説明

インクジェット記録用水性顔料分散液の製造方法

【課題】吐出性が良好であり、良好な光沢の画像を形成することができるとともに、粗大粒子低減のための工程が短縮ないし省略され、製造効率の向上が著しく、加えて高温域における長期保存安定性に優れる水性顔料分散液の製造方法を提供すること。
【解決手段】顔料(a)、アニオン性基を有するスチレンアクリル系共重合体(b)及び湿潤剤(d)を含有した混合物を混練する工程と、前記混練後の混合物に塩基性化合物の存在下、水性媒体を添加し混合、撹拌する工程を有し、前記顔料(a)は該顔料(a)の水性懸濁液を噴霧し乾燥する工程を経て作製された、平均一次粒径80nm以下の顔料である水性顔料分散体の製造方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット記録用水性顔料分散液の製造方法、及び該製造方法で製造されたインクジェット記録用水性顔料分散液を主成分として含有するインクジェット記録用水性インクに関し、さらに詳しくは、水性媒体中の粗大粒子を大幅に低減することが可能なインクジェット記録用水性顔料分散液の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録用水性インクとして、顔料を着色剤としたインクが開発されている。インクジェット記録用水性インクは、通常、水と水溶性有機溶媒からなる水性媒体中に、溶解または分散させた着色剤、分散剤、その他の添加剤から構成され、着色剤として顔料を使用したインクジェット記録用水性インクは優れた耐水性、耐光性を期待できる。顔料を使用したインクジェット記録用水性インクでは、染料のような溶解系ではないため、顔料の微小粒子への解砕と分散、さらにその水性媒体中における安定化が大切で、分散剤の選定と、そのような分散剤を用いた場合における、水性媒体中への顔料の分散方法の検討が極めて重要である。
発明者らは、分散剤として、酸価が50〜300、重量平均分子量が5000〜40000であり、スチレンモノマーが50〜90モル%、アクリル酸系モノマーが5〜15モル%、メタアクリル酸系モノマーが5〜25モル%であるアニオン性基含有有機高分子化合物を分散剤として含有する水性顔料分散体を種々検討してきた(特許文献1参照)。そしてそのような高分子分散剤に塩基性化合物を添加して樹脂溶液を作製し、顔料、とともに湿潤剤を含有する水性媒体中に分散させて水性顔料分散体を作製した(特許文献2、特許文献3参照)。
さらに発明者らは、水性顔料分散体の製造に混練工程を導入して、高分子分散剤による顔料表面の被覆を進行させることにより、優れた分散安定性が実現されることを見出した。(特許文献4、5参照)。すなわち該方法は、例えば顔料、湿潤剤、アニオン性基を有する高分子分散剤、及び必要に応じて塩基性化合物を含有する混合物を、混練装置を用いた混練工程によって顔料の微細化及びその表面の分散剤による被覆を行った後に、水性媒体中に徐々に希釈し、さらに水性媒体中に分散させる方法である。
【0003】
しかし、この様にして得られた水性顔料分散液においては、顔料の体積平均粒径は数100nmの領域まで微小粒径化されるのであるが、分散後にも依然として相当量の粒径1μm以上の粗大粒子が含まれていた。このように、粗大粒子は依然インク中に残留しており、その大幅の低減については十分に達成されていない。
このインク中の粗大粒子は、下記のような種々の問題を発生させる。
(1)粗大粒子によるヘッドノズル部の目詰まりの発生。安定なインクの吐出特性が阻害され、結果として印字メディア上で、印字濃度の均一性と解像度の低下を招く。
(2)粗大粒子がインク中に存在した場合、印字面での平滑性が損なわれ、光沢の低下を招く。
これら粗大粒子は分散工程の後に、さらに、遠心分離、濾過等によって除去することができるが、そのような粗大粒子を除去するための工程が必須となり、またそれら工程で多くの粗大粒子を除去せねばならないので、それが更に製造効率を低下させ、収率を低下させる原因となっていた。
【0004】
また一方、全ての顔料は、製造コストの低減ならびに着色剤に用いた場合にその流動特性や保存安定性、さらには印刷物や塗装物の光沢、着色力および鮮明性などに関する品質向上が求められており、一般に高光沢、高着色力を発揮する実用上有用な顔料は極めて微細な粒子で構成されている。しかしインクジェット記録用に好適に安定的に使用されるためには、さらに大幅な粗大粒子の低減が求められ、特に顔料製造後の乾燥工程において解砕しにくい凝集粉を形成させないことが重要と考えられている。
通常、顔料は、合成後に、顔料ウェットケーキを乾燥しやすいように押し出し機にて、整形し、熱風下で乾燥後、粉砕して顔料粉体として使用されるが、乾燥方法にも多くの試みが行われている。
【0005】
例えば、顔料の粉体粒子を作製後に乾燥を行って顔料粉体を形成するときに、塗料やインク中の顔料の凝集が解けやすく、塗料やインク中の良好な顔料分散性を得る方法として、顔料の湿潤ケーキを完全には乾燥させず、乾燥しやすい形状に成形し含水率20〜55重量%になるまで乾燥する方法(特許文献6参照)、顔料の乾燥に噴霧乾燥を行い顆粒状粒子とする方法(特許文献7、8参照)等が開示されている。また噴霧乾燥を伴う乾燥方法としては、噴霧乾燥時に特定のメジアン径範囲のダストの少ない顆粒状固体に変換する方法(特許文献7)、顔料懸濁液中に気泡を分散させ噴霧乾燥して顔料顆粒に変換する方法(特許文献8)等が開示されている。さらに噴霧乾燥法によって乾燥した顔料粒子を、塩基性化合物を含む樹脂溶液中に混合撹拌し、メディアを用いた分散機によって分散して、インクジェット記録用水性インクを作製するための水性顔料分散液を作製する方法(特許文献8参照)が提案されている。
しかし、インクジェット記録用水性インク組成物を作製するための顔料として使用する場合、どのような乾燥方法を用いた顔料の使用が、最もインク組成物の分散性向上に有効であるのかについては必ずしも明確でなかった。また仮に良好な顔料の乾燥方法が見いだされたとしても、これに適用すべき最適なインクジェット記録用水性インク組成物の製造方法が必ずしも明確になってはいなかった。特にインク組成物中の粗大粒子の低減を効果的に行うために、該組成物中で使用される顔料に対して適用されるべき乾燥方法の選定と、そのような乾燥方法を用いて製造された顔料に対して用いるべきインクジェット記録用水性インクの製造方法の最適な組み合わせが求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平8−183920号
【特許文献2】特開2005−060419号公報
【特許文献3】特開2005−060420号公報
【特許文献4】特開2003−226831号公報
【特許文献5】特開2003−226832号公報
【特許文献6】特開昭57−53568号公報
【特許文献7】特開平5−57102号公報
【特許文献8】特開平5−184901号公報
【特許文献9】特開2006−152103号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、水性顔料分散液中の粗大粒子の含有量を大幅に低減させることができ、そのため、該水性顔料分散液からインクジェット記録用水性インクを作製したときに、吐出性が良好で、インクヘッドの目詰まり発生を効果的に防止でき、かつ良好な光沢の画像を形成することができるとともに、粗大粒子低減のための工程が短縮ないし省略でき、製造効率の向上が著しい水性顔料分散液の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
発明者らは、水性顔料分散液中の粗大粒子数を低減するために、水性顔料分散液を構成する各種材料について検討を行った結果、使用顔料として、該顔料の水性懸濁液を噴霧乾燥する工程を経て製造された顔料を用い、特定の製造方法で水性顔料分散液を製造することによって、粗大粒子数の極めて低減された、インクジェット記録用水性インクの作製に適する水性顔料分散液が作製され、また粗大粒子低減のための工程が大幅に短縮されることを見いだした。すなわち本発明は、顔料(a)、アニオン性基を有するスチレンアクリル系共重合体(b)、塩基性化合物(c)、及び湿潤剤(d)を含有する水性顔料分散液の製造方法であって、予め顔料(a)、アニオン性基を有するスチレンアクリル系共重合体(b)及び湿潤剤(d)を含有した混合物を混練する工程と、前記混練後の混合物に塩基性化合物の存在下、水性媒体を添加し混合、撹拌する工程を有し、前記顔料(a)は該顔料(a)の水性懸濁液を噴霧し乾燥する工程を経て作製された、平均一次粒径80nm以下の顔料である水性顔料分散体の製造方法を提供する。
さらに本発明は上記製造方法で製造された水性顔料分散液を主成分として含有するインクジェット記録用水性インクを提供する。
【0009】
本発明に用いられる顔料は、顔料化の際に、懸濁液を噴霧乾燥する工程を経て作製されたものである。そのため、顔料の一次粒子による凝集塊である二次粒子の形態が点と点、線と線で接触し凝集したAgglomerateであり、フィルタープレスののちに粉砕乾燥された顔料が形成する面と面で接触し凝集したような二次粒子Aggregateとは形態が異なっている。さらに、メディアミリングのような顔料濃度の低い系でのせん断力の弱い分散工程では分散できなかった凝集塊も、本発明の製造方法では、顔料(a)、アニオン性基を有するスチレンアクリル系共重合体(b)及び湿潤剤(d)を含有した混合物を混練する混練工程を有するので、凝集塊に対して強力なせん断力が加わり、顔料の微小粒径への解砕と、解砕された顔料表面のスチレンアクリル系共重合体による被覆とが同時に行われ、顕著な解砕効果と易分散化効果が発揮される混練工程が極めて効率的に進行するものと考えられる。
なお混練工程においては、混合物中に予め塩基性化合物(c)を添加して混練を行うことが、さらに解砕効果と易分散効果を良好に発揮させる点で好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明の水性顔料分散液の製造方法は、顔料(a)、アニオン性基を有するスチレンアクリル系共重合体(b)、及び湿潤剤(d)を含有した混合物を混練する工程を有しているので、顔料表面をスチレンアクリル共重合体が良好に被覆し微分散化が容易である。さらに、本発明の水性顔料分散液の製造に用いる顔料(a)は、該顔料(a)の水性懸濁液を噴霧乾燥する工程を経て作製された一次粒径80nm以下のものであるため、一次粒径が微細であることに加えて乾燥時におけるそれら顔料の強固な凝集が発生していない。このため混練工程において、顔料の微分散化の進行とともに、粗大粒子が低減し、かつ微分散化された顔料の表面を、湿潤剤で膨潤したアニオン性基を有するスチレンアクリル系共重合体が良好に被覆する。このため、分散性及び分散安定性に優れ、粗大粒子が少ない水性顔料分散液を得ることが出来る。また、粗大粒子低減のための工程が大幅に短縮され製造効率の向上が著しい。
本発明のインクジェット記録用水性顔料分散液を主成分として用いたインクジェット記録用水性インクは、分散性、分散安定性に優れると共に、粗大粒子が少なく、印字安定性に優れ、インクヘッド部での目詰まりの無い高光沢の画像形成が可能である。また、高温保存環境下であっても長期間にわたって良好な分散性を保持するため、特にサーマルインクジェット記録用水性インクとして好適に使用できる。
さらに混練工程で塩基性化合物を添加すると、アニオン性基を有するスチレンアクリル系共重合体(b)のアニオン性基が部分的に中和され、より効果的に膨潤が進行するため、混練工程における顔料表面の被覆がより効率的に進行する。このため水性顔料分散液を作製したときの分散性、分散安定性がさらに向上する。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に本発明の水性顔料分散液の製造方法について、さらに詳細に説明を行う。最初に、本発明の製造方法で使用する各種の原材料について詳細に説明し、その後でそれらを用いた本発明の製造方法を詳細に説明する。
本発明の製造方法で使用する顔料(a)は、噴霧乾燥工程で顔料の乾燥を行うことができる顔料であれば全て使用することが可能である。具体的には、従来公知の有機顔料であるフタロシアニン系顔料、キナクリドン系顔料、キナクリドンキノン系顔料、ジオキサジン系顔料、アントラピリミジン系顔料、アンサンスロン系顔料、インダンスロン系顔料、フラバンスロン系顔料、ペリレン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料、ペリノン系顔料、キノフタロン系顔料、アントラキノン系顔料、チオインジゴ系顔料、ベンツイミダゾロン系顔料、アゾ系顔料等の有機顔料等が挙げられる。
【0012】
これら顔料の中でもフタロシアニン系顔料及びキナクリドン系顔料においては特に良好な効果が認められ、特にフタロシアニン系顔料については効果の発現が顕著である。フタロシアニン系顔料として具体的には、公知慣用のものがいずれも使用でき、具体例としては、C.I.ピグメントブルー16等の無金属フタロフタロシアニン系顔料、C.I.ピグメントブルー15、同ブルー15:1、同ブルー15:2等のα型銅フタロフタロシアニン系顔料、C.I.ピグメント ブルー15:3、同ブルー15:4等のβ型銅フタロフタロシアニン系顔料、C.I.ピグメント ブルー15:5等のγ型銅フタロフタロシアニン系顔料及びこれらの顔料から選ばれる少なくとも2種以上の顔料の混合物を挙げることができる。なかでもβ型銅フタロシアニン系顔料が好ましい。フタロシアニン系顔料は、最終的にはインクジェット記録用水性インクのインク総量の0.5〜10質量%、より好ましくは2〜10質量%の範囲で用いることが好ましい。
【0013】
本発明に使用する顔料の平均一次粒径は80nm以下である。水性顔料分散液中の分散顔料の体積平均粒径が10nm未満の場合は、小粒径化に伴う耐光性の低下が生じる傾向にあり、200nmを越える場合には、吐出安定性が不十分となる傾向にある。
このような分散顔料の体積平均粒径を実現するためには、顔料の平均一次粒径は75nm以下であることが好ましく、70nm以下であることがさらに好ましく、60nm以下であることがさらに好ましい。粗大粒子数の低減という目的のためには45nm以下であることがより好ましい。平均一次粒径が80nm以下であると、混練工程を経て水性顔料分散液を作製したときも、該分散液中の分散粒子の粒径を容易に低減することができ、粗大粒子の低減もより容易におこなうことができる。さらに粗大粒子の低減をより重要視する場合には、顔料の平均一次粒子径は40nm以下であることが最も好ましい。
顔料の平均一次粒径はTEM写真にて顔料の長軸長をn=20で測定し平均することによって求めることが出来る。
【0014】
本発明の製造方法で使用する顔料の乾燥工程は、顔料の水性懸濁液を噴霧乾燥する工程を経て作製されたものである。すなわち、顔料はまずアシッドペースト法やソルトミリング法等によって、一次粒子の平均粒子径を20〜100nmに微細化された後、不純物や原料等が洗浄、除去され濾過されて得られた含水率40〜70質量%のウエットケーキとされる。その後該ウエットケーキを水に再分散させることで、一次粒子の平均粒子径が20〜100nmの微細顔料を含んだ水スラリーとされ、該スラリーを微細な霧状とし、これを熱風中に噴出させ、瞬間的に乾燥させ、粉末状の乾燥顔料粉末を得ることが出来る。そのため、顔料の一次粒子による凝集塊、すなわち二次粒子の形態は点と点、線と線で接触し凝集したAgglomerateであり、フィルタープレスののちに粉砕され乾燥された顔料が形成する面と面で接触し凝集したような二次粒子Aggregateとは形態が異なり、より分散が良好となりやすい状況となる。したがって、たとえ顔料濃度の低い系におけるせん断力の弱い分散工程では分散できなかった凝集塊が一部存在するとしても、本発明で行ったように混練工程を用いた製造方法を使用することで、強力なせん断力が顔料の凝集塊加わるため、顔料が微細化されかつ樹脂で被覆され、混練工程のあとは作製された着色混練物を、水性媒体中へ混合撹拌を行うだけで粗大粒子が大幅に低減した分散液になるといった、顕著な易分散効果が得られると考えられる。
【0015】
本発明の製造方法で使用するアニオン性基を有するスチレンアクリル系共重合体(b)は、構成モノマーとしてスチレン系モノマーと、ラジカル重合性の二重結合を有しアニオン性基を含有するモノマーを含有する。スチレン系モノマーとしては公知の化合物を用いることができる。例えば、スチレン、α−メチルスチレン、β−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、α−エチルスチレン、α−ブチルスチレン、α−ヘキシルスチレンの如きアルキルスチレン、4−フルオロスチレン、3−クロロスチレン、3−ブロモスチレンの如きハロゲン化スチレン、更に3−ニトロスチレン、4−メトキシスチレン、ビニルトルエン等がある。
スチレンアクリル系共重合体(b)の構成成分としてのスチレン系モノマーの使用比率は、全モノマー成分に対して50〜90質量%であることが好ましく、60〜90質量%であることがより好ましく、70〜90質量%であることがさらに好ましい。スチレン系モノマーの使用比率が50質量%未満であると、顔料(a)へのアニオン性基を有するスチレンアクリル系共重合体(b)の親和性が不充分となり、インクジェット記録用水性顔料分散液の分散安定性が低下する傾向がある。また該水性顔料分散液から得られるインクジェット記録用水性インクの普通紙記録特性が劣化し、画像記録濃度が低下する傾向があり、更に耐水特性も低下する傾向がある。スチレン系モノマーの量が上記範囲であると、疎水性の顔料表面にアニオン性基を有するスチレンアクリル系共重合体(b)が吸着し易い。またアニオン性基を有するモノマーを構成成分として十分使用できるため、スチレンアクリル系共重合体(b)の水性媒体に対する分散性を良好にすることができ、インクジェット記録用水性顔料分散液における顔料の分散性や分散安定性を向上させることができ、顔料の微小粒径化に対する効果も大きい。更に、インクジェット記録用水性インクとして使用した場合の印字安定性が良好になる。一方、スチレン系モノマーの使用比率が90質量%を超えると、水性媒体への分散性が不十分となる傾向にあり、インクジェット記録用水性インクを作製したときの分散性、分散安定性が低下する傾向がある。
【0016】
スチレン系モノマーと共重合させるラジカル重合性の二重結合とアニオン性基を有するモノマーのアニオン性基としては、例えばカルボキシル基、スルホン基、ホスホ基等をあげることができる。原料モノマーの入手しやすさ、価格等を考慮すると、中でもカルボキシル基またはスルホン基を含有するアニオン性基含有モノマーが好ましく、電気的中性状態と、アニオン状態の共存範囲を広く制御できる点で、カルボキシル基を有するアニオン性基含有モノマーが好ましく、その中でも特に不飽和脂肪族カルボン酸モノマーが好ましい。
不飽和脂肪族カルボン酸モノマーとしては、公知の化合物を使用することができる。例えば、アクリル酸、メタクリル酸、α−エチルアクリル酸、クロトン酸、α−メチルクロトン酸、α−エチルクロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸、グルタコン酸、等が挙げられる。中でもアクリル酸、メタクリル酸を使用するのが好ましく、両者を併用するのが特に好ましい。アクリル酸とメタクリル酸を併用することによって、樹脂合成時の共重合性が向上して、樹脂の均一性が良くなり、該樹脂による顔料分散を行った場合、分散剤の組成の不均一性に起因すると考えられる安定性の低下が抑制されると考えられる。
【0017】
ゆえに本発明で使用するアニオン性基を有するスチレンアクリル系共重合体(b)の構成モノマーとしては、スチレン系モノマー、アクリル酸、及びメタクリル酸の3種のモノマーを使用するのが好ましく、それらのモノマーの含有比率の総和が、全モノマー成分に対して95質量%以上であることがさらに好ましい。
【0018】
アニオン性基を有するスチレンアクリル系共重合体(b)には、スチレン系モノマー及びラジカル重合性の二重結合を有する不飽和脂肪族カルボン酸以外の公知のモノマーを使用できる。そのようなモノマーの例としては、メチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、sec−ブチルアクリレート、tert−ブチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、2−エチルブチルアクリレート、1,3−ジメチルブチルアクリレート、ヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、オクチルアクリレート、エチルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、2−メチルブチルメタクリレート、ペンチルメタクリレート、ヘプチルメタクリレート、ノニルメタクリレート等のアクリル酸エステル類及びメタクリル酸エステル類;3−エトキシプロピルアクリレート、3−エトキシブチルアクリレート、ジメチルアミノエチルアクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシブチルアクリレート、エチル−α−(ヒドロキシメチル)アクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレートのようなアクリル酸エステル誘導体及びメタクリル酸エステル誘導体;フェニルアクリレート、ベンジルアクリレート、フェニルエチルアクリレート、フェニルエチルメタクリレートのようなアクリル酸アリールエステル類及びアクリル酸アラルキルエステル類;ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン、ビスフェノールAのような多価アルコールのモノアクリル酸エステル類あるいはモノメタアクリル酸エステル類;マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチルのようなマレイン酸ジアルキルエステル、酢酸ビニル等を挙げることができる。これらのモノマーはその1種又は2種以上をモノマー成分として添加することができる。
【0019】
アニオン性基を有するスチレンアクリル系共重合体(b)の製造方法としては、通常の重合方法を採ることが可能で、溶液重合、懸濁重合、塊状重合等の方法で、重合触媒の存在下に重合反応を行う方法が挙げられる。重合触媒としては、例えば、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、ベンゾイルパーオキサイド、ジブチルパーオキサイド、ブチルパーオキシベンゾエート等が挙げられ、その使用量は構成モノマー成分の総和の0.1〜10.0質量%が好ましい。
【0020】
本発明において使用するアニオン性基を有するスチレンアクリル系共重合体(b)は、塩基性化合物(c)で中和することにより安定した水分散性を得るため、50〜300の酸価を有することが好ましい。酸価が50より小さいと、親水性が小さくなり顔料の分散安定性が低下する。一方、酸価が300より大きいと、水性インクを用いた印字品の耐水性が低下するおそれがある。酸価の値としては、70〜250が好ましく、90〜200の範囲であることがさらに好ましい。
【0021】
本発明で使用するアニオン性基を有するスチレンアクリル系共重合体(b)の重量平均分子量は5,000から40,000の範囲内にあることが好ましく、7,500から30,000の範囲内にあることがより好ましい。中でも、10,000〜25,000の範囲内にあることが特に好ましい。重量平均分子量が5,000未満であると、顔料(a)のインクジェット記録用水性顔料分散液を作製したときの長期保存安定性が悪くなる傾向にあり、顔料の凝集等による沈降が発生する場合がある。アニオン性基を有するスチレンアクリル系共重合体(b)の重量平均分子量が40,000を超えると、これを用いたインクジェット記録用水性顔料分散液から調製したインクジェット記録用水性インクの粘度が高くなって、インクの吐出安定性が不安定になる傾向にある。なお、ここで重量平均分子量とはGPC(ゲル・浸透・クロマトグラフィー)法で測定される、ポリスチレン換算の値とする。
アニオン性基を有するスチレンアクリル系共重合体(b)のガラス転移点は90〜150℃が好ましく、100〜150℃がさらに好ましい。ガラス転移点が90℃以上であると、水性インクの熱安定性が向上する。このため前記水性顔料分散液から製造されたインクジェット記録用水性インクをサーマルジェット方式のインクジェット記録に用いるときに、繰り返し加熱によって吐出不良を起こすような特性変化を生じにくく好ましい。
【0022】
本発明で使用するアニオン性基を有するスチレンアクリル系共重合体(b)はランダム共重合体でもよいが、グラフト共重合体であっても良い。グラフト共重合体としてはポリスチレンあるいはスチレンと共重合可能な非イオン性モノマーとスチレンとの共重合体が幹又は枝となり、アクリル酸、メタクリル酸とスチレンを含む他のモノマーとの共重合体を枝又は幹とするグラフト共重合体をその一例として示すことができる。アニオン性基を有するスチレンアクリル系共重合体(b)は、このグラフト共重合体とランダム共重合体の混合物であってもよい。
【0023】
本発明の製造方法では混練工程に塩基性化合物を使用することが好ましい。
本発明の水性顔料分散液に含有される塩基性化合物は、アニオン性基を有するスチレンアクリル酸共重合体のアニオン性基を中和し、該共重合体の分散性を向上させる。その結果分散液中の該共重合体で被覆された顔料粒子の分散状態がより安定となり、分散安定性、長期保存安定性も向上する。
使用される塩基性化合物としては、無機系塩基性化合物、有機性塩基性化合物のいずれも用いることができるが、アルカリ強度を調整し易い点において、無機系塩基性化合物がより好ましい。有機系塩基性化合物としてはメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミンなどの一般的なアミンを例示することができる。無機系塩基性化合物としては、カリウム、ナトリウムなどのアルカリ金属の水酸化物、カリウム、ナトリウムなどのアルカリ金属の水酸化物;カリウム、ナトリウムなどのアルカリ金属の炭酸塩;カルシウム、バリウムなどのアルカリ土類金属の炭酸塩;水酸化アンモニウムなどを例示することができる。中でも、強アルカリのものがスチレンアクリル系樹脂の中和によって該樹脂の分散性を高めるのに効果的であるため好ましく、具体的には水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等が使用できるが、特に、水酸化カリウムを使用することが好ましい。
【0024】
また、塩基性化合物(c)の添加量は、アニオン性基を有するスチレンアクリル系共重合体(b)が有する全カルボキシル基を中和するために必要な添加量の0.8〜1.2倍に相当する量であることが好ましい。ここで、中和するために必要な添加量は樹脂の酸価から計算される塩基性化合物(c)のモル比相当量とする。なお塩基性化合物(c)は混合性の向上の点等から、20〜50質量%程度の水溶液または有機溶剤溶液で用いるのが好ましく、水溶液として添加するのがさらに好ましい。
【0025】
水性顔料分散液の製造過程における塩基性化合物の添加は、混練後の混合物の水性媒体への分散工程において行うことができ、また顔料(a)、アニオン性基を有するスチレンアクリル系共重合体(b)、湿潤剤(d)を含有する混合物の混練工程において行うこともできる。混練工程で添加することにより、混練時のスチレンアクリル系共重合体が膨潤状態となりやすくなるため、効率的に顔料表面を被覆することが容易となり好ましい。
混練工程において塩基性化合物を添加するときは、予めスチレンアクリル系樹脂と水と塩基性化合物を混合して樹脂水溶液を製造しておき、これを顔料等の他の配合成分に添加するなどして、複数段階に分けて混合し、製造することもできるが、塩基性化合物と他の配合成分を一括配合して混練用の混合物を製造するほうが、前記スチレンアクリル系樹脂の顔料表面への吸着が効率的に進行する点で好ましい。
【0026】
本発明の製造方法で使用する湿潤剤(d)は、インクジェット用水性インクに適した公知慣用のものが使用できる。そのような湿潤剤としては、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、グリセロール等の多価アルコール類、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等の多価アルコールアルキルエーテル類、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル等の多価アルコールアリールエーテル類;N−メチル−2−ピロリドン、N−ヒドロキシエチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチルイミイダゾリジノン、ε−カプロラクタム、γ−ブチロラクトン等の含窒素複素環化合物;ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド類;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン等のアミン類、ジメチルスルホキシド、スルホラン、チオジエタノール等の含硫黄化合物類、プロピレンカーボネート、炭酸エチレン等である。
【0027】
これらの湿潤剤は1種または2種以上を混合して用いることができる。また適宜水を併用することもできる。特に、沸点が170℃以上、より好ましくは200℃以上の湿潤剤を用いると、混練操作中にこれら湿潤剤が揮散しにくく、着色混練物の固形分比率を一定に保ちつつ混練を進行させることができる。さらに混練工程において主溶剤として用いたこれら湿潤剤は、水性顔料分散液やインクジェット記録用水性インクにおいて乾燥防止剤として機能するので、それらの作製時にこれら湿潤剤を除去する必要がない。そのため特に高沸点、低揮発性、高表面張力で常温で液体の多価アルコール類が好ましく、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール等の沸点170℃以上のグリコール類がさらに好ましい。
【0028】
上記の各種原料を用いて、水性顔料分散液を作製する方法の詳細について以下に記載する。
本発明の製造方法は上記の各種原料を用いて以下の方法により行うことができる。すなわち本発明の水性顔料分散液の製造方法は、顔料(a)、及びアニオン性基を有するスチレンアクリル系共重合体(b)、及び湿潤剤(d)を含有する混合物を2本ロール、ミキサー等の混練機を用いて混練し、着色混練物を製造する混練工程である第1の工程と、前記着色混練物に塩基性化合物の存在下水性媒体を添加し、混合、撹拌する混合工程である第2の工程とを有する製造方法であって、前記顔料(a)は該顔料(a)の水性懸濁液を噴霧、乾燥する噴霧工程を経て作製されたものである。
第1工程である混練工程においては、顔料(a)、アニオン性基を有するスチレンアクリル系共重合体(b)を湿潤剤(d)の存在下で、高剪断力下で混練を行うことによって、水性懸濁液を噴霧乾燥する工程を経て作製された顔料(a)の凝集を解砕し、更にその顔料粒子表面を、湿潤剤(d)で膨潤したアニオン性基を有するスチレンアクリル系共重合体(b)によって被覆することが重要である。
このために顔料(a)とアニオン性基を有するスチレンアクリル系共重合体(b)との質量比(b)/(a)は0.05〜0.5、すなわちスチレンアクリル系共重合体(b)の含有量が顔料(a)に対して、5〜50質量%であることが好ましい。(b)/(a)が0.05以上であると共重合体(b)による顔料(a)の被覆が十分に行われる傾向にあり、(b)/(a)が0.5以下であると、着色混練物を水性媒体中に分散したときに、顔料に未吸着の共重合体(b)が水性媒体中に存在することによるインク組成物形成時の吐出性の低下がなく、安定した吐出が得られる傾向にある。
混練工程においては高剪断力で上記混合物を混練するため、混練する際の着色混練物中の固形分濃度は50〜80質量%であることが好ましく、60〜80質量%であることがさらに好ましい。固形分濃度が50質量%以下であると十分な剪断力をかけることができず、顔料(a)の凝集を解砕することが不十分となる傾向があると同時に、均一な着色混練物が得られにくい傾向がある。一方固形分比が80質量%以上であると、たとえ加温して樹脂を充分に軟化させたとしても混練が困難になりやすい。加えて、固形分比率が高くなりすぎると、混練後の混合物を水性媒体中に分散する工程で、水性媒体による低粘度化が困難となる傾向がある。
【0029】
本発明の製造方法で使用するアニオン性基を有するスチレンアクリル系共重合体(b)は、構成成分としてスチレンモノマー単位を50〜90質量%含有するものを使用すると、スチレン部分を中心とした疎水性の部分の顔料表面への吸着が進行しやすく好ましい。
また、湿潤剤を添加して混練を行うことによって、顔料の表面が十分に濡れるとともに、アニオン性基を有するスチレンアクリル系共重合体(b)は湿潤剤(d)によって膨潤状態、または一部が溶解状態となりつつ混練が進行し、混練を行う混合物全体が粘土状の一つの固まりとなりやすく、混練工程が良好に進行する。その結果、顔料の解砕が良好に進行し粗大粒子が減少するとともに顔料表面の樹脂被覆が効果的に行われる。さらに本発明の製造方法における混練工程においては、混練後の混合物を水性媒体中に分散する工程において、該水性媒体中に用いられる湿潤剤を混練工程の主溶媒として用いることができる。このようにすることにより湿潤剤をそのまま分散工程においても用いることが出来るので、混練に用いた湿潤剤を混練後に留去する工程を設ける必要がない。
【0030】
本発明の混練工程は塩基性化合物(c)の存在下で行われることが好ましい。混練工程が塩基性化合物(c)の存在下で行われると、スチレンアクリル系共重合体の酸基の少なくとも一部が中和されるため、該樹脂が湿潤剤中で膨潤し易く、顔料の微細化と同時に顔料表面の被覆がより効果的に進行する。またアニオン性基を有するスチレンアクリル系共重合体の分散性がより向上する。このため粗大粒子の低減と微細化された顔料の分散がより効果的に行われ、樹脂で被覆された微細化顔料の分散性が向上し、高温保存下においても良好な分散安定性を有する。
混練工程における湿潤剤の添加量は、顔料(a)100質量部に対して、10〜80質量部の範囲内であることが好ましい。湿潤剤の量が80質量部より多いと、固形分濃度が低下するため十分な剪断力を負荷することができなくなる傾向にある。また10質量部より少ないと、樹脂成分を膨潤状態とすることが困難となり、やはり十分な剪断力を負荷することができず、顔料(a)を十分に粉砕し、かつアニオン性基を有するスチレンアクリル系共重合体(b)をその表面に吸着させることが困難となり、均一な着色混練物が得られない傾向がある。
【0031】
また、本発明のインクジェット記録用水性顔料分散液の製造方法の工程において、温度は生産効率を考慮して適宜選択される。特に前記着色混練物の製造工程においては、室温付近から150℃程度までの加熱状態で行うことが好ましい。さらに使用するアニオン性基を有するスチレンアクリル系共重合体(b)のガラス転移点より低い混練温度で混練を行うことが、混練温度の上昇とともに混練時の混練粘度が減少して混練物にかかる剪断力が低下することなく、また湿潤剤の揮散もより効果的に防げるため、混練終了後の混練物における固形分比の上昇を防ぐことができ、最終混練物を容易に水性媒体中に揮散させることができるので好ましい。
【0032】
着色混練物を混練する際には、二本ロール等の撹拌槽を有しない開放型の混練機を用いるよりは、撹拌槽と混合用の攪拌羽根を有する混練機を用いることが好ましい。このような混練機を使用すると、微細粉状の顔料(a)と微細粉状のスチレンアクリル系共重合体(b)を直接混合することができる。またこれら固体と湿潤剤、塩基性化合物溶液等の液体を同時に混合することもでき、さらには混練工程で湿潤剤を適宜追加して添加することも容易である。このように撹拌槽と混合用の撹拌羽根を有する混練機を使用することによって、混練物を構成する材料の攪拌槽への投入時の形態、あるいは混練物の混練中の形態や力学的な特性に制限が少ないため、樹脂、顔料の選定やその配合比率の選択に自由度が高く、従来、混練が困難なため、その使用を見合わされてきた樹脂等の原料を使用して混練を行うことも可能となった。
【0033】
さらにこのような混練機を用いると、混練中に湿潤剤等の蒸発を抑えることができ、最終混練物は適度に溶剤を含んだ塊の状態で取り出すことができ、固形分比が高くなりすぎることがない。このため、混練後の着色混練物を、水性媒体で直接希釈してインクジェット記録用水性顔料分散液を製造することが容易である。また、二本ロールのような開放系の混練装置と異なり仕込みの混合物の質量に対して混練中に混練物の質量が実質的に変化せず、仕込みと同様の組成を備えた水性顔料分散液用混練物を得ることができ、製造安定性が向上する。
【0034】
撹拌槽を有する混練機としては、多軸攪拌羽根を有するものが混練の効率の面から好ましく、具体例としてはプラネタリーミキサーが撹拌時の撹拌羽根と混練槽の壁面とのクリアランスが小さく、混練時のデッドスペースが少ない点で好ましい。さらに本発明の水性顔料分散液の製造においては、混練による着色混練物の製造工程において、混練物の粘度が広い範囲で変化するが、プラネタリーミキサーは特に広範囲の粘度に対応することができるため好適である。
【0035】
混練後の着色混練物に塩基性化合物の存在下、水性媒体を添加する混合工程においては、混練工程で得られた着色混練物を水性媒体中に混合、撹拌して低粘度化し、さらに水性媒体を加えて希釈を行う。本工程においては水性媒体の混合、撹拌を分散装置を用いて行い、高剪断力をともなう分散処理を行ってもよい。このような処理を行うことにより、インクジェット記録用水性顔料分散液中の粗大分散粒子が更に粉砕され、粗大な粒子成分が減少するため、通常は水性顔料分散液からインクジェット記録用水性インクを作製したときの吐出安定性、印字濃度等のインクジェット特性をより改善することができる。
【0036】
しかし、混練物中の顔料は混練工程において既に十分に解砕されており、特に使用される顔料が水性顔料懸濁液を噴霧乾燥する工程を経て作製されたものなので、凝集が強くなく混練工程においてすでに大幅に粗大粒子が低減されている。このため塩基性化合物存在下に該混練物に水性媒体を添加し、混合、撹拌しただけで、粗大粒子の低減された水性顔料分散液を得ることが可能であり、分散装置を用いて水性媒体との混合、撹拌を行い、粗大粒子の最終的な解砕のために高剪断力による分散処理を行う工程が軽減される。例えば混練工程終了後に、混練装置の撹拌槽中の着色混練物に徐々に水性媒体を添加しつつ撹拌羽根で撹拌することによって、着色混練物を水性媒体中に分散させることが可能である。このような場合は、混練工程と、それ以降の混合、撹拌する混合工程とがともに一つの混練装置のみ行われる。このため水性顔料分散液を得るための工程は短時間となり、極めて効率よく行うことが出来る。加えて本発明の混練工程で作製された着色混練物は、顔料が微粒子化されるとともに、樹脂によって被覆されており、水性媒体を添加すると速やかに水性媒体中に分散する。混練後の混合物に水性媒体を添加し混合、撹拌する混合工程においては、塩基性化合物を介在させることによって、アニオン性基を有するスチレンアクリル系共重合体の分散性を向上させ、水性顔料分散液の分散性を向上させることができるので、水性媒体中への分散はより短時間で行われるが、さらに混練工程で予め塩基性化合物が添加されていると、塩基性化合物との相互作用により混練工程で作製された予め良好な分散性を付与された混合物が、水性媒体中により速やかに分散するためさらに好ましい。また混練工程において解砕された顔料が該樹脂によってより良好に被覆されているため、優れた分散性が安定に長期間保持される。
【0037】
本発明において、水性媒体とは、水、または水と相溶する湿潤剤を主成分とするものである。またここで用いる湿潤剤としては、混練工程において使用した湿潤剤と同様のものを用いることが出来る。インクジェット記録用水性顔料分散液の中から該湿潤剤を取り除くことが実質的に困難であることから、湿潤剤の量は、最終的にインクジェット記録用水性顔料分散液から調製したインクジェット記録用水性インクに対して、最終的に含有されることになる総量以下にすることが好ましい。そのため、インクジェット記録用水性顔料分散液における湿潤剤の量は、3〜50質量%であることが好ましく、5〜40質量%であることがより好ましい。この下限未満では、乾燥防止効果が不十分となる傾向にあり、上記上限を超えると分散液の分散安定性が低下する傾向にある。
【0038】
本発明の製造方法においては混練物に水性媒体を添加した後、混合、撹拌する混合工程において、通常の攪拌機による混合、撹拌のみによって混練物を水性媒体中に分散させることが可能であるが、分散状態をより確実にするために分散装置を用いる場合には、公知の分散装置を用いることが出来、メディアを用いたものではペイントシェーカー、ボールミル、アトライター、バスケットミル、サンドミル、サンドグラインダー、ダイノーミル、ディスパーマット、SCミル、スパイクミル、アジテーターミルなどが挙げられる。またメディアを用いないものとしては、超音波ホモジナイザー、ナノマイザー、デゾルバー、ディスパー、高速インペラー分散機などがあげられるが、これらの中でもメディアを用いた分散機は分散能力が高いため好ましい。なお分散後に必要に応じて水性媒体で濃度調整を行っても良い。
【0039】
本発明のインクジェット記録用水性顔料分散液に占める、顔料(a)の量は5〜25質量%であることが好ましく、5〜20質量%であることがより好ましい。顔料(a)の量が5質量%より少ない場合は、本発明のインクジェット記録用水性顔料分散液から調製したインクジェット記録用水性インクの着色が不充分であり、充分な画像濃度が得られない傾向にある。また、逆に25質量%よりも多い場合は、インクジェット記録用水性顔料分散液において顔料の分散安定性が長期保管時の経時変化で低下する傾向がある。
【0040】
本発明のインクジェット記録用水性インクは、インクジェット記録用水性顔料分散液を用いて、常法により調製して作製することができる。基本的には例えば上述のようにして得られた水性顔料分散液を、さらに水性媒体にて希釈して製造することができる。本発明のインクジェット記録用水性顔料分散液を用いてインクジェット記録用水性インクを調製する場合は、工程内で生じるあるいは混入する粗大な成分が、ノズル詰まり、その他の画像特性を劣化させる原因にならないように、インク調製前あるいは後に、遠心分離、あるいは濾過処理等により粗大粒子等をさらに除去し、粗大粒子数を低減するための工程を用いても良い。本発明においては水性顔料分散液中の粗大粒子数が予め大幅に低減されているため、仮にこのような粗大粒子数を低減するための最終的な工程を行ったとしても、該工程の時間が長くなって生産効率が低下したり、該工程で収率が大幅に低下したりすることがない。本発明のインクジェット記録用水性顔料分散液から調製するインクジェット記録用水性インクに占める、顔料(a)の量は、インクジェット印刷時に充分な画像濃度を得る必要性と、インク中での分散粒子の分散安定性を確保するために、2〜10質量%であることが好ましい。
【0041】
水性顔料分散液を希釈する水性媒体には湿潤剤が配合されていると、インク組成物において、乾燥防止、粘度調整、濃度調整に寄与するため、好ましい。水性媒体中に使用される湿潤剤としては、上述の混練工程において用いたもの、あるいはインクジェット記録インク用着色混練物を分散するための水性媒体中に用いられたものと同様のものを例示することができる。
また、記録媒体への浸透性を示す水溶性有機溶剤が配合されていると、インク組成物に浸透性を付与することができ好ましい。インク組成物において浸透性は、記録媒体へのインク組成物の侵透性や記録媒体上でのドット径の調整を行うために必要な特性である。
浸透性付与に用いられる水溶性有機溶剤としては、例えばエタノール、イソプロピルアルコールなどの低級アルコール;エチレングリコールヘキシルエーテル、ジエチレングリコールブチルエーテルなどのアルキルアルコールのエチレンオキシド付加物;プロピレングリコールプロピルエーテルなどのアルキルアルコールのプロピレンオキシド付加物などが挙げられる。
【0042】
インクジェット記録用水性インクを作製するための原材料としては、上記水性媒体とインクジェット記録用水性顔料分散液の他に、例えば公知の添加剤などを配合することができる。
配合可能なものとしては、例えばアルカリ剤、pH調整剤、界面活性剤、防腐剤、キレート剤、可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、紫外線硬化性樹脂などを例示することができる。
本発明の製造方法においては、例えばインクジェット記録用水性顔料分散液、水性媒体、必要に応じて選択される各種添加剤を加えて均一に撹拌することにより、インクジェット記録用水性インクを製造することができる。
このように作製したインクジェット記録用水性インクは、インクジェット記録用のインクとして各種のインクジェット用プリンターに好適に用いることができる。適用可能なインクジェットの方式は特に限定するものではないが、荷電制御型、スプレー型等の連続噴射型、ピエゾ方式、サーマル方式、静電吸引方式等のオンデマンド型の公知のものを例示することができる。そして、本願のインクジェット記録用水性インクは、これら各種のインクジェット方式に適用した場合に、極めて安定したインク吐出が可能となり、特にサーマルジェット方式のインクジェット記録に対して好適に用いることができる。
【実施例】
【0043】
以下に、実施例を用いて、本発明をさらに詳しく説明する。以下の実施例、比較例において、「%」は「質量%」を示す。また、本実施例及び比較例には表1のフタロシアニンブルー顔料を用いた。以下に示すとおり、乾燥方法と一次粒径により区別される。ここで平均一次粒径は透過型電子顕微鏡による顔料の撮影写真から、任意に20サンプルを選択し、その長径を測定して求めるものとする。「粉砕」とは顔料ウエットケーキを熱風下で乾燥後、粉砕して顔料粉体として利用する方法によるもの、「噴霧」とは顔料を含んだ水スラリーを熱風中に霧状に噴出させ、瞬間的に乾燥させて粉末状の乾燥顔料とする方法によるものである。
【0044】
【表1】

【0045】
(β型銅フタロシアニン顔料の作製)
(粗製銅フタロシアニンの合成)
10Lグラスライニング製オートクレーブ容器に無水フタル酸1200部、尿素1565部、塩化第一銅200部、モリブデン酸アンモニウム5部、tert−アミルベンゼン(商品名、ハイゾールP、日本石油(株)製、アルキルベンゼン混合物)4Lを入れ200℃まで除々に加熱した後、2時間加熱攪拌し反応を終了させる。冷却後、反応物を取り出し、10倍量の2%NaOH水溶液、1%HCl水溶液、温水の順で洗浄、濾過を繰り返し、次いで乾燥し粗製銅フタロシアニン1065部を得た。上記で得られた粗製銅フタロシアニンは、平均一次粒子径が2〜100μmの粗大粒子で、β型結晶100%からなる粗製銅フタロシアニンであった。
【0046】
(顔料の作製1)
2L双腕型ニーダーに、上記フタロシアニンの合成で得られた微細な粗製銅フタロシアニン120部、食塩1200部、ジエチレングリコール140部を加え、90〜95℃で約7時間加熱磨砕した。その間、内容物が均一な粘調性を保つように適宜ジエチレングリコールを加えた。得られた磨砕物を20倍の温水で洗浄し、β型銅フタロシアニン顔料を含む懸濁液を得た。得られた顔料の平均一次粒径は31nmであった。
得られたβ型銅フタロシアニン顔料の懸濁液を濾過、さらに水洗して顔料ウエットケーキ(含水率70質量%)を得た。これに水を加えて、含水量88質量%まで希釈した顔料スラリーを、ニロ・ジャパン社製スプレードライヤSD−100R−S1(連続式乾燥装置)で入口温度280℃、出口温度105℃にて乾燥を行い乾燥顔料粉末を得た。これをPigmentA(噴霧)とする。
【0047】
(顔料の作製2)
上記フタロシアニンの合成で得られた粗製銅フタロシアニン120部、食塩840部、ジエチレングリコール140部を用いる以外は顔料の作製1と全く同様の操作を行って、平均一次粒径53nmのβ型銅フタロシアニン顔料を含む懸濁液を得た。その後、顔料の作製1で行ったと同様の噴霧乾燥を行い、乾燥顔料粉末を得た。これをPigmentB(噴霧)とする。
(顔料の作製3)
上記フタロシアニンの合成で得られた粗製銅フタロシアニン225部、食塩675部、ジエチレングリコール140部を用いる以外は顔料の作製1と全く同様の操作を行って、平均一次粒径102nmのβ型銅フタロシアニン顔料を含む懸濁液を得た。その後、顔料の作製1で行ったと同様の噴霧乾燥を行い、乾燥顔料粉末を得た。これをPigmentC(噴霧)とする。
【0048】
(顔料の作製4)
顔料の作製2で作製したβ型銅フタロシアニン顔料を含む懸濁液(顔料の平均一次粒径53nm)を、濾過、水洗し、含水率70質量%のウエットケーキを得た。これを、通気バンド乾燥装置を用い熱風温度110℃で乾燥させ、さらにこれを粉砕して乾燥粉末を得た。これをPigmentBとする。
(顔料の作製5)
顔料の作製3で作製したβ型銅フタロシアニン顔料を含む懸濁液(顔料の平均一次粒径102nm)を、濾過、水洗し、含水率70質量%のウエットケーキを得た。これを通気バンド乾燥装置を用い熱風温度110℃で乾燥させ、さらにこれを粉砕して乾燥粉末を得た。これをPigmentCとする。
【0049】
また、本発明の実施例及び比較例には以下に示す樹脂を使用した。
(樹脂の合成1)
撹拌装置、滴下装置、還流装置を有する反応容器にメチルエチルケトン100部を仕込み、攪拌しながら反応容器内を窒素置換した。反応容器内を窒素雰囲気に保ちながら加温し、メチルエチルケトン還流状態とした後、滴下装置からスチレン74部、アクリル酸11部、メタクリル酸15部及び重合触媒(和光純薬工業社製/「V−59」)8部の混合液を2時間かけて滴下した。なお滴下の途中より、反応系の温度を80℃に保った。
滴下終了後、同温度でさらに25時間反応を続けた。なお、反応の途中において、原料の消費状況を確認しながら、適宜、重合触媒を追加した。反応終了後、メチルエチルケトンを減圧下で留去し、得られた固体を粉砕して、スチレン−アクリル酸系共重合体(A−1)の粉体を得た。
以上により、スチレン/アクリル酸/メタアクリル酸=74/11/15(重量%)であり、重量平均分子量9000、酸価185mgKOH/gであるスチレンアクリル酸系樹脂(A−1)が得られた。
【0050】
(樹脂の合成2)
使用モノマーをスチレン83部、アクリル酸7部、メタクリル酸10部に変更した他は実施例1と同様にして、スチレン/アクリル酸/メタアクリル酸=83/7/10(重量%)であり、重量平均分子量11000、酸価185mgKOH/gであるスチレンアクリル酸系樹脂(A−2)を製造した。
【0051】
なお本発明における重量平均分子量は、GPC(ゲル・浸透・クロマトグラフィー)法で測定し、標準物質として使用するポリスチレンの分子量に換算した値である。なお、測定は以下の装置及び条件により実施した。
送液ポンプ:LC−9A
システムコントローラー:SCL−6B
オートインジェクター:SIL−6B
検出器:RID−6A
以上島津製作所社製。
データ処理ソフト:Sic480IIデータステーション(システムインスツルメンツ社製)。
カラム:GL−R400(ガードカラム)+GL−R440+GL−R450+GL−R400M(日立化成工業社製)
溶出溶媒:THF
溶出流量:2ml/min
カラム温度:35℃
【0052】
<実施例1>
フタロシアニン系顔料ファストゲンブルーPigmentA(噴霧) 500部
(DIC社製:C.I.ピグメントブルー15:3)
スチレンアクリル系共重合体(A−1) 100部
上記を容量50LのプラネタリーミキサーPLM−V−50(株式会社井上製作所製)に仕込み、ジャケットを60℃に加温し、低速(自転回転数:10rpm、公転回転数:29.4rpm)で混合した。その後、
ジエチレングリコール 250部
34%水酸化カリウム水溶液 54.4部
を添加し、高速(自転回転数:20rpm、公転回転数:58.8rpm))に切り替え、4時間混練を行った。
続いて、撹拌槽内の混練物に、攪拌を継続しながらイオン交換水1000部を徐々に加え、攪拌槽内の青色液状物全量を取り出し、さらに
ジエチレングリコール 163.1部
イオン交換水 1073.8部
からなる混合液(水性媒体)を加え、混合した。この水性顔料分散液の固形分濃度は19.1%、顔料濃度は15.4%であった。
【0053】
<実施例2>
フタロシアニン系顔料ファストゲンブルーPigmentA(噴霧) 500部
(DIC社製:C.I.ピグメントブルー15:3)、
スチレンアクリル系共重合体(A−1) 150部
上記を容量50LのプラネタリーミキサーPLM−V−50(株式会社井上製作所製)に仕込み、ジャケットを60℃に加温し、低速(自転回転数:10rpm、公転回転数:29.4rpm)で混合した。その後、
ジエチレングリコール 210部
34%水酸化カリウム水溶液 81.6部
を添加し、高速(自転回転数:20rpm、公転回転数:58.8rpm))に切り替え、4時間混練を行った。
続いて、撹拌槽内の混練物に、攪拌を継続しながらイオン交換水1000部を徐々に加え、攪拌槽内の青色液状物全量を取り出し、さらに
ジエチレングリコール 148.1部
イオン交換水 1040.6部
からなる混合液(水性媒体)を加え、混合した。この水性顔料分散液の固形分濃度は23.0%、顔料濃度は15.4%であった。
【0054】
<実施例3>
実施例2の水性顔料分散液を、さらに、ビーズミル(浅田鉄工製ナノミルNM−G2L)にて下記条件で分散を実施して、実施例3の水性顔料分散液を得た。
・・分散条件
分散機 ナノミルNM−G2L(浅田鉄工製)
ビーズ:φ0.3mm ジルコニアビーズ
ビーズ充填量:85%
冷却水温度:10℃
回転数:2660rpm
( ディスク周速:12.5m/s e c )
送液量:200g/min.
なお、分散は上記条件で、1回分散機を通す(1パス) ことで行った
【0055】
<実施例4>
フタロシアニン系顔料ファストゲンブルーPigmentA(噴霧) 500部
(DIC社製:C.I.ピグメントブルー15:3)
スチレンアクリル系共重合体(A−2) 150部
上記を容量50LのプラネタリーミキサーPLM−V−50(株式会社井上製作所製)に仕込み、ジャケットを60℃に加温し、低速(自転回転数:10rpm、公転回転数:29.4rpm)で混合した。その後、
ジエチレングリコール 270部
34%水酸化カリウム水溶液 51.2部
を添加し、高速(自転回転数:20rpm、公転回転数:58.8rpm))に切り替え、4時間混練を行った。
続いて、撹拌槽内の混練物に、攪拌を継続しながらイオン交換水1200部を徐々に加え、攪拌槽内の青色液状物全量を取り出し、さらに
ジエチレングリコール 124.3部
イオン交換水 1037.1部
からなる混合液(水性媒体)を加え、混合した。この水性顔料分散液の固形分濃度は20.6%、顔料濃度は15.4%であった。
【0056】
<実施例5>
フタロシアニン系顔料ファストゲンブルーPigmentA(噴霧) 500部
(DIC社製:C.I.ピグメントブルー15:3)
スチレンアクリル系共重合体(A−2) 150部
上記を容量50LのプラネタリーミキサーPLM−V−50(株式会社井上製作所製)に仕込み、ジャケットを60℃に加温し、低速(自転回転数:10rpm、公転回転数:29.4rpm)で混合した。その後、
ジエチレングリコール 290部
34%水酸化カリウム水溶液 51.2部
を添加し、高速(自転回転数:20rpm、公転回転数:58.8rpm))に切り替え、2時間混練を行った。
続いて、撹拌槽内の混練物に、攪拌を継続しながらイオン交換水1200部を徐々に加え、攪拌槽内の青色液状物全量を取り出し、さらに
ジエチレングリコール 102.3部
イオン交換水 981.2部
からなる混合液(水性媒体)を加え、混合した。この水性顔料分散液の固形分濃度は19.6%、顔料濃度は14.7%であった。
【0057】
<比較例1>
容量200mlの容器に下記の組成の仕込みを行った後、ペイントコンディショナーを用い、2時間かけて分散処理を行った。分散処理終了後、ジルコニアビーズを濾別し、顔料濃度15%の顔料水性分散液を得た。
フタロシアニン系顔料ファストゲンブルーPigmentA(噴霧) 600部
(DIC社製:C.I.ピグメントブルー15:3)、
スチレンアクリル系共重合体(A−1) 180部
34%水酸化カリウム水溶液 98部
ジエチレングリコール 480部
イオン交換水 2640部
ジルコニアビーズ(1.25mm径) 18000部
【0058】
上記実施例、及び比較例で作製した水性顔料分散液に対して以下の項目を測定して評価を行った。
結果を表2に示す。
<粗大粒子数>
実施例、及び比較例で作製した水性顔料分散液を2000倍に希釈し、アキュサイザー780APS(インターナショナル・ビジネス社製)にて測定を行った。粗大粒子数は希釈前の水性顔料分散液1ml当たりの粒子数に換算した。表中の粒子数には(×10個/ml)の単位を用いている。
<体積平均粒径>
実施例、及び比較例の水性顔料分散液を5000倍に希釈し、マイクロトラックUPA−150(リーズ&ノースロップ社製)で測定を行った。測定値は3度測定した平均値を取った。
<保存安定性>
実施例、及び比較例で作製した水性顔料分散液を60℃の恒温槽内に2週間静置し、沈殿物の有無を判定した。さらに静置後の体積平均粒径を上記と同様の方法で測定して、平均値を算出し、静置前後の体積平均粒径の平均値から粒径の増加率を計算した。こうして沈殿物、及び10%以上の体積平均粒径の増加率の有無を判定した。
以上の結果を表2に示す。
【0059】
<吐出性・光沢>
インクジェットの吐出特性の測定のために、実施例及び比較例で作製した顔料濃度約15質量%の水性顔料分散液を用いて、以下の評価用インクジェット記録用水性インクを作製した。水性顔料分散液は最終的な顔料濃度が2.7質量%となるように、全量が100部の以下配合において、各実施例、比較例における水性顔料分散液の顔料濃度に合わせて微調整した。
水性顔料分散液 約18部
トリエチレングリコールモノブチルエーテル 8部
2−ピロリドン 8部
グリセリン 3部
サーフィノール440(日信化学工業社製) 0.5部
純水 残量
作製した各インクジェット記録用水性インクをインクジェットプリンター(EPSON社製EM−930C)を用いて試験した。インクをカートリッジに充填後ノズルチェックパターンを印刷した。更に単色モードでA4用紙1枚の340cmの範囲に印刷濃度設定100%の印刷をした後に、再度ノズルチェックテスト用パターンを印刷し、試験前後のノズルの状態を比較し、ノズル欠けが増加するかどうかをチェックした。
さらに印刷濃度100%の印刷面の光沢を測定した。
【0060】
【表2】

【0061】
なお実施例1〜実施例5の水性顔料分散液から作製したインクジェット記録用水性インクは、特に遠心工程による粗大粒子数の低減処理を行わなくても、重大な吐出不良が発生することがなく、前記吐出試験でノズル欠けが増加することが無かったのに対して、比較例1から作製した水性インクでは、遠心工程を行わなかった場合、ノズル欠けの増加が顕著であった。また実施例1〜実施例5の水性顔料分散液から作製したインクジェット記録用水性インクによって形成された画像は良好な光沢を示した。
【0062】
実施例1〜5に示すように、本発明における混練分散工程によって得られた銅フタロシアニン系顔料使用分散体は、混練時間、樹脂、樹脂/顔料比率にほとんど依存しない。そしていずれの実施例においても微細化が良好に進行し、混練物を水性媒体に混合撹拌しただけであるにもかかわらず、粗大粒子の低減が効果的に達成されていることがわかる。そして混練工程だけで粗大粒子の低減が十分に達成されているため、混練工程にナノミルによる分散工程を付け加えても粗大粒子数はほとんど変化していないことがわかる。また、たとえ顔料の乾燥方法に、該顔料を含む懸濁液を噴霧する工程を有する乾燥方法を用いたものを使用したとしても、水性顔料分散液を製造するにあたって、混練工程を有していない製造方法を用いたのでは、体積平均粒径も十分に微細化されず、また粗大粒子の低減も効果的に実現されないことがわかる。また実施例の水性顔料分散液からインクジェット記録用インクを作製すると、吐出性が良好で、インクヘッドの目詰まりが発生せず、高光沢の画像を形成することができる。
【0063】
<実施例6>
フタロシアニン系顔料ファストゲンブルーPigmentB(噴霧) 500部
(DIC株式会社製:C.I.ピグメントブルー15:3)
スチレンアクリル系共重合体(A−1) 150部
上記を容量50LのプラネタリーミキサーPLM−V−50(株式会社井上製作所製)に仕込み、ジャケットを60℃に加温し、低速(自転回転数:10rpm、公転回転数:29.4rpm)で混合した。その後、
ジエチレングリコール 200部
34%水酸化カリウム水溶液 81.6部
を添加し、高速(自転回転数:20rpm、公転回転数:58.8rpm))に切り替え、4時間混練を行った。
続いて、撹拌槽内の混練物に、攪拌を継続しながらイオン交換水1200部を徐々に加え、攪拌槽内の青色液状物全量を取り出し、さらに、
ジエチレングリコール 188部
イオン交換水 1140.8部
からなる混合液(水性媒体)を加え、混合した。この水性顔料分散液の固形分濃度は20.9%、顔料濃度は15.4%であった。
【0064】
<比較例2>
フタロシアニン系顔料ファストゲンブルーPigmentB 500部
(DIC株式会社製:C.I.ピグメントブルー15:3)
スチレンアクリル系共重合体(A−1) 150部
上記を容量50LのプラネタリーミキサーPLM−V−50(株式会社井上製作所製)に仕込み、ジャケットを60℃に加温し、低速(自転回転数:10rpm、公転回転数:29.4rpm)で混合した。その後、
ジエチレングリコール 200部
34%水酸化カリウム水溶液 81.6部
を添加し、高速(自転回転数:20rpm、公転回転数:58.8rpm))に切り替え、2時間混練を行った。
続いて、撹拌槽内の混練物に、攪拌を継続しながらイオン交換水1200部を徐々に加え、攪拌槽内の青色液状物全量を取り出し、さらに、
ジエチレングリコール 162.4部
イオン交換水 762.1部
からなる混合液(水性媒体)を加え、混合した。この水性顔料分散液の固形分濃度は20.8%、顔料濃度は15.4%であった。
【0065】
<比較例3>
容量200mlの容器に下記の組成の仕込みを行った後、ペイントコンディショナーを用い、2時間かけて分散処理を行った。分散処理終了後、ジルコニアビーズを濾別し、顔料濃度15%の顔料水性分散液を得た。
フタロシアニン系顔料ファストゲンブルーPigmentB(噴霧) 600部
(DIC社製:C.I.ピグメントブルー15:3)
スチレンアクリル系共重合体(A−1) 180部
34%水酸化カリウム水溶液 98部
ジエチレングリコール 480部
イオン交換水 2640部
ジルコニアビーズ(1.25mm径) 18000部
【0066】
<比較例4>
フタロシアニン系顔料ファストゲンブルーPigmentB(噴霧)をフタロシアニン系顔料ファストゲンブルーPigmentBに換えた他は比較例3と同様にして、顔料濃度15%の顔料水性分散液を得た。
【0067】
<比較例5>
フタロシアニン系顔料ファストゲンブルーPigmentC(噴霧) 500部
(DIC株式会社製:C.I.ピグメントブルー15:3)
スチレンアクリル系共重合体(A−2) 150部
上記を容量50LのプラネタリーミキサーPLM−V−50(株式会社井上製作所製)に仕込み、ジャケットを60℃に加温し、低速(自転回転数:10rpm、公転回転数:29.4rpm)で混合した。その後、
ジエチレングリコール 230部
34%水酸化カリウム水溶液 51.2部
を添加し、高速(自転回転数:20rpm、公転回転数:58.8rpm))に切り替え、3.5時間混練を行った。
続いて、撹拌槽内の混練物に、攪拌を継続しながらイオン交換水1200部を徐々に加え、攪拌槽内の青色液状物全量を取り出し、さらに
ジエチレングリコール 145.7部
イオン交換水 819.4部
からなる混合液(水性媒体)を加え、混合した。この水性顔料分散液の固形分濃度は20.6%、顔料濃度は15.4%であった。
【0068】
<比較例6>
フタロシアニン系顔料ファストゲンブルーPigmentC 500部
(DIC株式会社製:C.I.ピグメントブルー15:3)
スチレンアクリル系共重合体(A−1) 150部
上記を容量50LのプラネタリーミキサーPLM−V−50(株式会社井上製作所製)に仕込み、ジャケットを60℃に加温し、低速(自転回転数:10rpm、公転回転数:29.4rpm)で混合した。その後、
ジエチレングリコール 180部
34%水酸化カリウム水溶液 81.6部
を添加し、高速(自転回転数:20rpm、公転回転数:58.8rpm))に切り替え、4時間混練を行った。
続いて、撹拌槽内の混練物に、攪拌を継続しながらイオン交換水1200部を徐々に加え、攪拌槽内の青色液状物全量を取り出し、さらに
ジエチレングリコール 222.1部
イオン交換水 1004.3部
からなる混合液(水性媒体)を加え、混合した。この水性顔料分散液の固形分濃度は21.2%、顔料濃度は15.6%であった。
【0069】
<比較例7>
容量200mlの容器に下記の組成の仕込みを行った後、ペイントコンディショナーを用い、2時間かけて分散処理を行った。分散処理終了後、ジルコニアビーズを濾別し、顔料濃度15%の顔料水性分散液を得た。
フタロシアニン系顔料ファストゲンブルーPigmentC(噴霧) 600部
(DIC社製:C.I.ピグメントブルー15:3)
スチレンアクリル系共重合体(A−1) 180部
34%水酸化カリウム水溶液 98部
ジエチレングリコール 480部
イオン交換水 2640部
ジルコニアビーズ(1.25mm径) 18000部
【0070】
<比較例8>
容量200mlの容器に下記の組成の仕込みを行った後、ペイントコンディショナーを用い、2時間かけて分散処理を行った。分散処理終了後、ジルコニアビーズを濾別し、顔料濃度15%の顔料水性分散液を得た。
フタロシアニン系顔料ファストゲンブルーPigmentC 600部
(DIC社製:C.I.ピグメントブルー15:3)、
スチレンアクリル系共重合体(A−1) 180部
34%水酸化カリウム水溶液 98部

ジエチレングリコール 480部
イオン交換水 2640部
ジルコニアビーズ(1.25mm径) 18000部
【0071】
【表3】

【0072】
なお実施例6の水性顔料分散液から作製したインクジェット記録用水性インクは、特に遠心工程による粗大粒子数の低減処理を行わなくても、重大な吐出不良が発生することがなく、前記吐出試験でノズル欠けが極端に増加することが無かったのに対して、比較例2〜比較例8から作製した水性インクでは、遠心工程を行わなかった場合にはノズル欠けの増加が顕著であった。また実施例6の水性顔料分散液から作製したインクジェット記録用水性インクによって形成された画像は良好な光沢を示した。
【0073】
実施例6と比較例2、比較例3との比較によってわかるように、本発明の製造方法を用いた場合、体積平均粒径の微細化ならびに粗大粒子数の低減の点で明らかに効果があることがわかる。このような方法を用いると、混練工程で作製された混練物に水性媒体を添加して混合、撹拌しただけでも分散顔料の微粒子化、粗大粒子の低減が良好に実現することができることがわかる。また実施例の水性顔料分散液からインクジェット記録用水性インクを作製すると、吐出性が良好で、インクヘッドの目詰まりが発生せず、高光沢の画像を形成することができる。一方同じ噴霧工程を経て作製された顔料を用いても、水性顔料分散液の製造に混練工程を用いなかった場合、または混練工程を用いても、使用顔料が従来の押し出し機による生成物を乾燥後粉砕したものである場合には、体積平均粒径が十分に低減せず、また粗大粒子数も低減できない。粗大粒子は遠心工程で除去することも出来るが、遠心工程前の水性顔料分散液に多くの粗大粒子が含まれると、遠心工程に要する時間が増加し、また遠心後のスラッジも増加して生産効率が著しく低下する。
さらに比較例5と比較例6、比較例7との比較からわかるように、平均一次粒径が80nmを超える顔料の場合でも、噴霧工程を経て製造された顔料を使用し、混練工程を経て水性顔料分散液を製造すると、それらを使用しなかったときに比べて大幅に粗大粒子が低減されることがわかする。
また比較例3もしくは比較例7からわかるように、たとえ噴霧工程を経て製造された顔料を用いたとしても、混練工程を用いない水性顔料分散液の製造方法に適用したのでは、本来の噴霧工程を経て製造した顔料の特長を発揮させることが困難であることがわかる。ペイントコンディショナーのようなメディアミリングでは、その効果は発揮されず、本発明に用いられる混練工程は必須工程であると言える。
比較例3、4、7、8については、2時間以上の分散行程を経ても、それ以上の微粒化、粗大粒子数の減少が確認されないことから、分散時間を2時間とした。また、実施例および比較例の水性顔料分散液のうち、混練工程を経て得られたものは60℃、2週間の加速安定性試験後も粒径変化、沈降物は認められなかった。一方、比較例で混練工程を用いずに作製された水性顔料分散液では、60℃条件下2週間の放置後の粒径の変化率が10%を超える傾向であった。
【0074】
<実施例7、比較例9、比較例10、比較例11>
混練工程の後に、混合撹拌して水性顔料分散液を作製するに際し、さらに分散機による分散工程を追加したときの効果を検討するため、平均一次粒径の異なる2種類の顔料について、噴霧工程を経て製造された顔料と、従来の顔料を用いてそれぞれ分散工程による最終特性の差違を調査した。すなわち平均一次粒径50nmの顔料を用いた場合として、実施例6、比較例2の水性顔料分散液を選択し、平均一次粒径100nmの顔料を用いた場合として、比較例5、比較例6の水性顔料分散液を選択した。これらの水性顔料分散液をさらにビーズミルにて実施例5と同様の方法で分散を実施して、実施例7、比較例9、比較例10、比較例11の水性顔料分散液を得た。
表4、表5に比較のための結果を示す。
【0075】
【表4】

【0076】
平均一次粒径が50nm程度の顔料においては、噴霧工程を経て製造された顔料では混練工程後の分散工程はほとんど粗大粒子や光沢の特性に影響せず、混練工程によってすでに粗大粒子が大幅に低減され、かつ顔料表面が被覆されている。このため混練後の撹拌混合の工程のみで特性の良好な水性顔料分散液が得られる。一方従来の工程で製造された顔料においては、分散工程の導入によってさらに粗大粒子が低減され特性が向上しうる。しかしたとえ分散工程を導入したとしても、噴霧工程を経て製造された顔料を用いて分散工程なしで作製された水性顔料分散液と同等の特性には到達することはできない。
【0077】
【表5】

【0078】
平均一次粒径が100nmクラスの顔料においては、顔料の製造時に用いられている乾燥方法に係わらず、混練工程以降の分散工程の導入によって粗大粒子数、体積平均粒径等の特性を向上させることができる。もっとも従来の乾燥方法を用いて製造された顔料を使用して、混練工程と分散工程を併用しても、噴霧工程を経て製造された顔料を用いた場合に比較して、粗大粒子数、体積平均粒径の両特性で追いつくことはできないことが判る。一方、平均一次粒径が100nmクラスの顔料を使用した水性顔料分散液においては、たとえ混練工程と分散工程の両工程を併用したとしても、平均一次粒径が50nmクラスの顔料を用いた場合の特性に追いつくことは出来ないことも明確である。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明の水性顔料分散液の製造方法によれば、粗大粒子が少なく体積平均粒径の小さい水性顔料分散液を極めて効率よく製造できる。そして該水性顔料分散液から、光沢に優れ、目詰まりせず、吐出性の良好なインクジェット記録用水性インクを作製することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
顔料(a)、アニオン性基を有するスチレンアクリル系共重合体(b)及び湿潤剤(d)を含有する水性顔料分散液の製造方法であって、顔料(a)、アニオン性基を有するスチレンアクリル系共重合体(b)、及び湿潤剤(d)を含有した混合物を混練する混練工程と、前記混練後の混合物に塩基性化合物の存在下、水性媒体を添加し混合、撹拌する混合工程を有し、前記顔料(a)は該顔料(a)の水性懸濁液を噴霧し乾燥する噴霧工程を経て作製された、平均一次粒径80nm以下の顔料である水性顔料分散液の製造方法。
【請求項2】
前記混合物を混練する工程においては、該混合物中に塩基性化合物(c)が含有される請求項1に記載の水性顔料分散液の製造方法。
【請求項3】
前記顔料(a)はフタロシアニン系顔料である請求項1または2に記載の水性顔料分散液の製造方法。
【請求項4】
前記アニオン性基を有するスチレンアクリル系共重合体(b)は、構成モノマーとして50〜90質量%のスチレン系モノマー単位を有し、かつ酸価50〜300である請求項1〜3のいずれか1項に記載の水性顔料分散液の製造方法。
【請求項5】
前記アニオン性基を有するスチレンアクリル系共重合体(b)は5000〜40000の質量平均分子量を有する請求項1〜4のいずれか1項に記載の水性顔料分散液の製造方法。
【請求項6】
前記混合物を混練する工程においては、該混合物の固形分比が50〜80%である請求項1〜5のいずれか1項に記載の水性顔料分散液の製造方法。
【請求項7】
前記混合物を混練する工程においては、前記顔料(a)とアニオン性基を有するスチレンアクリル系共重合体(b)との質量比(b)/(a)が0.05〜0,5である請求項1〜6のいずれか1項に記載の水性顔料分散液の製造方法。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の水性顔料分散液の製造方法で製造された水性顔料分散体を含有するインクジェット記録用水性インク。

【公開番号】特開2011−153211(P2011−153211A)
【公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−15374(P2010−15374)
【出願日】平成22年1月27日(2010.1.27)
【出願人】(000002886)DIC株式会社 (2,597)
【Fターム(参考)】