説明

インクジェット記録用紙とその製造方法

【課題】 本発明の目的は、屋外耐久性に優れ、高光沢、高画質を実現し、コックリング耐性に優れたインクジェット記録用紙とその製造方法を提供することにある。
【解決手段】 セルロースパルプを主成分とする支持体の少なくとも一方の面に、有機溶剤に可溶の樹脂を含有する塗布液を塗布することにより形成した塗膜上に、水またはアルコールを溶媒とする塗布液を塗布してインク吸収層を形成することを特徴とするインクジェット記録用紙の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット記録用紙とその製造方法に関し、更に詳しくは、紙基材に樹脂を含む非水系塗布液を塗布した後、水性塗布液を塗布して得られたインクジェット記録用紙であって、製造時及びプリント時のコックリング耐性に優れ、また、屋外における耐久性に優れたインクジェット記録用紙とその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、インクジェット記録方式においては、急速に画質向上が図られてきており、銀塩写真に迫りつつある。このような写真画質をインクジェット記録で達成するための手段として、使用されるインクジェット記録用紙についても急速に技術改良が試みられている。
【0003】
インクジェット記録用紙に用いられる支持体については、一般に紙等の吸水性支持体とポリエステルフィルムや樹脂被覆紙等の非吸水性支持体とが知られている。
【0004】
前者の吸水性支持体、例えば、普通紙、上質紙あるいはコート紙やキャストコート紙のような多孔質基材では、支持体自身がインクを吸収できるため、高インク吸収能を有する利点がある反面、支持体の吸水性に起因して製造時やプリント時に皺が発生(コックリングともいう)するという問題があった。また、インクの色材として染料を用いた場合、染料が支持体へ浸透してしまい最高濃度が出にくく鮮明な画像が得難いなど、高品位なプリントが得にくかった。更には、プリント時のコックリングに起因する、インクジェット記録ヘッドによるプリント表面の擦り傷を起し易いなどの課題を有している。上記課題に対し、例えば、普通紙基材とインク吸収層との間にガラス転移点が30〜60℃の接着剤と顔料からなる中間層を設けることでコックリングを改良する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照。)が、その効果は未だ不十分であり、更なる改良が必要とされている。
【0005】
一方、後者の非吸水性支持体は、上述のような問題はなく、高品位なプリントが得られる利点がある。非吸水性支持体の例としては、プラスチック樹脂フィルム支持体、あるいは紙の両面をプラスチック樹脂フィルムで被覆した支持体が挙げられる。特に、後者は高品位なプリントを手軽に得ることができる点で有用であり、代表的には、紙の両面をポリオレフィン樹脂で被覆した支持体が挙げられ、この支持体上に多孔質インク吸収層を設けることにより、高光沢な写真画質を実現することができた(例えば、特許文献2参照。)。
【特許文献1】特開平5−85035号公報
【特許文献2】特許第3321700号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献2に記載の紙の両面をポリオレフィン樹脂で被覆した支持体を用いたインクジェット記録用紙では、支持体の高光沢性、高平滑性に起因して高画質のプリント画像を得ることはできるが、このインクジェット記録用紙は屋外耐久性が十分でないことが判明した。例えば、紙の両面に押し出し塗布法によりポリエチレン樹脂を塗布した支持体上に、多孔質インク吸収層を設けたインクジェット記録用紙を屋外に1〜2ヶ月間放置すると、膜面が剥がれ落ちてしまう。これは、多孔質インク吸収層自体ではなく、支持体の紙からポリエチレン樹脂層が剥がれることによって起きる現象であることが判明した。
【0007】
従って、本発明の目的は、屋外耐久性に優れ、高光沢、高画質を実現し、コックリング耐性に優れたインクジェット記録用紙とその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の上記目的は、以下の構成により達成される。
【0009】
(請求項1)
セルロースパルプを主成分とする支持体の少なくとも一方の面に、有機溶剤に可溶の樹脂を含有する塗布液を塗布することにより形成した塗膜上に、水またはアルコールを溶媒とする塗布液を塗布してインク吸収層を形成することを特徴とするインクジェット記録用紙の製造方法。
【0010】
(請求項2)
セルロースパルプを主成分とする支持体の少なくとも一方の面に、有機溶剤に可溶の樹脂を含有する塗布液を塗布し、その表面にカレンダー処理を施した後、そこに水またはアルコールを溶媒とする塗布液を塗布してインク吸収層を形成することを特徴とするインクジェット記録用紙の製造方法。
【0011】
(請求項3)
セルロースパルプを主成分とする支持体の一方の面(おもて面)に、有機溶剤に可溶の樹脂を含有する塗布液を塗布して塗膜を形成し、その表面にカレンダー処理を施した後、おもて面に水またはアルコールを溶媒とする塗布液を塗布してインク吸収層を形成し、かつ裏面に有機溶剤に可溶の樹脂を含有する塗布液を塗布することによって塗膜を形成することを特徴とするインクジェット記録用紙の製造方法。
【0012】
(請求項4)
前記セルロースパルプを主成分とする支持体の一方の面に設けた塗膜を形成するに用いた塗布液に含まれる有機溶剤に可溶の樹脂が、親水性基を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のインクジェット記録用紙の製造方法。
【0013】
(請求項5)
セルロースパルプを主成分とする支持体の少なくとも一方の面に、有機溶剤に可溶の樹脂を含有する層と、水またはアルコールを溶媒とする塗布液を塗布して形成したインク吸収層とを有することを特徴とするインクジェット記録用紙。
【0014】
(請求項6)
前記有機溶剤に可溶の樹脂が、親水性基を有することを特徴とする請求項5記載のインクジェット記録用紙。
【0015】
(請求項7)
前記セルロースパルプを主成分とする支持体を挟んで、前記インク吸収層を有する面(おもて面)とは反対側の面(裏面)に、有機溶剤に可溶の樹脂を含有する層を有することを特徴とする請求項5または6に記載のインクジェット記録用紙。
【0016】
(請求項8)
前記インク吸収層が多孔質層であることを特徴とする請求項5〜7のいずれか1項に記載のインクジェット記録用紙。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、屋外耐久性に優れ、高光沢、高画質を実現し、コックリング耐性に優れたインクジェット記録用紙とその製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための最良の形態について詳細に説明する。
【0019】
本発明者は、上記課題に鑑み鋭意検討を行った結果、本発明者は、上記課題に鑑み鋭意検討を行った結果、請求項1に記載したごとく、セルロースパルプを主成分とする支持体の少なくとも一方の面に、非水系塗布液を塗布することにより形成した塗膜上に、水系塗布液を塗布してインク吸収層を形成することを特徴とするインクジェット記録用紙の製造方法を見出した。これにより屋外耐久性に優れ、高光沢、高画質を実現し、コックリング耐性に優れたインクジェット記録用紙とその製造方法を実現できることを見出し、本発明に至った次第である。
【0020】
本発明者は、良好な画像を形成するための要因となる写像性を向上させるには、支持体中のセルロースパルプを膨潤させる水やアルコール類のような水性溶剤がセルロースと長時間接触することを避ける必要があることを見出した。すなわち、中紙のセルロースを膨潤させない溶剤を溶媒とする樹脂を含む塗布液で紙表面に耐水性を備えた塗膜を形成した後、水性塗布液でインク吸収層を形成することにより、製造時及びプリント時のコックリングを抑制することができることが判明した。
【0021】
本発明は、セルロースパルプを主成分とする支持体上に、水やアルコール類のようなセルロースを膨潤させる溶媒を除く有機溶剤に樹脂を溶解した塗布液を塗布して疎水性の層を形成することにより、その上に塗布されるインク吸収層形成用の水性塗布液中の水やアルコール類等の水性溶媒の浸透を遮断し、紙のセルロースの膨潤を防止する、あるいは、印字時に使用するインクに含まれるセルロースを膨潤させる溶媒(水やアルコールなど)による中紙の膨潤を抑制し、コックリングを防止することができる。
【0022】
また、上述の樹脂を含む塗膜形成時に、有機溶剤に溶けた樹脂が紙のセルロース繊維間の空間に入り込んで、樹脂と繊維が絡み合うことにより、中紙と樹脂層とが強固に結合し、屋外での膜剥がれを防止して耐久性を顕著に向上させることができると本発明者は考えている。
【0023】
尚、請求項1に係る発明では、セルロースパルプを主成分とする支持体の少なくとも一方の面(おもて面)に、有機溶剤に可溶の樹脂を含有する塗布液を塗布することにより塗膜を形成すると同時あるは、それと前後して他方の面(裏面)にも、有機溶剤に可溶の樹脂を含有する塗布液を塗布することにより塗膜を形成してから、おもて面に水性塗布液を塗布することによってインク吸収層を形成する態様も含まれる。
【0024】
請求項2に係る発明では、セルロースパルプを主成分とする支持体の少なくとも一方の面に、有機溶剤に可溶の樹脂を含有する塗布液を塗布し、その表面にカレンダー処理を施し、そこに水性塗布液を塗布してインク吸収層を形成することを特徴とするインクジェット記録用紙の製造方法であるが、これは、非水系塗布液を用いて形成した層表面を平滑化、光沢処理した後に水系インク吸収層を設けることにより高光沢インクジェット記録用紙を提供することができる。
【0025】
尚、請求項2に係る発明には、セルロースパルプを主成分とする支持体の少なくとも一方の面(おもて面)に、有機溶剤に可溶の樹脂を含有する塗布液を塗布し、裏面に非水系塗布液を塗布することによって塗膜を形成してから、おもて面にカレンダー処理を施し、その上に水系塗布液を塗布することによりインク吸収層を形成する態様も含まれる。
【0026】
請求項3に係る発明においては、セルロースパルプを主成分とする支持体のおもて面に、有機溶剤に可溶の樹脂を含有する塗布液を塗布し、その表面にカレンダー処理を施してから、(1)おもて面に水系塗布液を塗布してインク吸収層を形成してから、裏面に非水系塗布液を塗布することによって塗膜を形成する態様と、おもて面にカレンダー処理を施してから(2)、裏面に非水系塗布液を塗布することによって塗膜を形成してから、おもて面に水系塗布液を塗布してインク吸収層を形成する態様がある。
【0027】
すなわち、裏面に非水系塗布液を塗布する前におもて面にカレンダー処理を施すことがポイントである。これは、おもて面のカレンダー処理の際に、紙支持体の繊維間に存在する空気が加熱によって押し出されるが、その空気の抜けみちを確保するためにカレンダー処理後に裏面に非水系塗布液による塗膜を設けることが好ましいからである。従って、おもて面の水系塗布液により形成されるインク吸収層の形成は裏面の非水系塗布液による塗膜形成の前後いずれでもよい。
【0028】
おもて面に水系塗布液によるインク吸収層を設ける際に、支持体がカールしていないほうが好ましいという観点において、おもて面のカレンダー処理の次に、裏面に非水系塗布液を塗布して塗膜を形成してから、おもて面に水系塗布液によるインク吸収層を形成する態様のほうがより好ましい。
【0029】
請求項4に係る発明においては、セルロースパルプを主成分とする支持体のおもて面に設けた塗膜を形成するに用いた塗布液に含まれる、有機溶剤に可溶の樹脂が、親水性基を含むことを特徴とする請求項1ないし3に記載のインクジェット記録用紙の製造方法である。
【0030】
これは、特におもて面に用いる、本発明に係る有機溶剤に可溶の樹脂は、親水性基を有するものが好ましく、これにより該樹脂層上に塗布するインク吸収層形成用水性塗布液との親和性もよく、樹脂と該インク吸収層との膜剥がれも防止することができると推測している。
【0031】
請求項5に係る発明においては、セルロースパルプを主成分とする支持体の少なくとも一方の面に、有機溶剤に可溶の樹脂を含有する層と、水系塗布液を塗布して形成したインク吸収層とを有することを特徴とするインクジェット記録用紙であるが、これにより、製造時及び印字時のコックリングの発生を抑えられたインクジェット記録用紙を提供することができる。
【0032】
請求項6に係る発明は、請求項5に記載した発明に係る有機溶剤に可溶の樹脂が親水性基を有することを特徴とするインクジェット記録用紙であるが、これにより、コックリングの発生防止効果を備えるほかに、支持体と樹脂層との接着性を良好にし、特に屋外での膜剥がれを防止して耐久性を顕著に向上させたインクジェット記録用紙を提供することができる。
【0033】
請求項7に係る発明は、セルロースパルプを支持体として一方の面(おもて面)に有機溶剤に可溶の樹脂を含有する層の上に水性塗布液を塗布して形成されるインク吸収層を備え、裏面に有機溶剤に可溶の樹脂を含有する層を備えたインクジェット記録用紙であり、これによりコックリングの発生防止効果を備え、カール発生の抑えられたインクジェット記録用紙を提供することができる。
【0034】
請求項8に係る発明は、請求項5〜7に記載した発明に係るインク吸収層が多孔質であることを特徴とするインクジェット記録用紙を提供することができる。これによりコックリング発生防止効果を備え、高インク吸収性を備えたインクジェット記録用紙を提供することができる。
【0035】
以下、本発明の詳細について説明する。
【0036】
本発明に用いられる支持体は、例えば、木材パルプのような天然パルプを主原料とし、必要に応じて木材パルプに加えてポリプロピレン等の合成パルプあるいはナイロンやポリエステル等の合成繊維、あるいは再生パルプ等を1種または2種以上混合して抄紙される。好ましく用いられるのは無機物担持パルプであり、この製造のため用いられるセルロースパルプは、例えば、広葉樹材及び針葉樹材から得られるサルファイトパルプ(SP)、アルカリパルプ(AP)、クラフトパルプ(KP)等の化学パルプ、セミケミカルパルプ、セミメカニカルパルプ、機械パルプ等が挙げられ、脱墨された二次繊維である古紙パルプも使用可能である。また、パルプは未漂白パルプ、漂白パルプの区別及び叩解、未叩解の区別なく使用可能である。また、セルロースパルプとしては、非木材パルプである草、葉、靭皮、種毛等の繊維、例えば、わら、竹、麻、バガス、ケナフ、みつまた、コットンリンター、アシ、エスパル、バナナ等のパルプも使用できる。更に、親水性繊維であれば、レーヨン等の再生繊維、セルロース誘導体繊維やポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド等の親水性合成高分子繊維も使用可能であるが、品質とコストから広葉樹晒クラフトパルプ(以下、LBKPともいう)、あるいは針葉樹晒クラフトパルプが最も適している。
【0037】
紙基材中には、必要に応じて、サイズ剤、顔料、紙力増強剤、定着剤、蛍光増白剤、湿潤紙力剤、カチオン化剤等の従来公知の各種添加剤を添加することができる。サイズ剤としては、例えば、高級脂肪酸、アルキルケテンダイマー等が、顔料としては炭酸カルシウム、タルク、酸化チタン等が、紙力増強剤としてはスターチ、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール等が、定着剤としては硫酸バンド、カチオン性高分子電解質等が挙げられるが、本発明に係る紙基材においては、これに限定されるものではない。
【0038】
抄紙に使用するパルプの濾水度はCSFの規定で200〜500mlが好ましく、また、叩解後の繊維長がJIS P 8207に規定される24メッシュ残分と42メッシュ残分の和が30〜70%が好ましい。なお、4メッシュ残分は20%以下であることが好ましい。
【0039】
紙の坪量は50〜250gが好ましく、特に70〜200gが好ましい。紙の厚さは50〜210μmが好ましい。
【0040】
紙密度は0.7〜1.2g/cm3(JIS P 8118)が一般的である。更に原紙剛度はJIS P 8143に規定される条件で20〜200gが好ましい。
【0041】
紙表面には表面サイズ剤を塗布しても良い。
【0042】
紙のpHはJIS P 8113で規定された熱水抽出法により測定された場合、5〜9であることが好ましい。
【0043】
本発明に係る支持体で用いるセルロースパルプを主成分とする支持体は、環境に配慮するなどの理由により再生紙パルプを多用することも好ましい。これにより、原料である木材資源の枯渇を食い止め、環境に優しい商品となり得る。また、インクジェット記録された本発明のインクジェット記録用紙を燃料資源としても利用することも可能である。本発明に係る支持体として用いるセルロースパルプを主成分とする支持体基材を、全原料中に古紙を20〜100%、より好ましくは80〜100%、特別には100%として抄紙した再生紙とすることが好ましい。
【0044】
尚、再生紙を使用する場合、脱墨剤が混入するが、脱墨剤としては、代表的には脂肪酸系の界面活性剤や高級アルコール誘導体があり、近年は、後者の高級アルコール誘導体が汎用されているが、このような再生紙中の脱墨剤の含有量が50ppm以下であることが望ましい。
【0045】
本発明のインクジェット記録用紙に用いられる原紙の抄造には、長網抄紙機、丸網抄紙機、ツインワイヤー抄紙機など通常用いられる抄紙機が用いられるが、特開昭58−37642号、特開昭61−260240号、特開昭61−284762号に記載もしくは例示してあるような適切な抄紙方法を採用するのが有利である。また、高平滑性を得るために、抄造後、原紙をカレンダー処理したものが好ましく、例えば、温度150〜300℃、線圧150〜1500N/cmの条件下で熱カレンダー処理する態様が挙げられる。温度150℃以上であれば平滑性が顕著に現れ、また、300℃以下であれば紙のこげつきも無い。更に、線圧が150N/cm以上であれば高平滑性を得られ、特に400N/cm以上であれば顕著な平滑性が得られる。また、1500N/cm以下であれば腰が強い紙を得ることができる。
【0046】
本発明のインクジェット記録用紙においては、セルロースパルプを主成分とする支持体の少なくとも一方の面に、有機溶剤に可溶な樹脂を含有する塗布液を塗布して塗膜を形成することを1つの特徴とする。
【0047】
次いで、本発明に係る有機溶剤に可溶な樹脂について説明する。
【0048】
本発明に係る有機溶剤に可溶な樹脂としては、例えば、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂(例えば、ポリエステルポリウレタン樹脂、ポリエーテルポリウレタン樹脂、ポリカーボネートポリウレタン樹脂など)、ポリアミド系樹脂、アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂(例えば、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−アクリロニトリル共重合体、エチレンー塩化ビニル共重合体のような塩化ビニル共重合体や、塩化ビニル樹脂、塩素化ポリ塩化ビニルなど)、ポリ塩化ビニリデン系樹脂(例えば、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体など)、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、アミン樹脂、ポリカーボネート系樹脂、フェノール樹脂、フェノキシ樹脂、アルキド樹脂、メラミン樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ブチラール樹脂(例えば、ポリビニルブチラール)、ロジン系樹脂、ハロゲン化ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂(例えば、スチレンブタジエン樹脂、アクリロニトリルースチレン共重合体、アクリロニトリルー塩素化ポリエチレンースチレン共重合体、メチルメタクリレートーブタジエンースチレン共重合体など)、尿素樹脂、マレイン酸樹脂、石油系樹脂、ロジンエステル系樹脂、エチレン−酢酸ビニル系樹脂(例えば、酢酸ビニルービニルアルコール共重合体など)、スチレン−マレイン酸系樹脂、アクリルニトリルブタジエン系樹脂、塩酢ビ系樹脂、アクリル樹脂、スチレン−アクリル系樹脂、スチレン−ブタジエン系樹脂、エチレンービニルアルコール系樹脂、セルロース系樹脂(例えば、セルロースアセテートブチレート、セルロースダイアセテート、セルローストリアセテートセルロースプロピオネート、ニトロセルロース)、ポリビニルアセタール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、フマル酸樹脂、エポキシ樹脂、シリコン樹脂、フッ素系樹脂、高分子量ポリエステル樹脂とイソシアネートプレポリマーの混合物、ポリエステルポリオールとポリイソシアネートの混合物、尿素ホルムアルデヒド樹脂、低分子量グリコール/高分子量ジオール/イソシアネートの混合物、及びこれらの混合物等が例示される。重量平均分子量としては、10000〜200000のものが好ましい。
【0049】
本発明に係る有機溶剤に可溶な樹脂は、好ましくは親水性基を有するものである。これにより、当該樹脂を含む層と、その上に設ける水性の塗布液からなる層との接着性が高まり、強固なインク吸収層を形成することができる、と発明者は考えている。
【0050】
尚、親水性基を含まない樹脂を用いた場合には、当該樹脂を含む層と、水性塗布液から形成される層との接着性を高める手段として、水性塗布液の塗布に先立って、コロナ放電処理を施したり、ゼラチン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン等の親水性高分子化合物を主成分とする下引き層を設けるのが効果的であるが、コロナ放電処理を施すのが好ましい。
【0051】
本発明に係る有機溶剤に可溶の樹脂の中で好ましいものは、塩化ビニル共重合体やウレタン樹脂であり、特に塩化ビニル系共重合体は塩化ビニルモノマー、スルホン酸等のアルカリ塩である親水性基を含有した共重合性モノマー及び必要に応じて他の共重合体モノマーを共重合することによって得ることができる。この共重合体はビニル合成によるものなので合成が容易であり、かつ共重合成分を種々選ぶことができ、共重合体の特性を最適に調整することができる。
【0052】
本発明に係る有機溶剤に可溶の樹脂のうち、好ましく用いられる樹脂の親水性基とは、例えば、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基、水酸基、エポキシ基、アミノ基、及びチオール基等からなる群からえらばれる少なくとも一種の親水性基、及びこれらのアルカリ金属塩(リチウム、カリウム、ナトリウム等のアルカリ金属)などである。
【0053】
上述した親水性基の更に好ましいものは、スルホン酸またはリン酸等の塩のアルカリ金属(特にナトリウム、カリウム、リチウム)であり、特にカリウムが溶解性、反応性、収率等の点で好ましい。最も好ましい樹脂としては、例えば、スルホン酸カリウム含有塩化ビニル系樹脂(例えば、日本ゼオン社製、商品名MR110、同MR100)、スルホン酸ナトリウム含有ポリウレタン(例えば、東洋紡績社製の商品名UR8200、同UR8300、武田薬品工業社製の商品名XE−1等)であり、本発明の効果を顕著に奏する。
【0054】
本発明に係る有機溶剤に可溶な樹脂を含有する塗布液の調製に用いられる有機溶剤としては、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶剤、ベンゼン、トルエン、キシレン、メトキシベンゼン、1、2−ジメトキシベンゼン等の芳香族系溶剤、イソノナン酸、イソミリスチン酸、ヘキサデカン酸、イソパルチミン酸、オレイン酸、イソステアリン酸等の高級脂肪酸系溶剤、エステル系溶剤、メタノール、エタノール、イソプロパノール、t−ブチルアルコール等のアルコール系溶剤、フェノール、パラクロロフェノール等のフェノール系溶剤、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド等のアミド系溶剤、アセトン、メチエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤、エチレングリコールモノブチルエーテル等のエーテル系溶剤、クロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタン、テトラクロロエタン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素系溶剤、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ等のセロソルブ系溶剤、スルホキシド系溶剤の他、ピリジン、トリエチルアミン、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、アセトニトリル、ブチロニトリル、二硫化炭素、テトラヒドロフランなどを使用できる。これら1種または2種以上を混合して使用してもよい。
【0055】
上述したような各種有機溶剤が適用することができるが、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、グリセリンのように紙基材中の水素結合性を変化させる有機溶媒は、むしろカール特性を劣化させる懸念があるため、使用しないことが好ましい。
【0056】
本発明のインクジェット記録用紙あるいはその製造方法においては、支持体上に有機溶剤に溶解した樹脂を含有する塗布液により塗膜を形成した後、塗膜上に水またはアルコール類を溶媒とする塗布液を塗布すること特徴の1つとする。
【0057】
本発明でいうアルコール類としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、セカンダリーブタノール、ターシャリーブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール等の他、多価アルコール類(例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキサンジオール、ペンタンジオール、グリセリン、ヘキサントリオール、チオジグリコール等)、多価アルコールエーテル類(例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、プロピレングリコールモノフェニルエーテル等)を挙げることができる。
【0058】
本発明に係る水またはアルコール類を溶媒とする塗布液により形成されるインク吸収層としては、膨潤型インク吸収層、多孔質インク吸収層のいずれの場合であってもよい。また、膨潤型インク吸収層と多孔質インク吸収層を組み合わせてもよい。例えば、支持体に近い側に膨潤型インク吸収層を設け、支持体から離れた側に多孔質インク吸収層を設けた層構成やこの逆の層構成を用いることもできる。さらには支持体の両面にインク吸収層を設けたインクジェット記録用紙の場合には、表裏で同じタイプのインク吸収層にしてもよく、異なったタイプのインク吸収層であってもよい。本発明で特に好ましいインク吸収層は、インク吸収速度が速く、斑の発生の少ない多孔質インク吸収層である。
【0059】
膨潤型インク吸収層は、主として親水性樹脂から構成されており、親水性樹脂が膨潤することによりインクを吸収する。
【0060】
膨潤型インク吸収層に適用される親水性樹脂としては、好ましくは、架橋したゼラチンが用いられるが、それ以外の親水性高分子も用いることができ、例えば、ポリビニルアルコール、ゼラチン誘導体、ゼラチンと他の高分子とのグラフトポリマー、アルブミン、カゼイン等の蛋白質、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、セルロース硫酸エステル等のごときセルロース誘導体、アルギン酸ソーダ、セルロース硫酸エステル、デキストリン、デキストラン、デキストラン硫酸塩などの糖誘導体、ポリ−N−ビニルピロリドン、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリビニルイミダゾール、ポリビニルピラゾール等の単一あるいは、共重合体の如き多種の合成親水性高分子の架橋体を用いることができる。ゼラチンとしては、石灰処理ゼラチンのほか、酸処理ゼラチンを併用してもよく、さらにゼラチンの加水分解物、ゼラチンの酵素分解物を用いることもできる。これらの親水性樹脂は、単独で用いても複数の種類を用いても良い。
【0061】
膨潤型インク吸収層には親水性樹脂の膨潤性に影響を与えない範囲で無機微粒子や有機微粒子等の微粒子を含有させてもよいが、親水性樹脂に対して概ね100%以下である。膨潤層に用いられる親水性樹脂の使用量は、記録用紙1m2当たり概ね3〜20g、好ましくは5〜15gである。
【0062】
空隙型インク吸収層は、主に無機微粒子と有機バインダー樹脂とから空隙を形成するもの、ポリマーの相分離から空隙を形成するもの、有機微粒子と有機バインダー樹脂で空隙を形成するものなどがある。
【0063】
本発明においては、空隙層としては平均粒径が100nm以下の各種無機微粒子と有機バインダー樹脂から空隙を形成するものが、インク吸収速度の点から特に好ましい。
【0064】
インク吸収層の空隙を形成するのに使用される無機微粒子としては、例えば、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、カオリン、クレー、タルク、硫酸カルシウム、水酸化亜鉛、硫化亜鉛、炭酸亜鉛、ハイドロタルサイト、珪酸アルミニウム、ケイソウ土、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、合成非晶質シリカ、コロイダルシリカ、アルミナ、コロイダルアルミナ、擬ベーマイト、水酸化アルミニウム、リトポン、ゼオライト、水酸化マグネシウム等の無機顔料が用いられる。
【0065】
無機微粒子は一次粒子のまま用いてもよく、また、二次凝集粒子を形成した状態で使用することもできる。
【0066】
無機微粒子の平均粒径は、粒子そのものあるいは空隙型のインク吸収層の断面や表面に現れた粒子を電子顕微鏡で観察し、100個の任意の粒子の粒径を求めてその単純平均値(個数平均)として求められる。ここで個々の粒子の粒径はその投影面積に等しい円を仮定したときの直径で表したものである。
【0067】
濃度の高い画像、鮮明な画像、低コスト化等の観点からすると、無機微粒子としては、気相法により合成された微粒子シリカ、コロイダルシリカ及びアルミナまたはアルミナ水和物から選ばれた固体微粒子を用いることが好ましい。アルミナまたはアルミナ水和物は、結晶性であっても非晶質であってもよく、また不定形粒子、球状粒子、針状粒子等任意の形状のものを使用することができる。現在、このような気相法によって合成された微粒子シリカには、日本アエロジル社の各種のアエロジルがある。
【0068】
無機微粒子の平均粒径に特に制限はないが、100nm以下であることが好ましく、空隙層を形成するために最も適する平均粒径は化合物によって異なる。例えば、上記気相法シリカの場合、無機微粒子の一次粒子の平均粒径(塗設前の分散液状態での粒径)は、4〜20nmが最も好ましい。
【0069】
本発明に係る空隙型のインク吸収層で用いることのできる有機バインダー樹脂としては、例えば、ポリビニルアルコール、ゼラチン、ポリエチレンオキサイド、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリウレタン、デキストラン、デキストリン、カラーギーナン(κ、ι、λ等)、寒天、プルラン、水溶性ポリビニルブチラール、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等が挙げられる。これらの有機バインダー樹脂は、二種以上併用することも可能である。また電離放射線により架橋または重合される有機バインダー樹脂を使用することもできる。
【0070】
空隙型インク吸収層に用いられる好ましい有機バインダー樹脂は、前述の電離放射線により架橋または重合される有機バインダー樹脂のほか、ポリビニルアルコールが挙げられる。
【0071】
本発明で好ましく用いることのできるポリビニルアルコールには、ポリ酢酸ビニルを加水分解して得られる通常のポリビニルアルコールの他に、末端をカチオン変性したポリビニルアルコールやアニオン性基を有するアニオン変性ポリビニルアルコール等の変性ポリビニルアルコールも含まれる。
【0072】
酢酸ビニルを加水分解して得られるポリビニルアルコールは平均重合度が300以上のものが好ましく、特に1000〜5000のものが好ましい。ケン化度は70〜100%のものが好ましく、80〜99.5%のものが特に好ましい。
【0073】
また、上記空隙層が有機バインダー樹脂としてポリビニルアルコールを含有する場合には、皮膜の造膜性を改善し、また皮膜の耐水性や強度を高めるために硬膜剤を含有することが好ましい。この硬膜剤として好ましいものは、ほう酸またはその塩であるが、ほう酸またはその塩とは、ほう素原子を中心原子とする酸素酸及びその塩を示し、具体的にはオルトほう酸、メタほう酸、次ほう酸、四ほう酸、五ほう酸及びそれらの塩が含まれる。
【0074】
ほう酸またはその塩の使用量は、塗布液の無機微粒子やポリビニルアルコールの量により広範に変わり得るが、ポリビニルアルコールに対して概ね1〜60%、好ましくは5〜40%である。
【0075】
他の硬膜剤としては、エポキシ系硬化剤、アルデヒド系硬化剤、エチレンイミノ系硬化剤、イソシアネート系硬化剤、活性ハロゲン系硬化剤、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤等を用いることもできるし、これらをほう酸等と併用してもよい。
【0076】
空隙型のインク吸収層で用いられる無機微粒子の添加量は、要求されるインク吸収容量、インク吸収層の空隙率、無機顔料の種類、有機バインダー樹脂の種類に大きく依存するが、一般には、記録媒体1m2当たり、好ましくは5〜30g、更に好ましくは10〜25gである。
【0077】
本発明に係る無機微粒子と有機バインダー樹脂からなる空隙型のインク吸収層において、有機バインダー樹脂(B)に対する無機微粒子(F)の比率(F/B)は3〜50であることが好ましい。質量比が3倍以上であれば、インク吸収層の空隙率は良好であり、充分な空隙容量が得やすい。一方、この比率が50倍以下であれば、インク吸収層を厚膜で塗布した際に、ひび割れが生じにくく好ましい。特に好ましい有機バインダー樹脂に対する無機微粒子の比率F/Bは、5〜20倍である。
【0078】
また、ポリマー相分離により空隙を形成する方法としては、ポリマーを良溶媒に溶解した溶液をインク吸収層上に塗布した後、塗布層上に前記ポリマーの貧溶媒をオーバーコートすることで空隙を形成する湿式相転換法、ポリマーと、このポリマーの良溶剤と、この良溶剤よりも沸点が高く、前記ポリマーの貧溶剤を含む塗布液を塗布した後、溶媒を蒸発させて乾燥することによりミクロ相分離を生じて空隙を形成する乾式相転換法がある。
【0079】
上記方法に適用可能なポリマーとしては、オレフィン系ポリマー、ビニル系ポリマー、アクリル系ポリマー、スチレン系ポリマー、ポリエステル、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリスルホン、エポキシドから誘導されるポリマー、セルロース誘導体などが挙げられる。
【0080】
有機微粒子とバインダー樹脂からなる空隙層において使用される有機微粒子としては、ポリメチルメタクリレート、多官能メタクリレートの重合体、ポリアミド、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、スチレン−ブタジエンゴム等が挙げられる。また、バインダー樹脂は、無機微粒子と有機バインダー樹脂からなる空隙層と同様のものが使用できる。
【0081】
本発明に係る空隙型のインク吸収層は、塗膜の単位面積あたり15〜40ml/m2の空隙容量を持つことが好ましい。ここでいう空隙容量とは、単位体積の塗膜を水につけたときに発生した気泡の体積、塗膜が吸収しうる水の体積、または最終的に得られる記録媒体を、J.TAPPI紙パルプ試験方法No.51−87に規定される「紙及び板紙の液体吸収性試験方法(ブリストー法)」で測定したときの、接触時間が2秒における液体転移量などで定義される。
【0082】
本発明に係るインク吸収層には、例えば、染料インクの定着剤や無機微粒子の分散助剤としてカチオン性ポリマーを用いることができる。カチオン性ポリマー例としては、ポリエチレンイミン、ポリアリルアミン、ポリビニルアミン、ジシアンジアミドポリアルキレンポリアミン縮合物、ポリアルキレンポリアミンジシアンジアミドアンモニウム塩縮合物、ジシアンジアミドホルマリン縮合物、エピクロルヒドリン・ジアルキルアミン付加重合物、ジアリルジメチルアンモニウムクロライド重合物、ジアリルジメチルアンモニウムクロライド・SO2共重合物、ポリビニルイミダゾール、ビニルピロリドン・ビニルイミダゾール共重合物、ポリビニルピリジン、ポリアミジン、キトサン、カチオン化澱粉、ビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロライド重合物、(2−メタクロイルオキシエチル)トリメチルアンモニウムクロライド重合物、ジメチルアミノエチルメタクリレート重合物、などが挙げられる。また、化学工業時報平成10年8月15,25日に述べられるカチオン性ポリマー、三洋化成工業株式会社発行「高分子薬剤入門」に述べられる高分子染料固着剤が例として挙げられる。
【0083】
また、無機微粒子の分散剤としては上記カチオンポリマーの他に、ポリアクリル酸などのノニオン性、アニオン性のものも使用できる。この場合、染料インクの定着剤は、インク吸収層を塗布した後に上記カチオンポリマーや多価金属塩をオーバーコートすることで付与することができる。
【0084】
本発明に係るインクジェット記録用紙のインク吸収層及び必要に応じて設けられるその他の層には、上述した以外の各種添加剤を使用することができる。例えば、ポリスチレン、ポリアクリル酸エステル類、ポリメタクリル酸エステル類、ポリアクリルアミド類、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、またはこれらの共重合体、尿素樹脂、またはメラミン樹脂等の有機ラテックス微粒子、アニオン、カチオン、非イオン、両性の各界面活性剤、特開昭57−74193号、同57−87988号及び同62−261476号に記載の紫外線吸収剤、特開昭57−74192号、同57−87989号、同60−72785号、同61−146591号、特開平1−95091号及び同3−13376号等に記載されている退色防止剤、特開昭59−42993号、同59−52689号、同62−280069号、同61−242871号及び特開平4−219266号等に記載されている蛍光増白剤、硫酸、リン酸、クエン酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム等のpH調整剤、消泡剤、防腐剤、増粘剤、帯電防止剤、マット剤等の公知の各種添加剤を含有させることもできる。
【0085】
インク吸収層は、2層以上から構成されていてもよく、この場合、それらのインク吸収層の構成はお互いに同じであっても異なっていても良い。
【0086】
本発明に係る有機溶剤に可溶な樹脂を含む非水系塗布液、あるいはインク吸収層に代表される水またはアルコール類を溶媒とする水性塗布液を塗布する方法としては、公知の塗布方式を制限なく適用することができ、例えば、ロールコーティング法、ロッドバーコーティング法、エアナイフコーティング法、スプレーコーティング法、カーテン塗布方法あるいは米国特許第2,681,294号記載のホッパーを使用するエクストルージョンコート法が好ましく用いられる。
【0087】
本発明のインクジェット記録用紙においては、本発明に係る有機溶剤に可溶な樹脂を含む層と水またはアルコール類を溶媒とする水性塗布液により形成される層との間に下塗り層を設けて、更に両層の接着性を向上させてもよい。下引き層としては、ゼラチンやポリビニルアルコール等の、必要に応じて硬化剤と併用して設けられる。好ましい下引き層の厚さは0.01〜1μmである。
【0088】
本発明のインクジェット記録用紙の製造方法においては、支持体上に、水とアルコール類とを除く有機溶剤を溶媒とし、樹脂を含有する非水系塗布液を塗布、乾燥して塗膜を形成した後、該塗膜の表面を金属ロールを有するカレンダー装置により表面処理を施し、次いで水またはアルコール類を溶媒とする水性塗布液を塗布、乾燥して製造することを1つの特徴とし、このカレンダー装置による表面処理により高平滑性を実現することができる。
【0089】
本発明に係るカレンダー処理の好ましい条件は、カレンダー装置の金属ロールの表面温度が50〜250℃の状態で該樹脂含有層と接触させて表面処理することによって、特に高平滑性が実現できる。また、カレンダーによる表面処理が線圧100N〜1000N/cmの少なくとも1ニップにより、速度が20m/秒以上で行われると、高生産性を実現できる観点から好ましい。
【0090】
本発明に適用可能な金属ロールを有するカレンダー装置としては、スーパーカレンダー、グロスカレンダー、マシンカレンダー、ソフトカレンダー等が使用される。インクジェット記録用紙を金属ロールと他のロールとの間のニップ(間隙)を通すことにより圧力、せん断力、及び熱により樹脂含有層表面の光沢を向上させるものである。金属ロールとしては、鋼鉄等のロール表面にニッケル、クロム、セラミック等を溶射して保護層としたものが通常使用され、表面は鏡面光沢を有するように研磨される。金属ロールと組み合わされる他のロールとしては、金属ロール、弾性ロール等が用いられるが、樹脂含有層表面の光沢の均一性からは弾性ロールが好ましい。弾性ロールは、コットン、ウール、パルプ等を鉄芯に巻いて高圧加工、研磨したロール、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂等の合成樹脂ロール、アラミド繊維ロール等が使用される。
【0091】
本発明では、カレンダーは金属ロールを加熱しないで処理しても良いが、加熱することで更に光沢性が改良され、耐傷性が向上するので好ましい。カレンダー装置を連続で稼働させていれば金属ロールを強制的に加温しなくても表面温度は30℃程度にはなるので、一般的な金属ロールの表面温度は30〜300℃であり、50〜250℃が好ましい。
【0092】
本発明に係るカレンダー処理時の金属ロールと他のロール間のニップの線圧は2000N/cm以下であり、好ましくは100〜1500N/cmである。ニップの線圧が低すぎると光沢性や暗退色性の改良効果が出にくく、白紙部光沢が不均一となりやすい。処理速度により好ましいニップ線圧は変化するが、線圧100〜2000N/cmの少なくとも1ニップを処理速度が20m/分以上で処理するのが好ましい。より好ましくは金属ロールの表面温度を80〜200℃とし、線圧200〜1500N/cm、処理速度を50m/分以上で処理するのが望ましい。処理速度の上限は特に無いが品質安定性や操業性からは500m/分以下である。
【0093】
尚、カレンダー処理する際に型付けローラーに圧接して微細な凸凹の模様付けをして型付き支持体を作成することもできる。
【0094】
本発明のインクジェット記録用紙の製造方法においては、セルロースパルプを主成分とする支持体の一方の面A(表面側)に、水とアルコール類とを除く有機溶剤を溶媒とし、樹脂を含有する塗布液を塗布、乾燥して塗膜を形成し、該塗膜の表面を金属ロールを有するカレンダー装置により表面処理を施した後、該支持体を挟んで面Aとは反対側の面B(裏面側)に、水とアルコール類とを除く有機溶剤を溶媒とし、樹脂を含有する塗布液を塗布、乾燥して塗膜を形成した後、面Aの表面処理を施した塗膜上に、水またはアルコール類を溶媒とする塗布液を塗布、乾燥して製造することを特徴の1つとする。
【0095】
すなわち、表面側(面A)及び裏面側(面B)の双方に、支持体のそれぞれの面に近接して、水とアルコール類とを除く有機溶剤に可溶な樹脂から構成される層を設けることにより、両面での高い耐水性を実現し、加えて面Aに水系塗布液を塗布する前にカレンダー処理を施すことによって高平滑性を実現するものである。
【0096】
なお、面B(裏面)に適用する樹脂としては、前述の表面側に設ける樹脂層で記載したのと同様の樹脂を適宜選択して用いることができる。
【0097】
また、本発明のインクジェット記録用紙において、支持体の片方の面側にのみインク吸収層を設ける場合には、支持体を挟んでインク吸収層を設ける面とは反対側の面(裏面側)に、カール防止や印字直後に重ね合わせた際のくっつきやインク転写を防止するために種々の種類のバック層を設けることもできる。
【0098】
バック層の構成は支持体の種類や厚み、表側の構成や厚みによっても変わるが一般には親水性バインダーや疎水性バインダーが用いられる。バック層の厚みは通常は0.1〜10μmの範囲である。また、バック層には他の記録用紙とのくっつき防止、筆記性改良、さらにはインクジェット記録装置内での搬送性改良のために表面を粗面化できる。この目的で好ましく用いられるのは粒径が0.5〜20μmの有機または無機の微粒子である。これらのバック層は予め設けていても良く、反対側のインク吸収層を塗布した後で設けてもよい。
【0099】
次いで、本発明のインクジェット記録用紙に好ましく用いられる水性インクについて説明する。
【0100】
水性インクとは、通常は水溶性染料及び液媒体、その他の添加剤を有する記録液体である。水溶性染料としてはインクジェットで公知の直接染料、酸性染料、塩基性染料、反応性染料あるいは食品用色素等の水溶性染料が使用できるが直接染料、または酸性染料が好ましい。
【0101】
水性インクの溶媒は水を主体としてなるが、インク液が乾燥した際に染料が析出してノズル先端やインク供給経路での目詰まりを防止するために、通常沸点が約120℃以上で室温で液状の高沸点有機溶媒が使用される。高沸点有機溶媒は水が蒸発した際に染料などの固形成分が析出して粗大析出物の発生を防止する作用を持つために水よりはるかに低い蒸気圧を有することが要求される一方、水に対して混和性が高い必要がある。
【0102】
そのような目的では、高沸点の有機溶媒が通常多く使用されるが、具体例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、グリセリン、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、グリセリンモノメチルエーテル、1,2,3−ブタントリオール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,4−ペンタントリオール、1,2,6−ヘキサントリオール、チオジグリコール、トリエタノールアミン、ポリエチレングリコール(平均分子量が約300以下)等のアルコール類が挙げられる。また、上記した以外にも、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン等も使用できる。これらの多くの高沸点有機溶媒の中でも、ジエチレングリコール、トリエタノールアミンやグリセリン、トリエタノールアミン等の多価アルコール類、トリエチレングリコールモノブチルエーテルの多価アルコールの低級アルキルエーテル等は好ましいものである。
【0103】
水性インクが含有するその他の添加剤としては、例えば、pH調節剤、金属封鎖剤、防カビ剤、粘度調整剤、表面張力調整剤、湿潤剤、界面活性剤及び防錆剤、等が挙げられる。
【0104】
水性インク液は、記録用紙に対する濡れ性を良好にするため及びインクジェットノズルからの吐出を安定化させる目的で、25℃において、25〜50mN/m、好ましくは28〜40mN/mの範囲内の表面張力を有するのが好ましい。
【0105】
また、水性インクの粘度は通常25℃において2〜40mPa・s、好ましくは2.5〜30mPa・sである。水性インクのpHは通常4〜10の範囲である。
【0106】
インクノズルから吐出される最小インク液滴としては1〜30plの容量の場合、記録紙上で20〜60μmの直径の最小ドット径が得られるので好ましい。このようなドット径で印字されたカラープリントは高画質画像を与える。好ましくは2〜20×10plの容積を有する液滴が最小液滴として吐出される場合である。
【0107】
また、水性インクが、少なくともマゼンタおよびシアンについて、各々濃度が2倍以上異なる2種類のインクで記録する方式において、ハイライト部では低濃度のインクが使用されるためにドットの識別がしにくくなるが、本発明はかかる記録方式を採用した場合も適用できる。
【0108】
本発明に好ましく用いられるインクジェット記録方法は、従来公知の各種の方式を用いることができ、その詳細はたとえば、インクジェット記録技術の動向(中村孝一編,平成7年3月31日,日本科学情報株式会社発行)に記載されている。
【0109】
本発明のインクジェット記録用紙を用いてインクジェット記録する際に用いることができる顔料インクは水性顔料インクであっても油性顔料インクであってもよいが、水性顔料インクが好ましい。
【0110】
顔料としては、従来インクジェット用として公知の顔料を使用することができ、例えばアゾキレート、水不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料等のアゾ顔料、フタロシアニン顔料、ペリレン及びペリレン顔料、アントラキノン系顔料、キナクリドン系顔料、ジオキサンジン系顔料、チオインジゴ顔料、イソインドニノン系顔料、キノフタロニ系顔料等の多環式顔料、塩基性染料型レーキ、酸性染料型レーキ等の染料レーキ、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラック、昼光蛍光顔料等の有機顔料、カーボンブラック等の無機顔料等が挙げられる。
【0111】
また、顔料の分散剤としては、例えば高級脂肪酸塩、アルキル硫酸塩、アルキルエステル硫酸塩、アルキルスルホン酸塩、スルホこはく酸塩、ナフタレンスルホン酸塩、アルキル燐酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、グリセリンエステル、ソルビタンエステル、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、あるいは高分子界面活性剤等を挙げることができる。
【0112】
顔料インクには上記以外に必要に応じて各種の添加剤を含むことができる。
【0113】
そのような添加剤としては、例えば、水溶性有機溶剤(例えばプロパノール、ヘキサノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン、ヘキサンジオール、尿素等)、界面活性剤(アニオン性界面活性剤及びノニオン性界面活性剤、フッ素系界面活性剤等)、水溶性ポリマー、重合体分散物、防腐剤、防黴剤、粘度調整剤、pH調整剤等を挙げることができる。
【0114】
顔料の分散は、ボールミル、サンドミル、ロールミル、コロイドミル、超音波ホモジナイザー、湿式ジェットミル、高圧ホモジナイザー等各種の分散装置を必要に応じて2種以上組み合わせて用いることができる。また遠心分離装置や各種のフィルターを用いて顔料分散体から粗粒子分を除去することも好ましい。
【0115】
顔料粒子の平均粒径は300nm以下であるが、200nm以下が好ましい。特に好ましいのは150〜50nmである。
【0116】
本発明に係るインクジェット記録用紙を用いた画像記録に用いることのできるインクジェットプリンタは、インクジェットヘッドとしては、オンデマンド方式でもコンティニュアス方式でも構わない。また、吐出方式としては、電気−機械変換方式(例えば、シングルキャビティー型、ダブルキャビティー型、ベンダー型、ピストン型、シェアーモード型、シェアードウォール型等)、電気−熱変換方式(例えば、サーマルインクジェット型、バブルジェット(登録商標)型等)、静電吸引方式(例えば、電界制御型、スリットジェット型等)及び放電方式(例えば、スパークジェット型等)などを具体的な例として挙げることができるが、いずれの吐出方式を用いても構わない。
【実施例】
【0117】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例において「部」あるいは「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量部」あるいは「質量%」を表す。
【0118】
《シリカ分散液S−1の調製》
10%のカチオン性ポリマーP−1水溶液(n−プロパノールを10%およびエタノールを2質量%含有する)の150gに、予め均一に分散されている一次粒子の平均粒径が約7nmの気相法シリカ(日本アエロジル社製;アエロジル300)を23%含有するシリカ分散液(pH2.6、エタノール0.5%含有)の435gと、ホウ酸3.6g及びホウ砂0.8gを室温で3000rpmで攪拌しながら添加した。
【0119】
次いで、三和工業株式会社製の高圧ホモジナイザーで3kN/cm2の圧力で分散し、シリカ含有量が18%になるように全量を純水で仕上げて、シリカ分散液S−1を得た。得られたシリカ分散液S−1を、アドバンテックス東洋社製のTCP−10タイプのフィルターを用いてろ過を行った。シリカ微粒子の平均二次粒径を測定したところ、39nmであった。なお、平均二次粒径は、シリカ分散液を50倍に希釈し動的光散乱法式粒子径測定装置ゼータサイザー1000HS(マルバーン社製)を用いて測定した値である。
【0120】
【化1】

【0121】
《インク吸収層塗布液の調製》
〔インク吸収層塗布液1の調製〕
500gの上記シリカ分散液S−1を40℃で攪拌しながら、重合度3500のポリビニルアルコール(クラレ製PVA235)の8%水溶液263gを徐々に加え、最後に純水で全量を1000gに仕上げて、インク吸収層塗布液1を調製した。
【0122】
〔インク吸収層塗布液2の調製〕
純水800gに、フェニルカルバモイル化ゼラチンを40g、ポリビニルピロリドン(分子量36万)を25g、ポリエチレンオキサイド(分子量10万)を12g、界面活性剤(花王製エマルゲン120)を1g、テトラキス(ビニルスルホニルメチル)メタンを2.1g、順次混合、溶解してインク吸収層塗布液2を調製した。
【0123】
〔有機溶剤に可溶の樹脂を含有する塗布液Aの調製〕
ポリビニルブチラール樹脂(電気化学工業社製#6000C)の100gをメチルエチルケトンの900gに溶解して、塗布液Aを調製した。
【0124】
〔有機溶剤に可溶の樹脂を含有する塗布液Bの調製〕
スルホン酸ナトリウム含有ポリウレタン(UR8200、東洋紡績社製)の100gを、メチルエチルケトンの300g、シクロヘキサノンの300g、トルエンの300gに溶解して、塗布液Bを調製した。
【0125】
〔有機溶剤に可溶の樹脂を含有する塗布液Cの調製〕
スルホン酸ナトリウム含有ポリウレタン(UR8300、東洋紡績社製)の100gを、メチルエチルケトンの300g、シクロヘキサノンの300g、トルエンの300gに溶解して、塗布液Cを調製した。
【0126】
〔有機溶剤に可溶の樹脂を含有する塗布液Dの調製〕
スルホン酸カリウム含有塩ビ系樹脂(MR100、日本ゼオン社製)の100gを、メチルエチルケトンの300g、シクロヘキサノンの300g、トルエンの300gに溶解して、塗布液Dを調製した。
【0127】
〔有機溶剤に可溶の樹脂を含有する塗布液Eの作成〕
スルホン酸カリウム含有塩ビ系樹脂(MR110、日本ゼオン社製)の100gを、メチルエチルケトンの300g、シクロヘキサノンの300g、トルエンの300gに溶解して、塗布液Eを調製した。
【0128】
〔塗布液Fの作成〕
フェニルカルバモイル化ゼラチンの100gを、水900gに溶解して、塗布液Fを調製した。
【0129】
《記録用紙の作製》
〔記録用紙Aの作製〕
再生紙(やまゆり紙、本州製紙社製)に、有機溶剤に可溶の樹脂を含有する塗布液Bを湿潤膜厚が50μmになるようにスライドホッパーを使用して塗布し、20〜65℃に段階的に温度を変化させた風で順次乾燥させて樹脂層Bを形成した。
【0130】
この樹脂層B表面に、金属ロールを備えたカレンダー装置を用いて、金属ロールの表面温度60℃、線圧3.0kN/cm、速度20m/秒でカレンダー処理を施した。
【0131】
カレンダー処理した面とは反対側の面に、有機溶剤に可溶の樹脂を含有する塗布液Aを湿潤膜厚が50μmになるようにスライドホッパーを使用して塗布し、20〜65℃に段階的に温度を変化させた風で順次乾燥させてバックコート層を形成した。
【0132】
カレンダー処理した側の面に、インク吸収層塗布液1を湿潤膜厚が180μmになるようにスライドホッパーを使用して塗布し、20〜65℃に段階的に温度を変化させた風で順次乾燥して、記録用紙Aを作製した。
【0133】
〔記録用紙1の作製〕
上記記録用紙Aの作製において、再生紙(やまゆり紙、本州製紙社製)に代えて、上質紙(しらおい 日本大昭和板紙社製)を用いた以外は同様にして、記録用紙1を作製した。
【0134】
〔記録用紙2−1の作製〕
上記記録用紙Aの作製において、有機溶剤に可溶の樹脂を含有する塗布液Bに代えて、有機溶剤に可溶の樹脂を含有する塗布液Cを用いた以外は同様にして、記録用紙2−1を作製した。
【0135】
〔記録用紙2−2の作製〕
上記記録用紙Aの作製において、有機溶剤に可溶の樹脂を含有する塗布液Bに代えて、有機溶剤に可溶の樹脂を含有する塗布液Dを用いた以外は同様にして、記録用紙2−2を作製した。
【0136】
〔記録用紙2−3の作製〕
上記記録用紙Aの作製において、有機溶剤に可溶の樹脂を含有する塗布液Bに代えて、有機溶剤に可溶の樹脂を含有する塗布液Eを用いた以外は同様にして、記録用紙2−3を作製した。
【0137】
〔記録用紙2−4の作製〕
再生紙(やまゆり紙、本州製紙社製)に、有機溶剤に可溶の樹脂を含有する塗布液Aを湿潤膜厚が50μmになるようにスライドホッパーを使用して塗布し、20〜65℃に段階的に温度を変化させた風で順次乾燥させて樹脂層Aを形成した。
【0138】
この樹脂層Aの表面に、金属ロールを備えたカレンダー装置を用いて、金属ロールの表面温度60℃、線圧3.0kN/cm、速度20m/秒でカレンダー処理を施した。
【0139】
カレンダー処理した面とは反対側の面に、有機溶剤に可溶の樹脂を含有する塗布液Aを湿潤膜厚が50μmになるようにスライドホッパーを使用して塗布し、20〜65℃に段階的に温度を変化させた風で順次乾燥させてバックコート層を形成した。
【0140】
カレンダー処理した側の面に、コロナ放電処理した後、インク吸収層塗布液1を湿潤膜厚が180μmになるようにスライドホッパーを使用して塗布し、20〜65℃に段階的に温度を変化させた風で順次乾燥して、記録用紙2−4を作製した。
【0141】
〔記録用紙2−5の作製〕
再生紙(やまゆり紙、本州製紙社製)の片面(裏面)に、有機溶剤に可溶の樹脂を含有する塗布液Aを湿潤膜厚が50μmになるようにスライドホッパーを使用して塗布し、20〜65℃に段階的に温度を変化させた風で順次乾燥してバックコート層を設けた。このバックコート層と再生紙支持体をはさんで反対側の面(おもて面)に、インク吸収層塗布液1を湿潤膜厚が180μmになるようにスライドホッパーを使用して塗布し、20〜65℃に段階的に温度を変化させた風で順次乾燥して、記録用紙2−5を作製した。
【0142】
〔記録用紙2−6の作製〕
上記記録用紙Aの作製において、有機溶剤に可溶の樹脂を含有する塗布液Bに代えて、ゼラチンを含有する塗布液Fを用いた以外は同様にして、記録用紙2−6を作製した。
【0143】
〔記録用紙3の作成〕
上記記録用紙Aの作製において、「樹脂層Bの表面にカレンダー処理を施す工程」を無しにした以外は同様にして、記録用紙3を作製した。
【0144】
〔記録用紙4の作製〕
上記記録用紙Aの作製において、多孔質型のインク吸収層塗布液1に代えて、膨潤型のインク吸収層塗布液2を用いた以外は同様にして、記録用紙4を作製した。
【0145】
〔記録用紙5の作成〕
上記記録用紙Aの作製において、バックコート層を除いた以外は同様にして、記録用紙5を作製した。
【0146】
《インクの調製》
以下の組成からなる水溶性インクであるシアンインクを作製した。
【0147】
水 68.5部
ジエチレングリコールモノブチルエーテル 12部
ジエチレングリコール 10部
グリセリン 8部
C.I.Direct Blue 86 1部
界面活性剤(信越化学製 サーフィノール465) 0.5部
《インクジェット画像印字》
上記シアンインクを、インクジェットプリンターPM−950C(セイコーエプソン社製)に搭載し、作製した各々の記録用紙の印字面(インク吸収層塗設面)にシアンのベタ画像を印字した。この画像を、30℃、50%RHの環境下で2時間乾燥させた。なお、各記録用紙は、20℃で3日保存したものを用いて印字した。
【0148】
《画像の評価》
〔光沢感の評価〕
一般に、光沢感は、表面反射、写像性など複数の要素が関係するため、本発明では銀塩写真(カラーペーパー)の光沢タイプに上記と同様の画像を形成した試料と基準品とした相対比較を行い、下記の基準に従って光沢感の評価を行った。
【0149】
1:銀塩写真以上の光沢感を有している
2:銀塩写真とほぼ同等の光沢感である
3:銀塩写真にはやや劣るが、光沢感は十分感じられる
4:銀塩写真には明らかに劣るが、光沢感はわずかに感じられる
5:光沢感がまったく感じられない
〔コックリング耐性の評価〕
シアンのベタ画像を印字した面及び未印字面を目視観察し、下記の基準に従ってコックリング耐性の評価を行った。△以上であれば実用上許容範囲にあると判断した。
【0150】
○:表面のうねりは全く認められず、美観を損なうことはない
△:表面に僅かなうねりは認められるが、美観を損なうことはない
×:表面に大きなうねりが認められ、明らかに美観を損なう
〔インク吸収性の評価〕
各記録用紙のシアンのベタ画像印字部を目視観察し、下記の判定基準に従いビーディング耐性の評価を行い、これをインク吸収性の尺度とした。1〜3のランクであれば実用上許容の範囲であると判断した。
【0151】
1:30cmの観察距離でも印字画像のムラが全く認められない
2:30cmの観察距離では印字画像のムラがやや認められるが、45cmの観察距離
では印字画像のムラは全く認められない
3:45cmの観察距離では印字画像のムラがやや認められるが、60cmの観察距離
では印字画像のムラは全く認められない
4:60cmの観察距離では印字画像のムラがやや認められる
以上により得られた結果を、表1に示す。
【0152】
【表1】

【0153】
表1に記載の結果より明らかなように、本発明の記録用紙A及び記録用紙1は、支持体として再生紙であっても上質紙であっても、光沢感、コックリング耐性、インク吸収性は良好であった。
【0154】
また、記録用紙2−1〜2−6の結果において、おもて面に有機溶剤に可溶の樹脂を含有する層を備えた記録用紙は、樹脂層が無い記録用紙や、ゼラチン層を備える膨潤型の記録用紙よりも、光沢感及びコックリング耐性に優れ、インク吸収性も良好であった。尚、当該樹脂としては、親水性基を有するものがコックリング耐性により優れることが分かった。
【0155】
記録用紙3と記録用紙Aの結果から、おもて面の樹脂層をカレンダー処理したほうが光沢感がより優れることが分かった。また、記録用紙4の結果から、膨潤型インク吸収層であっても、インク吸収性で若干劣るものの本発明の効果を奏することが分かった。
【0156】
記録用紙5の結果から、有機溶剤に可溶の樹脂を含有する層を裏面に設けない場合であっても、本発明の効果を奏することが分かった。なお、記録用紙5はインク吸収面を上にして低湿下に放置したときに4隅が持ち上がるカールを若干起こすことから、裏面にも有機溶剤に可溶の樹脂を含有する層を設けるほうがより好ましいことも確認することができた。
【0157】
以上の結果より明らかなように、本発明の記録用紙は、比較例に対し、高いインク吸収性を有し、光沢感、コックリング耐性に優れていることが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セルロースパルプを主成分とする支持体の少なくとも一方の面に、有機溶剤に可溶の樹脂を含有する塗布液を塗布することにより形成した塗膜上に、水またはアルコールを溶媒とする塗布液を塗布してインク吸収層を形成することを特徴とするインクジェット記録用紙の製造方法。
【請求項2】
セルロースパルプを主成分とする支持体の少なくとも一方の面に、有機溶剤に可溶の樹脂を含有する塗布液を塗布し、その表面にカレンダー処理を施した後、そこに水またはアルコールを溶媒とする塗布液を塗布してインク吸収層を形成することを特徴とするインクジェット記録用紙の製造方法。
【請求項3】
セルロースパルプを主成分とする支持体の一方の面(おもて面)に、有機溶剤に可溶の樹脂を含有する塗布液を塗布して塗膜を形成し、その表面にカレンダー処理を施した後、おもて面に水またはアルコールを溶媒とする塗布液を塗布してインク吸収層を形成し、かつ裏面に有機溶剤に可溶の樹脂を含有する塗布液を塗布することによって塗膜を形成することを特徴とするインクジェット記録用紙の製造方法。
【請求項4】
前記セルロースパルプを主成分とする支持体の一方の面に設けた塗膜を形成するに用いた塗布液に含まれる有機溶剤に可溶の樹脂が、親水性基を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のインクジェット記録用紙の製造方法。
【請求項5】
セルロースパルプを主成分とする支持体の少なくとも一方の面に、有機溶剤に可溶の樹脂を含有する層と、水またはアルコールを溶媒とする塗布液を塗布して形成したインク吸収層とを有することを特徴とするインクジェット記録用紙。
【請求項6】
前記有機溶剤に可溶の樹脂が、親水性基を有することを特徴とする請求項5記載のインクジェット記録用紙。
【請求項7】
前記セルロースパルプを主成分とする支持体を挟んで、前記インク吸収層を有する面(おもて面)とは反対側の面(裏面)に、有機溶剤に可溶の樹脂を含有する層を有することを特徴とする請求項5または6に記載のインクジェット記録用紙。
【請求項8】
前記インク吸収層が多孔質層であることを特徴とする請求項5〜7のいずれか1項に記載のインクジェット記録用紙。