含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに一つに記載のインクジェット記録用光沢紙。
【請求項5】
前記光沢発現層の表面pHが6.4以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに一つに記載のインクジェット記録用光沢紙。

【公開番号】特開2011−152707(P2011−152707A)
【公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−15666(P2010−15666)
【出願日】平成22年1月27日(2010.1.27)
【出願人】(000241810)北越紀州製紙株式会社 (196)
【Fターム(参考)】