説明

インクジェット記録装置および物流インクの排出方法

【課題】記録ヘッドの中に充填された物流インクを排出する場合に、記録ヘッド内に残留する物流インクを低減する。
【解決手段】インクを吐出するノズル列を有し物流インクが充填された記録ヘッド2を備えるインクジェット記録装置において、切換弁42を閉じた状態で第1のポンプ11を駆動することによりノズル列から物流インクを排出させ、クリーニング機構に記録ヘッド2をクリーニングさせた後に、切換弁42を開いた状態で第2のポンプ12を駆動することによりインクタンク16から記録ヘッド2へインクを供給させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット記録装置および物流インクの排出方法に関し、特に、物流インクが充填された記録ヘッド内から物流インクを排出するインクジェット記録装置および物流インクの排出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録装置の記録ヘッドを長期保存する場合や物流時に、記録ヘッドの中にインクが充填されない状態で放置されると、記録ヘッドのヒータ表面が周囲の環境により膜汚染され、記録時の発泡特性が劣化して記録品位が悪化することがある。このような発泡特性の劣化を防止するために、記録用インクから着色成分が排除された保存、物流用のインク(物流インク)を記録ヘッドの中に充填する技術が知られている
物流インクを充填した記録ヘッドを記録装置に設置して使用する場合、記録ヘッドから物流インクを抜く技術として、エージング処理技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。このエージング処理技術は、ヒータに連続的にヒートパルスを与え、ヒータ上に発生した酸化皮膜、不純物を発泡エネルギーで剥離、分離する。その後、記録ヘッドを装着して吐出口より物流インクを排出させ、インクタンク側から記録用のインクを記録ヘッド部内に充填して記録を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特願平3−336945号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、プリントラボ等に使用される大量記録を行うプリント分野で使用されるライン型記録ヘッド内の物流インクを抜くために、上述したエージング処理技術を利用して物流インクを排出すると、記録ヘッド内に物流インクが多く残留することがある。ライン型記録ヘッドは、多数のノズルを備え、そのノズルを繋ぐ長い流路が設けられている。そのため、充填される物流インク量が多くなるためである。
【0005】
更に、発泡エネルギーだけで物流インクを排出すると、ノズルからの吐出による排出では記録ヘッドの液室内の物流インクは排出できても、記録ヘッド内の流路に充填された物流インクの多くは排出されずに残留してしまう。
【0006】
また、ライン型記録ヘッドを介したインク循環動作を実施するインクジェット記録装置は、記録ヘッド内に物流インクが残留していると、循環動作により本体内に充填されている記録用インクと混じり合うことがある。記録用インクと物流インクが混じり合ったインクが記録媒体に付与されると、長期間色味が安定しない状態が続くことがある。
【0007】
本発明は以上の点を鑑みてなされたものであり、記録ヘッドの中に充填された物流インクを排出する場合に、記録ヘッド内に残留する物流インクを低減するインクジェット記録装置および物流インクの排出方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そのために本発明では、インクを吐出するノズル列を有し物流インクが充填された記録ヘッドと、該記録ヘッドへ供給されるインクを収容するためのインクタンクと、該インクタンクから前記記録ヘッドへインクを供給するためのインク供給路に配された第1のポンプと、前記記録ヘッドで吐出されなかったインクを前記インクタンクへ回収するためのインク回収路に配された第2のポンプと、前記記録ヘッドと前記第2のポンプの間に配された切換弁と、前記ノズル列の方向に移動して前記記録ヘッドをクリーニングするクリーニング機構と、を備えるインクジェット記録装置において、前記切換弁を閉じた状態で前記第1のポンプを駆動することにより前記ノズル列から物流インクを排出させ、前記クリーニング機構に前記記録ヘッドをクリーニングさせた後に、前記切換弁を開いた状態で前記第2のポンプを駆動することにより前記インクタンクから前記記録ヘッドへインクを供給させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
以上の構成によれば、記録ヘッド内を減圧して、記録ヘッド内に充填された物流インクをドレインタンクに排出し、その後記録ヘッド内を加圧して記録ヘッド内に残留した物流インクを排出し、ヘッド面のメンテナンス動作を行う。そうすると、記録ヘッドの中に充填された物流インクを排出する場合、記録ヘッド内に残留する物流インクを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施形態のインクジェット記録装置の記録時の状態を示す概略斜視図である。
【図2】図1に示す記録装置の断面構造を示す概略断面図である。
【図3】図1に示す記録装置の断面構造を示す概略断面図である。
【図4】実施形態の記録装置を示す概略全体構成図である。
【図5】実施形態の記録装置を示す概略全体構成図である。
【図6】実施形態のクリーニング部とクリーニング機構の詳細構成を示す斜視図である。
【図7】実施形態のクリーニング部とクリーニング機構の詳細構成を示す斜視図である。
【図8】実施形態のワイパユニットの構成を示す図である。
【図9】実施形態のクリーニング機構を示す側面図である。
【図10】実施形態の記録ヘッドの交換の事前準備の動作を示すフローチャートである。
【図11】実施形態の記録ヘッドの物流インクを抜く動作を示すフローチャートである。
【図12】実施形態の記録ヘッドの内部へインク充填動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0012】
図1は、実施形態のインクジェット記録装置の記録時の状態を示す概略斜視図である。実施形態の記録装置は、インクジェット方式を用いた記録装置であり、実施形態の記録装置は、ロール状に巻かれた連続した記録媒体を使用し、片面記録および両面記録の両方に対応した高速ラインプリンタである。実施形態の記録装置は、例えばプリントラボ等における大量記録を行う記録分野に適している。
【0013】
記録装置1は、複数の記録ヘッド2を有する記録部3を備え、記録ヘッド2から記録媒体4上にインク滴を付与し、記録媒体4に画像を形成する。記録ヘッド2は、CMYKのインクがそれぞれ収容された4つの記録ヘッドから成る。なお、実施形態の記録ヘッド2は、CMYKの4色をそれぞれ収容した4つの記録ヘッドで構成されているが、本発明の記録ヘッドはこのようなものに限定されるものではない。すなわち、3色のインクでも、4色以上のインクを使用するものであってもよく、それぞれのインクを収容する記録ヘッドで構成された記録ヘッドであればよい。また、実施形態では4つの記録ヘッドで構成された記録ヘッド2を用いているが、本発明はこのような記録ヘッドに限定されず、1つの記録ヘッドに複数色のインクタンクを備えている記録ヘッドであってもよい。
【0014】
記録ヘッド2は、ヘッドホルダ5によって一体に保持されており、記録部3と記録媒体記録面間の距離を変更できるようヘッドホルダ5が上下方向に動作することができる。記録装置1の最上流には、ロール状態の記録媒体4をセットする給紙部(不図示)があり、記録媒体4を記録ヘッド2まで搬送し記録動作中に所定速度で送る搬送ローラ7などから構成される給紙・送り機構(不図示)が設けられている。ここで、本発明の記録装置に適用する記録媒体4は、ロール状に巻かれた連続した記録媒体に限るものではなく、カットシートを適用してもよい。
【0015】
図2および図3は、図1に示す記録装置の断面構造を示す概略断面図である。記録部3の下流には、クリーニング部6を備えており、記録ヘッド2に設けられた複数のインクノズル38をワイピング機構部9によりクリーニングする。クリーニング部6は、記録媒体搬送方向に移動することができ、図2に示すように、クリーニング動作実行時は、記録ヘッド2の直下に移動を行う。
【0016】
図4および図5は、実施形態の記録装置を示す概略全体構成図である。まず、実施形態のインク循環供給路の基本構成についての説明をする。インク循環供給路は、インク供給路とインク回収路とインク排出路により構成されている。インクタンクから記録ヘッドにインクを供給する経路が、インク供給路であり、記録ヘッドからバッファタンクにインクを回収する経路をインク回収路という。
【0017】
記録ヘッド2のインク流出側には、第1のインク収容部であるバッファタンク8が設けられている。また、バッファタンク8に続いて、第2のインク収容部であるサブタンク10が設けられている。サブタンク10の先に、記録ヘッド2が設けられている。このように、記録装置1内部のインク循環経路が形成されている。
【0018】
記録ヘッド2は、ヘッド内経路44とヘッド内経路を通らずショートカットするバイパス経路45が設けられている。記録ヘッド2とバッファタンク8との間は、ヘッド内経路44とバイパス経路45の経路を選択および閉塞するための第1の切換弁42が設けられ、その先は第1の循環チューブ20にて接続され、その経路途中に、第1の循環ポンプ11が設けられている。また、バッファタンク8とサブタンク10との間は、第2の循環チューブ21にて接続され、その経路途中には、第2の循環ポンプ12が設けられている。サブタンク10と記録ヘッド2の間は、第3の循環チューブ22にて接続されており、その両端に経路の開閉をするための第2、第3の切換弁39,41が設けられている。第1、第2の循環ポンプ11、12は、チューブをポンプガイド部13とポンプローラー14との間で、しごきながら正逆方向に回転駆動することにより、正負圧を発生可能なチューブポンプ方式である。駆動源としてステッピングモーターなどのモーター(不図示)が用いられ、ポンプローラー14を支持し、回転可能に保持されているポンプローラホルダー15を回転駆動させる構造となっている。
【0019】
第1、第2の循環ポンプ11、12を同時駆動することにより、バッファタンク8、サブタンク10、記録ヘッド2間で上記インク循環経路を介してインク循環動作を実施する。また記録ヘッド2内のインクは、第1の切換弁42により、ヘッド内経路44かバイパス経路45を任意選択して循環する。更に、サブタンク10と記録ヘッド2の間には、第4の循環チューブ43にて接続され、その経路途中に、第3の循環ポンプ40が設けられている経路を備える。
【0020】
また、インクタンク16は、記録装置1内部に、インクを供給し、補充する為のインク容器であり、インクタンク16は、記録装置1に着脱可能な構成となっている。インクタンク16から記録装置1へは、供給チューブ17にて接続されている。その経路途中には、循環ポンプ11、12と同様なチューブポンプ方式を用いた供給ポンプ18が設けられ、そのインク供給接続先は、バッファタンク8となるように構成されている。
【0021】
バッファタンク8と、サブタンク10は、そのタンク上方にそれぞれ大気連通口19a、19bが設けられており、各々のタンク部で集積した気泡を機外へ常時排出可能になっている。また、温度、外気圧の変化や記録ヘッド2を介したインク循環時におけるタンク内圧力変化で、記録ヘッド2に設けられたインクノズル38内のメニスカスを破り、インク垂れや、泡の流入が発生することを抑止する構成となっている。
【0022】
更に、サブタンク10は、インク循環を実施および実施しないに関わらず、記録ヘッド2を保持するヘッドホルダ5が記録状態や、キャッピング状態などへ移行する為に、上下方向に移動を行っても、記録ヘッド2のインクノズル38からインク垂れや、泡の流入が発生しないように、流路内部の圧力と、水頭差によって発生する圧力のバランスが取れた高さに配置されている。
【0023】
また、バッファタンク8とサブタンク10は、各々のタンク部で収容しているインク量を制御するために、それぞれインクの液面検知手段を有している。バッファタンク8には、内部のインク液面を検知する為の、第1の液面検知手段であるフロートセンサ23が設けられている。フロートセンサ23は、その上下に、内部にマグネットを備えた円管状のフロートBH、BL部を有し、そのフロートBH、BLを貫通支持するシャフト内部に、リードスイッチ(不図示)が設けられている。それぞれのフロートBH、BLがタンク内のインク量に応じて高さ方向に変位し、シャフト内部のリードスイッチのON/OFFを切換える構成となっており、そのリードスイッチのON/OFF状態からタンク内のインク量を判断する構造となっている。サブタンク10には、バッファタンク8と同様に、第2の液面検知手段であるフロートセンサ24が設けられている。フロートセンサ24は、その上下に、フロートSH、SL部が構成されている。なお、以降の実施形態の説明においては、フロートセンサ23、24の構造を用いて説明を行うが、液面検知手段は、液の有無を静電容量値の違いで検知する静電容量式や、液面に超音波を発信し、その反射波の有無および反射波の到達時間で検知する超音波式、発光素子から光を放射し、その放射光が受光素子に全反射されるかどうかで液体の有無を検知する光学式などでもよく、これらに限定されるものではない。また、実施形態では各々のタンク部における液面検知数をそれぞれ2つとしたが、3以上であってもよく、またそれぞれのタンクによって検知数を変えてもよい。更に、液面をリニアに検知する構成でもよい。また、タンク内のインク量を検知する手段として、液面検知に拘る必要は無く、例えば重量センサなどにより、タンク内の液量の変化を重量変化により検知する手段などを用いてもよい。
【0024】
次に、実施形態におけるインク排出路の基本構成についての説明を行う。図クリーニング部6は、非記録時にインクノズル38を密封し、インク吐出不良などを抑止するキャップ25が設けられている。そのキャップ25の先に記録装置1から着脱可能に構成された廃インク回収部であるドレインタンク27が設けられ、このドレインタンクは、インク排出経路を形成している。ここで、ドレインタンク27は、廃インクの回収部であり、内部でのインク混色を問題としないため、それぞれの色毎に複数個必要とはせず、全色で共通する1つあればよい。ただし、スペースが許すのであれば複数個持つ構成であってもよい。
【0025】
記録装置1とドレインタンク27の連結部には、バルブ機構(不図示)を備えている。ドレインタンク27が記録装置1内に装着されている間は、バルブ機構(不図示)は開放状態となり、ドレインタンク27は内部で連通する構成になっている。ドレインタンク27が記録装置1内から外されると、バルブ機構(不図示)は密閉状態となることでドレインタンク27の連結部は密閉されるため、インク漏れを抑止する構成となっている。また、キャップ25とドレインタンク27の間は、排出チューブ29にて接続され、その経路途中には、循環ポンプ11、12および供給ポンプ18と同様なチューブポンプ方式を用いた排出ポンプ30が設けられている。このインク排出路構成により、記録ヘッド2に設けられた複数のインクノズル38から吐出された廃インク(例えば記録間のインク予備吐出)をキャップ25で受ける。そして、排出ポンプ30を不図示の駆動源で駆動することにより、キャップ25内に溜まった廃インクをドレインタンク27へ排出することができる。ドレインタンク27には、バッファタンク8、サブタンク10と同様に、第3の液面検知手段であるフロートセンサ31が設けられている。フロートセンサ31は、その上下に、フロートDH、DL部が構成されている。ただし、この液面検知手段は前記フロートセンサ23、24と同様に、この構成に限るものではない。
【0026】
図6および図7は、実施形態のクリーニング部6と1つのクリーニング機構9の詳細構成を示す斜視図である。図6は記録ヘッドの下にクリーニング機構がある状態(クリーニング動作時)を示し、図7は記録ヘッドの下にクリーニング機構がない状態を示している。
【0027】
クリーニング機構9は、記録ヘッド2のノズル面に付着したインクおよびゴミを払拭するワイパユニット146と、ワイパユニット146を払拭方向(第2方向)に沿って移動させる移動機構、これらを一体に支持するフレーム147を有する。ワイパユニット46は後述するブレードや吸引口が1つの移動可能なユニットとなっている。移動機構は、駆動源の駆動によって、2本のシャフト145によって案内支持されたワイパユニット146を第2方向に移動させる。駆動源は、駆動モータ141と減速ギア142、143を有し、ドライブシャフト137を回転させる。ドライブシャフト137の回転は、ベルト144とプーリで伝達されてワイパユニット146を移動させる。ワイパユニット146は、後述するようにブレードと吸引口の組み合わせによって、記録ヘッド2のノズル面のインクやゴミの除去を行なうものである。フレーム147のワイピング領域外には、ブレード21の向きの切換えを行なうためにトリガレバー127が設けられている。
【0028】
図7において、キャップ25はキャップホルダ152に保持されている。キャップホルダ152は記録ヘッド2のノズル面に対して垂直方向に弾性体であるバネで付勢され、バネに抗して移動可能となっている。フレーム147がキャップ位置にある状態で記録ヘッド2がノズル面に対して垂直方向に移動して、キャップ25と密着および離間を行なう。密着によってノズル面をキャッピングすることでノズルの乾燥が抑制される。
【0029】
図8は、実施形態のワイパユニット146の構成を示す図である。第1および第2のノズル列に対応して2つの吸引口111(第1、第2の吸引手段)が設けられている。吸引口111は、吸引ホルダ112に保持され、吸引ホルダ112は記録ヘッド2のノズル面に対して垂直方向(第3方向)に弾性体であるバネ114で付勢され、バネに抗して第3方向に移動可能となっている。つまり、吸引ホルダ112は、ノズル面と記録媒体の間隔方向(第3方向)での直進変位と、弾性体を有する変位機構によって支持されている。
【0030】
2つの吸引口111には、吸引ホルダ112を介してチューブ115が接続されており、チューブ115には吸引ポンプ等の負圧発生手段が接続されている。負圧発生手段を動作させると、吸引口111内部にインクやゴミを吸い取るための負圧が与えられる。ブレード121はブレードホルダ122に保持されている。ブレードホルダ122は第1方向における両端が軸支され、第1方向を回転軸として回転可能な構造となっている。ブレード121は、切換機構の動作によりワイピング位置と退避位置とでブレード面の高さを切り換えることができる。吸引ホルダ112とブレードホルダ122はワイパユニット146の共通の支持体上に設置されている。
【0031】
図9は、実施形態のクリーニング機構を示す側面図である。図9(a)は、吸引口111によって記録ヘッド2のクリーニングを行っている吸引モードの状態を示している。図9(b)は、ブレード121によって記録ヘッド2のクリーニングを行っているワイピングモードの状態を示している。
【0032】
吸引モードでは、図9(a)のように、ブレード121を退避位置にする。この状態においては、ブレード121の先端部は吸引口111の先端部より、記録ヘッド2のノズル面により遠い位置関係となっている。吸引口111の先端部と記録ヘッド2のノズル面とが接触するように、記録ヘッド2の第3方向における位置(吸引モード位置)を設定して保持する。負圧発生手段により吸引口111内に負圧を発生させながら、ワイパユニット146を第2方向に移動させると、ノズルに付着したインクやゴミを吸引口111から吸引し除去することができる。
【0033】
一方、ワイピングモードでは、図9(b)のように、ブレード121をワイピング位置に切り換える。ブレード121の先端部と記録ヘッド2のノズル面とが適切に接触するように、記録ヘッド2の第3方向における位置(ワイピングモード位置)を設定して保持する。このとき、吸引口111の先端部と記録ヘッド2のノズル面とは、図9(a)の状態よりも離れる。負圧発生手段は停止する。ワイパユニット146を第2方向に移動させると、ブレード121によりノズル面をワイピングしてインクやゴミを払拭して除去することができる。
【0034】
以上のように、クリーニング機構は、吸引モードとワイピングモードの2つのモードを有し、同一のワイパユニット146でいずれかのモードを選択的に実施することができる。例えば、ノズルのインク吐出状態を判断して、この判断結果に応じて適切なモードが選択する。具体的には、不吐出のノズルがないとの判断結果であれば、ワイピングモードを選択する。これにより、ノズルからインクを消費することなくノズル面のクリーニングを行うことができる。一方、不吐出のノズルがあるとの判断結果であれば、吸引モードを選択する。吸引口111によってノズル面およびノズルに付着したインクやゴミを吸引する。これにより、ノズルからのインク消費量を抑えつつクリーニングを行うことができる。
【0035】
次に、実施形態の記録ヘッド2を交換するために行う事前準備の動作について説明する。
【0036】
図10は、実施形態の記録ヘッド2を交換するために行う事前準備の動作を示すフローチャートである。
【0037】
記録ヘッド交換準備が開始すると、第2の切替え弁39を開放する(ステップS1)。そして、第1の切替え弁42でバイパス経路45側を選択して開放し、第3の切替え弁41を閉塞させた状態にする(ステップS2)。その状態で、第1の循環ポンプ11を駆動させ、ヘッド内経路44、バイパス経路45、および第1の循環チューブ20内に充填されているインクをバッファタンク8に移送する(ステップS3)。この処理が終わると、インクノズル38内のインクのメニスカスを破り、インクノズル38から大気連通している状態になる。そして、第1の循環ポンプ11の駆動が終了した後、ワイパユニット146で吸引モードを選択して実施する(ステップS4)。この駆動によって、ワイパ吸引口111によりノズル液室内のインク、およびインクノズル38表面に付着しているインクを吸引する。次に、第1の切替え弁42、第2の切替え弁41を閉塞させた状態にする(ステップS5)。この一連の動作により、記録ヘッド交換に伴う記録ヘッド2取り外し時に、ノズル面からのインク垂れを防止する。更に、記録ヘッド2を取り外すことにより大気連通される不図示のジョイント部から循環経路内のインクが水頭差等で流れ出すことを回避している。これにより、記録ヘッド2の交換性を向上させることができる。
【0038】
ここで、上述した記録ヘッド交換の事前準備動作が終了した段階で、実際に記録ヘッド2を任意の作業者が取り外し、物流インクが内部に充填されている新品の記録ヘッド2を記録装置1に装着する。
【0039】
次に実施形態における記録ヘッド2を交換した後の物流インク抜き動作について説明する。
【0040】
図11は、実施形態の記録ヘッドを交換した後の物流インクを抜く動作を示すフローチャートである。ここで、物流インクとは、記録ヘッドを長期に保存するときや物流のときに、記録ヘッドの中に充填する液体である。物流インクを記録ヘッドの中に充填することにより、記録ヘッドのヒータが長期の保存により汚染され、その状態で記録を行うと、記録時にインクの発泡特性が劣化し、インクが正しい場所に付与されないことがある。このような状態を防止するために、記録ヘッドを長期保存する場合や物流に置かれる場合に、記録ヘッドの中に物流インクを充填する。実施形態の物流インクは、無色の粘度が高い液体であるが、本発明の物流インクはこのような物流インクに限定されるものではない。すなわち、記録ヘッドの長期の保存の場合の記録ヘッドの中に充填され、その後記録ヘッドの性能の何ら影響のない液体であればよく、粘度が低くても、記録ヘッドの中に長期に充填されるのが可能なものであればよい。
【0041】
まず、新たに記録装置1に装着された記録ヘッド2が新品であるかどうかを記録ヘッドユニット自体が保持するID情報を元に判別する(ステップS21)。そして、記録ヘッド2が新品でないと判断された場合は、記録ヘッド2内の物流インクは既に排出済みのため、物流インク抜き動作はスキップされ、物流インクを抜く動作は終了する。一方、記録ヘッド2が新品であると判断されると、第1の切替え弁42を閉塞させ、第3の切替え弁41を開放させた状態にする(ステップS22)。その状態で、排出ポンプ30の駆動を開始し、キャップ25を空吸引状態で保持する(ステップS23)。次に、第2の切替え弁39を閉塞し(ステップS24)、第3の循環ポンプ40を駆動させることで、サブタンク10から第4循環チューブ43の経路で記録ヘッド2内にインクが押込まれ、記録ヘッド2内が加圧状態となり、インクノズル38から強制的に物流インクを押し出す(ステップS25)。その際に、インクノズル38から排出された物流インクは空吸引動作中のキャップ25に滴下され、排出ポンプ30によりドレインタンク27に貯蔵される。第3の循環ポンプ40の駆動が停止した後に、キャップ25内に溜まったインクを十分に排出可能なだけの空吸引動作を排出ポンプ30の駆動で実施し、排出ポンプ30の駆動を停止する(ステップS26)。そして、ワイパユニット146で吸引モードを選択実施することで、吸引口111によりノズル液室内の物流インク、およびインクノズル38表面に付着しているインクを吸引する(ステップS27)。最後に、ワイパユニット146でワイピングモードを選択実施し、ブレード121によりノズル面をワイピングしてインクやゴミを払拭して除去する(ステップS28)。
【0042】
次に、本実施形態における物流インクが抜き終わった後の記録ヘッド2内へのインク充填動作について説明する。
【0043】
図12は、実施形態の物流インクが抜き終わった後の記録ヘッド2の内部へのインク充填動作を示すフローチャートである。まず、第2の切替え弁39を開放する(ステップS41)。そして、第1の切替え弁42でバイパス経路45側を選択開放し、第3の切替え弁41を開放させた状態にする(ステップS42)。その状態で、第1の循環ポンプ11と第2の循環ポンプ12を同時駆動させる。そうすると、記録ヘッド2(バイパス経路45)、第1の循環チューブ20、バッファタンク8、第2の循環チューブ21、サブタンク10、第3の循環チューブ22の順序で繋がるインク循環路においてインク循環動作を実施する。その結果、インク循環動作を実施する(ステップS43)。この動作によって、記録ヘッド2の交換時に発生したインク循環路内の空気溜まりや気泡をバッファタンク8に移送し、バッファタンク8の大気連通口19aから大気に戻す。インク循環路内の空気溜まりや気泡をバッファタンク8に抜ききった後、第1の切替え弁42でヘッド内経路44側を選択開放し、第3の切替え弁41を開放させた状態する(ステップS44)。そして、第1の循環ポンプ11と第2の循環ポンプ12を同時駆動させる。そうすると、記録ヘッド2(ヘッド内経路44)、第1の循環チューブ20、バッファタンク8、第2の循環チューブ21、サブタンク10、第3の循環チューブ22の順序で繋がるインク循環路において、インク循環動作を実施する。その結果、記録ヘッド2内にインクが充填される(ステップS45)。インク循環路内の空気溜まりや気泡を事前に抜いているため、ヘッド内経路44への空気の侵入させることなく、インクを充填することができる。
【符号の説明】
【0044】
1 記録装置
2 記録ヘッド
6 クリーニング部
9 クリーニング機構部
11 第1の循環ポンプ
12 第2の循環ポンプ
16 インクタンク
20 第1の循環チューブ
21 第2の循環チューブ
22 第3の循環チューブ
25 キャップ
38 インクノズル
39 第2の切替え弁
40 第3の循環ポンプ
41 第3の切替え弁
42 第1の切替え弁
43 第4の循環チューブ
121 ブレード
146 ワイパユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクを吐出するノズル列を有し物流インクが充填された記録ヘッドと、該記録ヘッドへ供給されるインクを収容するためのインクタンクと、該インクタンクから前記記録ヘッドへインクを供給するためのインク供給路に配された第1のポンプと、前記記録ヘッドで吐出されなかったインクを前記インクタンクへ回収するためのインク回収路に配された第2のポンプと、前記記録ヘッドと前記第2のポンプの間に配された切換弁と、前記ノズル列の方向に移動して前記記録ヘッドをクリーニングするクリーニング機構と、を備えるインクジェット記録装置において、
前記切換弁を閉じた状態で前記第1のポンプを駆動することにより前記ノズル列から物流インクを排出させ、前記クリーニング機構に前記記録ヘッドをクリーニングさせた後に、前記切換弁を開いた状態で前記第2のポンプを駆動することにより前記インクタンクから前記記録ヘッドへインクを供給させることを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項2】
前記クリーニング機構は、廃インク回収部を備え、キャップをノズル面の下方に配置し、前記ノズル面から加圧して排出された前記物流インクを前記キャップで受け止め、負圧発生手段により、前記キャップに排出された前記物流インクを前記廃インク回収部に移送することを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項3】
インクを吐出するノズル列を有し物流インクが充填された記録ヘッドと、該記録ヘッドへ供給されるインクを収容するためのインクタンクと、該インクタンクから前記記録ヘッドへインクを供給するためのインク供給路に配された第1のポンプと、前記記録ヘッドで吐出されなかったインクを前記インクタンクへ回収するためのインク回収路に配された第2のポンプと、前記記録ヘッドと前記第2のポンプの間に配された切換弁と、前記ノズル列の方向に移動して前記記録ヘッドをクリーニングするクリーニング機構と、を備えるインクジェット記録装置における物流インクの排出方法であって、
前記切換弁を閉じた状態で前記第1のポンプを駆動することにより前記ノズル列から物流インクを排出させる第1の工程と、
前記第1の工程の後に、前記クリーニング機構に前記記録ヘッドをクリーニングさせる第2の工程と、
前記第2の工程の後に、前記切換弁を開いた状態で前記第2のポンプを駆動することにより前記インクタンクから前記記録ヘッドへインクを供給する第3の工程と、
を備えることを特徴とする物流インクの排出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−86439(P2013−86439A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−231276(P2011−231276)
【出願日】平成23年10月21日(2011.10.21)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】