説明

インクジェット記録用紙

【課題】染料インクおよび顔料インクで印字した場合の印字濃度が高く、印字ムラや印字滲みのないインクジェット記録用紙を提供すること。
【解決手段】支持体と、その支持体上に形成された少なくとも1層のインク受容層と、そのインク受容層上に形成された光沢層とを備えている。アルミナおよび/またはシリカを顔料構成成分として含有する光沢層は一次粒子径が大きい大径成分(A)の顔料と一次粒子径が小さい小径成分(B)の顔料からなり、大径成分Aの平均一次粒子径(D)と小径成分Bの平均一次粒子径(d)の関係は、D≧2dであり、大径成分Aの小径成分Bに対する重量配合比Rは、7/3≦R≦9/1である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、染料インクおよび顔料インクで印字した場合の印字濃度が高く、印字ムラや印字滲みのないインクジェット記録用紙に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録方式は、インクの微小液滴を種々の作動原理により飛翔させて紙等の記録シートに付着させ、画像・文字等の記録を行うものであるが、高速、低騒音で、多色化が容易であり、記録パターンの融通性が大きくて、現像および定着が不要であるなどの特徴があり、各種図形およびカラー画像等の記録装置として種々の用途において急速に普及している。
【0003】
インクジェット方式で画像を形成して記録を行うための記録媒体としては、普通紙の他、支持体上にインク受容層を設けた記録媒体、さらに、表面に光沢層を設けた記録媒体などが用いられている。特に、近年、より高解像度で鮮明なカラー画像が得られること、および得られた画像が長期間鮮明であることが望まれているため、光沢層を有する記録媒体が、特に写真などの画像記録用に広く用いられている。
【0004】
このインクジェット方式用のインクとしては、染料インクと顔料インクがある。染料インクは、発色性の点では優れているものの、経時により紫外線やオゾン等により酸化され、画像が褪色して見栄えが悪くなるという問題がある。
【0005】
一方、顔料インクは光劣化も少なく、顔料粒子が水に溶解せず分散した状態で存在するので、耐候性や画像の保存安定性の点で優れているが、染料インクと比較すると、発色濃度および彩度の画像品質面において、やや劣るという欠点がある。よって、画像形成に使用されるインク量は染料インクに比べて多くなる傾向にあり、特にインク量の多い重色部間での境界滲み(ブリーディング)やベタ印字部での濃度ムラが発生しやすい傾向にある。
【0006】
そこで、染料インクおよび顔料インクの双方を使用した場合において高い印字濃度を有するインクジェット記録媒体が、以下の特許文献1および2に提案されている。
【0007】
特許文献1には、光沢層形成顔料として、アルミナ(A)と平均粒子径が100〜500nmであるシリカ(B)を重量比で、95/5≦A/B≦50/50の範囲で混合した混合物を用いたインクジェット記録媒体が開示されている。
【0008】
また、特許文献2には、最表層に平均粒子径が5〜500nmである無機微粒子を主体とする光沢発現層を有し、その光沢発現層の下に2層のシリカ含有インク受理層を有し、最下層のシリカ含有インク受理層のシリカの平均粒子径が10〜20μmであり、最上層シリカ含有インク受理層のシリカの平均粒子径が1〜10μmであるインクジェット記録用シートが開示されている。
【特許文献1】特開2003−260863号公報
【特許文献2】特開2003−285541号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
染料インクは色材が記録媒体に浸透するのに対し、顔料インクは色材である顔料粒子が記録媒体表面に多く残るという発色性の違いがあり、特徴の異なる染料インクと顔料インクの両方の印字適性を満足させることはなかなか困難である。特許文献1と2に開示されたインクジェット記録媒体によれば、従来のものより画像の質は向上する。しかし、現在では、より高度な画像の質が求められており、しかも、光沢調の記録紙は表面が平滑であることから、顔料インクのインク粒子が表面に定着し難いので、耐擦性に劣り、印字ムラが発生しやすいという問題もある。この点で、特許文献1と2に開示されたものは、現在要求されているレベルの高い光沢感を伴った写真調の画像が得られる記録媒体ではないというのが実情である。このように、特徴の異なる染料インクと顔料インクの両方の印字適性を満足するインクジェット記録用紙はいまだ提供されていない。
【0010】
本発明は従来の技術の有するこのような問題点に鑑みてなされたものであって、その目的は、染料インクおよび顔料インクで印字した場合の印字濃度が高く、印字ムラや印字滲みのないインクジェット記録用紙を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために本発明のインクジェット記録用紙は、支持体と、その支持体上に形成された少なくとも1層のインク受容層と、そのインク受容層上に形成された光沢層とを備えたインクジェット記録用紙において、アルミナおよび/またはシリカを顔料構成成分として含有する光沢層は一次粒子径が大きい大径成分(A)の顔料と一次粒子径が小さい小径成分(B)の顔料からなり、大径成分Aの平均一次粒子径(D)と小径成分Bの平均一次粒子径(d)の関係は、D≧2dであり、大径成分Aの小径成分Bに対する重量配合比Rは、7/3≦R≦9/1であることを特徴としている。
【0012】
一般に、光沢感を付与するためには、粒子径の小さな顔料であるシリカなどのコロイド粒子とバインダーを用いる手法が多く行われているが、球状のコロイド粒子を用いると、造膜後の空隙が小さくなるのでインク吸収速度が小さくなり、ブリード(滲み)が発生しやすいという欠点がある。
【0013】
一方、アルミナ水和物は正電荷を有しているため、インク材料の定着がよいので、発色性が高く、しかも、高光沢性の画像が得やすいという利点がある。しかしながら、アルミナ水和物をインク受容層の構成材料として使用した記録媒体では、高精細のカラー画像を短時間で記録するための印字においては、時間当たりに記録媒体に供給されるインク量は多くなるので、アルミナの粒径によっては、印字したインクがアルミナ水和物で吸収しきれずにインク受容層表面に溢れ出して、印字品位が悪くなってしまうという欠点がある。
【0014】
このように、小粒径のシリカまたはアルミナを単独で用いた場合、画像品質の高い記録画像を得ることは困難である。
【0015】
そこで、本発明に従って、アルミナおよび/またはシリカを顔料構成成分として含有する光沢層が一次粒子径が大きい大径成分(A)の顔料と一次粒子径が小さい小径成分(B)の顔料からなり、大径成分Aの平均一次粒子径(D)と小径成分Bの平均一次粒子径(d)の関係が、D≧2dであり、大径成分Aの小径成分Bに対する重量配合比Rが、7/3≦R≦9/1であることにより、小粒径のB成分が大粒径のA成分中に良好に分散し、染料インクおよび顔料インクで印字した場合の印字濃度が高く、印字ムラや印字滲みのないインクジェット記録用紙を提供することができる。大径成分Aと小径成分Bはともにアルミナであってもよく、ともにシリカであってもよい。また、成分A、Bのいずれか一方をアルミナとし、他方をシリカとしてもよい。特に、大径成分Aと小径成分Bがともにアルミナであれば、インク吸収性が向上するという利点があるので、好ましい。また、大径成分Aと小径成分Bがともにシリカであれば、光沢を得やすいという利点があるので、好ましい。
【0016】
大径成分Aの平均一次粒子径(D)と小径成分Bの平均一次粒子径(d)の関係が、D<2dであると、大径成分Aと小径成分Bに対する比を、7/3≦A/B≦9/1としても、A成分またはB成分の一部が凝集することがあり、細孔分布曲線のピークが細孔直径100nmを超える部分に存在しやすくなるので、後記するような不都合な点がある。
【0017】
大径成分Aと小径成分Bの配合比率については、A成分が70重量部未満でB成分が30重量部超であると、A成分とB成分の平均一次粒子径の関係が、D≧2dであっても、印字ムラや印字滲みが出やすいという不都合な点がある。
【0018】
大径成分Aと小径成分Bの配合比率については、A成分が90重量部超でB成分が10重量部未満であると、A成分とB成分の平均一次粒子径の関係が、D≧2dであっても、染料インクの印字濃度が低下するという不都合な点がある。
【0019】
水銀ポロシメーターで測定した細孔分布曲線の少なくとも一つのピークが、細孔直径40〜100nmの範囲に存在し、且つ細孔表面積は15m2/g 以上であることが好ましい。
【0020】
水銀ポロシメーターによる細孔分布測定について説明すると、細孔分布は、マイクロメトリックス ポアサイザー9320((株)島津製作所製)を用い、水銀圧入法により求めた空隙量分布曲線から細孔分布(微分曲線)を計算して求めることができる。水銀圧入法による細孔径の測定は、細孔の断面を円形として仮定して導かれた下記の式を用いて計算した。
【0021】
D=−4γCOSθ/P
ただし、D:細孔直径、γ:水銀の表面張力、θ:接触角、P:圧力である。
【0022】
水銀の表面張力は、482.536dyn/cm とし、使用接触角は130゜とし、高圧部測定(0〜30000psia、測定細孔径6μm〜6nm)を行った。
【0023】
細孔表面積(m2/g)は、予め測定した光沢層の重量と空隙量分布曲線から計算することができる。
【0024】
細孔分布曲線のピークが細孔直径40nm未満の範囲に存在する場合、充分なインク吸収速度が得られず、インクあふれやビーディングと呼ばれる印字濃度ムラが生じることがある。
【0025】
細孔分布曲線のピークが細孔直径100nm超の範囲に存在する場合、インクが広がりやすく、印字濃度が低下し、鮮明な画像が得られないことがある。
【0026】
細孔表面積が15m2/g 未満であると、インク受容層の塗工量を著しく増やさない限り、吐出される多量のインクを充分に吸収することができず、インクあふれにより画像が乱れる恐れがある。一方、細孔表面積が100m2/g より大きくなると、染料の定着性が低下したり、インク受容層の強度が低くなる恐れがある。
【0027】
本発明の効果を発現するためには、アルミナの平均一次粒子径は14〜30nmであり、シリカの平均一次粒子径は15〜30nmであることが好ましい。
【0028】
本明細書において、平均一次粒子径とは、BET法により表面積を測定し、この表面積より算出した数値をいう。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、染料インクおよび顔料インクで印字した場合の印字濃度が高く、印字ムラや印字滲みのないインクジェット記録用紙を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
本発明のインクジェット記録用紙は、支持体と、その支持体上に形成された少なくとも1層のインク受容層と、そのインク受容層上に形成された光沢層とを備えており、具体的な実施形態について以下に説明する。
【0031】
本発明のインクジェット記録用紙の支持体の原料としては、例えば、広葉樹クラフトパルプ、天然パルプ、合成パルプ等が挙げられる。天然パルプとしては、通常に製紙用に用いられるパルプであれば、いずれも使用可能である。すなわち、広葉樹晒クラフトパルプ、針葉樹晒クラフトパルプ、広葉樹未晒クラフトパルプ、針葉樹未晒クラフトパルプ、広葉樹亜硫酸パルプ、針葉樹亜硫酸パルプ等が挙げられる。また、木材繊維を含む主原料として、化学的に処理されたパルプ、木材以外の繊維原料であるケナフ、麻、葦等非木材繊維を主原料として化学的に処理されたパルプやチップを機械的にパルプ化したグランドパルプ、木材またはチップに化学薬品を添加しながら機械的にパルプ化したケミグランドパルプ、及びチップを軟らかくなるまで蒸解した後、レファイナー等でパルプ化したセミケミカルパルプ等のバージンパルプ等が挙げられる。また、必要に応じて、合成繊維、無機繊維等の各種繊維状物質を原料として用いることができる。また、新聞古紙、雑誌古紙、段ボール古紙等を原料として製造された古紙パルプを配合することもできる。
【0032】
本発明のインクジェット記録用紙の支持体は、上記原料を用いて抄紙して製造することができる。抄紙は、例えば、長網抄紙機、ツインワイヤー抄紙機、オントップ抄紙機、ハイブリッド抄紙機または丸網抄紙機等の抄紙機を用いて抄紙することができる。抄紙する際には、パルプに、インクジェット記録用紙を製造する際に通常用いられる添加剤を添加することができる。このような添加剤としては、例えば、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール系高分子化合物、尿素樹脂、メラミン樹脂、澱粉等の紙力増強剤:硫酸バンド等の薬品定着剤:ポリアクリルアミド、アクリルアミド−アミノメチルアクリルアミドの共重合体の塩、カチオン化澱粉、ポリエチレンイミン、ポリエチレンオキサイド、アクリルアミド−アクリル酸ナトリウムの共重合物等の濾水性あるいは歩留まり向上剤:ロジンサイズ、アルキルケテンダイマー(AKD)、アルケニル無水コハク酸(ASA)等のサイズ剤:ポリアミド、ポリアミン、エピクロルヒドリン等の耐水化剤:消泡剤、タルク等の填料:染料:色顔料:抗菌剤:紫外線吸収剤:pH調整剤等を挙げることができる。
【0033】
本発明のインクジェット記録用紙のインク受容層は、インクを吸収して乾燥するための層であり、顔料を含んでいる。その顔料としては、非晶質シリカ、アルミナ、クレー、炭酸カルシウム、カオリン、タルク、炭酸マグネシウム、過硫酸バリウム、珪酸アルミニウム、珪酸マグネシウム、コロイダルシリカ、アルミナとシリカの複合体、ゼオライト、珪藻土、水酸化マグネシウム、ハイドロキシアパタイト、マイカ、二酸化チタン、酸化亜鉛、チタン酸鉛等を挙げることができる。中でも、インク吸収性を向上させる観点から、非晶質シリカを主成分とするものが好ましい。顔料は、その平均粒径が0.01〜9.0μmのものが好ましく、0.01〜8.0μmのものがさらに好ましい。また、そのBET比表面積は100〜400m2/g であることが好ましく、100〜300m2/g であることがさらに好ましい。上記顔料は、単独で用いてもよく、または2種以上を混合して用いてもよい。
【0034】
光沢層に用いられる顔料としては、平均一次粒子径が15〜30nmのシリカ(コロイダルシリカ)と平均一次粒子径が14〜30nmのアルミナが好ましく用いられる。シリカの平均一次粒子径が15nmより小さいか又はアルミナの平均一次粒子径が14nmより小さくなると、インク吸収性が低下するという不都合がある。また、シリカの平均一次粒子径が30nmより大きいか又はアルミナの平均一次粒子径が30nmより大きくなると、光沢度が低下するという不都合な点がある。
【0035】
なお、本発明の効果を損なわない範囲で、光沢層の顔料として、シリカとアルミナ以外の物質を混合することも可能である。具体的な例としては、水酸化アルミニウム、カオリン、タルク、炭酸カルシウム、二酸化チタン、クレー、酸化亜鉛等を挙げることができる。
【0036】
インク受容層および光沢層にはバインダーが含有されていることが好ましく、このようなバインダーとしては、例えば、ポリビニルアルコール、酢酸ビニル、スチレン−ブタジエン共重合体、ポリビニルアセタール、酸化澱粉、エーテル化澱粉、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カゼイン、ゼラチン、大豆蛋白、ポリエチレンイミド系樹脂、ポリビニルヒドリン系樹脂、ポリアクリル酸またはその共重合体、無水マレイン酸共重合体、アクリルアミド系樹脂、アクリル酸エステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリビニルブチラール系樹脂、アルキド樹脂、エポキシ系樹脂、エピクロルヒドリン系樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体、アクリル酸エステル、メタアクリル酸エステルの重合体または共重合体等のアクリル系重合体ラテックス類、エチレン−酢酸ビニル共重合体等のビニル系重合体ラテックス類の樹脂類等を挙げることができる。上記バインダーは単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0037】
本発明のインクジェット記録用紙の最表層は、光沢層である。光沢層を形成する方法としては、インク受容層上に塗工した塗工層を加熱された金属ロールに圧着して乾燥することにより、強光沢を付与することができる。具体的な光沢形成手段としては、その塗工層が湿潤状態にある間に加熱された金属ロールに圧着して乾燥することにより仕上げる方法(ウエットキャスト方式)、またはその塗工層を一旦乾燥させた後、再湿潤し、加熱された金属ロールに圧着して乾燥することにより仕上げる方法(リウエットキャスト方式)、または、加熱された金属ロールに光沢層形成用塗工液を直接塗工して、その塗工層がある程度湿潤状態にある間にインク受容層に圧着して乾燥することにより仕上げる方法(プレキャスト方式)を採用することもできる。
【0038】
インク受容層および光沢層を形成するために用いられる塗工液は、上記顔料およびバインダーを含有している。顔料100重量部に対するバインダーの割合は、10〜20重量部であることが好ましい。バインダーが10重量部未満であると、塗工層の強度が不足する場合がある。一方、バインダーが20重量部を超えると、インク吸収性が損なわれる場合がある。
【0039】
上記塗工液には、必要に応じて種々の助剤を添加することができる。助剤としては、例えば、分散剤、保水剤、増粘剤、消泡剤、防腐剤、染料、耐水化剤、蛍光染料、保存剤、紫外線吸収剤、離型剤、潤滑剤、架橋剤および有機カチオン剤等を挙げることができる。
【0040】
塗工液の塗布方法としては、例えば、エアーナイフ、ロールコーター、バーコーター、コンマコーター、ブレードコーター等の公知の塗工機を用いて塗工することができる。塗工液の塗布量は、固形分換算で、好ましくは5〜40g/m2 であり、さらに好ましくは 10〜30g/m2 である。塗工液の塗布量が5g/m2 未満であると、高光沢を得られ ない場合があり、一方、40g/m2 を超えると、塗工層強度が不足したり、キャスト方 式で光沢処理する際、金属ロール上での乾燥性が悪化し、最表層にピンホールが発生することがある。
【実施例】
【0041】
以下に本発明の実施例を説明するが、本発明は下記実施例に限定されるものでなく、本発明の技術的範囲を逸脱しない範囲において適宜変更と修正が可能である。
【0042】
1.支持体の製造
広葉樹晒クラフトパルプ100重量部に対して、硫酸バンド30重量部、サイズ剤10重量部およびタルク10重量部を配合し、長網抄紙機にて抄造し、サイズプレスにて紙面に澱粉を塗布し、米坪160g/m2 の支持体を得た。
【0043】
2.インク受容層形成用塗工液の調製
(1)成分の配合(重量部:固形分換算)
コロイダルシリカ((株)トクヤマ製の商品名シリカファインシールX45)100部
ポリビニルアルコール(クラレ(株)製の商品名PVA117、重合度1700)
30部
カチオン化樹脂(住友化学(株)製の商品名SR1001) 10部(2)塗工液の調製
上記シリカをホモジナイザーにて固形分が18重量%となるように分散後、残りの薬剤を順次混合し、混合液全体の濃度が17重量%となるように蒸留水で希釈し、インク受容層形成用塗工液を調製した。
【0044】
3.光沢層形成用塗工液の調製
(1)成分の配合(重量部:固形分換算)
《実施例1》
アルミナ(サソール社製の商品名ディスペラルHP14、平均一次粒子径14nm)
10部
アルミナ(サソール社製の商品名ディスペラルHP30、平均一次粒子径30nm) 90部
ポリエチレングリコール(東邦化学工業(株)製の商品名PEG200、分子量=200) 10部
ポリビニルアルコール(クラレ(株)製の商品名PVA117、重合度1700)
20部
《実施例2》
アルミナ(サソール社製の商品名ディスペラルHP14、平均一次粒子径14nm)
20部 アルミナ(サソール社製の商品名ディスペラルHP30、平均一次粒子径30nm)
80部
ポリエチレングリコール(東邦化学工業(株)製の商品名PEG200、分子量=200) 10部
ポリビニルアルコール(クラレ(株)製の商品名PVA117、重合度1700)
20部
《実施例3》
アルミナ(サソール社製の商品名ディスペラルHP14、平均一次粒子径14nm)
30部
アルミナ(サソール社製の商品名ディスペラルHP30、平均一次粒子径30nm)
70部
ポリエチレングリコール(東邦化学工業(株)製の商品名PEG200、分子量=200) 10部
ポリビニルアルコール(クラレ(株)製の商品名PVA117、重合度1700)
20部
《比較例1》
アルミナ(サソール社製の商品名ディスペラルHP30、平均一次粒子径30nm)
100部
ポリエチレングリコール(東邦化学工業(株)製の商品名PEG200、分子量=200) 10部
ポリビニルアルコール(クラレ(株)製の商品名PVA117、重合度1700)
20部
《比較例2》
アルミナ(サソール社製の商品名ディスペラルHP14、平均一次粒子径14nm)
40部
アルミナ(サソール社製の商品名ディスペラルHP30、平均一次粒子径30nm)
60部
ポリエチレングリコール(東邦化学工業(株)製の商品名PEG200、分子量=200) 10部
ポリビニルアルコール(クラレ(株)製の商品名PVA117、重合度1700)
20部
《比較例3》
アルミナ(サソール社製の商品名ディスペラルHP14、平均一次粒子径14nm) 5部 アルミナ(サソール社製の商品名ディスペラルHP30、平均一次粒子径30nm)
95部 ポリエチレングリコール(東邦化学工業(株)製の商品名PEG200、分子量=200) 10部
ポリビニルアルコール(クラレ(株)製の商品名PVA117、重合度1700)
20部
《比較例4》
アルミナ(サソール社製の商品名ディスペラルHP14、平均一次粒子径14nm) 100部
ポリエチレングリコール(東邦化学工業(株)製の商品名PEG200、分子量=200) 10部
ポリビニルアルコール(クラレ(株)製の商品名PVA117、重合度1700)
20部
(2)塗工液の調製
上記した各実施例および各比較例の重量配合比率において、それぞれラボスターラーにて上記薬剤を混合し、混合液全体の濃度が20重量%となるように蒸留水で希釈し、光沢層形成用塗工液を調製した。
【0045】
4.インクジェット記録用紙サンプルの製造
上記インク受容層形成用塗工液を、ワイヤーバーを用いて上記のようにして得られた支持体上に絶乾塗工量10g/m2 で塗工し、スキャッフドライヤーにて乾燥し、インク受 容層を得た。次ぎに、上記光沢層形成用塗工液を、ワイヤーバーを用いてインク受容層上に絶乾塗工量10g/m2 で塗工し、スキャッフドライヤーにて乾燥し、次いで、その乾 燥面を水で再湿潤し、湿潤状態にある間に、クロムメッキを施した100℃に加熱したキャストドラムに圧着して乾燥させて高光沢の鏡面仕上げを行い、実施例1〜3および比較例1〜4のインクジェット記録用紙サンプルを得た。
5.特性の評価
上記のようにして得たインクジェット記録用紙サンプルの「印字濃度」と「印字ムラ・滲み」に関する評価を下記の表1に示す。その評価は、下記方法により行った。
【0046】
評価に用いたプリンターは、セイコーエプソン社製の染料インクプリンター:PM−G800(染料インクはPM−G800純正インク)とセイコーエプソン社製の顔料インクプリンター:PX−7000(顔料インクはPX−7000純正インク)で、評価時の温度は23℃、湿度は50%である。
【0047】
細孔分布曲線のピークの存在する細孔直径と細孔表面積は、水銀ポロシメーターで測定した。
【0048】
《印字濃度》 ブラック、イエロー、マゼンタ、シアンの各色を各インクジェット記録用紙サンプルにベタ印字し(大きさ3.0cm×3.0cm)、印字30分経過後に、Gretag−Macbeth 社製の反射濃度計RD−19Iにより各色の濃度を測定し、その合計測定値をもって印字濃度とした。実用上、印字濃度合計は4.5以上であることが好ましい。
【0049】
《印字ムラ・滲み》 ブラック、イエロー、マゼンタ、シアンの各色を上記のようにしてベタ印字したインクジェット記録用紙サンプルについて、印字30分経過後の印字部を目視にて観察し、以下の基準にて評価した。
【0050】
◎=印字部にムラと滲みは全く見られなかった。
【0051】
○=印字部にムラと滲みは僅かにあったが、気にならない程度であった。実用上、問題のないレベルである。
【0052】
△=印字部にムラと滲みが少しあった。実用上、問題である。
【0053】
×=印字部にムラと滲みが多かった。
【0054】
【表1】

【0055】
表1に明らかなように、本発明の実施例1〜3に係るものは、印字濃度が良好で、印字ムラと滲みに関する問題もない。
【0056】
しかし、比較例1は、光沢層形成顔料が大粒径のアルミナのみからなるので、染料インクで印字した場合の印字濃度が低い。
【0057】
また、比較例2は、大粒径のアルミナの量が本発明の範囲の下限より少ないので(小粒径のアルミナの量が本発明の範囲の上限より多いので)、顔料インクで印字した場合の印字濃度が低く、また、染料インクおよび顔料インクともに印字ムラと滲みが見られた。
【0058】
さらに、比較例3は、大粒径のアルミナの量が本発明の範囲の上限より多いので(小粒径のアルミナの量が本発明の範囲の下限より少ないので)、染料インクの印字濃度が低下した。
【0059】
そして、比較例4は、光沢層形成顔料が小粒径のアルミナのみからなるので、顔料インクで印字した場合の印字濃度が低く、印字ムラと滲みが見られた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体と、その支持体上に形成された少なくとも1層のインク受容層と、そのインク受容層上に形成された光沢層とを備えたインクジェット記録用紙において、アルミナおよび/またはシリカを顔料構成成分として含有する光沢層は一次粒子径が大きい大径成分(A)の顔料と一次粒子径が小さい小径成分(B)の顔料からなり、大径成分Aの平均一次粒子径(D)と小径成分Bの平均一次粒子径(d)の関係は、D≧2dであり、大径成分Aの小径成分Bに対する重量配合比Rは、7/3≦R≦9/1であることを特徴とするインクジェット記録用紙。
【請求項2】
水銀ポロシメーターで測定した細孔分布曲線の少なくとも一つのピークが、細孔直径40〜100nmの範囲に存在し、且つ細孔表面積は15m2/g 以上であることを特徴とする請求項1記載のインクジェット記録用紙。
【請求項3】
アルミナの平均一次粒子径は14〜30nmであり、シリカの平均一次粒子径は15〜30nmであることを特徴とする請求項1または2記載のインクジェット記録用紙。