インクジェット記録装置および回復方法

【課題】キャップに予備吐出されたインクが増粘・固着するものである場合を検知してキャップ内を空吸引する。これによりキャップ内でインクが増粘しまたは固着することを抑制する。
【解決手段】2以上のインク吐出部を吸引するためのキャップと、前記インク吐出部の回復を行なうために前記キャップに予備吐出を行う予備吐出手段と、を備えたインクジェット記録装置であって、前記キャップ内に予備吐出したインクの種類を判定し、2以上の種類のインクの予備吐出が同時または前後に行われた場合、前記キャップを空吸引する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット記録装置および回復方法に関し、特にブラックインクとカラーインクを用いるインクジェット記録装置および回復方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録装置は、低騒音、低ランニングコスト、小型化およびカラー化が容易であるなどの利点を有することから、プリンタ、ファックス、複写機等へ適用されている。インクジェット記録装置で用いられる記録手段としての記録ヘッドは、インクを吐出するための吐出口を備えている。一般には、ノズルの端部開口からインクが吐出され、吐出口の役割を果たしている。
【0003】
インクジェット記録装置では、一般に、記録データに基づいた、パーソナルコンピュータなどのホスト装置から送られる吐出信号に応じて、記録ヘッドを駆動させながら吐出口からインク滴を記録媒体に吐出させる。このような吐出口の大きさは、例えば円形のもので直径が数十μ程度であり、近年では記録する画像等の高画質化とともにより小さくなり、高密度化されつつある。この記録ヘッドの構成は、最近の記録画像の高品位化、例えば黒色文字等の濃度向上、カラー化、高精細(高解像度)化、耐水性向上等に対応したものであることが求められている。
【0004】
一般に、シリアル方式のインクジェット記録装置は、記録ヘッドをキャリッジに搭載する。そして、記録媒体の搬送方向(副走査方向)に対して直交する主走査方向にキャリッジを往復移動させながら記録ヘッドからインクを吐出して記録用紙などの記録媒体にドットを形成して記録を行う。
【0005】
図4は、記録ヘッドの例を示す図である。この記録ヘッドでは、上述した記録の高品位化の要求を満たし、しかもそれを廉価に実現することができる。
【0006】
記録ヘッド3の吐出口面17には、ブラックインクの吐出口列13、イエローインクの吐出口列14、マゼンタインクの吐出口列15およびシアンインクの吐出口列16が、記録ヘッドの走査方向に並列状態で形成されている。各吐出口列における吐出口のピッチは、600dpi(dot per inch)相当である。この記録ヘッドによる記録を行なう際には、所定の記録領域あたり、2回の走査を行なって画像を記録することにより1200dpi相当の画像が形成される。このように、記録ヘッドのコンパクト化、ひいては装置のコンパクト化を図るため、吐出口列相互間のピッチも小さく比較的高密度に構成されている。
【0007】
また、高記録品位の要求に応じた記録ヘッドの構成として、耐水性の向上や色間の滲み防止などの観点から、例えば、黒インクと他のカラーインクとの間の化学反応を生じるインクを用い、これにより染料等の不溶化を生じさせるものがある。具体的には、黒インクがカチオン性を有し、他のカラーインクがアニオン性を有するものがある。これによって、両者がイオン的に結合し染料等の色材の不溶化がなされ、耐水性が向上し、また、異なる色のインク間の滲みを防止することができる。
【0008】
近年は、テキスト文書などの黒文字品位を上げるために、顔料成分を含んだブラックインクと、フォト画像には顔料と反応性のある染料成分を含んだカラーインクとの組み合わせにより、ブラックとカラー間のインク間の滲みを防止しているものもある。
【0009】
ところで、インクジェット記録装置は、上記のような微小な吐出口からインクを吐出させるものであるため、吐出口近傍のインクは湿度等の環境に左右され易い。例えば、乾燥して固着してしまった場合は、正規のタイミングでインクを吐出することが不可能となり、画像品位を著しく劣化させることがある。そこで、このようなインクジェット記録装置においては、記録ヘッドの吐出口面を覆いかつ圧接することができるキャップを記録ヘッドのホームポジションなどに設けている。そして、ホームポジションでは記録ヘッドのフェイスをキャップによって外気から遮断する構成になっている。このようにして、非記録時に記録ヘッドにキャップをし、記録ヘッドのノズル内のインクが蒸発乾燥して増粘、固着するのを防いでいる。
【0010】
また、このようなインクジェット記録装置においては、吐出口に目詰まりが発生することがある。この目詰まりを防止するために、キャップには負圧発生源であるポンプを接続し、このポンプを定期的に動作させることでキャップ内を負圧にしている。そして、吐出口からインクを故意に定期的に流出させるようにしている。負圧を発生させるためのポンプ方式としては、ピストンの移動を利用するシリンダ方式、キャップに接続されるチューブをローラでしごいてチューブの復元力を利用するチューブポンプ方式などがある。増粘、固着して吐出不良を起こしたり、ブレードで除去できなかった異物が吐出口面に付着した場合には、キャップに接続された吸引ポンプでノズル内の増粘インクを排出して正常な吐出に回復する回復処理を行っている。
【0011】
また、記録ヘッドによる記録が終了した段階で、キャップに一定量のインク滴を吐出させてから記録ヘッドにキャップ圧接させてキャッピングを行うように構成されたインクジェット記録装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0012】
また、記録を終了した後で、記録ヘッドがキャップオープン状態にあった時間や記録量などを検出する。そしてその検出結果に基づいて、キャップの内部に所定量のインク滴を吐出させてからキャッピング動作を実行させるインクジェット記録装置が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0013】
このように、記録を目的としない予備吐出によるインクを貯めるために、キャップを利用することが多い。したがって、キャップ内に予備吐出される方式では、予備吐出量がある量に達した時点で、ポンプを作動させてキャップ内の予備吐出されたインクを吸引して排出させている。
【0014】
【特許文献1】特開平2−102058号公報
【特許文献2】特開平4−339665号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかしながら、キャップ内に予備吐出される方式では、顔料系のインク(顔料インク)と染料系のインクが同時にまたは、連続して予備吐出される場合、顔料インクと染料インクの反応性が高い。したがって、早期に増粘したり固着することがある。
【0016】
図5は、記録ヘッド3と記録ヘッド3の回復装置に予備吐出されたインクの状態を説明する説明図である。
【0017】
図5(a)は、記録ヘッド3の回復装置の構成を示す図である。キャップ8の内部にはキャップ内のインクを吸収、保持するキャップ吸収部材9が設置されており、吸収部材9は多孔質材料やスポンジ材料などで形成されている。さらに、キャッピング状態でキャップ8を介して吸引チューブ7から記録ヘッド3を吸引回復する構成になっている。しかしながら、顔料と染料の混合インクがヘッドのキャップ内で増粘、固着堆積し、吸引動作によっては排出除去することが困難なことがある。また、図5(c)に示すように、増粘物が記録ヘッドのフェイス面に付着し、ノズルを塞いでしまい吐出不良を生じることがある。
【0018】
このようなキャップ内での増粘、固着堆積は、予備吐出された顔料ブラックインクと顔料ブラックインクと相反応する染料イエローインクがキャップ8内で混合した状態で空吸引されるまでの間放置される。そして、図5(b)に示されるようにその間に水分が蒸発する過程で増粘物が形成される。空吸引が実行される1サイクルの間隔は約15分である場合、1サイクルで形成される増粘物は僅かであっても、繰り返し数百枚の記録媒体の記録を行うと徐々に増粘物が蓄積、堆積する。その結果、図5(c)に示されるようにキャップの上面部まで増粘物が到達することがある。
【0019】
本発明は以上の点を鑑みてなされたものであり、キャップに予備吐出されたインクが増粘・固着するものである場合を検知してキャップ内を空吸引する。これによりキャップ内でインクが増粘しまたは固着することを抑制することができるインクジェット記録装置および回復方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上記目的を達成するために本発明の記録装置は、2以上のインク吐出部を吸引するためのキャップと、前記インク吐出部の回復を行なうために前記キャップに予備吐出を行う予備吐出手段と、を備えたインクジェット記録装置であって、前記キャップ内に予備吐出したインクの種類を判定し、2以上の種類のインクの予備吐出が同時または前後に行われた場合、前記キャップを空吸引することを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
以上の構成によれば、キャップに予備吐出されたインクが混合されることを検知することができ、キャップを空吸引することができる。これにより、キャップ内でインクが増粘しまたは固着することを抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下に図面を参照して本発明における実施形態を詳細に説明する。
(第1実施形態)
(1)装置構成
本実施形態では、インクジェット記録ヘッドを用いた記録装置を例に挙げて説明する。なお、以下「ノズル」(「記録素子」と言う場合もある)とは、特にことわらない限り吐出口ないしこれに連通する液路およびインク吐出に利用されるエネルギーを発生する素子を総括して言うものとする。
【0023】
図1は、本実施形態におけるインクジェット記録装置1の構成の概要を示す斜視図である。図1に示すように、記録装置1は、記録ヘッド3を搭載したキャリッジ2を備えている。また、キャリッジ2には、記録ヘッド3に供給するインクを貯留するインクカートリッジ6が装着されている。インクカートリッジ6はキャリッジ2に対して着脱自在に搭載されている。記録装置1はカラー記録が可能であり、そのためにキャリッジ2にはマゼンタ(M)、シアン(C)、イエロー(Y)、ブラック(K)のインクを夫々収容した4つのインクカートリッジが搭載されている。これら4つのインクカートリッジは夫々独立に着脱可能である。
【0024】
記録ヘッド3は、インクジェット方式によりインクを吐出して記録を行う。キャリッジ2には、キャリッジモータM1によって発生する駆動力を伝達機構4により伝えられる。そして、キャリッジ2は矢印A方向に往復移動される。また、記録用紙などの記録媒体Pは、給紙機構5を介して給紙され、記録位置まで搬送される。その後、その記録位置において記録ヘッド3から記録媒体Pにインクを吐出されることで記録が行なわれる。
【0025】
また、記録ヘッド3の吐出状態を良好に維持するために、キャリッジ2を回復装置10の位置まで移動させ、間欠的に記録ヘッド3の吐出回復処理を行う。
【0026】
キャリッジ2と記録ヘッド3とは、両部材の接合面が適正に接触されて所要の電気的接続を達成維持できるようになっている。記録ヘッド3は、記録信号に応じてエネルギーを印加することにより、複数の吐出口からインクを選択的に吐出して記録する。特に、本実施形態の記録ヘッド3は、熱エネルギーを利用してインクを吐出するインクジェット方式を採用し、熱エネルギーを発生するために電気熱変換体を備える。電気熱変換体に印加される電気エネルギーが熱エネルギーへと変換される。そして、その熱エネルギーをインクに与えることにより生じる膜沸騰による気泡の成長、収縮によって生じる圧力変化を利用して、吐出口よりインクを吐出させる。この電気熱変換体は各吐出口のそれぞれに対応して設けられ、記録信号に応じて対応する電気熱変換体にパルス電圧を印加することによって対応する吐出口からインクを吐出する。
【0027】
また、記録装置1には記録ヘッド3を搭載するキャリッジ2の記録動作のための往復動作の範囲外(記録領域外)の所望位置(例えば、ホームポジションに対応する位置)に、記録ヘッド3の吐出不良を回復するための回復装置10が配設されている。
【0028】
回復装置10は、記録ヘッド3のインク吐出部である吐出口面をキャッピングするキャッピング機構11と記録ヘッド3の吐出口面をクリーニングするワイピング機構12を備えている。そして、キャッピング機構11による吐出口面のキャッピングに連動して回復装置内の吸引手段(吸引ポンプ等)により吐出口からインクを強制的に排出させる。それによって、記録ヘッド3のインク流路内の粘度の増したインクや気泡等を除去するなどの吐出回復処理を行う。
【0029】
また、非記録動作時等には、記録ヘッド3の吐出口面をキャッピング機構11によるキャッピングすることによって、記録ヘッド3を保護するとともにインクの蒸発や乾燥を防止することができる。一方、ワイピング機構12はキャッピング機構11の近傍に配され、記録ヘッド3の吐出口面に付着したインク液滴を拭き取るようになっている。
【0030】
これらキャッピング機構11及びワイピング機構12により、記録ヘッド3のインク吐出状態を正常に保つことが可能となっている。
【0031】
図2は、本実施形態における記録装置の制御構成を示すブロック図である。CPU200は、所定の演算、計数(カウント)、比較、判別、及び制御などの動作を行う。ROM201はCPU200により実行すべき制御プログラムなどを格納する。また、RAM202はホストコンピュータから送出されるデータなどを格納するデータメモリ及びCPUによって演算処理を実行するためのワーキングメモリとして機能する。ROM201およびRAM202はそれぞれCPU200に接続されており、各部の制御を行うものとなっている。
【0032】
CPU200には、記録ヘッド3内に設けられたヒータ71を駆動するヒータドライバ71Aが接続されている。また、CPU200には、キャリッジ2の駆動源であるキャリッジモータ31のモータドライバ51A、記録媒体の搬送駆動源であるPFモータ21のモータドライバ21A等が接続されている。
【0033】
そして、CPU200は、画像データに基づく吐出用ヒータの駆動データ及び駆動制御信号(ヒートパルス信号)をヒータドライバ71Aに供給することにより記録ヘッド3からインク滴を吐出させる吐出制御を行う。また、記録動作を制御する記録制御手段として機能すると共に、予備吐出動作を制御する予備吐出制御手段等としても機能する。
【0034】
(2)インクの説明
次に、本実施形態において使用するインクおよび色材等の例を説明する。本実施形態では、ブリードを抑制する目的としたインクを用いると廃インク吸収体において、色材が析出するようなインクにおいて、より優れた効果を発揮することができる。このような現象が生じる原因あるいは要因は、以下に説明する、色材単体の特徴、色材と溶剤との関係、混合状態の新たな現象などを挙げることができる。ただし、本実施形態はこのようなインクに限定するものではない。
【0035】
ブリードを抑制するためのインクとは、例えば、色材として、親水性を有する官能基を直接若しくは他の原子団を介して結合している自己分散顔料(カーボンブラック等)を用いる。さらに複数の水溶性有機溶剤として少なくとも1種類が、この顔料の分散安定性を低下させる特性を有する貧溶媒である水溶性有機溶剤を用いたものである(第1のインク)。上記のようなインクを記録媒体に付与した場合、水分が蒸発するにつれ顔料に対する貧溶媒の比率が高まるため、記録媒体の上層部で顔料同士が凝集し始める。その結果、単体としても周辺に他のインクがあってもブリードを抑制できる効果がある。さらに第1のインクの色材としては、顔料表面に結合させる親水性を有する基の顔料表面に対し高密度とした顔料を色材として使用する場合、以下の現象が顕著になる。すなわち、上記利点と廃インク吸収体上で色材が固着し、廃インク吸収体の吸収性能が極端に低下する現象が共により顕著になる。この場合、色材構造による立体障害の影響により、従来の自己分散顔料に比べてインク中の溶剤が顔料と溶媒和しにくくなり、わずかな水分蒸発で顔料の分散安定性が低下する傾向を示す。その結果、ブリードをより緩和させる効果がある。
【0036】
更に、水の蒸発に伴い増粘や粒径が増大するインク、より具体的には、液体から水分が40%蒸発した時に、蒸発前後での平均粒径が25%以上変化してしまうインクなどはブリードをより緩和させることが可能となる。なお、粒径は、例えば、濃厚系粒径アナライザFPAR−1000(商品名;大塚電子社製)により、希釈を行わずに粒径を測定することにより簡単に確認できる。
【0037】
顔料ブラックインクと染料カラーインクを混ぜて粘度を測定した場合に、その粘度が顔料ブラックインクと染料カラーインクの粘度のいずれよりも高くなるようなインクであるような場合にはブリードをより緩和させる効果がある。このような染料カラーインクの例を示す。例えば、染料カラーインク中に、顔料ブラックインク中に含まれる顔料に対する貧溶媒となる溶剤を含有させた場合、さらには、色材として端部にベンゼン環を有する構造をもつ色材を少なくとも色材として有するインク等が挙げられる。端部にベンゼン環を有する構造をもつ色材は、一般的に顔料へ吸着しやすい性質を持つ。このような染料カラーインクが顔料インクと混合した場合、顔料の分散安定性を阻害する。以下では、このような染料インクのことを顔料ブラックインクと相反応する染料カラーインクと表現する。
【0038】
また、第1のインクと第2のインクを混ぜて粘度を測定した場合に、その粘度が第1のインクと第2のインクの粘度のいずれよりも高くなるような第1のインクと第2のインクであるような場合にはブリードをより緩和させる効果がある。
【0039】
廃インクからの蒸発の度合いは、例えば、廃インクチューブ等の材質、チューブ内径の他、一回当たりの回復動作で排出される廃インクの量などによっても変わってくる。しかし、一般的に使われている廃インクチューブの材質やチューブ内径は、限定されており、一回当たりの回復動作で排出される廃インクの量も一般的には所定の範囲内である。
【0040】
なお、本実施形態における貧溶媒とは、「判定しようとする溶媒50質量%程度を含み、且つインクに用いる色材を分散状態で含む顔料分散液を、60℃で、48時間保存したときの当該液体中の粒子径が、判定しようとする溶媒を含まない、もしくは少量含み、かつ当該インクに用いる水不溶性色材を分散状態で含む顔料分散液の粒径と比較して大きい」とういう特性を示す溶媒である。また、良溶媒とは、貧溶媒以外の特性を示す溶媒である。
【0041】
第1と第2のインクが接触した際、両液体の廃インク吸収体中への拡散または移動を阻害してしまう第2のインクの例を示す。例えば、記録媒体上でのブリードをより緩和させることを目的として、第2のインク中に、第1のインク中に含まれる顔料に対する貧溶媒となる溶剤を含有させた場合である。さらには、色材として端部にベンゼン環(疎水部が大半出あれば、一部が親水部を有していても良い)を有する構造をもつ色材を少なくとも色材として有するインク等が挙げられる。端部にベンゼン環を有する構造をもつ色材は、一般的に顔料へ吸着しやすい性質を持つ。このことから、顔料の分散安定性を阻害することから、第1及び第2のインク由来の廃インクが廃インク吸収体で接触した場合、廃インク吸収体中への拡散又は移動を阻害する障壁を構成しやすくなる。
【0042】
更に、第1のインクと第2のインクが以下の関係にある場合も、各インクに由来する廃インクの導入位置を上記のように規定する必要がある。具体的には、両インクを混ぜて粘度を測定した場合に、その粘度が核インク単独の粘度のいずれよりも高くなる関係にある第1のインクと第2のインクが挙げられる。
【0043】
第1及び第2のインクに由来する廃インクが廃インク吸収体で接触した場合、廃インク吸収体中への拡散または移動を阻害する障壁を構成しやすくなる第2の色材の具体的として以下の構造式(1)、構造式(2)で示す色材が挙げられる。
【0044】
構造式(1)
【0045】
【化1】

【0046】
(構造式(1)中、R1は、水素原子、アルキル基、ヒドロキシ低級アルキル基、シクロヘキシル基、モノもしくはジアルキルアミノアルキル基、またはシアノ低級アルキル基を示し、Yは、塩素原子、ヒドロキシル基、アミノ基、またはモノもしくはジアルキルアミノ基(アルキル基上にスルホ基、カルボキシル基、およびヒドロキシル基からなる群から選択される置換基を有していてもよい)を示し、R2、R3、R4、R5、R6は、それぞれ独立して水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、またはカルボキシル基(但し、R2、R3、R4、R5、R6のすべてが水素原子である場合を除く。)を示す。)構造式(1)で表される化合物の具体例としては、遊離酸の形で下記の構造となる例示化合物が挙げられ、特にM7の例示化合物が好ましく用いられる。
【0047】
【化2】

【0048】
構造式(2)
【0049】
【化3】

【0050】
(構造式(2)中、l=0〜2、m=1〜3、n=1〜3、但し、l+m+n=3〜4であり、置換基の置換位置は、4もしくは4’位を表し、Mはアルカリ金属またはアンモニウムを示し、R1、R2は、それぞれ独立に水素原子、スルホ基、またはカルボキシル基(但し、R1、R2は、同時に水素原子となる場合を除く。)を示し、Yは、塩素原子、ヒドロキシル基、アミノ基、またはモノもしくはジアルキルアミノ基を示す。)
構造式(2)で示す色材は4−スルホフタル酸誘導体又は、4−スルホフタル酸誘導体と(無水)フタル酸誘導体を金属化合物の存在下に反応させる事で得られるフタロシアニン化合物を原料に用い、スルホン基をクロロスルホン基に変換した後、有機アミン存在下にアミノ化剤を反応させたフタロシアニン化合物、すなわち、構造式(2)中の4及び4’位置(構造式(2)中のR2、R3、R6、R7、R10、R11、R14、R15)に限定して無置換スルファモイル基(−SO2NH2)と置換スルファモイル基(下記構造式(3))を導入したフタロシアニン化合物であるという特徴を持ち、かかる化合物を色材として用いたインクが極めて耐環境ガス性が優れている事を見出した。
【0051】
構造式(3)
【0052】
【化4】

構造式(3)で表される化合物の具体例としては、遊離酸の形で下記の構造となる例示化合物が挙げられ、特にC1の例示化合物が好ましく用いられる。
【0053】
【化5】

【0054】
上記のような特性を有する第1のインク及び、第2のインクを用いることで、ブリード性能を従来のインクに比べ格段に向上させることが可能となる。
【0055】
(ブラックインク用顔料分散体の作製)
5.5gの水に5gの濃塩酸を溶かした溶液に、5℃に冷却した状態で4−アミノ−1,2−ベンゼンジカルボン酸1.5gを加えた。次に、この溶液の入った容器をアイスバスに入れて液を撹拌することにより溶液を常に10℃以下に保った状態とし、これに5℃の水9gに亜硝酸ナトリウム1.8gを溶かした溶液を加えた。この溶液を更に15分間撹拌後、比表面積が220m2/gでDBP吸油量が105mL/100gであるカーボンブラック6gを撹拌下で加えた。その後、更に15分間撹拌した。得られたスラリーをろ紙(商品名:標準用濾紙No.2;アドバンテック製)でろ過した後、粒子を十分に水洗し、110℃のオーブンで乾燥させ、自己分散型カーボンブラックを調製した。さらに、得られた自己分散型カーボンブラックに水を加えて顔料濃度が10質量%となるように分散させ、分散液を調製した。上記の方法により、カーボンブラック粒子表面に−C6H3−(COONa)2基が導入されてなる自己分散型カーボンブラックが水中に分散された状態の顔料分散液を得た。
【0056】
(インクの作製)
ブラックインク1の作製;
上記顔料分散液(35質量部)、グリセリン(7.0質量部)、ジエチレングリコール(6質量部)、フタル酸2アンモニウム(0.5質量部)、アセチレノールE100(川研ファインケミカル社製、アセチレングリコールのエチレンオキサイド付加物)(0.2質量部)、および水(45.3質量部)を混合し、1時間攪拌した。その後、フィルター(富士フィルム製 FR20)で加圧ろ過し、ブラックインク1を調製した。ブラックインク1の25℃における粘度は2.3mPa・sであった。
【0057】
イエローインク1の作製;
C.I.ダイレクトイエロー132(4質量部)、グリセリン(7質量部)、ポリエチレングリコール600(4質量部)、2−ピロリドン(5質量部)、アセチレノールE100(川研ファインケミカル社製、アセチレングリコールのエチレンオキサイド付加物)(1質量部)、および水(79質量部)を混合し、1時間攪拌した。その後、フィルター(富士フィルム製 FR20)で加圧ろ過し、イエローインク1を調製した。イエローインク1の25℃における粘度は2.0mPa・sであった。
【0058】
(混合インクの粘度)
上記、ブラックインク1とイエローインク1とを1:1で混合し、十分攪拌した。その後、その混合液の25℃における粘度を測定したところ、3.0mPa・sであり、2つのインクを混合することで、増粘していることがわかった。
【0059】
(3)インクジェット記録ヘッドの回復方法
次に、本発明のインクジェット記録ヘッドの回復方法について、図3を用いて説明する。
【0060】
図3は本実施形態におけるインクジェット記録ヘッドの回復方法を示すフローチャートである。まず、所定のタイミングでキャップ内部に予備吐出が行われる(ステップS1)。次に、その予備吐出をしたインクの色がブラックインクとカラーインクの両方であるか否か、をインクジェット記録装置内のRAM202に格納されているデータを参照して、CPU200などを用いて判断する(ステップS2)。ステップS1で行なわれた予備吐出がブラックインクとカラーインクの両方であると判定されると、ステップS10に進む。すなわち、本実施形態におけるブラックインクとカラーインクの双方がキャップ内に予備吐出されると、予備吐出されたインクが早期に増粘し固着しやすい。したがって、この場合には、ステップS10に進み、記憶した予備吐出回数をリセットし、ステップS11に進む。そして、キャップ内をポンプにより所定時間吸引回復を行なう。
【0061】
ブラックインクとカラーインクの一方が予備吐出されたと判定されると、ステップS3に進む。ステップS3では、予備吐出をしたインクの色がブラックインクであるか否かを記録装置内のRAM202記憶されているデータを参照して判断する(S5)。
【0062】
判定する(ステップS3)。予備吐出を行なったインクの色がブラックである場合にはステップS4に進み、予備吐出を行なったインクの色がカラーである場合にはステップS7に進む。
【0063】
ステップS3の後、ステップS4およびS7はそれぞれ、予備吐出した色と予備吐出を行なった回数をインクジェット記録装置内のRAM202に記憶する。
【0064】
次に、ステップS3で予備吐出されたインクがブラックであると判断された場合、前回の予備吐出のインクの色が今回の予備吐出のインク色と同じブラックであるか否かを判断する(ステップS5)。前回の予備吐出のインクの色が今回の予備吐出のインク色と同じブラックでなかった場合、すなわち、カラーであった場合には、ブラックインクとカラーインクの双方がキャップ内に予備吐出されている状態である。したがって、予備吐出されたインクが早期に増粘し固着しやすい。したがって、この場合には、ステップS10に進み、記憶した予備吐出回数をリセットし、ステップS11に進む。そして、キャップ内をポンプにより所定時間吸引回復を行なう。
【0065】
ステップS5において、前回の予備吐出のインクの色が今回の予備吐出のインク色と同じブラックであった場合には、ステップS6では、ブラックインクの累積の予備吐出回数N(累積回数)が、予め定められた所定回数N1を超えているかどうかを判断する。ブラックインクの予備吐所定回数N1は、ROM201に予め書き込まれており、キャップ内のインクが溢れる量よりも少ない値である。ブラックインクの累積の予備吐出回数N(累積回数)が、予め定められた所定回数N1を超えている場合はステップS10に進む。そして、予備吐出した色と回数をリセットする(S10)。次に、ステップS8ではキャップ内に予備吐出されたインクを空吸引する装置(ポンプなど)により所定時間T以内に空吸引を行い(S11)、終了する(S12)。一方、ブラックインクの累積の予備吐出回数Nが、予め定められた所定回数N1を超えていない場合は、S1へ戻る。
【0066】
ステップS3で予備吐出されたインクがカラーであると判断された場合、前回の予備吐出のインクの色が今回の予備吐出のインク色と同じカラーであるか否かを判断する(ステップS8)。前回の予備吐出のインクの色が今回の予備吐出のインク色と同じカラーでなかった場合、すなわち、ブラックであった場合には、ブラックインクとカラーインクの双方がキャップ内に予備吐出されている状態である。したがって、予備吐出されたインクが早期に増粘し固着しやすい。したがって、この場合には、ステップS10に進み、記憶した予備吐出回数をリセットし、ステップS11に進む。そして、キャップ内をポンプにより所定時間吸引回復を行なう。
【0067】
ステップS8において、前回の予備吐出のインクの色が今回の予備吐出のインク色と同じカラーであった場合には、ステップS9では、カラーインクの累積の予備吐出回数M(累積回数)が、予め定められた所定回数M1を超えているかどうかを判断する。カラーインクの予備吐所定回数M1は、ROM201に予め書き込まれており、キャップ内のインクが溢れる量よりも少ない値である。カラーインクの累積の予備吐出回数M(累積回数)が、予め定められた所定回数M1を超えている場合はステップS10に進む。そして、予備吐出した色と回数をリセットする(S10)。次に、ステップS11ではキャップ内に予備吐出されたインクを空吸引する装置(ポンプなど)により所定時間T以内に空吸引を行い(S11)、終了する(S12)。一方、カラーインクの累積の予備吐出回数Mが、予め定められた所定回数M1を超えていない場合は、S1へ戻る。
【0068】
なお所定時間Tは、予備吐出されたブラックインクとカラーインクが混合されても増粘を起こさないような時間に設定されており、ROM201に予め書き込まれている。
【0069】
以上により、相反応するインクによる予備吐出が同時期に行なわれたか、またはキャップ内に反応する状態で残存しているかを判断して一定の場合にキャップ内を空吸引してキャップ内に残存するインクを除去する。これにより、吸引回復後にキャップ内に残存する混合インクは極僅かであり乾燥した場合でもインクが増粘、堆積して吸引性能低下や吐出不良を引き起こすまでには至らないようにしている。したがって、相反応するインクを同一のキャップに予備吐出させた場合でも、増粘・固着を防止することができる。
【0070】
(その他)
第1実施形態では、ブラックインクとカラーインクが同時期に予備吐出される場合について述べた。しかしながら本発明は、ある時間を置くと増粘・固着するような2以上のインクを使用した記録装置であれば適用することができる。すなわち、例えば、染料ブラックと顔料ブラックとを使用する記録装置である場合には、これらが同時期に行なわれ、またはキャップ内に反応する状態でインクが残存しているかを判断して一定の場合にキャップ内を吸引回復することができる。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明の実施形態におけるインクジェット記録装置の構成を示す斜視図である。
【図2】本発明の実施形態におけるインクジェット記録装置の制御構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の実施形態における記録ヘッドの回復方法を示すフローチャートである。
【図4】従来の記録ヘッドの例を示す模式図である。
【図5】従来のインクジェット記録装置のヘッドの回復装置を示す模式図である。
【符号の説明】
【0072】
1 記録装置
2 キャリッジ
3 記録ヘッド
4 伝達機構
5 給紙機構
6 インクカートリッジ
7 吸引チューブ
8 キャップ
9 キャップ吸収部材
10 回復装置
11 キャッピング機構
12 ワイピング機構
13 ブラックインク吐出口列
14 イエローインク吐出口列
15 マゼンタインク吐出口列
16 シアンインク吐出口列
17 吐出口面
200 CPU
201 ROM
202 RAM
21 PFモータ
31 キャリッジモータ
71 ヒータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2以上のインク吐出部を吸引するためのキャップと、前記インク吐出部の回復を行なうために前記キャップに予備吐出を行う予備吐出手段と、を備えたインクジェット記録装置であって、
前記キャップ内に予備吐出したインクの種類を判定し、2以上の種類のインクの予備吐出が同時または前後に行われた場合、前記キャップを空吸引することを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項2】
前記キャップに予備吐出された予備吐出回数を記憶する記憶手段を備え、前記予備吐出の累積回数が、所定回数を超えると前記キャップを空吸引することを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項3】
前記2以上のインクは顔料インクと染料インクのいずれも含むことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のインクジェット記録装置。
【請求項4】
前記顔料インクはブラックインクであり、前記染料インクはカラーインクであることを特徴とする請求項3に記載のインクジェット記録装置。
【請求項5】
2以上のインク吐出部を吸引するためのキャップと、前記インク吐出部の回復を行なうために前記キャップに予備吐出を行う予備吐出工程と、を備えたインクジェット記録装置の回復方法であって、
前記キャップ内に予備吐出したインクの種類を判定し、2以上の種類のインクの予備吐出が同時または前後に行われた場合、前記キャップを空吸引することを特徴とする回復方法。
【請求項6】
前記キャップに予備吐出された予備吐出回数を記憶する記憶工程を備え、前記予備吐出の累積回数が、所定回数を超えると前記キャップを空吸引することを特徴とする請求項5に記載の回復方法。
【請求項7】
前記2以上のインクは顔料インクと染料インクのいずれも含むことを特徴とする請求項5または請求項6に記載の回復方法。
【請求項8】
前記顔料インクはブラックインクであり、前記染料インクはカラーインクであることを特徴とする請求項7に記載の回復方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−72970(P2009−72970A)
【公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−242663(P2007−242663)
【出願日】平成19年9月19日(2007.9.19)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】