説明

インクジェット記録装置およびインクタンク

【課題】 電池などの電源を装備しなくても、装置電源がOFFの状態でインクタンクが脱着されたか否かを判断することができ、簡単な構成で適正な回復動作を可能にして記録装置の信頼性を向上させることができるインクジェット記録装置およびインクタンクを提供する。
【解決手段】 脱着可能なインクタンク7を備えたインクジェット記録装置において、インクタンクが一度以上脱着されたときに、脱着前後で電源を用いずに位置を変える動作部70A、70Bまたは70Cを備える。動作部は重力により位置を変える構成、もしくは磁気吸引力により位置を変える構成とする。動作部はインクタンク以外の場所に設けても良く、インクタンクに設けても良い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット記録装置および該インクジェット記録装置に装着されるインクタンクに関する。
【背景技術】
【0002】
記録ヘッドから記録媒体へインクを吐出して画像を記録するインクジェット記録装置にあっては、記録ヘッド内部に微細な流路が形成されている。そのため、インクタンクから記録ヘッドまでの流路内における気泡の発生を防止したり発生した気泡を除去しないと、気泡によってインクの供給が妨げられることになり、インクの吐出不良により記録画像の品位が低下するおそれがある。特に、脱着式のインクタンクを用いる場合には、脱着の際に流路に気泡が発生もしくは混入するため、脱着後に流路から気泡を抜くための回復動作が必要になる。ここで、インクタンクの脱着とは、少なくとも一度装置からインクタンクを取り外し、同じまたは異なるインクタンクを装置に再装着すること意味する。
【0003】
従来のインクジェット記録装置では、装置電源がOFFの状態でユーザがインクタンクを取り外した後に再度装着した場合、次の装置電源がONの状態ではインクタンクがすでに装着された状態になっている。そのため、インクタンクと装置本体を電気的に接続する構成であっても、インクタンクが脱着されたか否かを判断することができず、インクタンクの交換などに際して適切な回復動作の実施が困難となり、装置の信頼性を損なうおそれがある。このような不具合を回避する手段として、特許文献1には、装置本体に電池を搭載し、電源OFFのときもインクタンクの脱着を監視できるようにした技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平07−144419号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、産業用の記録装置などでは近年の技術向上により装置寿命も長く設定されており、そのため、上記従来技術では、時間の経過によって電池残量が無くなり、信頼性を維持することが困難であるという課題がある。
【0006】
本発明はこのような技術的課題に鑑みてなされたものである。本発明の目的は、簡単な構成で、電池などの電源を装備しなくても、装置電源がOFFの状態でインクタンクが脱着されたか否かを判断することができ、回復動作等の関連動作を適正に行うことで記録装置の信頼性を向上させることができるインクジェット記録装置およびインクタンクが提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、脱着可能なインクタンクを備えたインクジェット記録装置において、前記インクタンクが一度以上脱着されたときに、脱着前後で電源を用いずに位置を変える動作部を有することを特徴とする。かかる構成においては、前記動作部は重力もしくは磁気吸引力により位置を変えることができる。
【0008】
別の本発明は、インクジェット記録装置に脱着可能に装着されるインクタンクにおいて、前記インクジェット記録装置に対して一度以上脱着されたときに、脱着前後で電源を用いずに位置を変える動作部を有することを特徴とする。かかる構成においては、前記動作部は重力もしくは磁気吸引力により位置を変えることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、簡単な構成で、電池などの電源を装備しなくても、装置電源がOFFの状態でインクタンクが脱着されたか否かを判断することができ、回復動作等の関連動作を適正に行うことで記録装置の信頼性を向上させることができるインクジェット記録装置およびインクタンクが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】一実施形態に係るインクジェット記録装置の平面図
【図2】一実施形態に係るインクジェット記録装置の制御部のブロック図
【図3】インクタンクおよび記録ヘッドにおけるインク流路の説明図
【図4】インクタンクの脱着に伴って動作する動作部の第1の実施形態の説明図
【図5】インクタンクの脱着を監視する制御動作のフローチャート
【図6】インクタンクの脱着に伴って動作する動作部の第2の実施形態の説明図
【図7】インクタンクの脱着に伴って動作する動作部の第3の実施形態の説明図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を具体的に説明する。なお、各図面を通して同一符号は同一または対応部分を示すものである。
〔第1の実施形態〕
図1は一実施形態に係るインクジェット記録装置の平面図である。ユーザによって装置に記録媒体1がセットされると、センサ2が記録媒体1の存在を検知し、記録ヘッド5およびインクタンク7を搭載したキャリッジ4がキャリッジモータ6によって駆動されることで記録ヘッド5が記録位置(印刷位置)8へ移動する。なお、待機中には、記録ヘッド5はキャップ位置3にある。記録ヘッド5の記録媒体1と対向する面はインクを吐出する複数のノズルが配されたインク吐出面(ノズル面)5aとなっており、記録ヘッド5がキャップ位置3にあるとき、インク吐出面5aは下方から密着されるキャップによってキャッピング状態になっている。記録媒体1を矢印A方向に搬送し、記録媒体1が記録ヘッド5のノズル面と対向する記録位置を通過するタイミングでノズルからインクを吐出して記録媒体1上に画像(文字や記号等の全ての印刷像を含む)を記録する。記録した記録媒体1を矢印B方向に排出することで一連の記録動作を終了する。記録を終了した後一定時間が経過すると、キャリッジ4は再びキャップ位置3に戻され、インク吐出面5aにキャップを密着させてキャッピング状態にする。
【0012】
装置本体には、CPU、メモリおよびI/O回路等を備えたコントローラからなる制御部60が設けられている。この制御部60は、内部メモリに予め格納された制御プログラムに従い、駆動モータや各種装置の動作を制御する。これにより、記録媒体の搬送動作を制御するとともに、画像情報に基づいて記録ヘッド5による記録動作を制御することにより、記録媒体に画像を記録していく。また、制御部60は、後述するインクタンクの脱着を検出した際の動作や回復動作を制御する。さらに、制御部60は、その他の装置全体の動作およびタイミングを制御するものである。
【0013】
図2は一実施形態に係るインクジェット記録装置の制御部60のブロック図である。MPU(マイクロプロセッサ)9は、プログラムROM10に格納された制御プログラムを実行することにより以下の制御を実現する。まず、通信制御ドライバ13が外部PCからの制御コマンドを受信すると、制御コマンドの各種パラメータをNVRAM11に記憶し、制御コマンドのイメージデータをプリントバッファであるVRAM12に展開する。そして、ジョブ開始コマンドを受信すると記録動作を開始する。
【0014】
記録動作に入ると、MPU9がモータドライバ14を制御することで、キャリッジモータ17、搬送モータ18および回復モータ19が駆動される。また、MPU9は、センサ2で検知した記録媒体1の先端位置を入出力ポート16から入力し、その検知位置を基準としてヘッド駆動回路15を制御することにより記録ヘッド5を駆動する。記録ヘッド5を駆動してインクを吐出することで、VRAM12に展開しているイメージデータを記録媒体1に記録する。記録媒体1への記録が完了すると、キャリッジモータ17および搬送モータ18の駆動を停止する。さらに、MPU9は、フォトセンサ20でインクタンク7の脱着を検知すると、プログラムROM10のプログラムに基づいて後述するインクタンクの脱着に伴う動作、並びに回復モータ19による回復動作を実行する。ここで、回復動作は、記録ヘッド5のインク吐出性能を維持回復するための動作であり、例えば、インク吐出面5aのキャッピング動作、インク吐出面5aのワイピング動作、ノズル24やインク受けからのインク吸引動作などが含まれる。
【0015】
図3はインクタンク7および記録ヘッド5におけるインク流路の説明図である。記録ヘッド5のインク吐出面(記録媒体と対向する面)5aには、複数のノズル24が所定の密度で配列されたノズル列が形成されている。インクタンク7内に装填された吸収体21には、吸収体21の毛管力により、大気圧に対して負圧の状態でインクが吸蔵されている。インクタンク7内のインクは、回復動作により記録ヘッド5のフィルタ22および液室23を通して各ノズル24に充填される。各ノズル24まで充填されたインクは、記録動作の際にノズルから吐出され、回復動作の際にもノズルから吸引もしくは吐出される。
【0016】
図4はインクタンク7の脱着に伴って動作する第1の実施形態に係る動作部70Aの構成および動作の説明図である。なお、本実施形態では、図1および図3に示すようにインクタンク7は記録ヘッド5とともにキャリッジ4に搭載されているが、以下の説明はインクタンク7が記録装置のキャリッジ4以外の場所に脱着可能に装着される場合も同様に適用される。また、インクタンク7の脱着に伴って動作する動作部70Aは、キャリッジ4上を含んだインクタンク7以外の場所に配設される。図4(a)はインクタンク7が使用可能に装着されている状態を示し、図4(b)はインクタンク7を取り外したときの状態を示し、図4(c)はインクタンク7を装着するときの状態を示し、図4(d)はインクタンク7を装着した直後の状態を示す。
【0017】
図4において、インクタンク7以外の場所(図示の例ではキャリッジ4上)に、インクタンク7が一度以上脱着されたときに、脱着前後で電源を用いずに位置を変える動作部70Aが配設されている。動作部70Aは、駆動源である不図示のモータにより回転駆動可能な円盤状の回転体26と、回転体26の中心軸と同心の軸を中心に独立して自由に回動(揺動)可能に軸支されたアーム25とを備えている。回転体26の側面には突起状の突起部27が設けられており、回転体26が回転駆動されると突起部27がアーム25に当たるようになっている。また、インクタンク7以外の場所には、アーム25が重力で回動して自由端が鉛直下向きになった状態を検知するためのフォトセンサ20が配されている。このフォトセンサ20は、動作部70A(そのアーム25)の位置を検出するための検出部を構成している。こうして、装置内のインクタンク7以外の場所に配設されたアーム25、回転体26、突起部27およびフォトセンサ20により、インクタンク7の脱着に伴って、電源を用いずに位置を変えるように動作する動作部70Aが構成されている。
【0018】
図5は、インクタンク7の脱着を監視する制御動作のフローチャートである。次に、第1の実施形態に係る動作部70Aを用いてインクタンク7の脱着を監視する動作を説明する。インクタンク7が装着されているときは、図4(a)に示すように、アーム25の先端部がインクタンク7の側面に係止することでアーム25は持ち上げ位置に停止している。インクタンク7が装置から取り外されると(ステップS1)、アーム25が重力により回動し、アーム25の自由端が鉛直下向きになったところで停止する(図4(b))。そして、同一もしくは別のインクタンク7を再び装着する(図4(c))。このとき、インクタンク7はアーム25に接触することがないので、アーム25はそのまま鉛直下向きの位置に保持される。つまり、動作部70Aのアーム25は、インクタンク7の脱着前後で電源を用いずに位置を変えるように動作する(ステップS2)。
【0019】
次いで、装置電源がOFFであるか(ステップS3)、あるいは装置電源がONであるか(ステップS4)を判別する。装置電源がOFFの状態であればONになった時点で、あるいは装置電源がONの状態でインクタンク7が脱着された場合は直ちに、フォトセンサ20からなる検出部によりアーム25の位置(動作部の位置)を検出する(ステップS5)。これにより、インクタンク7が一度以上脱着されて装着状態になっていることを検知する。検出部20による検出結果により回復動作を実施するかどうかの判断を行う。回復動作を行う場合は、MPU9は、フォトセンサ20でインクタンク7の脱着を検知すると、プログラムROM10のプログラムに基づいて後述するインクタンクの脱着に伴う動作、並びに回復モータ19による回復動作を実行する。制御部60は、記録ヘッド5のノズル24内のインクをリフレッシュしたり、インク吐出面5aをワイピングするなどの回復動作を制御する(ステップS6)。回復動作を終了したところで、モータ(例えば、図2中の回復モータ19)により回転体26を回転させることで、突起部27を介してアーム25を図4(d)中の矢印方向に回動させることにより、アーム25の回動位置を図4(a)に示す元の位置に戻す(ステップS7)。つまり、動作部70Aは、検出部20の検出結果に基づいて作動するモータにより、インクタンク7を脱着する前の位置に戻される。
【0020】
以上の第1の実施形態に係るインクジェット記録装置およびインクタンクによれば、インクタンク7が一度以上脱着されたときに、脱着前後で電源を用いずに位置を変えるように動作する動作部70Aを備えた構成が得られる。そのため、電池などの電源を装備しなくても、装置電源がOFFの状態でインクタンク7が脱着(一度以上装置からインクタンクを取り外し、同じまたは異なるインクタンクを装置に再装着すること)されたか否かを判断することが可能となる。これにより、電池等の二次電源の寿命によりインクタンクの脱着の有無を判断できなくなるという従来の課題を解消できる。従って、本実施形態によれば、簡単な構成で、電池などの電源を装備しなくても、装置電源がOFFの状態でインクタンクが脱着されたか否かを判断することができ、回復動作等の関連動作を適正に行うことで記録装置の信頼性を向上させることができる。
【0021】
〔第2の実施形態〕
図6はインクタンク7の脱着に伴って動作する第2の実施形態に係る動作部70Bの構成および動作の説明図である。本実施形態についての以下の説明もインクタンク7が記録装置のキャリッジ4以外の場所に脱着可能に装着される場合に同様に適用可能である。また、インクタンク7の脱着に伴って動作する動作部70Bは、キャリッジ4上を含んだインクタンク7以外の位置に配設される。図6(a)はインクタンク7が使用可能に装着されている状態を示し、図6(b)はインクタンク7を取り外したときの状態を示し、図6(c)はインクタンク7を装着するときの状態を示し、図7(d)はインクタンク7を装着した直後の状態を示す。
【0022】
図6において、インクタンク7以外の場所(図示の例ではキャリッジ4上)に、インクタンク7が一度以上脱着されたときに、脱着前後で電源を用いずに位置を変える動作部70Bが配設されている。動作部70Bは、駆動源である不図示のモータにより回転駆動可能な円盤状の回転体26と、回転体26の中心軸と同心の軸を中心に独立して自由に回動(揺動)可能に軸支された金属等の磁性体のアーム35とを備えている。回転体26の側面には突起部27が設けられており、回転体26が回転駆動されると突起部27がアーム35に当たるようになっている。また、インクタンク7以外の場所に、アーム35を磁力(磁気吸引力)で吸引するためのマグネット38と、アーム35が吸引されてその先端部が所定位置になったことを検知するためのフォトセンサ20が配されている。こうして、装置内のインクタンク7以外の場所に配設されたアーム35、回転体26、突起部27およびフォトセンサ20により、インクタンク7の脱着前後で電源を用いずに位置を変える動作部70Bが構成されている。本実施形態の他の構成は、前述の第1の実施形態と同様である。
【0023】
次に、図6および図5を用いて、第2の実施形態に係る作動部70Bを使用してインクタンク7の脱着を監視する動作を説明する。インクタンク7が装着されているときは、図6(a)に示すように、マグネット38の磁力(磁気吸引力)により上向きに付勢されたアーム35の先端部がインクタンク7の底面に係止することで、アーム35は所定位置に位置規制されている。インクタンク7が装置から取り外されると(ステップS1)、アーム35がマグネット38に磁力で吸引されて回動し、アーム35の自由端がマグネット38に最接近した位置(フォトセンサ20に対向する位置でもある)で停止する(図6(b))。そして、同一もしくは別のインクタンク7を再び装着する(図6(c))。このとき、インクタンク7はアーム35に接触することがないので、アーム35はそのままセンサ20と対向する位置に保持される。つまり、動作部70Bのアーム35も、インクタンク7の脱着前後で電源を用いずに位置を変えるように動作する(ステップS2)。
【0024】
次いで、装置電源がOFFであるか(ステップS3)、あるいは装置電源がONであるか(ステップS4)を判別する。装置電源がOFFの状態であればONになった時点で、あるいは装置電源がONの状態でインクタンク7が脱着された場合は直ちに、フォトセンサ20によりアーム35の位置(マグネット38に最接近してフォトセンサ20に対向した位置)を検知する(ステップS5)。これにより、インクタンク7が少なくとも1回脱着されて装着状態になっていることを検知する。フォトセンサ(検出部)20の検出結果により回復動作を実施するかどうかの判断を行う。回復動作を行う場合、MPU9は、フォトセンサ20でインクタンク7の着脱を検知すると、プログラムROM10のプログラムに従い、回復モータ19を駆動して回復動作を実行する。制御部60は、記録ヘッド5のノズル内のインクをリフレッシュしたり、インク吐出面5aをワイピングするなどの回復動作を制御する(ステップS6)。回復動作を終了したところで、モータ(例えば、図2中の回復モータ19)により回転体26を回転させることで、突起部27を介してアーム35を図6(d)中の矢印方向に回動させることにより、アーム35の回動位置を図6(a)に示す元の位置(インクタンク7の底面で位置規制される状態)に戻す(ステップS7)。つまり、動作部70Bは、検出部20の検出結果に基づいて作動するモータにより、インクタンク7を脱着する前の位置に戻される。
【0025】
以上の第2の実施形態に係るインクジェット記録装置およびインクタンクでも、インクタンク7が一度以上脱着されたときに、脱着前後で電源を用いずに位置を変えるように動作する動作部70Bを備える構成が得られる。そのため、電池などの電源を装備しなくても、装置電源がOFFの状態でインクタンク7が脱着(一度以上装置からインクタンクを取り外し、同じまたは異なるインクタンクを装置に再装着すること)されたか否かを判断することが可能となる。これにより、電池等の二次電源の寿命によりインクタンクの脱着の有無を判断できなくなるという従来の課題を解消できる。こうして、本実施形態によっても、簡単な構成で、電池などの電源を装備しなくても、装置電源がOFFの状態でインクタンクが脱着されたか否かを判断することができ、回復動作等の関連動作を適正に行うことで記録装置の信頼性を向上させることができる。
【0026】
〔第3の実施形態〕
図7はインクタンク7の脱着に伴って動作する第3の実施形態に係る動作部70Cの構成および動作の説明図である。本実施形態についての以下の説明もインクタンク7が記録装置のキャリッジ4以外の場所に脱着可能に装着される場合に同様に適用可能である。本実施形態では、インクタンク7の脱着に伴って動作する動作部70Cは、インクタンク7に配設されている。図7(a)はインクタンク7が使用可能に装着されている状態を示し、図7(b)はインクタンク7を取り外したときの状態を示し、図7(c)はインクタンク7を装着するときの状態を示し、図7(d)はインクタンク7を装着した直後の状態を示す。
【0027】
図7において、インクタンク7の底部近傍に、インクタンク7が一度以上脱着されたときに、脱着前後で電源を用いずに位置を変える動作部70Cが配設されている。インクタンク7に配された動作部70Cは、駆動源である不図示のモータにより回転駆動可能な円盤状の回転体46と、回転体46の中心軸と同心の軸を中心に独立して自由に回動(揺動)可能に軸支されたアーム25とを備えている。回転体46の側面には突起状の突起部27が設けられており、回転体46が回転駆動されると突起部27がアーム25に当たるようになっている。回転体46の外周には歯形(ギア)46が形成されている。
【0028】
インクタンク7以外の場所には、不図示の駆動源(例えば回復モータ19)により回転駆動可能なギア49が設けられており、このギア49は回転体46の外周ギア46と噛み合っている。また、インクタンク以外の位置(図示の例ではインクタンク7の底面近傍のキャリッジ4上の位置)に、アーム25が重力で回動してその自由端が鉛直下向きになったときに、このアーム25の位置を検知するためのフォトセンサ20が配置されている。さらに、インクタンク7以外の位置に支柱40が設けられている。支柱40は、インクタンク7が装着された状態においてアーム25の先端部に当接してアーム25を所定の持ち上げ位置に保持するものである。本実施形態では、インクタンク7が一度以上脱着されたときに脱着前後で電源を用いずに位置を変える動作部70Cを構成する回転体46、外周ギア部46a、突起部27およびアーム25は、インクタンク7に設けられている。また、動作部70Cの動作に関わるフォトセンサ20、支柱40および駆動ギア49はインクタンク7以外の装置内の場所に配置されている。本実施形態の他の構成は前述の第1の実施形態と同様である。
【0029】
次に、図7および図5を用いて、第3の実施形態に係る作動部70Cを使用してインクタンク7の脱着を監視する動作を説明する。インクタンク7が装着されているときは、図7(a)に示すように、アーム25の先端部が支柱40で支持されることで、アーム25は所定角度だけ持ち上げられた規制位置に保持されている。インクタンク7が装置から取り外されると(ステップS1)、アーム25はその先端部が重力により回動することで鉛直方向下向きの位置で停止する(図7(b))。そして、同一もしくは別のインクタンク7を再び装着する(図7(c))。このとき、インクタンク7はアーム25に接触することがないので、アーム25はそのまま鉛直方向下向きの位置に保持される。つまり、動作部70Cのアーム25も、インクタンク7の脱着前後で電源を用いずに位置を変えるように動作する(ステップS2)。
【0030】
次いで、装置電源がOFFであるか(ステップS3)、あるいは装置電源がONであるか(ステップS4)を判別する。装置電源がOFFの状態であればONになった時点で、あるいは装置電源がONの状態でインクタンク7が脱着された場合は直ちに、フォトセンサ20によりアーム25の位置を検知する(ステップS5)。これにより、インクタンク7が少なくとも1回脱着されて装着状態になっていることを検知する。フォトセンサ20の検出結果により回復動作を実施するかどうかの判断を行う。回復動作を行う場合、MPU9は、フォトセンサ20でインクタンク7の脱着を検知すると、プログラムROM10のプログラムに基づいて後述するインクタンクの脱着に伴う動作、並びに回復モータ19による回復動作を実行する。制御部60は、記録ヘッド5のノズル24内のインクをリフレッシュしたり、インク吐出面5aをワイピングするなどの回復動作を制御する(ステップS6)。回復動作を終了したところで、モータ(例えば、図2中の回復モータ19)によりギア49を回転駆動することで回転体46を回転させる。これにより、突起部27を介してアーム25を図7(d)中の矢印方向に回動させることで、アーム25の回動位置を図7(a)に示す支柱40で支持される元の位置に戻す(ステップS7)。つまり、動作部70Cは、検出部20の検出結果に基づいて作動するモータにより、インクタンク7を脱着する前の位置に戻される。
【0031】
以上の第3の実施形態に係るインクジェット記録装置およびインクタンクでも、インクタンク7が一度以上脱着されたときに、脱着前後で電源を用いずに位置を変えるように動作する動作部70Cを備える構成が得られる。従って、本実施形態によっても、第1の実施形態および第2の実施形態と同様、簡単な構成で、電池などの電源を装備しなくても、装置電源がOFFの状態でインクタンクが脱着されたか否かを判断することができ、回復動作等の関連動作を適正に行うことで記録装置の信頼性を向上させることができる。
【0032】
なお、以上の各実施形態では、記録媒体の搬送による副走査のみで画像を記録するラインタイプの記録装置を説明したが、本発明は、記録ヘッドで主走査するシリアルタイプの記録装置においても同様に適用可能である。また、本発明は、記録媒体がロール紙等の連続紙である場合、一定寸法に裁断されたカット紙である場合など、記録媒体の種類に関係なく、同様に適用可能である。また、本発明は、インクジェット記録装置であれば、記録ヘッドの数、インクタンクの数、インクの種類や性状数などに関わらず、同様に適用可能である。さらに、本発明は、紙、プラスチックフィルム、印画紙、不織布など、記録媒体の材質にも関わりなく、同様に適用可能である。
【符号の説明】
【0033】
1 記録媒体
4 キャリッジ
5 記録ヘッド
7 インクタンク
19 駆動源(モータ)
20 フォトセンサ
25、35 アーム
26、46 回転体
27 突起部
49 ギア
60 制御部
70A、70B、70C 動作部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脱着可能なインクタンクを備えたインクジェット記録装置において、前記インクタンクが一度以上脱着されたときに、脱着前後で電源を用いずに位置を変える動作部を有することを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項2】
前記動作部は重力により位置を変えることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項3】
前記動作部を記録装置のインクタンク以外の場所に配設することを特徴とする請求項1または2に記載のインクジェット記録装置。
【請求項4】
前記動作部を前記インクタンクに設けることを特徴とする請求項1または2に記載のインクジェット記録装置。
【請求項5】
前記動作部は磁気吸引力により位置を変えることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項6】
前記動作部の位置を検出する検出部を有することを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項7】
前記動作部は前記検出部の検出結果に基づいて作動するモータにより前記インクタンクを脱着する前の位置に戻されることを特徴とする請求項6に記載のインクジェット記録装置。
【請求項8】
前記検出部の検出結果により回復動作を実施するかどうかの判断を行うことを特徴とする請求項6に記載のインクジェット記録装置。
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置に脱着可能に装着されるインクタンクにおいて、前記インクジェット記録装置に対して一度以上脱着されたときに、脱着前後で電源を用いずに位置を変える動作部を有することを特徴とするインクタンク。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−121190(P2011−121190A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−278538(P2009−278538)
【出願日】平成21年12月8日(2009.12.8)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】