説明

インクジェット記録用紙

【課題】 光沢感、風合いが共に良く、鮮明な画質を形成するのに好適なインクジェット記録用紙を提供する。
【解決手段】 原紙の少なくとも一方の面に顔料と接着剤とを含む層を有した紙の両面を被膜形成性樹脂で被覆した基体の少なくとも一方の面にインク受像層を設けてなるインクジェット記録用紙において、該記録用紙表面の像鮮明度光沢(ASTM E430規定)が40以上であることを特徴とするインクジェット記録用紙。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はインクジェット記録用紙に関し、特に光沢感、風合いが共に良く、鮮明な画質を形成するのに好適なインクジェット記録用紙に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録方式は、多色化が容易であり、記録速度が比較的高速である上、大版の記録も可能である等の利点を有している。一方、従来から問題となっていたノズルの目詰まりとメンテナンスについては、インクおよび装置の両面から改良が進んでおり、現在では、各種のプリンター、ファクシミリ、コンピューター端末等の種々の分野で広く使用され、急速に普及している。
【0003】
インクジェット記録方式では、近年、インクジェットプリンターの高解像度化に伴ない、いわゆる写真ライクな高画質記録媒体への要求が高まっており、インクジェット用紙としても従来の銀塩写真に類似した高級感のあるものが望まれる。
この点からインクジェット記録用紙は、光沢感、風合いが共に良く、更に像の鮮明性が要求されている。
【0004】
このような光沢感を有する画像材料用支持体として、天然パルプを主成分とし、画像形成層側の面が顔料とバインダーを含む塗被層を設けた紙基質として、画像形成層側の紙基質がフィルム形成能ある樹脂を含む樹脂層(A)で被覆され、その反対側の紙基質がポリエチレン系樹脂を主成分とする樹脂層(B)で被覆され、該天然パルプの繊維長が0.60mm以下、紙基質の密度が1.05g/cm3未満、かつPE系樹脂を主成分とする樹脂層(B)が200m/分以上で被覆された画像材料用支持体が開示されている(特許文献1)。
しかしながら、顔料塗布紙製造時の塗布量、乾燥条件、カレンダー条件等の影響が大きく、本願の条件では必ずしも十分な効果が得られない。
【0005】
また、基体の一方の表面にインク受像層を有し、紙基体の密度を1.05g/cm3以上とし、測定角度60度での光沢度が10%以上である紙基体表面上に、熱可塑性樹脂を含むラミネート層を設け、該層上にインク受像層が積層されているインクジェット記録用紙が開示されている(特許文献2参照。)。
しかしながら、従来の光沢度(JIS法、測定角度60度)では、受像層表面での拡散反射の影響が大きく、目視での光沢感との相関が低く必ずしも目的の品質のものが得られないことが明らかとなった。
【特許文献1】特開2000−19684号公報
【特許文献2】特開2001−301310号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、前記従来における諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。
本発明は、光沢感、風合いが共に良く、鮮明な画質を形成するのに好適なインクジェット記録用紙を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
<1> 原紙の少なくとも一方の面に顔料と接着剤とを含む層を有した基紙の両面を被膜形成性樹脂で被覆した基体の少なくとも一方の面にインク受像層を設けてなるインクジェット記録用紙において、該記録用紙表面の像鮮明度光沢(ASTM E430規定)が40以上であることを特徴とするインクジェット記録用紙。
【0008】
<2> 前記基紙が120℃以上でキャストドラム乾燥されたキャストコート紙であることを特徴とする上記<1>に記載のインクジェット記録用紙。
【0009】
<3> 前記基紙の塗布層面が120〜300℃の表面温度の金属ロールを有するロングニップカレンダーにより処理されたコート紙であることを特徴とする上記<1>に記載のインクジェット記録用紙。
【0010】
<4> 前記被膜形成性樹脂が押し出しコート又は貼り合わせにより基紙に被覆されたことを特徴とする上記<1>〜<3>のいずれか1項に記載のインクジェット記録用紙。
【0011】
<5> 前記像鮮明度光沢50〜70であることを特徴とする上記<1>〜<4>のいずれか1項に記載のインクジェット記録用紙。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、光沢感、風合いが共に良く、かつ鮮明な画質を形成するのに好適なインクジェット記録用紙を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明のインクジェット記録用紙は、原紙の少なくとも一方の面に顔料と接着剤とを含む層を有した基紙の両面を被膜形成性樹脂で被覆した基体の少なくとも一方の面にインク受像層を設け、該記録用紙表面の像鮮明度光沢(ASTM E430規定)が40以上であることを特徴とする。
このような構成とすることにより、高い光沢感が得られ、風合いに優れ、かつ鮮明な画質を形成するのに好適なインクジェット記録用紙を提供することができる。
【0014】
<インクジェット記録用紙>
本発明のインクジェット記録用紙は、基体の一方の面にインク受像層を有する。
該基体は、原紙の少なくと一方の面に顔料及び接着剤を含む塗布層を有する基紙を有し、該基紙の両面に被膜形成性樹脂で被覆してなる。
【0015】
本発明の該インクジェット記録用紙表面の像鮮明度光沢(ASTM E430規定、2003年)は40以上であることが必要であるが、更に50〜70であることが好ましい。
像鮮明度光沢が50未満であると高い光沢感、風合い、及び鮮明な画質のいずれかが不良となる場合があり、70を超えるとフォトライクな風合いが低下する場合がある。
【0016】
前記像鮮明度光沢を40以上とする方法としては、
(1)顔料塗布した記紙の平面性を向上させる。
(2)被覆形成製樹脂で被覆した記体の平面性を向上させる。
(3)原紙の地合を向上させる。
等があり、中でも、(1)、(2)の方法が好ましい。
更に、上記方法を以下に詳細に説明する。
【0017】
(1)顔料と接着剤とを含む層を原紙に設ける際の塗布方法、乾燥方法、カレンダー方法を適正に選定し、コントロールを行なう。例えば、キャストコート、ロングニップカレンダー等を用いる。
(2)上記の基紙の平面性の戻りを起こすことなく、被膜形成性樹脂により基紙を被覆し、更に平面性の向上を行なうドライ法と押し出しコートや貼り合わせが好ましい。
【0018】
前記像鮮明度光沢は、人間の光沢感とより相関がよく、定量的に測定できる。本発明における該像鮮明度光沢は、特殊な変角光度計(像鮮明度光沢計DGM−30型、(株)村上色彩技術研究所製、ASTM E430規定(2003年))により測定して求めたものである。
【0019】
前記基紙の具体例としては、例えば、コート紙、軽量コート紙、キャストコート紙、銀塩写真用支持体等に使用されるバライタ紙等の高光沢性の基紙等が挙げられ、中でも、コート紙及びキャストコート紙が好ましい。
特に、コート紙としては、前記顔料と接着剤とを含む層面が120〜300℃の表面温度の金属ロールを有するロングニップカレンダーにより処理されたコート紙であることも好ましく、特に表面温度の金属ロールが150〜200℃であることが好ましい。
【0020】
前記ロングニップの(シュー)カレンダーは、金属ロールと、合成樹脂ベルトを介したシューロールからなるが50〜270mmの長いニップ幅をとることができ、原紙とロールとの接触面積が増大することから好適である。なお、カレンダー処理は、上記カレンダー処理を、単独でも、組合せても使用できる。
【0021】
カレンダー処理は、カレンダー装置の種類を問わず、画像形成面に金属ロールが接するように通紙し、カレンダリング処理することが好ましく、表面温度120〜300℃の金属ロールに接するように通紙し、カレンダリング処理することがより好ましく、より好ましくは120〜250℃、特に好ましくは150〜220℃である。
前記原紙をカレンダー処理する際のニップ圧としては、例えば、100kN/m以上が好ましく、100〜600kN/mがより好ましい。
【0022】
また、前記キャストコート紙は、特に、キャストドラム(鏡面ロール)で90℃以上で乾燥されたキャストコート紙であることが表面の光沢の点で好ましく、更に100〜130℃で乾燥されたキャストコート紙であることが特に好ましい。
【0023】
前記基紙の塗布層としては、顔料、及び接着剤を含有するが、その他助剤を含むことができる。
該塗布層は、例えば、水系溶媒に溶解・分散して調製した溶液を公知の塗布方法により原紙の少なくとも一方の面に塗布して形成することができる。
該公知の塗布方法としては、例えば、ロールコーター、グラビアコーター、ダイコーター、カーテンコーター、スプレーコーター、ブレードコーター、ロッドコーター、含浸コーター、キャストコーター、エアーナイフコーター等が挙げられる。
【0024】
前記顔料としては、カオリン、(焼成)クレー、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、サチンホワイト、二酸化チタン、水酸化アルミニウム、シリカ、プラスチックピグメント等が挙げられ、中でも、カオリン、炭酸カルシウムであることが好ましい。
前記接着剤としては、澱粉、変性澱粉、カゼイン、ポリビニルアルコール、SBR、MBR等のラテックス、硫酸バリウム等が挙げられる。
前記その他助剤としては、分散剤、消泡剤、潤滑剤、耐水化剤、粘性改良剤、保水剤、防腐剤、染料等が挙げられる。
【0025】
(インク受像層)
前記インク受像層は、平均一次粒子径が20nm以下の無機顔料微粒子、水溶性樹脂、媒染剤、及び架橋剤を少なくとも含んで構成されることが好ましく、必要に応じて、耐光性向上剤等の他の成分を含んでいてもよい。また、インク受像層は、後述のように、WOW法により基体上に形成される態様が好ましい。
【0026】
(無機顔料微粒子)
前記インク受像層は、平均一次粒子径が20nm以下の無水顔料微粒子を含有することが好ましい。
前記無機顔料微粒子としては、例えば、シリカ微粒子、コロイダルシリカ、二酸化チタン、硫酸バリウム、珪酸カルシウム、ゼオライト、カオリナイト、ハロイサイト、雲母、タルク、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸カルシウム、ベーマイト、擬ベーマイト等を挙げることができる。中でも、シリカ微粒子が特に好ましい。
【0027】
前記シリカ微粒子は、比表面積が特に大きいので、インクの吸収性、保持の効率が高く、また、屈折率が低いので、適切な粒子径まで分散を行えば受容層に透明性を付与でき、高い色濃度と良好な発色性が得られるという特徴がある。受容層が透明であることは、OHP等透明性が必要とされる用途のみならず、フォト光沢紙等の記録用紙に適用する場合でも、高い色濃度と良好な発色性を得る観点で重要である。
【0028】
前記無機顔料微粒子の平均一次粒子径としては、更に10nm以下がより好ましく、3〜10nmが最も好ましい。
【0029】
前記シリカ微粒子は、その表面にシノラール基を有し、該シラノール基による水素結合により粒子同士が付着しやすいため、上記のように平均一次粒子径が10nm以下の場合に空隙率の大きい構造を形成することができ、インク吸収特性を効果的に向上させることができる。
【0030】
また、シリカ微粒子は、その製造法により湿式法粒子と乾式法粒子とに大別される。
前記湿式法では、ケイ酸塩の酸分解により活性シリカを生成し、これを適度に重合させ凝集沈降させて含水シリカを得る方法が主流である。一方、乾式法は、ハロゲン化珪素の高温気相加水分解による方法(火炎加水分解法)、ケイ砂とコークスとを電気炉中でアークにより加熱還元気化し、これを空気で酸化する方法(アーク法)により無水シリカを得る方法が主流である。
【0031】
これらの方法で得られる含水シリカ及び無水シリカは、表面のシラノール基の密度、空孔の有無等に相違があり、それぞれ異なった性質を示すが、無水シリカ(無水珪酸)の場合には、特に空隙率が高い三次元構造を形成しやすく特に好ましい。この理由は明らかではないが、含水シリカの場合には、微粒子表面におけるシラノール基の密度が5〜8個/nm2で多く、シリカ微粒子が密に凝集(アグリゲート)し易く、一方、無水シリカの場合には、微粒子表面におけるシラノール基の密度が2〜3個/nm2であり少ないことから疎な軟凝集(フロキュレート)となり、その結果、空隙率が高い構造になるものと推定される。
従って、本発明においては、微粒子表面におけるシラノール基の密度が2〜3個/nm2であるシリカ(シリカ微粒子)を用いることが好ましい。
【0032】
透明性の観点から、シリカ微粒子に組合わせる樹脂の種類が重要となり、無水シリカを用いる場合には、前記水溶性樹脂としては、ポリビニルアルコール(PVA)が好ましく、中でも、鹸化度70〜99%のPVAがより好ましく、鹸化度70〜90%のPVAが最も好ましい。
【0033】
前記PVAは、その構造単位に水酸基を有するが、この水酸基とシリカ微粒子表面のシラノール基が水素結合を形成して、シリカ微粒子の二次粒子を鎖単位とする三次元網目構造を形成しやすくする。該三次元網目構造の形成により、空隙率の高い多孔質構造のインク受像層を形成しうると考えられる。
このようにして得た多孔質のインク受像層は、インクジェット記録において、毛細管現象によって急速にインクを吸収し、インク滲みのない真円性の良好なスポットを形成することができる。
【0034】
無機顔料微粒子(好ましくはシリカ微粒子;i)と水溶性樹脂(p)との含有比〔PB比(i:p)、水溶性樹脂1重量部に対する無機顔料微粒子の重量〕は、インク受像層の膜構造にも大きな影響を与える。即ち、PB比が大きくなると、空隙率、細孔容積、表面積(単位重量当り)が大きくなる。
具体的には、前記PB比(i:p)としては、1.5:1〜10:1が好ましい。前記PB比が10:1を超える、即ち、PB比が大きくなりすぎると、膜強度が低下し、乾燥時にひび割れを生じやすくなることがあり、1.5:1未満、即ちPB比が小さすぎると、空隙が樹脂により塞がれ易くなる結果、空隙率が減少してインク吸収性が低下することがある。
【0035】
インクジェットプリンタの搬送系を通過する場合、記録用紙に応力が加わることがあるので、インク受像層には十分な膜強度を有していることが必要である。更にシート状に裁断加工する場合、インク受像層の割れ、剥がれ等を防止する上でもインク受像層には十分な膜強度を有していることが必要である。
この場合、前記PB比としては5:1以下が好ましく、インクジェットプリンターで高速インク吸収性をも確保する観点からは、2:1以上であることが好ましい。
【0036】
例えば、平均一次粒子径が20nm以下の無水シリカ微粒子と水溶性樹脂とをPB比2:1〜5:1で水溶液中に完全に分散した塗布液を基体上に塗布し、該塗布層を乾燥した場合、シリカ微粒子の二次粒子を鎖単位とする三次元網目構造が形成され、平均細孔径が30nm以下、空隙率が50%以上、細孔比容積0.5ml/g以上、比表面積が100m2/g以上の、透光性の多孔質膜を容易に形成することができる。
【0037】
(水溶性樹脂)
前記水溶性樹脂としては、例えば、親水性構造単位としてヒドロキシル基を有する樹脂である、ポリビニルアルコール(PVA)、カチオン変性ポリビニルアルコール、アニオン変性ポリビニルアルコール、シラノール変性ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、セルロース系樹脂〔メチルセルロース(MC)、エチルセルロース(EC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、カルボキシメチルセルロース(CMC)等〕、キチン類、キトサン類、デンプン;エーテル結合を有する樹脂であるポリエチレンオキサイド(PEO)、ポリプロピレンオキサイド(PPO)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルエーテル(PVE);アミド基又はアミド結合を有する樹脂であるポリアクリルアミド(PAAM)、ポリビニルピロリドン(PVP)等が挙げられる。
また、解離性基としてカルボキシル基を有する、ポリアクリル酸塩、マレイン酸樹脂、アルギン酸塩、ゼラチン類を挙げることができる。
上記の中でも、特にポリビニルアルコール類が好ましい。
【0038】
前記水溶性樹脂の含有量としては、インク受像層の全固形分重量に対して、9〜40重量%が好ましく、16〜33重量%がより好ましい。
前記含有量が、9重量%未満であると、膜強度が低下し、乾燥時にひび割れを生じやすくなることがあり、40重量%を超えると、空隙が樹脂により塞がれ易くなる結果、空隙率が減少してインク吸収性が低下することがある。
【0039】
インク受像層を主として構成する、前記無機顔料微粒子と水溶性樹脂とは、それぞれ単一素材でもよいし、複数の素材の混合系であってもよい。
【0040】
(媒染剤)
前記媒染剤はカチオン性のポリマー(カチオン性媒染剤)を用いることができ、インク受像層中に存在させることにより、アニオン性染料を色材として有する液状インクとの間で相互作用し色材を安定化し、耐水性や経時滲みを向上させることができる。
【0041】
しかし、これを、直接インク受像層を形成するための塗布液に添加すると、シリカ等の、アニオン電荷を有する無機顔料微粒子との間で凝集を生ずる懸念を生ずる場合があるが、独立の別の溶液として調製し塗布する方法を利用すれば、無機顔料微粒子の凝集を懸念する必要はない。よって、本発明においては、後述の架橋剤溶液に含有して用いることが好ましい。
【0042】
前記カチオン性媒染剤としては、カチオン性基として、第1級〜第3級アミノ基、又は第4級アンモニウム塩基を有するポリマー媒染剤が好適に用いられるが、カチオン性の非ポリマー媒染剤も使用することができる。
前記ポリマー媒染剤としては、第1級〜第3級アミノ基及びその塩、又は第4級アンモニウム塩基を有する単量体(媒染モノマー)の単独重合体や、該媒染モノマーと他のモノマー(以下、「非媒染ポリマー」という。)との共重合体又は縮重合体として得られるものが好ましい。また、これらのポリマー媒染剤は、水溶性ポリマー、又は水分散性のラテックス粒子のいずれの形態でも使用できる。
【0043】
前記単量体(媒染モノマー)としては、例えば、トリメチル−p−ビニルベンジルアンモニウムクロライド、トリメチル−m−ビニルベンジルアンモニウムクロライド、トリエチル−p−ビニルベンジルアンモニウムクロライド、トリエチル−m−ビニルベンジルアンモニウムクロライド、N,N−ジメチル−N−エチル−N−p−ビニルベンジルアンモニウムクロライド、N,N−ジエチル−N−メチル−N−p−ビニルベンジルアンモニウムクロライド、N,N−ジメチル−N−n−プロピル−N−p−ビニルベンジルアンモニウムクロライド、N,N−ジメチル−N−n−オクチル−N−p−ビニルベンジルアンモニウムクロライド、N,N−ジメチル−N−ベンジル−N−p−ビニルベンジルアンモニウムクロライド、N,N−ジエチル−N−ベンジル−N−p−ビニルベンジルアンモニウムクロライド、N,N−ジメチル−N−(4−メチル)ベンジル−N−p−ビニルベンジルアンモニウムクロライド、N,N−ジメチル−N−フェニル−N−p−ビニルベンジルアンモニウムクロライド、
【0044】
トリメチル−p−ビニルベンジルアンモニウムブロマイド、トリメチル−m−ビニルベンジルアンモニウムブロマイド、トリメチル−p−ビニルベンジルアンモニウムスルホネート、トリメチル−m−ビニルベンジルアンモニウムスルホネート、トリメチル−p−ビニルベンジルアンモニウムアセテート、トリメチル−m−ビニルベンジルアンモニウムアセテート、N,N,N−トリエチル−N−2−(4−ビニルフェニル)エチルアンモニウムクロライド、N,N,N−トリエチル−N−2−(3−ビニルフェニル)エチルアンモニウムクロライド、N,N−ジエチル−N−メチル−N−2−(4−ビニルフェニル)エチルアンモニウムクロライド、N,N−ジエチル−N−メチル−N−2−(4−ビニルフェニル)エチルアンモニウムアセテート、
【0045】
N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドのメチルクロライド、エチルクロライド、メチルブロマイド、エチルブロマイド、メチルアイオダイド若しくはエチルアイオダイドによる4級化物、又はそれらのアニオンを置換したスルホン酸塩、アルキルスルホン酸塩、酢酸塩若しくはアルキルカルボン酸塩等が挙げられる。
【0046】
具体的には、例えば、トリメチル−2−(メタクリロイルオキシ)エチルアンモニウムクロライド、トリエチル−2−(メタクリロイルオキシ)エチルアンモニウムクロライド、トリメチル−2−(アクリロイルオキシ)エチルアンモニウムクロライド、トリエチル−2−(アクリロイルオキシ)エチルアンモニウムクロライド、トリメチル−3−(メタクリロイルオキシ)プロピルアンモニウムクロライド、トリエチル−3−(メタクリロイルオキシ)プロピルアンモニウムクロライド、トリメチル−2−(メタクリロイルアミノ)エチルアンモニウムクロライド、トリエチル−2−(メタクリロイルアミノ)エチルアンモニウムクロライド、トリメチル−2−(アクリロイルアミノ)エチルアンモニウムクロライド、トリエチル−2−(アクリロイルアミノ)エチルアンモニウムクロライド、トリメチル−3−(メタクリロイルアミノ)プロピルアンモニウムクロライド、トリエチル−3−(メタクリロイルアミノ)プロピルアンモニウムクロライド、トリメチル−3−(アクリロイルアミノ)プロピルアンモニウムクロライド、トリエチル−3−(アクリロイルアミノ)プロピルアンモニウムクロライド、
【0047】
N,N−ジメチル−N−エチル−2−(メタクリロイルオキシ)エチルアンモニウムクロライド、N,N−ジエチル−N−メチル−2−(メタクリロイルオキシ)エチルアンモニウムクロライド、N,N−ジメチル−N−エチル−3−(アクリロイルアミノ)プロピルアンモニウムクロライド、トリメチル−2−(メタクリロイルオキシ)エチルアンモニウムブロマイド、トリメチル−3−(アクリロイルアミノ)プロピルアンモニウムブロマイド、トリメチル−2−(メタクリロイルオキシ)エチルアンモニウムスルホネート、トリメチル−3−(アクリロイルアミノ)プロピルアンモニウムアセテート等を挙げることができる。
その他、共重合可能なモノマーとして、N―ビニルイミダゾール、N―ビニル−2−メチルイミダゾール等も挙げられる。
【0048】
前記非媒染ポリマーとは、第1級〜第3級アミノ基及びその塩、又は第4級アンモニウム塩基等の塩基性あるいはカチオン性部分を含まず、インクジェットインク中の染料と相互作用を示さない、あるいは相互作用が実質的に小さいモノマーをいう。
前記非媒染モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステル;(メタ)アクリル酸シクロヘキシル等の(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステル;(メタ)アクリル酸フェニル等の(メタ)アクリル酸アリールエステル;(メタ)アクリル酸ベンジル等のアラルキルエステル;スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン等の芳香族ビニル類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バーサチック酸ビニル等のビニルエステル類;酢酸アリル等のアリルエステル類;塩化ビニリデン、塩化ビニル等のハロゲン含有単量体;(メタ)アクリロニトリル等のシアン化ビニル;エチレン、プロピレン等のオレフィン類、等が挙げられる。
【0049】
前記(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、アルキル部位の炭素数が1〜18の(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好ましく、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリル等が挙げられる。
中でも、メチルアクリレート、エチルアクリレート、メチルメタアクリレート、エチルメタアクリレート、ヒドロキシエチルメタアクリレートが好ましい。
前記非媒染モノマーも、一種単独で、又は二種以上組合せて使用できる。
【0050】
更に、ポリマー媒染剤として、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド、ポリメタクリロイルオキシエチル−β−ヒドロキシエチルジメチルアンモニウムクロライド、ポリエチレニミン、ポリアリルアミン、ポリアリルアミン塩酸塩、ポリアミド−ポリアミン樹脂、カチオン化でんぷん、ジシアンジアミドホルマリン縮合物、ジメチル−2−ヒドロキシプロピルアンモニウム塩重合物、ポリアミジン、ポリビニルアミン等も好ましいものとして挙げることができる。
【0051】
前記ポリマー媒染剤の分子量としては、1000〜200000が好ましい。前記分子量が1000未満であると、耐水性が不十分となる傾向にあり、200000を超えると、粘度が高くなりすぎてハンドリング適正が低下することがある。
【0052】
前記カチオン性の非ポリマー媒染剤としては、例えば、硫酸アルミニウム、塩化アルミニウム、ポリ塩化アルミニウム、塩化マグネシウム等の水溶性金属塩が好ましい。
【0053】
(架橋剤)
本発明のインクジェット記録用紙のインク受像層は、無機顔料微粒子及び水溶性樹脂を含む塗布層(多孔質層)に、更に架橋剤及び媒染剤を少なくとも含む溶液(架橋剤溶液)が付与され、該架橋剤により前記水溶性樹脂が架橋反応により硬化されることが好ましい。
【0054】
前記架橋剤溶液の付与は、上記多孔質性のインク受像層を形成する塗布液(インク受像層塗布液)が塗布されるのと同時に、あるいはインク受像層塗布液を塗布して形成された塗布層が減率乾燥速度を示すようになる前に、行われることが好ましい。この操作により、塗布層が乾燥する間に発生するひび割れの発生を効果的に防止することができる。即ち、上記塗布液が塗布されたと同時に、あるいは塗布層が減率乾燥速度を示すようになる前に架橋剤溶液が塗布層内に浸透し、塗布層内の水溶性樹脂と速やかに反応し、水溶性樹脂をゲル化(硬化)させることにより、塗布層の膜強度を即時に大幅に向上させる。
【0055】
前記水溶性樹脂を架橋しうる架橋剤としては、インク受像層に用いられる水溶性樹脂との関係で好適な物を適宜選択すればよいが、中でも、架橋反応が迅速である点から、硼素化合物が好ましく、例えば、硼砂、硼酸、硼酸塩(例えば、オルト硼酸塩、InBO3、ScBO3、YBO3、LaBO3、Mg3(BO32 、Co3(BO32、二硼酸塩(例えば、Mg225、Co225)、メタ硼酸塩(例えば、LiBO2、Ca(BO22、NaBO2、KBO2)、四硼酸塩(例えば、Na247・10H2O)、五硼酸塩(例えば、KB58・4H2 O、Ca2611・7H2O、CsB55)、グリオキザール、メラミン・ホルムアルデヒド(例えば、メチロールメラミン、アルキル化メチロールメラミン)、メチロール尿素、レゾール樹脂、ポリイソシアネート、エポキシ樹脂等を挙げることができる。中でも、速やかに架橋反応を起こす点で、硼砂、硼酸、硼酸塩が好ましく、特に水溶性樹脂としてポリビニルアルコールと組合わせて使用することがより好ましい。
【0056】
前記水溶性樹脂としてゼラチンを用いる場合には、ゼラチンの硬膜剤として知られている、下記化合物を架橋剤として用いることができる。例えば、ホルムアルデヒド、グリオキザール、グルタールアルデヒド等のアルデヒド系化合物;ジアセチル、シクロペンタンジオン等のケトン系化合物;ビス(2−クロロエチル尿素)−2−ヒドロキシ−4,6−ジクロロ−1,3,5−トリアジン、2,4−ジクロロ−6−S−トリアジン・ナトリウム塩等の活性ハロゲン化合物;ジビニルスルホン酸、1,3−ビニルスルホニル−2−プロパノール、N,N’−エチレンビス(ビニルスルホニルアセタミド)、1,3,5−トリアクリロイル−ヘキサヒドロ−S−トリアジン等の活性ビニル化合物;ジメチロ−ル尿素、メチロールジメチルヒダントイン等のN−メチロール化合物;
【0057】
1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート等のイソシアネート系化合物;米国特許明細書第3017280号、同第2983611号に記載のアジリジン系化合物;米国特許明細書第3100704号に記載のカルボキシイミド系化合物;グリセロールトリグリシジルエーテル等のエポキシ系化合物;1,6−ヘキサメチレン−N,N’−ビスエチレン尿素等のエチレンイミノ系化合物;ムコクロル酸、ムコフェノキシクロル酸等のハロゲン化カルボキシアルデヒド系化合物;2,3−ジヒドロキシジオキサン等のジオキサン系化合物;クロム明ばん、カリ明ばん、硫酸ジルコニウム、酢酸クロム等である。
尚、前記架橋剤は、一種単独でも、2種以上を組合わせてもよい。
【0058】
前記架橋剤溶液は、架橋剤を水及び/又は有機溶剤に溶解して調製される。
架橋剤溶液中の架橋剤の濃度としては、架橋剤溶液の重量に対して、0.05〜10重量%が好ましく、0.1〜7重量%が特に好ましい。
架橋剤溶液を構成する溶媒としては、一般に水が使用され、該水と混和性の有機溶媒を含む水系混合溶媒であってもよい。
前記有機溶剤としては、架橋剤が溶解するものであれば任意に使用することができ、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、グリセリン等のアルコール;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン;酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル;トルエン等の芳香族溶剤;テトラヒドロフラン等のエーテル、及びジクロロメタン等のハロゲン化炭素系溶剤等を挙げることができる。
【0059】
(他の成分)
インク受像層は、主として上記無機顔料微粒子と水溶性樹脂とからなるが、その他必要に応じて、下記成分を含んでいてもよい。
色材の劣化を抑制する目的で、各種の紫外線吸収剤、酸化防止剤、一重項酸素クエンチャー等を含んでいてもよい。
前記紫外線吸収剤としては、桂皮酸誘導体、ベンゾフェノン誘導体、ベンゾトリアゾリルフェノール誘導体等が挙げられる。例えば、α−シアノ−フェニル桂皮酸ブチル、o−ベンゾトリアゾールフェノール、o−ベンゾトリアゾール−p−クロロフェノール、o−ベンゾトリアゾール−2,4−ジ−t−ブチルフェノール、o−ベンゾトリアゾール−2,4−ジ−t−オクチルフェノール等が挙げられる。ヒンダートフェノール化合物も紫外線吸収剤として使用でき、具体的には少なくとも2位又は6位のうち1ヵ所以上が分岐アルキル基で置換されたフェノール誘導体が好ましい。
【0060】
また、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、サリチル酸系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤、オキザリックアシッドアニリド系紫外線吸収剤等も使用できる。例えば、特開昭47−10537号、同58−111942号、同58−212844号、同59−19945号、同59−46646号、同59−109055号、同63−53544号、特公昭36−10466号、同42−26187号、同48−30492号、同48−31255号、同48−41572号、同48−54965号、同50−10726号、米国特許第2,719,086号、同3,707,375号、同3,754,919号、同4,220,711号等に記載されている。
【0061】
蛍光増白剤も紫外線吸収剤として使用でき、例えば、クマリン系蛍光増白剤等が挙げられる。具体的には、特公昭45−4699号、同54−5324号等に記載されている。
【0062】
前記酸化防止剤としては、ヨーロッパ公開特許第223739号公報、同309401号公報、同309402号公報、同310551号公報、同第310552号公報、同第459416号公報、ドイツ公開特許第3435443号公報、特開昭54−48535号公報、同60−107384号公報、同60−107383号公報、同60−125470号公報、同60−125471号公報、同60−125472号公報、同60−287485号公報、同60−287486号公報、同60−287487号公報、同60−287488号公報、同61−160287号公報、同61−185483号公報、同61−211079号公報、同62−146678号公報、同62−146680号公報、同62−146679号公報、同62−282885号公報、同62−262047号公報、同63−051174号公報、同63−89877号公報、同63−88380号公報、同66−88381号公報、同63−113536号公報、
【0063】
同63−163351号公報、同63−203372号公報、同63−224989号公報、同63−251282号公報、同63−267594号公報、同63−182484号公報、特開平1−239282号公報、特開平2−262654号公報、同2−71262号公報、同3−121449号公報、同4−291685号公報、同4−291684号公報、同5−61166号公報、同5−119449号公報、同5−188687号公報、同5−188686号公報、同5−110490号公報、同5−1108437号公報、同5−170361号公報、特公昭48−43295号公報、同48−33212号公報、米国特許第4814262号、同第4980275号公報等に記載のものが挙げられる。
【0064】
具体的には、6−エトキシ−1−フェニル−2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン、6−エトキシ−1−オクチル−2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン、6−エトキシ−1−フェニル−2,2,4−トリメチル−1,2,3,4−テトラヒドロキノリン、6−エトキシ−1−オクチル−2,2,4−トリメチル−1,2,3,4,−テトラヒドロキノリン、シクロヘキサン酸ニッケル、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2−エチルヘキサン、2−メチル−4−メトキシ−ジフェニルアミン、1−メチル−2−フェニルインドール等が挙げられる。
【0065】
前記耐光性向上剤は、単独でも2種以上を併用してもよい。この耐光性向上剤は、水溶性化、分散、エマルジョン化してもよく、マイクロカプセル中に含ませることもできる。
前記耐光性向上剤の添加量としては、インク受像層塗布液の0.01〜10重量%が好ましい。
【0066】
また、無機顔料微粒子の分散性を高める目的で、各種無機塩類、pH調整剤として酸やアルカリ等を含んでいてもよい。
更に、塗布適性や表面品質を高める目的で各種の界面活性剤を、表面の摩擦帯電や剥離帯電を抑制する目的で、イオン導電性を持つ界面活性剤や電子導電性を持つ金属酸化物微粒子を、表面の摩擦特性を低減する目的で各種のマット剤を含んでいてもよい。
【0067】
−インクジェット記録用紙の作製:WOW法−
既述のように、インク受像層には、前記架橋剤溶液を付与する過程で媒染剤と架橋剤が導入されることが好適である。即ち、インク受像層は、平均一次粒子径20nm以下の無機顔料微粒子と水溶性樹脂とを含有するインク受像層塗布液を塗布し、該塗布と同時に、又は形成された塗布層の乾燥途中であって該塗布層が減率乾燥速度を示すようになる前に、該塗布層に水溶性樹脂を架橋させうる架橋剤と媒染剤とを含有する溶液を付与した後、該溶液を付与した塗布層を架橋硬化させる方法(WOW法;Wet On Wet法)により形成されることが好ましい。
【0068】
また、本発明のインクジェット記録用紙のインク受像層は、無機顔料微粒子及び水溶性樹脂を含む塗布液と、架橋剤を含む溶液とを、架橋剤と反応しない材料からなるバリアー液(但し、架橋剤を含む溶液若しくはバリアー液の少なくとも一方に媒染剤を含有させる。)を挟んだ状態で基体(支持体)上に同時塗布し、硬化させることにより得ることもできる。
【0069】
上記のように、本発明においては、架橋剤と共に媒染剤を同時塗布することにより、インク受像層の耐水性を向上させている。即ち、前記媒染剤をインク受像層用の塗布液に添加すると、該媒染剤はカチオン性であるので、シリカ等の、表面にアニオン電荷を持つ無機顔料微粒子との共存下では凝集を生ずる場合があるが、媒染剤を含む溶液とインク受像層用の塗布液とをそれぞれを独立に調製し、個々に塗布する方法を採用すれば、無機顔料微粒子の凝集を考慮する必要がなく、媒染剤の選択範囲が広がる。
【0070】
本発明において、無機顔料微粒子と水溶性樹脂とを少なくとも含んでなるインク受像層用の塗布液(以下、「インク受像層塗布液」ということがある。)は、例えば、以下のようにして調製できる。
即ち、平均一次粒子径20nm以下のシリカ微粒子を水中に添加して(例えば、10〜20重量%)、高速回転湿式コロイドミル(例えば、クレアミックス(エム・テクニック(株)製))を用いて、例えば10000rpm(好ましくは5000〜20000rpm)の高速回転の条件で20分間(好ましくは10〜30分間)分散させた後、ポリビニルアルコール水溶液(例えば、シリカの1/3程度の重量のPVAとなるように)を加え、更に上記と同じ回転条件で分散を行うことにより調製することができる。得られた塗布液は均一ゾルであり、これを下記塗布方法で基体(支持体)上に塗布形成することにより、三次元網目構造を有する多孔質性のインク受像層を形成することができる。
前記インク受像層塗布液には、必要に応じて、更に界面活性剤、pH調整剤、帯電防止剤等を添加することもできる。
【0071】
インク受像層塗布液の塗布は、例えば、エクストルージョンダイコータ、エアードクターコータ、ブレッドコータ、ロッドコータ、ナイフコータ、スクイズコータ、リバースロールコータ、バーコータ等の公知の塗布方法により行うことができる。
【0072】
インク受像層用塗布液を塗布した後、該塗布層に架橋剤溶液が付与されるが、該架橋剤溶液は、塗布後の塗布層が減率乾燥速度を示すようになる前に付与してもよい。即ち、インク受像層用塗布液の塗布後、この塗布層が恒率乾燥速度を示す間に架橋剤と媒染剤とを導入することで好ましく製造される。
ここで、「塗布層が減率乾燥速度を示すようになる前」とは、通常、インク受像層塗布液の塗布直後から数分間を指し、この間においては、塗布された塗布層中の溶剤の含有量が時間に比例して減少する現象である恒率乾燥速度を示す。該恒率乾燥速度を示す時間については、化学工学便覧(p.707〜712、丸善(株)発行、昭和55年10月25日)に記載されている。
【0073】
上記の通り、インク受像層塗布液の塗布後、その塗布層が減率乾燥速度を示すようになるまで乾燥されるが、該乾燥は一般に50〜180℃で0.5〜10分間(好ましくは、0.5〜5分間)行われる。この乾燥時間としては、当然塗布量により異なるが上記範囲が適当である。
【0074】
前記塗布層が減率乾燥速度を示すようになる前に付与する方法としては、(1)架橋剤溶液を塗布層上に更に塗布する方法、(2)スプレー等の方法により噴霧する方法、(3)架橋剤溶液中に、該塗布層が形成された基体(支持体)を浸漬する方法、等が挙げられる。
【0075】
上記方法(1)において、架橋剤溶液を塗布する塗布方法としては、例えば、カーテンフローコータ、エクストルージョンダイコータ、エアードクターコーター、ブレッドコータ、ロッドコータ、ナイフコータ、スクイズコータ、リバースロールコータ、バーコータ等の公知の塗布方法を利用することができる。しかし、エクストリュージョンダイコータ、カーテンフローコータ、バーコータ等のように、既に形成されている塗布層にコータが直接接触しない方法を利用することが好ましい。
【0076】
インク受像層上に付与する、架橋剤と媒染剤とを少なくとも含有する塗布液(架橋剤溶液)の塗布量としては、架橋剤換算で0.01〜10g/m2が一般的であり、0.05〜5g/m2が好ましい。
【0077】
該架橋剤溶液の付与後は、一般に40〜180℃で0.5〜30分間加熱され、乾燥及び硬化が行われる。中でも、40〜150℃で1〜20分間加熱することが好ましい。
例えば、前記架橋剤溶液中に含有する架橋剤として硼砂や硼酸を使用する場合には、60〜100℃での加熱を5〜20分間行うことが好ましい。
【0078】
また、前記架橋剤塗布液は、インク受像層塗布液を塗布すると同時に付与してもよい。
この場合、インク受像層塗布液及び架橋剤と媒染剤とを含む架橋剤溶液を、該インク受像層塗布液が基体(支持体)と接触するようにして基体(支持体)上に同時塗布(重層塗布)し、その後乾燥硬化させることによりインク受像層を形成することができる。
【0079】
上記同時塗布(重層塗布)は、例えば、エクストルージョンダイコータ、カーテンフローコータを用いた塗布方法により行うことができる。同時塗布の後、形成された塗布層は乾燥されるが、この場合の乾燥は、一般に塗布層を40〜150℃で0.5〜10分間加熱することにより行われ、好ましくは、40〜100℃で0.5〜5分間加熱することにより行われる。
例えば、架橋剤溶液に含有する架橋剤として硼砂や硼酸を使用する場合は、60〜100℃で5〜20分間加熱することが好ましい。
【0080】
上記同時塗布(重層塗布)を、例えば、エクストルージョンダイコータにより行った場合、同時に吐出される二種の塗布液は、エクストルージョンダイコータの吐出口附近で、即ち、基体(支持体)上に移る前に重層形成され、その状態で基体(支持体)上に重層塗布される。塗布前に重層された二層の塗布液は、基体(支持体)に移る際、既に二液の界面で架橋反応を生じ易いことから、エクストルージョンダイコータの吐出口付近では、吐出される二液が混合して増粘し易くなり、塗布操作に支障を来す場合がある。従って、上記のように同時塗布する際は、インク受像層塗布液及び架橋剤と媒染剤とを含有する架橋剤溶液の塗布と共に、更に架橋剤と反応しない材料からなるバリアー層液(中間層液)を前記二液間に介在させて同時三重層塗布することが好ましい。
【0081】
前記バリアー層液は、架橋剤と反応せず液膜を形成できるものであれば、特に制限なく選択できる。例えば、架橋剤と反応しない水溶性樹脂を微量含む水溶液や、水等を挙げることができる。前記水溶性樹脂は、増粘剤等の目的で、塗布性を考慮して使用されるもので、例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロ−ス、メチルセルロ−ス、ヒドロキシエチルメチルセルロ−ス、ポリビニルピロリドン、ゼラチン等のポリマーが挙げられる。
尚、バリアー層液には、前記媒染剤を含有させることもできる。
【0082】
基体(支持体)上にインク受像層を形成した後、該インク受像層は、例えば、スーパーカレンダ、グロスカレンダ等を用い、加熱加圧下にロールニップ間を通してカレンダー処理を施すことにより、表面平滑性、光沢度、透明性及び塗膜強度を向上させることが可能である。しかしながら、該カレンダー処理は、空隙率を低下させる要因となることがあるため(即ち、インク吸収性が低下することがあるため)、空隙率の低下が少ない条件を設定して行う必要がある。
【0083】
カレンダー処理を行う場合のロール温度としては、30〜150℃が好ましく、40〜100℃がより好ましい。
また、カレンダー処理時のロール間の線圧としては、50〜400kg/cmが好ましく、100〜200kg/cmがより好ましい。
【0084】
前記インク受像層の層厚としては、インクジェット記録の場合では、液滴を全て吸収するだけの吸収容量をもつ必要があるため、層中の空隙率との関連で決定する必要がある。例えば、インク量が8nL/mm2で、空隙率が60%の場合であれば、層厚が約15μm以上の膜が必要となる。
この点を考慮すると、インクジェット記録の場合には、インク受像層の層厚としては、10〜50μmが好ましい。
【0085】
また、インク受像層の細孔径は、メジアン径で0.005〜0.030μmが好ましく、0.01〜0.025μmがより好ましい。
前記空隙率及び細孔メジアン径は、水銀ポロシメーター(商品名:ボアサイザー9320−PC2、(株)島津製作所製)を用いて測定することができる。
【0086】
また、インク受像層は、透明性に優れていることが好ましいが、その目安としては、インク受像層を透明フイルム基体(支持体)上に形成したときのヘイズ値が、30%以下であることが好ましく、20%以下であることがより好ましい。
前記ヘイズ値は、ヘイズメーター(HGM−2DP:スガ試験機(株))を用いて測定することができる。
【0087】
基体(支持体)上には、インク受像層と基体(支持体)との間の接着性を高めたり、電気抵抗を調整する等の目的で、下塗層を設けてもよい。
尚、インク受像層は、基体(支持体)の片面のみに設けてもよいし、カール等の変形を抑制する等の目的で、基体(支持体)の両面に設けてもよい。インク受像層を基体(支持体)の片面のみに設ける場合は、その反対側の表面、あるいはその両面に、光透過性を高める目的で反射防止膜を設けることもできる。
【0088】
(被膜形成性樹脂層)
前記被膜形成性樹脂層は基紙の両面に設けられ、少なくとも被膜形成性樹脂を含んでなる。該層は必要に応じて、他の成分を含有していてもよい。
該層は、光沢性の向上の目的で基紙とインク受像層との間に設けることにより、インク受像層上の表面反射像がシャープに映るような、画像上の観察位置に依存しない光沢感(艶やかさ、平滑さ)を持つインク受像層を形成することができる。
【0089】
前記被膜形成性樹脂としては、ポリオレフィン樹脂が好ましい。該ポリオレフィン樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリペンテン等のホモポリマー;エチレン−ブチレン共重合体等のα−オレフィンの2つ以上からなる共重合体、及びこれらの混合物等が挙げられ、特に溶融押出コーティング性、及び基紙との接着性の観点から、ポリエチレン系樹脂が特に好ましい。
【0090】
前記ポリエチレン系樹脂としては、例えば、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、エチレンとプロピレン、ブチレン等のα−オレフィンとの共重合体、カルボキシ変性ポリエチレン等、及びこれらの混合物等が挙げられ、各種の密度、メルトフローレート(以下、単に「MFR」と略記する。)、分子量、分子量分布のものが使用できるが、通常、密度が0.90〜0.97g/cm3の範囲、MFRが0.1〜50g/10分、好ましくは、MFRが0.3〜40g/10分の範囲のものを単独で、あるいは混合して好適に使用できる。
【0091】
前記被膜形成性樹脂層の層厚としては、4〜100μmが有用であるが、6〜50μmが好ましく、9〜35μmが特に好ましい。
【0092】
ポリオレフィン樹脂には、画像の解像力を増す目的で、二酸化チタンを含有させることが好ましい。該二酸化チタンとしては、硫酸法によるもの、塩素法によるもの、ルチル型のもの、アナターゼ型のもの、含水金属酸化物で表面処理したもの、有機化合物で表面処理したもの等の各種二酸化チタンが挙げられる。
【0093】
基紙の表面に、被膜形成性樹脂層として、ポリオレフィン樹脂(好ましくはポリエチレン系樹)を被覆する方法としては、いずれの方法も用いることができるが、中でも、平面性の点で、走行する基紙上に樹脂又は添加剤を含有する樹脂組成物を溶融押出機を用いて、そのスリットダイからフィルム状に流延して被覆する、いわゆる溶融押出コーティング法により被覆する方法、或いは樹脂又は添加剤を含有する樹脂組成物をフィルム状に形成したポリオレフィン樹脂(好ましくはポリエチレン系樹脂)を前記基紙の両面にドライラミネーション装置を用いて貼り合わせて、被膜形成樹脂層を形成する等の方法が好ましい。
【0094】
前記被膜形成性樹脂層には、各種添加剤を含有させることができる。該添加剤としては、前記二酸化チタンの他、酸化亜鉛、タルク、炭酸カルシウム等の白色顔料;二酸化チタン顔料及びその他の顔料の分散剤;離型剤として、ステアリン酸アミド、アラキジン酸アミド等の脂肪酸アミド、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸マグネシウムや、パルミチン酸亜鉛、ミリスチン酸亜鉛、パルミチン酸カルシウム等の脂肪酸金属塩;特開平1−105245号公報に記載の、ヒンダードフェノール、ヒンダードアミン、リン系、硫黄系等の各種酸化防止剤;コバルトブルー、群青、セリアンブルー、フタロシアニンブルー等のブルー系の顔料や染料;コバルトバイオレット、ファストバイオレット、マンガンバイオレット等のマゼンタ系の顔料や染料;特公平4−2175号公報に記載の、キナクリドン系赤味顔料;特開平2−254440号公報に記載の、蛍光増白剤、紫外線吸収剤、等が挙げられ、適宜組合わせて含有させることができる。
【0095】
前記添加剤は、被膜形成性樹脂層形成用の樹脂組成物中に併用するか、或いは、別途調製した樹脂のマスターバッチ又はコンパウンドとして含有させるのが好ましい。
【0096】
以上より、単にインク受像層表面に光沢があるというだけでなく、インク受像層上で反射して映る表面反射像が鮮鋭にすっきりと見えるような艶やかさ、平滑性を備えた、写真ライクな光沢感を実現することができる。しかも、インク受像層が無機顔料微粒子を含んで空隙率50〜80%の三次元網目構造からなり、良好なインク吸収性を示し高解像度で高濃度な画像が形成できると共に、高温高湿環境下での経時滲みも抑制され、形成された画像も高い耐光性、耐水性を示すといった、優れたインク受容性能をも同時に確保することができる。
【実施例】
【0097】
以下に、本発明の実施例を説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。なお、以下において「%」及び「部」は、特に断らない限り、「質量%」及び「質量部」を表す。
【0098】
<実施例1>
[原紙の作製]
パルプ試料として、LBKP100部からなる木材パルプをダブルディスクリファイナー(刃型、クリアランスを適宜調節した)によりカナディアンフリーネス300mlまで叩解し、エポキシ化ベヘン酸アミド0.5部、アニオンポリアクリアミド1.0部、ポリアミドポリアミンエピクロルヒドリン0.1部及びカチオンポリアクリルアミド0.5部を対パルプ絶乾質量比で添加し、更に填料として炭酸カルシウム15部(パルプのスラリー中での含有率(固形分含有率):12.8%)を添加し、長網抄紙機を用いて坪量150g/m2となるように抄紙し原紙を得た。
【0099】
[顔料塗布紙(基紙)の作成]
(コート層の形成)
得られた原紙の両面に、下記成分からなる塗布液をインラインにて、固形分量で20g/m2塗布・乾燥し、原紙の両面にコート層(塗布層)を形成した。
【0100】
<コート層用塗布液A>
(1)炭酸カルシウム 50部
(2)クレイ(製品名:サテントン5HB、林化成(株)製) 50部
(3)MBRラテックス(製品名:ナルスターMR−170、日本エーアンドエル(株)製、45%) 12部
(4)ポリビニルアルコール(製品名:PVA−10、クラレ(株)製、10%水溶液) 5部
(5)イオン交換水 100部
【0101】
(カレンダー処理)
得られたコート層を形成した基紙は、表1の条件の金属ロール温度、ニップ圧にてロングニップカレンダー処理を行い密度を1.03g/m3に調整して顔料塗布紙を得た。
【0102】
[樹脂被覆紙(基体)の作成]
前記カレンダー処理を施した顔料塗布紙のフェルト面(表面)、ワイヤー面(裏面)の両面に、コロナ放電処理を行った後、アナターゼ型酸化チタン13.6部及び微量の群青を含有した高密度ポリエチレン70部と、低密度ポリエチレン30部とを熱溶融押出機にて20μmとなるようにコーティングし、光沢面からなる樹脂被覆紙(基体)を作成した。
【0103】
[インクジェット記録用紙の作製]
下記組成中の(1)及び(2)を混合し、高速回転式コロイドミル(クレアミックス、エム・テクニック(株)製)を用いて、回転数10000rpmで20分間分散させた後、下記(3)1Nアンモニア水と、下記(4)ポリビニルアルコール9%水溶液とを加え、更に上記と同一条件で分散を行い、インク受像層塗布液を調製した。
シリカ微粒子と水溶性樹脂との重量比(PB比/(1):(4))は、3.5:1であった。
【0104】
<インク受像層塗布液の組成>
(1)シリカ微粒子 9.9部
(平均一次粒子径7nm;アエロジル300、日本アエロジル(株)製)
(2)イオン交換水 72.6部
(3)1Nアンモニア水(pH調整剤) 5.3部
(4)ポリビニルアルコール9%水溶液(水溶性樹脂) 31.4部
(PVA420、(株)クラレ製、鹸化度81.8%、重合度2000)
【0105】
上記より得たインク受像層塗布液を、前記基体(1)のフェルト面にエクストルージョンダイコーターを用いて200ml/m2の塗布量で塗布し(塗布工程)、熱風乾燥機にて80℃(風速3〜8m/sec)で塗布層の固形分濃度が20%になるまで乾燥させた。塗布層は、この期間恒率乾燥速度を示した。その直後、下記組成の架橋剤溶液に30秒浸漬して該塗布層上にその20g/m2を付着させ(架橋剤溶液を付与する工程)、更に80℃下で10分間乾燥させた(乾燥工程)。これより、基体(支持体)の硼砂処理を施した側の表面に、乾燥膜厚32μmのインク受像層が設けられた、本発明のインクジェット記録用紙を作製した。
【0106】
〔架橋剤溶液の組成〕
(1)硼砂6% 25部
(2)界面活性剤10%水溶液 2部
(F−144D、大日本インキ化学工業(株)製)
(3)イオン交換水 68.3部
(4)ポリアリルアミン20%水溶液 3部
(媒染剤、分子量5000)
(5)ポリフィックス700 1.7部
(昭和高分子(株)製)
【0107】
<実施例2>
実施例1の[顔料塗布紙の作成]において、塗布量、金属ロール温度を表1の通りに変更し、[樹脂被覆紙の作成]において、被覆樹脂、樹脂被覆方法及び厚さを表1の通りに変更した以外は、実施例1と同様に行ってインクジェット記録用紙を得た。
【0108】
<実施例3>
実施例1の[顔料塗布紙の作成]において、塗布量、カレンダー処理方法、金属ロール温度を表1の通りに変更した以外は、実施例1と同様に行ってインクジェット記録用紙を得た。
【0109】
<実施例4>
実施例3の[顔料塗布紙の作成]において、塗布量、金属ロール温度を表1の通りに変更した以外は、実施例3と同様に行ってインクジェット記録用紙を得た。
【0110】
<実施例5>
実施例1の(コート層の形成)において乾燥をせずに、[顔料塗布紙の作成]において、塗布液、塗布量、及びカレンダー処理方法、金属ロール温度、ニップ圧を表1の通りに変更し、[樹脂被覆紙の作成]において、被覆方法、厚さを表1の通りに変更した以外は、実施例1と同様に行ってインクジェット記録用紙を得た。コート層用塗布液Bは下記に示す。
【0111】
<コート層用塗布液B>
(1)クレイ(製品名:サテントン5HB、林化成(株)製) 80部
(2)アクリル中空ポリマー(製品名:SX866、JSR(株)製) 20部
(3)カゼイン(製品名:カゼイン、三井物産(株)製) 12部
(4)ウレタンラテックス(製品名:スーパーフレックス170、第一工業製薬(株)製、33%) 5部
(5)ロート油(製品名:ロート油48、佐藤製油(株)製、50%) 1部
(6)イオン交換水 100部
【0112】
<実施例6>
実施例5の[顔料塗布紙の作成]において、塗布量を表1の通りに変更し、[樹脂被覆紙の作成]において、被覆方法、厚さを表1の通りに変更した以外は、実施例5と同様に行ってインクジェット記録用紙を得た。
【0113】
<比較例1>
実施例1の[顔料塗布紙の作成]において、塗布量、カレンダー処理方法、金属ロール温度を表1の通りに変更した以外は、実施例1と同様に行ってインクジェット記録用紙を得た。
【0114】
<比較例2>
比較例1の[顔料塗布紙の作成]において、塗布量、カレンダー処理方法、金属ロール温度を表1の通りに変更し、[樹脂被覆紙の作成]において、厚さを表1の通りに変更した以外は、比較例1と同様に行ってインクジェット記録用紙を得た。
【0115】
<比較例3>
実施例1の[顔料塗布紙の作成]において、塗布量、カレンダー処理方法を表1の通りに変更し、[樹脂被覆紙の作成]において、厚さを表1の通りに変更した以外は、実施例1と同様に行ってインクジェット記録用紙を得た。
【0116】
<比較例4>
実施例1の[顔料塗布紙の作成]において、塗布液、塗布量、カレンダー処理方法を表1の通りに変更し、[樹脂被覆紙の作成]において、厚さを表1の通りに変更した以外は、実施例1と同様に行ってインクジェット記録用紙を得た。
【0117】
<比較例5>
実施例1の[顔料塗布紙の作成]において、表1の通りに変更し、[樹脂被覆紙の作成]において、厚さを表1の通りに変更した以外は、実施例1と同様に行ってインクジェット記録用紙を得た。
【0118】
<比較例6>
比較例5の[樹脂被覆紙の作成]において、厚さを表1の通りに変更した以外は、比較例1と同様に行ってインクジェット記録用紙を得た。
【0119】
<比較例7>
実施例1において、樹脂被覆紙に代えて表1の通りに変更した以外は、実施例1と同様に行ってインクジェット記録用紙を得た。
【0120】
<比較例8>
実施例1において、樹脂被覆紙に代えて表1の通りに変更した以外は、実施例1と同様に行ってインクジェット記録用紙を得た。
【0121】
(評価)
上記より得られた実施例及び比較例のインクジェット記録用紙のそれぞれについて、以下の評価を行った。評価結果は、下記表1に示す。
【0122】
(1)像鮮明度光沢
印画前のインクジェット記録用紙のインク受像層表面における像鮮明度光沢を像鮮明度光沢計(DGM−30,(株)村上色彩技術研究所製,ASTM E430(2003)に準拠)にて測定した。数値が高い程良好であることを示す。
【0123】
(2)光沢(度)
印画前のインクジェット記録用紙のインク受像層表面における測定角度20度での光沢(度)を、デジタル変角光沢度計(UGV−50DP,スガ試験機(株)製)にて測定した。また、測定値から、下記基準に従い評価を行った。
〔基準〕
A: インク受像層上の表面反射像がシャープで艶やかな、写真ライクな光沢感を有していた(≧15%)。
B: 表面反射像のシャープさ、艶やかさに若干欠けるが、比較的高い光沢感を有していた(10〜15%)。
C: 表面反射像のシャープさに欠け、良好な光沢感が認められなかった(≦10%)。
【0124】
(3)風合い
上記で得られたインクジェット記録用紙に対して、現在、高級記録紙として評価されている銀塩写真印画紙(製品名:フジカラーペーパーFA−P、富士写真フイルム(株)製)の風合いと目視による比較をした。
これを下記基準にしたがって評価した。
[基準]
A:銀塩写真印画紙と同様以上であり、非常に良好であった。
B:銀塩写真印画紙に近いレベルであり、良好であった。
C:記録用紙としては支障を来さない程度の風合いを有するものの、充分な程度ではなかった。
D:記録用紙としての風合いは悪かった。
【0125】
(4)画質
上記で得られたインクジェット記録用紙に対して、セイコーエプソン(株)製のインクジェットプリンタPM−970Cを用いて人物、風景の画像を印画し、これを目視観察して下記基準にしたがって評価した。
A:画像は輝き感や奥行き感を有して鮮やかで鮮鋭であり、画像品質は非常に良好であった。
B:画像はある程度の輝き感や奥行き感、鮮やかさ、鮮鋭さを有し、画像品質は良好であった。
C:画像は支障を来さない程度の画像品質を有するものの、充分な程度ではなかった。
D:画像の品質は悪かった。
【0126】
【表1】

【0127】
表1から明らかな通り、像鮮明度光沢を40以上とすることにより、光沢、風合い、画質ともに良好となっていることが実施例及び比較例との比較により分かる。特にロングニップカレンダー処理を行っている実施例1及び2、並びに、キャストドラムで乾燥されたキャストコート紙を用いた実施例5及び6は、いずれの評価においても良好であることが分かる。
一方、比較例7,8の像鮮明度光沢が40以上であっても顔料塗布層及び樹脂塗布塗布層を持たない場合、風合いが全くでないことが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原紙の少なくとも一方の面に顔料と接着剤とを含む層を有した基紙の両面を被膜形成性樹脂で被覆した基体の少なくとも一方の面にインク受像層を設けてなるインクジェット記録用紙において、該記録用紙表面の像鮮明度光沢(ASTM E430規定)が40以上であることを特徴とするインクジェット記録用紙。
【請求項2】
前記基紙が120℃以上でキャストドラム乾燥されたキャストコート紙であることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録用紙。
【請求項3】
前記基紙の塗布層面が120〜300℃の表面温度の金属ロールを有するロングニップカレンダーにより処理されたコート紙であることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録用紙。
【請求項4】
前記被膜形成性樹脂が押し出しコート又は貼り合わせにより基紙に被覆されたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のインクジェット記録用紙。
【請求項5】
前記像鮮明度光沢50〜70であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のインクジェット記録用紙。