説明

インクジェット記録用水性顔料インク

【課題】プラスチックや金属等のインク非吸収性材料にも印刷可能で密着性の優れたインクインクジェット記録用水性顔料インクを提供する。
【解決手段】少なくとも顔料、エマルジョン樹脂、水溶性化合物、水を含むインクジェット記録用水性顔料インクであって、前記エマルジョン樹脂のガラス転移温度が−5℃〜70℃であり、該エマルジョン樹脂の平均粒子径が20nm〜120nmであり、前記水溶性化合物が下記式(1)に示す化合物であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラスチック、金属のような非吸収材に対する密着性に優れたインクジェット記録用水性顔料インクに関する。
【背景技術】
【0002】
画像データ信号に基づき、紙などの被記録媒体に画像を形成する画像記録方法として、電子写真方式、昇華型・溶融型の熱転写方式、インクジェット方式などが知られている。これらの中でも、前記インクジェット方式は、安価な装置で実施可能であり、かつ、必要とされる画像部のみにインクを吐出して被記録媒体上に直接画像形成を行うため、インクを効率よく使用でき、ランニングコストが安く、さらに騒音が少なく、画像記録方式として優れている。
一方、プラスチックや金属等のようにインク吸収性のない材料ないしインク吸収性の低い材料(すなわち、インク非吸収性材料)への印刷に紫外線硬化型インクが用いられてきた。今日では、グラビア印刷を除き、オフセット印刷、シール印刷、又はスクリーン印刷等のほとんど全ての印刷方式に紫外線硬化型インクを用いた方式が導入されている。しかしながら、上記の印刷方式は装置が大がかりであり、小規模な印刷には適していない。
これを解決する方法として、安全性が高く、環境負荷の小さい水性インクを用いるインクジェット方式あり、プラスチックや金属等のインク非吸収性材料にも印刷可能な水性顔料インクについても多くの提案がなされている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−20421号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、前述した水性顔料インクは、吐出安定性の向上を図り、表面平滑性の高いアート紙やプラスチックへの密着性を改良したものであったが、特にプラスチックや金属への密着性は十分とはいえない状況であった。
【0005】
そこで、本発明は、プラスチックや金属等のインク非吸収性材料にも印刷可能で密着性の優れたインクジェット記録用水性顔料インクを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するために、本発明者らは、インクジェット記録用水性顔料インクについて鋭意検討した結果、インクジェット記録用水性顔料インクを下記の構成にすると上記目的を達成できることを見出し、本発明をなすに至った。
【0007】
すなわち、少なくとも顔料、エマルジョン樹脂、水溶性化合物、水を含むインクジェット記録用水性顔料インクであって、前記エマルジョン樹脂のガラス転移温度が−5℃〜70℃であり、該エマルジョン樹脂の平均粒子径が20nm〜120nmであり、前記水溶性化合物が下記式(1)に示す化合物であることを特徴とするインクジェット記録用水性顔料インク。
【0008】
【化1】

【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、インクジェット記録用水性顔料インクの組成中に少なくとも顔料、エマルジョン樹脂、水溶性化合物、水を含み、前記エマルジョン樹脂のガラス転移温度が−5℃〜70℃であり、該エマルジョン樹脂の平均粒子径が20nm〜120nmであり、前記水溶性化合物が下記式(1)に示す化合物であることから、プラスチックや金属等のインク非吸収性材料にも印刷可能で密着性の優れたインクインクジェット記録用水性顔料インクを提供することができる。
【0010】
【化2】

【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明による水性顔料インクは分散安定性に優れ、紙などの吸収性材料に対しては、にじみが少なく高発色であり、プラスチックや金属等のインク非吸収性材料にも印刷可能で十分な発色に加えて密着性が優れ、インクジェット記録にあってはさらにインクジェットヘッドからのインクの吐出安定性に優れることなどの特性が要求されていることに鑑み、鋭意検討した結果によるものである。
【0012】
本発明による水性顔料インクは、少なくとも顔料、エマルジョン樹脂、水溶性化合物、水を含み、前記エマルジョン樹脂のガラス転移温度が−5℃〜70℃であり、該エマルジョン樹脂の平均粒子径が20nm〜120nmであり、前記水溶性化合物が下記式(1)に示す化合物であることを特徴とする
【0013】
【化3】

【0014】
エマルジョン樹脂のガラス転移温度が−5℃〜70℃の範囲であると好ましいのは、−5℃未満であると、印刷面がべた付いて埃が付着しやすくなったり、張り付き安くなる問題が生じたり、70℃を超えると、プラスチックや金属への密着性が低下する場合があるからである。
【0015】
エマルジョン樹脂の平均粒子径が20nm〜120nmであると好ましいのは、20nm未満であると、エマルジョンの分散安定性が低下したり、120nmを超えると散乱が増加して光沢が悪くなる場合があるからである。
【0016】
上記式(1)の水溶性化合物(Rは炭素数1〜5のアルキル基)を含ませると好ましいのは、プラスチックや金属への密着性が向上するのに加えて、インクジェットヘッドからのインクの吐出安定性が優れるからである。
【0017】
本発明で用いられる顔料としては、従来公知の無機、有機の顔料が挙げられ、これらを単独または混合して用いることができる。
【0018】
無機顔料としては、具体的には、例えば、酸化チタン、亜鉛華、酸化亜鉛、トリポン、酸化鉄、酸化アルミニウム、二酸化ケイ素、カオリナイト、モンモリロナイト、タルク、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、シリカ、アルミナ、カドミウムレッド、べんがら、モリブデンレッド、クロムバーミリオン、モリブデートオレンジ、黄鉛、クロムイエロー、カドミウムイエロー、黄色酸化鉄、チタンイエロー、酸化クロム、ピリジアン、コバルトグリーン、チタンコバルトグリーン、コバルトクロムグリーン、群青、ウルトラマリンブルー、紺青、コバルトブルー、セルリアンブルー、マンガンバイオレット、コバルトバイオレット、マイカなどが挙げられる。
【0019】
有機顔料としては、具体的には、例えば、アゾ系、アゾメチン系、ポリアゾ系、フタロシアニン系、キナクリドン系、アントラキノン系、インジゴ系、チオインジゴ系、キノフタロン系、ベンズイミダゾロン系、イソインドリン系の有機顔料などが挙げられる。また、酸性、中性または塩基性カーボンからなるカーボンブラックを用いてもよい。さらに、架橋したアクリル樹脂の中空粒子なども有機顔料として用いてもよい。
【0020】
シアン色を有する顔料としては、具体的には、例えば、C.I.ピグメントブルー1、C.I.ピグメントブルー2、C.I.ピグメントブルー3、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー15:4、C.I.ピグメントブルー16、C.I.ピグメントブルー22、C.I.ピグメントブルー60などが挙げられる。これらの中でも、耐候性、着色力などの点から、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー15:4のいずれかまたは両方が好ましい。
【0021】
マゼンタ色を有する顔料としては、具体的には、例えば、C.I.ピグメントレッド5、C.I.ピグメントレッド7、C.I.ピグメントレッド12、C.I.ピグメントレッド48(Ca)、C.I.ピグメントレッド48(Mn)、C.I.ピグメントレッド57(Ca)、C.I.ピグメントレッド57:1、C.I.ピグメントレッド112、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド123、C.I.ピグメントレッド168、C.I.ピグメントレッド184、C.I.ピグメントレッド202、C.I.ピグメントレッド209、C.I.ピグメントレッド254、C.I.ピグメントバイオレット19などが挙げられる。これらの中でも、耐候性、着色力などの点から、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド202、C.I.ピグメントレッド209、C.I.ピグメントレッド254、及びC.I.ピグメントバイオレット19からなる群から選択される少なくとも1種が好ましい。
【0022】
イエロー色を有する顔料としては、具体的には、例えば、C.I.ピグメントイエロー1、C.I.ピグメントイエロー2、C.I.ピグメントイエロー3、C.I.ピグメントイエロー12、C.I.ピグメントイエロー13、C.I.ピグメントイエロー14C、C.I.ピグメントイエロー16、C.I.ピグメントイエロー17、C.I.ピグメントイエロー73、C.I.ピグメントイエロー74、C.I.ピグメントイエロー75、C.I.ピグメントイエロー83、C.I.ピグメントイエロー93、C.I.ピグメントイエロー95、C.I.ピグメントイエロー97、C.I.ピグメントイエロー98、C.I.ピグメントイエロー109、C.I.ピグメントイエロー110、C.I.ピグメントイエロー114、C.I.ピグメントイエロー120、C.I.ピグメントイエロー128、C.I.ピグメントイエロー129、C.I.ピグメントイエロー130、C.I.ピグメントイエロー138、C.I.ピグメントイエロー139、C.I.ピグメントイエロー147、C.I.ピグメントイエロー150、C.I.ピグメントイエロー151、C.I.ピグメントイエロー154、C.I.ピグメントイエロー155、C.I.ピグメントイエロー180、C.I.ピグメントイエロー185、C.I.ピグメントイエロー213、C.I.ピグメントイエロー214などが挙げられる。これらの中でも、耐候性などの点から、C.I.ピグメントイエロー74、C.I.ピグメントイエロー83、C.I.ピグメントイエロー109、C.I.ピグメントイエロー110、C.I.ピグメントイエロー120、C.I.ピグメントイエロー128、C.I.ピグメントイエロー138、C.I.ピグメントイエロー139、C.I.ピグメントイエロー150、C.I.ピグメントイエロー151、C.I.ピグメントイエロー154、C.I.ピグメントイエロー155、C.I.ピグメントイエロー213、及びC.I.ピグメントイエロー214からなる群から選択される少なくとも1種が好ましい。
【0023】
ブラック色を有する顔料としては、具体的には、例えば、三菱化学社製のHCF、MCF、RCF、LFF、SCF;キャボット社製のモナーク、リーガル;デグサ・ヒュルス社製のカラーブラック、スペシャルブラック、プリンテックス;東海カーボン社製のトーカブラック;コロンビア社製のラヴェンなどが挙げられる。これらの中でも、三菱化学社製のHCF#2650、HCF#2600、HCF#2350、HCF#2300、MCF#1000、MCF#980、MCF#970、MCF#960、MCF88、LFFMA7、MA8、MA11、MA77、MA100、及びデグサ・ヒュルス社製のプリンテックス95、プリンテックス85、プリンテックス75、プリンテックス55、プリンテックス45からなる群から選択される少なくとも1種が好ましい。
【0024】
また、これらの顔料を界面活性剤あるいは分散剤により分散安定化した分散顔料、顔料粒子表面に化学反応によって親水性の官能基を導入した自己分散型顔料、又はポリマー成分をグラフト処理した顔料、及び顔料の表面を樹脂で完全に被覆することで機能化したカプセル化顔料等の樹脂で複合化した顔料等として用いてもよい。
【0025】
水性顔料インク全量に対する顔料の添加量は、着色剤としての機能を発現させる量が望ましく、好ましくは、0.1〜20重量%、より好ましくは、0.5〜10重量%である。この範囲が好ましいのは、配合量が0.1重量%に満たない場合は、印字濃度が不十分であり、顔料の配合量が20重量%を超えると、着色剤としての効果が飽和するだけではなくインクの粘度が上昇したりする場合があるので、上記範囲内とするのが好ましい。
【0026】
エマルジョン樹脂を形成する材料としては、スチレン、テトラヒドロフルフリルアクリレートおよびブチルメタクリレートの他に(α、2、3または4)−アルキルスチレン、(α、2、3または4)−アルコキシスチレン、3、4−ジメチルスチレン、α−フェニルスチレン、ジビニルベンゼン、ビニルナフタレン、ジメチルアミノ(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、N、N−ジメチルアミノエチルアクリレート、アクリロイルモルフォリン、N、N−ジメチルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、N、N−ジエチルアクリルアミド、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、エチルヘキシル(メタ)アクリレート、その他アルキル(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基のジエチレングリコールまたはポリエチレングリコールの(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、イソボニル(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、その他含フッ素、含塩素、含珪素(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、マレイン酸アミド、(メタ)アクリル酸等の1官能の他に架橋構造を導入する場合は(モノ、ジ、トリ、テトラ、ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1、4−ブタンジオール、1、5−ペンタンジオール、1、6−ヘキサンジオール、1、8−オクタンジオールおよび1、10−デカンジオール等の(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、グリセリン(ジ、トリ)(メタ)アクリレート、ビスフェノールAまたはFのエチレンオキシド付加物のジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等を用いることができる。
【0027】
イオン性基及びアルコキシシリル基を含有するアクリルウレタンエマルジョン樹脂を用いると、イオン性基によりエマルジョン樹脂の分散安定性良好になり、アルコキシシリル基により被記録媒体上での水の蒸発あるいは浸透時に縮合反応が起きて自己架橋するので記録層の耐久性が向上するので好ましい。このアクリルウレタンエマルジョン樹脂は、少なくともイオン性基を含有する重合性不飽和モノマー、ポリイソシアネート、活性水素基を含有する化合物、反応性官能基及びアルコキシシリル基を含有する化合物をウレタン化反応及びラジカル重合反応により得られた、イオン性基及びアルコキシシリル基を含有するアクリルウレタンエマルジョン樹脂である。
【0028】
エマルジョン樹脂のガラス転移温度は、−5℃〜70℃の範囲が好ましい。また、エマルジョン樹脂は、インクジェット記録用水性顔料インク全量に対して5〜25重量%含まれることが好ましい。
【0029】
水溶性化合物としては、前述の式(1)に示される水溶性化合物以外に、乾燥促進、インクジェットヘッドの吐出安定性の向上、保湿性の付与のために水溶性有機溶剤が用いられる。
【0030】
用いられる水溶性有機溶剤としては、炭素数1〜4の脂肪族アルコール、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、又はイソブチルアルコール等、グリセリン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ヘキシレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,2,4−ブタントリオール、2,2‘−チオジエタノール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等の高沸点低揮発性の多価アルコール類およびこれらのモノエーテル化物、ジエーテル化物、エステル化物、例えばエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等が用いられ、その他2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチルイミダゾリジノン、モノエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、N,N−ジエチルエタノールアミン、ジエタノールアミン、N−n−ブチルジエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、トリエタノールアミン等の含窒素有機溶剤等が用いられる。
【0031】
また、インクの表面張力の制御、顔料およびエマルジョン樹脂の分散安定性の向上のために界面活性剤を用いてもよい。界面活性剤としては、両性界面活性剤、非イオン性界面活性剤が好ましい。
【0032】
両性界面活性剤としてはラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、2−アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ポリオクチルポリアミノエチルグリシンその他イミダゾリン誘導体等が挙げられる。
非イオン界面活性剤としては、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル(ポリオキシプロピレンポリオキシエチレンアルキルエーテル)などのエーテル系、ポリオキシエチレンオレイン酸、ポリオキシエチレンオレイン酸エステル、ポリオキシエチレンジステアリン酸エステル、ソルビタンラウレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンセスキオレート、ポリオキシエチレンモノオレエート、ポリオキシエチレンステアレート等のエステル系、その他フッ素アルキルエステル、パーフルオロアルキルカルボン酸塩等の含フッ素系界面活性剤等が挙げられる。
【実施例】
【0033】
以下、実施例により、本発明をより具体的に説明するが、これら実施例に限定されるものではない。文中「部」は特に断りのない限り質量基準である。
〈実施例1〉
(顔料分散体の製造)
○顔料組成物 部
顔料(デグサ社製プリンテックス85) 20
分散剤(スチレンアクリル酸共重合体 酸価 250) 6
消泡剤(日信化学工業(株)製、サーフィノール104) 0.2
水 73.8
上記組成の顔料組成物を混合撹拌後、ペイントシェーカ(東洋精機社製)を用いて、φ0.3mmのジルコニアビーズを分散メディアとして60分間分散して顔料分散体を得た。

○インク化液 部
顔料分散体 7.5
水溶性化合物(トリメチロールプロパントリポリオキシエチレン 2.0
エーテル、日本乳化剤(株)製 TMP−30)
溶剤
2−ピロリドン 10
ジエチレングリコールモノブチルエーテル 5
界面活性剤(スルホコハク酸ジイソオクチルナトリウム) 0.5

上記組成のインク化液を混合撹拌後、エマルジョン(ダイセルファインケム(株)製アクアブリツドAsi91 Tg=25℃、平均粒子径50nm) 30部を添加し、さらに混合撹拌して評価用の水性顔料インクを得た。インク物性については、粘度、平均顔料粒子径、表面張力を評価した。
得られた評価用の水性顔料インクを用いて、厚さ75μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(未処理品)上に、バーコータ(#20)により、乾燥後の厚さが4〜6μmの塗膜を形成し、評価用フィルムを作製した。
<エマルジョンの平均粒子径>
エマルジョン水溶液を動的光散乱法にて、N4−PLUS(ベックマンコールター社製)を用いて測定した。
<ガラス転移温度の測定>
エマルジョン水溶液を150℃2時間で乾燥、脱水して測定用試料とした。この試料を示差走査熱量測定法によりThermo Plus EVO DSC8230((株)リガク社製)を用い、昇温速度10℃/分にて測定し求めた。
<密着性試験>
碁盤目剥離試験(JIS5600−5−6−1999に準拠)により評価用フィルムの塗膜の密着性を評価した。試験升目100個に対して、まったく剥がれなかったものを○、剥がれが1〜5個のものを△、それ以上剥がれたものを×とした。
<光沢度測定>
BYK社製の光沢度計、Gardner micro−TRI−glossを用い入射角20°にて光沢度を測定した。
<吐出安定性>
セイコーエプソン株式会社製のインクジェットプリンターEM−930Cを用いて、A4版Xerox P紙にマイクロソフト社のワードのMS明朝文字をスタイル標準サイズ10で2000字/ページの割合で100ページ連続印字して印字乱れを生じないものを◎、10個所未満印字乱れのあるものを○、10個所以上100個所未満印字乱れのあるものを△、100個所以上印字乱れのあるものを×とした。
評価結果を表1および表2に示した。
【0034】
【表1】

【0035】
【表2】

【0036】
表から明らかなように、本発明の請求項を満たす実施例1〜6は、比較例1〜5に比較して、密着性、光沢度の優れた塗膜が得られ、吐出安定性も優れている。
【0037】
本発明の水溶性化合物を含まないものは、密着性、吐出安定性が悪い(比較例1、2)。また、エマルジョンのTgが本発明の範囲から外れるものは、密着性がわるく(比較例3、4)、エマルジョンの平均粒子径が本発明の範囲から外れるものは、光沢度が悪い(比較例5)。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明によれば、プラスチックや金属等のインク非吸収性材料にも印刷可能で塗膜の密着性、光沢度が優れ、吐出安定性の優れたインクジェット記録用水性顔料インクが得られる

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも顔料、エマルジョン樹脂、水溶性化合物、水を含むインクジェット記録用水性顔料インクであって、前記エマルジョン樹脂のガラス転移温度が−5℃〜70℃であり、該エマルジョン樹脂の平均粒子径が20nm〜120nmであり、前記水溶性化合物が下記式(1)に示す化合物であることを特徴とするインクジェット記録用水性顔料インク。
【化1】


【公開番号】特開2011−195595(P2011−195595A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−60237(P2010−60237)
【出願日】平成22年3月17日(2010.3.17)
【出願人】(000005810)日立マクセル株式会社 (2,366)
【Fターム(参考)】